10
Bulletin of the JSME Transactions of the JSME (in Japanese) 日本機械学会論文集 [DOI: 10.1299/transjsme.16-00337] © 2016 The Japan Society of Mechanical Engineers Vol.82, No.844, 2016 鉄道車両用ディスクブレーキの鳴き現象 高見 *1 ,嵯峨 信一 *1 Brake squeals phenomena of disc brake for railroad cars Hajime TAKAMI *1 and Shinichi SAGA *1 *1 Vehicle Control Technology Division, Railway Technical Research Institute 2-8-38 Hikari-cho, Kokubunji-shi, Tokyo 185-8540, Japan Key words : Brake squeal, Disc brake, Self-excited vibration, Friction-induced vibration, Railway, Noise 1. 自動車においてディスクブレーキ装置が作用した時の「キィー」という比較的高周波な音は,操作フィーリン グや車内静粛性などの品質に直結する問題である.鉄道分野においても,装置の大きさや構造面に違いは多くあ るが,ブレーキロータに摩擦パッドを押し付けて制動力を得るディスクブレーキ装置自体は多くの車両に搭載さ れており,同様のブレーキ音を生じるときがある. 自動車分野で研究が進む制動時の音は,その現象面および周波数から,サスペンションや駆動系と共振した 100 Hz 程度以下の音を Judder,摩擦面のスティックスリップやキャリパ振動を加振源とした 1 kHz 程度以下の音を Groan,摩擦力をエネルギー源とした自励振動により生じる 1 kHz 以上の音を Squeal または「鳴き」として区別 されている.特に,鳴き現象については,耳障りな帯域の 1 kHz 以上で生じており,ブレーキ構成部品や摩擦面 の状態など様々な要因で変化することから,対策が難しい問題として現在もそのメカニズムの解明や解析モデル の改良等が進められている(たとえば,新谷他,2015). 一方,鉄道においては踏面ブレーキ装置を対象とした研究がいくつか報告されているものの(中井他,1990), ディスクブレーキ装置を対象とした研究報告は見当たらない.この理由として,ディスクブレーキ装置を搭載す る近年の鉄道車両は駆動用モータによる電気ブレーキを主として用いるため使用頻度が少ないことや,ブレーキ 装置が搭載される台車部と客室部が離れており客室騒音として問題にならないことなどが挙げられる.特に,音 Received 28 July 2016 1 No.16-00337 [DOI: 10.1299/transjsme.16-00337], J-STAGE Advance Publication date : 15 November, 2016 *1 正員,公益財団法人鉄道総合技術研究所(〒185-8540 東京都国分寺市光町 2-8-38E-mail of corresponding author: [email protected] Abstract Brake squeals phenomena of the disc brake system for railroad cars were reproduced and were investigated in the test stands using a full-size brake rotor, a wheel, a floating caliper and a brake pad. Brake squeals of the disc-brake apparatus occurred at a low speed of 20 km/h or less, and the magnitude of brake squeals increased as the average braking force increases until it was saturated. Frequencies of the brake squeals exceeding the background noise of the test facility are 800 Hz, 2 kHz, 3.2 kHz, and 6.3 kHz. The largest squeal of 6.3 kHz was radiated from the leading side of the pad and the rotor, and coupled vibrations between the rotor and the pad were attributed to the self-excited vibration induced by the dry friction. To measure the vibrations of the rotating disc at the time of brake squeals, vibration measuring systems operating by wireless power supply were installed in the rotating axle. As a result, one-third octave band analysis of brake squeals at 6.3 kHz and at 3.2 kHz approximately coincides with the vibration of both the rotor and pad, and the coupled vibration tends to grow larger in the high friction coefficient range. Furthermore, these frequencies agree well with the natural frequency of the rotor examined using the scanning laser doppler vibrometer. The mode shapes and amplitude of rotor vibrations at the time of brake squeals are significantly affected by the number of bolts and their fastening positions to the wheel.

