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10xgenomics.com/immunology 免疫細胞の複雑な階層を 明らかにする その深層を 探る 免疫学研究

免疫学研究 その深層を 探る - 10x Genomics...2 その深層を探る 免疫系の全体像をとらえる ワクチン開発、安全な臓器移植のための組織適合性、がん

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10xgenomics.com/immunology

免疫細胞の複雑な階層を 明らかにする

その深層を探る

免疫学研究

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2  その深層を探る

免疫系の全体像をとらえるワクチン開発、安全な臓器移植のための組織適合性、がん免疫療法など、過去100年の間にあった数多くの重要な科学的・医学的ブレークスルーの最前線には、免疫学の研究が関与していました。今日、免疫学や感染症の研究者らは、がん、自己免疫疾患、新たな病原体の出現など、私たちの健康に対する重大な脅威に常に挑み続けています。しかし、免疫系がもつ複雑かつダイナミックで不均一な特徴に対して、私たちの一般的な研究手段が持つ限界のために、こうした取り組みは大きな課題に直面しています。

科学者らは、免疫応答を包括的にモニターして理解するために、個々の細胞について細胞種および細胞機能状態をハイスループットで特徴づける技術を必要としています。このため、フローサイトメトリー(Flow)およびマスサイトメトリー(cytometry by time of flightまたはCyTOF)といった技術によって、免疫の研究者は、細胞表面のタンパク質に基づいて、種類や状態の異なる細胞を分類・ソートすることができるようになりました。しかし、細胞表面マーカーだけに頼ると、細胞の分子特性のほとんどは隠れたままとなります。同じ表面タンパク質を発現する細胞同士や、同じ細胞でも異なるクローン型を発現するT細胞またはB細胞同士を、さらに区別することはできません。

遺伝子発現と細胞表面マーカーの同時測定によるサブタイプおよび細胞状態の識別ハイスループットのシングルセルRNAシーケンス技術は、自然免疫および適応免疫を理解する上で重要な役割を担ってきました。例えば、Chromiumシングルセル遺伝子発現ソリューションを用いることで、ヒト胎児腸管におけるmemory-like CD4+ T細胞の発生に関するエビデンスの発見 (1)、自然免疫応答の進化的構造の図示 (2)、骨髄微小環境における過去に知られていなかったレベルでの不均一性の解明 (3) といった発見がなされています。しかし、遺伝子発現プロファイリングではmRNA転写産物の種類および量に関する情報は得られますが、発現タンパク質の存在量やアイソフォームについては、mRNAのデータだけから直接推測できるとは限りません (4)。同様に、細胞表面マーカーだけに頼ると免疫細胞の動的な生態過程の多くが発見されないままとなります (5)。また、表面マーカーによって単一系統として分類された免疫細胞集団の中にも、多様な不均一性が存在することはよく知られています (6)。

今日、免疫学や感染症の研究者らは、がん、自己免疫疾患、新たな病原体の出現など、私たちの健康に対する様々な脅威に対処するため、日々研究を続けています。

10x Genomicsでは、免疫学研究におけるこれらの課題に対処するため、選び抜かれたソリューションを提供しています。これらの技術は現在のフローサイトメトリーのワークフローに組み込むことのできる柔軟性を備えています。

• Feature Barcodingテクノロジーを利用した10xのChromiumシングルセル免疫プロファイリングシステムおよび遺伝子発現システムといったソリューションを利用することで、数千個もの個別の免疫細胞におけるマルチオミックスのフェノタイピングが実施できます。

• マルチオミックスでは、細胞表面タンパク質および抗原特異性の特徴を明らかにすることができます。またこれらの結果は、同一のシングルセルに由来する免疫レパトアおよび遺伝子発現解析とを組み合わせて解析することができます。

• ChromiumシングルセルATACソリューションでは、クロマチンオープン領域をプロファイリングすることで、免疫細胞タイプをさらなる特徴づけや、発達系統の検討ができます。

これらのソリューションは10xのソフトウェアで解析できます。免疫系の明確な全体像を明らかにすることで、これまでの技術では解き明かせなかった難問への対処が可能になるでしょう。

