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全身性エリテマトーデス ー生命予後の昔と今ー
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5 10 年
20%
90%
ステロイドがない時代
%
0
最新の治療
による救命
ステロイドの副作用
あるいは
疾患自体による障害の回避
診断技術の向上
Arthritis Rheum. 2000 Jan;43(1):14-21.
メトトレキサートが効くとRA患者の寿命が延びる
MTXが効かなかった、
または使えなかった方
MTXが効いた方 生存率
免疫のどこが異常か?
微生物
自然免疫 獲得免疫
Bリンパ球 皮膚・粘膜
などのバリア
食細胞
補体 NK細胞
Tリンパ球
抗体をつくる
免疫を強化
数時間
感染からの時間
数日
自己抗体による組織障害のパターン
Ⅱ型免疫反応
Ⅲ型免疫反応
その物質があるところだけ炎症が生じるので、炎症の起こる場所がある程度決まっている
→ANCA関連血管炎(MPA・GPA)など
免疫複合体がたまる場所にならどこにでも炎症を生じる
→血管のある場所ならどこにでも炎症を生じる
→全身性エリテマトーデス・
悪性関節リウマチ・皮膚筋炎の一部
Ⅲ型免疫反応で生じる病気 全身性エリテマトーデス・悪性関節リウマチなど
免疫複合体の大きさにより免疫複合体がたまる血管の太さが違うので炎症を起こす血管が変わる
→ 全身どこにでも炎症を生じ得る
免疫複合体がたまった場所での炎症で、補体が消費される
→炎症が強い時は、血液検査で補体が下がる。
免疫複合体の大きさが変わることで、どの大きさの血管に
溜まるかが変わる。
⇒炎症の起こる場所が変動する。
多発性筋炎・皮膚筋炎の病態
・B/T両方の関与がある病態が多いが、偏りがある場合も多い。
・免疫抑制剤としては、メトトレキサート、イムラン、ネオーラルなどを併用する
・難治の場合、大量ガンマグロブリン療法(保険適応)、リツキサン(保険適応外)を考慮
・難治性間質性肺炎合併の場合、エンドキサンやエンドキサン+ネオーラルの投与を考慮
自己抗体と特徴
抗Jo-1 間質性肺炎多い
抗SRP ステロイド抵抗性
抗Mi-2 間質性肺炎少ない
抗CADM140 筋症状少ない
間質性肺炎が急速進行性
成人スチル病の免疫機序
Macrophage T cell
IFN-γ, etc
TNFα, IL-18, etc
soluble TNFα
‥membrane TNFα
2
3
4
【ベーチェット病の病態】
Tリンパ球の閾値低下
サイトカイン産生
シクロスポリン等
抗TNFα薬など
コルヒチン
患者Tリンパ球が健常人Tリンパ球に比してin vitroで種々の細菌抗原に対し過敏に反応することが知られている。(Arthritis Res Ther 5:139-146.2003)
本症患者には扁桃炎・う歯の既往が多く、手術・外傷・抜歯などでの増悪がみられる。
活動性のベーチェット病では末梢血単核球のTNFα産生能が亢進している。 (J Rheumatol 17: 1428-1429, 1990)
本症の基本病態がこのようなTリンパ球の過剰反応性に基づくサイトカイン産生による好中球機能の亢進であり、ターゲットを恒常的に阻害することで好中球機能亢進による急性炎症の発症を抑制できる。
→ T細胞の活性化や好中球の動員が生じた場所では、どこでも炎症を惹起しうる。
免疫抑制剤 商品名 作用 代表的副作用
アルキル化剤 エンドキサン 活発なリンパ球を殺す (B>T)
骨髄抑制・出血性膀胱炎・不妊
代謝拮抗剤
イムラン 活発なリンパ球を抑える (B>T)
骨髄抑制・肝障害
リウマトレックス リンパ球・好中球・マクロファージを抑える
骨髄抑制・肝障害・胸やけ・肺障害
セルセプト 活発なリンパ球を抑える 下痢・白血球減少
抗マラリア薬 プラケニル 感染防御・IFN/TLR抑制 網膜障害
T細胞活性阻害剤 ネオーラル Tリンパ球のみ抑える 腎障害・高血圧
プログラフ Tリンパ球のみ抑える 腎障害・糖尿病
B細胞除去薬 リツキサン Bリンパ球を殺す 投与時反応・感染症
*ステロイドはだいたい全部抑える
T細胞をターゲットにした治療
