マーセデス・ラッキー 訳/澤田澄江 ヴァルデマールの絆 盗人の報復 立ち読み専用 立ち読み版は製品版の1〜20頁までを収録したものです。 ページ操作について 頁をめくるには、画面上の□ (次ページ)をクリックするか、キー ボード上の□ キーを押して下さい。 もし、誤操作などで表示画面が頁途中で止まって見にくいときは、上 記の操作をすることで正常な表示に戻ることができます。 画面は開いたときに最適となるように設定してありますが、設定を 変える場合にはズームイン・ズームアウトを使用するか、左下の拡大 率で調整してみて下さい。 本書籍の画面解像度には1024×768pixel(XGA)以上を推奨します。

澤田澄江 立ち読み専用 - chuko霞かす ん だ 陽 光 を 背 に 、 カ ル チ ェ ン が 巨 大 な 一 枚 岩 の よ う な 輪 郭 だ け を 見 せ て い

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マーセデス・ラッキー訳/澤田澄江

ヴァルデマールの絆盗人の報復

立 ち 読 み 専 用立ち読み版は製品版の1〜20頁までを収録したものです。

ページ操作について◦頁をめくるには、画面上の□▶(次ページ)をクリックするか、キーボード上の□→キーを押して下さい。もし、誤操作などで表示画面が頁途中で止まって見にくいときは、上記の操作をすることで正常な表示に戻ることができます。◦画面は開いたときに最適となるように設定してありますが、設定を変える場合にはズームイン・ズームアウトを使用するか、左下の拡大率で調整してみて下さい。◦本書籍の画面解像度には1024×768pixel(XGA)以上を推奨します。

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Take a ThiefA Novel of Valdemar

by

Mercedes Lackey

Take a Thief © 2001 by Mercedes R. LackeyJapanese translation rights arranged with the author, c/o Baror International, Inc., Armonk, New York, U.S.A.

through Japan UNI Agency, Inc., Tokyo.Japanese edition ©2010 by Chuokoron-Shinsha, Inc.

口絵・挿絵 竹井DTP ハンズ・ミケ

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第一章

7

第二章

26

第三章

45

第四章

65

第五章

85

第六章

103

第七章

123

第八章

140

第九章158

第十章176

第十一章

195

第十二章

214

第十三章

232

第十四章

251

第十五章

271

第十六章

292

第十七章

312

第十八章

331

第十九章

350

第二十章

367

訳者あとがき

388

目 次

Page 4: 澤田澄江 立ち読み専用 - chuko霞かす ん だ 陽 光 を 背 に 、 カ ル チ ェ ン が 巨 大 な 一 枚 岩 の よ う な 輪 郭 だ け を 見 せ て い

スキッフディークラフ

ベイジー

ライル

登場人物紹介

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テレン

アルベリッヒ

ゲイサ

ダーク

ミステ

クリス

ジェリ

タラミール

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紳士であり学者であった

ゴードン・R・ディクソン氏の思い出に捧ぐ

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7 第一章

第一章

「起きろ!」

 

夢がばっと砕く

けて、スキッフのもとには、暖かく

て居心地がよく甘い香りのする場所の、ぼんやりと

した欠か

けら片

だけが残った。横腹に靴先がぴたっとあて

がわれる。そこには、階段下の物入れの奥で縮こま

っている少年の体を弾きだすに足る力が秘められて

いた。

 

散々痛い目に遭あ

ってきたせいか、さもなくば不可

思議な力が働いたのか、目を開けろと心が呼びかけ

た。スキッフは目を開いた。いつもと変わらず、体

は冷え切ってこわばり、空腹で腹の虫が鳴っている。

 

こうしてまた、〈柊

ひいらぎの

薮やぶ

〉亭の素晴らしい一日が

始まった。

(おはようさん、クソ野郎)

 

スキッフは頭上の階段に頭をぶつけないよう体を

丸めながら、もぞもぞと起きあがった。両手にはぼ

ろぼろに破れた毛布を掴つ

んだままだ。伯父の長子カ

ルチェンは、スキッフをじろじろ見ると、ふんと不

平の声を漏らした。横っ面を殴って気合

0

0

を入れてや

る必要もないほどに、すっかり目覚めたのを見てが

っかりしたのだ。

 