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詳細は 10xgenomics.com/immunology  3

図1A. 遺伝子発現

T調節 CD4+CD127-CD25+1.6%

細胞傷害性Tナイーブ CD3+CD8a+CD45RA

+5.2%

ヘルパーTメモリー CD3+CD4+CD45RA-19.2%

古典的単球 CD14+CD16-31.7%

B細胞 CD19+13.9%

ナチュラルキラー CD16+CD56+6.1%

ダブルネガティブTCD3+CD4-CD8a-3.0%

細胞傷害性Tメモリー CD3+CD8a+CD45RA-5.5%

ヘルパーTナイーブ CD3+CD4+CD45RA+9.6%

非古典的単球CD14+CD16+1.5%

tSNE1

tSN

E2 T調節 CD4+CD127-CD25+1.6%

古典的単球 CD14+CD16-31.7%

B細胞 CD19+13.9%

ナチュラルキラー CD16+CD56+6.1%

ヘルパーTナイーブ CD3+CD4+CD45RA+9.6%

非古典的単球 CD14+CD16+1.5%

*細胞傷害性Tメモリー CD3+CD8a+

CD45RA-5.5%

*ダブルネガティブTCD3+CD4-CD8a-3.0%

*細胞傷害性Tナイーブ CD3+CD8a+

CD45RA+5.2%

*ヘルパーTメモリー CD3+CD4+CD45RA-19.2%

tSNE1

tSN

E2

B. 細胞表面タンパク質

C. Feature Barcodingテクノロジーとフローサイトメトリーの定量的比較

フローサイトメトリー

(カウント)

Feat

ure

Bar

codi

ngテクノロジー(

カウント)

CD4 CD8a CD19 CD45RA CD45RO

10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 10 5

0

50

100

150

200

10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 10 5

0

50

100

150

10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 10 5

0

50

100

150

200

10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 10 5

0

30

60

90

120

10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 10 5

0

30

60

90

120

図1. シングルセル遺伝子発現ソリューションを用いた約8,000個の末梢血単核球(PBMC)のt分布型確率的近傍埋め込み法(tSNE)投影図(A、B)、およびシングルセル遺伝子発現ソリューションを用いたFeature Barcodingテクノロジーとフローサイトメトリーの定量的比較(C)。パネルAおよびパネルBにおいて、各点はシングルセルを表し、それぞれの遺伝子発現とタンパク質発現プロファイルの一方または両方に基づいてクラスター化されています。細胞アノテーションは、各クラスターで高く発現している遺伝子/タンパク質を精査し、発表された論文に基づいて細胞タイプを手動で割り当てました。A. 遺伝子発現のデジタル情報に基づいてPBMCをグループ化しました。B. 次いで、細胞表面タンパク質発現プロファイルに基づいてPBMCをグループ化しました。抗体のユニーク分子識別子(unique molecular identifier、UMI)のカウントから得られる追加情報は、遺伝子発現データ単独の場合と比較して、多くの既知な細胞種がより詳しく分割されました(アスタリスクを付記した細胞集団)。C. フローサイトメトリーとFeature Barcodingテクノロジーについて、1細胞あたりの蛍光強度をUMIカウントと比較したところ、明らかになった細胞の種類は類似していました。

細胞の同一性・状態・機能をより正確に特徴づける目的や、健常モデルや疾患モデルにおける新規な細胞サブタイプを定義づけるためには、細胞の複数のデータを測定することが重要です。Feature Barcodingテクノロジーを利用したChromiumシングルセル免疫プロファイリングソリューションと遺伝子発現ソリューションは、従来の蛍光色素結合抗体の代わりにDNAバーコードオリゴ結合抗体で細胞表面タンパク質を標識します。これにより、細胞表面タンパク質のデータとトランスクリプトームのデータを1つに統合して、マルチオミックス的アプローチを実現しています。

Feature Barcodingテクノロジーを利用したChromiumシングルセル免疫プロファイリングソリューションを用いて、末梢血単核球(PBMC)を、遺伝子発現と細胞表面タンパク質発現に基づいてプロファイリングし、クラスターに分けた例を示します。(図1 A、B)。

