19
-1- 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要 1.はじめに 1-1 小笠原エコツーリズム推進の背景 小笠原諸島は一度も大陸と陸続きになったこ とがない海洋島で、生物は独特の進化を遂げて おり、「東洋のガラパゴス」といわれるように、 数多くの固有種を有する自然豊かな島である。 観光客はこのような小笠原の豊かな自然を求め て訪れており、村の観光産業は小笠原に訪れる 観光客によって支えられている。そこで、この 関係を維持するためには、貴重な生物の保護や 生息環境の保全などを前提とした観光のあり方 が求められる。 小笠原では豊かな自然を維持しつつ観光振興を図るといったエコツーリズム の考えを採用し、平成 12 年に「エコツーリズムの推進」を小笠原諸島観光振興 計画(ブルーダイヤモンドプラン)において観光振興の基本方針として位置づ けた。ここでは小笠原諸島のエコツーリズムは『かけがえのない小笠原の自然 をまもりながら、旅行者がその自然と自然にはぐくまれた歴史文化に親しみ、 小笠原の島民が豊かに暮らせる島づくりであり、小笠原村の基本理念の一つで ある“自然との共生”及び“世界のモデル<交流アイランド>”の実現を目指 すこと』にあると明記している。 一方で、小笠原ではエコツーリズム推進を謳う以前から、昭和 63 年に日本で 初めて実施した「ホエールウォッチング」を観光事業として定着させてきたこ とや、ホエールウォッチング定着の過程の中で、クジラの生息環境を守り、小 笠原からクジラを追い立てることのないようにと、観光利用のルールも導入さ れ、実際には早い時期から実践的なエコツーリズムの取り組みが始められてい る。これまでに、エコツーリズム推進の組織づくりやルールづくりといった具 体的な取り組みが既に観光関連団体や小笠原村、東京都などにより進められて きている。 このように、小笠原村内ではエコツーリズムの推進について、総論では村内 の理解が得られており、実際にエコツーリズムの取り組みも進んできている。 しかし、村民ひとりひとりにその概念が浸透していないこと、遠隔地という地 理的条件から具体的なエコツーリズム関連の事業推進においてのノウハウや情 報不足が懸念されている。また、平成 15 3 月には環境省と林野庁により世界