Brake squeals phenomena of disc brake for railroad cars

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Bulletin of the JSME

Transactions of the JSME (in Japanese)日本機械学会論文集

[DOI: 10.1299/transjsme.16-00337] © 2016 The Japan Society of Mechanical Engineers

Vol.82, No.844, 2016

鉄道車両用ディスクブレーキの鳴き現象

高見 創*1,嵯峨 信一*1

Brake squeals phenomena of disc brake for railroad cars

Hajime TAKAMI*1

and Shinichi SAGA*1

*1 Vehicle Control Technology Division, Railway Technical Research Institute

2-8-38 Hikari-cho, Kokubunji-shi, Tokyo 185-8540, Japan

Key words : Brake squeal, Disc brake, Self-excited vibration, Friction-induced vibration, Railway, Noise

1. 緒 言

自動車においてディスクブレーキ装置が作用した時の「キィー」という比較的高周波な音は,操作フィーリン

グや車内静粛性などの品質に直結する問題である.鉄道分野においても,装置の大きさや構造面に違いは多くあ

るが,ブレーキロータに摩擦パッドを押し付けて制動力を得るディスクブレーキ装置自体は多くの車両に搭載さ

れており,同様のブレーキ音を生じるときがある.

自動車分野で研究が進む制動時の音は,その現象面および周波数から,サスペンションや駆動系と共振した 100

Hz 程度以下の音を Judder,摩擦面のスティックスリップやキャリパ振動を加振源とした 1 kHz 程度以下の音を

Groan,摩擦力をエネルギー源とした自励振動により生じる 1 kHz 以上の音を Squeal または「鳴き」として区別

されている.特に,鳴き現象については,耳障りな帯域の 1 kHz以上で生じており,ブレーキ構成部品や摩擦面

の状態など様々な要因で変化することから,対策が難しい問題として現在もそのメカニズムの解明や解析モデル

の改良等が進められている(たとえば,新谷他,2015).

一方,鉄道においては踏面ブレーキ装置を対象とした研究がいくつか報告されているものの(中井他,1990),

ディスクブレーキ装置を対象とした研究報告は見当たらない.この理由として,ディスクブレーキ装置を搭載す

る近年の鉄道車両は駆動用モータによる電気ブレーキを主として用いるため使用頻度が少ないことや,ブレーキ

装置が搭載される台車部と客室部が離れており客室騒音として問題にならないことなどが挙げられる.特に,音

Received 28 July 2016

1

No.16-00337 [DOI: 10.1299/transjsme.16-00337], J-STAGE Advance Publication date : 15 November, 2016 *1 正員,公益財団法人鉄道総合技術研究所(〒185-8540 東京都国分寺市光町 2-8-38) E-mail of corresponding author: [email protected]

Abstract

Brake squeals phenomena of the disc brake system for railroad cars were reproduced and were investigated in the test stands

using a full-size brake rotor, a wheel, a floating caliper and a brake pad. Brake squeals of the disc-brake apparatus occurred at

a low speed of 20 km/h or less, and the magnitude of brake squeals increased as the average braking force increases until it

was saturated. Frequencies of the brake squeals exceeding the background noise of the test facility are 800 Hz, 2 kHz, 3.2

kHz, and 6.3 kHz. The largest squeal of 6.3 kHz was radiated from the leading side of the pad and the rotor, and coupled

vibrations between the rotor and the pad were attributed to the self-excited vibration induced by the dry friction. To measure

the vibrations of the rotating disc at the time of brake squeals, vibration measuring systems operating by wireless power

supply were installed in the rotating axle. As a result, one-third octave band analysis of brake squeals at 6.3 kHz and at 3.2

kHz approximately coincides with the vibration of both the rotor and pad, and the coupled vibration tends to grow larger in

the high friction coefficient range. Furthermore, these frequencies agree well with the natural frequency of the rotor examined

using the scanning laser doppler vibrometer. The mode shapes and amplitude of rotor vibrations at the time of brake squeals

are significantly affected by the number of bolts and their fastening positions to the wheel.