遺伝子発現データ単独の場合と比較して、抗体を用いたFeature Barcodeカウント情報を追加すると、ダブルネガティブおよびメモリーT細胞、CD4+ TおよびCD8+ T細胞、メモリーおよびナイーブのCD4+ TまたはCD8+ T細胞のように、多くの古典的な細胞タイプがより詳しく分割されました(図1B、アスタリスクの記された細胞クラスター)。Feature Barcodingテクノロジーとフローサイトメトリーの定量的比較の結果、この2種類のアプローチでは類似した細胞集団が明らかになることが示されました(図1C)。

これらの結果を合わせると、Feature Barcodingテクノロジーはフローサイトメトリーと同様に機能して細胞タイプを識別し、また、同一の細胞におけるタンパク質のデータとトランスクリプトームのデータを統合するという能力を合わせもつことが示されました。Feature Barcodingテクノロジーのもうひとつの利点は、DNAバーコード結合抗体によってもたらされる大きな多様性です。

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4  その深層を探る

図2.CMV陰性PBMCを2%のCMV増殖T細胞と混合し、細胞表面タンパク質特異

的抗体パネル、およびCMV、EBV、非結合性対照(NC)抗原を提示するdCODE™

Dextramers®を用いて標識しました。表面タンパク質の発現に基づくtSNE投影法に

よって細胞集団をクラスター化しました。 A. T細胞はCD3+、CD4+、CD8+の発現に

よって識別されます。B. CD8+ T細胞は、CMV抗原を提示するDextramers®に特異

的に結合します(左パネル)。このサンプルにはEBV特異的なT細胞が含まれていない

ため、EBV Dextramers®による染色レベルは、非結合性Dextramers®のコントロー

ルと同程度です(中央および右パネル)。C. T細胞に存在する、T細胞受容体ペアのク

ロノタイプを構築しています。表は、もっとも一般的に存在するTCRクロノタイプの

α鎖およびβ鎖の遺伝子コールの概要を示しています。

免疫応答をより詳細に理解するための、TCR配列とT細胞の抗原結合特異性解析適応免疫応答は、T細胞にペプチドを提示する主要組織適合性複合体(MHC)細胞表面タンパク質を介して起こります。T細胞受容体(TCR)が標的抗原、すなわち抗原提示細胞上の主要組織適合性複合体に結合したペプチド(pMHC)を認識すると、下流の複数の活動が誘発されてT細胞が活性化されます。感染症、自己免疫、およびがんに対する適応免疫応答の特徴を明らかにするには、転写の状態、細胞表面タンパク質マーカー、および抗原特異性(TCR-pMHC相互作用)などのT細胞活性を複数の側面から評価し、これらの表現型を発現しているTCRクロノタイプと関連づける必要があります。抗原特異性に関するFeature Barcodingテクノロジーを備えたChromiumシングルセル免疫プロファイリングソリューションでは、マルチオミックスを利用して、これまでよりもはるかに高いスループットと、免疫細胞の様子を高解像度に解析することを実現しています。このソリューションは、既存のフローサイトメトリーのワークフローと組み合わせることができるため、関心のある細胞に焦点を合わせることが可能になり、希少クローンの検出能力も高まります。

Feature Barcodingテクノロジーを備えたChromiumシングルセル免疫プロファイリングソリューションを用いて、PBMCとサイトメガロウイルス陽性(CMV+)T細胞を組み合わせたサンプルの特性解析を実施した例を以下に示します。DNAバーコードと結合した細胞表面タンパク質抗体パネル、

およびCMV、Epstein-Barrウイルス(EBV)、および非結合性対照(NC)抗原を提示するdCODE™ Dextramers®を用いて細胞を標識しました。細胞表面タンパク質の発現データセットを用いて細胞をクラスター化したところ、別々の免疫細胞タイプの中に、他と異なるT細胞およびB細胞の集団が複数あることが明らかになりました(図2A)。細胞クラスター上に抗原のデータセットを重ねたところ、CMV抗原を提示するDextramers®に特異的に結合するCD8+ T細胞集団が明らかになりました(図2B)。また、T細胞受容体クロノタイプのペアを構築し、CD8+細胞の中で増多しているクロノタイプを同定しました(図2C)。

