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基礎数学演習 演習問題
1. 高校数学の復習
2. 基本的なこと
3. 変数と関数
4. 微分法
5. 積分法
6. 偏微分
7. 多重積分
1
1 高校数学の復習
[1] 以下の数値を計算せよ。(1)1年は秒にすると何秒になるか。(2)地球一周の距離は何 kmになるか。(3)地球の平均の密度は何 g/cm3 になるか。(4)太陽から地球まで何秒で光が届くか。ただし、必要なら次の数値を用いよ。地球半径= 6.4× 106m地球質量= 6.0× 1024kg地球公転半径= 1.5× 1011m光速度= 3× 108m/s
[2] 次の関数のグラフの概略を描け。
(1) y = x− x2, (2) y = x3 − x, (3) y =1
1− x2, (4) y =
√1− x2
[3] つぎの表は惑星の軌道半径と公転周期を記したものである。巻末の両対数グラフ用紙にプロットし、法則性を見いだせ。(理科年表 ’97 天文部 P.88-P.89 国立天文台編)
惑星 英語名 軌道半径 公転周期(天文単位) (太陽年)
水星 Mercury .387 .241金星 Venus .723 .615地球 Earth 1 1火星 Mars 1.52 1.88木星 Jupiter 5.20 11.9土星 Saturn 9.55 29.5天王星 Uranus 19.2 84.0海王星 Neptune 30.1 165冥王星 Pluto 39.5 248
2 基本的なこと
[4] (数学的帰納法)つぎの2項定理を以下の手順で証明せよ。
(a + b)n =n∑
r=0
(n
r
)an−rbr
ここで、(nr
)は以下の「組み合わせの数」である。
(n
r
)=
n!(n− r)!r!
2
(1)まず、つぎの漸化式を証明する。(
n
r − 1
)+
(n
r
)=
(n + 1
r
)
(2)つぎに、以下の恒等式の右辺に n の場合の2項定理を適用し、(1)の関係を使って左辺を導く。
(a + b)n+1 = (a + b)(a + b)n
[5] つぎの「ベキ和公式」を数学的帰納法で証明せよ。
(1) n∑
k=1
k2 =n(n + 1)(2n + 1)
6, (2)
n∑
k=1
k3 =(
n(n + 1)2
)2
[6](1)m1,m2, n1, n2 を自然数とするとき、以下のことを示せ。
m1
n1<
m2
n2 ならば
m1
n1<
m1 + m2
n1 + n2<
m2
n2 が成り立つ。
(2)a1, a2, · · · , an および b1, b2, · · · , bn を任意の実数とするとき、つぎのシュワルツの不等式
(a1b1 + a2b2 + · · ·+ anbn)2 ≤ (a21 + a2
2 + · · ·+ a2n)(b2
1 + b22 + · · ·+ b2
n)
を証明せよ。また、等号はどのような場合に成り立つか。
[7] α, β を定数として、漸化式 an+1 = (α + β)an − αβan−1 (n = 1, 2, 3, · · ·) に従う数列を考える。(1)漸化式から an+1−αan = β(an−αan−1) および an+1− βan = α(an− βan−1) を示し、さらに以下を導け。
an+1 − αan = βn(a1 − αa0), an+1 − βan = αn(a1 − βa0)
(2)(1)の連立方程式を an に関して解き、以下を示せ。
an = a1αn − βn
α− β+ a0
αβn − βαn
α− β, (n = 0, 1, 2, · · ·)
(3)以上の結果を用いて、フィボナッチ数列 Fn+1 = Fn+Fn−1 (n = 1, 2, 3, · · ·), F0 =1, F1 = 1 の一般項がつぎのようになることを示せ。
Fn =1√5
(1 +
√5
2
)n+1
−(
1−√52
)n+1 , (n = 0, 1, 2, · · ·)
[8] つぎの漸化式で与えられる数列が収束すること、およびその極限値を以下の手順で示せ。
an+1 =12
(an +
2an
), a0 = 2, (n = 0, 1, 2, · · ·)
3
(1)極限値 α が存在すると仮定して、α を求めよ。(2)an ≥ α を示せ。(3)不等式
an − α ≤ 12(an−1 − α)
を導き、数列 an が収束することを示せ。
[9] 数列 an、bn を、初期条件 a0 ≥ b0 > 0 として、漸化式
an+1 =an + bn
2, bn+1 =
√anbn
によって定義する。このとき以下のことを示せ。(1)つねに an ≥ bn が成り立つ。(2)an は減少数列、bn は増加数列である。(3)よって、定理「有界単調数列は収束する」により、各数列は収束する。このとき、両極限値は一致することを示せ。この極限値を「算術幾何平均」という。
3 変数と関数
[10] 記号 [x] によって「実数 x を超えない最大整数」をあらわし、これをガウス記号という。例えば
[0.5] = 0, [1.7] = 1, [2] = 2, [−0.3] = −1, [−2] = −2
などとなる。以下の関数のグラフを描け。
(1) y = x− [x], (2) y = cos(π[x])
[11]関数 f(x) は −∞ < x < +∞ で連続な関数であって、任意の実数 x, y に対して、関数等式
f(x + y) = f(x) + f(y)
を満たしているとき、f(x) は c をある定数として f(x) = cx とあらわされることを以下の手順で示せ。(1)x = y = 0 とおいて、f(0) の値を求めよ。(2)y = −x とおいて、関数 f(x) が偶関数であるか、奇関数であるかを定めよ。(3)y = x とおいて、f(2x) と f(x) の関係を導け。さらに数学的帰納法により
f(nx) = nf(x)
を示せ。(4)上式を用いて、任意の自然数 n に対して
f
(x
n
)=
1n
f(x)
4
を示せ。(5)(3)と(4)の結果から、任意の有理数 k に対して
f(kx) = kf(x)
を示せ。よって、とくに x = 1 を代入すれば f(1) = c として、任意の有理数 k に対して f(k) = ck となることがわかる。以上の結果と関数 f(x) の連続性から、任意の実数 x に対して f(x) = cx が示された。
一般に2つの連続な関数が任意の有理点上で一致するならば、それらは相等しいからである。(類題)任意の実数 x, y に対して、関数等式
f(x + y) = f(x)f(y)
を満たす連続関数 f(x) を決定せよ。
[12] 実数に値を持つ一組の関数 S(x), C(x) の間に「減法公式」
S(x− y) = S(x)C(y)− C(x)S(y), C(x− y) = C(x)C(y) + S(x)S(y)
が成立するとする。ただし S(x), C(x) は恒等的にゼロではないものとする。以下のことを示せ。
(1) S(0) = 0, C(0) = 1,
(2) C2(x) + S2(x) = 1,
(3) S(2x) = 2S(x)C(x), C(2x) = C2(x)− S2(x)
(4) S2(x) =1− C(2x)
2, C2(x) =
1 + C(2x)2
[13]関数 y = f(x) が与えられたとき、x = f(y) を y について解いて得られる関数をy = f−1(x) と書いて、関数 y = f(x) の逆関数とよぶ。つぎの関数の逆関数を求めよ。
(1) y =x− 1
x,
(2) y = x +√
x2 + 1
(3) y =12
log(
1 + x
1− x
), (−1 < x < 1)
[14] 関数 y = sin x/x ≡ f(x) のグラフを描きたい。以下の問いに答えよ。(1)f(x) は偶関数(f(−x) = f(x))であることを示せ。(2)0 < x < π
2 のとき成立する不等式 sinx < x < tanx を用いて、つぎの極限公式を示せ。
limx→0
sinx
x= 1
(3)不等式 ∣∣∣ sin x
x
∣∣∣ ≤∣∣∣ 1x
∣∣∣ を示せ。
5
(4)f(x) = 0 となる x の値を求めよ。(5)y = f(x) のグラフを描け。
[15](中間値の定理)関数 f(x) は閉区間 [a, b] において連続とするとき、f(a) < f(b)ならば f(a) < γ < f(b) を満たす任意の実数 γ に対して f(c) = γ となる c が、開区間(a, b) のなかに少なくとも1つある。この定理を以下に示す2分法によって証明しよう。[2分法](「区間縮小法」ともいう)
a0 ≡ a と b0 ≡ b の中点を c1 = (a0 + b0)/2 とし、f(c1) を調べる。このとき3つの場合があり得る。
(1) f(c1) = γ, (2) f(c1) > γ, (3) f(c1) < γ
