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- 69 - 第3章 充てん設備 「充てん設備」とは、LPガスの消費先(一般家庭用も含む。)に設置されている供給設備に、 直接、LPガスを充てんすることができる機能を有するように製作されたタンクローリのことを いい、通常「バルクローリ」という。 バルクローリは、高圧法では『移動式製造設備』に該当するが、液石法では法的な位置づけを 明確にするために『充てん設備』と呼んでいる。 充てん設備は、基本的な構造および機能は移動式製造設備と同様であるが、公道に駐車(停 車)し一般家庭に設置されるバルク貯槽等へLPガスを充てん(供給)することから、移動式製 造設備よりは保安面での機能強化が図られた構造になっている。 充てん設備の構造・機能等技術上の基準および運行中の安全対策は、次に掲げるところによ る。 [液石法第37条の4] 1.充てん設備の構造 1.1 充てん設備の各部の名称および機能 充てん設備の各部の名称の一例を図3-1に示す。充てん設備が持つ機能のフローを図3-2 に示す。 図 3-1 充てん設備概要図

第3章 充てん設備-69-第3章 充てん設備 「充てん設備」とは、LPガスの消費先(一般家庭用も含む。)に設置されている供給設備に、 直接、LPガスを充てんすることができる機能を有するように製作されたタンクローリのことを

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第3章 充てん設備

「充てん設備」とは、LPガスの消費先(一般家庭用も含む。)に設置されている供給設備に、

直接、LPガスを充てんすることができる機能を有するように製作されたタンクローリのことを

いい、通常「バルクローリ」という。

バルクローリは、高圧法では『移動式製造設備』に該当するが、液石法では法的な位置づけを

明確にするために『充てん設備』と呼んでいる。

充てん設備は、基本的な構造および機能は移動式製造設備と同様であるが、公道に駐車(停

車)し一般家庭に設置されるバルク貯槽等へLPガスを充てん(供給)することから、移動式製

造設備よりは保安面での機能強化が図られた構造になっている。

充てん設備の構造・機能等技術上の基準および運行中の安全対策は、次に掲げるところによ

る。 [液石法第37条の4]

1.充てん設備の構造

1.1 充てん設備の各部の名称および機能

充てん設備の各部の名称の一例を図3-1に示す。充てん設備が持つ機能のフローを図3-2

に示す。

図 3-1 充てん設備概要図

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図 3-2 充てん設備の機能フロー図(例)

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1.2 充てん設備の特徴

供給設備(バルク貯槽、バルク容器、貯槽および容器)に直接LPガスを充てんするため

に、充てん設備の車両には、充てん専用のポンプが装備されている。

ポンプは、車両のエンジンから動力を取り出し、直接ポンプを駆動する方式、発電機を搭

載し電動ポンプを駆動させる方式、油圧ポンプにより駆動する方式の3つの方式がある。

通常の充てん作業におけるポンプの起動・停止および異常時における緊急停止は遠隔操作

(無線スイッチ等)により行える構造となっている。

ポンプにより送り出されたLPガスは、全長約30mのゴムホースにより受入側のバルク貯

槽および容器に接続され充てんされるようになっており、ゴムホースを巻き取るためのホー

スリールが装備されている。ホースの先端部付近には「安全継手」が取り付けられ、ホース

に異常な引張力が加えられた時に自動的にLPガスを外部に漏らすことなく分離するように

なっている。また、ホースの先端には供給設備との接続および取り外し時においてLPガス

を外部へ漏らすことがないよう配慮されたカップリング(カップリング用液流出防止装置:

通称セイフティーカップリングと呼称)が取り付けられている。

充てん作業は1人で作業する場合が多いことから、安全装置として次のものが装備されて

いる。

① 誤発進防止装置

② 自動停止装置(インターロック)

a ガス漏れ警報装置

b 異常振動検知装置

c いたずら防止装置

これら安全装置の設置目的、機能および技術上の基準については、後述の説明による。そ

の他、充てん設備に使用する弁、計器、配管設備等についても基準が定められており故障時

等においては基準に従って機材を選定し、または、修理交換を行わなければならない。

2.充てん設備の貯蔵設備

法律上は、充てん設備の「貯蔵設備」として規定されているが、通常一般的な言葉としては

LPガスを入れる容器のことである。

充てん設備に使用する容器は、高圧法第44条に規定されている「容器検査」に合格したもの

でなければならない。

(注1)「容器とは、地盤面に対し移動することができるもの」として定義されている。した

がって、充てん設備に取り付けられる貯蔵設備は車両に固定し地盤面に対し移動するこ

とから「容器」として定義されたものである。 [液石法規則第64条第1号]

