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平成25年度 福岡市小学校社会科研究委員会 社会的事象を調べ,考えを表現する力を育てる 社会科学習指導法の研究 ~自他の考えが深まる交流活動の工夫~ 3年計画 第3年次

研 究 集 録 - fuku-c.ed.jp · また、交流活動においては、その根拠の一つか二つを絵や写真を使って説明することがで きるようにしたい。

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平成25年度

研 究 集 録

福岡市小学校社会科研究委員会

社会的事象を調べ,考えを表現する力を育てる

社会科学習指導法の研究~自他の考えが深まる交流活動の工夫~

【 3年計画 第3年次 】

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は じ め に

各学校におかれましては,子ども達の学力向上のために日々授業づくりの工夫に努めて

おられることと思います。

ご存じの通り,小学校社会科学習指導要領では,地域社会や我が国の国土,歴史などに

対する理解と愛情を深め,社会的な見方や考え方を養い,身に付けた知識,概念や技能な

どを活用し,よりよい社会の形成に参画する資質や能力の基礎を培うことを重視すること

を基本方針とし,日本人としての自覚をもって国際社会で主体的に生きて行くために基盤

となる知識技能を身に付けることや持続可能な社会の実現など,よりよい社会の形成に参

画する資質や能力の基礎を培うことが改善の具体的事項であげられています。

, , , ,また そこでは 学習や生活の基礎となる知識・技能を活用して 観察・調査すること

各種の資料から,必要な情報を集めて読み取ること,それらを的確に記録し,比較・関連

づけ,総合しながら再構成すること,考えたことを自分の言葉でまとめ伝え合い,お互い

の考えを深めること等も示されています。

本研究委員会は,これらの学習指導要領の改善の趣旨を踏まえ,児童の課題や研究成果

等から 「社会的事象を調べ,考えを表現する力を育てる社会科学習指導法の研究」を研,

究主題として掲げ,3年間の見通しをもった研究を進めてまいりました。

その研究の最終年度にあたる本年度は 「子どもが考えを深めることができるような交,

流活動のあり方を明らかにする」ことを研究目標に掲げ,表現物を活用した交流活動の工

, 。夫に視点を当て 授業実践を通した確かな理論の構築を目標に研究を進めてまいりました

また,この研究集録が先生方にとって活用しやすいようにと,各学年の指導単元の表現

物と交流活動の実際,及び各学年の実践例等を端的にまとめる工夫をいたしました。各学

校におかれまして,この研究集録をご活用いただけますと幸いです。

, 。本研究が 本市の小学校社会科教育の推進に少しでも寄与できることを願っております

社会科学習を通して,社会的な見方や考え方を養い,よりよい社会の形成に参画する資

質や能力の基礎を身に付けた子どもを育てていただきますようお願い申し上げます。

, ,最後になりましたが 本研究の機会と丁寧なご指導をいただきました福岡市教育委員会

研究を支えていただきました研究委員所属校の校長先生方に深く感謝申し上げます。

平成26年 3月 4日

福岡市社会科研究委員会

委員長 田中 栄司

1

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もくじ

○はじめに

○もくじ

○今年度研究の考え方

1 研究主題

2 研究の考え方

○3年生の表現物と交流活動のあり方

1 指導のポイント

2 実践例

○4年生の表現物と交流活動のあり方

1 指導のポイント

2 実践例

○5年生の表現物と交流活動のあり方

1 指導のポイント

2 実践例

12

○6年生の表現物と交流活動のあり方

1 指導のポイント

2 実践例

16

○研究の成果と課題

20

○おわりに

21

○委員名簿 22

2

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今年度は、

「社会的事象を調べ,考えを表現する力を育てる

社会科学習指導法の研究」

の3年次にあたる。

社会科の基本である「調べる・考える」それを

「表現する」力を育成していくために3年次計画

で研究に取り組んでいる。

1年次は学習問題設定後の視点作り

2年次は視点作成後の追究活動、

3年次は最終的な交流活動

と段階ごとに、学習活動の工夫を行っている。

今年度の研究では、めざす子どもの姿を

○ 学習問題に対する答えについて,調べた

ことや自分の考えを表現することができる

子ども

○ 互いの考えを交流することで、より社会

的な見方・考え方ができる子ども

としている。

今年度は、「考える力」「表現する」を

子どもたちに身につけさせる交流活動や

表現物について研究を進めていっった。

子どもは交流活動の中で表現物を活用し、

互いの考えや立場を伝えることによって、

自分の考えを深めることができると考える。

そこで、今年度は「交流活動の場面で学

習活動を工夫すれば、子どもは考えを深め

ることができるであろう。」という研究仮

説をもとに、研究を行った。

今年度研究の考え方

1 研究主題

2 研究の考え方

自他の考えが深まる交流活動の工夫

1~3年次研究構想図

今年度研究の考え方

3

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3年生の表現物と交流活動のあり方

3年生は社会科が初めてなので、まずは、体験などを通して見つけた事実を表現物にまと

めることができるようにしたい。

また、交流活動においては、その根拠の一つか二つを絵や写真を使って説明することがで

きるようにしたい。

表現物作成の例とポイント

○ 写真や表などを載せさせる。

○ 各資料から分かったこと(事実)と

考えたことを分けて書かせる。

◯ 資料から考えたことを関連させて、

学習問題に対する自分の考えを書かせ

る。

※ 自分の考えが学習問題の答えとして

成り立っているか確かめさせる。

交流活動の展開例 交流活動のポイント

学習問題

資料

(写真)

