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⼿術室看護師の役割 ー器械出し・外回り・周術期看護ー 総合病院伊達⾚⼗字病院 ⼿術看護認定看護師 ⽊村 明⽇⾹

⼿術室看護師の役割 - 日本手術看護学会北海道地区術看護の定義 術を受ける患者を対象に、安全で安 な最良の 術 が受けられるように、医療チームの

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⼿術室看護師の役割ー器械出し・外回り・周術期看護ー

総合病院伊達⾚⼗字病院⼿術看護認定看護師 ⽊村 明⽇⾹

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今回の⽬標及び内容

⼿術看護に必要な基礎的知識を学び実践につなげられるよう理解を深める

⼿術室看護師の役割 2

• ⼿術看護とチーム医療• 周術期看護• ⼿術室看護師の役割(器械出し・外回り)

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⼿術看護とチーム医療

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⼿術看護の定義⼿術を受ける患者を対象に、安全で安⼼な最良の⼿術が受けられるように、医療チームの⼀員として情報を共有し、専⾨的な知識と技術をもってその役割を果たすこと ⼟藏愛⼦(2012)⼿術看護に⾒る匠の技より引⽤

⼿術室看護師の役割 4

多職種・他部署と連携し看護を実践する必要性

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⼿術チーム医療•⼿術チームは診療科医師、⿇酔科医師、看護師、臨床⼯学技⼠、臨床検査技師、放射線技師などの多くの職種からなるメンバーにより構成(術式によってさまざま)•チームメンバーは⽇々新しいチームの中で役割を発揮することが求められている•職位・職種を超えて意⾒を⾔い合える環境であることが重要

⼿術室看護師の役割 5

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チームとして最善の結果を得られるために•チームの他のメンバーが持っている知識や技術を効果的に引き出すようにコミュニケーションを図り互いを⽀援する⾏動を⼼がける

⼿術室看護師の役割 6

このような⾏動をもたらす認知的・社会的スキル

ノンテクニカルスキル•安全や質を担保するためにはテクニカルスキルだけではなくノンテクニカルスキルの向上が重要

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周術期看護

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周術期看護の定義

•⼀般的には⼿術が決定した時点から、⼊院をして⼿術を受け退院し、もとの⽣活環境に戻るまでの期間を指す•周術期看護はその期間に患者に提供されるケア

草柳かほる(2018)⼿術看護ー術前術後をつなげる術中看護ー第⼆版より引⽤

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周術期とは⼿術を受ける患者の術前、術中、術後を通した全期間

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術前看護

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患者にとって⼿術が決定した時から「術前」であり、⼿術決定時から⼿術に向けて⼼理的、⾝体的、社会的な準備を整える必要がある。

⼿術室看護師の看護介⼊外来︓術前外来⼊院︓術前訪問

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術前外来・術前訪問•術前外来︓患者が⼿術を受けるための⾝体的・精神的準備を整える(病歴・検査データ、内服薬と休⽌薬状況の確認、動揺⻭の事前発⾒・治療、患者の意思決定⽀援)•術前訪問︓患者が⼿術を受けるための⾝体的・精神的に準備が整っていることを確認し、⼿術室内で提供する看護についての説明と同意を得る

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情報収集•患者の⼿術に対する思い(不安、緊張、期待)やアレルギーの有無だけでなく、関節可動域に問題がないか、開⼝制限の有無、⽪膚の状態を直接患者に確認し看護計画を⽴てるための情報を収集する•情報収集の際には問診だけではなくフィジカルイグザミネーション(視診、触診、打診、聴診)を⽤いて問題がないか確認

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貧⾎

•術中出⾎により循環動態変調のおそれがある

気管⽀喘息

•気管挿管操作により発作を起こし呼吸状態が悪化するおそれ

ドライスキン

•絆創膏の剥離刺激によりスキンテアを起こすおそれ

⾼齢者

•術後疼痛や脱⽔により術後せん妄を起こすおそれ

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患者情報からアセスメントする

患者の個別性を重ね合わせ、⾝体・精神状態をアセスメント

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術中看護•患者にもっとも近い存在として、安⼼して⼿術を受けられるように、不安や恐怖を和らげられる関わりをするとともに、⼿術に伴う侵襲が最⼩となるように⼼⾝の負担を軽減する必要がある

