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冷却イオントラップによる
CaH+の振動回転基底状態の
生成と検出
上智大学 理工学部 物質生命理工学科
原子物理研究室 A1076194 中里 直矢
2014年2月12日卒業論文発表
発表内容• 研究の背景・目的
• 実験原理
→イオントラップ
→レーザ冷却
→Ca+の蛍光
→CaH+のエネルギー準位
→遷移レート方程式
• 実験装置
• 結果と考察
• まとめ
• 今後の課題
研究の背景・目的• CaH+の精密な振動分光研究
→陽子―電子質量比(mp/me)の時間依存性の検証に有用M. Kajita et al., B42, 154022 (2009)
• レーザー誘起反応よりCaH+を生成し、振動回転基底状
態へ冷却
• 電子状態間遷移11Σ→21Σを405 nmレーザーで励起→電子励起状態からの600 nm蛍光の観測• 遷移レート方程式を解く
→振動回転基底状態の生成の確認
→蛍光強度、必要なイオン数の推定
→より良い実験条件の探索
CaH+のポテンシャル曲線
Einstein Acoefficient[kHz]
Emissionwavelength[nm]
11Σ 21Σ 21Σv''↓v'→ 1 1
0 523.2 405.21 1048.7 430.52 606.1 458.33 14.6 488.94 323.5 522.75 917.2 560.06 907.2 601.27 466.8 646.78 129.0 696.89 16.2 751.8
405 nm 600 nm
M. Abe et al., J. Phys. B43, 245102 (2010).
実験装置
photomultiplier tube
405nm Laser(spectroscopy)
Nd:YAG Laser
866 nm 397 nm
Variable valve
Hydrogen Gas(H2)
CCD
Vacuum Chamber
RF ion trap
mirror
Ca+
Ca holder
Excitation Laser
interference filter (600 nm)
レーザー誘起反応Ca+(2P1/2)+H2→CaH++H
真空度:6.6×10−8[torr]チャンバー:2.0×10−10[torr]
結果:CaH+クーロン結晶の生成
• 環境温度12.6 Kにおいて極低温CaH+イオンの生成に初めて成功
(a)Ca+のクーロン結晶
(b)生成したCaH+のクーロン結晶
閉じ込め時間:1時間以上
Ca+イオン温度:66 mKCaH+の個数:300個
J=0300 K :2.2%12.8 K:44%
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
CaHCaHCaHCaH++++の振動回転基底状態の温度依存性の振動回転基底状態の温度依存性の振動回転基底状態の温度依存性の振動回転基底状態の温度依存性
12.8K300K
Popu
latio
n
Rotational state J
(a)
(b)
レート方程式による解析
405nm
目的
• 振動回転基底状態の生成の確認
• より良い実験条件の探索
0 100
1 10-1
2 10-1
3 10-1
4 10-1
5 10-1
6 10-1
7 10-1
8 10-1
0 50 100 150 200 250 300
v=0,J=0v=0,J=1
Popu
latio
n
Time[s]
約約約約5分分分分でででで回転基底状態回転基底状態回転基底状態回転基底状態
がががが生成生成生成生成されるされるされるされる
振動回転基底状態CaH+電子状態間遷移励起
による蛍光観測CaH+の電子状態間遷移11Σ→22Σのレーザー分光
理論値:405.282 nm
5.5 104
6 104
6.5 104
-0.002 -0.001 0 0.001
600
nm蛍光
のカ
ウン
ト数
405.289 nmを基準とした波長(10回)
405.288 nm
(結果)
・バックグラウンドの変動に比べてピークが小さい・再現性が得られなかった
(実験条件)波長範囲: 405.290~405.285 [nm]100step1ch:20[s]T=12.8K10回繰り返す
レート方程式による解析
(共鳴条件)• 21Σv =1の定常状態における占有密度→ 1.5××××10-9
• 21Σv =1の定常状態における蛍光強度→ 2.8××××10-2[s−−−−1111]
レーザー連続照射法 定常状態
スペクトル形状→ガウス関数として仮定ドップラー幅:185[MHz](CaH+の温度を5 Kに仮定)実験時のバックグラウンド:40~60[cps]
����������: ∆� =1
�
2����2
���
レーザー連続照射法による蛍光スペクトルのシミュレーション
より適した実験方法を考察した
35
40
45
50
55
60
65
-0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6
イオン3×102個
LIF
Int
esni
ty[c
ps]
frequency[GHz]
35
40
45
50
55
60
65
-0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6
イオン6×104個
LIF
Int
esni
ty[c
ps]
frequency[GHz]
一個のイオン対して一回の
レーザー励起で観測される光子数
→600 nm蛍光のみ: 1.64××××10−−−−3333 個個個個
→→→→全ての蛍光:8.01××××10−−−−3333個個個個
レーザーパルス照射法
レーザーを一回照射後、offにする
time[s]
off
0 100
2 10-5
4 10-5
6 10-5
8 10-5
1 10-4
0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01
Pop
ulat
ion
of 2
1 Σ(v = 1)
time[s]
off:約2分を想定
広範囲の蛍光を観測するのが望ましい
CaH+のポテンシャル曲線
405 nm 600 nm
M. Abe et al., J. Phys. B43, 245102 (2010).
Einstein Acoefficient[kHz]
Emissionwavelength[nm]
11Σ 21Σ 21Σv''↓v'→ 1 1
0 523.2 405.2821 1048.7 430.5482 606.1 458.3333 14.6 488.9454 323.5 522.7235 917.2 560.0306 907.2 601.2437 466.8 646.7518 129.0 696.8889 16.2 751.891
35
40
45
50
55
60
65
-3 -2 -1 0 1 2 3
イオン300個
LIF
Int
ensi
ty[c
ps]
frequency[MHz]
35
40
45
50
55
60
65
-3 -2 -1 0 1 2 3
LIF
Int
ensi
ty[c
ps]
frequency[MHz]
イオン1000個
レーザーパルス照射法による蛍光スペクトルのシミュレーション
蛍光の観測が可能
バックグラウンドを小さく出来れば蛍光を観測しやすくなる
5
10
15
20
25
-3 -2 -1 0 1 2 3
イオン1000個 バックグラウンド10~20イオン1000個 バックグラウンド10~20イオン1000個 バックグラウンド10~20イオン1000個 バックグラウンド10~20
LIF
Int
ensi
ty
frequency
まとめ
• 約12 Kという極低温状態でのCaH+の生成に成功
• 室温で約2%しか存在しないCaH+の回転基底状態の割合
→約44%まで高めることが出来た
→回転量子数J= 0~2を含めると約99%の占有率
• 実際に電子状態間遷移11Σ→21Σのレーザー励起による蛍光観測実験を行った→再現性は得られなかった
• レート方程式の解析により、 CaH+レーザー誘起蛍光の
観測条件の探索を行い、新しい観測方法(レーザーパルス照射法)を考案した