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Takami and Saga, Transactions of the JSME (in Japanese), Vol.82, No.844 (2016)

© 2016 The Japan Society of Mechanical Engineers[DOI: 10.1299/transjsme.16-00337]

2. ブレーキ鳴きの発生状況

2・1 ディスクブレーキ装置の概略

本稿で対象とした鉄道車両用ディスクブレーキ装置の外観を図 1に示す.この形式は,「車輪側ディスク」と呼

ばれており,車輪の側面を2枚のブレーキロータで挟み,それらをボルト締結した鉄道に独特の構造である.一

般に,自動車用は車輪とロータを別々にサスペンションへ取り付ける構造をしており,ブレーキ鳴きの検討には

車輪の影響を除外して考える場合が多い.これに対し,車輪側ディスクはロータの振動状況が車輪への固定方法

や車輪自体の剛性に強く左右されるため,車輪を含めた「ディスク付き車輪」として検討を行う必要がある.

ロータは裏面(車輪との取り付け面)にフィンを構成したベンチレーテッドディスクで,鉄道用の特長として

双方向に高速走行することから,フィンの回転方向には制約がない軸対称の形状をしている.また,鉄道車両の

大きな吸収エネルギーに対応するため,ロータ外径はφ720 mm,板厚は 35~50 mm程度と,一般的な自動車用

よりも大径化,板厚増がなされている.ロータ材は一体型の鍛鋼材で,Ni-Cr-Mo系の合金材(AISI 4330)をベー

スに,カーボンやバナジウムの配合を変更して耐熱性を向上した材料である(金森他,2015).

ブレーキパッドは,鋼板のバックプレートにライニング材を接着およびリベットで接合した構成である.ライ

ニング材は銅系の焼結合金材をベースに,銅粉末以外の摩擦調整材や潤滑材が配合されている(金森他,2010).

ライニングの厚さは約 7 mm,摺動面積は片ディスクあたり約 340 cm2である.

ブレーキパッドをロータへ押し付け,ブレーキ力を受けるキャリパ装置は,油圧式のフローティングキャリパ

である.ピストン数は2つ,普段の駅停車時に常用される押し付け力は約 5 kNである.なお,ピストンとパッド

の間には,自動車の鳴き防止に用いられるシムやグリスは挿入,塗布されていない.

Floating caliper Brake rotor

Pad Wheel

Fig. 1 The disc brake for railroad cars. Brake rotors on both sides of a wheel are mounted to the wheel with fastening bolts. A

floating caliper has two pistons on one side and slides back and forth on slide pins acting as a clamp. Brake pads are

steel backing plates with friction material of lining bound to the surface that faces the brake rotor.

Axle Slide pins

Rotor mounting bolts Support flame

Lining

Backing plate

2

の伝搬経路から見た場合,台車と車体に分かれた鉄道車両は,空気伝搬音と固体伝搬音の双方の低減に有利であ

る.しかし,海外では優等列車の TGVや ICEなどを対象に研究が進められており(Lorang et al., 2006),国内で

もホーム上の旅客に対する快適性向上として考慮が必要な項目となりつつある.

このため,本研究では鉄道車両用のディスクブレーキ装置から生じるブレーキ鳴き現象を対象とした.一般に

自動車分野では,ブレーキロータ,キャリパ,パッド等の主な構成部品の固有モードと固有振動数を調査し,次

に系全体の不安定度評価からブレーキ鳴きへ寄与する振動モードを特定することによって,フラッタ型不安定の

発生評価が検討される(Chung et al., 2001).しかし,現段階では鉄道分野における研究実績が不足しており,現

象の理解や数値解析によるモデル化の手法に課題がある.このため,実際の車輪に取り付けたブレーキロータの

モード特性を実験的に解析した後,新たに開発した非接触計測システムを車輪へ組み込み,実際のロータ,キャ

リパ,パッド等を用いたブレーキ試験をベンチ試験機で行って,鉄道用ディスクブレーキ装置の基本的なブレー

キ鳴き現象を調べた.

