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� リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010
平成23年度から大学設置基準が改正され,「学生が卒業後自らの資質を向上させ,社会的及び職業的自立を図るために必要な能力」の育成を目指し,教育課程の内外を通じて,全学的に取り組むこと,その体制を整えることが盛り込まれた。確かに長引く経済不況の影響を受け,昨今大学新卒の就職は非常に厳しい状況が続いている。しかし,問題はもっと根深い。失われた20年を経て,グローバル化が進むなか,日本および日本企業を取り巻く環境は大きく変化している。現在生じているのは,単に就職環境だけの問題にとどまらず,まさに日本が成熟社会に向かうなかでの構造問題である。そうした大きなうねりの中,大学において育成する人材の要件は,どのように変わっていくのだろうか。大学で学んだこと,経験したことは,実社会でどのように役立つのだろうか。「就業力」とは,単に就職するための力ではなく,社会に出たその先で発揮される力にほかならない。今回は,すべての大学(大学院大学と募集停止校を除く)に学長アンケートを実施し,大学の課題認識と今後の取り組みをうかがったところ,66%と非常に高いご回答をいただいた。ご回答いただいた皆様に感謝するとともに,その調査結果のご報告を行いたい。(編集長)
文部科学省は平成22年2月25日に大学設置基準を改正し,教育課程内外を通じた「社会的・職業的自立に向けた指導等(キャリアガイダンス)」を制度化した(平成23年度4月1日施行)。今までも多くの大学でキャリア教育の重要性を認識し,就職セミナー,ガイダンスなどを始め職業意識の形成を目的とした授業科目の導入を進めてきたが,今回は設置基準を見直し正課として教育課程内に位置
づけることを明確化した。 この見直しの背景には,現在の厳
しい雇用情勢において,卒業しても就職できない学生が増大していることや,企業から学生の質の低下に対する批判など,学生の量的拡大や多様化に伴い大学教育に対する社会的要請が高まってきたからである。
大学の大綱化以降,規制緩和のなかで大学は急増し,大学の機能分化が起こってきた。旧帝大を始めとした「世界的研究・教育拠点」に力を入れる大学や,「高度専門職業人養成」に力点を置く大学など様々である。
なかでも多くの大学は「幅広い職業人養成」の機能に重点を置き,大学の個性や特色を謳って学生募集を行っている。これらの大学では今回の設置基準改正はより大きな意味をもっている。それは従来の伝統的な大学教育,とりわけ文系学部の大学教育では職業意識の形成や職業人育成に重きを置かなかったからである。「幅広い職業人養成」を大学の機能と標榜するからには就業力の育成がより重要となり,大学のカリキュラムを始め教育内容の見直しが迫られる。
学生の就業観・勤労観の育成へ向け教育力向上を目指す
『就業力育成に関する学長調査』結果報告
リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 �
大学で身につける就業力とは
特 集
【特集1部】
1章 「就業力育成」へ強い関心
就業力育成に関する設置基準の改正とは
緊急アンケート『就業力育成に関する学長調査』結果報告
改正による教育課程変更の有無と変更内容
設置基準改正の賛否とその理由
就業力育成科目の現状
必修・選択 /なし
授業の担当者
授業のボリューム必修・選択
就業力育成で必要な対策
教員/職員/カリキュラム/インターンシップ /各種連携等々
(現状)(将来)
外部機関との連携動向企業 /自治体 /他大学(現状)
(将来)
今後
フェースシート国公私 /地域 /規模 /(学長回答有無)
図表 1 「就業力育成に関する学長調査」の枠組み
角か く
方ほ う
正幸 株式会社リアセック キャリア総合研究所所長
� リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 �
そこで,今回の改正に対して大学はどのような行動をとるのか。改正案に対する賛否を始め,今後の具体的な行動を探る目的で緊急の学長アンケート調査を実施した。調査対象としたのは全国の732大学である。なお,調査は本誌と株式会社リアセックのキャリア総合研究所との共同で実施し,分析を行った。調査内
まず,設置基準の改正について賛否をたずねたところ,8割超と大多数が賛成(大いに賛成:15.8%,賛成:65.8%)で(図表2),その理由に,「学生の自立意識や社会性が落ちてきているので」(83.7%)といった自立意識の低さを挙げている(図表3)。
これは,雇用情勢(29.0%)や仕事内容の変化(61.6%)を上回っており,大学を取り巻く外部環境よりは,入学し
特集 大学で身につける就業力とは
図表 2 設置基準改正の賛否 図表 3 賛成の理由(複数回答)
無回答 0.4%反対 3.9%
どちらとも言えない14.1%
賛成65.8%
大いに賛成15.8%
0 20 40 60 80 100(%)
その他
学生の学力が低いので
学生の自立意識や社会性が落ちてきているので
職業や仕事の内容が大きく変化する時代になったので
雇用情勢が厳しいので 29.0
61.6
83.7(%)
6.1
4.3
緊急アンケート『就業力育成に関する学長調査』を実施
背景には「学生の自立意識と社会性の低下」