これに対応するものが「貯槽」であり、地盤面にアンカーボルト等にて固定するもの

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をいう。貯槽およびバルク貯槽が該当する。

2.1 容器の基準

① 容器製造業者は、経済産業省令で定める技術上の基準に従って容器の製造をしなければ

ならない。 [高圧法第41条]

② 容器は、製造後容器検査を受け、それに合格しなければならない。 [高圧法第44条]

③ 容器が容器検査に合格した場合は、必要事項が容器の見やすい箇所に刻印される。この

刻印がされていないものにはLPガスを充てんすることができない。 [高圧法第45条]

④ 充てん設備の容器に刻印されている内容は次のとおりである。

○a 検査実施者の名称の符号

○b 容器製造業者の名称またはその符号

○c 充てんすべき高圧ガスの種類

○d 容器の記号(3文字以下に限る)および番号(5桁以

下に限る)

○e 内容積(記号 V、単位 L)

○f バルブおよび附属品(取り外しのできるものに

限る)を含まない質量(記号 W、単位 ㎏)

○g 容器検査に合格した年月日

○h 耐圧試験における圧力(記号TP、単位 MPa)

およびM

なお、登録容器製造業者の場合は○a に代えて型

(充てん設備容器の刻印例) 式承認番号を、○g に代えて製造年月を刻印する。

○i 内容積が500Lを超える容器にあっては、胴部の

肉厚(記号 t、単位 mm)

2.2 容器の構造

容器本体は、両端に鏡板をもつ横置き円筒形であり、容器は高圧法容器則および液石則(移

動の基準)に従い、基本的には次の部品により構成されている。(図3-3 参照)

[液石則第47条]

① マンホール

② 安全弁取付座(容器上部)

③ 液面計取付座(容器上部または鏡板)

④ 防波板(容積 3000Lにつき1枚)

⑤ 緊急遮断弁取付座(容器底部)

⑥ 温度計感温部取付座(容器底部)

⑦ サブフレーム

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⑧ その他の部品(容器吊り金具等)

なお、これらの部品は基本的に溶接にて取り付けられている。

図 3-3 容器の構造

2.3 容器の設計

容器の設計圧力(法律上は 高充てん圧力と呼ばれる。)は、高圧法容器則に規定されてい

る容器の耐庄試験圧力の 3 / 5 倍と規定されており、これ以上の圧力で設計し、全て強度を満

足しなければならない。 [容器則第2条第25号]

規定されている耐圧試験圧力は3.5MPaであるため設計圧力は3.5×3/5 =2.1MPaとなる。

(これを変更することはできない。) [容器則第2条第26号]

2.4 容器に使用する材料

容器に使用される材料は、高圧法容器則および溶接容器の例示基準に規定されている。容

器用の材料は、JIS規格材料で、圧力容器用鋼板(SPV450またはSPV490)が使用されている。

[容器則第3条第1号,溶接容器の例示基準第3条]

2.5 容器への充てん質量

容器への充てん質量(充てんが可能な 大重量)は、容器則第22条に規定されており、こ

れ以上のLPガスを充てんすることはできない。 [容器則第22条]

G=V/C

G:LPガスの質量(単位kg)の数値

V:容器の内容積(単位L)の数値:容器に刻印された「V」の値

C:充てん定数(表 3-1 参照)

※プロパンベースで設計された容器にブタンベースのLPガスを充てんすることは違反行為

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となる。

表 3-1 LPガスの定数

温度15℃におけるLPガスの比重 定 数

0.453以上0.462以下 2.78

0.463以上0.472以下 2.71

0.473以上0.480以下 2.64

0.481以上0.488以下 2.57

0.489以上0.495以下 2.50

0.496以上0.503以下 2.44

0.504以上0.510以下 2.38

0.511以上0.519以下 2.33

0.520以上0.527以下 2.28

0.528以上0.536以下 2.23

0.537以上0.544以下 2.18

0.545以上0.552以下 2.13

0.553以上0.560以下 2.09

0.561以上0.568以下 2.04

0.569以上0.576以下 2.00

0.577以上0.584以下 1.97

0.585以上0.592以下 1.93

0.593以上0.600以下 1.89

0.601以上0.608以下 1.86

液化プロパン (純度99%以上) 2.35

液化ブタン (純度99%以上) 2.05

液化プロピレン(純度99%以上) 2.27

(注)LPガスは、15℃における比重により定数が定められているが、選定する

定数の違いにより、同じ容器の内容積でありながら充てん質量が異なるとい

う点を考慮し、充てん設備に表示(車両後面に表示)されている 大積載重

量は、充てん定数(表3-1中の2.33)により計算した数値が記入されている。

また、表示される重量は車両の車検証に登録される関係上、10kg未満は切

り捨てられた値で表示されている。

なお、実際に供給されるLPガスの15℃における比重が標準として計算された充てん定数

(2.33)に対応する15℃における比重と異なる場合は、充てんされるLPガスの比重を確認し、

上表より定数を求め 大充てんすることができる質量を計算し、計算値以上の質量を充てん

してはならない。

計算値以上のLPガスを充てんすること(「過充てん」という。)は、法律上禁止されている。

また、実際の比重により計算した質量が、車検証に登録された 大積載重量以上となった場

合でも、道路運送法上「過積載」とみなされ道路運送車両法の規定により罰則が課せられる。

逆に、計算した質量が登録積載重量より小さい場合でも重量面での余裕があるからといっ

て規定以上充てんすることはできない。(過充てん行為となる。)

