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AIAA/ASME/SAE/ASEE合同推進学会 (AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference) 開催期間:7月30日~8月1日   開催場所:米国 ジョージア州アトランタ 東京大学大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学  博士課程1年次 福成雅史 今回、貴財団のご支援を受け、2012年7月30日から8月1日にかけてアメリカ合衆国ジョージア州アト ランタにて開催された48th AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference & Exhibit and 10th International Energy Conversion Engineering Conference(JPC)に出席しました.JPC は、米国AIAA(航空宇宙学会)の主催により開催される航空宇宙全般の研究開発に関する規模の大き い国際会議であり、ジェットエンジンやロケットエンジン、ローバーのような探査ロボットや月面探査 計画、熱核融合ロケット、イオンエンジン、ホールスラスタなど幅広い分野の発表がありました. 私はPDEs, ICEs, and Propellers のセッションで、口頭発表を行いました.発表タイトルは 「Thrust Augmentation Using High Power Beam and Reed valve Air-breathing System」(ハイ パワービームとリードバルブを用いた推力増強)です. 本研究ではミリ波を用いたビーミング推進ロケットの地上試験を行っています.ビーミング推進とは 機体に対して外部から照射したレーザーやマイクロ波を推進エネルギーに変換して飛行する推進手法こ とを指します.この推進手法では機体にエネルギー源を搭載する必要がなく、低高度では大気を推進剤 として使用できるためペイロード費(機体重量に対する積荷重量の比)を既存の化学ロケットより高くで きます.また170GHzの大出力ミリ波発振機ジャイロトロンは核融合の分野で研究され、既に1MWの 安定かつ高い出力を達成しており、さらにレーザーに比べパワーあたりの発振コストが二桁安いという メリットもあります.そのためこのジャイロトロンによるミリ波を用いた空気吸い込み式ビーミング推 進ロケットは宇宙への物資の輸送コストを大幅に低減すると期待されています. 今回の学会では日本原子力機構のジャイロトロンを用いた地上試験において、照射するミリ波の出力 を上げることで、これまでの10倍以上の30Nもの推力を達成したこと、およびリード弁を用いた吸気 機構について報告いたしました. 今回の学会では、NASAで推進手法の異なるミリ波を用いたビーミング推進の研究を行っている方が 参加されており非常に有意義な議論ができました. 最後に、本会議の参加に際し旅費支援をして下さった貴財団および関係者の皆様に厚く御礼申し上げま す.本会議で得られた知見、経験を今後の研究活動や進路に大いに役立てたいと思います. ポスターセッション展示会場風景 合同学会の会場となったホテル

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Page 1: AIAA/ASME/SAE/ASEE合同推進学会(AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference) 開催期間:7月30日~8月1日 開催場所:米国 ジョージア州アトランタ

AIAA/ASME/SAE/ASEE合同推進学会(AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference)開催期間:7月30日~8月1日   開催場所:米国 ジョージア州アトランタ

東京大学大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学 博士課程1年次 福成雅史

今回、貴財団のご支援を受け、2012年7月30日から8月1日にかけてアメリカ合衆国ジョージア州アトランタにて開催された48th AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference & Exhibit and 10th International Energy Conversion Engineering Conference(JPC)に出席しました.JPCは、米国AIAA(航空宇宙学会)の主催により開催される航空宇宙全般の研究開発に関する規模の大きい国際会議であり、ジェットエンジンやロケットエンジン、ローバーのような探査ロボットや月面探査計画、熱核融合ロケット、イオンエンジン、ホールスラスタなど幅広い分野の発表がありました. 私はPDEs, ICEs, and Propellers のセッションで、口頭発表を行いました.発表タイトルは「Thrust Augmentation Using High Power Beam and Reed valve Air-breathing System」(ハイパワービームとリードバルブを用いた推力増強)です. 本研究ではミリ波を用いたビーミング推進ロケットの地上試験を行っています.ビーミング推進とは機体に対して外部から照射したレーザーやマイクロ波を推進エネルギーに変換して飛行する推進手法ことを指します.この推進手法では機体にエネルギー源を搭載する必要がなく、低高度では大気を推進剤として使用できるためペイロード費(機体重量に対する積荷重量の比)を既存の化学ロケットより高くできます.また170GHzの大出力ミリ波発振機ジャイロトロンは核融合の分野で研究され、既に1MWの安定かつ高い出力を達成しており、さらにレーザーに比べパワーあたりの発振コストが二桁安いというメリットもあります.そのためこのジャイロトロンによるミリ波を用いた空気吸い込み式ビーミング推進ロケットは宇宙への物資の輸送コストを大幅に低減すると期待されています. 今回の学会では日本原子力機構のジャイロトロンを用いた地上試験において、照射するミリ波の出力を上げることで、これまでの10倍以上の30Nもの推力を達成したこと、およびリード弁を用いた吸気機構について報告いたしました. 今回の学会では、NASAで推進手法の異なるミリ波を用いたビーミング推進の研究を行っている方が参加されており非常に有意義な議論ができました.最後に、本会議の参加に際し旅費支援をして下さった貴財団および関係者の皆様に厚く御礼申し上げます.本会議で得られた知見、経験を今後の研究活動や進路に大いに役立てたいと思います.

ポスターセッション展示会場風景合同学会の会場となったホテル