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2・2 台上試験機によるブレーキ鳴きの再現

鉄道車両用ディスクブレーキ装置を台上試験機に取り付け,ブレーキ鳴きを再現した.実物大のブレーキ試験

が可能な台上試験装置には,車両相当の慣性をもたせたフライホイールが組み込まれており,押し付け力や減速

時間,減速度を含めて実車における挙動を再現することができる.ブレーキ試験は,電気ブレーキからディスク

ブレーキへ切り替わった後の低速時を想定し,初速度 50 km/hからとした.押し付け力は,駅での停車時に扱わ

れることの多い弱いブレーキ力相当の 4.8 kNを基準として,その前後 2.4 kNおよび 8.3 kNで一定とした.試験

開始時のライニング温度は 50 ℃に保ち,初期温度の違いによる摩擦係数のバラつきを防いだ.

また,これまでの知見から,ロータ・ライニングの摺り合せが不十分な場合や摩擦面等の状態によって,摩擦

係数やブレーキ鳴きの発生状況にバラつきの大きいことが分かっている.このため,初期状態のそろっている新

品のロータ,パッドを使用し,試験前にはロータ,ライニングの過度な摩耗や温度上昇をさせないように冷却時

間を取りながら,70 km/h からのブレーキを約 250 回行って摺動面の十分な摺り合わせを行った.ブレーキ鳴き

の音計測は,精密騒音計(NL-32,リオン製)を車輪中心位置から車軸方向へ 1.5 m離れた位置に設置して行った.

結果を図 2 に示す.時間変化を表す図 2(a)から,ブレーキ開始後しばらくは音圧レベルに変化は認められない

が,速度 15 km/h程度に減速した際に平坦特性およびA特性音圧レベルが 10 dB以上上昇し,明確なブレーキ鳴

きが生じている.このような低速域のブレーキ鳴きに着目し,速度 20 km/h 以下の区間について 1/3 オクターブ

バンド等価平均音圧レベル(Leq)を求め,さらに同一条件の 10 試番について平均をとった値を図 2(b)に示す.

この図から,800 Hz,2 kHz,3.2 kHz,6.3 kHzに暗騒音を上回るピークが目立つ.最もピーク値の高い 6.3 kHz

帯域を 4chビームフォーミング(高橋他,2015)で観察した図 3から,音源は主にパッドのリーディング側に位

置すると推定される.また,押し付け力を変化させた場合の平均ブレーキ力と低速域の等価平均音圧レベルの関

係を図 4に示す.本試験の範囲においては,高い押し付け力で強いブレーキ力を得るほど,ブレーキ鳴きは大き

くなる傾向を示した.ただし,ブレーキ鳴きはある程度で飽和する傾向が認められ,押し付け力をこれ以上増加

させてもブレーキ鳴きの大きさは一定もしくは減少するものと推測された.

ここで観察されたブレーキ鳴きは,物理的にはロータとライニング間の摩擦力によって引き起こされる「摩擦

振動」に分類される.この現象は,摩擦力をエネルギー源として励起されたロータとパッドおよびキャリパの振

動が自励系の加振ループを構成するフラッタ型の不安定現象である.特に,ロータの面外振動を引き起こす原因

として,摩擦係数が高いときに生じやすいモードカップリング不安定性(構造不安定性)に起因した自励振動が

Fig. 2 Brake squeals of the disc-brake apparatus in the test facility. (a) Time hisory of sound pressure level on braking from 50

km/h. Brake squeals occured at a low speed of 20 km/h or less. (b) Equivalent continuous sound pressure level at the

time of brake squeals vs. one-third octave band. Frequencies of the brake squeals exceeding the background noise are