資料

(表)

分かったこと(事実)

考えたこと

分かったこと(事実)

考えたこと

自分の考え

表現物は、調べる段階で活用した資料を四つ切画用紙に貼るなどして作成します。

◯ 代表児童をあらかじめ選定しておき、

はじめの主張を行わせる。付け加えや質

問が活発になりうる考えをもつ代表児童

を選定しておくようにする。

◯ 表現物を活用して考えを述べさせるこ

とで、考えの根拠や活用した資料が視覚

的に理解されるようにする。

◯ 話し合う視点として、互いの考えの「共

通点」や「関連性」を提示して、相手の

考えに目を向けさせる。

◯ 表現物や板書をもとにして、交流活動

を通しての自分の考えの変容を表現させ

る。表現物や「今日の学習で」に変容し

た考えを書き込むことも考えられる。 学習問題の答え

学習問題

<考えA>

考えの主張

考えBへの質問

<考えB>

考えの主張

考えAへの質問

共通点や関連性を

見つける話し合い

4

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1 資料から学習問題をつくる。

2 学習問題の予想をし、追究の視点を立てる。

3 追究の視点をもとに調べる。

4 自分の考えを表現物にまとめる。

5 学習問題について表現物をもとに全体で交流する。

単元名 「くらしをささえる まちではたらく人びと」

小単元名「わたしたちのまちのスーパー ○○」(全8時間)