スキッフは目をしばたたいた。厨

ちゅう

房ぼう

の開いた戸

口から差しこんでいる霞か

んだ陽光を背に、カルチェ

ンが巨大な一枚岩のような輪郭だけを見せている。

岩は天て

辺ぺん

の幅が最も狭く、普通の人間らしく肩のあ

るべきところで急激に広がっている。首から下の特

徴だけでそれがカルチェンだと分かるのは、枕と見

まがう二本の太い腕と、腰こ

紐ひも

の上に肉のはみ出た胴

回りのおかげだ。表情が見えなくても、スキッフは

構わなかった。カルチェンの顔色など窺

うかが

ったとこ

ろで、どうなるものでもない。

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8

「飯だ」カルチェンががなり声をあげた。早く出ろ

といわんばかりにぐいっと頭を振った拍子に、脂あ

ぶらぎ

った髪の束がその額ひ

たいに垂れたのが分かった。

 

スキッフはひょいっと屈か

んで素早く毛布をたたみ、

ぼろ布を被せた寝床用の藁わ

の上に放りなげた。着替

える必要はない。冬のあいだは、持てる服すべてを

身にまとって寝ている。カルチェンはスキッフが動

きだしたことに満足すると、酒場で働くほかの者た

ちを起こしに行った。

(へん、自分じゃろくに働きやしねぇんだからな)

 

カルチェンのいった「飯」とは朝食の支度のこと

で、スキッフが食事にありつけるわけではなかった。

 

カルチェンが行ってしまうとすぐに、スキッフは

大急ぎで厨房に駆けこんで面倒な火ひ

熾おこ

し作業に取り

かかった。この酒場では伯父のけちっぷりが仕入れ

品のことごとくに反映されていて、なかなか仕事が

はかどらない。たとえば薪ま

は、屑屋がここよりずっ

と景気のいい屋敷の暖だ

炉ろ

や窯か

を漁あ

って手に入れた品

だ。彼らは灰をふるって皮なめし工こ

場ば

や石せ

鹸けん

工場に

売り、石炭の燃えかすや燃え残った薪などを、この

〈柊の薮〉亭の主人ロンダール・ガルコのような者

たちに売っているのだ。

 

伯父のロンダールは、発火具すらまともなものを

買わないし、一晩中、蝋ろ

燭そく

を灯と

しておくとか、燃え

さしに灰を被せておくなんてこともしない。おかげ

でスキッフは毎朝、一個の火フ

リント

打石とほかの石とでど

うにか火を熾すはめになっていた。しかもここの薪

の半分くらいは、屑屋が拾う前には水に浸かってい

た代物だ。そんなものに簡単に火がつくわけがない。

 

実際に火を熾す前に、掃き寄せておいたごみを取

りにいく。前の晩に最後の客が戸口から転がりでた

あと、食堂の床を掃いて集めたもので、燃えそうな

ごみや食べかすは残さず火ほ

口くち

にするのだ。最悪の場

合には、防寒用にと靴に詰めてある貴重な干草を少

しばかり犠ぎ

牲せい

にしなければならないこともあった。

(ありゃ、干草に何かひっついてやがったぞ。こぼ

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9 第一章

れ種だな、きっと。おっ―

こっちのくずもよく燃

えそうだ)

 

スキッフはぶつぶついいながらも、毛羽立った小

さな布切れに火をつけようとして、ふたつの石の欠

片を叩き合わせて火花を散らした。とうとう火花の

ひとつが布に落ちて、彼の努力に協力する気になっ

たらしい。スキッフはそこからちっぽけな炎を熾し、

一番乾いていそうな薪に移すべく炎をとった。 

 

床をすべる隙す

間ま

風かぜ

を体で塞ふ

ぎ、火よ移れと願いを

こめてそっと見守る。やっと炎が煤す

けた炉床に置け

るまでに大きくなったところで、昨夜の燃えさしで

囲む。それから、煮に

炊た

きに使える程度になるまで、

ゆっくりと薪をくべた。

 