2章 自立意識を高める教育課程への変更
容や項目については図表1の「就業力育成に関する学長調査」の枠組みをご覧いただきたい。
本誌ではこの調査を通じ,大学が向かう改革の方向についての議論に役立てることが重要と考えている。この場を借りて本調査にご回答いただいた482校の方々へ感謝する。
回収率は66%と強い関心
調査の実施概要は16ページのと
おりで,回収率は65.8%に達した。つまり,今回は3分の2の大学から回答が寄せられたわけで,この問題に対する大学の強い関心がうかがえた。さらに,回答者の内訳は学長・理事長が5割近くを占めた。また,最後に設けた自由回答(就業力育成を図るうえでの課題や問題点についての意見)に対する記入率も非常に高く,半数を超えている。一部にはスペースが足りず欄外にびっしりと意見を寄せられた大学もある。
てくる学生の変化が原因と考えていることが窺える(図表3)。このあたりの考え方が今後の就業力育成の対策と密接に関連しているようだ。
過半数が教育課程の変更を検討
今回の設置基準改正を受けて,教育課程の変更を考えている大学は56.2%と半数を超え(図表4),その多くは就職支援の強化や企業との連携強化などの変更を挙げている(図表6)。ただし,今回の改正は教学改
革にも及ぶと考えられるなか,カリキュラム全体の見直しを検討するのは3分の1に留まる。
就業力育成授業の実施状況をみると,正課で実施していないのは11.8%であるから,残りの9割は必修,選択にかかわらず正課として授業を行っている。そして,すでに必修科目で実施している大学は約4割となった(図表6)。なお,その科目を担当しているのは一般教員が最も多く,ついで非常勤のキャリア教育の専門家,専任のキャリア教育の専門
図表 5 変更内容(複数回答)図表 4 教育課程変更の有無
無回答 0.8%
変更なし42.9%
変更を考えている56.2%
0 20 40 60 80 100(%)
その他
外部専門家の活用
インターンシップなど企業との連携強化
就職支援(就職相談等)の強化
専門教育の見直し
一般教育の見直し
カリキュラム全体の見直し 35.4
43.9
25.5
66.1(%)
54.6
30.3
11.1
図表 6 就業力育成授業の実施状況(複数回答)
図表 7 授業の担当者(設置形態別)(複数回答)
0 20 40 60 80(%)
無回答
正課では実施していない
選択科目として実施している
必修科目として実施している
0 20 40 60 80(%)
無回答
その他
一般の教員
外部専門機関へアウトソーシング
非常勤教員(キャリア教育の専門家)
専任教員(キャリア教育の専門家)
38.0(%)
45.6(%)
59.129.7
44.4
49.4
51.537.8
50.5
27.4
12.124.331.3
58.057.6
75.756.2
18.1
27.321.6
15.7
0.70.0
2.70.6
73.9
11.8
1.2
私立
公立
国立
全体
図表 8 就業力育成授業のボリューム
0 2 4 6 8 10 12
0 2 4 6 8 10 12
私立
公立
国立
全体
私立
公立
国立
全体
将来現状
将来現状
■必修科目:平均単位数(現状 /将来)
■選択科目:平均単位数(現状 /将来)
4.9
9.0
10.8
8.6
8.7
5.5
6.8
9.6
11.8
6.8
6.4
6.9
5.4
6.1
4.8
6.9
※パネルデータ,n=199
※パネルデータ,n=293
� リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 �
特に重要重要図表9 今後,就業力育成で重要な対策(複数回答)
0 20 40 60 80(%)
無回答
特に必要なし
その他
入試方法,試験の見直し
外部専門機関へのアウトソーシング
大学間連携の強化
高等学校との連携強化
PC講座,語学など資格取得講座の強化
履修指導の強化
教員の評価基準を研究実績主義から教育力に変える
民間企業経験のある教員採用
少人数授業(ゼミ形式など)の拡大
自己分析セミナーの強化
専門教育(カリキュラム)の見直し
地元自治体との連携強化
学内企業説明会の強化
就業力(基礎力)のアセスメント(能力測定)
学生支援課(組織)の強化
学生父母への理解促進
同窓会組織との連携強化
一般教育(カリキュラム)の見直し
卒業後3~5年以内のOB・OGとの関係強化
職員の専門性を高める
地元企業との連携強化
現在いる教員の教育力向上
インターンシップの強化
キャリアセンターの強化
初年次教育の強化
就職相談,カウンセリングの強化
学生の就業観,勤労観の育成 80.9(%)50.0
73.420.1
63.328.2
63.1
59.114.9
57.5
57.1
51.7
51.0
49.4
47.3
46.3
46.1
41.9
38.0
36.5
33.2
31.1
27.4
23.7
22.0
22.0
20.7
18.7
13.3
11.6
1.5
1.2
6.4
3.9
5.8
2.9
6.6
2.3
0.8
0.8
0.4
0.410.4
5.83.30.20.01.93.9
0.4
10.4
14.3
4.4
5.2
10.8
9.3
9.8
10.8
27.0
28.0
特集 大学で身につける就業力とは
対 策 全体(N=482)
設置形態 学生規模
国立(N=71)
公立(N=47)
私立(N=359)