• TNF阻害薬
後述
• アバタセプト(T細胞調節薬;オレンシア)
• タクロリムス・シクロスポリン
直接的な作用
TNF阻害薬の作用機序
①可溶型TNFの中和
可溶型TNF
TNF受容体 TNF受容体
②膜型TNFのリガンド作用の中和
TNFの中和作用:全てのTNF阻害薬が有するTNF阻害薬の中心的作用
膜型TNF
NK細胞
Fc受容体 グランザイムB
パーフォリン C1
C3 Membrane attack
complex (C5b-C9)
細胞死
⑤Reverse-signaling ③ADCC(抗体依存性細胞傷害)
④CDC
(補体依存性細胞傷害)
TNF産生細胞(マクロファージ・T細胞)を殺す作用 → 製剤により差異
TNF阻害薬による細胞破壊の影響
TNFを産生する細胞(マクロファージ・Tリンパ球)を
破壊することで
肉芽腫形成性のような器質的病変の破壊が可能
→根治的
結核に代表されるような細胞内寄生菌を取り込んだ
マクロファージなどの破壊による、菌の散布
→播種性感染症
Tb
散布
B細胞をターゲットにした治療
• トシリズマブ; アクテムラ
厳密にはB細胞そのものの抑制ではなく、IL-6シグナルシャットダ
ウンによるB細胞活性抑制+B細胞の抗体産生抑制
• リツキシマブ; リツキサン
最も直接的にB細胞を抑制(殺す)。
自然免疫をターゲットにした治療
• TNF阻害薬 自然免疫抑制は最も強力
• IL-1β阻害薬 先天性自己炎症症候群に使用
• コルヒチン 好中球遊走能の抑制。免疫抑制効果はない
副腎皮質ステロイド
内因性ステロイドと外因性ステロイドの違い
・ ステロイドの使用は1948年にPhilip S. HenchがRAに対
して行い奏功したのが最初だが、翌年にはその副作用
(ナトリウム貯留など)に気づくこととなる。
・ 1950-60年代に新規合成ステロイドが複数開発されたが、
いずれも鉱質コルチコイド活性を抑えたものであった。
・ これら合成ステロイドと内因性ステロイドの違いは、
力価・代謝・半減期・脂溶性・レセプターとの相互作用・転写
を介さない作用にある。
・ ヒト内因性ステロイドの量は、コルチゾール10mg、
PSL換算3mgくらい。
副腎皮質ステロイドの作用機序
1. 細胞質内ステロイド受容体(cGR)による遺伝子転写を介した古典的作用
2. cGRによる遺伝子転写を介さない作用
3. 膜結合型GR(mGR)による遺伝子転写を介さない作用
4. 細胞膜とステロイドの相互作用により生じる非特異的かつ遺伝子転写を介さない作用
古典的作用
• 4つのうち最も重要な作用であるが、作用の段階は
1) 細胞膜を通過し、
2) 非活性型cGRと結合して、
3) 糖質ステロイド/cGR複合体を形成し核内へ移行し、
4) 転写を活性化もしくは抑制し作用する。
• 転写活性化は2量体を形成したGRがステロイドにより調節を受ける遺伝子のpromotorに結合し種々の制御性蛋白を合成して作用する。高脂血症などの副作用はこれに由来すると考えられる。
• 転写抑制は1量体GRにより炎症性転写因子のAP-1・NF-B・IRF-3等を阻害することで生じる。抗炎症作用に重要。
• 古典的作用は発現に少なくとも30分を要し、実際細胞・組織・器官が変化するには数時間から数日を要する。
転写を介さない作用
• mGRを介してT cellに作用しTCRシグナルを抑制したり、calcium signalingを逆転させ下流のイノシトール1,4,5-3
リン酸受容体を抑制する。
• 細胞膜に作用し、安定化させる。(抗ショック作用)
• 高用量で、リンパ球のアポトーシスを誘導する。
投与後速やかに作用を発揮する。
1mg/kg以上を投与するのは、この作用を期待してのこと。
ステロイド剤の種類 脂溶性
静注製剤では薬剤利用率が経口より劣る可能性があり、10%程度増量することがすすめられている。ソルコーテフ等は半減期が短いため、最低1日2回投与。
(経口不能又は腸管浮腫のとき)プレドニゾロ
ンを静注に変えるなら,経口予定量の1.5倍又は
2倍の水溶性プレドニゾロンを2分割する。
三森明夫:膠原病診療ノート,2006, pp. 28-30, 日本医事新報社,東京
剤形間(内服薬・注射薬)の対応量
分割投与?一括投与?