第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

  • Upload
    others

  • View
    6

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-1-

第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

1.はじめに

1-1 小笠原エコツーリズム推進の背景 小笠原諸島は一度も大陸と陸続きになったこ

とがない海洋島で、生物は独特の進化を遂げて

おり、「東洋のガラパゴス」といわれるように、

数多くの固有種を有する自然豊かな島である。

観光客はこのような小笠原の豊かな自然を求め

て訪れており、村の観光産業は小笠原に訪れる

観光客によって支えられている。そこで、この

関係を維持するためには、貴重な生物の保護や

生息環境の保全などを前提とした観光のあり方

が求められる。 小笠原では豊かな自然を維持しつつ観光振興を図るといったエコツーリズム

の考えを採用し、平成 12 年に「エコツーリズムの推進」を小笠原諸島観光振興

計画(ブルーダイヤモンドプラン)において観光振興の基本方針として位置づ

けた。ここでは小笠原諸島のエコツーリズムは『かけがえのない小笠原の自然

をまもりながら、旅行者がその自然と自然にはぐくまれた歴史文化に親しみ、

小笠原の島民が豊かに暮らせる島づくりであり、小笠原村の基本理念の一つで

ある“自然との共生”及び“世界のモデル<交流アイランド>”の実現を目指

すこと』にあると明記している。 一方で、小笠原ではエコツーリズム推進を謳う以前から、昭和 63 年に日本で

初めて実施した「ホエールウォッチング」を観光事業として定着させてきたこ

とや、ホエールウォッチング定着の過程の中で、クジラの生息環境を守り、小

笠原からクジラを追い立てることのないようにと、観光利用のルールも導入さ

れ、実際には早い時期から実践的なエコツーリズムの取り組みが始められてい

る。これまでに、エコツーリズム推進の組織づくりやルールづくりといった具

体的な取り組みが既に観光関連団体や小笠原村、東京都などにより進められて

きている。 このように、小笠原村内ではエコツーリズムの推進について、総論では村内

の理解が得られており、実際にエコツーリズムの取り組みも進んできている。

しかし、村民ひとりひとりにその概念が浸透していないこと、遠隔地という地

理的条件から具体的なエコツーリズム関連の事業推進においてのノウハウや情

報不足が懸念されている。また、平成 15 年 3 月には環境省と林野庁により世界

Page 2: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-2-

自然遺産候補地に関する検討会が設置され、同年5月に知床(北海道)や琉球

諸島(鹿児島県、沖縄県)とともに小笠原諸島が世界自然遺産の候補地になり

うる地域の一つとしてあげられたこと、平成 17 年度には小笠原航路に超高速船

テクノスーパーライナー(TSL)が就航されることを受けて、観光資源の保全と

利用の仕組みづくりが急務となっている。そこで、小笠原エコツーリズムの仕

組みづくりの確立を目指して、今回の環境省エコツーリズム推進モデル事業に

よる支援の実施に至ったものである。

2.小笠原エコツーリズムの現状

2-1 小笠原の観光資源 2-1-1 動植物の魅力

一度も陸続きになったことがない小笠原では、

小笠原にしかいないという固有種やめずらしい

動植物が多く、「東洋のガラパゴス」と称される。

天然記念物に指定されているのはオガサワラオ

オコオウモリ、オカヤドカリ、アカガシラカラス

バト、ハハジマメグロで、固有種とされている植

物はハハジマノボタン、ムニンツツジ、ムニンノ

ボタンなど植物全体の約 40%にも及ぶ。 また、小笠原は鳥の楽園でもある。天然記念物

に指定されているメグロやアカガシラカラスバト以外にも、小笠原には数多く

の鳥が見られる。イソヒヨドリ、カツオドリ、アホウドリ、ウグイス、ノスリ

などが見られ、小笠原にいると鳥の鳴き声が絶えることはない。 海では、秋にはマッコウクジラ、春にはザトウクジラを見ることができ、ハ

ンドウイルカやハシナガイルカはほぼ一年を通して見ることができる。ドルフ

ィンスイム、ホエールウォッチングの現地ツアーも盛んで、小笠原ほどクジラ

やイルカを身近に感じられるような観光地は他にないだろう。また、色鮮やか

な熱帯魚が美しい海に数多く見られ、ダイビングも盛んである。 昼間だけではなく、グリーンペペやオガサワラオオコウモリなど夜間の森で

観察できる動植物が見られる。ナイトツアーを楽しむ観光客も多い。

Page 3: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-3-

2-1-2 風景の魅力

父島の南西に位置する南島は、沈水カルスト

と呼ばれる珍しい地形をしており、非常に美し

い光景である。東京都 100 景にも選定されてい

る。島内にはカタツムリの一種であるヒロベソ

カタマイマイの化石や石灰岩が風化してできた

ラピエが見られる。母島には、石門と呼ばれる

小笠原の原生林が残されているエリアがある。 また、高い建物がなく周囲を海に囲まれてい

るため、小笠原では空の存在感が大きい。夕日

が沈む様子や、星空の美しさは格別である。ま

た、季節によっては南十字星が見られる。 森林ではガジュマルやタコノキなどが見られ、亜熱帯の独特の風景が広がる。

背の高い樹木は少なく、展望台や山の頂上から森一帯を見渡すことができる。

また、険しい山はなく、気軽にトレッキングを楽しめる。 さらに、大洋の青い海に囲まれた小笠原には、様々な表情のビーチがあり、

展望台からは水平線が望める。

2-1-3 人・文化の魅力

食文化では、島寿司、カメ料理などの地元の料

理や、塩、フルーツ、トマトなどの特産品、ジャ

ムやパスタといった加工品など、お土産品として

も魅力ある個性的な物産品が多くある。 歴史では、太平洋戦争の爪痕が島内に残されて

おり、戦闘機の残骸や探照灯など、歴史を振り返

る物証がある。 さらに、人の魅力として、二見港の見送りは、

小笠原の島民による心のこもったセレモニーで

あり、観光客に「また来よう」と思わせるようなすばらしいシーンである。

2-1-4 観光施設・プログラム

観光施設は、父島に海洋センター、ビジターセンター、亜熱帯農業センター、

水産センターといった研究施設があり、観光客に開放されているため自由に見

学ができる。 プログラムでは、ホエールウォッチング、スキューバダイビング、ドルフィ

Page 4: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-4-

ンスイミング、シーカヤック、釣りといった海での活動メニューが各種そろっ

ている。陸上の活動メニューでは、フィールドガイド、トレッキング、ナイト

ツアー、戦跡ツアーなどがある。 イベントでは、サマーフェスティバル、クジラフェスタ、パッション祭り、

母島フェア、正月の海開きなどが現地で開催されている。

2-1-5 小笠原での過ごし方の魅力

島独特の生活習慣やめずらしい現象などが、旅

の発見として心に残る。ファーストフード店やコ

ンビニエンスストアのない場所で過ごすことは、

観光客にとって新鮮な体験である。また、アクセ

スに時間がかかり、気軽に尋ねることが出来ない

観光地であることも、小笠原の魅力のひとつであ

るといって良い。遠くの島でのんびりと過ごした

いという気持ちで訪れる観光客も少なくない。 小笠原では自然を身近に感じることができ、普

段とは異なるリズムで時を過ごすことができる。また、おがさわら丸(定期便)