スーパー○○に、たくさんのお客さんが買い物に来るのは、どんなひみつがあ

るからなのだろう。

◯ 商品の並べ方 ○商品の種類 ○新鮮さ ○値段

○ 店員さんの動き ○店の環境 ○接客態度

<考えA>

買いやすさに

ひみつがある

私は、スーパー○○にたくさんのお客さんが来るひみつは買いやすさにあると思って

います。ですが、B君のお店の方の努力の中に、1日に何回も鮮度の確認をしていると

いう意見があったので、安心して商品を買うことができます。その努力は、商品を買い

やすいという考えとつながっていると気づきました。

ぼくの考えは、ズバリ!「買いやすさにひ

みつがある」と思います。

この写真を見てください。お肉の置き方が

とてもきれいです。あと、ラベルもすべて見

えるようにしてあるので、手に取らなくても

値段や賞味期限を見比べることができます。

もう一つあります。それは商品の種類の多

さです。トマトだけでも6種類あります。お

客さんはその中から選んで買うことができま

す。

<考えB>

お店の人の努力に

ひみつがある

関連性を見つける話し合い

<考えA>

買いやすさに

ひみつがある

<考えB>

お店の人の努力に

ひみつがある

5

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3年生での実践例 「さぐれスーパーマーケットのひみつ」

1. それぞれの立場考えについて交流する

たくさんの人が買い物をするスーパーマーケット「ビッグ」には、どんなひみつがあるのだろう。

スーパーマーケットで働く人々は,地域で暮らしているたくさんの人に来てもらうために,わたしたちのニ

ーズを考えて商品を取りそろえたり買いやすいように通路を広くしたりして,消費者の願いをかなえる様々な

工夫をしている。

そんなスーパーマーケットで働く人々の工夫のおかげで,わたしたちは,スーパーマーケットで自分たちの

生活に必要なものを便利に安心して購入することができる。スーパーマーケットは,わたしたちの生活を支え

ている。

A:安いひみつ B:新鮮なものを売るひみつ C:買い物しやすいひみつ

考えA:安く売るひみつがあるから

く ぼくは、お客さんが「ビッグ」にたくさん来るひみつ

は、値段が安いからだと思い

ます。

わけは、ビッグには 1円で

も安い品物がある。他の店は

18円が多いけど、ビッグは

それより 1 円でも安くして

いる。だから17円が多い。

○賞味期限が近いものは、値下

げをしているから安い。

○近くのお店の値段を店長が見

に行って、その店より 1 円で

も値段を安くしている。

○おかしが安い。コンビニで買

うよりビッグで買ったほうが

値段が安い。

○お客様感謝デーがあってその

日は5%割引をしている。

考えB:新鮮なものを売るひみつがあるから

ぼくは、お客さんが「ビッ

グ」にたくさん来るひみつ

は、食材が新鮮だからだと思

います。

わけは、ビッグでは、1日

に 3 回も温度チェックをし

ています。お肉や魚が新鮮で

おいしいから、たくさんのお

客さんが来ると思います。

○野菜がお店に届くのは早朝の

4 時と朝の 11 時です。早朝

4 時のは、昨日の夕方とれた

もの、朝 11 時のは、その日

の朝にとれたものがならんで

いる。

○野菜は朝とれたものが売られ

ている。

○温度チェック表があって、朝

の 11 時、夕方 3 時と夜の 7

時の3回チェックしている。 考えC:買い物しやすいひみつがあるから

ぼくは、お客さんが「ビッ

グ」にたくさん来るひみつ

は、買い物しやすいひみつが

あるからだと思います。「ビ

ッグ」では、とり肉やぶた肉

などコーナーごとに商品を

並べてありました。取りやす

いし選びやすいです。だか

ら、たくさんのお客さんが来

ると思います。

○通路も広く、車いすの人も通

れるようになっている。

○お年寄りや障害者の方が困っ

たときのためにインターホン

がある。

○お菓子のコーナーには、子ど

も用のかごがある。

○そうざいコーナーがあるか

ら、ご飯を作る時間がない時

に助かる。

▲考えAの代表児の表現物

▲考えBの代表児の表現物

▲考えCの代表児の表現物

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2. それぞれの関連性を考える

3. 学習問題の答えをつくる

「ぼくにとって○○○な店」と書いている表現物を取り上げ、私たちにとってビッグはどんな店なの

かを今までの学習をもとに考えさせ全体で交流させる。その中で、そう思った根拠を聞き、それぞれ3

つの考えが根拠となることをおさえていく。そして、「『親切な店』『なくてはならない店』と思うことが

できるのは、だれのおかげ?」と発問し、それぞれの考えは、すべて働いている人々の工夫であること

を確認し3つの考えの関連性にも気づかせていく。

A:安く売るひみつ B:新鮮なものを売るひみつ C:買い物しやすいひみつ

私たちのくらし

スーパーマーケットで働いている人々の工夫

○ビッグは、買いやすいお店

だと思います。わけは、買

いやすいひみつがたくさ

んあるからです。

○付け加えでわたしも子ど

もも大人も買いやすいお

店だと思います。わけは、

子どもには、子ども用のか

ごがあるし大人にはイン

ターホンがあるからです。

○ぼくは、しんせつな店だと

思います。わけは、他の店

より 1円でも安いし、新鮮

にするために1日に3回

も温度チェックをしてい

るからです。

○ぼくは新鮮で安い店だと

思う。わけは、安い工夫や

新鮮なものを売る工夫が

あるからです。

▲全体で交流する場面

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4年生の表現物と交流活動のあり方

4年生では、学習対象が広がり、直接、観察・調査できるものだけでなく資料で学習を進める場

面が増えてくる。地図や写真、グラフなどの統計資料から事実を読み取り、事実と事実の相互の

関連から考えを作り表現させたい。

また、交流活動においては、資料から考えたこと、関連から考えた学習問題に対する考えを交

流させたい。

表現物作成の例とポイント

○ 写真や表、統計など、根拠となる資料

を複数載せさせる。

○ 各資料から分かったこと(事実)と考

えたことを分けて書かせる。

◯ 資料から考えたことを総合して、学習

問題に対する自分の考えを書かせる。

※ 資料から読み取った事実に間違いはないか、

自分の考えの根拠として適当か確かめさせる。

交流活動の展開例 交流活動のポイント

学習問題

資料

(写真)

資料

(表)

分かったこと(事実)

考えたこと

分かったこと(事実)

考えたこと

自分の考え

表現物は、調べる段階で活用した資料を四つ切画用紙に貼るなどして作成します。

◯ 代表児童をあらかじめ選定しておき、

はじめの主張を行わせる。付け加えや質

問が活発になりうる考えをもつ代表児童

を選定しておくようにする。

◯ 表現物を活用して考えを述べさせる。

発表後はホワイトボードや黒板の横に掲

示し見直せるようにする。

◯ 話し合う視点として、互いの考えの「共

通点」や「関連性」を提示して考えを統

合したり、重ね合わせたりしてまとめて

いく。

◯ 交流活動を通しての自分の考えの変容

を表現させる。参考になった考えを「今

日の学習で」や表現物に書くようにする。 学習問題の答え

学習問題

<考えA>

考えの主張

考えBへの質問

<考えB>

考えの主張

考えAへの質問

共通点や関連性を

見つける話し合い

共通点や関連性を生かして

まとめにつなぐ話し合い

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1 学習問題をつくる。

2 学習問題の予想をし、追究の視点を立てる。

3 追究の視点をもとに調べる。

4 自分の考えを表現物にまとめる。

5 学習問題について表現物をもとに全体で交流する。

単元名 「健康なくらしをささえる」

小単元名「ごみと私たちのくらし」(全8時間)