1,000 人未満
1,000 ~2,999 人
3,000 ~9,999 人
10,000人以上
学生の就業観,勤労観の育成 80.9% ② 74.6% ① 72.3% ① 84.1% ① 76.0% ① 78.7% ① 86.9% ① 87.8%
就職相談,カウンセリングの強化 73.4% ① 78.9% ② 68.1% ② 73.5% ② 66.1% ② 70.7% ② 85.4% 67.3%
初年次教育の強化 63.3% 62.0% 48.9% ③ 65.7% 49.6% 63.4% 70.8% ② 75.5%
キャリアセンターの強化 63.1% 63.4% 48.9% 65.2% 54.5% 57.9% ③ 72.3% ② 75.5%
インターンシップの強化 59.1% ③ 69.0% ③ 61.7% 57.4% 55.4% 53.7% 67.9% 65.3%
現在いる教員の教育力向上 57.5% 47.9% 55.3% 60.4% 56.2% ③ 64.0% 52.6% 57.1%
地元企業との連携強化 57.1% 49.3% 51.1% 59.9% ③ 57.0% 56.7% 60.6% 53.1%
職員の専門性を高める 51.7% 52.1% 36.2% 54.0% 40.5% 50.6% 62.8% 55.1%
卒業後 3 ~ 5 年以内の OB・OG との関係強化 51.0% 54.9% 57.4% 49.9% 45.5% 52.4% 51.8% 61.2%
一般教育 ( カリキュラム ) の見直し 49.4% 45.1% 42.6% 51.5% 47.9% 45.7% 54.7% 49.0%
同窓会組織との連携強化 47.3% 59.2% 46.8% 45.4% 28.9% 48.2% 56.9% 67.3%
学生父母への理解促進 46.3% 26.8% 31.9% 52.4% 43.8% 51.2% 47.4% 36.7%
学生支援課 ( 組織)の強化 46.1% 52.1% 36.2% 46.5% 46.3% 47.6% 46.0% 40.8%
就業力 ( 基礎力 ) のアセスメント ( 能力測定 ) 41.9% 39.4% 36.2% 43.5% 30.6% 43.3% 51.1% 38.8%
学内企業説明会の強化 38.0% 38.0% 38.3% 38.2% 30.6% 33.5% 51.1% 36.7%
地元自治体との連携強化 36.5% 36.6% 31.9% 37.3% 37.2% 34.1% 37.2% 44.9%
専門教育(カリキュラム)の見直し 33.2% 31.0% 29.8% 34.3% 33.1% 31.1% 37.2% 30.6%
自己分析セミナーの強化 31.1% 33.8% 23.4% 31.8% 28.9% 27.4% 35.8% 36.7%
少人数授業(ゼミ形式など)の拡大 27.4% 28.2% 17.0% 28.7% 19.0% 26.8% 29.9% 40.8%
民間企業経験のある教員採用 23.7% 16.9% 17.0% 26.2% 19.0% 26.8% 24.1% 24.5%
教員の評価基準を研究実績主義から教育力に変える 22.0% 12.7% 6.4% 25.9% 25.6% 23.8% 19.7% 14.3%
履修指導の強化 22.0% 21.1% 23.4% 22.3% 22.3% 25.0% 16.8% 22.4%
PC 講座,語学など資格取得講座の強化 20.7% 12.7% 8.5% 24.2% 19.8% 20.7% 26.3% 12.2%
高等学校との連携強化 18.7% 12.7% 10.6% 21.2% 14.9% 20.7% 17.5% 24.5%
大学間連携の強化 13.3% 8.5% 10.6% 14.8% 16.5% 11.6% 12.4% 12.2%
外部専門機関へのアウトソーシング 11.6% 8.5% 8.5% 12.8% 11.6% 12.8% 9.5% 14.3%
入試方法,試験の見直し 10.4% 8.5% 4.3% 11.7% 7.4% 9.8% 13.1% 12.2%
その他 5.8% 5.6% 10.6% 5.3% 3.3% 6.1% 7.3% 8.2%
特に必要なし 0.2% 0.0% 0.0% 0.3% 0.0% 0.6% 0.0% 0.0%
無回答 1.9% 1.4% 0.0% 1.4% 1.7% 1.8% 0.0% 2.0%
図表 10 設置形態・規模別にみた重要な対策(複数回答)
表中の網(赤)は全体値より5ポイント以上高いことを示す表中の網(青)は全体値より5ポイント以上低いことを示す
家で,外部機関へのアウトソーシングは3割に満たない(図表7)。これを設置形態別にみると,国立では専任教員(キャリア教育の専門家)が59.1%と最も多く,外部専門機関へのアウトソーシングは最も少ない
(12.1%)。 公 立 で は 一 般 教 員 が75.7%ときわめて高い割合を占めている。これは公立には比較的看護や医療系の大学が多く,これらの多くの授業が職業教育に繋がっていることが理由と思われる。このように公立では一般の教員が多く担当していることから,キャリアの専門家の活用は専任,非常勤を問わず少なくなっている。また,外部専門機関へ の ア ウト ソ ー シ ン グ は 私 立
(31.3%)が最も多く,公立(24.3%),国立(12.1%)の順に低くなっている。
必修が4.9単位,選択は9.0単位