の就航日程が島の生活のリズムとなっており、内地とは異なる時間の流れ方が

小笠原にある。

2-2 小笠原観光の動向 2-2-1 小笠原観光客の概要

小笠原を訪れる観光客数は、平成 16 年で 15,925 人であった。定期船おがさ

わら丸利用者が13,143人、飛鳥や日本丸などの観光船利用による来島者は2,782人であった。ホエールウォッチング事業が事業化された平成元年には、観光客

数が年間 2 万人を超えたが、近年では 1 万 6 千人前後にとどまっている。 小笠原を訪れる観光客の特徴としては、20・30 代の若者が多く、24 歳から

40 歳で観光客全体の約半数を占めている。一方で、61 歳以上が 8.5%にとどま

り、熟年層が少ない。また、約 30%が小笠原に訪れるのは2回目以上で、リピ

ーターは特に 30 代、40 代に多い。 小笠原を訪れる観光客の半数以上が、旅行動機に自然環境の美しさ(53.1%)

をあげている。また、ダイビングや海での活動(43.1%)や、クジラやイルカと

の出会い(40.8%)を旅行動機とする割合が高く、自然風景を見て楽しむだけで

はなく、自然の中での活動を期待して訪れる観光客が多いといえる。 定期便の運航スケジュールの関係により、観光客は小笠原に最低3泊するこ

とになる。そこで、小笠原では、観光客の小笠原での活動は、若者(15 歳~24

Page 5: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-5-

歳)の 70%以上が海水浴やシュノーケリングを楽しみ、約 50%がドルフィンス

イムやスキューバダイビングなどを楽しむなど、海での活動を中心として、小

笠原滞在中にいろいろなツアーに参加している。 (データ:小笠原海運株式会社、小笠原観光宣伝手法調査)

(人)

昭和54年 おがさわら丸就航

平成元年 ホエールウォッチング事業化

(年度)

平成9年 新造船おがさわら丸就航 

0

5000

10000

15000

20000

25000

観光客数の合計

定期船(観光客数)

観光船(観光客)

H15H14H13H12H11H10H9H8H7H6H5H4H3H2H1S63S62S61S60S59S58S57S56S55S54S53S52S51

平成13年 伊豆諸島復興支援事業

2-2-2 小笠原観光を取り巻く状況(外的要因)

平成 17 年度に予定されている超高速船 TSL(テクノスーパーライナー)就航

の影響により、小笠原までの移動時間の短縮(25 時間から 17 時間に)や、旅程

の自由度の増加といったアクセス改善が見込まれる。そこで、家事や仕事の都

合で長旅が困難であった客層も、小笠原を訪れる可能性が高まり、観光客の多

様化が予測され、マーケットが変化すると考えられる。 さらに、観光客の多様化により、観光客が求めるサービスや観光目的も多様

になる。そこで、多様なニーズを理解して対応することや、小笠原の観光地の

姿勢を観光客に真摯に伝えるといった取り組みで、顧客満足を高めていく努力

が観光客を受け入れる小笠原側で必要となる。

2-2-3 小笠原観光の抱える問題(内的要因)