厨房の竃

かまどに火が入るころになると、酒場の料理女

兼皿洗い兼下働きとしてロンダールに雇われている

不潔な女が、二階の寝床からようやく起きだしてく

る。階段をのろのろと下りながら頭を掻か

きむしり、

尻も一緒にぽりぽりと掻いているが、それで彼女を

〈家〉にしている虫けらが出て行くわけではない。

 

この女の作る料理を食べて死んだやつがほとんど

いないのはどうしてだろうと、スキッフはしばしば

疑問に思った。もしかすると、伯父が葡ぶ

萄どう

酒しゅ

だの麦

酒だのと偽って店に出している怪しい酸っぱい飲み

物を、食前にたらふく胃に流しこむからかもしれな

い。あんなもので胃が膨ふ

れていたら、食べ物と一緒

に入りこんだ虫けらですら、すぐに病気になって長

くは生きられないはずだ。

 

厨房の戸口が寒々とした中庭に向かって開いたま

まになっている。毎朝、カルチェンがその日の食材

を調達してここから入ってくるのだ。ロンダールは、

酒場でどうしても必要となったもの以外は何ひとつ

仕入れない。よし、とスキッフは寒い戸外に出る覚

悟を決めた。

(一週間分くらいまとめて買ったって損はねぇだろ。

そうすりゃ、もっと値切れるかもしれねぇのに)

 

スキッフは中庭に飛びだし、荷馬車の荷を下ろし

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10

にかかった。荷馬車はそれを操る少年つきで燭

しょく

時じ

単位で借りているもので、スキッフが少しでも早く

下ろせば、それだけロンダールの出費を抑えられる。

ほんの僅わ

かでも、もっと節約できたはずだと見なさ

れれば、カルチェンの拳がスキッフの頭に飛んでく

るというわけだ。

 

御者の少年は、わざとらしくスキッフを無視した

まま、じっと駄馬の耳を見つめていた。スキッフの

身分がずっと低いせいだ。少年の着ているコートと

新品の長

ちょう

靴か

には、染みひとつない。

(へん、調子に乗ってんなよ!)スキッフは取り澄

ました背中に向かって舌を突きだした。

 

最初に小麦粉が半分入っている麻袋を下ろし、続

いて獣脂の桶お

を下ろした。この脂も倹約品のひとつ

で、小料理店で肉を焼いたり揚げたりする際に掬す

取り、植物油や蝋燭を買えない者たちに転売されて

いるものだ。溶かした獣脂に灯心草の外皮を剥は

ぎ取

ったものを浸し、酒場に灯す蝋燭を作る。また、こ

の脂で食材を炒めたり、パンに載の

せたりもする。

 

スキッフは慎重に桶を運んで、小麦粉の麻袋の脇

に置いた。ときどき脂の底のほうが固まっていない

ことがあり、こぼさないようにするためだ。

 

続いて、細切れ肉を手桶に一杯。これはスープや

パイ用だ。

(何の肉だか知れたもんじゃねぇ。ミャーとか鳴い

てたんじゃねぇか……)

 

それから、葉が萎し

れて色の悪くなった蕪か

と、食べ

ごろを過ぎてかび臭い乾燥豆を山ほど。最後に、麦

酒の樽た

がふたつと、葡萄酒の樽がひとつ。どちらも

手広く商売をしている商人がほかの宿屋や酒場に提

供した残り物で、前の晩に町中の樽からかき集めた

ものだ。

 

もちろん、これ以上の安酒はないだろう。首都ヘ

イヴンの郊外で汲く

み取れる湧わ

き水ですら、こんな値

段では買えない。商人お抱えの料理人がソースの材

料にすら使おうとしないほど凄す

まじく粗悪な代物で、

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11 第一章

気が抜けているうえに、変なものがたくさん沈んで

いる。木の樽に入っていても、妙な酸っぱいにおい

が漂ってくるのだ。

 

樽が手早く下ろされると、御者の少年はさっと荷

馬車の向きを変え、駄馬を走らせて通りに出て行っ

た。

 

スキッフは食材を厨房へ引きずって運び、料理人

のモル婆さんに引き渡した。厨房を任されている彼

女とカルチェンだけが、荷車から下ろした食材と飲

み物に触れることを許されている。とはいえ、こん

な食材に手をだすつもりなどなかった。ここの食べ

物を口にしたことすら一度もない―ロンダールに

朝食を勧められたこともなかったが。

 

