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本県では現在、県立学校の授業改善を推進するために、福岡県立学校「新たな学びプロジェクト」
事業における研究開発校8校を中心にアクティブ・ラーニングの研究と普及に取り組んでいます。
そこで今回、研究開発校以外の様々な学校における「アクティブ・ラーニングに関する取組」につ
いて情報収集をして広く発信することで、県全体の授業改善の推進の一助となることを目指し、
「ふくおかAL通信~県立学校の教室から~」を発行することになりました。
福岡県立小倉商業高等学校
社会をリードする「ビジネス瞬発力」を育てる 第1号は「福岡県立小倉商業高等学校」の取組です。小倉商業高等学校では「自己管理のできる生
徒が育つ学校」をコア・コンピタンス(他校に真似できない、本校の強み)として揚げ、社会をリー
ドする「ビジネス瞬発力」を育成するため、全職員、全生徒が一丸となって日々の教育活動を行って
います。
1 岩本康明校長先生の話
小倉商業高等学校は、100年の歴史と伝統を誇る商業高校として、「21世紀にはばたく産業人を育てるビ
ジネス(商業)教育」を実践しています。まずは岩本校長先生に、日々の学校運営で大切にしていることを
伺いました。
○前例踏襲をよしとせず、スクラップアンドビルドを心がける。
○先生方には日頃から、教えるな、しゃべるな、姿を消せと話している。
「教えるな」→教えすぎない。教科独自のものの見方、考え方、楽しみ方を授業の柱にする。教科
独自の楽しみ方を伝えることが教師の義務。
「しゃべるな」→教科書を網羅するのではなく、派生することを考えさせる。
「姿を消せ」→生徒が先生をすぐに当てにしないように。言われないとできない小倉商業生となら
ないように、自立を促す。
○学校の「グランドデザイン」の活用。
学校の「グランドデザイン」はA4判1枚で簡潔に学校のビジョンを示しており、生徒、職員の理
解はもとより、地域、中学校職員、中学生、保護者等へのPR効果も高い。
岩本校長先生の「教えるな、しゃべるな、姿を消せ」という言葉は、アクティブ・ラーニングの視点とも
共通する部分がありました。
2 堀修教頭先生の話
堀教頭先生にも示唆に富むお話を多く伺いましたが、紙面の都合上、いくつかに絞って紹介いたします。
○「自己管理のできる生徒が育つ学校」を目指し、学年中心で「志」(自己管理、素直なこころ)を、
学科中心で「得意技」(ビジネス瞬発力)を育成することをコア・コンピタンスとして掲げている。
○教育課題の解決のために裁量と責任を持たせる。(校内でのスマートフォンの活用を許容しながら
情報モラルを醸成する等)
○職員全員が、自分の方向性とエネルギーをもつ。
○目指す授業として、CP(カリキュラムポリシー)を掲げ、「何ができるようになるか、どのよう
に学ぶかが明確な授業」「自学力が向上する授業」等に取り組んでいる。
○授業改善の校内推進体制を整え、授業スタンダード(目指す授業)の共通実践を図る。
学校として授業改善の視点が明確化されており、それが先生方の意識の向上にもつながっているよう
です。
ふくおかAL通信 プロジェクト事務局 ~県立学校の教室から~
第1号
(H29.7)
福岡県立学校
新た な 学び
プロジェクト
3 各教科等の取組(抜粋)
小倉商業高等学校では、管理職の先生方のリーダーシップのもと、「自ら学び、何事にもチャレンジする
フロンティアスピリットを持ち、望ましい勤労観・職業観とともにビジネスに対応できる専門的な知識・技
能および商業高校生としてのアイデンティティを確立し、グローバル社会に貢献する人材」を育成する視点
に立って、各教科等で授業改善に取り組まれています。代表的な例について下に紹介します。
国語:グループワークにより、表現に対する意見交換の場を設定。
数学:データ分析において、ジグソー法※によるグループ学習を設定。
理科:「生物基礎」で年8回の実験を実施。「科学と人間生活」「生物基礎」でペアワ
ーク、グループワークを設定。
地歴・公民:ジグソー法による生徒同士の学び、ウェビング※によるまとめ、視聴覚教材
等による問いの立証の場を設定。また、模擬裁判の実施。
家庭:学習した内容を実習で実践する機会を設定。社会問題解決のための考えをまと
め、発表する機会を設定。
商業:「ビジネス基礎」で新聞を活用したグループワークを設定。流通の歴史について
タイムスリップしたつもりで話し合うペアワークを設定。
総合的な学習の時間:早期段階における進路意識醸成をグループワーク・発表など協働
作業・言語活動で促している。
課題研究:グループや個人による課題探究型の授業、産業現場実習等の本物体験。
※ジグソー法:話し合いの手法の一つ。
ウェビング:思考を蜘蛛の巣(Web)のように図式化する手法。
4 アクティブ・ラーニング導入の成果
アクティブ・ラーニング導入による成果については、生徒の変容として主体的な授業参加、授業満足度
の向上が見られ、教員も「教え込まなければならない」という意識から脱却しているとのことです。
5 学習評価について
・定期考査の得点に偏らない観点別評価を実施している。
・年間指導計画の中に「教えすぎない授業(主体的・対話的で深い学び)指導上の留意点」の項目を追加
し、全ての教科担当者が記入。
6 授業改善の広報
授業改善の取組を地域や保護者等に発信しているか伺ったところ、学校の「グランドデザイン」を職
員・生徒・保護者・地域社会・大学・企業等に配布の上説明しているとのことでした。授業改善に向けた取
組をたくさんの方に知ってもらうことが、広報活動としても大切な視点になるようです。
コラム「先生の挑戦 生徒の挑戦」
小倉商業高等学校の松藤先生による後日談を紹介いたします。松藤先生はここ数年、アクティブ・
ラーニング型の授業に積極的に取り組んでいましたが、昨年度から新しい取組を始めました。それは
グループのリーダーによる活動を中心に、生徒一人一人が企業経営を意識しながら、ビジネスの場面
でどのように案件を処理するかをチームで学ぶ授業への挑戦です。そして1年後、高校生には難しい
と言われる「日商簿記検定試験2級」にリーダーを含む5名が見事合格しました。以下、生徒の声で
す。
○挑戦すればするほどモチベーションが上がった。○ビジネスの場面でどのように対応するかを理解
していたので、暗記する必要がなく、自信をもって解けた。○学び合いが全体のレベルを上げた。
松藤先生は、アクティブ・ラーニング型の授業を通して生徒が教科本来の「見方・考え方」を身に
付けることが、優れた成果(資格取得や進路実現)につながったと感じておられます。