この例では細胞表面マーカーおよび抗原特異性に関する情報を示していますが、他の細胞内データともリンクできる、遺伝子発現および免疫受容体のデータも保持しています(フローサイトメトリーをどのように組み入れたかなど、この実験をどのように実施したかに関する詳細は、アプリケーションノート『Redefining Cellular Phenotyping』 http://go.10xgenomics.com/vdj/app-notesをご参照ください)。 このように、このソリューションでは、適応免疫応答とその疾患との関連性をより深く理解する上で不可欠な、免疫受容体特異性および抗原結合能の根底にある個々の細胞表現型を識別するといった、他に例をみないアプローチを実現することができます。

CD3 CD4

EBVDextramers

CD8a

V D J C

α TRAV26-2 - TRAJ43 TRAC

α TRAV40 - TRAJ53 TRAC

β TRBV30 - TRBJ2-4 TRBC2

C.

NCDextramers

図2 A.

CMVDextramers

B.

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詳細は 10xgenomics.com/immunology  5

機能的表現型とクローン型の識別に向けて免疫レパトアの多様性を明らかにする適応免疫の特異性は、複数の候補遺伝子セグメントから体細胞組換えを通じて生じるT細胞受容体およびB細胞受容体の膨大なレパトアに依拠しており、これによって、細胞ごとに固有の抗原受容体が発現しています。10xのChromiumシングルセル免疫プロファイリングソリューションは、遺伝子発現の同時プロファイリングや、個々の細胞におけるT細胞およびB細胞集団の、偏りのないクロノタイプ解析を目的とした、受容体ペアの全長シーケンスの解析にも用いることができます。このソリューションを用いて、結腸直腸がん(CRC)と扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の腫瘍検体における腫瘍微小環境(TME)および適応免疫表現型を検討しました。

本解析の最初のステップでは、不均一な細胞集団の特性を明らかにするために、各検体の遺伝子発現プロファイルを解析しました。どちらの腫瘍でも、T細胞、B細胞、形質細胞を含む腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの免疫細胞種の顕著な集団がみられました(図3)。腫瘍におけるこうした免疫細胞集団の存在は活発な免疫応答をうかがわせるものではありますが、リンパ球受容体配列を調べない限り、これらの腫瘍における適応免疫応答について真の理解を得ることは困難です。

CRC腫瘍の場合、最上位のT細胞クロノタイプが示した増殖は限定的でした(全T細胞クロノタイプの1%未満)。しかし、形質細胞クラスターにおけるIgレパトアを調べたところ、優勢なクロノタイプは全B細胞クロノタイプの4%超を占めていました。遺伝子発現に基づく細胞クラスター投影図にIgクロノタイプのデータを重ねたところ、優勢なクロノタイプが形質細胞クラスター内に存在することが明らかになりました(図3C)。この顕著なクローン増殖は、これらの形質細胞が腫瘍特異的な抗体を産生していることを示唆しています。

NSCLC腫瘍の場合、もっとも多くみられたIgクロノタイプのクローン増殖は限定的でした。トップのペアクロノタイプは、全クロノタイプのわずか1%超だけであり、特定のクラスター内には局在していませんでした。TCRシーケンスデータを、遺伝子発現データと組み合わせて検討したところ、特定された2種類の上位クロノタイプが細胞障害性T細胞(CD8+)であること、しかしこれらのクローンの増殖は限定的(全クロノタイプの約1%)であることが明らかになりました。したがって、肺がん腫瘍においては腫瘍特異的な免疫応答を示すエビデンスは認められませんでした。

Chromiumシングルセル免疫プロファイリングソリューションを用いて、同一シングルセルで遺伝子発現と免疫レパトアシーケンスデータを統合することによって、腫瘍に浸潤した免疫細胞の機能表現型と、その細胞のクローン性の両方を推測することができました。両腫瘍から得られた遺伝子発現データにおいて多くの免疫細胞浸潤が観察されましたが、これを免疫細胞のクロノタイプと結合させることによって、増殖の程度および腫瘍特異的免疫反応の有無を観察することができました。