800 Hz, 2 kHz, 3.2 kHz and 6.3 kHz.

Leq

(a) (b)

100 1000 10000

Eq

uiv

ale

nt co

nti

nu

ou

s s

ou

nd

lev

el

(dB

)

1/3 octave-band frequency (Hz)

Back ground noise

10 dB

800 Hz

2 kHz

3.2 kHz

Maximum brake squeal at 6.3 kHz

3

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推測される。このような自励振動が生じると,摩擦力の変動と各部の振動が増大し,最終的に表面積と振幅の大

きいロータの面外振動から空気振動へと伝播し,ブレーキノイズとして知覚される.

特に,低速域で動摩擦から静摩擦へと滑り速度が変化していく過程では摩擦係数が急激に高くなり,各部の振

動がカップリングを起こしやすくなる.また,ロータとパッド間の接触ばね定数(接触剛性)と対応する押し付

け荷重には,一般的にブレーキ鳴きを発生しやすい適当な範囲が存在しており(西澤他,2012),本試験で確認さ

れた高い押し付け力での飽和傾向とも一致する.さらに,パッドの接触領域によって自励振動を誘起しやすい部

分があり,本試験でも示されたパッドのリーディング側については,あらかじめカットするなどの対策を自動車

用では講じる場合がある(末岡他,2001a, 2001b).ただし,パッドのカットだけで鳴きを完全に抑えることは難

しく,さらに双方向走行する鉄道ではリーディング側とトレーリング側の双方をカットした場合の影響を考慮す

る必要がある.

3. ディスク付き車輪の振動モード

一般に,振動の周波数が系の固有振動に近づくか一致すると,大きな連成振動が生じる.この系の固有振動は

構成要素個々の固有振動から成るが,各部品単位の固有振動を調べても制動時とは拘束状態が異なるため,必ず

しもブレーキ鳴きの周波数とは一致しない.特に,パッドについては制動時にライニングの前面がロータに押し

付けられ,背面はキャリパにより拘束されるため,単品の振動特性とは大きく異なるのが一般的である.

Fig. 4 Equivalent continuous sound pressure level at the time of brake squeals vs. average braking force. The magnitude of

brake squeals increased as the average braking force increases until it was saturated.

Eq

uiv

ale

ntco

nti

nu

ou

sso

un

dle

vel

Average braking force

5 dB

1 kN

Fig. 3 The sound source position of brake squeals are mapped on the red area using the beam forming method. The analyzed

sound of a center frequency of 6.3 kHz is located in the leading side between the pad and the rotor.

Rotational direction

Leading side

Trailing side

4

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これに対し,ロータ側は一部分のみパッドによる拘束を受けるが,ロータとパッドが連成した振動モードに対

しては,ロータの振動特性が強く影響を与える(原田他,1989).このため,車輪に取り付けたロータの面外方向

振動特性を定置において測定した.

3・1 測定方法

第 2章と同じ実物大のディスク付き車輪を被測定体とし,ブレーキ試験用の台上試験装置へ車輪のボス部をキ

ーレスブッシング(くさび式.実車両は圧入)により拘束した.回転および制動は行わず,キャリパおよびパッ

ドは取り外した.振動特性の測定は,動電式加振器(MODAL 50A, MB Dynamics製)によりロータを連続的に加

振しながら,ヘテロダイン式スキャニングレーザドップラ振動計(PSV-200, Polytec製)により行った.なお,レ

ーザドップラ振動計とは,センサヘッドからレーザ光を振動物体へ照射し,反射光のドップラシフトを計測する

非接触型の振動速度センサである.また,スキャニング型は,レーザ光の照射方向をレンズにより順次移動する

ことで,グリッド状の多点を計測できるものである.ただし,振動速度の計測はレーザの正面方向に限られるた

め,計測は放射音に影響が大きいロータ面外方向とした.また,ディスク付き車輪は裏側のフィンを含めて軸対

称の形状であることから,計測はロータ摺動面の半円部分とした.