小笠原は、8月の観光客数を 100%とした場合、最も観光客数が少ない2月は

30%程度となり(おがさわら丸がドック入りする 1 月を除く)、観光客数の季節

変動が激しく、事業者にとっては安定収入を望めない厳しい状況にある。過度

な自然利用を防ぐといった観点よりピーク期に観光客数を増やすことではなく、

閑散期の集客力を増すことが必要とされている。

Page 6: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-6-

閑散期の観光客数を増やし、季節変動を緩和するには、夏休みや休日に関わ

らず比較的自由に旅行ができる熟年層や、学校期間中に実施される修学旅行の

積極的な受け入れが有効である。そのためには、熟年者向けのツアーや、修学

旅行向けの体験プログラムを準備する必要性がある。

2-3 エコツアーの実施状況 2-3-1 主なエコツアーの種類

●ホエールウォッチングツアー 平成元年から観光事業化され、現在で

は2~4月のザトウクジラ、9~11 月の

マッコウクジラのウォッチングツアー

が実施され、小笠原諸島では最も規模の

大きなエコツアーとなっている。南島上

陸とイルカウォッチングがセットにな

ったものが一般的である。料金は1日コ

ースでひとり 8,000 円~10,000 円程度

である。

●海のガイドツアー 島の独特の景観や海中公園などをめぐる島めぐりと、イルカウォッチング、

ドルフィンスイミングなどの海のガイドツアーが実施されている。料金は1日

コースでひとり 7,000 円~8,000 円程度である。 ●フィールドガイドツアー

10 年程前から本格的に事業化された陸上のガイドツアーで、固有の動植物や

生態系などをガイドの解説により案内する。1日コースでひとり6,000円~8,000円程度である。

●戦跡ツアー レーダー跡や探照灯など今も残る戦跡を巡りながら小笠原の歴史を解説する

ツアー。1日コースで 8,000 円程度である。 ●野鳥観察ツアー

特別天然記念物のハハジマメグロが生息する母島を中心に実施されており、

主に野山の固有種や稀少鳥類を観察するツアー。近年では船を利用して鳥島や

聟島列島などでも野鳥観察ツアーが実施されている。現地発のツアーよりも、

東京発のツアーになっている場合が多い。 ●ナイトツアー

固有種のオガサワラオオコウモリや光るきのこグリーンぺぺの観察を解説付

Page 7: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-7-

きでガイドが案内するツアー。約2時間でひとり 2,000 円程度。 ●植生回復ボランティアツアー

母島を中心としたアカギなどの移入種除去、シマホルトなどの固有種植栽の

ために行う植生回復作業をボランティアプログラムとして取り入れたエコツア

ー。平成 14 年から実施されている。 2-3-2 エコツアー(事業者)の特徴

●参加者が直接事業者にエコツアー

を申し込む 小笠原の旅行商品には、宿と交通と

現地ツアーがセットになったパッケ

ージツアーは少なく、ほとんどが個人

手配によるものである。そこで、旅行

前に観光客が直接インターネットや

電話で現地ツアーを申し込む方法や、

現地で判断して直接申し込む方法が

一般的になっている。 おがさわら丸船内のレストラン出

入口のスペースや船客待合所には、現地ツアー事業者の宣伝チラシが掲示され

ており、観光客はそれぞれの内容や値段を比較しながら、自分の体調や天候に

合わせて好みのツアーを選ぶことができる。 ●現地発着型のガイド付きツアーが盛んである

小笠原父島では現地発着型のガイド付きツアーが盛んで、観光客の多くが参

加している。旅行費用を見ても、現地ツアーなどを含む宿泊、食事、土産、施

設見学や島内交通以外で消費した額が全旅行費用の約 48.5%(ひとりあたり約

32,000 円)を占めている。 (データ:平成 15 年東京都産業労働局観光部統計より)

●観光客のいない時期が多い 定期船おがさわら丸が父島を出航した後は、観光客がほとんどいない時期に

なるため、エコツアー事業者も休業せざるをえない。定期船は基本的に 6 日に 1便の割合で往復するため、年間約 1/3 は観光客が小笠原にほぼいない時期である

といえる。おがさわら丸がドック入りする1月中旬から2月にかけては、休業

する事業者も多い。 ●エコツアー事業者は個人経営がほとんどである

小笠原にエコツアー事業者は個人事業者がほとんどで、複数人を雇うような

大規模な展開をする事業者は島内にみられない。

Page 8: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-8-

2-4 利用のルールと保全の実施状況 2-4-1 ルールの種類(保全対象別)

小笠原には、観光利用に関する様々なルールがある。それぞれ事業者団体が

自主的に共有するものや、東京都と小笠原村の協定によるものなど、成立や運

営には様々な背景がある。 保全対象 ルール名 運営・管理団体 制定年

クジラ

小笠原ホエールウォッチング

協会自主ルール

OWA(小笠原ホ

エールウォッチ

ング協会)

1989 年手引き書作成、

1992 年制定(現在のも

のは 1997 年改訂) イルカ

ドルフィンスイミング業者の

ガイドライン 旅行者のガイドライン 宿泊業者等のガイドライン 観光案内者のガイドライン

OWA 2002 年 3 月

南島・母島石門

南島および母島石門一帯の適

正な利用のルール 東京都、小笠原

村 2002 年 9 月

小笠原の自然

小笠原カントリーコード 環境省 1999 年

オガサワラオオ

コウモリ グリーンぺぺ

オオコウモリウォッチングに

ついてのガイドライン 観光協会ガイド

部 オオコウモ

リの会

2003 年 11 月

ウミガメ

ナイトウォッチングの際にウ

ミガメに遭遇した場合の注意

点(ガイドライン)