まだ終わりではない。次は中庭のポンプで水を汲

み、厨房の半樽を満たす仕事だ。しかも、手桶ひと

つで何度も水を運ぶのだ。スキッフは、中庭の凍っ

た地面の轍わ

だちに躓つ

まずいてよろけた。長靴はぶかぶかで、

少しでも足を暖められるようにと干草が詰めてある

ような代物だったが、それでもへっちゃらだった。

小さすぎるよりずっといい。

(痛くなけりゃいいのさ)

 

スキッフは食堂へと入り、最初の客を迎え入れる

準備にかかった。厨房の竃に熾した火を燃え木で暖

炉に移し、炉床の両脇に木片を並べて乾かす。食卓

から長椅子を下ろして、窓の鎧

よろい

戸ど

を開く。窓に張

ってある油紙は外の冷気を締めだすには大して役に

立たないし、雪が積もっていて、今朝のようにいく

らか陽も差しているときには、採光という点でむし

ろ邪魔をしている。それが、スキッフには好都合だ

った。日光のもとに曝さ

けだされた食堂の情景など、

とうてい眺な

める気になれない。

〈柊の薮〉亭の食事や酒に劣らずひどい身なりの客

がふたり、すでに店の前にいて、スキッフが扉を開

けるのを待っていた。ふたりとも馴な

染じ

みの客だ。最

低でも六杯の麦酒を飲み干し、腐りかけたハムを一

枚と、得体の知れない脂で焼いたパンを一切れ胃に

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12

流しこむと、よろよろとどこかへ消えていき、翌朝

また現れる。恐らく夜中に仕事をしていて、ここで

朝食をとってから家に帰るのだろう。

 

ふたりの客は店に入ると、戸口に一番近い長椅子

にどすんと腰を下ろした。スキッフが大声でメイジ

ーを呼ぶ。ロンダールが経営する酒場の、四人目の

従業員だ。かつて二階へと通じていた階段には、納

戸がしつらえてある。メイジーはそこからいつもの

ように這は

いだしてくると、カルチェンのあとについ

て下りてきた。スキッフのと違って、彼女が寝床に

している納戸には、端切れを合わせた布が扉代わり

に垂れている。

 

メイジーは、やはりいつものように何もいわず大

急ぎで厨房にはいると、怯お

えた表情を顔に貼りつけ

たまま、客に出す麦酒とパンを用意しはじめた。ス

キッフは肩をすくめた。ここでの自分の立場はひど

いものだが、メイジーは最悪だ。

〈柊の薮〉亭は宿屋ではない。厨房と食堂しかない

ただの酒場だ。二階もロンダール伯父の所有だが、

酒場の客には提供せず、月つ

極ぎめ

で貸しだしている。貸

間にはそれぞれ戸口があり、今にも崩れ落ちそうな

外階段で中庭に通じている。燃料や食糧を保管して

ある厨房に、間借人が容易に立ち入れないようにし

てあるのだ。

 

間借人てやつは、くすねられそうなもんは何でも

取りやがる、とロンダールは考えていた。ちょっと

でも信用してやろうもんなら、どんな隙も見み

逃のが

さね

えで盗みやがるんだ。とはいえ、カルチェンが絶え

ず目を配っていたので、そんな隙がそうそうあるわ

けではなかった。

 

スキッフはようやく仕事から解放された。これで

勉強に行ける。ヴァルデマール国ではすべての子ど

もに対して、読み書きと計算を習得するまでの教育

を与えると法律で定めていて、ロンダール伯父でさ

え、スキッフに教育を受けさせないわけにはいかな

かった。理由さえつけられれば、そうさせたいとこ

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13 第一章

ろだったろうが。

 

スキッフは、カルチェンがもう行ってもいいとい

ってくれるのをぐずぐずと待ったりはしなかった。

そんなことをしていたら、この従い

兄と

弟こ

に新たな仕事

をいいつけられて遅刻してしまう。遅刻したら朝食

を逃して、人の不幸が大好きなカルチェンを喜ばせ

るだけだ。

(あばよ、脂頭のクソ野郎―

暗くなるまで戻らね

ぇからな!) 