図3. Cell Rangerにより出力され、Loupe Cell Browserを用いて可視化された細胞のtSNE投影。各ドットは細胞を表し、遺伝子発現プロファイルに基づいてクラスター化されています。A.およびB. 細胞に関する注釈は、各クラスターで高度に発現している遺伝子を元に、CRC腫瘍(パネルA)およびNSCLC(パネルB)に由来する細胞に関して発表された論文に基づいて細胞種を手動で割り当てました。C.(左)CRCサンプルの遺伝子発現とIgクロノタイプの重層図。薄青色の点はIgクロノタイプコールを示しています。濃青色の点は、形質細胞クラスターにおいてもっとも多く存在するIgクロノタイプの位置を示しています。右表は、重鎖(H)およびラムダ軽鎖(λ)の遺伝子コールの概要を示しています。

V D J C

H IGHV1-3 IGH10R15-1A IGHJ5 IGHA1

λ IGLV2-14 - IGLJ1 IGLC1

C.

図3 A. CRC腫瘍 B. NSCLC腫瘍

形質細胞

形質細胞死細胞

上皮細胞/腫瘍細胞/ 死細胞

上皮細胞/ 腫瘍細胞

上皮細胞/ 腫瘍細胞

がん関連線維芽細胞

細胞傷害性 T細胞

ヘルパーT細胞

樹状細胞

死細胞

B細胞

B細胞

B細胞B細胞

(Ig産生増加)

単球 マスト細胞

B細胞

ヘルパーT細胞

細胞傷害性 T細胞

制御性T細胞(Treg)

形質細胞

形質細胞

単球/ マクロファージ

上皮細胞/ 腫瘍細胞

上皮細胞/腫瘍細胞

上皮細胞/ 腫瘍細胞

樹状細胞死細胞

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6  その深層を探る

メモリーCD4

B細胞

ナイーブCD8

ナイーブCD4

DC

エフェクターメモリーCD8

単球

NK細胞メモリーCD8

CD33

5

5

5

5

5

5

5

5

5

CD79A

22

22

22

22

22

22

22

22

22

GZMB

17

17

17

17

17

17

17

17

17

CD8A

21

21

21

21

21

21

21

21

21

CD4

9

9

9

9

9

9

9

9

9

LEF1

5

5

5

5

5

5

5

5

5

Monocytes

DC

B Cells

NK Cells

E�ector Memory CD8

Memory CD8

Memory CD4

Naïve CD4

Naïve CD8

B.

図4.クロマチンアクセシビリティの不均一性が細胞種の境界を描きだす。A. 単一の細胞核のアクセスビリティプロファイルをクラスタリングすることで、PBMCに含まれる9種類の細胞集団が明らかになります。B.プロットは、複数のマーカー遺伝子座における各クラスターの凝集クロマチンのアクセスビリティプロファイルを示しています。

単球

DC

B細胞

NK細胞エフェクター メモリーCD8

メモリーCD8

メモリーCD4

ナイーブCD4

ナイーブCD8

図4 A.

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サブタイプ分類および細胞系譜決定に関するエピジェネティクスの影響を理解するシングルセルの解像度でRNAやタンパク質発現を分析することによって、細胞タイプを分類したり細胞ごとの表現型バリエーションを測定したりする能力は向上しています。しかし、その根底にある、細胞系譜の関与を促進したり遺伝子発現を制御したりするエピジェネティックな変化については、まだわからないことが多く残されています。造血分化中に生じるさまざまな細胞系譜と、異なるリンパ球活性化状態間を遷移する際の遺伝子発現を調節する分子経路とのエピジェネティックな関係を理解することは、免疫応答を理解し、新しい免疫療法プロトコールを開発するためには不可欠です (7)。近年の革新により、オープンクロマチンのランドスケープにおける細胞間のバリエーションを測定することによって、シングルセルレベルでエピジェネティック・ランドスケープの研究を始めることができるようになりました。