(1)ならば c = c1 として、これで終了。そうでない場合、(2)ならば a1 = a0, b1 = c1 とし、(3)ならば a1 = c1, b1 = b0 とする。そして新しい区間 [a1, b1] に対して上と同じ操作、すなわち c2 = (a1 + b1)/2 として f(c2) を計算し、(1)- (3) のどれになっているかを調べて、新しい区間 [a2, b2] をつくる。これを繰り返すと、有限回の操作で f(cn) = γ となる cn が得られるか、または無限の操作が続いて2組の数列 an と bn が得られる。これらの数列の極限値が求める点 c である。最後のステップを以下の手順で示せ。
[1] a = a0 ≤ a1 ≤ · · · ≤ an ≤ bn ≤ · · · ≤ b1 ≤ b0 = b を示し、
2組の数列が極限値を持つことを示せ。
[2] bn − an =b− a
2n を示し lim
n→∞ an = limn→∞ bn を示せ。
[3] f(an) < γ < f(bn)を示し、関数 f(x)の連続性を用いて f(c) = γを示せ。
[16] 以下の問いに答えよ。(1)三角関数 sinx は実数領域 −∞ < x < ∞ において連続関数であることを示せ。
ヒント:不等式 | sinx| ≤ |x| を使う。(2)極限公式 limx→0(1+x)1/x = eを既知として、つぎの公式を示せ(a > 0とする)。
limx→0
loga(1 + x)x
= loga e, limx→0
x
ax − 1= loga e
[17] ε,K を正の定数とするとき、方程式 x− ε sinx = K は少なくとも1つの正根を持つことを示せ。ヒント: nπ > K であるような自然数 n を選んで、区間 [0, nπ] に中間値の定理を用いる。(注)この式は「ケプラー方程式」とよばれ、0 < ε < 1 のとき惑星の楕円運動を記述する(ε は離心率)。具体的には t を時間、T を公転周期としてK = 2πt/T の関係がある。また、変数 x と太陽からの距離 r は r = a(1− ε cos x) の関係で結ばれている。ここで a
は太陽からの平均距離(長半径)である:a = (rmax + rmin)/2。
[18] 方程式 tanx + x = 0 の解のうち、正で一番小さいものは π2 < x < π にあること
を示せ。ヒント:y = tan x と y = −x のグラフを描いてみよ。証明には、中間値の定理を使う。
6
4 微分法
[19] つぎの関数の微分を「微分の定義に従って」計算し、結果がベキ乗の微分公式でn をそれぞれ対応する値にしたものと一致することを確かめよ。
(1) f(x) = x3, (2) f(x) =1x2
, (3) f(x) =1√x
[20] つぎの関数の導関数(微分)を計算せよ。
(1) √
a2 − x2, (2) log(x2 + 1), (3) xe−x2, (4)
sinx
x
[21] 微分の諸性質を用いて、つぎの関数の微分(導関数)を求めよ。
(1) y = x3 − x, (2) y =1
1− x2, (3) y =
√1− x2, (4) y = (1 + x2)2
[22] つぎの関数の導関数を求め、そのグラフを描け。
(1) y =√
xe−x (x ≥ 0), (2) y = cos(2x) + 2 sinx (−π ≤ x ≤ π)
[23](1)つぎの等式を証明せよ。
1 + x + x2 + · · ·+ xn =1− xn+1
1− x
(2)(1)の両辺を微分して、つぎの等式を示せ。
1 + 2x + 3x2 + · · ·+ nxn−1 =1− (n + 1)xn + nxn+1
(1− x)2
(3)(2)の結果を用いて、つぎの級数の和を求めよ。
∞∑
n=1
n
an(a > 1)
[24] ド・ロピタルの定理
limx→a
f(x)− f(a)g(x)− g(a)
= limx→a
f ′(x)g′(x)
を使って、以下の極限を求めよ。
(1) limx→0
arctanx
x, (2) lim
x→0
x− sinx
x3, (3) lim
x→∞log x
x
[25] 関数 f(x) は a の近傍で2回微分可能で f”(x) は a において微分可能とするとき、以下を示せ。
limh→0
f(a + 3h)− 3f(a + 2h) + 3f(a + h)− f(a)h3
= f (3)(a)
ここで f (3) は3回微分をあらわす。
7
[26]媒質1と媒質2が平面を境に接しており、光が媒質1内の点Aから媒質2内のBまで進む。媒質1での光の速さを u1、媒質2での光の速さを u2 として、入射角を θ1 屈折角を θ2 とするとき、つぎの関係が成り立つことを示せ。
sin θ1
sin θ2=
u1
u2
ただし、光は媒質中を直進し、最短時間で到達する経路をとるものとする。また、光が媒質1内の点 Aを出て境界で反射し、媒質1内の点 Cに進むときは、入射角と反射角が等しくなることを示せ。
[27] つぎの関数の極大・極小を調べ、グラフの概略を描け。
(1) y = x2 1 + x
1− x, (2) y = x− 2 sin x (−π ≤ x ≤ π)
[28] 関数 f(x) が区間 I において「下に凸」であるとは、区間の任意の2点 a, b および p + q = 1 を満たす任意の2つの正数 p, q に対して
f(pa + qb) ≤ pf(a) + qf(b)
が成り立つことをいう。(1)n を n ≥ 2 なる任意の整数、x1, x2, · · · , xn を区間 I の任意の点、p1, p2, · · · , pn
を p1 + p2 + · · ·+ pn = 1 を満たす任意の正数とするとき、
f(p1x1 + p2x2 + · · ·+ pnxn) ≤ p1f(x1) + p2f(x2) + · · ·+ pnf(xn)
が成り立つことを示せ。(2)関数 f(x) = − log x が、区間 I = (0,∞) で下に凸であることを示し、それと
(1)の結果を用いて
xp11 xp2
2 · · ·xpnn ≤ p1x1 + p2x2 + · · ·+ pnxn
を示せ。ただし x1, x2, · · · , xn および p1, p2, · · · , pn は任意の正数で、p1 +p2 + · · ·+pn = 1を満たすものとする。
[29](合成関数の微分法の応用)(1)質量 m の物体が重力加速度 g のもとで落下運動するとき、力学的エネルギー
E =m
2
(dz
dt
)2
+ mgz
は時間に依らない(保存する)。この式の両辺を時間 t について微分し、得られる方程式を示せ。ここで z は鉛直上向きを正にとった位置座標(高さ)をあらわす。(2)同様にして、質量 m の物体がバネ定数 k のバネにつながれているとき、その伸びを x とすれば、力学的エネルギー
E =m
2
(dx
dt
)2
+k
2x2
8
は時間に依らず保存する。この場合はどんな運動方程式が得られるか。
[30] 任意の実数 x, y に対して f(x + y) = f(x)f(y) を満足する関数 f(x) は指数関数
f(x) = eax (aは定数)
である。いま f(x) = cos x + i sinx とするとき(i =√−1)以下を示せ。
(1)f(x + y) = f(x)f(y) を三角関数の加法公式を用いて示せ。(2)f(x) = cos x + i sinx = eax とおいて、両辺を微分することにより、係数 a を定めよ。(3)e3ix = (eix)3 を用いて cos 3x と sin 3x を cos x と sinx のベキであらわせ(3倍角の公式)。
[31] 次の関数をルジャンドルの多項式という。
Pn(x) =1
2nn!dn
dxn(x2 − 1)n, (n = 0, 1, 2, · · ·)
(1)P0(x), P1(x), P2(x) を直接計算で求めよ。(2)Pn(+1) = +1, Pn(−1) = (−1)n, (n = 0, 1, 2, · · ·) を示せ。
ヒント:n 階微分に関するライプニッツの公式(教科書 P.73の [3])を使う。(3)Pn(x) は区間 −1 < x < 1 に相異なる n 個の零点を持つことを以下の手順で示
せ。すなわち f(x) = (x2 − 1)n と置くとき
(a) f(+1) = f(−1) = 0ゆえ、「ロールの定理」から f ′(α) = 0となる
αが区間− 1 < α < 1に存在する。
(b) f ′(+1) = f ′(α) = f ′(−1) = 0ゆえ、再び「ロールの定理」から f ′′(x) = 0となる
β1, β2が区間− 1 < β1 < α < β2 < 1に存在する。
(c) 以上を n階微分 f (n)(x)まで繰り返す。
[32] 平均値の定理を f(x) = arctanx = tan−1 x に適用し、以下の不等式を示せ。
11 + b2