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術中の不安への関わり•⼊室時看護師が笑顔を⾒せることで患者にとって⼈間らしい温かい対応と感じられる•ベッドに横たわるまでの間、横に付き添い様⼦を観察しながら適度な会話で不安と緊張を緩和•何か処置をする前には、その直前にはっきりとわかりやすい声かけをする•意識下⼿術では苦痛を我慢する傾向があるため注意

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患者家族との関わり•術中訪問︓⼿術室看護師が⼿術の途中で家族のところに出向き患者の状態や⼿術の進⾏を直接伝えることで家族に安⼼してもらうこと•時間の間隔はその⼈の置かれている状況で感じ⽅が変わる•⼿術時間には⼊室から⿇酔覚醒までは⼊っていないこと、予定の⼿術時間は⽬安であることを事前に知らせた⽅がよい

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術後看護•術後訪問︓患者の回復状態を確認することや残存する問題について病棟の看護師によって何らかの対応がとられていることを確認することが重要。•術中看護の問題点の多くは術後も継続して観察やケアが必要なものも例)⽪膚・神経損傷、弾性ストッキングやIPCを装着していたが、DVTを発症することなく離床ができていたか、⿇薬の使⽤による悪⼼・嘔吐の有無の観察など

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ムーアの分類

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第1期︓術後2-4⽇傷害期

第2期︓術後4-7⽇転換期

第3期︓術後7⽇-数週間同化期

第4期︓数週間-数ヶ⽉脂肪蓄積期

カテコールアミンの増加などにより頻脈・⾎圧上昇傾眠傾向周囲への無関⼼

疼痛の軽減周囲への関⼼正常体温に移⾏創傷治癒

バイタルサインの安定化⾷欲の回復ステロイド訪問の正常化

体重増加脂肪の回復⽩⾊瘢痕化

術後の患者がどの時期にあるかをアセスメントし、看護実践につなげていくことが重要

草柳かほる(2018)⼿術看護ー術前術後をつなげる術中看護ー第⼆版より⼀引⽤・改変

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⼿術室看護師の役割器械出し

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器械出し看護師•器械出し看護師は予定された⼿術が円滑に進⾏するよう準備、タイミングを合わせて器械の受け渡しを⾏う•術野となる⾝体の解剖や術式を理解し、先々を予測しながら対応する必要がある•術野の清潔度を維持するための滅菌と無菌操作の知識と技術を習得•体内遺残防⽌のため、⼿術器械・医療材料などの数量や形状を把握、カウントをする

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準備•予定術式、器械の名称、⽤途、特性を⼗分に理解しておくことが重要(⼿術⼿順、器械の取り扱い⽅など)•診療録や看護記録から病態に応じた術式を予測(術式変更の可能性、患者の体型から剪⼑、鉤、ケリーなどのレパートリーを増やす)•いつもと異なる点など執⼑医から情報収集することも⼤事

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滅菌確認

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①有効期限②破損の有無③CI(化学的インジケータ)の変⾊④BI(⽣物学的インジケータ)の確認

l 滅菌後、CIが何⾊に変⾊するのか把握し確認するl BIが陽性またはClが不合格の滅菌物は使⽤しない

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⼿術時⼿洗い•スクラブ法︓4%クロルヘキシジンスクラブ剤もしくは7.5%ポピドンヨードスクラブ剤を使⽤し肘までブラシで擦る•ラビング法︓衛⽣学的⼿洗いの後1%クロルヘキシジングルコン酸配合の擦式アルコール製剤を肘上まで塗り込む

⼿術室看護師の役割 22

⽖は短く切り、⼈⼯⽖はつけない指輪やブレスレットなどの装着品は着⽤しないマニキュアは塗って4⽇ほど経過すると剥げ落ちて感染源となりうるので⼿洗い前に除去する

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ガウン、⼿袋、ゴーグル

•⼿袋はガウンを着た後に装着•術野の汚染防⽌及び職業感染防⽌の⾯から⼆重⼿袋の着⽤が推奨•眼に⾎液・体液に暴露するリスクがあるため、ゴーグル着⽤

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ガウンの清潔領域︓ガウン正⾯の前胸部から術野の⾼さ背中は不潔

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器械展開•術前に必ず破損の有無、形状の確認、不備がないことを確認•⼿術進⾏に応じて使⽤する順番に並べ、組み⽴てる•器械・器具・ガーゼ類の確実なカウント