 

スキッフは戸口を飛びだすと、一度も振り返らず

に狭い路地に駆けこんでいった。

 

この地区の朝は活気がない。職に就いている者た

ちは明け方に家を出ているし、そうでない者たちは、

まだ暗いうちに家を出て、日銭を稼ぐために仕事を

探しに向かう。さもなくば、〈柊の薮〉亭か、ほか

の袋小路にある酒場の安酒が効いてまだ眠っている

かだ。

〈柊の薮〉亭は、実際に袋小路に建っていた。これ

ならば、客がふらっと店先を通り過ぎることもない、

というのがロンダール伯父の考えだった。

 

スキッフのほかにも、路地を駆けて勉強に向かう

子どもたちがいたが、目的地は違った。スキッフは

伯父の命令で、ほかの子どもたちよりもずっと遠く

まで行かされていた。どうしても勉強しなくてはな

らないなら、自分が決めた場所でなくては駄目だ、

と伯父がいったのだ。

 

近所の子どもたちはみな、スキッフと同じ理由で

必死に走っていく。無料で、しかも食べられる

0

0

0

0

0

朝食

が目当てだ。

 

この制度はセレネイ女王が発案したもので、自ら

町を視察し、空腹の子どもは、腹に食べ物の入って

いる子どもと同じようには学べないと判断したのだ

った。こうして、首都ヘイヴンのすべての子どもは、

始業までに教場に入れば、冬には塩漬け肉包みパン

と一杯のお茶を、夏にはバターつきパンと果物を支

給されるようになった。毎朝、王宮の配給車がきて

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配るので、横取りされる心配もない。

 

だが、遅刻してしまうと、その日は欠席と見なさ

れて、自分の分はほかの誰かに食べられてしまう。

子どもたちがどれほど勉強が難しいとか退屈だとか

思っていようとも、この仕組みが大いに効果を発揮

して、定刻より早くとまではいかなくても、始業時

間には教室に現れる。

 

スキッフにしても、自分の取り分を逃すつもりは

なかった。走っていても、腹がぐうぐうと音を立て

る。朝食のことを考えて、スキッフは唇

くちびるを舐な

めた。

 

よほど運がよくない限り、これがこの日の唯一の

食べられる

0

0

0

0

0

食事となるはずだったし、仲間たちも同

じような境遇でいるのは間ま

違ちが

いなかった。 

 

狭く入り組んだ路地から、かろうじて驢ろ

馬ば

の牽ひ

荷車が通れる広さの通りに出る。両側には、屋根裏

部屋つきの三階建て共同住宅が、今にも通りに倒れ

こみそうに傾いたまま建ち並んでいる。人や荷車の

往来は少なく、踏み固められた汚い雪が建物の壁に

跳ね上げられることも少ない。かといって、住人が

雪掻きをしても報奨金が出るわけでもないので、冬

のあいだ中、雪は積もったまま放置され、やがて自

然に溶けだして埃ほ

こりと混ざり、泥となる。

 

そうなるまでに、まだあと数ヶ月もかかるだろう。

今はとにかく冬を乗り切ることだ。それでも、冬の

寒さがにおいを和らげてくれるのは救いだった。裏

庭の便所、鶏小屋、鳩小屋、豚小屋から漂ってくる

悪臭。貧乏人は不足する栄養をどうにかして補おう

とするもので、この辺りで鳩はうってつけの食材に

なっていた。日中に町のもっと裕福な地域に勝手に

飛んでいって他人の財布で餌え

を与えてもらえるから

だ。止まれそうな枝はどこも、鳩が羽を寄せ合って

温まっている。いつもなら壊れた屋根の石ス

レート板や板は

糞ふん

で白く染まっているのだが、一面の雪のおかげで、

冬にはその落とし物は目立たない。

 

スキッフは体がようやく温まってきたのを感じた。

走るたびに、白い息があがる。当然のことながら、

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15 第一章

上着など着ていない。近所の子どもで、上着を持っ

ている者などいなかった。冬に暖をとる方法は三つ

ある。ひとつは、体が温まるまで働くこと。ふたつ

目は、凍えない程度に火の側にいられる仕事をする

こと。三つ目は、スキッフのように、温まるコツを

掴むことだ。

 