私は,ゴミ袋が有料化されたことで,市民が「なるべくゴミを出さないようになる」

という考えに納得しました。ゴミ処理の負担が金額面で軽くなるとともに,市民全体で

ゴミを減らそうとする取組がとても大切なのだと思いました。

福岡市やそこに住む市民がごみを減らそうという思いを持って、協力する事が大切だ

と考えます。

上のグラフから分かるように、有料化して

からごみの量が減っています。これは、ごみ

袋にお金を出さなければならないから、各家

庭でごみを減らしたんだと思います。

下の写真はごみステーションの様子です。

一か所のごみステーションでも20袋以上あ

ります。こんなにたくさんのごみが福岡市か

ら集められています。

わたしは、この二つの資料から、ごみの量

を減らさなければならないのでゴミ袋を有料

化したと考えました。

<考えA>

ごみ処理にお金が

かかるから

<考えB>

ごみの量を減らし

たいから

なぜ,福岡市はゴミ袋を有料化したのだろうか。

○福岡市のごみの種類と量 ○ごみの集め方 ○ゴミ処理場の処理可能量

○ゴミ処理の金額 ○燃えるごみの行方 ○その他のごみの行方

○他地域との協力 ○これからのごみ処理

<考えB>

ごみの量を減らし

たいから

<考えA>

ごみ処理にお金が

かかるから

関連性を見つける話し合い

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考えA:小石原には豊かな自然があるから

考えB:窯元さんたちの技がすごいから

考えC:村の人たちが協力したから

ぼくは、小石原には、焼きも

のづくりに必要な原料がすぐ

手に入る豊かな自然があるか

らさかんなのだと考えました。

村の5分の3が森で、焼きも

のづくりに必要なまきや焼き

ものに適した土がたくさんあ

り、上薬となる木灰やさび土も

あるからです。

○上薬の原料となるわら灰も田ん

ぼからつくることができ、小石

原は焼きものづくりに必要な条

件がそろっている。

△自然が豊かというだけで、さか

んになると思わない。自然が豊

かなのは、小石原だけでなく、

他地域にもある。自然だけでは

ない理由もあるはずだ。

窯元さんの技がすごいから、

小石原焼が有名になり、焼きも

のづくりがさかんになったと

考えます。飛びかんな等の独特

な技があり、この技を身につけ

るため、窯元さんたちは修業を

重ねています。陶土をこねる修

業は3年、一人前の窯元になる

には5年くらいかかります。

○窯元さんたちは、小石原焼の伝

統を受け継ぎ、いろいろな技を

使って、焼きものづくりを行っ

ている。窯元さんの技がすごい

から、焼きものづくりがさかん

になった。

△窯元さんの技がすごいことと小

石原焼が有名になったことが、

どうつながっているのか。

ぼくは、村の人たちが、小石

原焼を広める協力をしたから

焼きものづくりがさかんにな

ったと考えます。

村の人たちは、小石原焼を多

くの人に知ってもらうために、

ポスターをつくったり、民陶村

祭を開いたりしています。伝統

産業会館や道の駅をつくった

りもしました。

○村の人たちは、小石原焼に誇り

をもっている。小石原焼を大切

に思い、多くの人たちに知って

もらいたくて協力している。

△村の人たちが協力したことが、

どうして焼きものづくりがさか

んになることにつながるのか。

村の人たちは、どうして焼きも

のづくりに協力したのだろう。

4年生での実践例 「小石原の人々のくらし」

1. それぞれの考えについて交流する

A:豊かな自然 B:窯元さんの技 C:村人たちの協力

小石原では、どうして焼きものづくりがさかんなのだろう。

小石原には、焼きものづくりに必要な陶土やまき、上薬などの原料が近くにあり、小石原の土地の自然を生

かして焼きものづくりを行っている。また、窯元さんたちは、昔から受け継がれてきた焼きものの技術を守っ

ていこうと工夫や努力をしている。そして、村の人たちみんなで協力して、小石原焼を中心とした村づくりに

取り組んでいる。小石原の人たちは、小石原の土地に合った生活を工夫しながらくらしている。

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2. それぞれの関連性を考える

3. 学習問題の答えをつくる

代表児の考えについての交流において、「自然だけでさかんになれるのか」「窯元の工夫だけでさかんになれ

るのか」といった意見が聞かれた。この考えをもとに、「○○だけではさかんになれないとするなら、それぞれ

の考えにつながりがあるのではないか」と発問し、3つの考えがどのようにつながっているのかについて話し

合う場を設定した。また、小石原でくらす人々にとって、小石原焼はどのような存在であるのかを考えさせる

ことによって、小石原焼を中心としたつながりに気づかせていった。

小石原の自然を窯元さんた

ちが焼きものづくりに生かし、

伝統を受け継いできたから、さ

かんになった。小石原の豊かな

自然と窯元さんの技にはつな

がりがある。村の人たちも、自

然を生かし小石原焼を守ろう

としているのでつながる。

小石原でくらす人々は、小石

原焼に誇りをもっている。

窯元さんたちの工夫や努力

を村の人たちが支えているか

ら、焼きものづくりがさかんに

行われている。窯元さんたちと

村の人たちは、協力し合って、

小石原を発展させようとして

いるのでつながりがある。

小石原でくらす人々は、小石

原焼とともに歩んでいる。

小石原焼を中心に3つのこ

とがつながっている。

A:豊かな自然

B:窯元の技 C:村人の協力

小石原焼

11

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5年生の表現物と交流活動のあり方

5年生では、学習対象が広がり、見学ではなく資料から考える場面が多くなる。写真や地図、

地球儀、統計などの複数の資料から事実を丹念に読み取り、学習問題に対する自分の考えを表

現させたい。

また、交流活動においては、表現物を活用して自分の考えとその根拠を伝えさせたり、友だち

の考えとその根拠に目を向けさせたりしたい。

表現物作成の例とポイント

○ 写真や表、統計など、活用した資料

を複数載せさせる。

○ 各資料から分かったこと(事実)と

考えたことを分けて書かせる。

◯ 資料から考えたことを総合して、学

習問題に対する自分の考えを書かせ

る。

※ 自分の考えが学習問題の答えとして

成り立っているか確かめさせる。

交流活動の展開例 交流活動のポイント

学習問題

資料

(写真)