以上のように、プロパンを主成分に混合されたLPガスとブタンを主成分に混合されたL

Pガスとでは比重に大きな差があるため実際に充てんされるLPガスの比重は定期的に確認

しておく必要がある。

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2.6 試験および検査

容器を製作する過程においては様々な試験および検査が行われる。検査項目および検査内

容は、すべて高圧法容器則で規定されている。

実際に行われる試験および検査は、容器メーカの範躊となるため詳細説明は省略するが、

検査の概略は次のとおりである。

① 加工前材料検査(外表面目視、強度試験、成分確認、板厚測定等)

② 加工後材料検査(加工後の強度試験および板厚測定等)

③ 非破壊検査(X線検査、磁粉探傷試験等)

④ 耐圧および気密試験(法定圧力以上で実施)

⑤ 寸法検査 [容器則第6条、例示基準第8条~]

2.7 容器への塗装および表示

容器表面への塗装色および表示すべき項目は、容器則に規定されており、その内容は次に

よる。

① 塗装色

LPガス容器への塗色はガスによる規定色・6色〔黒色(酸素)、赤色(水素)、緑色(液

化炭酸ガス)、白色(液化アンモニア)、黄色(液化塩素)、かっ色(アセチレン)〕とこれ

と粉らわしい色を除き、自由な色を用いることができる。

② 表示すべき文字および文字の色

容器の表面の見やすい位置に次の表示をしなければならない。

表示すべき文字 色 大きさ(高さ) 表示位置 特記事項

LPガス 赤 10cm以上 タンク両側面

燃 赤 10cm以上 タンク両側面 ○で囲んでも良い。

FP 2.1 M 赤 10cm以上 充てん口側

容器の所有者が車検証と

所有者表示 - 5cm以上 見やすい箇所に1箇所 同一の場合は表示しなく

ても良い

なお、上記法定表示項目と粉らわしい表示(標記)をすることは禁止されている。

[容器則第10条~第12条]

2.8 その他の注意点

容器は組立完了(溶接すべき部品をすべて溶接)後、規定により応力除去焼鈍を行う。そ

の後、耐圧試験および気密試験が行われ、容器としての性能が保証される。

[容器則第3条、例示基準第6条]

したがって、容器検査合格後は容器に対し熱影響を与える加工(改造)を行ってはならない。

充てん設備として運用開始後、安易な気持ちで容器に部品を溶接するようなことは絶対に

しないよう厳重な注意が必要である。

万一、熱影響を与えた場合は容器として使用できなくなるため関係者は十分認識しておく

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必要がある。

3.充てん設備の附属機器

ここでいう附属機器とは、容器および配管に装備される弁、計器、ポンプおよびホース等の

ことをいう。附属機器等は、容器用の機器、容器へLPガスを充てんすること(積込み)に関

係する機器およびバルク貯槽等への充てんに関する機器に分類される。

充てん設備には、附属機器として規則上、次のものが装備されており、それぞれの用途に適

した機能を有するものとなっている。

装備される附属品の構造、機能および目的等については、次に示すところによる。

3.1 容器用安全弁

火災や過充てん等により容器の内圧が規定以上に上昇した場合、安全弁は作動し容器の内

圧の上昇を肪ぎ、容器の破裂を防止する目的で装備されている。

LPガスをガス状態で放出する必要があり、容器用安全弁は容器頂部に取り付けられてい

る。容器頂部からの突出部を極力少なくする関係上、弁棒、スプリングおよび本体の一部が

容器の内部に装着される特殊な構造となっている。(図 3-4 参照)

また、外部からの水、ほこり等の侵入を防ぐ目的で、ガス放出口には樹脂製の防塵キャッ

プが取り付けてある。機能は容器の内圧が設定圧力以上となった場合、その圧力により弁体

が押し上げられ作動する。設定圧力以下になるとスプリングの力により自動的に閉止する。

安全弁は、「附属品検査」に合格したものを取り付けなければならない。

[高圧法第48条第1項第3号]

[容器則第16条又は第13条]