小笠原村観光協

会 2004 年

アホウドリ

小笠原に生息し繁殖している

アホウドリ類の生息環境を守

るため、観察のために設けられ

た注意点

行政機関(国、

東京都、小笠原

村)、村内観光関

連団体、村内N

PO、研究者

2004 年

イシガキダイ イシダイ

釣り対象魚の資源保護のため

に設けられたルール 小笠原母島漁業

協同組合 2001 年

アカガシラカラ

スバト 東平アカガシラカラスバトサ

ンクチュアリーの自主ルール 小笠原総合事務

所、小笠原自然

観察指導員連絡

2004 年 12 月

Page 9: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-9-

2-4-2 保全活動

●小笠原地域自然再生推進計画調査(環境省) 小笠原諸島全域の自然環境保全上の課題を整理するとともに、自然再生事業

の実施も視野に入れつつ、小笠原諸島全域の自然環境の保全及び自然再生に関

する基本方針を検討するために平成 14 年度より実施している調査である。 平成 14 年度には、小笠原諸島の自然環境をとりまく現状を網羅的かつ的確に

把握し本調査の基礎資料とするための既存文献や基礎資料の収集と整理、個々

の環境問題に取り組んでいる専門家に対して問題の現状・原因・必要とする対

策などについてヒアリングを行った結果、早急に対策を講ずべき種として、野

生化したヤギ(ノヤギ)、グリーンアノール、アカギ及びオオヒキガエルの4種

を選定した。また、過去に撮影された空中写真の収集を行うとともに、全島(火

山列島を除く)について最新の空中写真の撮影(1/10,000 カラー)を行った。 平成 15 年度には、平成 14 年度調査によって選定された4種のうちノヤギ、

グリーンアノール及びオオヒキガエルについて、生息状況の調査、捕獲・防除

Page 10: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-10-

手法等の検討を行った。また、アカギについては、駆除の技術的手法について

は概ね確立されていることから、母島における分布状況を航空写真解析によっ

て把握するとともに、潜在植生との重ね合わせから今後の拡大分布予測を実施

した。また、平成 14 年度に引き続き各種情報の収集・整理と補足調査を行いな

がら、収集情報を体系的に整理し、小笠原地域における重要地域の選定と各種

課題への対応方針の検討を行うとともに、環境データベースの整備に向けて、

平成 14 年度に撮影した航空写真のデジタルオルソ化を含め、データの統合・デ

ジタル化を実施した。 平成 16 年度には、平成 17 年度からの自然再生事業着手を目標に、平成 14、

15 年度の調査結果を踏まえ、早急な対策が必要な種については駆除・防除のた

めの技術的手法を検討(一部実証実験に着手)すると同時に、16 年度から設置

される学識者・行政機関・NGO 等を構成員とした「小笠原自然再生推進検討会」

において小笠原諸島全体の環境保全・自然再生に関する基本方針についての検

討を行う。また、WEB サイト開設、収集情報 DB 等による情報公開及び外来種

の拡大防止に関する普及啓発を進める。 小笠原自然再生事業 HP(http://ogasawara.prec.co.jp/)より

●小笠原村南島モニタリング調査(東京都、林野庁) 小笠原村南島モニタリング調査とは、南島の保全策を検討するための判断基

準となる侵食部の地形の正確な測量、降水量、雨水動態、表土流出量の把握、

風向・風速の影響、植生変化、南島の利用状況などについて、東京都が平成 12

年度から実施している調査である(平成 15年度から林野庁との連携で実施して

いる)。 平成 12 年度はアンケート調査を実施して、①ヤギ起源の裸地における土壌侵

食・土壌流出の進行、②観光における過度の不適切な利用、③移入種の侵入の 3つの課題とそれに対する早急な対策が必要であることを指摘し、植生回復策の

検討、入島者コントロール、観察ルールの周知・徹底、利用者への啓蒙活動、

移入種の除去などの提案が行われている。 平成 13 年度は、①自然環境の基礎データの収集、②適正な利用を行うにあた

ってのルール作り、③植生回復事業などの保全策の効果を把握し、より有効な

保全策を検討することを目的とし、地形、気象観測準備、植生変化、底質調査、

過去の資料に基づく利用状況調査を行っている。そして前年度に行われた調査

結果と比較して土壌侵食部における侵食状況は大きな変化もなく、植生回復の

傾向も見られることから工事を行うにしても最小限度に止め、今後のモニタリ

ング調査の結果によって判断していく必要があるという提案がなされた。 平成 14 年度調査では、前年、前々年調査で指摘された土壌侵食部の侵食状況

のより詳細な把握、自然観察路沿いや土壌侵食部周辺の植生変化をモニタリン

Page 11: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-11-

グすること、またこれまで観測できなかった気象観測、人の利用状況を加えた。

さらに全島的な自然環境の変化を明らかにするために全島植生調査と海鳥調査

を行った。 平成 15 年度調査では、南島に加えて母島石門のモニタリング調査も実施して

いる。 東京都モニタリング調査 HP

(http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sizen/eco/o_eco/14monitoring.htm)

より

● 植生回復事業(東京都)

小笠原諸島でのノヤギを原因とした自然への被害(植物の食害、土地の裸地

化、土壌の流出による海洋生物への影響など)を食い止めることや自然景観を

守るために、聟島(むこじま)、媒島(なこうどじま)、西島、南島などにおい

てノヤギの駆除と植生回復作業がすすめられた。 植生回復の具体的な方法としては、裸地や踏圧によって植生が破壊されてい

る箇所には、土壌浸食や流出防止対策や島内の芝生の移植などによる植生の回

復作業をおこなっている。さらに、人による踏圧による植生への被害の拡大を

防ぐために、試験的に利用ルートには飛び石を配置している。

東京都小笠原諸島の植生回復事業 HP

(http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sizen/ogasawara/kaihuku.htm)