では,大学が提供する授業科目の中で就業力育成科目はどの程度の割合を占めているのか。また,将来(5年後くらい)はどの程度を想定しているのかを必修科目,選択科目別にその単位数を尋ねた。回答状況をみると,大学によってバラツキが大きいことがわかった。というのも,医療福祉や看護系の大学では50単位以上の回答が散見され,一般的な文系や理工系の大学と比較できない。そこで,現状と将来の平均単位数を算出するに当たっては,①看護系の大学など授業科目の多くが職業と密接に関連する場合は除外。具体的には単位数が100以上と記入してある場合は除外。さらに,②母
※設置形態,学生規模別にポイントが高い順に①~③とランクづけた。
10 リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 11
育や学生の就業観,勤労観の育成が重要視されている。また,キャリアセンターの強化も多く挙げられていて,組織的な解決策をより重視していることが窺われる。
地域別にみると(図表11),色分けからわかるとおり,全体に西高東低で,九州や関西地域の大学がより積極的に各種対策を考えている傾向がある。一方,北海道東北や関東は外部機関へのアウトソーシングを挙げる割合が相対的に高く,対応策の違いが見受けられる。
また,学長とそれ以外の回答者の違いをみてみると,現在いる教員の教育力向上やOB・OGとの関係強化に差がみられ,学長の権限が及ぶ対策か否かによる違いとも考えられる。
企業や自治体との連携は7割が実施
外部機関との連携についてたずねると,地元企業や地元自治体との連携強化を挙げる大学は多く,実際に外部機関との連携を実施しているかを尋ねると67.6%の大学があると回答した(図表12)。地元企業や地元自治体との連携が一般的で,他大学との連携は19.9%で少ない。また,今後連携したい外部機関をみても,地元企業団体,地元個別企業,地元自治体が中心で,他大学などとの連携はあまり考えられていない。
マネジメントの問題と外部活用の有効性
今回のアンケートから就業力育成を図っていくうえで,大学がどのような対策を講じようとしているかがわ
対 策全体
(N=482)
地域 回答者
北海道東北
(N=61)
関東
(N=152)
中部(北陸)(N=82)
関西
(N=91)
中国四国
(N=44)
九州(沖縄)(N=48)
学長
(N=226)
学長以外
(N=256)
学生の就業観,勤労観の育成 80.9% ① 75.4% ① 78.9% ① 78.0% ① 83.5% ① 88.6% ① 91.7% ① 81.4% ① 80.5%
就職相談,カウンセリングの強化 73.4% ② 72.1% ② 75.7% ② 69.5% ② 76.9% ③ 70.5% ② 75.0% ② 73.9% ② 73.0%
初年次教育の強化 63.3% ③ 63.9% 55.3% 56.1% ② 76.9% ② 72.7% ③ 70.8% 63.3% ③ 63.3%
キャリアセンターの強化 63.1% 62.3% ③ 65.8% 64.6% 68.1% 50.0% 58.3% ③ 66.4% 60.2%
インターンシップの強化 59.1% 54.1% 62.5% 54.9% 60.4% 63.6% 60.4% 57.1% 60.9%
現在いる教員の教育力向上 57.5% 45.9% 53.9% 59.8% 64.8% 61.4% 66.7% 60.6% 54.7%
地元企業との連携強化 57.1% 59.0% 49.3% ③ 67.1% 52.7% 61.4% 68.8% 58.0% 56.3%
職員の専門性を高める 51.7% 45.9% 50.7% 50.0% 57.1% 54.5% 54.2% 50.0% 53.1%
卒業後 3 ~ 5 年以内の OB・OG との関係強化 51.0% 45.9% 52.6% 43.9% 52.7% 50.0% 66.7% 45.6% 55.9%
一般教育(カリキュラム)の見直し 49.4% 45.9% 46.7% 40.2% 54.9% 52.3% 68.8% 51.3% 47.7%
同窓会組織との連携強化 47.3% 41.0% 46.7% 48.8% 53.8% 34.1% 58.3% 49.6% 45.3%
学生父母への理解促進 46.3% 44.3% 42.8% 42.7% 52.7% 43.2% 60.4% 46.0% 46.5%
学生支援課(組織)の強化 46.1% 42.6% 42.8% 46.3% 51.6% 43.2% 54.2% 45.1% 46.9%
就業力(基礎力)のアセスメント(能力測定) 41.9% 44.3% 44.1% 34.1% 45.1% 36.4% 47.9% 39.4% 44.1%
学内企業説明会の強化 38.0% 32.8% 40.8% 36.6% 38.5% 34.1% 43.8% 38.5% 37.5%
地元自治体との連携強化 36.5% 32.8% 34.9% 35.4% 37.4% 40.9% 45.8% 38.5% 34.8%
専門教育(カリキュラム)の見直し 33.2% 27.9% 36.8% 20.7% 36.3% 31.8% 47.9% 35.0% 31.6%
自己分析セミナーの強化 31.1% 31.1% 28.9% 31.7% 31.9% 31.8% 37.5% 30.5% 31.6%