<主要諸元>

設 定 圧 力 2.8MPa以下

吹止り圧力 2.1MPa以上

検定・附属品検査合格品

図 3-4 容器用安全弁

3.2 液面計

容器の頂部または鏡板に取り付けられてあり、容器内のLPガスの液面を測定するために

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設置されている。

充てん設備への設置は義務付けられており、選定の基準として次のことが規定されている。

① 容器内部のLPガスに侵されない材料であること。

② 圧力を受ける部分にはガラス、合成樹脂等の材料が使用されていないもの。

③ 液面を測定する際、外部へLPガスを放出しないで測定できる機能を有するもの。

④ 耐圧試験、気密試験の他、自動車に装備することからJISに規定されている「自動車部

品振動試験」に合格したものでなければならない。

以上の規定により取り付けられている液面計としては、検測部は容器内に密閉され液面の

上下をフロート等により検出し、これを電気信号または機械的に変換し、液面位置を表示す

る機能のものが採用され装備されている。

液面計は、「大臣認定品」または高圧ガス保安協会の行う「高圧ガス設備試験」に合格し

たものを取り付けなければならない。[液石法規則第64条第1項第13号・バルク告示第23条]

3.3 ポンプまたは圧縮機および発電機

充てん設備から充てん先のバルク貯槽等に充てんするため、ポンプまたは圧縮機(以下「ポ

ンプ等」という。)が装備されている。ポンプ等を駆動するには、ポンプ等の種類によりエン

ジンの動力取出装置(通常PTOと呼ばれている。)より直接ポンプに推進軸(プロペラシャフ

ト)を接続し駆動する方式、推進軸により油圧ポンプを駆動し油圧モータにより駆動する方

式および推進軸により発電機を駆動し発生した電力により駆動する電動式などがある。

技術上の基準として、次のことが規定されている。

① ポンプ等は「軸シール部のない構造のもの」または「軸シール部を有する構造のもの」

のいずれを使用してもよい。(図 3-5 参照)

「軸シール部のない構造」とは、ポンプ等を駆動するための入力軸と送液機構部の回転

軸が隔壁などにより分離され、送液部分が密閉室となっている構造のものをいう。隔室に

分離した軸を回転する機構の例としては、磁力などを利用し回転させる方法が用いられて

いる。

また、「軸シール部を有する構造」とは、回転軸が内部に1本で接続され、内部で発生し

た液体が外部に漏れないよう機械的に軸封(通常、メカニカルシールと呼ぶ。)されている

ものをいう。

② 発電機を設ける場合は、火花を発生しない構造のものを使用する。

ここで規定されている「火花を発生しない構造」とは、例えばブラシレスの発電機など

が挙げられる。

ポンプ等は、「大臣認定品」または高圧ガス保安協会が行う「高圧ガス設備試験」に合

格したものを取り付けなければならない。 [液石法規則第64条第1項第5号、第6号]

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図 3-5 ポンプの構造例

3.4 緊急遮断装置

規則上充てん設備からLPガスを送り出し、または受け入れるために用いる配管には緊急

遮断装置を設けなければならない。(容器の容量に関係無く高圧ガス運送自動車用容器は設

けなければならない。)

緊急遮断装置とは、充てん作業等においてLPガスの流出等異常事態が発生した場合にレ

バー操作、スイッチ(ボタン)操作等によりLPガスの流れを瞬時に遮断する装置で、緊急

遮断用バルブと開閉の操作を行う機構から構成されている装置のことをいう。

また、付近に火災が発生しレバー操作等ができない状態に陥った場合でも自動的に閉止で

きる機構も盛り込まれている。

緊急遮断弁の開閉操作は、通常の荷役作業時に操作するものと、離れた位置から緊急閉止

ができるものを装備しなければならない。

緊急遮断弁の仕様として従来型バルクローリには、油圧により遮断弁を開閉するものとワ

イヤにより開閉を行う仕様のものがあるが、充てん設備には「緊急停止」および「自動停止」

と連動させるため「油圧式緊急遮断弁」が装備されている場合が殆どである。

緊急遮断弁は、高圧ガス保安協会が行う「附属品検査」に合格したものを取り付けなけれ

ばならない。

図 3-6に、その構造を示す。 [液石法規則第64条第1項第11号]