資料

(表)

分かったこと(事実)

考えたこと

分かったこと(事実)

考えたこと

自分の考え

表現物は、調べる段階で活用した資料を四つ切画用紙に貼るなどして作成します。

◯ 同質グループで話し合い考えを練り上げた

後、代表児童を選定し、はじめの主張を行わせ

る。付け加えや質問が活発になりうる考えをも

つ代表児童を選定しておくようにする。

◯ 表現物を活用して考えを述べさせるこ

とで、考えの根拠や活用した資料が視覚

的に理解されるようにする。

◯ 話し合う視点として、互いの考えの共通点

や関連性を見つけさせたり、相手の考えの根

拠が正しいかを判断させたりする。

◯ 表現物や板書をもとにして、交流活動

を通しての自分の考えの変容を表現させ

る。表現物に変容した考えを書き込むこ

とも考えられる。 学習問題の答え

学習問題

<考えA>

考えの主張

考えBへの質問

<考えB>

考えの主張

考えAへの質問

共通点や関連性を

見つける話し合い

考えの根拠が正しい

か判断する話し合い

12

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1 資料から学習問題をつくる。

2 学習問題の予想をし、追究の視点を立てる。

3 追究の視点をもとに調べる。

4 自分の考えを表現物にまとめる。

5 学習問題について表現物をもとに全体で交流する。

単元名 「工業の発達とわたしたちのくらし」

小単元名「自動車工業のさかんな地域」(全11時間)