より

Page 12: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-12-

2-5 ルール遵守の取り組み 2-5-1 自主ルール<小笠原ホエールウォッチング協会自主ルール>

東京都小笠原村では、ホエールウォッチン

グが事業化された当初から、事業者間で自主

ルールが設置され、守られている。クジラの

研究機関でもある OWA(小笠原ホエールウ

ォッチング協会)が事業者や旅行者にルール

を守るように呼びかけている。さらに、ウォ

ッチング船が一頭のクジラの周囲に集中す

るなどといったことを避けるために、陸上か

らの観察により無線で船に複数頭のクジラ

のいる場所を伝えるといった取り組みも行

われている。さらに、モニタリングによって、

ルールにある規定の数値の見直しや改訂の

提案なども行っている。 自主ルールは、罰則規定をともなわないた

め、守るか守らないかはホエールウォッチン

グツアーを催行している事業者の手にゆだ

ねられる。

2-5-2 南島および母島石門一帯の適正な利用のルール

平成 14 年 7 月に制定された「東京都

の島しょ地域における自然の保護と適

正な利用に関する要綱」に基づき、同年

9 月、小笠原村と東京都は「小笠原諸島

における自然環境保全促進地域の適正

な利用に関する協定書」を締結し、南島

と母島石門一帯の適正な利用等のルー

ルを定めた。 このルールに基づき、南島と母島石門

一帯には、東京都認定ガイドの同行なし

で観光客が進入することはできない。ま

た、1日あたりの利用者数や最大利用時間も定められた。 ルール運用にともない、東京都認定ガイド制度や監視員の配属といった取り

組みが実施されている。

Page 13: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-13-

南 島 母島石門一帯 最大利用時間 2時間 設定しない

1日当たりの最大利用者数 100人 (上陸1回当たり15人)

50人 (1回当たり5人)

制限事項 年3か月間の入島禁止期間

の設定 (当面、11月から翌年1月

末までとする。ただし、年末

年始の8日間は除く。詳細な

日程は年度毎に定める。)

鍾乳洞は立入禁止

ガイド一人が担当する利用

者の人数の上限 15人 5人

2-6 エコツーリズム関連事業の実施状況 2-6-1 【小笠原村】小笠原観光振興計画(ブルーダイヤモンドプラン)の策定

平成 12 年 3 月に策定された「小笠原諸島観光振興計画」において、今後の観

光施策の基本方針のひとつとしてエコツーリズムの推進を定めた。また、次の

事項を具体的に実現することを目指すものとしている。 ・ 小笠原諸島の世界的に貴重で美しい自然をテーマとして、これをまもるエコ

ツーリズムを推進すること ・ 誰もが一度は行ってみたい、また来たいと思うエコロジカルで美しい『自然

共生アイランド』の形成を目指すこと ・ 自然と歴史文化を大切にする観光と島の産業が連携する、持続可能な産業の

形成をはかり、『自然との共生』を実現すること

2-6-2 【東京都】エコツーリズム庁内連絡調整会議

東京都は、小笠原村内にある支庁と連携して、東京都の小笠原施策に関わる

担当課を横断したエコツーリズム町内連絡調整会議(事務局:総務局行政部進

行企画課)が開催され、小笠原におけるエコツーリズムに関する事業が提案、

実施されている。 東京都のエコツーリズム関連事業は、平成 16 年度では、東京都自然ガイド推

進事業(ガイド認定・講習)、自然環境保全促進地域の保護と利用(適正利用ル

ールの実施・モニタリングなど)、植生回復事業、移入種対策事業、ノヤギ駆除

事業などがある。 2-6-3 【観光関連団体】小笠原エコツーリズム推進委員会

小笠原観光振興計画で定められた基本方針のひとつである「エコツーリズム

の推進」を具体化するための組織として平成 14 年 6 月に発足した小笠原エコツ

Page 14: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-14-

ーリズム推進委員会は、平成 16 年 9 月に小笠原の目指すエコツーリズムの姿と

して、「小笠原エコツーリズム推進マスタープラン~持続可能な島づくりを目指

して」を策定した。 マスタープランでは、「かけがえのない小笠原の自然を残していきながら、旅

行者がその自然と自然に育まれた歴史文化に親しみ、小笠原の島民が豊かに暮

らせる島づくり」を基本理念をとして、推進組織の確立、保全のためのルール

確立、環境保全のための財源確保、利用のためのルール確立、広報宣伝活動、

人材育成・教育機能の整備についてエコツーリズム推進のための具体的な考え

方が提案されている。

2-6-4 【小笠原村】観光宣伝事業(平成 16 年度集客宣伝事業)