注)従来型バルクローリとは、高圧法および高圧ガス保安協会基準S 0501に従い製造され

た「移動式製造設備」を指し、通常「工業用バルクローリ」と呼称されている。今回液

石法により「充てん設備」(通称 民生用バルクローリ)と区別するため、従来型バル

クローリと表現した。

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設計圧力 2.1 MPa以上

耐圧試験圧力 3.6 MPa以上

気密試験圧力 2.1 MPa以上

検定・附属品検査合格品

図 3-6 油圧式緊急遮断弁

3.5 液取入弁および通気弁

充てん設備のLPガス充てん(積込み)専用接続口に設置されているバルブで、充てん設

備からバルク貯槽等へ充てん(払出し)する場合には使用しない。

LPガス基地との関係から、国内で稼働しているLPガスタンクローリと同一の規格品が

装備されており、その形状および仕様は次のとおりである。

液取入弁は 50A (2B)、通気弁は 25A (1B)でサイズは統一されており、型式としてY型弁

(図 3-7)とボール弁(図 3-8)の2種類がある。

Y型弁は、普通のグローブ弁の開閉ハンドルの操作性を考慮し、約45度傾斜させたもので、

その形状からY型弁と呼称され、通常、ホースカップリングがねじ込まれている。

また、ボール弁は接続口にカップリングが一体化され組立品となっている。Y型弁、ボー

ル弁ともに弁体の右側にブリ-ダ弁が取り付けられている。

このバルブが緊急遮断弁以降の第1止弁となる場合は、高圧ガス保安協会が行う「附属品検

査」に合格したものとし、その他の場合は「大臣認定品」または高圧ガス保安協会が行う

「高圧ガス設備試験」に合格したものを取り付けなければならない。

図 3-7 Y型弁 図 3-8 ボール弁

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3.6 ホースカップリング

液取入弁および通気弁の先端に取り付けられており、充てん設備へLPガスを充てん(積

込み)するとき、基地側のローディングアームとの接続口となっている。

形状は、全国統一規格となっておりバルクローリ側が「おす」(めすキャップ付)仕様で

サイズは、液ラインが50A、通気ラインが25Aのワンタッチ式クイックカップリングである。

(図 3-9 参照)

図 3-9 ホースカップリング(おす)

3.7 カップリング用液流出防止装置

一般的な呼称は「セイフティーカップリング」と呼ばれ、充てん設備からバルク貯槽等へ

LPガスを充てんするためのゴムホースの先端に取り付けられており、バルク貯槽等のカッ

プリングと接続および切り離し時に大気へLPガスを漏らさず行えるように製作されたワン

タッチ(接続後操作レバーにて開閉)式カップリングである。(図 3-10参照)

従来型バルクローリに採用されているものと仕様は同一となっているが、バルク貯槽等の

貯蔵能力、ポンプの吐出能力および作業性を考慮し、 20Aが標準的なサイズとなっており技

術基準で充てん設備側が「めす(おすキャップ付)」となっている。

カップリングの強度、耐久性および脱着時の気密性等については、使用される環境条件を

考慮し、液石法規則において厳格な品質規定が設けられている。

なお、従来型バルクローリでは、液ラインおよび通気ラインとも「セイフティーカップリ

ング」が取り付られているが充てん設備では「液ライン」のみに取り付けられている。

[液石法規則第64条第9号・バルク告示第21条]

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図 3-10 LPガスカップリング用液流出防止装置

3.8 均圧ホース用カップリング

均圧ホース用カップリングは、充てん設備に均圧ホースを装備した場合の、均圧用ゴムホ

ース先端に取り付けられており、充てん作業をする際、充てん設備とバルク貯槽等との圧力

バランス(均圧)をとるためにバルク貯槽等と接続するカップリングである。

カップリングの強度、耐久性および脱着時の気密性等については、使用される環境条件を

考慮し、液石法規則において厳格な品質規定が設けられている。

充てん設備およびバルク貯槽等ともに、均圧ラインが装備されているものと、装備されて

いないものが混在する。(すべてに装備されている訳ではない。)

装備する場合の仕様は、互換性を図る上で統一した仕様のものが取り付けられている。

(図 3-11参照) [液石法規則第64条第10号・バルク告示第22条]

図 3-11 均圧ホース用クイックカップリング

3.9 充てんホース

充てん設備には、バルク貯槽等に充てんするための専用ホースが装備されている。ホース

は、JISに規定されたLPガス用鋼線編組式ゴムホースを使用しなければならない。ホース

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は、JIS規格により材料、圧力特性等LPガスに適した内容で規定されており、経年使用に

よる劣化で交換する場合には、規定に合致したものを手配し交換しなければならない。

ホースは、充てん設備に設置された専用のホースリ一ルに巻き付けられ格納されている。

ホースの長さおよびサイズに規定はないが、呼称サイズ20A(19φ)、長さ30mが標準的なも

のとして装備されている。

交換時における互換性を考慮し、ねじ込み部のねじ規格は統一されている。

なお、「安全継手」を規定位置に取り付ける関係上、ホースリール側用(図 3-12)と、セ

イフティーカップリング側用(図 3-13)の 2本で組み立てられている。

[液石法規則第64条第7号]

図 3-12 充てんホース(ホースリール側)

図 3-13 充てんホース(セイフティーカップリング側)

