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第10講
磁場中の固体電子 ~~ 磁場とフェルミ面の意外な関係 ~~
広島大学 井野明洋
固体物理学1
居室: 理D205、 放射光セ308
ホール効果の測定2
VH
B
II
x
zy
ホール効果 の 基本原理3
Bv e-
v Be-
− − − − − − − − −
+ + + + + + + + + x
y
z
(a)
(b)
I
I I
I
過渡
定常
キャリヤの 種類と密度を 実験で決定
より
実験事実
価数 と ホール係数5
Li
NaKRb
CuAg
Au
Be
Mg
Al In
As
SbBi
2
1
0
-1
, nH e /nat
ぴったり -1
あまり 合わない
なぜなのか?
古典論の限界
巨大なホール係数 貴金属の約1000倍
-1
0
Al
アルミニウム Al のホール係数6
弱磁場→強磁場で 符号が反転!!
量子振動現象7
磁場 B
磁化
率 χ
方位
磁化
率 χ
磁化率: de Haas–van Alphen (dHvA) 抵抗率: Shubnikov–de Haas (SdH)
Au の単結晶
何じゃこりゃ?
8
課題
磁場中の 固体が示す 謎の物性
9
方針
電子の運動を 逆空間で考える
•群速度 •等エネルギー面 •フェルミ面
磁場中の電子の運動10
逆空間の速度ベクトル実空間の速度ベクトル
ローレンツ力
•等エネルギー面 •B に直交する平面切り口の交線に沿って動く
逆空間の電子の軌道 11
B
B
電子面 左回り
ホール面 右回り
板書軌道運動の周期
量子振動
閉じ込めると離散化する13
ボーアの対応規則
n = 0, 1, 2, …γ: 位相定数
S = SFS で D(EF) が増え S ≠ SFS で D(EF) が減る → B の変化とともに物性が振動する
量子振動フェルミ面の 断面積 SFS の観測手段
可能な状態
T: 周期
磁場 B
磁化
率 χ
方位
磁化
率 χ
量子振動 14
Au
断面積 SFS の観測
板書実空間の運動
実空間 と 逆空間 の 軌道 16
X
逆空間
等エネルギー面 に沿った軌道
B
S実空間
等エネルギー面を 90°回して 倍した軌道
B
周期 強磁場なら T ≪ τ
強磁場ホール係数17
等速成分振動成分
強磁場 T ≪ τ閉軌道 k(τ) = k(0)
電流にならないB
電子面 と ホール面18
(i) 占有側が閉じた軌道
(iii) 開いた軌道 → 磁場を強くしても消えない電流
B
(ii) 非占有側が閉じた軌道
B
ホール係数 の 理論式19
弱磁場
強磁場極限 T ≪ τ
古典と一致
導出略、 紹介のみJ. M. ザイマン、 「固体物性論の基礎」
home.hiroshima-u.ac.jp/tmatsu/Matsumura/Research_files/trnsprt.pdf
松村武、 「磁場中における 電気抵抗とホール効果」
弱磁場p = 0
移動度
Al と In のホール係数 20
第3BZ
第2BZ
第1BZ
n
p − n = +1 × nat
価数 3
p
ホール面
電子面
p = (1+α) nat
n = α nat
Al In
21
補足
電気抵抗のしくみ (解説のみ)
金属抵抗 の 温度依存性22
4
3
2
1
0
電気抵抗率
, ρ
(10-
8 !m
)
4003002001000温度, T (K)
AlAuCu
∝T
周期場 は 抵抗に寄与しない23
•周期場によるブラッグ散乱を取り込んだ固有状態が、 実現する (ブロッホ状態)。
•周期場によるブラッグ散乱は、 電流を散逸せず、 電気抵抗にならない (結晶運動量の保存)。
•電流を散逸させるのは、 周期性 (並進対称性) の破れ。
散乱 の 原因24
不純物 格子欠陥
定数
フォノン 他の電子
低温で∝T5 高温で∝T 低温で∝T
2
他にも、 磁気的な散乱など、 多様な原因がある。
典型金属では 比較的小さい
マティーセン則
高温領域 (T ≫ TD)25
格子振動 振幅の二乗 格子振動のエネルギー
励起されたフォノンの数
エネルギー等分配則 デュロン=プティ
3
2
1
0
, C
v /N
k B
2
2
1
1
0
0
, T/TD
5
4
3
2
1
0
, U
(T)/
Nk B
T D
0
, D
(E) ,
低温領域 (T ≪ TD)26
•後方散乱不可。 k ~ 0 フォノンによる前方散乱のみ。 •散乱回数あたりの、 電気抵抗への寄与が低下。 •散乱角を θ とおくと、 重みは 1 − cosθ ~ θ2 。
(c)(c)
(b)
Cu
1
0
2
3
4
5
6
7
8
, f
(TH
z)
1
0
2
3
4
5
6
7
8
, k
(a)(a) Cu
Δ
Λ
Σ
Γ
L
KX
X (d)(d)
TD = 347 K
50 K
100 K
100 K = 2.1 THz
0 K
フェルミ面
θ前方散乱
後方散乱 不可
ブロッホ=グリューナイゼンの式27
低温の ∝T5 則と、 高温の ∝T 則を再現する理論式
グリューナイゼン関数28
1.0
0.5
0
F BG(x)
1.00.50x = T/TD
フォノン散乱 による抵抗
グリューナイゼン関数との比較29
3
2
1
0
, ρ
(10-
8 !m
)
300250200150100500, T (K)
Grüneisen fit
Al
Au
Cu
Experiment
(a)
10-5
10-4
10-3
10-2
10-1
100
101
ρ (T)
− ρ0
(10-
8 !m
)
5 6 7 10 2 3 4 5 6 7 100 2 3 4 5 6 7 1000, T (K)
Experiment
Grüneisen fit
Au Cu Al
(b)
TD
還元温度, T / TD
還元抵抗, ρ
/ρD
フォノンによる抵抗の普遍曲線30
現実の金属では、 フォノン以外の散乱が、大きい。
• 電子ー電子散乱 • 磁気散乱 • 近藤効果
主に、sp 電子系で有効。
まとめ 31
量子振動
強磁場ホール係数
高温フォノン抵抗
フェルミ面の断面積
キャリヤー密度
残された謎 32
10-12
10-11
10-10
10-9
10-8
10-7
10-6
10-5
10-4
10-3
10-2
10-1
100
101
102
103
, ρ
(!m
)
1 10 100 1000, T (K)
AgCu
Au
Si
なぜ、 半導体の抵抗は、 温度とともに低下するのか?
半導体 (Si, Ge など) は、 フェルミ面が無く、 n = 0 。
微弱な電流の担い手?
一般に、 散乱確率は 温度とともに増大する。
そして誰もいなくなった…
次回
第11講 半導体
真空、 からの 対生成
次回
第11講 半導体
刺激に敏感な物質
次回
第11講 半導体