加振波形は疑似ランダム波(PSR)とし,生成周波数帯域は 250 Hz~5 kHzで実施した.なお,本来は図 2(b)

の周波数範囲に対応し,上限の加振周波数は 5 kHz以上必要であるが,供試体が大きいため加振機の能力範囲内

とした.最終的に,得られた加振力信号と約 500点の振動速度情報から,周波数応答関数と固有モードを同定し

た(Stanbridge and Ewins, 1999).

3・2 測定結果と考察

同定したモード形状と固有振動数を図 5に示す.ここで,ロータのモード形状は,一般的な円盤のモード形状

と同様に,c:節円数(同心円状の周方向節数)と d:節直径数(ロータ中心を通る径方向の節数)により,「(c −

d)モード」と記載する.なお,実際には同じモード形状が複数の固有振動数に観察されるが,ここでは伝達関数

のモビリティ(単位加振力あたりに生じる振動速度)の大きい方をプロットしている.また,加振周波数の 5 kHz

を超える領域は,最小二乗法により求めた2次の近似曲線である.破線の矢印は台上試験で生じたブレーキ鳴き

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

0 2 4 6 8 10

Na

tura

l fre

qu

en

cy

(H

z)

Number of nodal diameters

No circular node

One circular node

(0 - 3) mode

(1 - 4) mode

Fig. 5 Natural frequency of the brake rotor mounted to the wheel vs. the number of nodal diamters. The mode shapes of the

rotor are labeled as (c − d) mode where c is the number of nodal circles and d is the number of nodal diameters. The

brake squeal of 2 kHz corresponds to (0 − 3) mode, that of 3.2 kHz corresponds to (0 − 6) mode, and that of 6.3 kHz

corresponds to (0 − 10) mode or (1 − 4) mode.

(0 - 6) mode

(0 - 10) mode

5

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のピーク周波数(図 2(b)参照)を表す.

本図から,ブレーキ鳴きを生じた際のロータの振動形状は,800 Hzが(0−0)モード,2 kHzが(0−3)モード,

3.2 kHzが(0−6)モード,6.3 kHzが(0−10)モードまたは(1−4)モードに対応する.これらのモード形状は,

ロータと車輪のボルト締結位置に強く依存しており,たとえば(0−0)モードはロータ内周の締結位置を節とし

て,拘束のないロータ外周側が振動する形状である.また,(0−3)モードや(0−6)モードは,締結ボルトの周

方向間隔または間隔の 2つ分に節直径をもつ振動形状である.したがって,ロータと車輪の締結位置や締結本数

を変更することで,ロータの固有振動数とモビリティは変化させることができる.これにより,系の固有振動と

の重複を回避し,共振による連成振動を抑える対策が考えられる.

ただし,ロータの固有モードはここに示しただけでも多数存在しており,モビリティの小さいモードも含めれ

ば無数にある.さらに,固有振動数は摩耗や経年による各部の接触状態によって変化する可能性があり,これら

を含めて設計の自由度を失わない範囲で共振周波数を完全にずらすことは困難と考えられる.したがって,現実

的な対策としては,特に不快な周波数のブレーキ鳴きに対して寄与の大きいロータの固有モードを特定し,その

モード形状の振動振幅を引き下げる対策をディスク付き車輪側で行うことが有効と考えられる.

4. 回転・制動中のロータ振動と放射音

ブレーキ鳴きが生じている際のロータとパッドの振動および放射されるブレーキ鳴きの関係を,実車用のディ

スクブレーキ装置を用いて調べた.

4・1 測定方法

台上試験装置および試験条件は,ブレーキ鳴きを再現した 2.2 節と同様である.計測系は二系統に分けられ,

定置のデータレコーダにより収録する計測項目(回転速度,トルク,押し付け力,音圧レベル,パッド振動レベ

ル等)と,ディスク付き車輪に組み込んだワイヤレス計測システムで収録するロータ振動である.