六つ目の角を曲がると、もう少しまともな通りに

でる。道幅がさらに広がり、雪も適当に掻いたあと

がある。通り沿いの共同住宅の一階部分には、薄暗

い小さな店が二、三軒並び、か細い煙を吐きだす煙

突の数も増えてくる。この通りの先、大通りにぶつ

かる手前に、ベルデン寺院はあった。

 

ベルデンは決して大きな寺院ではなく、司祭が四

人、修練者が六人いるだけだ。規律は慈悲心に富ん

でいて、慈悲を施す以外に何かをする余地のないこ

の地域に符合していた。

 

そういうわけで、ここでも慈善活動の一環として、

貧しい子どもたちに教育を与えていた。スキッフが

ここに来るのは、自分で決めたわけでも、ロンダー

ル伯父がスキッフに良い教育を施そうと選んだから

でもなかった。伯父の三人いる息子の真ん中がここ

の修練者だというだけで送りこまれたのだ。

 

スキッフと同じように、従兄弟のビールにも職業

選択の自由はなかった。伯父が優れて慈善に対する

良識を持っていると世間に印象づけたくて、ビール

を修練者にしたのだ。それでもビールはここでの生

活を楽しんでいるように見えた。もしくは、奇妙な

ほどに精彩を欠いているこの若者が何かを好きにな

れる程度に、ここでの生活が気に入っているようだ

った。カルチェンが人目を引くのと対照的に、ビー

ルはひどく影が薄い。

 

スキッフは寺院の隣にある教

チャプターハウス

務所の扉をわずか

に押し開けた。扉を抜けてすぐのところに談話室が

あり、机と長椅子が並んでいる。ここで三十人から

四十人の子どもたちが授業を受けるのだ。すでに半

数近くが席について、食事を待っていた。

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16

 

スキッフは、チビのドリーの横に滑りこんだ。と

りわけ幼い少女で、いつも腹を空かせている。ドリ

ーが顔を上げて嬉う

しそうに微ほ

ほえ笑んだ。子どもたちの

なかにも腕に物をいわせる奴らがいて、教場の外で

小さな子をいじめては、その荷物を奪おうとする。

スキッフはこの少女をそういう奴らから守ってやっ

ていた。

 

スキッフは少女の冷たい手を取り、最後のひとり

が慌てて教場に入ってくるまで、自分の手で温めて

やった。少女の腹がぐぅっと鳴る。スキッフの腹も

それに応える。少女がにやっと笑った。

 

ようやく、寺院のどこからか小さな鐘か

の音が聞こ

えてきた。朝の礼拝の終わりを告げる鐘だ。すぐに、

教場の後方の扉が開いて、ビールともうひとりの修

練者が、篭か

をさげて入ってきた。塩漬け肉の芳か

んばしい

香りが、ふわっと漂ってくる。そわそわしないでい

るのがやっとだ。今や教場のすべての視線がその篭

に釘付けになっていた。ビールともうひとりの修練

者が部屋を出て、まだ湯気を立てている茶ち

瓶びん

と、陶

製の厚手のマグを運んできた。

(けっ!

もうちっときびきび動けねぇのかよ?)

 

朝食一式が運びこまれて、ビールの気に入るよう

に並べられるまでの時間が永遠にも感じられる。こ

れが終わらないと、子どもたちは食事を取りにいけ

ないのだ。しかも、ひとりずつ前に出てパンと茶を

受け取るから、自分の番がまわってくるころには、

パンはすっかり冷たくなっているし、茶もぬるけれ

ばまだいいほうだ。

 

それでも構わない。パンが石のように固くなって

いないのなら、茶が氷の塊

かたまりになっていないのなら。

ここにいる子どもたちはみな、パン屑のひと欠片ま

で貪む

さぼり食い、茶の最後の一滴まで飲み干す。なかに

は席に戻る途中で歩きながら食べだす者もいたが、

スキッフはそんなまねは絶対にしなかった。スキッ

フの行動を何でもまねるドリーもだ。

 