ChromiumシングルセルAssay for Transposase Accessible Chromatin(ATAC)ソリューションは、数百~数万個の細胞のクロマチンランドスケープを同時にプロファイリングする、強固なアプローチを実現します。このソリューションを用いて、PBMCに由来する9,000個以上の細胞核をプロファイリングし、シングルセルのエピジェネティックデータを解析するための解析ソフトウェアーCell Ranger ATACにより、単一核アクセシビリティプロファイルをクラスター化した例を紹介します。この解析では、9種類の異なる機能性細胞タイプを特定し、エフェクターT細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞を明確に区別することができました(図4A)。

さらに、クラスター内のすべての細胞から得られたリードを集約することで、既知のマーカー遺伝子座におけるクロマチンアクセシビリティを調べ、検討した各細胞表面マーカー遺伝子におけるクロマチンのアクセシビリティが細胞タイプと関連していることを明らかにしました。例えば、単球および樹状細胞はCD33遺伝子座においてオープンクロマチン構造をとり、一方、リンパ球系列のすべてのクラスターは、CD79A遺伝子座周辺でオープンクロマチン構造をとるという共通のパターンを示しました(図4B)。また、重要な点として、LEF1(細胞系譜決定転写因子)などの記憶関連遺伝子座、およびGzmb(セリンプロテアーゼ)などのエフェクター機能遺伝子座におけるクロマチンアクセシビリティを用いて、同一細胞種内での細胞活性化状態が識別可能でした。このように、シングルセルの解像度でクロマチンアクセシビリティを解析することによって、細胞の不均一性を詳しく理解したり、細胞タイプ特異的な遺伝子調節パターンを特定したりすることができました。

シングルセルのエピジェネティックプロファイリング技術が利用できるようになってまだわずかな時間しかたっていませんが、免疫学研究ではすでに注目が集まっています。さまざまなシングルセルATACプロトコールを用いて、患者T細胞における白血球および非白血球の調節経路の特徴づけ、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞のcisおよびtransの調節因子の観察、T細胞の疲弊に関するエピジェネティックなバイオマーカーの特定が行われました (8, 9)。最近では、ChromiumシングルセルATACソリューションを用いて、ヒト免疫細胞の発生および腫瘍でのT細胞疲弊におけるクロマチンのプロファイリングが行われました (10)。

シングルセルシーケンスツールとマルチオミックス解析による感染症、自己免疫、がんの研究自然免疫と適応免疫の両方について広範な理解を深めるには、感染症、自己免疫、がん、およびその他の病理に対する免疫学的応答の複雑な編成を精査するための適切なツールが必要です (11)。シングルセルシーケンス技術は、組織のプロファイリング、疾患のドライバー分子の特定、免疫機能の研究、発生経路の特定に利用できます。

10x Genomicsのシングルセルソリューションをはじめとした手法は、T細胞への抗体結合を直接観察する唯一の方法であり、同時に、再構成されたペアのTCR-αおよびTCR-β遺伝子配列を決定したり、遺伝子と細胞表面タンパク質の発現を測定したり、これらすべての結果を直接結びつけることが可能です。シングルセルATACは、免疫フェノタイピングにさらなる改善をもたらし、アレルギーや自己免疫疾患、免疫療法抵抗性の根底にあるエピジェネティック経路の研究を可能にすることでしょう。そうして得られた洞察は、機能状態の特定やネオアンチゲンの発見に応用できるほか、治療用途においては、ヒトの健康および疾患に関する研究に大きな影響を及ぼす応用が可能です。

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詳細については以下のサイトをご覧ください。10xgenomics.com/immunology© 2019 10X Genomics, Inc. FOR RESEARCH USE ONLY. NOT FOR USE IN DIAGNOSTIC PROCEDURES.LIT000046-JP RevA Immunology Capabilities Brochure

リソースChromiumシングルセル遺伝子発現10xgenomics.com/solutions/single-cell/

Chromiumシングルセル免疫プロファイリング10xgenomics.com/solutions/vdj/

ChromiumシングルセルATAC10xgenomics.com/solutions/single-cell-atac/

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2. T. Hagai, X. Chen, R. J. Miragaia, R. Rostom, T. Gomes et al., Gene expression variability across cells and species shapes innate immunity. Nature. 563, 197-202 (2018).

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