<tan−1 b− tan−1 a
b− a<
11 + a2
, (a < b)
[33] x2/3 + y2/3 = a2/3 (x, y, a > 0) の接線が両座標軸にはさまれる部分の長さは常に一定であることを示せ。
[34] 空気抵抗がある場合の質量 m の物体の落下運動は、速度 u を下向きが正にとったとき
mdu
dt= mg − ku
に従う。この運動方程式を以下のように解く。
9
まず加速度を平均加速度
du
dt→ u(t + h)− u(t)
h
で置き換える。(1)u(t + h) を u(t) によってあらわせ。ただし β = k/m とせよ。(2)得られた式を t = 0, h, 2h, · · · , nh, · · · としたときの u(t) = u(nh) = un に対する漸化式とみなし、それを解け。(3)最後に t = nh を一定に保って、n → ∞ 極限(h → 0)をとることにより u(t)
の表式を求めよ。ヒント:
limn→∞(1− βh)n = lim
n→∞(1− βt
n)n = e−βt
を用いる。(4)得られた u(t) が運動方程式を満たすことを確かめ、そのグラフの概形を描け。
[35] マクローリン展開
f(x) = a0 + a1x + a2x2 + · · · =
∞∑
n=0
anxn
において、係数の一般項 an に関する次の極限値 r を級数の収束半径という。
r = limn→∞
an
an+1, (ダランベールの公式)
領域 |x| < r で上の級数が収束するからである。次の関数のマクローリン展開を求め、その収束半径を調べよ。
(1) 1√
1− x, (2) log(1− x), (3)
sinx
x
5 積分法
[36] 次の不定積分が右辺で与えられることを、右辺を直接微分することによって確かめよ。
(1)∫
dx
x2 − 1=
12
log∣∣∣∣x− 1x + 1
∣∣∣∣ + C, (2) ∫
log xdx = x log x− x + C,
(3)∫
dx√x2 + 1
= log(x +√
x2 + 1) + C, (4) ∫
tanxdx = − log | cos x|+ C
置換積分・部分積分・部分分数分解などの積分技法のうち、どれを使えば右辺が得られるか、について考えてみよ。
[37] S(x) = eax sin(bx), C(x) = eax cos(bx) と置く。
10
(1)微分を実行して、以下のことを示せ。
S′(x) = aeax sin(bx) + beax cos(bx), C ′(x) = aeax cos(bx)− beax sin(bx)
(2)上式を eax sin(bx) と eax cos(bx) について連立させて解き、以下を示せ。
eax sin(bx) =aS′ − bC ′
a2 + b2, eax cos(bx) =
bS′ + aC ′
a2 + b2
(3)以上から次の不定積分公式を導け。∫
eax sin(bx)dx =eax
a2 + b2(a sin(bx)− b cos(bx)) +積分定数,
∫eax cos(bx)dx =
eax
a2 + b2(b sin(bx) + a cos(bx)) +積分定数
[38] 次の定積分を計算せよ。
(1)∫ 2
1log xdx, (2)
∫ 1
0
√1− x
xdx, (3)
∫ π/2
0x2 sinxdx, (4)
∫ ∞
0
dx
(1 + x2)3/2
[39] マクローリン級数展開の両辺を定積分することによって、いろいろな「級数和の公式」をつくることができる。次の級数展開の区間 0 ≤ x ≤ 1 積分から得られる級数和の公式はどんなものか?
(1)1
1 + x= 1− x + x2 − x3 + · · · , (|x| < 1)
(2)1
1 + x2= 1− x2 + x4 − x6 + · · · , (|x| < 1)
(3)1√
1− x2= 1 +
12x2 +
1 · 32 · 4x4 +
1 · 3 · 52 · 4 · 6x6 + · · · , (|x| < 1)
[40] 積分公式(n = 1, 2, 3, · · ·)
In(a) =∫ ∞
−∞dx
(a + x2)n+1=
(2n− 1)!!(2n)!!
π
an+1/2, (a > 0)
を以下の2通りの方法で導け。(1)置換 x =
√a tan θ によって、定積分
∫ π/2
0cos2n θdθ =
(2n− 1)!!(2n)!!
π
2
に帰着させる。(2)定積分
I0(a) =∫ ∞
−∞dx
a + x2=
π√a
をパラメータ a に関して n 回微分する。
11
[41](フーリエ級数展開)(1)以下の積分公式を示せ(m,n = 1, 2, 3, · · ·)。ここで記号 δmn はクロネッカーの
デルタとよばれ、δmn = 1(m = nのとき),= 0(m 6= nのとき) をあらわす。∫ π
−πcos(mx) cos(nx)dx = πδmn,
∫ π
−πsin(mx) sin(nx)dx = πδmn,
∫ π
−πsin(mx) cos(nx)dx = 0
(2)区間 −π ≤ x ≤ π で定義された関数を、区間外へ周期的に拡張した関数を f(x)とし
f(x) =a0
2+
∞∑
n=1
(an cos(nx) + bn sin(nx))
と展開されるとする:これをフーリエ級数展開という。両辺に 1, cos(mx), sin(mx) をかけて −π ≤ x ≤ π で積分することによって、以下を示せ。
a0 =1π
∫ π
−πf(x)dx, am =
1π
∫ π
−πf(x) cos(mx)dx, bm =
1π
∫ π
−πf(x) sin(mx)dx
(3)f(x) = |x| (−π ≤ x ≤ π) のフーリエ級数展開を求めよ。
[42] 2次関数 f(x) = x(π − x) がサイン関数によって
x(π − x) =∞∑
n=1
Cn sin(nx), (0 ≤ x ≤ π)
と級数展開できるとする。(1)両辺に sin(mx) をかけ、区間 [0, π] の範囲で積分することによって、係数 Cm を求めよ。(2)(1)の結果を確かめるため、 x = π/2 を代入し、展開項としてゼロでない最初の3項をとり、両辺を比較せよ。(3)定積分
∫ π
0(x(π − x))2dx
を計算し、これを(1)の展開式を使い係数 Cn によってあらわせ。参考:岩波『数学公式2』P.41
π6
960=
∞∑
n=1
1(2n− 1)6
= 1 +136
+156
+ · · ·
[43] サイクロイド
x = t− sin t, y = 1− cos t, (0 ≤ t ≤ 2π)
12
の弧長 L および軸との間で囲む面積 S を計算せよ。ヒント:以下の公式を用いる。
L =∫ √
dx2 + dy2 =∫ √(
dx
dt
)2
+(
dy
dt
)2
dt,
S =∫
ydx =∫
ydx
dtdt
[44](1)つぎの定積分を cos θ = t と置換して実行せよ。ただし、結果は a と b の大小関係に注意し、2つの場合(a > b, a < b)に分けて求めよ。
∫ π
0
sin θdθ√a2 − 2ab cos θ + b2
(2)原点Oに中心を置く半径 a の球面を考える。z 軸とこの球面との交点をNとし、球面上の点でその天頂角が θ のものをQ(∠ NOQ= θ)とする。z 軸上の点 Pの座標を(0, 0, r) とするときQP間の距離 d(r, a, θ) を求めよ。(3)天頂角が θ と θ + dθ の間にある球面上の図形の面積 dS を求めよ。(4)球面上に一様な電荷分布(あるいは質量分布)σ があるとき、z 軸上の点 Pにおける電位(あるいは万有引力ポテンシャル)V (r, a) は
V (r, a) = k
∫σdS
d(r, a, θ), (kは定数)
となる。この積分を計算し、結果を r の関数として図示せよ。(5)半径 R の球内に一様な電荷分布 ρ がある場合には、球を厚さ da の球殻に分け
て考えるとよい。各部分(半径 aa + da)が点 Pに及ぼす電位は、前問の結果を σ = ρda
として用い、これを a について [0, R] の区間で積分すれば、球全体が点 Pに及ぼす電位U(r,R) が求められる。r > R と r < R の場合に分けて計算し、結果を r の関数として図示せよ。
[45](1)つぎの定積分を R = r2 と置換し、実行せよ。∫ a
0
rdr
(r2 + b2)3/2
(2)原点Oに中心を持ち、x− y 平面上に位置する半径 a の円盤に一様な電荷(あるいは質量)が分布している。z 軸上の点 P (0, 0, b) における電場(あるいは単位質量に働く力)を、以下の手順 [A][B] に従って求めよ。
[A] 円盤上の半径が r と r + dr の円環部分の電荷分布(面密度を σ とする)が点 Pに及ぼす電場は、対称性から水平部分は消え、z 成分だけが残ることを考えて求めよ。ただし、電荷 q が円盤上の中心から r の位置にあるとき、点 P (0, 0, b) における電場の z 成分は