少人数授業(ゼミ形式など)の拡大 27.4% 27.9% 25.7% 20.7% 31.9% 29.5% 35.4% 29.2% 25.8%
民間企業経験のある教員採用 23.7% 16.4% 25.0% 28.0% 23.1% 11.4% 35.4% 21.2% 25.8%
教員の評価基準を研究実績主義から教育力に変える 22.0% 13.1% 21.7% 20.7% 28.6% 18.2% 29.2% 19.9% 23.8%
履修指導の強化 22.0% 19.7% 20.4% 19.5% 26.4% 20.5% 27.1% 26.1% 18.4%
PC 講座,語学など資格取得講座の強化 20.7% 18.0% 19.7% 19.5% 25.3% 18.2% 25.0% 23.0% 18.8%
高等学校との連携強化 18.7% 19.7% 17.8% 17.1% 26.4% 15.9% 12.5% 17.7% 19.5%
大学間連携の強化 13.3% 11.5% 13.2% 11.0% 15.4% 11.4% 18.8% 14.6% 12.1%
外部専門機関へのアウトソーシング 11.6% 16.4% 16.4% 12.2% 7.7% 4.5% 4.2% 10.2% 12.9%
入試方法,試験の見直し 10.4% 3.3% 11.2% 8.5% 16.5% 9.1% 10.4% 8.8% 11.7%
その他 5.8% 3.3% 8.6% 2.4% 4.4% 6.8% 8.3% 4.4% 7.0%
特に必要なし 0.2% 0.0% 0.0% 0.0% 1.1% 0.0% 0.0% 0.0% 0.4%
無回答 1.9% 1.6% 2.6% 1.2% 0.0% 0.0% 0.0% 2.2% 1.6%
図表 11 地域・回答者別にみた重要な対策(複数回答)
表中の網(赤)は全体値より5ポイント以上高いことを示す表中の網(青)は全体値より5ポイント以上低いことを示す
特集 大学で身につける就業力とは
要と考えていることが分かる。また,その対策のなかで特に重要
と考えられるもの(最大3つまで)をみると,およそ同じ傾向を示すものの,順位は少し変わってくる。前述でトップだった学生の就業観,勤労観の育成(50.0%)が最も高いが,少し離れて初年次教育の強化(28.2%),キャリアセンターの強化(28.0%),現在いる教員の教育力向上(27.0%)の3つが特に重要と考えられている。図表にはないが,実は私立ではこの教員の教育力向上を挙げるのが30.4%と多く,学生の就業観育成(52.6%)に次いで特に重要な対策と考えている。
次に,重要な対策の複数回答が国公私立,地域や学生規模などによってどのような特徴があるかをみてみよう(図表10)。まず,トップ3を設置形態別にみると,国立は,①就職相談,カウンセリングの強化(78.9%),②学生の就業観,勤労観の育成(74.6%),③インターンシップの強化(69.0%)。公立は,①学生の就業観,勤労観の育成(72.3%),②就職相談,カウンセリングの強化(68.1%),③インターンシップの強化(61.7%)。私立は,①学生の就業観,勤労観の育成(84.1%),②就職相談,カウンセリングの強化
(73.5%),③ 初 年 次 教 育 の 強 化(65.7%)と重点が異なる。全体とのポイント差でみると(赤,青の色分け等参照),国立では就職相談などの個別サービスの強化,私立では学生の就業観の育成や初年次教育の強化が重要と考えている。
また,大学の規模によっても対策の違いがみてとれる。学生規模の大きい大学では相対的に初年次教
数を一定にするため現状,将来の両方に記入してある大学に限定し,パネルデータとして変化を調べた。その結果として,必修は199サンプル,選択は293サンプルによる比較を行った。すると,必修科目の平均単位数は,現状で4.9単位,選択科目は9.0単位であった(図表8)。また将来は,必修が平均6.8単位(+1.9)で,選択は10.8単位(+1.8)である。したがって,今後は必修・選択ともに約2単位(1コマ)増やすことを想定している。大学で取得する単位数を124と考えると全体に占める割合は必修でも5%前後,選択科目を考慮しても1割に満たないと考えられる。また,設置形態別にみると私立での増加率が大きいのが特徴である。
対策のトップは「学生の就業観,勤労観の育成」
今後,就業力育成を図っていくうえでどのような対策を重要と考えているかをみるため29項目の対策を列挙し,そのなかから自由に選んでもらった(図表9)。さらに,そのなかで特に重要と考えているものを最大3つまで選んでもらった。
この結果をみると,必要な対策のトップ3は,①学生の就業観,勤労観の育成(80.9%),②就職相談,カウンセリングの強化(73.4%),③初年次教育の強化(63.3%)となった。続いて,キャリアセンターの強化(63.1%),インターンシップの強化(59.1%),現在いる教員の教育力向上(57.5%),地元企業との連携強化(57.1%),職員の専門性を高める(51.7%)が挙げられ,これらの対策は半数以上が重
※地域,回答者別にポイントが高い順に①~③とランクづけた。
かってきた。それは何よりも学生の就業観,勤労観の育成が重要で,そのためには初年次教育や就職相談,カウンセリングの強化を図るというものだ。また,それを担う人材面でみると,現在いる教員の教育力の向上や職員の専門性を高めることを挙げている。キャリアセンター組織やインターンシップ制度の強化を挙げるものの,民間企業経験者の採用やアウトソーシングはあまり検討されていない。つまり,就業力育成に関しては極力自前で解決したいと考えていることがわかる。ただし,就職にかかわる企業やOB・OGとは連携を深めたいと願っているようである。