作法を気にしているのではない。机に身を乗りだ

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17 第一章

して食べれば、どんな小さなパン屑も逃さず食べら

れることに気づいてから、そうしているに過ぎなか

った。スキッフとドリーは食べ終わると、指をぺろ

ぺろと舐め、木机の天板にこぼしたかすを拾って口

に入れた。

 

茶はぬるくなっていたが、まだ室温よりは温かか

った。茶は飲めるだけでなく、飲みおわるまで手を

温めてくれる。とはいえ、ふたりの修練者に急せ

かさ

れては、いつまでもぐずぐずとマグを握っていられ

ない。食事が済むと、ビールの仲間の修練者が空に

なったマグを回収して教場を去り、ビールが残って

授業を始めた。

 

実のところ、スキッフにはこれから始まる授業を

受ける必要など、まったくなかった。ここにいる誰

よりも読み書きができたからだ。法律では、読み書

きと計算がある程度できるようになれば教育を終え

てよいと定められていて、年齢による教育の終了と

いうものはなかった。

 

スキッフは文字を読むのが好きだったし、書くこ

とにもある種の審美的喜びを感じていた。苦手な振

りをしなければならなかったとしたら、ひどく厄介

だっただろう。恐らくはビールに気づかれて酒場へ

と送り返され、カルチェンに奴隷のごとく働かされ

る羽目になる―

もちろん朝食は抜きだ。

 

幸い、計算は容易に習得できなかった。しかも興

味がないときている。二桁け

と二桁の足し算をして、

続けて二回、同じ答えになった例た

めしがないうえに、ど

ちらの答えもたいてい合っていない。一生懸命に取

り組む素振りは見せていたが、当然のことながら、

ちっとも進歩しなかった。このままでは、ビールで

さえ訝

いぶかしく思いはじめるだろう。だが、たとえ怪し

まれたとしても、スキッフは教育の終了を宣言され

る厄日を、一日でも長く先に延ばすつもりでいた。

 

読み書きは非常によくできたので、授業中にひと

りだけ怠な

けないようにと、当面はドリーのような小

さな子どもたちを教える役に回されていた。

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スキッフはそれで構わなかった。何かを習うこと

にちっとも興味を見いだせない子どもたちにも、年

上の強みでいうことを聞かせられたし、たとえ平手

打ちで落ち着かせても、ビールに異論はないようだ

った。問題なのは、いつまでも教える側でいられな

いということだ。ドリーのように向学心のある子ど

もは、難しいところをほんのちょっと教えてやるだ

けでいい。

 

教師役は持ち回りで、スキッフがほかの少年に教

わることもあった。計算に関しては、自分より三歳

も年下の子どもたちと一緒に習う。スキッフにとっ

て、この時間は一日で最悪のときだった。大人しく

じっとしているのが嫌なのではない。どこだって、

あの酒場よりもましなのだから、ここからみすみす

追い出されたくはなかった。

 

冬の教場は恐ろしく寒い。暖炉に火が入っている

ときですら、せいぜい凍りつかずにいられるだけで、

今でも教場中の誰もが冷え切った手足に悩まされて

いた。

 

スキッフはうんざりしはじめた。胃袋の朝食はと

っくに消えてしまった。この時間帯に我が

慢まん

できるの

は夏だけだ。寺院の建物というのは、冬が耐え切れ

ないくらい寒い代わりに、夏には過ごしやすくでき

ているし、建物に染み付いた香のにおいが、便所に

生ごみ、さらには裏庭に潜んでいるあらゆる動物の

糞が放つ悪臭を抑えてくれる。

(よっしゃ!)

 

寺院の天辺で鐘の音が鳴り響き、信者に正午の礼

拝を告げると、スキッフだけでなく教場中の子ども

たちが顔をあげた。これが子犬の群れだったら、耳

と尻し

っぽ尾を喜びに震わせていたことだろう。修練者ビ

ールはため息をついた。

「よし―

」ビールがいい終わらないうちに子ども

たちは文字通り椅子から跳びあがり、ドタドタと戸

口に向かっていた。「―

もういいぞ」

 

スキッフは背後でビールが言葉を終えるのを微か

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19 第一章

に耳にしながらドリーを抱きあげ、少女を守るよう

に体の前で抱えたまま、ほかの子どもたちを押しの

けて戸口を抜けた。

 