小笠原がエコツーリズムの島であることを広く印象付け、特にオフシーズン

の集客力を上げるための効果的な集客宣伝活動を展開し、小笠原の認知度を上

げることを目指した観光宣伝を行っている。「エコツーリズムの島小笠原」を統

一キャッチフレーズとして、雑誌、ラジオ番組、写真展、アドカードを媒体と

したキャンペーンを平成 16 年 12 月から平成 17 年 3 月にかけて実施している。

http://ogasawara.mqp.jp/(小笠原エコツーリズムキャンペーンHP)

Page 15: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-15-

3.小笠原エコツーリズム推進支援の方向性

3-1 小笠原エコツーリズムの課題 1.エコツーリズムに関する施策が統一的、効率的に行われていない

小笠原では、国、都(小笠原支庁)、村のそれぞれがエコツーリズムに関わる

多くの施策を展開している。さらに、それらの内部でもそれぞれの部局毎の所

管に分かれて施策が実施されており、エコツーリズム推進関連事業について統

一的な方針はなく、全体の把握や整理もままならない状態である。また、村外

の団体や個人による事業展開や調査研究について、地元で把握できていないも

のがある。 エコツーリズム推進には自然環境保全、観光、交通、産業、地域振興に係る

広い取り組みが関わってくるため、これらの情報を一元化して、調整あるいは

整理をすることが必要である。エコツーリズムを進めるにあたって小笠原の基

礎情報を集約し、関係者が協議を行う場の設定が望まれる。

2.実行力が不足している

自然環境の保全や観光振興についての活動を実際に担うようなエコツーリズ

ムを推進するための機関がなく、エコツーリズム推進活動を専業とする人材が

不足している。実情として、エコツーリズムに関わる各種事業(自然環境保全

事業や観光・地域振興事業など)について、村外の組織団体が受託しているケ

ースが多い。 小笠原村産業観光課内に 1 名、エコツーリズム推進担当者がおかれているも

のの、公的な立場にあることで活動が制約されているといえる。また、小笠原

エコツーリズム推進委員会は、いくつかのエコツーリズム事業を受託、実施し

ているものの、組織の位置付け、規模や活動資金の不足等の問題により、十分

に人材が投与できない現状がある。 これらの問題を解決するためには、十分な活動資金を有するエコツーリズム

推進を実際に担う組織団体を村内に設置し、エコツーリズム推進を専業とする

人材を確保することが必要である。

3.村内の広い理解と参画が必要である

小笠原エコツーリズムはこれまで、観光関連団体が観光資源の保全を目指し

てすすめてきた。1989 年のホエールウォッチング自主ルール制定以降、利用の

ルールを守りながら観光振興をはかっていくという方向性が示されている。一

方で村内において自然環境保全やその研究に携わる団体は、小笠原の固有種、

Page 16: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-16-

固有希少種の保護活動や調査研究をすすめてきてきた。今後は観光関連団体と

自然環境関連団体の協力のもとで、エコツーリズム推進がすすめられることが

望ましい。さらに、他産業や交通関係者も含めたより広い地元関係者の参画に

より、島民全体がエコツーリズム推進に意識を向けることが望ましい。

4.利用のルールや制度の見直しが必要である

すでに自主ルールとして定められた利用のルールや、東京都との協議におい

て定められたルールやガイド制度などについて、継続的なしくみとするための

見直しが必要となっている。 3-2 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の目標

3-1 で述べた小笠原エコツーリズムの課題を踏まえ、3 ヵ年をかけて実施する

予定の本モデル事業の目標として、次の2つが挙げられる。

目標1.持続的なエコツーリズム推進体制(システム)を確立する

エコツーリズムが目指す自然環境保全、観光振興、地域振興の両立を図るた

めには、様々な施策を束ねつつ、地元が主体となってエコツーリズム推進にあ

たることが望ましい。このため、村内の理解と参画を得ながら、モデル事業終

了後も小笠原エコツーリズムの推進活動が続けられるような、実行力のある地

元主体のエコツーリズム推進体制やシステム(ルールや制度)の確立を目指す

ものとする。

目標2.エコツーリズムに関する振興策のモデルケースとなる

小笠原のエコツーリズム推進活動を記録し、それらの情報を適宜広く紹介す

ることで、小笠原のエコツーリズム推進の取り組みや活動が、他地域への参考

となるようなモデルケースとなることを目標とする。

3-3 小笠原エコツーリズム推進支援策 本エコツーリズム推進モデル事業では、「3-2 小笠原エコツーリズム推進モデ

ル事業の目標」を達成するために次のような支援を小笠原村に対して行う。

1.エコツーリズムへの理解の確立への支援

○ 地元のエコツーリズム推進活動を担う組織、人材がエコツーリズムへの正し

い理解を持てるよう、先進地のエコツーリズム関係者などと話し合いの場を

持つ機会を設ける。 ○ また、村民や島内関係団体のエコツーリズムへの理解を促進するため、地元

Page 17: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-17-