自動車工場で働く人々は、どのようにして消費者の願いをかなえる自動車作り

をしているのだろうか。

◯ 燃料電池自動車 ○ 電気自動車 ○ ハイブリッドカー ○ CО2削減

◯ 生産指示書 ○ 注文生産 ○ アンケート ○ 再利用できる部品

<考えA>

研究・開発を

行っているから

わたしは、多くの種類の自動車を作る「仕組み」に注目していました。だけど、◯◯さ

んが「消費者がどんなことを望んでいるのか、消費者に直接尋ねている。」と言っていて、

確かに「情報収集」も必要だと思いました。また、消費者の願いがあってもそれをかなえ

る自動車がないと実現しないので、「研究・開発」も大切だとわかりました。自動車を研

究する人、工場で働く人、販売する人、それぞれの人たちが共通して消費者のために努力

をしているから、消費者の願いをかなえる自動車が作られることがわかりました。

わたしは、多くの種類の自動車を作る仕組みが

あると考えます。この写真を見てください。ここ

に生産指示書があります。組み立てる人はこの指

示書を確認しながら、1台1台違う自動車を作っ

ています。関連工場でも数種類の部品を注文に合

わせて作りコンピュータ管理しています。また、

この地図のように関連工場は組立工場の近くあ

り、部品を時間通りに届けられるように注意して

います。このように、多くの種類の自動車を作る

仕組みがあるので、消費者の願いをかなえる自動

車作りができるのだと思います。

<考えB>

情報収集を

しているから

<考えC>

多くの種類の車を作

る仕組みがあるから

関連性を見つける話し合い

<考えA>

研究・開発を

行っているから

<考えB>

情報収集を

しているから

<考えC>

多くの種類の車を作

る仕組みがあるから

1台1台生産指示書がついていて、確認しながら組み立てている。

分かったこと

関連工場でも数種類の部品を注文通りにつくっていて、時間通りに確実に届けられるようにしている。

自分の考え

指示書に合わせて部品を作ったり、組み立てたりするしく

みがあるから、消費者の願いに合わせた自動車をつくるこ

とができる。

自動車工場で働く人々は、どのようにして消費者の願いをかなえる自動車作りをしているのだろうか。

学習問題

13

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5年生での実践例 「これからの食料生産」

考えA:日本の変化

考えB:輸入品の特徴

考えC:外国の働き

輸入品が多い理由は「日本の食

文化が変化したこと」「人口が増え

て食べる量が増えた」「日本でとれ

る量が減った」からだと思います。

なぜなら、昔に比べ肉や乳製品の

消費量などは3~4倍になってい

て、その割にはほとんどの食料の

生産量が減っているからです。

○日本人は米を食べなくなった

と農業の学習の時に書いてあ

ったので段々と食文化は変わ

っている。

○日本でとれるものが減ってい

るのに、日本に必要な食料が増

えているなら輸入に頼るしか

ない。それなら輸入食品が多い

のも納得。

輸入品が多い理由は「安全」

「値段が安い」「おいしい」か

らだと思います。

国産品に比べると、輸入品の方

が安いものが多く10分の1

の値段のものもある。しかし、

調べていくと「安全」「おいし

い」とは完全に言えないという

ことも分かりました。

○同じようなものでも値段が安

い方が売れるよね。

△農薬問題など安全とは言えま

せんよね。

△「新鮮さ」で考えると輸入して

くる段階で鮮度が落ちるので

「おいしい」とは言えないので

はないのかな。

輸入品が多い理由は「外国

ではとれる量が多い」「日本と

関係が良い」からです。外国

では土地が広大なためたくさ

んの量の食料がとれます。そ

のため多くの食料を輸出する

ことができます。

○海外では食料が余るほどとれ

ている所もあるからたくさん

輸出するだろう。

△日本が輸入をするから海外で

はたくさんのものを作ってい

るのではないのか。

○輸入が多い国とは、条約をむす

んでいるのですね。

A:日本の変化 B:輸入品の特徴

1. それぞれの立場考えについて交流する

C:外国の働き

なぜ、多くの食料が輸入されているのだろう。

現在、日本の食糧自給率はきわめて低く多くの食料を外国からの輸入に頼っており、それらは国民の食料を

確保する重要な役割を果たしている。しかし、輸入品は決して安全とは言えないような事件があったり、多く

の食品を輸入することで耕地確保のための森林伐採など、世界の環境に被害をもたらしていたりする。これら

の問題を解決していくために、国内の食料生産に携わっている人は、自給率を上げようと「地産地消」を掲げ

たり、日本の高い生産技術を外国に伝えたりと様々な工夫や努力をしている。

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この後、学習問題2「これからの食料生産についてわたしたちができることは何だろう」を設定し、

農家の人たちが自給率を上げようと「地産地消」を掲げたり、「安全」を示すために生産者表示をしたり、日本の

高い生産技術を外国に伝えたりと様々な工夫や努力をしていることを調べ、その中で自分ができることについて考

えていった。

2. それぞれの関連性を考える

3. 学習問題の答えをつくる

代表児の考えや全体交流での質問や意見の中に「日本の食生活が変化したのは、値段が安い食料が多

く輸入されてきたから。」「値段が安いのは,海外で大量に生産されているから。」など,関連性を指摘す

る声が見られた。そこで,「他につながっている事はないか?」「○○だから□□と言えることは他にな

いか」と発問し,グループで事実の関連性を考えさせ全体で確認した。

「値段が安い」と「日本で

とれる物が減った」はつなが

っているのではないかな。輸入

品ばかり売れると、日本の農

家は作るのはやめてしまうか

らね。

あと,「外国でとれる量が多

い」と「値段が安い」もつな

がっているよね。たくさん取れ

るとその分安くなるから、外

国の特性から輸入品が安くな

っているんだよね。

「日本人の食文化の変化」と「値段が安い」も,つながってるよね。買う人は値段が安いものをどんどん買っていくよね。だから,日本の変

化と輸入品の特徴はつながっているっていうことじゃないかな。 ということは ABC3つは

それぞれ関連し合っていると言えるのではないかな。

A:日本の変化

B:輸入品の特徴

C:外国の働き

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6年生の表現物と交流活動のあり方

6年生では、子どもの学習内容が大きく広がるとともに、活用する資料として年表が加わる。

表現物の作成においては、1つ1つの事実を吟味するだけでなく、図や表などで再構成した自分

の考えを表現させるようにしたい。

また、交流活動においては、表現物をもとにして考えを伝え合わせ、友だちの考えと比べたり

関連させたりしながら自分の考えを深めさせたい。

表現物作成の例とポイント

○ 写真や表、統計など、活用した資料

を複数載せさせる。

○ 各資料から分かったこと(事実)と

考えたことを分けて書かせる。

◯ 資料から考えたことを総合して、学

習問題に対する自分の考えを書かせ

る。

※ 自分の考えが学習問題の答えとして

成り立っているか確かめさせる。

交流活動の展開例 交流活動のポイント

学習問題

資料

(写真)

資料

(表)

分かったこと(事実)

考えたこと

分かったこと(事実)

考えたこと

自分の考え

表現物は、調べる段階で活用した資料を四つ切画用紙に貼るなどして作成します。

◯ 表現物を活用して資料の解釈を述べさ

せることで、自他の考えの違いをとらえ

させる。

◯ 「どれから~?」(順序性)や「どれが

最も~?」(順位性)など、子どもが価値

判断を行うような視点で話し合わせるこ

とで、自他の考えの違いを明確にさせる。

◯ まとまりかけた考えを揺さぶる資料を

提示することで、自分の考えを見直させ

る。

◯ 表現物や板書をもとにして、交流活動

を通しての自分の考えの変容を表現させ

る。表現物に変容した考えを書き込むこ

とも考えられる。 学習問題の答え

学習問題

<考えA>

考えの主張

考えBへの質問

<考えB>

考えの主張

考えAへの質問

関連性を明らかに

する話し合い

資料への立ち返り

新資料の提示

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1 学習問題をつくる。

2 学習問題の予想をし、追究の視点を立てる。

3 追究の視点をもとに調べる。

4 自分の考えを表現物にまとめる。

5 学習問題について表現物をもとに全体で交流する。

単元名 「天下統一と江戸幕府」

小単元名「江戸幕府による政治」(全6時間)