• ループス腎炎では朝1回投与と分割投与で差はない。
• 巨細胞性動脈炎では分割投与が勝る。
• 病態により異なるが、一般的に疾患急性期では効果の切れる時間帯を作らない方が無難。
副腎皮質ホルモンの副作用 骨粗鬆症 PSL 5mgを3ヶ月以上投与する際は、予防をする。
ビスホスホネート・活性型ビタミンD・K・テリパラチドなど。
感染症 PSL 20mg以上のときリスク2倍、PSL 0.6mg/kg以上のときさらにリスク増。細菌感染は早期に、 抗酸菌・ウイルス感染(帯状疱疹など)・真菌は長期治療時に生じやすい。
耐糖能異常 血糖値に合わせ、インスリン・経口糖尿病薬を使い分ける。 朝食前が低血糖となりやすいため、DPP-4阻害薬などが使いやすい。
消化性潰瘍 ステロイド単独ではリスクは高くなく、胃粘膜保護薬程度で良い。 NSAIDsとの併用でリスク高く、PPI併用が望ましい。
骨壊死 SLEで最もハイリスク (3分の1ルール)。IgA腎症では1/4000程度。 ワーファリン+スタチン併用もしくはヒドロキシクロロキン併用でリスク減。
精神障害 原疾患(NPSLEなど)・low T3 syndromeによるものがほとんど。不眠くらい。 突発性難聴で精神障害が出ることはほとんどない。
高血圧 プレドニゾロンにはコルチゾールの40%程度のNa貯留作用があり、 発症する可能性がある。
脂質異常症 コレステロール合成促進による。 スタチン・エゼチミブなどを使用。
無視できない副作用
副腎不全
プレドニゾロン10mgを半年服用すると副腎不全状態。
好酸球増加・低Na・K上昇などで疑う。
感染症を発症したからといってステロイドを中止するの
はもってのほか。むしろ増量する必要がある時もある。
手術に際したステロイドカバーは、
小手術:術前にソルコーテフ100mg iv
中手術:術前からソルコーテフ100mg iv、8時間毎、計4回
大手術(心血管系など):4-6時間毎
使用量とねらい
多くは下記の様であるが、疾患により微妙にプロトコールは異なる
減量スピードは疾患が寛解を維持
していることを前提に概ね右表の
ような感じ
膠原病なら必ずステロイドを使うということはない
投与前 投与後 IFX IFX
インフリキシマブ初回投与より2年が経過するが、
腸管病変の再発はない。
感染症対策
サイトメガロウイルス(CMV)感染症
• 腸炎、血球貪食症候群、肺炎などを生じる。
• 年齢、間質性肺炎・腸の器質的病変の有無によ
り感染しやすさが異なる。
• PSL単独では 0.6mg/kg以上でリスク。
• PSL<0.6mg/kgでも、免疫抑制剤併用でかなりリ
スク上昇。
→定期モニタリングないし予防内服を!
ニューモシスチス肺炎(PCP)
• 関節リウマチにおける致死率は約30パーセント。
• 年齢・肺疾患の有無・他の免疫抑制剤やステロイドの使用でリスク上昇。→予防内服を!予防率98%!