Ez = kqb
(r2 + b2)3/2
となることを用いよ。
13
[B] 上の結果を r について積分し、点 P (0, 0, b) における電場を求めよ。
(3)z 軸上の点 P (0, 0, b) を中心とし、x − y 平面に平行に半径 a の円盤 S を置く。これを底面とし、原点Oを頂点とする円錐を考える。この円錐の錘面が原点Oを中心とする半径1の単位球面から切り取る面積を点 Oが Sを見る「立体角」という。天頂角がθθ + dθ の範囲にある単位球面上の面積は dΩ = 2π sin θdθ であることから、これを積分することにより、上の立体角 Ω
Ω = 2π
∫ θ0
0sin θdθ, (cos θ0 =
b√a2 + b2
)
を計算し、(2)の結果を Ω を用いてあらわせ。(4)(3)の円盤 Sを底面とする z 軸方向に半無限にのびた円筒を考える。原点Oに電荷 σ があるとき、この円筒の側面上の点 (x, y, z) における電場の側面に垂直な成分は
En(z) = kσ
(z2 + a2)a√
z2 + a2=
kσa
(z2 + a2)3/2
となる。z ∼ z + dz の範囲内の円筒の側面積を考慮し、この和をとると∫ ∞
bEn(z)2πadz = kσ(2πa2)
∫ ∞
b
dz
(z2 + a2)3/2
が得られる。この積分を z = a tan θ と置換して求めよ。また、この結果が(2)と同じになる理由を述べよ。
6 偏微分
[46] つぎの関数 f(x, y) の偏微分(偏導関数) fxx, fxy, fyy を計算せよ。
(1) f(x, y) =√
x2 + y2, (2) f(x, y) = arctan(
y
x
)≡ tan−1
(y
x
)
[47](ルジャンドル多項式)関数 u(x, y) = 1/
√1− 2xy + y2 (|x| ≤ 1) とするとき、以下の問いに答えよ。
(1)関数 u(x, y) が次の偏微分方程式を満たすことを示せ。
∂
∂x
((1− x2)
∂u
∂x
)+
∂
∂y
(y2 ∂u
∂y
)= 0
(2)u(x, y) =∑∞
n=0 Pn(x)yn とおくとき、 Pn(x) は以下の微分方程式を満たすことを示せ。
d
dx
((1− x2)
dPn
dx
)+ n(n + 1)Pn = 0
u(x, y) をルジャンドル多項式の母関数(ぼかんすう)という。(3)Pn(1) = 1, Pn(−1) = (−1)n となることを示せ。
14
[48]原点Oに中心をもつ半径 aの球内に一様な電荷分布 ρがある。これが点P (x, y, z)に及ぼす電位 V (x, y, z) は
V (x, y, z) = kq1r
(r > a), = kq3a2 − r2
2a3(r < a)
とあらわされる。ここで、q = 4πρa3/3, r =√
x2 + y2 + z2 である。以下の問いに答えよ。(1)点 Pにおける電場を求めよ。ここで、電場 E = (Ex, Ey, Ez) の各成分は電位
V (x, y, z) の偏微分
Ex = −∂V
∂x, Ey = −∂V
∂y, Ez = −∂V
∂z
によって与えられる。また、とくに V が r だけの関数の場合、偏微分は
∂
∂xV (r) =
∂r
∂x
dV
dr
のように計算するとよい。(2)球の内部の電場の大きさ E(r) =
√E2
x + E2y + E2
z を r を横軸にとって図示せよ。(3)電場の発散(ダイバージェンス)とよばれる量
divE =∂Ex
∂x+
∂Ey
∂y+
∂Ez
∂z
を計算し、これが定数倍を除いて電荷密度に等しいことを確かめよ。
[49] 2次元平面上の点 P (x, y) の位置は原点Oからの距離 r と線分OPが x 軸となす角 φ によってあらわすこともできる。これを2次元極座標とよぶ。x, y を r, φ によってあらわせば、0 ≤ r < ∞, 0 ≤ φ < 2π として
x = r cos φ, y = r sinφ
となる。(1)つぎの偏微分を計算せよ。
∂x
∂r,
∂y
∂r,
∂x
∂φ,
∂y
∂φ
(2)逆に、r, φ を x, y によってあらわせば
r =√
x2 + y2, φ = arctan(
y
x
)≡ tan−1
(y
x
)
となる。つぎの偏微分を計算せよ。ただし、結果は極座標であらわせ。
∂r
∂x,
∂φ
∂x,
∂r
∂y,
∂φ
∂y
(3)つぎの行列の積を計算せよ。(
∂x∂r
∂y∂r
∂x∂φ
∂y∂φ
)·(
∂r∂x
∂φ∂x
∂r∂y
∂φ∂y
)
15
7 多重積分
[50] 式 x21 + x2 + · · ·+ x2
n = r2 であらわされる超曲面を、半径 r の n 次元球という。この球の表面積は、次元の考察から Sn を n に依存した定数として Snrn−1となる。多重積分
I =∫· · ·
∫e−(x2
1+···+x2n)dx1 · · · dxn, (積分領域は全空間)
を以下の2通りに計算し、結果を等値することによって、Sn が
Sn =2πn/2
Γ(n/2)
で与えられることを示せ。また、n = 2, 3の場合を計算して既知の結果(S2 = 2π, S3 = 4π)と一致することを確かめよ。(1)ガウス積分の n 乗として計算する。(2)n 次元極座標へ移り、球対称性から dx1 · · · dxn = Snrn−1dr を用いて計算する。
(注)ガンマ関数は
Γ(s) =∫ ∞
0xs−1e−xdx, (s > 0)
で定義され、漸化式 Γ(s + 1) = sΓ(s), Γ(1) = 1, Γ(1/2) =√
π を満たす。
16
基礎数理演習 演習問題 (数学篇)
1. 平面・空間のベクトル、内積と外積
2. 数ベクトル、一次独立と一次従属
3. 行列
4. 線形写像
5. 連立一次方程式
6. 行列式
7. 固有値と固有ベクトル
17
1 平面・空間のベクトル、内積と外積
[1] 平面上の点 A (a1, a2)、点 B (b1, b2) および原点 O (0, 0) を頂点とする三角形を考える。(1)三角形の3辺OA、OB、ABの長さをそれぞれ a, b, c とする。これらを a1, a2 および b1, b2 であらわせ。(2)∠AOB= θ とするとき、cos θ を a, b, c によってあらわせ(余弦定理)。(3)(1)を(2)に代入し、cos θ を a1, a2 および b1, b2 を用いてあらわせ。(4)空間内の点A (a1, a2, a3)、B (b1, b2, b3) および原点O (0, 0, 0) の場合に、(1)-(3)と同じことを行え。
[2] ピラミッド型立体は正方形 ABCDを底面とし、頂点 Pを共有する4つの正三角形の錐面からなる。AB、BC、CD、DAの中点をそれぞれK、L、M、Nとし、∠PAC= α、∠ PKM= β とするとき、cos α および cos β を求めよ。
[3] 3次元空間のベクトル a = (a1, a2, a3),b = (b1, b2, b3) に対して、そのベクトル積(あるいは外積) a× b とは
a× b = (a2b3 − a3b2, a3b1 − a1b3, a1b2 − a2b1)
なるベクトルのことをいう。以下の問いに答えよ。(1)a× b = −b× a を確かめよ。(2)ベクトル積 a×bは a,bに直交すること、すなわち a · (a×b) = 0,b · (a×b) = 0を確かめよ。(3)関係式
|a · b|2 + |a× b|2 = |a|2|b|2
が成り立つことを示せ。したがって、ベクトル積の大きさは両ベクトルの大きさの積になす角度のサインを掛けたものに等しい:|a× b| = |a||b| sin θ。(4)次の等式を確かめよ。
(a× b)× c = (a · c)b− (b · c)a
2 数ベクトル、一次独立と一次従属
[4] 次の3つのベクトルを a,b, c とするとき、以下の問いに答えよ。
a = −→OA = (1, 1, 0), b = −→OB = (0, 1, 1), c = −→OC = (1, 0, 1)
(1)これらが1次独立であること(`a + mb + nc = 0 ならば ` = m = n = 0 となる)を示せ。(2)任意のベクトル r = −→OR = (x, y, z) が a,b, c の1次結合であらわされることを
示せ(r = `a + mb + nc となるような `,m, n を求める)。
18
(3)原点 (0, 0, 0) とこれら3つのベクトルの先端 A,B,C によって作られる3角錐OABC の体積を計算せよ。
[5] (1)つぎの3つのベクトルは互いに一次独立であることを示せ。
a1 =
211
, a2 =
−10−1
, a3 =
112
(2)ベクトル a,b, cが一次独立であるとき、つぎのx,y, zは一次独立か、一次従属か?