江戸幕府は,なぜ264年間も続いたのだろうか。

◯ 大名配置 ◯ 武家諸法度 ◯ 参勤交代 ◯ 御触書 ◯ 身分制度

◯ 農業技術の進歩 ◯ 新田開発 ◯ 踏絵 ◯ 鎖国

私は、江戸時代が長く続いた理由は、外国との関係を変化させたからだと

思っていました。家光が鎖国を完成させて、幕府の力を強めたと考えたからで

す。しかし、話し合う中で、大名のとりしまりやいろいろなきまりも江戸時代

が長く続いた理由になると思い始めました。先生が見せてくれた年表では、鎖

国が完成してから長い間、反乱や一揆が起きていないことが分かりました。国

外だけでなく国内に対しても制限をつくり幕府の力が強まったことで、江戸時

代は長く続いたのだと考えています。

江戸時代は、なぜ264年間も続いたのだろう。 江戸幕府がキリスト教の禁止と貿易の統制のために

日本人の海外の行き来を禁止し、外国船の出入りを制

限した。

国内だけでなく国外にも決まりを出す鎖国は

すごい決まりだと思いました。

江戸幕府は、キリスト教の教えが政治を乱すもとに

に なると考えて、きびしく取りしまった。

この時代のキリスト教は、とても強かったんだなと

思いました。

ぼくは、264年間も江戸時代が続いた

わけは2つあると思います。一つ目は、家

光が鎖国を完成させたことです。二つ目は、

この踏み絵を使ってキリスト教の取りしま

りを強めたことです。

限られた国と貿易をしたり、外国との貿

易や海外の情報を幕府が独り占めしたりす

るなど、外国との関係を変化させたから、

江戸時代は長く続いたと思います。

<考えA>

大名をとりしまったから

<考えB>

きまりをつくったから

<考えC>

外国との関係を変化させたから

関連性を明らかにする話し合い

<考えA>

大名をとりしまったから

<考えB>

きまりをつくったから

<考えC>

外国との関係を変化させたから

江戸幕府への反乱や一

揆をまとめた年表

264年間も江戸時代が続いたのは、家光が鎖国を完成させたり、

踏み絵を使ってキリスト教の取りしまりを強めたりしたことなどを

通して、外国との関係を変化させたからです。

鎖国

踏み絵

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考えA:政治のしくみが整ったから

考えB:産業が発達したから

考えC:軍事力が強化されたから

そう考えたわけは,軍事力が

上がっていったとしてもまだ

2つの戦争に勝つ前だし,産業

が発達するのも条約改正の後

だからです。しかも,改正した

条約の内容は外国人を裁ける

内容になるということだった

ので,政治のしくみを整えたか

らだと思います。

○条約改正に失敗したのは,法律

がなかったからだから,国会や

選挙で国際的地位を高めた

○選挙や国会で近代的な政治のし

くみができたから

△選挙は国民の1%しか参加でき

ないからあまり意味がない

△政治のしくみが整っても,軍事

力が強くないと勝てない

そう考えたわけは,政治の場

合は国民が政治に参加できる

けどたった1%だけで十分に

政治のしくみが整ったとは言

えないと思います。だから,産

業を発達させて武器をつくり,

戦いに勝って外国と改正でき

るような立場に立てたからだ

と思います。

○日清戦争の賠償金で八幡製鉄所

ができ,そこで武器を作って軍

事力を強化したから

△八幡製鉄所ができたのは条約を

改正した後のことだから,あま

り関係がないのでは?