それでは,このような大学の対策が今後順調に進み就業力の育成が図られるのだろうか。残念ながら特集2部の自由回答にみられるような大学組織の課題を考えると,この対策がそのまま順調に効果を発揮するとは考えにくい。というのも学長以下大学関係者が指摘するように,企業と異なり大学はトップダウン型の改革が難しい組織であるためだ。しかるに就業力の育成を図るという課題は,正課・正課外を問わず全学的
なカリキュラム改革を必要とする。自由回答では教職員の意識改革や連携の必要性が数多く挙げられており,まさにこの点が大学組織の最大の課題と言える。そして,このマネジメント上の問題が何よりも厄介な課題なのである。
次に人材と資金の不足問題について考えてみよう。この人材と資金は密接に関連していることがわかる。多くの大学は自前主義での解決を目指しているが,これは背景に資金不足がある。この分野の専門家を積極的に活用すればそれだけコストがかさむ。教員枠を外部の専門家と置きかえることも容易ではない。そこで,現在いる教員で何とか解決したいと考える大学が多い。はたして,FDなどを通じた現有教員の教育力向上対策で間に合うのだろうか。自力改革は理想的だが,過去大胆な改革が既存の組織,内部人材だけでできた例はない。また,資金不足については,日本経済の停滞と少子化市場を考えれば現在のパイを増やすことは難しい。したがって,就業力育成のためのコストは大学全体での支出配分を再度見直し,大学経営とい
う大局的な観点から捻出する努力が必要となる。今年度から始まった文部科学省の就業力育成事業は改革を進める外部資金として有効であるが,その後の継続を考えれば,言うまでもなく現状の支出見直しが不可欠である。
最後に,今後の大卒求人について触れておきたい。今回の大学における就業力育成対策は今後とも大卒求人の需要が相当数あることが前提である。しかし,はたして10年後にも大卒者数を上回る民間企業の求人需要があるのだろうか。ICTの止まることのない発展(省力化),企業活動のグローバル化(オフショア),世界的な大学進学率の上昇(大卒者の膨張)などを考えれば,たとえ景気が多少回復しても以前のような大卒者に相応しい新規労働市場が再現するとは思えない。いわゆる第三段階教育における「幅広い職業人養成」機能を目指す大学にとっては,大卒労働の新たな求人開拓と求人創造をセットに考える必要がありそうだ。そして,実はこの問題のほうがより深刻かも知れない。
特集 大学で身につける就業力とは
12 リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 13
今回,就業力育成を進めるうえでの課題を自由に記入する欄を設けたところ,多くの意見が寄せられた。特集2部では,この自由回答からみえた就業力育成を実現するための大学の課題について整理した。8ページの図表9に挙げた対策の選択肢に含まれない課題として,大学の組織的な問題を挙げる意見が多く,特に教職員の意識改革と教職連携の推進を合わせると
57件にのぼる。カリキュラム改革の具体的内容や,実現に向けて顕在化した問題点についても多くの記述があった。
そこで,これらの意見を基に,就業力育成を全学的に進めるうえで考えられるプロセスと,大学組織が抱える課題意識についてまとめたのが図表13である。さらに,自由回答に具体例が挙げられていたテーマを分類したところ,おおむ
ね以下の7つに分けられた。①全学的カリキュラム改革(45件)
②教職員の意識改革(34件)
③教職連携(23件)
④学内資源の不足(15件)
⑤アセスメント(効果検証)(10件)
⑥女子大学の特徴(7件)
⑦その他(51件)
テーマをまたがる意見を記述した例も多かったので,件数はのべ数をカウントしたものである。な
無回答 2.5%
ない29.9%
ある67.6%
図表 12 外部機関との連携があるか
無回答
その他
地元自治体(市町村,県)
他大学
地元個別企業
地元企業団体
無回答
その他
地元自治体(市町村,県)
他大学
地元個別企業
地元企業団体 56.4
44.6(%)
42.9
16.2
43.4
6.4
29.0
51.2
19.9
58.6(%)
19.0
0.3
■連携している外部機関(複数回答) ■連携したい外部機関(複数回答)
最大の課題は教職員の意識改革と教職連携アンケート自由回答からみえた大学組織の課題 (本誌/小林・能地・松本)
【特集2部】
図表 13 自由回答からみえた就業力育成における大学組織の課題
就業力育成=学長を中心に全学的な取組みが必要
教職連携の推進
全学的カリキュラム改革(正課・正課外を含む)
〈課題〉学内における就業力育成の位置づけ再確認
〈課題〉教職員の意識改革
〈課題〉ユニバーサル化による学生のレベル低下に対応 ①自立意識や社会性の低下 ②学力の低下
具体的なカリキュラム改革の内容① 入口での教育 リメディアル教育,初年次教育② 一般教育・専門教育を通じたカリキュラム ・正課・正課外を通じたプログラム 教養教育の再構築 専任教員によるキャリア教育 就業力育成プログラム(社会人基礎力,学士力,ゼミ,PBLなど) ・学外連携 地域,企業,OB,保護者,他大学(インターンシップ)など