x = a + b− 2c, y = a− b− c, z = a + c
(3)つぎのベクトルが一次従属となるような k の値を求めよ。また、そのときの a,b, cの関係を求めよ。
a =
−123
, b =
0−33
, c =
1−1k
[6] 次の3つのベクトルを a,b, c とするとき、以下の問いに答えよ。
a = −→OA = (1,−1, 0), b = −→OB = (0, 1,−1), c = −→OC = (−1, 0, 1)
(1)これらが1次従属であること(`a + mb + nc = 0 を満たす ` = m = n = 0 でない解が存在)を示せ。(2)3つのベクトル a,b, c の1次結合であらわせないようなベクトルをひとつ見つ
けよ。そういうベクトルは、一般にどう特徴づけられるか。(3)4つの点 O,A,B,C は幾何学的にどんな位置関係にあるか。
[7] ベクトル a,b, c および d が、以下のように与えられているとする。
a =
131
, b =
−112
, c =
143
, d =
211
つぎの式を満たす x, y, z を求めよ。
xa + yb + zc = d
(2)一般に、ベクトル a,b, c のベクトル積(外積)を用いて、以下のように定義されるベクトルを「双対ベクトル」という。
a =1V
(b× c), b =1V
(c× a), c =1V
(a× b)
ここで
V = (a× b) · c = (b× c) · a = (c× a) · b
19
はベクトル a,b, c でつくられる平行六面体の体積になっている。このとき、以下の性質が成り立つことを示せ。
a · a = 1, a · b = 0, a · c = 0,
b · a = 0, b · b = 1, b · c = 0,
c · a = 0, c · b = 0, c · c = 1,
これを行列記号であらわせば
A = (a,b, c) =
a1 b1 c1
a2 b2 c2
a3 b3 c3
, B =
at
bt
ct
=
a1 a2 a3
b1 b2 b3
c1 c2 c3
として BA = E と書けることを意味する(すなわち B は A の逆行列)。ここで記号 t は「転置」、すなわち列ベクトルを行ベクトルに変える(あるいはその逆)ことを意味する。この記号は行列の場合にもよく用いられる。(3)(1)で与えられた a,b, c の場合に、行列 B を計算して求めよ。(4)(2)の結果を使えば(1)の解 x, y, z を成分とするベクトル r = (x, y, z)t は
r = Bd
となることを証明し、それを実際に確かめよ。
3 行列
[8] 次の3つの行列の組み
σ1 =
(0 11 0
), σ2 =
(0 −i
i 0
), σ3 =
(1 00 −1
)
をパウリ行列という(i =√−1)。以下の問いに答えよ。
(1)σ21 = σ2
2 = σ23 = 1 を示せ。ここで単位行列を簡単のため 1 と記した。
(2)σ1σ2 および σ2σ1 を計算して、結果を σ3 を用いてあらわせ。(3)同様に σ2σ3 および σ3σ2 を計算して、結果を σ1 を用いてあらわせ。(4)最後に σ3σ1 および σ1σ3 を計算して、結果を σ2 を用いてあらわせ。
[9] 2次元のベクトル r を r′ に移す変換 r′ = Ar(
x′
y′
)=
(a b
c d
) (x
y
)
において、ベクトルの長さを変えない(|r′| = |r|、すなわち x′2 + y′2 = x2 + y2)変換行列をとくに直交行列(orthogonal matrix)という。以下の問いに答えよ。(1)行列 A が直交行列となるための、要素 a, b, c, d に対する条件を求めよ。
20
(2)a = cos θ, d = cos θ′ と置くとき、(1)の条件を満たす b, c を求めよ。また θ, θ′
の関係はどうなるか。(3)結局この場合の直交行列とは、幾何学的にどんな変換になっているか。
[10](1)2行2列の行列 A に対して、その行列式 detA ≡ |A| とは
detA =
∣∣∣∣∣a b
c d
∣∣∣∣∣ = ad− bc
なる数として定義される。等式 det(AA′) = detA · detA′ すなわち |AA′| = |A| · |A′| が成り立つことを
A =
(a b
c d
), A′ =
(a′ b′
c′ d′
)
として、行列の乗算を直接計算することによって確かめよ。(2)次の6つの行列について、それぞれの行列式を計算してみよ。
A1 =
(1 00 1
), A2 =
(1 −10 −1
), A3 =
(0 −11 −1
),
A4 =
(0 11 0
), A5 =
(−1 1−1 0
), A6 =
(−1 0−1 1
)
(3)前問の6つの行列の任意の2つ Ai, Aj の乗算 AiAj の結果は、再びこれら6つのうちの1つ Ak に一致する。乗算の結果を、縦に i 横に j を並べ、交点に結果の数字 k
を書くことによってあらわせ:これを乗積表という。
4 線形写像
[11](1)平面上の点Aを y = x に関して対称な位置に移す鏡映操作を σ とし、原点のまわりの角度 θ の回転操作を Rθ とする。σ と Rθ を行列によってあらわすと
σ =
(0 11 0
), Rθ =
(cos θ − sin θ
sin θ cos θ
)
となる。つぎのような変換を引き続いて行った結果を順を追って平面上に図示し、(
x
y
)σ→
(x1
y1
)Rθ→
(x2
y2
)σ→
(x′
y′
)
最終結果と、それを行列の積 σRθσ によってあらわした結果とを比較せよ。(2)空間ベクトル a を z 軸のまわりに角度 θ 回転した a′ は、回転行列 Rz(θ) を
Rz(θ) =
cos θ − sin θ 0sin θ cos θ 0
0 0 1
21
とすれば
a′1a′2a′3
= Rz(θ)
a1
a2
a3
と計算される。ベクトルの内積は回転に関して不変であること、すなわち
a′ · b′ = (Rz(θ)a) · (Rz(θ)b) = a · b
を確かめよ。(3)空間ベクトルのベクトル積(外積)は
a× b =
a2b3 − a3b2
a3b1 − a1b3
a1b2 − a2b1
と定義されている。ベクトル積は回転に対して、ベクトルの変換をすること、すなわち
a′ × b′ = (Rz(θ)a)× (Rz(θ)b) = Rz(θ)(a× b)
を示せ。
[12](1)2行2列の行列 A に対して1次分数関数 f(x) を
A =
(a b
c d
)→ f(x) =
ax + b
cx + d
によって導入する。このとき行列の積 AA′ が、関数の合成 (f f ′)(x) ≡ f(f ′(x)) に対応することを示せ。また問題 [10](2)の行列 A1, · · · , A6 に対応する
f1(x) = x, f2(x) = 1− x, f3(x) =1
1− x,
f4(x) =1x
, f5(x) =x− 1
x, f6(x) =
x
x− 1
について関数を合成した結果の表を作り、問題 [10]の乗積表と一致することを確かめよ。(2)3文字< 1, 2, 3 >の置換(全部で 3!=6個)
σ1 =
(1 2 31 2 3
), σ2 =
(1 2 31 3 2
), σ3 =
(1 2 32 3 1
),
σ4 =
(1 2 32 1 3
), σ5 =
(1 2 33 1 2
), σ6 =
(1 2 33 2 1
)
について乗積表を作ってみよ。例えば
σ2σ3 =
(1 2 31 3 2
) (1 2 32 3 1
)=
(1 2 33 2 1
)= σ6
22
などとなる。結果はまたしても前問の乗積表に一致し、行列式の値 ±1 は置換の偶奇に対応していることを確かめよ。
[13](1)2次式 f(x) = a0 + a1x + a2x2 に対して、積分
g(x) =∫ 1
−1(x− t)2f(t)dt
で決まる 2次式を g(x) = b0 + b1x + b2x2 とする。b0, b1, b2 を a0, a1, a2 であらわせ。こ
の関係を行列の形 b = Sa にあらわし、3行 3列の行列 S を求めよ。(2)逆に a0, a1, a2 を b0, b1, b2 であらわし、a = S−1b となる逆行列 S−1 を求めよ。