戸外に出るとすぐに、スキッフはドリーを連れて

集団を離れた。子どもたちは、ひとり、またひとり

と様々な方角に散っていく。どうして誰もが必死に

走って帰っていくのか、スキッフには分からなかっ

た。たぶん、少しでも暖かい場所を見つける当てで

もあるのだろう。

 

スキッフは何もいわずにドリーの華き

奢しゃ

な肩をしっ

かりと抱いて、少女の家に向かった。ドリーは学校

に来るようになってまもなく、年上の少年たちにか

らかわれたり、いじめられたりした。スキッフはそ

の少年たちをやっつけたときから、少女の護衛をか

ってでていた。

 

朝はドリーの父親が桟橋の仕事へ向かう途中に学

校まで送ってくる。帰りはスキッフがつき添い、家

業の洗濯屋で働く母親やきょうだいのもとへ送り届

ける。洗濯屋は、びっしょりと濡ぬ

れた重たい生地と

格闘したり、刺激の強い石鹸で皮膚がチクチクした

り荒れたりするが、冬に働くには悪くないところだ。

洗濯盥だ

らい

をたえず火にかけておくので、部屋はつね

に暖かい。

 

洗濯屋に到着してから、ドリーがぐずぐずしてい

たことは一度もない。スキッフに向かってはにかむ

ように感謝の笑みを浮かべると、建物のなかへ大急

ぎで駆けこんでいく。扉が開いた瞬間に、通りに水

蒸気がもくもくと流れでた。

 

自らに課した任務を終えたあとは、親類たちに出

くわさない限り自由の身だ。

 

カルチェンのところへ戻れば、倒れるまで働かさ

れるだろう。接客はさせられない。それはメイジー

の仕事だからだ。だが、料理と接客以外のあらゆる

仕事をさせられる。そのあらゆる仕事

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のなかには、

考えただけで吐き気がするものも含まれていた。

 

その一方で、姿さえ見せなければ、カルチェンは

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自分のことを忘れているようだった。食事をねだら

ないでいる限り、この年長の従兄弟は、日中はずっ

と授業があると思ってくれているのだろう。

 

幸いにも、ビールは子どものころにこの長兄の拳

にさんざん苦しめられたから、スキッフが授業を終

えてからの居場所をわざわざ教えに出向くことはな

かった。

 

そんなわけで、しばらくは自由だ。使い走りの用

事を請けることもあれば、雪掻きや交差点の掃除で

小銭を稼ぐこともある。屑屋の人手が足りなければ、

道端のごみ拾いを手伝う。だが、こんなことをした

ところで、食べ物にありつけるわけでも、それを買

うだけの小銭を稼げるわけでもない。

 

そこで辿た

り着いたのが、この手口だ。まず、馴染

みの貧民街を離れて、ぼろぼろの服に上着も着てい

ない姿が異様に映る地域へと入っていく。最大の難

関はここだった。富裕層の住む小ぎれいな通りには、

彼のような子どもがうろつくのを好まない者たちが

いる。彼らに怪しまれないよう、目的地につくまで

に何度も通りを引き返さなければならない。

 

傾いた共同住宅の並ぶ薄汚れた通りを過ぎて、専

属の掃除夫がいる清潔な通りに入っていく。その変

化の激しさにはいつも驚かされるが、彼の住む地域

ならば、十かそれ以上の家族がぎゅうぎゅうで暮ら

しているような建物に、たったひと家族しか住んで

いないことは、さらに驚きだった。

 

あえて表通りを歩くことはない。スキッフのよう

な汚い子どもを追いはらうことだけを仕事にしてい

る者たちがいるのだ。今、スキッフは裏路地にいて、

物陰から物陰へと忍び歩いていた。ここなら隠れる

場所がいくらでもある。

 

屋敷裏のごみ捨て場には、灰、割れた瀬戸物、木

片、さらには家の住人が無駄にしたか、食卓に出す

には小さすぎるような食材の欠片といった、屑屋が

まだ使えるとみなすものが捨ててある。これこそが、

ロンダール伯父の仕入れ品―

木片や、あわよくば

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