実現に向け顕在化する問題
・学内資源の不足 組織設置,専任教員確保,外部講師への報酬
・学生の意識 正課外プログラムへの出席率の低さ
・PDCAをどう回すか(何でチェックするか) 効果のアセスメント方法
・教員の評価方法見直しの必要性 研究論文から教育力へのシフト
お,⑦は共通テーマとしてくくることができなかった意見で51件と多い。このことは,問題がそれぞれ大学固有の歴史や事情とも密接にかかわることを物語っている。
ここでは誌面の都合上,すべてを紹介することはできないが,学長が回答した主要な意見の原文をテーマごとに数点紹介し,本課題に対する今後の動向を見通すうえでの参考としたい。
①全学的カリキュラム改革(45件)● 「入学前から卒業後まで生涯に
わたるキャリア形成」と「正課内外の教育を通じたキャリア支援」とを統合し,自立した職業人の育成を目指す。そのために大学全体として取り組む教育改革を推進しなければならない。その骨子は,「地域連携PBL」の実質化,ラーニングポートフォリオとキャリアポートフォリオからなる「学生ポートフォリオ」の作成,「就業力マイスター奨学制度」からなっている。これらの就業力育成を推進する教職協働が実体をもつものになるのか,これが最大の課題と考えている。
(愛知東邦大学 学長 山極完治)
● 本学では教育課程の中にキャリア教育が体系的に位置づけられているとは言い難い現状であり,就業力育成について全学的な取り組みを推進していく必要がある。
(九州(沖縄) 私立大学)
● 「就業力育成授業」そのものの充
実も大切であるが,初年次教育,リベラルアーツ教育,専門教育の各シラバス自体を「社会に貢献する工学」の視点からも改革・強化していきたい。
(芝浦工業大学 学長 柘植綾夫)
● 学生の多様化が進み,能力,意欲,目的のいずれについても一つの方法論だけでは解決できない。こうした難しさの中で学生に社会とのレリバンスを感じながら学び続けてもらうよう教室内での学習と学外での教育プログラムの往還から成長を可視化し前に踏み出せることが課題。
(関西国際大学 学長 濱名 篤)
②教職員の意識改革(34件)● 専任教員の意識改革が必要と思
う。大学の研究中心の体制を教育力向上に向けたいが,教員の評価(論文評価が中心)との関係で難しい。
(びわこ学院大学 学長 村澤忠司)
● 専任教員の意識改革を前提として,キャリアスタッフとの協働がどこまで実現できるかが鍵である。
(淑徳大学 学長 長谷川匡俊)
● 就業力とは何か?どのような能力を指すのか?先ずそのことを大学として明確にする必要がある。その上で,対策の立案がなされるべきである。
(長崎大学 学長 片峰 茂)
● 正課科目と正課外として実施している就職キャリア支援プログラムとの連携を図ること。また,全ての教職員が学生の就業力育
成に関心を持ち,種々のアイデアを施策に反映させること。
(西南学院大学 学長 G.W.バーク
レー) ● 教員間における就業力育成に対
する考え方の温度差に苦慮している。学生の変質についていっていない教職員。
(中部(北陸) 私立大学)
● キャリア教育という文言が世に出てから久しいが,キャリア=就職というように誤解され,各大学が就職センターをキャリアセンターと名称を変えたことから更にキャリア教育はキャリアセンター(就職センター)が行うものだと思われてきた。平成23年4月施行に向け設置基準を改正し,教育課程の中で就業力育成を図る必要がないかと問うてもピンとくる教員が多くないのが実態であり,意識改革が必要である。学士課程教育の構築による3つのポリシーと質保証と全てが関連していることを認識すべきである。
(国士舘大学 学長 朝倉正昭)
③教職連携(23件)● キャリア支援部委員(教員),ゼ
ミ担当委員及びキャリア支援センターの三者の有機的連携強化が必要と考える。
(昭和女子大学 学長 坂東眞理子)
● 教職協働で取組みを進める上での教職員の意識改革(縦割り体制の是正)がこれまで以上に必要と感じている。
(白百合女子大学 学長 山内宏太朗)
● 従来から,本学(KIT)では,「進路指導は教育の一環である」との学長方針の下に,教職員の意識改革を促してきたが,今後は更に進路部長を中心に,進路指導教員と進路開発センターとの連携を強化すると共に,各ゼミ単位で木目の細かい進路指導を実践する。
(金沢工業大学 学長 石川憲一)
● 教員の中には,就業力育成に関心を持っていない者もいる。しかし今後は教職員が一体となり,またアウトソーシングを活用しながら学生の就業力育成に努めるべきである。
(名桜大学 学長 瀬名波榮喜)
● 本学の目標は「自己と向き合い,社会において自己実現できる人の育成」である。そのための学士力は「正課教育・課外活動」全体によって総合的に育成されるものと考え,大学として「学習・キャンパスライフ・キャリア形成」の各観点から支援する体制を採ることを確認している。課題としては,教職員間,学科間,部署間などの協働体制が不十分であると感じられること。
(筑紫女学園大学 学長 小野 望)
④学内資源の不足(15件)● カリキュラムの見直し,就業力
育成にかかわる事業展開にともなう予算の確保が厳しい状況である。
(関東 私立大学)
● 教育課程内(教学部門)と教育課程外(学生支援部門)の連携強化
と組織の整備充実。すでにキャリア形成に関する科目は実施しているが,その授業内容の充実を図る必要があり,人的資源と資金が必要。
(滋賀大学 学長 佐和隆光)