[14](1)2次式 f(x) = a0 + a1x + a2x2 に対して、微分
g(x) = ex d
dx
(e−xf(x)
)
で決まる 2次式を g(x) = b0 + b1x + b2x2 とする。b0, b1, b2 を a0, a1, a2 であらわせ。こ
の関係を行列の形 b = Ba にあらわし、3行 3列の行列 B を求めよ。(2)逆に a0, a1, a2 を b0, b1, b2 であらわし、a = B−1b となる逆行列 B−1 を求めよ。
[15](1)3次元空間において、点 r0 = (x0, y0, z0) を通り、ベクトル n = (a, b, c) に直交する平面の式は
n · (r− r0) = 0, ↔ a(x− x0) + b(y − y0) + c(z − z0) = 0
で与えられることを示せ。(2)ベクトル n が与えられているとき、任意のベクトル r を n の方向に正射影したベクトルは
(r · n)(n · n)
n
と表されることを示せ。この写像を P (r) と書くことにすれば、正射影は2度やっても同じであるから、P 2 = P が成り立つ。この関係を上式によって、直接確かめよ(3)ベクトル n が与えられているとき、任意のベクトル r を n に垂直な平面に関して鏡映したベクトルは
r− 2(r · n)(n · n)
n
と表されることを示せ。この写像(ワイル変換という)を W (r) と書くことにすれば、W = 1−2P の関係にある。このとき、幾何学的(作図的)には当然成り立つ性質 W 2 = 1を計算によって確かめよ。
23
5 連立一次方程式
[16] つぎの連立方程式を解け。
(1)2x + y = 2
x + 2y + z = 3y + 2z = 2
(2)−x + y + z = a
x− y + z = b
x + y − z = c
[17](1)つぎの行列を基本変形せよ。
1 2 3 4 a
2 3 4 5 b
3 4 5 6 c
4 5 6 7 d
(2)上の行列を
A =
1 2 3 42 3 4 53 4 5 64 5 6 7
, x =
w
x
y
z
, b =
a
b
c
d
としたときの連立方程式
Ax = b
の拡大係数行列と考え、解が存在するのは b がどのような場合かを調べよ。(3)とくに、b = 0 としたときの解 x を求めよ。
[18] つぎのベクトルの中から一次独立なものを選び出し、その最大個数を求めよ。
a1 =
2031
, a2 =
521−4
, a3 =
−4−4711
, a4 =
61−2−3
, a5 =
7−164
[19] つぎのそれぞれの行列 A に対して、連立方程式 Ax = 0 の解を必要な数だけのパラメータを用いてあらわし、解空間の次元を求めよ。
(1) A =
1 −4 11 −3 40 2 −4 1 −12 5 −4 6 73 1 7 −2 6
,
(2) A =
3 2 50 −1 −41 −2 a
−2 1 b
24
6 行列式
[20] つぎの行列式を計算せよ。
(1)
∣∣∣∣∣∣∣
2 −1 0−1 2 −10 −1 2
∣∣∣∣∣∣∣, (2)
∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣
0 −2 1 0−2 2 0 11 0 2 −20 1 −2 0
∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣
[21] 2次の行列式 |a,b| の列ベクトル a,b を
a =
(a1
a2
)=
(a cos α
a sinα
), b =
(b1
b2
)=
(b cos β
b sinβ
)
のように極座標表示し
|a,b| =∣∣∣∣∣
a cos α b cos β
a sinα b sinβ
∣∣∣∣∣
として計算すると、結果は a と b でつくられる平行四辺形の面積となることを確かめよ。(2)上の結果から
|a,b| = |a,b + λa| = |a + µb,b|が成り立つことを、作図によって示せ。
[22](1)3次の行列式 |a,b, c| について、性質「どれか2つの列ベクトルが等しい場合、行列式は0となる」(例えば、 |a,b,b| = 0)を用いて
|a, c,b| = −|a,b, c|が成り立つことを示せ。これは列ベクトルを交換すると行列式の符号が変わることを意味する。(2)上の行列式の性質は、行についても成り立つ(2つの行を入れ換えると符号が変わる)ことを示せ。
[23]4次の置換について「辞書式数え上げ」の方法によって24個の置換全てを求め、それらを互換の積に分解せよ。例として始めの4つを以下に示してある。残りの20個について調べよ。
P1 =
(1 2 3 41 2 3 4
),
P2 =
(1 2 3 41 2 4 3
)= (34),
P3 =
(1 2 3 41 3 2 4
)= (23),
P4 =
(1 2 3 41 3 4 2
)= (34) · (23),
25
(2)4次の正方行列 A = (a1,a2,a3,a4) の行列式 |A| は、前問で求めた全ての置換P についての和の形で
|A| =∑
P
sgnP · ap11ap22ap33ap44
と定義される。定義式と置換の性質を使って、以下の線形性と交代性を示せ。
(1) 線形性1 |a1 + b1,a2,a3,a4| = |a1,a2,a3,a4|+ |b1,a2,a3,a4|,(2) 線形性2 |ka1,a2,a3,a4| = k|a1,a2,a3,a4|,(3) 交代性 |a2,a1,a3,a4| = (−1) · |a1,a2,a3,a4|
7 固有値と固有ベクトル
[24] つぎの行列の固有値、固有ベクトルを求めよ。
(1)
0 1 11 1 01 0 1
, (2)
2 −1 −1−1 2 −1−1 −1 2
[25] つぎの連立微分方程式を以下の手順によって解け。
d
dt
x1
x2
x3
=
1 2 03 −1 −3−1 2 −2
x1
x2
x3
すなわち
dxdt
= Ax
(1)右辺の係数行列 A を対角化して、固有値 λ1, λ2, λ3 およびつぎのような行列 P
を求めよ。
P−1AP =
λ1 0 00 λ2 00 0 λ3
これは P = (p1,p2,p3) として
Apj = λjpj , (j = 1, 2, 3)
を意味している。すなわち λj ,pj は A の固有値、固有ベクトルである。(2)x = Py を微分方程式に代入し、(1)の結果を用いて変形すれば
Pdydt
= APy → d
dt
y1
y2
y3
=
λ1 0 00 λ2 00 0 λ3
y1
y2
y3
を得る。これを解いて x = Py とすれば、問題の連立微分方程式の解が求まる。
26
[26] つぎの行列 A の固有値を λ1, λ2, λ3 とするとき、和∑3
j=1 λj、および2乗の和∑3j=1 λ2
j を求めよ。
A =
2 −1 −3−1 1 2−3 2 3
27
基礎数理演習 演習問題 (物理篇)
1. 運動方程式を解く
2. 重力場と電磁場
3. 振動
4. 波動
5. 波動の諸性質、ドップラー効果
28
1 運動方程式を解く
[1] バネ (単振動)の運動方程式
md2x
dt2= −kx, → d2x
dt2= −ω2x, (ω2 =
k
m)
について、以下の問いに答えよ。(1)上記の2階常微分方程式の一般解が、A,B を任意定数として x(t) = A cos(ωt) +
B sin(ωt) で与えられることを、微分を実行して確かめよ。(2)初期条件を x(0) = x0, x(0) = v0 とするとき、A,B を求めよ。(3)周期 T を求めよ。
(4)力学的エネルギー(=運動エネルギー+弾性エネルギー)
E =m
2
(dx
dt
)2
+k
2x2
が保存する dE/dt = 0 ことを、上式を直接 t 微分して確かめよ。
[2] 鉛直につるしたバネの運動方程式は、鉛直下向きに変位を選べば
md2x
dt2= −kx + mg
と書かれる。
d2x
dt2= − k
m
(x− mg
k
)
と変形し、y = x−mg/k とおくことによって、これを解け。