呼吸困難や倦怠感あり、CRPが上昇し、胸写で違和感あり、βDグルカンが陽性で、動脈ガスでCO2が著明に低下し、カンジダ・アスペルギルス抗原陰性ならほぼPCP。
ニューモシスチスは症状なく肺にいることがある
• ニューモシスチスを持っている方(平均75歳)は持っていない方(平均64歳)よりかなり高齢。
• 65歳以上の患者さんでは約2割もっている。
• Case1は検査の1か月後にニューモシスチス肺炎を発症。
Mod Rheumatol (2008) 18:240–246
B型肝炎
• B型肝炎ウイルスをもらったことがある方で、肝炎を発症していないがリウマチの治療を始めることで眠っていたウイルスが再び出てくることがある。
• 初診時の検査でB型肝炎をもらったことがある方を発見し、治療開始後ウイルスが出てこないか定期的に検査をする必要がある。
メトトレキサート単独でHBV再活性化を来したリウマチ患者の報告
Diagnosis/ Age/ sex
Base line serology
Immunosuppressive regimen
MTX duration (why stop), MTX discon to ALT flare
Treatment of HBV reactivation
Outcome, after onset of symptom
1 RA/ 59/F HBsAg(-) Anti-HBs(+)
MTX 10mg/wk po, PSL 5 mg/day 7 years (ALT), LVD 100mg/d Died, 8wks
2 RA/ 72/F Asymptomatic Carrier
MTX 4mg/wk, PSL 5 mg/day 2y (ALT), Discontinue MTX
Died of fungal pheumonia
3 RA/ 58/F HBeAg(-) MTX 15mg/wk, LD Pred (<7.5mg/d) 2y (ALT) LVD 100mg
Alive, INFLETN +LVD
4 RA/ 49/M
HBsAg(+) Anti-HBe(+) Anti-HBc(+)
Infliximab 6mg/8wk + MTX 10mg/wk 1y7m (ALT) LVD 100mg/d
Alive, Normalized after 2mos
5 RA/ 75/F HBsAg(+) HBeAg(+)
MTX 5-→7.5mg/week PSL, 7.5 mg/day 3 ys (ALT), 2 mos IFN-β (3MU/d) Died
6 RA/ 67/M MTX 7.5mg/wk, Pred 5mg/day 2y (RS*), 3wk Discontinue MTX Died
7 RA/ 57/F MTX 7.5-10mg po/week 3y (RS*), 41d Discontinue MTX Died
RS, respiratory symptom; indicates time between discontinuation or reduction of immunosuppressive therapy and hepatitis B flare. RA, rheumatoid arthritis; MTX, methotrexate; Pred, prednisolone; LVD, lamivudine.
1) Gwak GY, Clin Exp Rheumatol 2007;25:888-889 2) Hagiyama H, Clin Exp Rheumatol 2004;22:375–6 3) Calavrese LH, Ann Rheum Dis 2004;63 (s2):18-24 4) Ostuni P, Ann Pheum Dis 2003;62:686-7 5) Ito S, Arthritis Rheum 2001;44:339–42 6) Narvaez J, J Rheumatol 1998;25:2037–8 7) Flowers MA, Ann Intern Med 1990;112:381–2
L H Calabrese (Dept of Rheumatic and Immunological Disease, Cleveland Clinic), Ann Rheum Dis 2006; 65: 983
Hepatitis B virus (HBV) reactivation with immunosuppressive therapy in rheumatic diseases: assessment and preventive strategies.
http://ard.bmj.com/cgi/content/abstract/65/8/983
1) 免疫抑制によるHBV複製が増強
• まずHBV DNAが増える。
• 炎症は抑えられているのでALTは上昇しない
2) 化学療法終了後の免疫回復
• 感染細胞に対する免疫の反応が強まり、肝障害がおこる
• 肝炎(一過性ALT上昇、慢性肝炎)、肝不全、死亡するケースも
初期の段階で、抗HBV作用のある核酸アナログを投与すれば、HBVの再生が
効果的に抑制され、その結果、HBVに起因する肝炎の頻度を下げることがで
きる。
Hepatitis B reactivation after chemotherapy: two decades of clinical research George K. K. Lau (The University of Hong Kong), Block K (Queen Mary Hospital) Hepatol Int. 2008 June; 2(2): 152-162.
HBV再活性化による肝炎は 2段階で進行する
もしHBV-DNAが検出された場合は、免疫抑制療法を中止せず
抗ウイルス薬を開始したほうがよい。
結核
• TNFα阻害薬は結核のリスクが増す。レミケードとヒュミラが同等で、
エンブレルのほうがリスクが低い。
• TNFα阻害薬投与中の患者では肺外に播種性に感染する率が高い。
• スクリーニングとして問診、ツベルクリン、クオンティフェロン、
胸部レントゲン撮影が必要。いずれかに異常がある場合、TNFα阻害
療法開始1-2ヶ月前からイスコチンを開始し、抗TNF-α製剤投与開始
9ヶ月後まで継続する。
• 抗TNFα抗体製剤使用中の患者の方が結核の治癒効率が良いという報
告もある。
TNF阻害薬投与前には問診・ツ反orクオンティフェロン・胸写を施行し、
いずれか陽性ならイスコチンの予防投与を!
まとめ
• ステロイド・免疫抑制剤は個々の病態に応じて使い分ける。
• 薬剤による副作用を先回りして予防することが重要。
• 現在できる感染症予防に加え、個々の患者さんに適した薬剤を選択することで、さらに合併症を減らすことが今後の目標。
朝早くから、お疲れ様でした