3.10 均圧ホース

充てん設備に均圧用ホースを設ける場合に使用するホースであって、次の仕様のものが取

り付けられている。

ホースは、JISに規定されたLPガス用鋼線編組式ゴムホースを使用しなければならない。

ホースは、JIS規格により材料、圧力特性等LPガスに適した内容で規定されており、経年

使用による劣化で交換する場合には、規定に合致したものを手配し交換しなければならない。

ホースの長さおよびサイズに規定はないが、呼称サイズ10A(9φ)、長さ 30mが標準的なも

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のとして装備されている。

交換時における互換性を考慮し、ねじ込み部のねじ規格は統一されている。

なお、「安全継手」を規定位置に取り付ける関係上、ホースリール側用(図 3-14)と、ク

イックカップリング側用(図 3-15)の2本で組み立てられている。

[液石法規則第64条第10号]

図 3-14 均圧用ホース(ホースリール側)

図 3-15 均圧用ホース(クイックカップリング側)

3.11 安全継手

「安全継手」とは、充てん用ホースまたは均圧用ホース(取り付けた場合に限る。)の中間

(ホースの先端から60cm以内)に取り付けられている安全対策用の継手のことをいう。

安全継手の設置は、充てん作業でホースがホースリールから引き出された状態でLPガス

を充てん中、ホースに異常な引張力が加えられた場合に継手の中間部で自動的に分離し、バ

ルク貯槽等との接続部または充てん設備側でねじ込まれた部分の破損を防止することを目的

としている。また、分離した場合は、分離部分でホース内のガスを瞬時に止めることができ

る機構が備わっている。(図 3-16および図 3-17)

分離する力は、ホース内に圧力が無い状態で約530N(約50kgf)と規定されている。

なお、ホース内の圧力が高い状態で分離した場合、再結合はホース内の圧力を下げないと

結合できないため、充てん所等安全な場所に移動して処置する必要がある。

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[液石法規則第64条第8号および第10号・バルク告示第20条]

図 3-16 安全継手(充てんホース用)

図 3-17 安全継手(均圧ホース用)

3.12 ホースリール

充てんホースを巻取り格納しておくためのものであって、車両の取り扱い易い場所に設置

されている。

ホースリールは、自重およびゴムホース重量並びにホース内に封入されたLPガスの重量

を考慮し、引出しおよび巻取り作業がスムーズにできるよう設計されたものとなっている。

また、車両の走行振動等に対しても十分耐えるよう設計され強固に固定されている。

ホースリールの駆動は仕様に応じたものとなっており、スプリングを用いた「バネ式」、

モータを利用した「電動式」、油圧を利用した「油圧式」等がある。

3.13 圧力計

充てん設備の容器は、 高使用圧力が容器則に定められている。

このため、容器内の圧力を測定するためすべての充てん設備に「圧力計」が取り付けられ

ている。また、ポンプの出口側等容器内の圧力と相当程度異にする(する恐れのある)区分

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にも圧力計を取り付けることになっている。

通常、圧力計は「容器用」と「ポンプ吐出側用」の2個が 低限必要となる。

また、圧力計は規定によりJIS規格の「ブルドン管式」または同等のものと規定されてお

り、適切に圧力が測定できる圧力範囲のものを取り付けなければならない。

ブルドン管圧力計の原理は、圧力計内部のチューブ(ブルドン管)に加圧された時にブル

ドン管が圧力により伸びようとする力をリンク機構により指針を回転させ目盛り板にその圧

力を表示するものである。(図 3-18 参照)

通常設置されている圧力計は、JIS呼称で大きさが75φ~100φ、圧力目盛りは0~ 3.0MPaま

たは0~3.5MPaのものが使用されている。[液石法規則第64条第15号・バルク告示第25条]

図 3-18 圧力計(ブルドン管式)

3.14 温度計

充てん容器は、常に温度40℃以下に保持するように高圧法液石則で定められており、温度

計は液相部の温度を検知するものでなければならない。

[高圧法液石則第6条第2項第7号ニおよび第48条第2号]

LPガスは温度により圧力、体積が変化するので、充てん設備作業従事者は容器温度を管

理する上で「温度計」が必要となる。このような意味から、法令上で「温度計」の取付けが

義務づけられており、充てん設備にも規定に合致した温度計が設置されている。

通常温度計は「隔測型液体充満式」が採用されており、感温部、指示部とこれを接続する

導管の3つの要素から構成されている。

感温部内に封入された特殊な液体の膨張、収縮が導管を経て指示部のブルドン管部に伝達

され、ブルドン管の動きを指針に伝え目盛り板上に温度が指示される。

(図 3-19および図 3-20参照)

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目盛り範囲は100℃と規定されており、-30℃~70℃まで表示され、容器の 高許容温度で