[3](終端速度)速度 v に比例した抵抗力を受けながら落下する質量 m の粒子に対する運動方程式は
mdv
dt= −kv + mg
で与えられる。(1)初期条件を v(0) = v0 として、この微分方程式を解け。(2)limt→∞v(t) を求めよ。これを終端速度という。
[4](減衰振動)速度に比例した抵抗力を受けたバネの運動方程式は
d2x
dt2= −ω2x− 2γ
dx
dt
で与えられる。この微分方程式の解を x = eαt の形に仮定して、パラメータ α を決定し、一般解を求めよ。抵抗が小さい場合(0 < γ < ω)と、大きい場合(ω < γ)の2つについて、解の時間依存性を調べよ。
29
2 重力場と電磁場
[5] (1)地表の大気圧は地上のはるか大気最上部まで続く空気の重さに等しい。地表の大気圧を 1.01× 105[Pa = N/m2]、空気の密度を ρa = 1.21[kg/m3] としたとき、大気層の厚さは何メートルとなるか。ヒント:p = ρagh である。(2)圧力をこのように考えると、地球の中心における圧力は、地表から中心までの深さをもち、単位底面積の円筒部分の地球の重さに等しい。地球の平均密度を ρE = 5.5 ×103[kg/m3] とし、地球の半径を RE = 6.4 × 106[m] として、地球の中心における圧力を求めよ。ただし、地球の中心からの距離 r における重力加速度は、半径 r の球による万有引力から計算されることに注意せよ。ヒント:g = GME/R2
E , g(r) = GM(r)/r2。(3)前問において、地球の自転の効果を考慮すると、中心から極点方向の線上の圧力変化と、中心から赤道方向の線上の圧力変化とを比べると、どのように異なるか?また、地球の中心における圧力は同一であるから、地球の極点方向の半径と赤道方向の半径は異なることになる。どれほどの差があることになるか。
[6] (1)地球の表面近くを周回する人工衛星にはたらく中心力 F は重力加速度 g と地球の半径 R を用いて
F = −mgRR
, R = (x, y), R =√
x2 + y2
とあらわされる。この人工衛星に対する運動方程式を書け。ただし、運動は xy 平面内で起きるとする。(2)地球の北極から南極までまっすぐなトンネルを掘る。地球の密度を一定とすれば、中心からの位置の物体(質量 m)にはたらく力は
F = −mgy
R, (−R ≤ y ≤ R)
となることを示せ。また、北極からこの物体をそっと落としたとき、戻ってくるまでの時間(周期)はいくらか?
[7] 質量 m、電荷 q の粒子が、静電場 E = (E0, 0, 0)、静磁場B = (0, 0, B0) の下にあるとき、その xy 平面内の運動方程式は、速度ベクトルを v = (u, v, 0) とするとき
mdu
dt= qE0 + qvB0, m
dv
dt= −quB0
で与えられる(ローレンツの力)。これを初期条件 u(0) = v(0) = 0 の下で解け。
[8] 前問の結果を再度 t 積分して(x = u, y = v である)、粒子の位置 (x, y) を求めよ。ただし、初期条件は x(0) = y(0) = 0 とする。
30
3 振動
[9](強制振動)時間的に振動する外力を受けたバネの運動方程式は
md2x
dt2+ mω2x = F sin(Ωt)
で与えられる。ここで Ω 6= ω としておく。以下の問いに答えよ。(1)特別解を x = A sin(Ωt) の形に仮定するとき、係数 A を求めよ。
Ω → ω のとき、振幅 A が発散することがわかるであろう。これを共鳴(レゾナンス)という。(2)一般解は(1)で求めた特別解に、外力がないときの一般解を加えたもので与えられることを確かめよ。(3)運動エネルギーおよびポテンシャルエネルギーの和を計算し、それと外力が成した仕事 W (t) とを比較せよ。
W (t) =∫ t
0F sin(Ωt)
dx
dtdt (1)
(4)速度に比例した抵抗力もある場合の方程式
d2x
dt2+ 2γ
dx
dt+ ω2x = F sin(Ωt)
の特別解を x = A sin(Ωt) + B cos(Ωt) の形に仮定して、係数 A,B を求めよ。
[10]質量(m)の等しい2つの粒子がバネ定数 k の3つのバネで数珠つなぎに結ばれ、両端は壁に固定されている。それぞれの粒子の平衡点からのずれを x, y とすると、運動方程式は
mx = −2kx + ky,
my = kx− 2ky
となる。以後 ω2 = k/m として、以下の問いに答えよ。(1)x = aeiλt, y = beiλt を代入すると、固有振動数 λ のモード (a, b) に対して
(2ω2 − λ2 −ω2
−ω2 2ω2 − λ2
) (a
b
)=
(00
)
という同次方程式が得られることを示せ。(2)よって、自明でない解(a, b 6= 0)を持つための条件から、固有振動数(正確には角振動数)λ を求めよ。(3)固有振動数 λ は、符号を除き2つの解 λ± がある。これらを求め、それぞれの振動数に対応するモード (a, b) を求めよ。具体的には比 a/b を計算すると良い。
31
[11]質量(m)の等しい3つの粒子がバネ定数 k の4つのバネで数珠つなぎに結ばれ、両端は壁に固定されている。それぞれの粒子の平衡点からのずれを x, y, z とすると、運動方程式は
mx = −2kx + ky,
my = kx− 2ky + kz
mz = ky − 2kz
となることを示せ。問題 [10]に倣い、固有振動数 λ 3つとそれぞれのモードを求めよ。
[12]固体中では原子が結晶格子を組んで規則正しく並んでいる。いま原子間隔 a の1次元格子の運動を考えよう。原子質量を M とし、原子間力は最近接原子との間に「線形バネ」と類似の力が働くとすれば、n 番目の原子の平衡位置からの変位 un(t) の従う運動方程式は
Md2un
dt2= K(un+1 + un−1 − 2un), (n =整数)
となる(K はバネ定数)。解として un(t) = uei(kna−ωt)(u =定数)の形を仮定して、角振動数 ω の波数 k 依存性(分散関係)を決定せよ。また k が小さいときには ω = sk と近似できることを示し、音速 s を求めよ。
4 波動
[13](正弦波)(1)三角関数 U(x, t) = A sin(kx− ωt + δ) であらわされる波が、波動方程式
∂2U
∂t2− c2 ∂2U
∂x2= 0,
を満たすことを確かめよ (ω = c|k|)。A を振幅、k を波数、ω を角振動数、δ を位相差、c
を波の速さという。波数 k と波長 λ の間には k = 2π/λ、角振動数 ω と振動数 ν の間には ω = 2πν の関係がある。(2)以下の性質が成り立つことを確かめよ。
U(x + λ, t) = U(x, t), U(x, t + T ) = U(x, t)
ここに周期 T = 1/ν = 2π/ω である。(3)等式 U(x + ωt0/k, t) = U(x, t− t0) を確かめ、その意味するところを説明せよ。とくに k < 0 のときの解釈はどうすればよいか。(4)k = (k1, k2, k3), r = (x1, x2, x3) として
U(r, t) = A sin(k · r− ωt + δ), (ω = c|k|)
の場合には、どんな波をあらわすか。また、このときの波動方程式はどうなるか。
32
[14](1)平面上を伝わる波が
u(x, y, t) = A sin(3x + 4y − 5t)
によってあらわせたとする。波の進行方向の単位ベクトル、波長、波数および波の速さを求めよ。(2)空間を伝わる平面波が
u(x, y, z, t) = A sin(x + 2y + 2z − 3t)
によってあらわせたとする。波の進行方向の単位ベクトル、波長、波数および波の速さを求めよ。(3)平面上を伝わる2つの波が重ね合わさり、ある時刻において
u(x, y) = A sin(3x + y) + A sin(x + 3y)
とあらわせたとする。合成された波の山()と谷()を平面上に図示せよ。
[15](重ね合わせの原理)(1)Uj(x, t) = Aj sin(kjx − ωjt + δj), ωj = c|kj |(j = 1, 2) とするとき、その和