⑤アセスメント(効果検証)(10件)● 教職員の就業観意識充実。卒業
生の就業状況把握(定着年,処遇など)
(関西福祉科学大学 学長 江端源治)
● 就業力育成は,単なる就職率の向上や,大企業への就職数の増加のみではなく,離職率の低下をも見据えたものとしなければならない。そのためのデータの蓄積と分析が今後の課題といえる。
(駒澤大学 学長 石井清純)
● 課題は汎用的スキルの修得を主眼とした初年次教育プログラムの洗練である。また,チームラーニング方式を取り入れた問題発見・課題解決型と専門教育を展開することである。以上の複合的な教育プログラムを効果的に展開するためにIRによるカリキュラムマネジメントを行い,1年から4年生までの学習プロセスを可視化していく予定である。
(東北福祉大学 学長 萩野浩基)
⑥女子大学の特徴(7件)● 「就業力育成科目」(正課)の定義
が示されていないが,このアンケート全般の傾向から,狭義のいわゆる職業的内容の科目が想
定されているように思われる。本学では,本アンケートでいえば,Q7で挙げられている「学生の就業観,勤労観の育成」を最重要と考えており,そのため,在学中に女性の自立とキャリア構築への積極的姿勢や意識を培い,卒業後も含めて自分自身の「進路と生き方」を考えられるよう,女性学・ジェンダー的視点に立つ正課教育とキャリアセンターの各種キャリア構築プログラムにより,体系的なキャリア構築支援を全学的に展開している。
(東京女子大学 学長 眞田雅子)
● 女性リーダー育成をミッションとする本学にあって,「就業力」とは,実学的な意味での狭義の専門教育に偏することなく,広く公共的視野のもとに課題を発見し,異質な人々との協働・共生の中で,知識やスキルを活用し,課題解決のための選択肢を見極めて行動する力である。これを育成するためには,初年度から卒業に至る教育課程に加え,課外活動や就業体験など,キャンパスライフの全体をキャリア開発・支援の枠組みによって統合的に再構築する必要(課題)がある。
(お茶の水女子大学 副学長 耳塚寛明)
● 女子大としての本学の学生の就業力育成について考えるとき,単に就業キャリアという視点だけでは不十分である。女性が発展的に「ライフキャリア」を考えるうえでの社会活動キャリアや学習キャリアなどを含めて,総
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1� リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010 1�
1� リクルート カレッジマネジメント165 / Nov. - Dec. 2010
特集 大学で身につける就業力とは
合的にキャリアをデザインする力量を育成することが大切である。そうした視点にたったキャリアセンターや学生支援センターの充実を考えている。女子大の温室的閉鎖的環境を克服して社会に通用する就業力を身につけさせるために,学外団体と積極的に連携をすすめたい。
(東京家政学院大学 学長 天野正子)
⑦その他(51件)● 小規模大学のため,今後は他大
学との連携をより一層深めることが課題である。複数の大学が協力して就職支援セミナー等を実施することにより,学生はそれらの就職活動を通して他大学
の学生と一緒に行動することにより刺激を受けるとともに就職に対する意識付けやモチベーションを高めることができる。本年度よりキャリアセンターを新たに開設したため,就業力育成について教員の理解と協力がますます肝要となる。
(京都ノートルダム女子大学 学長
藪内 稔)
● “働くことをもっとリアルに!”をキャッチフレーズとしてキャリア学習を推進しています。1学年2千人の総合大学である本学では,すべての学生がキャリアを学ぶという観点から正課内外での学びの機会の拡充が課題となっています。企業等で働く
人たちを学内にお招きする「学内業界・企業研究会」や,就職支援室・図書館に設置する「キャリア学習・就職活動支援コーナー」のさらなる充実に取り組む予定です。また,就業力が弱い学生もいます。早期かつ重点的支援が課題だと認識しています。
(山口大学 学長 丸本卓哉)
● インターンシップや学生の企業見学会の受入企業が急減している。希望している学生を送り込めないことが大きな問題として浮上している。
(静岡理工科大学 学長 荒木信幸)
※ご紹介したコメントのお名前・お役職につきましては,掲載許諾が取れた方のみ明記しています。
■
無回答 1.0%
私立74.5%
公立9.8%
国立14.7%
その他39.8%
副学長等経営者
13.3%
学長・理事長46.9%
1. 設置形態 4. 回答者2. 本部所在地 3. 学生規模
無回答
九州(沖縄)
中国・四国
関西
中部(北陸)
関東
北海道・東北
無回答
10,000 人以上
3,000~9,999 人
1,000~2,999 人
1,000 人未満12.7% 25.1%
34.0%
28.4%
10.2%
2.3%
31.5%
17.0%
18.9%
9.1%
10.0%
0.8%
調査概要(回答大学のプロフィール)
(1)調査対象 全国の大学732校 (全国の大学数は778校(平成22年度学校基本調査速報値)であるが,大学院大学23校と募集停止校23校を除いた)
(2)調査方法 質問紙による郵送法(3)調査期間 2010年7月12日(月)~7月30日(金)(4)回 収 数 有効回収数 482サンプル(有効回収率 65.8%)