ある40℃の目盛り線を赤色で表示してある。

感温部の容器内への挿入部は、ねじ込み専用のウェルが溶接取付されており、容器内のL

Pガスとは完全に遮断されているので、万一故障取替えの場合でも容器内にLPガスが充て

んされたままで交換ができるようになっている。

[液石法規則第64条第14号・バルク告示第24条]

図 3-19 温度計取付図 図 3-20 温度計構造図

3.15 ポンプ起動および停止スイッチ

バルク貯槽等への充てんホース接続作業完了後、ポンプの起動スイッチを投入(ON)す

ることになるが、充てん設備のポンプ起動および停止スイッチは通常荷役作業では遠隔操作

で行うよう規定されており、遠隔操作として無線等により行う仕様にて製作されている。

遠隔操作スイッチ部には、電波を発信するための電源として電池が使用される。

なお、電圧低下が起こった状態では作動しないことがあるので、電源用の予備電池は常に

用意しておく必要がある。 [液石法規則第64条第5号]

3.16 緊急停止スイッチ

通常使用するポンプ起動スイッチ(無線スイッチ)の他に、車両に固定し附属品操作箱か

ら離れた位置でポンプの緊急停止ができるスイッチが取り付けられている。このスイッチは、

遠隔操作スイッチが故障したり、充てん設備の側近で異常事態が発生した際、緊急に停止す

る必要がある場合に使用するもので日常の充てん作業では使用しない。

スイッチの設置場所は、原則として附属品操作箱の反対側(車両の右側)に設置されてい

る。 [液石法規則第64条第17号・バルク告示第27条]

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3.17 自動停止装置

充てん作業は、1人で作業する場合が殆どであり、充てん作業中作業員はバルク貯槽等の

充てん口に位置し、液面計を監視するため、充てん設備の周囲は無人状態となる。

このような状況下で、充てん設備に異常が発生した場合に災害の発生を防止する観点から

充てん作業を自動的に停止する装置が組み込まれている。

自動的にLPガスの充てんを停止するために、以下に示すような装置が装備されており、

これらの1つが異常を検知した場合は、ポンプの停止、ポンプ駆動用のエンジン停止(発電

機を使用しているものは発電機の停止)および緊急遮断弁の閉止が同時に行えるシステム

(インターロック機構)となっており、また同時に作動した旨を知らせる警報(ブザー、警告

ランプ等)を発する仕様となっている。(図 3-21参照)

① ガス漏れ検知器

附属品操作箱内に1個以上設置され、漏れたガスの濃度が規定値に達したときに信号を

伝達するようになっでいる。

a 検知器は防爆基準に合格したもの。

b 自動車部品の振動試験に合格したもの。

c その他精度、特性等は「液石法規則第64条18号イ・バルク告示第28条」に規定され

ている仕様を満足しなければならない。

なお、この検知警報設備の受信回路は、作動状態にあることが識別できるチェック

機能も備えており、警報を発し、ランプの点灯または点滅する場所は自動車の運転席

内となっている。

② 衝撃を検知する機器

自動車等がぶつかった場合、その衝撃または振動を検知し、信号を伝達するもので、

附属品操作箱内または車両の後部に1個以上設置されている。

a 附属品操作箱内に取り付けるものにあっては防爆基準に合格したもの。

b 自動車部品の振動試験に合格したもの。

c その他精度、特性等は「液石法規則第64条18号ロ・バルク告示第29条」に規定され

ている仕様を満足しなければならない。

③ いたずら防止

通常の充てん作業は、充てんホースの取出し用「小扉」のみが開かれ、他の扉は閉止

して行われる。第三者により附属品が格納された扉(「小扉」に対して「大扉」という。)

が開かれバルブ等が操作されるのを防止するために大扉が開かれた場合に感知するセン

サーが設けられている。

また、充てん作業終了後、ホースを格納する際に、大扉を開く必要上、センサーが作

動しないようにするため、第三者に判らない位置に解除スイッチが取り付けられている。

したがって、充てん作業者は充てん設備が導入された時、確認しておくべきである。

このような装置をわかり易く表現するために、「いたずら防止装置」と呼んでおり、

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その仕様は、次による。

a センサー(感知器)としてリミットスイッチが取り付けられてあること。

b 附属品操作箱内に取り付けるものにあっては、防爆基準に合格したものであること。

c 自動車部品の振動試験に合格したものであること。[液石法規則第64条第18号ハ]