向けのエコツーリズム啓蒙活動を支援する。

2.エコツーリズム推進のための組織のあり方に関する支援

○ 自然環境保全関係や一次産業関係の団体を含む小笠原においてエコツーリ

ズムに関わる広範な地元関係者が、エコツーリズム推進の具体的な課題につ

いて、共通の認識を持ち、今後の施策、特に実行組織の設置、利用のルール、

ガイド制度について合意形成を図るための協議会の設置と運営を支援する。 ○ 小笠原の自然環境保全、観光振興、地域振興を目的としたエコツーリズム推

進の実行組織((仮)小笠原新組織)の設置を支援する。

3.エコツーリズム推進のためのルールづくり、ガイドのあり方に関する支援

○ 既存の利用のルールについて、より守られるルール運営を目指す検討を支援

する。また、新しく必要なルールの検討について、関連情報の提供などの支

援を実施する。 ○ 小笠原のエコツアーガイドのあり方について、新しい制度の導入などの検討

について、関連情報の提供などの支援を実施する。

4.小笠原エコツーリズムのモニタリングと情報発信

○ モデル地区として、小笠原エコツーリズムが他地域の参考事例となるように、

活動経過についてモニタリングを行い、適宜情報発信を行う。

課題

支援策

目標2

支援策

目標1 地元関係者の参画、合意形成の場の確立

エコツーリズム推進の実行力の確保

村内のエコツーリズムへの理解の確立

エコツーリズム推進の取り組みの情報発信

小笠原エコツーリズムのモニタリングと情報発信

エコツーリズムに関する施策が統一的、効率的に

行われていない

実行力(活動資金・人材)が不足している

村内の広い理解と参画が必要である

利用のルールや制度の見直しが必要である

エコツーリズムへの理解の確立への支援

ルールや制度の見直し

エコツーリズム推進のための組織のあり方に関する支援

エコツーリズム推進のためのルールづくり、ガイドのあり方に関

する支援

持続的なエコツーリズム推進体制(システム)の確立

Page 18: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-18-

<モデル事業の取り組みスケジュールのイメージ>

平成16年度

平成17年度

平成18年度

小笠原新組織(仮称)

小笠原エコツーリズム協議会(仮称)

<小笠原>地元(小笠原)に持続的なエコツーリズム推進体制(システム)の確立

<他地域>他地域のエコツーリズム推進事業の参考となる情報やノウハウの蓄積

モデル事業終了後

①エコツーリズム推進のための実行組織設置の検討②利用のルールづくり③ガイド制度の検討④村内啓蒙活動実施の検討⑤その他エコツーリズム推進に関する事項の協議

エコツーリズム推進のための合意形成の場の確立

エコツーリズム推進の運用を担う組織の確立

<自然環境保全、観光振興、地域振興の両立を目指すエコツーリズムの実践>①自然環境保全自然環境保全活動、モニタリング調査 など②観光振興エコツアー販売、ランドオペレーター業務 など③地域振興村内啓蒙活動、・広報 など④利用のルール、ガイド制度の管理と運用

エコツーリズム推進体制確立のための準備

・支援の方向性の整理・支援内容に関する村内関係機関との調整・村内関係機関へのエコツーリズム推進体制確立のための働きかけ

<支援策1>エコツーリズムへの理解の確立

への支援

<支援策2>エコツーリズム推進のための組

織のあり方に関する支援

<支援策3>エコツーリズム推進のためのルールづくり、ガイドのあり方に関

する支援

<支援策4>小笠原エコツーリズムのモニタリングと情

報発信

Page 19: 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要ogasawara-info.jp/pdf/h16_ecotourism/01_h16_et.pdf · 第1章 小笠原エコツーリズム推進モデル事業の概要

-19-

<参考資料>

・ 『小笠原諸島観光振興計画』基本計画(ブルーダイヤモンドプラン)(東京都小笠原村、

平成 12 年 3 月) ・ 小笠原村自立振興策調査その2基本調査(東京都小笠原村、平成 15 年 3 月) ・ 小笠原村観光宣伝手法調査(東京都小笠原村、平成 16 年 3 月) ・ 小笠原エコツーリズム推進マスタープラン~「持続可能な島づくり」を目指して(小笠

原エコツーリズム推進委員会、平成 16 年 5 月) ・ 雑誌「かんきょう」2004 年 12 月号(編集:財団法人日本環境協会、編集協力:環境省、

発行:ぎょうせい) ・ 環境省自然再生プロジェクト HP(http://www.biodic.go.jp/saisei/saisei.html)

・ 環境省南関東地区事務所 小笠原自然再生事業HP(http://ogasawara.prec.co.jp/)

・ 東京都モニタリング調査 HP

(http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sizen/eco/o_eco/14monitoring.htm)

・ 東京都小笠原諸島の植生回復事業 HP

(http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sizen/ogasawara/kaihuku.htm)

・ 世界自然遺産候補地に関する検討会 HP(環境省自然環境局)

(http://www.env.go.jp/nature/isan/kento/index.html)