ここで,後者のワイヤレス計測システムは本試験用の開発品であり,回転する車軸に組み込んだ測定器へロー

タ振動を直接収録し,測定電力は非接触の誘導給電により与えるものである.測定器には,誘導給電のための受

電回路のほか,チャージアンプ,アンチエイリアシングフィルタ,A/D 変換器,収録メモリ等を内蔵する.計測

したデータは,車輪の回転停止後に PC へ転送し,後処理により定置のデータレコーダと同期をとる.この装置

を用いることで,既存のスリップリング方式では不可能であった高周波信号の計測が可能となり,広帯域のブレ

ーキ鳴きに対応したロータの振動データを得た.本装置の帯域は 0.5 Hz ~ 20 kHz(サンプリング周波数 40 kHz),

同期計測 9ch,最長 1分間の収録が可能である.

ロータおよびパッドの振動ピックアップには,圧電型三軸加速度センサー(S04ZSG,富士セラミックス製)を

使用した.ロータ側は,車輪のリム部に矩形の切欠きを加工して設置空間を確保し,ロータ端面にピックアップ

を固定した.パッド側は,露出しているアウター側(反ピストン側)のパッド背面中央にピックアップを固定し

た.ワイヤレス計測システムの外観および振動測定点を図 6に示す.

4・2 測定結果と考察

ブレーキ鳴きを生じた 20 km/hから 1 km/hの減速部分を切り出し,1/3オクターブバンドの等価平均音圧レベ

ル,ロータ振動レベル,パッド振動レベルを求め,複数試番を平均して図 7(a)に示す.ただし,ロータ振動は面

外方向,パッド振動は面内方向を代表値として示す.これは,ブレーキ鳴きのメカニズムがクーロン摩擦による

モードカップリング不安定性に起因する場合,主にロータ面外方向の振動とパッド面内方向の振動が連成し,ロ

ータの面外変形から音に変換されて放射されると考えたためである.また,実際に得られた計測値においても,

ロータ振動の面外方向およびパッド振動の面内方向がピークはそれぞれ明確であったことから,本稿では前記方

向の値を示す.

この図から,最もブレーキ鳴きの大きい 6.3 kHzおよび 3.2 kHzには,ロータとパッドの共通した振動ピークが

認められ,ロータ面外方向とパッド面内方向の連成振動によってロータの振動モードから音が放射される典型的

なブレーキ鳴きと推定される.この際のディスク振動形状は,図 5 から面外方向の(0−10)モードや(0−6)モ

6

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5. 結 言

鉄道車両用のディスクブレーキ装置から生じるブレーキ鳴きについて,実車両用のディスク付き車輪,フロー

ティングキャリパ,パッドを用いて再現し,基本的な現象を調べた.得られた知見は以下のとおりである.

(1) 台上試験機によりブレーキ鳴き現象を再現し,本形式のディスクブレーキ装置は主に 6.3 kHz のブレーキ

鳴きをパッドのリーディング側から生じていた.また,パッドの押し付け力は高い方がブレーキ鳴きは大

きくなったが,ある一定値で飽和する傾向が認められた.

(2) 回転・制動中のロータとパッドの振動,およびブレーキ鳴きの関係を調べ,音圧レベルの大きい 6.3 kHz

および 3.2 kHz の音は,摩擦力をエネルギー源としたモードカップリング不安定性に起因するロータとパ

ッドの連成振動により,ロータの面外振動モードから生じていると推定された.

(3) ディスク付き車輪の振動モードを測定し,ブレーキ鳴きのロータ振動形状を推定した.これらのモード形

状は,ロータと車輪のボルト締結位置や締結本数に強く依存しており,ブレーキ鳴きに寄与の大きいロー

Fig. 6 Test Stands for a full-size disc brake system. Vibration measuring systems operating by wireless power supply are

installed in the rotating axle. Conventional accelerometers are set on the edge of the rotor and the backing plate of

the outer pad.