図 3-21 自動停止装置機能の概要

3.18 誤発進防止装置

この装置は、充てん作業中無人状態となる充てん設備が勝手に動かないようにすることと、

充てん作業終了後、所定の収納作業を行わない限り車両が発進できないような装置が設けら

れている。

このような装置を「誤発進防止装置」という。

① 車両が発進することができない場合とは、次の状態をいう。

a 充てんのため充てんホースを、ホース受け金具から取り外した場合。

b 充てん作業終了後、ホースをホース受け金具に完全に収納しない場合。

c 充てん作業終了後、操作箱(ホース格納箱)の扉が確実に閉じられていない場合。

② 車両が発進できない機能とは、次の場合をいう。

a 車両の総輪にブレーキが作動している状態。

b その他発進できない機能

安全対策として、車両の走行(運転)中に、上記①の状態となっても「発進できない機能」

が作動しないようにインターロック機構が組み込まれている。

誤発進防止装置の構造は、ホース受け金具および扉の部分にリミットスイッチ等が設置さ

れ正規状態か異常状態かを検知し、電気回路により信号を伝達し、作動する機構となってい

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る。

操作箱内に設置するリミットスイッチおよび配線は防爆仕様でなければならない。

[液石法規則第64条第16号・バルク告示第26条]

3.19 LPガスの通る部分の耐圧試験

バルブ、計器類の他、これらを接続する方法としてフレキシブルホース等があり、使用す

る材料および組立後に実施すべき耐圧試験が定められており、これに合格しなければ使用す

ることができない。

通常試験圧力は容器の圧力を基準に決められており、容器および容器附属品以外の耐圧試

験圧力は次の圧力以上となる。

(容器の 高充てん圧力) 2.1MPa×1.5 = 3.15MPa以上

[液石法規則第64条第2号、バルク告示第17条]

3.20 LPガスの通る部分の気密試験

耐圧試験を行った後、同じ部位につき、気密試験に合格しなければ使用することができな

い。

耐圧試験と同様、気密試験圧力は容器の圧力を基準に決められており、次の示す圧力以上

の圧力で試験を行わなければならない。

(容器の 高充てん圧力) 2.1MPa以上

[液石法規則第64条第3号、バルク告示第18条]

3.21 LPガスの通る部分の肉厚測定

LPガスの通る部分の構成部材(バルブ、配管)につき、実際の肉厚を測定するよう基準

に定められている。

バルブ、配管等図面上および規格上、 小肉厚が表示されているが、実際に使用される構

成部材につき、計算値以上の肉厚を有していることを確認するために規定されている。

[液石法規則第64条第4号、バルク告示第19条]

4.充てん設備が移動式製造設備の場合

高圧法に基づき製造された移動式製造設備で液石法に規定されている充てん設備として使用

する場合、新たに液石法に規定されている充てん設備として許可を得る必要がある。

構造上は、高圧法に適合しておれば、充てん設備の許可が得られるよう規定されている。

(充てん設備は1台毎、新規許可となる)

法律上、業務用消費に使用されるため、貯蔵される貯槽、容器、バルク貯槽およびバルク容

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器へのLPガスの充てんは充てん設備でしか充てんできないことになっている。

また、充てん作業者の資格も高圧ガス保安協会または指定養成施設が行う「充てん作業者講

習修了証」を取得しなければならない。

■移動式製造設備→充てん設備への許可 [液石法規則第64条第2項]

■移動式製造設備→充てん設備の許可を受け充てんする場合 [液石法規則第72条第3号]

5.充てん設備の許可関係

5.1 新規許可

充てん設備の使用の本拠地(車庫のある場所)を管轄する都道府県知事へ許可申請を提出

する。 [液石法第37条の4第1項、液石法規則第63条]

5.2 申請単位

充てん設備1台ごとに新規許可となる。

5.3 充てん設備の変更許可申請

LPガスの通る部分の取替え(同型式以外への取替え)および配管系統等を変更する場合

は、変更許可申請を行い、都道府県知事の許可を受けた後でしか変更することができない。

[液石法規則第65条]

5.4 充てん設備の軽微な変更の届出

軽微な変更の場合は、変更完了後その旨を都道府県知事へ届け出れば良い。

軽微な変更とは、規則上、LPガスの通る部分の取替え(同形式)およびLPガスの通る

部分以外の取替え(充てん設備のトラックシャシを取り替えた場合等)および充てん設備を

廃止した場合となっている。 [液石法規則第66条および第67条]

6.充てん設備の完成検査

充てん設備の許可申請を提出後、当該充てん設備の完成検査を受けようとする者は「充てん

設備完成検査申請書」に所定の事項を記入し、都道府県知事に申請しなければならない。

なお、変更の許可申請を行った場合も同様とする。

また、完成検査を受け、これに合格し、「充てん設備完成検査証」の交付を受けなければ充

てん設備により充てんすることはできない。 [液石法規則第68条]

注:完成検査は協会または指定完成検査機関の行う完成検査を受けることができる。

[液石法規則第69条および第70条]