U(x, t) = U1(x, t) + U2(x, t) も波動方程式
∂2U
∂t2− c2 ∂2U
∂x2= 0
の解となることを確かめよ。これを波の「重ね合わせの原理」という。(2)A1 = A2 ≡ A の場合に、上記の U(x, t) を「三角関数の加法公式」を用いて計算せよ。結果の意味するところを、とくに (a)k1 = k2および (b)k1 = −k2 の場合について説明せよ。
[16](1)原点Oから単位時間に一定の水量 Q が湧き出し、空間に等方的に流れ出ている。水は密度を一定に保つとして、原点を中心とする半径 r の球面上での水の速さ v(r)を求めよ。(2)上の問題で、流出する水の方向は、原点を中心とする球面に垂直であることを用いて、速度ベクトル v(r) の表式を求めよ。(3)一定の速度 v で流れる流体が平面(断面積 S)を通して単位時間に流れ出る量
は、この面の法線単位ベクトルを n とすると、vnS とあらわされることを示せ。ここでvn = v · n である。(4)以上の結果は、原点を中心とする半径 r の球面上を単位時間に流出する量が∫vndS = Q であることを示している。原点以外の点を中心とする球面ではどうなるか考えよ。(5)v(r) = (u, v, w) を(2)で求めたものとするとき、次の等式を示せ。
divv ≡ ∂u
∂x+
∂v
∂y+
∂w
∂z= 0, ただし (x, y, z) 6= (0, 0, 0)
33
[17]流体の密度 ρ = 一定で、粘性が無視できる流体を非圧縮完全流体という。非圧縮完全流体に対しては、速度場を v = (u, v, w) として、連続の式
divv ≡ ∂u
∂x+
∂v
∂y+
∂w
∂z= 0
と、オイラーの運動方程式
∂v∂t
+ (v · ∇)v = −1ρ∇p + K
が成り立つ。ここで p は圧力、記号 ∇(ナブラと読む)は微分演算子
∇ =(
∂
∂x,
∂
∂y,
∂
∂z
)
K はポテンシャル力(重力など)である。以下の問いに答えよ。(1)次の等式を示せ。
∇(
12q2
)= (v · ∇)v + v × ω, (q = |v|)
ここで × はベクトル積、ω は渦度とよばれ
ω = rotv =(
∂w
∂y− ∂v
∂z,∂u
∂z− ∂w
∂x,∂v
∂x− ∂u
∂y
)
で定義される。(2)渦なし(ω = 0)の流れの速度場は、速度ポテンシャル Ψ を用いて
v = ∇Ψ =(
∂Ψ∂x
,∂Ψ∂y
,∂Ψ∂z
)
とあらわされる。上式を仮定するとき ω = rotv = 0 が成り立つことを確かめよ。(3)オイラーの運動方程式から、K = −∇U として、以下を導け。
∂v∂t
= v × ω −∇(
U +p
ρ+
12q2
)
よって、渦なし(ω = 0)の場合には、v = ∇Ψ を代入して
∇(
∂Ψ∂t
+12q2 +
p
ρ+ U
)= 0
が成り立つことがわかる。これからとくに、定常な場合(∂Ψ/∂t = 0)には、ベルヌーイの定理
p +ρ
2q2 + ρU =一定
が導かれる。(4)オイラーの運動方程式の両辺の rot をとることにより、渦度の従う運動方程式
∂ω
∂t+ (v · ∇)ω = (ω · ∇)v
34
を導け。これから非圧縮完全流体における「ラグランジュの渦定理」=渦の不生不滅定理が導かれる。
[18](弦の振動)長さ L の弦の振動は、波動方程式
∂2U
∂t2− c2 ∂2U
∂x2= 0, (0 ≤ x ≤ L)
の、境界条件 U(0, t) = U(L, t) = 0 を満たす解によって記述される。(1)解を U(x, t) = f(x)g(t) の形に仮定すれば(変数分離法)、関数 f(x) は
fn(x) = sin(knx), kn =nπ
L(n = 1, 2, 3, · · ·)
の形をとることを示せ。(2)このときの関数 gn(t) は An, δn を任意の定数として、gn(t) = An cos(ωnt− δn)で与えられることを示せ。ただし ωn = ckn とする。
[注] 以上から、重ね合わせの原理によって、一般解は U(x, t) =∑∞
n=1 An cos(ωnt −δn) sin (nπx/L)とあらわされる。未知定数 An, δn は初期条件 U(x, 0), Ut(x, 0) によって決定される。
U(x, 0) =∞∑
n=1
An cos δn · sin(nπx/L), Ut(x, 0) =∞∑
n=1
ωnAn sin δn · sin(nπx/L)
[19](弦の振動:続)よって、初期波形が知れている場合には、弦の振動の問題はU(x, 0) =
∑∞n=1 An sin(nπx/L)
を満たす係数 An を求める問題に帰着する。ただし、簡単のため δn = 0 とした:これはUt(x, 0) = 0 を仮定することに相当する。このような問題をフーリエ級数展開という。(1)等式
U(x, 0) =∞∑
n=1
An sin(nπx/L)
の両辺に、sin(mπx/L) を掛けて区間 0 ≤ x ≤ L で積分することによって、係数 Am が以下で与えられることを示せ。
Am =2L
∫ L
0U(x, 0) sin
(mπx
L
)dx
(2)とくに
U(x, 0) = U0
(1− |2x− L|
L
)
の場合(三角波)について、フーリエ係数を計算せよ。
35
[20](球面波)原点に源を持ち等方的に(球対称に)拡がっていく波に対しては、波動方程式
(∇2 − 1
c2
∂2
∂t2
)U = 0
を極座標で考えるのが良い。ラプラシアン ∇2 は極座標で
∇2 =∂2
∂r2+
2r
∂
∂r+
1r2
(1
sin θ
∂
∂θ
(sin θ
∂
∂θ
)+
1sin2 θ
∂2
∂φ2
)
と表されるから、球対称な波では U(r, t) のように r = |r| と t のみに依存し、角度 θ, φ
には依らない。(1)以下を示せ。
∂2U
∂r2+
2r
∂U
∂r=
1r
∂2
∂r2(rU)
(2)よって、W = rU と置けば
∂2W
∂r2− 1
c2
∂2W
∂t2= 0
となり、W (r, t) は[13]と同じ1次元の波動方程式を満たす。波数 k > 0 に対してω = ck と置くとき
W = Aei(kr−ωt) + Be−i(kr+ωt)
が上の方程式を満たすことを示せ。(3)このとき U(r, t)
U(r, t) = Aei(kr−ωt)
r+ B
e−i(kr+ωt)
r
となるが、前者を外向き球面波(原点は湧き出し)、後者を内向き球面波(原点は吸い込み)という。前者について、半径 r の球面を通過する波束(フラックス)量は |A|2 に比例し、r に依らぬことを示せ。
5 波動の諸性質、ドップラー効果
[21] 重い中心星から距離 a を隔てて、速さが v の円運動をする星がある(連星あるいは双子星)。星が出す振動数 f0 の電波を地球から観測するとき、ドップラー効果によって、観測される振動数 f がどう変化するかを、回転面と地球との位置関係が平行と垂直の2つの場合について議論せよ。とくにこのような観測によって、星の公転半径 a を知ることはできるだろうか。
36
[22] 高温の気体を閉じ込めた炉がある。炉の小さな窓から漏れる光によって、分子から出る輝線スペクトルの一本を分光計で観測する。気体分子の速度はMaxwell分布
f(v) ∝ exp
(− mv2
2kBT
)
に従うとすれば、観測されるスペクトル線はドップラー効果によって幅が拡がって見える(これをドップラー幅という)。強度 I(λ) と波長 λ との関係が
I(λ) ∝ exp
(−mc2(λ− λ0)2
2λ20kBT
)
で与えられることを、以下の手順で示せ。(1)気体分子が静止状態のときの輝線スペクトルの振動数を ν0 とする。気体分子の
速度が v のときのドップラー振動数 ν を求めよ。それを波長の関係に直せば次式を得るであろう(c は光速度)。
λ = λ0c− v
c
(2)(1)から v = c(λ0− λ)/λ0 を Maxwell分布則に代入して、上式のスペクトル強度 I(λ) を導け。(3)スペクトル線幅 ∆λ の定義
(∆λ)2 =∫∞−∞(λ− λ0)2I(λ)dλ∫∞
−∞ I(λ)dλ
から ∆λ = λ0
√kBT/mc2 となることを示せ。
37