△官営工場ができて産業が発達し

たのも,政治のしくみが整って

富国強兵をしたからではないか

そう考えたわけは,日清戦争

や日露戦争に勝てたのは,徴兵

令によって明治政府の軍隊を

つくり軍事力が強まったから

だと思う。戦争に勝ったことは

外国に日本の強さをアピール

することができるから,列強に

認められるようになり条約が

改正できたと思います。

○条約改正が失敗したのは軍事力

が弱かったから.だから,軍事力

を強くして対等な立場に立った

○実際に動くのは軍事だから軍事

力が強化されたことは大きい

△日清戦争も日露戦争も条約改正

後のできごと

△軍事力が強化されたのも,政治

が整って徴兵令を出したから

6年生での実践例 「条約改正への道」

1. それぞれの立場考えについて交流する

A:政治のしくみ B:産業の発達 C:軍事力の強化

陸奥宗光は,なぜ不平等な条約を改正できたのだろう。

明治の世になり新政府は大日本帝国憲法の発布,国会の開設を通して近代的な国家の仕組みを整えていった。また,日

清・日露戦争の勝利や産業の発達によって日本の国力が高まった。これらのことを背景に,日本の国際的地位が向上し,

陸奥宗光や小村寿太郎らの外務大臣が努力して交渉を進めた結果,不平等な条約を改正することができた。また,世界で

活躍する日本人も現れ科学の面でも国際的地位が向上した。さらに,人々のくらしが向上してくるにつれて様々な社会問

題が起こり,人々の願いを政治に生かそうとする社会運動が広まった。

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2. それぞれの関連性を考える

3. 学習問題の答えをつくる

代表児の考えや全体交流での質問や意見の中に「日清戦争での賠償金で八幡製鉄所ができた。」「徴兵

令で軍事力が強化されたのは,政治のしくみが整ったから。」など,関連性に気づいている発言が多々あ

った。そこで,全体交流で出た八幡製鉄所と日清戦争の関連性を例に挙げ,「他に関連している事実はな

いか?」「なぜ,その事実は関連しているのか?」と発問をし,事実の関連性を2人組で交流させ,全体

で確認した。

「八幡製鉄所」と「官営工

場」は,つながってるよね。八

幡製鉄所は官営工場だから,

政府が作った工場だよね。だ

から,政治のしくみと軍事力の

強化もつながっているってい

うことじゃないかな。あと,「日

清戦争」と「八幡製鉄所」も

つながっているよね。八幡製鉄

所は,日清戦争の賠償金で作

られたからね。

「徴兵令」と「政治のしく

み」もつながっているよね。徴

兵令は,政治の政策で明治政

府の軍隊を作るためにだされ

たものだったよね。富国強兵は

政府の方針だけど,政治のしく

みが整って政策が作られ、軍事

力が強化されたから,政治のし

くみが整ったことと,軍事力

が強化されたことは関係して

るよね。

A:政治のしくみ

B:産業の発達

C:軍事力の強化

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研究の成果と課題 ○ 交流活動に臨むまでに、学習問題に対する子どもの考えを明らかにした

表現物を作成させる。

○ 表現物を活用し、互いの考えや立場を伝える交流活動の場を設ける。

成 果

表現物の作成について

○ 自分の考えを発表した後の表現物を活用する場を設定することが難しい。交流後の

自分の考えの変容についてどのような表現のあり方があるか研究を深める必要があ

る。

交流活動について

○交流活動における発問・板書・資料提示の吟味の必要があると考える。

課 題

表現物の作成について

○ 表現物に、子どもの考えとその根拠となる事実を明記させることで、何がどこに書

いてあるかが明確となり、子ども同士が自分の考えと比べながら賛成意見や反対意見

を伝え会うことができた。

○ 各学年における表現物のあり方が明らかとなった。

3年生・・・事実とそこからわかることを中心に

4年生・・・地図や写真などの資料から関連づけた考えを中心に

5年生・・・地図や写真、グラフなどの資料を関連づけ、そこからどんなことが

言えるかを中心に

6年生・・・統計資料や年表などの資料から傾向や共通性を見出し、それらを関

連付けた考えを中心に

交流活動について

○ 代表児童の考えに付け加えや質問を行う場を設定することで、社会的事象の共通点

や関連性について自分の考えをについて根拠を明らかにしながら話し合うことができ

た。

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おわりに

福岡市小学校社会科研究委員会では,研究主題「社会的事象を調べ,考えを表現する力

を育てる社会科学習指導法の研究」を設定し,今年度が3年次にあたります。1・2年次

の取組を受け,今年度は副主題「自他の考えが深まる交流活動の工夫」に取り組みました。

この副主題は,社会科学習指導を進めていく実践上の課題として常々語られることの多

い「交流活動が事実の出し合いに終わってしまう」「子どもたちの考える力をどのように

身に付けさせていけばよいか?」ということにスポットをあてたものだと考えています。

問題解決力の中でも,私たちが特に焦点化したのが「考える」「表現する」ということ

です。一口に「考える」「表現する」といっても「何を考えるのか」「どのように表現する

のか」などについて,まず子どもたち自身が理解していなければ学習は進みません。また,

教師は,丁寧に指導を行っていく必要があります。

そこで,以下の2点に絞った取組を行うこととしました。

1 交流活動に活かすことのできる表現物をつくること

2 表現物を活かした交流活動を行うこと

この2点の研究の成果は,昨年同様見開き2ページにコンパクトにまとめ,若い先生方

にも読んでいただけるような表現を心がけました。

1については,各学年とも「表現物と交流活動のあり方」として整理しました。

2については,「実践例」として具体的な資料を示しながら整理しました。

この研究集録を手にされた方は,「考える」「表現する」力の育成について考える際に,ぜ

ひ一つの手がかりにしていただければと思います。

最後になりましたが,社会科研究委員会の研究推進にあたってご指導くださいました福

岡市教育委員会 指導部 主任指導主事 山口猛虎先生,福岡市教育センター研修課 研修支

援係長 小代尚由先生,授業研究の会場や委員の出張に際してご配慮くださいました各委

員所属校の校長先生方に深く感謝申し上げます。

小学校社会科研究委員会

副委員長 太 田 康 治

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平成25年度 福岡市社会科研究委員会 研究委員名簿

委 員 長 福岡市立大池小学校 校長 田中 栄司

副委員長 福岡市立月隈小学校 教頭 太田 康治

【委員】

学校番号 所 属 委員名 所属部 担任学年

1 大名小学校 諸岡 哲朗 高学年 5年担任

8 警固小学校 岩永 純二 中学年 6年担任

11 住吉小学校 中村 雅司 中学年 5年担任

14 馬出小学校 村田 智信 事務局:運営担当 2年担任

79 飯倉小学校 堀部 健太郎 高学年チーフ 6年担任

83 勝馬小学校 川田 佳明 高学年 高学年

89 長丘小学校 福島 裕介 高学年 6年担任

92 板付北小学校 久保 裕也 中学年 3年担任

107 福浜小学校 城 幸子 中学年チーフ 4年担任

115 石丸小学校 今村 明裕 高学年 6年担任

学校指導課 山口 猛虎 主任指導主事

教育センター

研修課 小代 尚由 研修支援係長

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