Accelerometer on rotor edge

Accelerometer on outer pad

Wireless vibration measuring system

Rotor

Radial

Tangential Vertical

Wheel

7

ードが推定される.なお,低周波側の 800 Hzと 2 kHzについては,ロータ振動に明確なピークがなく,ロータ振

動が小さい状態でキャリパとパッドの振動が連成したGroan音(西脇,合谷,1990)に近い状況が考えられる.

次に,制動開始から 0.1 秒毎に平均化した瞬間摩擦係数の変化に対する音圧レベルと,パッド振動およびロー

タ振動の特性を図 7(b)に示す.制動開始後の摩擦係数が低い状態では,ブレーキ鳴きの発生およびパッドとロー

タの振動は観察されない.速度が低下し動摩擦から静摩擦へと滑り速度が変化していく過程で摩擦係数が上昇し,

これに伴ってパッド振動とロータ振動が大きくなり,ブレーキ鳴きを生じる様子が観察される.すなわち,摩擦

係数の高い領域でパッドとロータのモード連成が生じ,モードカップリング不安定性に起因した系の自励振動が

生じることでブレーキ鳴きを発生させたと考えられる.

したがって,対策の方向性としては,図 7(b)で自励振動が生じた摩擦係数以上への増加を抑える,ロータの振

動を抑えるため剛性を向上する,連成振動の発生を抑制するため振動減衰系または振動絶縁系を介在させる,な

どが考えられる.このうち,ロータの剛性向上については,ロータと車輪の締結位置を変更して剛性を向上した

「中央締結ディスク」と呼ばれるタイプについて,ブレーキ鳴きが抑制されることを確認している.また,実験

を行ったフローティングキャリパ以外の形式を用いると,キャリパの影響を受けやすい低周波側だけではなく,

高周波側のブレーキ鳴きについても音の発生状況は変わる場合がある.この場合,押し付け方式の違いやパッド

背面の拘束位置,キャリパ各部の剛性等によって,主にパッド側の振動特性が変化していると推測される.

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© 2016 The Japan Society of Mechanical Engineers[DOI: 10.1299/transjsme.16-00337]

タ面外方向のモード形状に対し,振動振幅を引き下げる対策をディスク付き車輪側で行うことが有効と考

えられた.

なお,本稿では装置の形式やメーカーが異なる場合の言及はあえて避けた.実際には,鉄道車両用のディスク

ブレーキ装置と一括りにできない様々な形式が存在し,それらにはブレーキ鳴きの大小に明らかな違いがある.

したがって,ブレーキ鳴き対策の必要性や具体的な方策は,それら装置毎に検討する必要がある.

文 献

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100 1000 10000

So

un

d p

ress

ure

lev

el

an

dv

ibra

tio

n a

ccele

rati

on

lev

el

1/3 octave-band frequency (Hz)

10 dB10 dB

Rotor vibration

Pad vibration

Squealnoise

Fig. 7 Brake squeals at the test stands. (a) Equivalent continuous sound pressure level, in-plane vibration acceleration level of

the pad, and out-plane vibration acceleration level of the rotor. Brake squeals at peak of 3.2 kHz and 6.3 kHz

approximately coincide with the vibration of both the rotor and the pad. (b) Instantaneous sound pressure level and

instantaneous vibration level of the pad and the rotor vs. friction coefficient. Coupled vibrations between the rotor and

the pad were attributed to the self-excited vibration induced by the friction.

(a) (b)

Vib

rati

on

lev

el

of

Pa

d

10

dB

Vib

rati

on

lev

el

of

Ro

tor

10

dB

So

un

d p

ress

ure

lev

el

Friction coefficient

5d

B

Squealnoise

0.2

8

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