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安全な器械出し看護の⼀歩

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安全で円滑な⼿術を進⾏するために

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執⼑医は術野に集中している術野から⽬を離さず、持ち直さなくて良いように渡す術野を観察できる位置に⽴つ⼿術進⾏を⾒ながら次に使⽤する器械を予測して準備する

器械のメンテナンスを⾏う⾎液や組織⽚がこびりつかない良い状態で使⽤できるように

不潔になった場合、速やかに変更する

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⿇酔科医・外回り看護師に術野から発信する

•ガーゼや器械・器具を体内に置いた場合「○○ひとつ⼊りました︕」と発信することで挿⼊物カウントができ、体内遺残防⽌につながる•⾎管をクランプする場合なども外へ発信することでチームとして安全に⼿術を⾏うことにつながる

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体内遺残防⽌•体内遺残のほとんどはガーゼ、縫合針といわれている•枚数や数だけではなく、破⽚や破損がないか形状の確認をする•⼿術開始前・体腔閉鎖前・筋層閉鎖前・⼿術終了後、他に器械出し、外回り看護師の交代時に2⼈以上で同時にカウントを⾏う•その結果を⼿術チームで共有し記録に残す

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針の取り扱い

針折れに注意•針付き⽷はスウェッジ部(接合部より約4mm)を把持しない⇨中腔になっているため針折れする•針先(先端より約2mm)は細いため把持すると折れやすい

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•針は持針器の先端で縫合針のスウェッジから針先までの距離の1/2-1/3までの距離のところを把持•基本的な把持位置は持針器と針が90度の⾓度

90度

1/2-1/3

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⼿術摘出標本の取り扱いー器械出しー•摘出標本(臓器や組織)は

を術者に確認し復唱して受け取り、外回り看護師に確実に伝える•清潔野で保管する場合は、保管⽅法に留意する(トレーに⼊れるなどわかりやすいようにする)

⼿術室看護師の役割 29

①臓器や組織の種類(名称)②採取部位③保存⽅法

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⼿術室看護師の役割外回り

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外回り看護師•外回り看護師は医師、他職種と協⼒しながら、⼿術室内の状況を把握し、管理を⾏う•患者だけでなく、全ての職種のコーディネーター的役割•病棟や外来看護師と連携を図り継続した看護を提供•患者の⼼理的⽀援、褥瘡や低体温の⼆次障害予防、事故防⽌、感染管理⇦⼿術看護の真髄•輸⾎の介助は副作⽤、合併症に注意•⼿術看護記録に具体的かつ正確に残す

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器械・器具、設備などの安全管理•医⽤電⼦(ME)機器で起こる事故に電流漏れによる電気ショックがある•電気メスは対極板を適切に装着しないと熱傷につながるため注意•各種機器を使⽤することで起こる合併症などを理解する必要がある•医療機器が⼿術で安全に使われるよう保守点検(⽇常点検・定期点検)を実施しなくてはならない•施設によっては全て臨床⼯学技⼠が管理しているが、安全確保のために点検が実施されているかの確認は必要

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配置•患者⼊室時は転倒防⽌のため、コード類やワゴン・医療機器は壁側に配置し、物品を整理する•⿇酔導⼊時や⼿術の流れに沿って⿇酔器・医療機器・ワゴン・器械台などの配置を変える•⿇酔器・医療機器・器械台は、安全で術野の妨げにならない配置にする

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薬品類の準備•⼿術室で使⽤される薬物は⿇酔薬や呼吸・循環器系作⽤薬など多様•⼿術室に⿇酔カートとしてよく使われるものを配置、緊急時使⽤するものは同じ棚にそろえ定数管理•⿇薬、筋弛緩薬(毒薬)、劇薬は規定にのっとって分類表⽰し安全に保管する•誤投与防⽌のため薬剤を識別するラベルをつけ、使⽤前に⿇酔科医や執⼑医とダブルチェックをする

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⼊室時の看護•⼊室時の挨拶(コロナ禍ではマスクを外すことは難しいため、名札を⾒せながら担当する看護師がどんな⼈か⾃⼰紹介)•⾳や室温などに配慮する•患者、病棟看護師、⼿術室看護師で⽒名、⽣年⽉⽇、⼿術部位、装着品・貴重品の有無などを確認•申し送り事項の確認(術前指⽰は守られているか、アレルギーの確認、体調や不安の程度)

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アレルギー•アナフィラキシー︓アレルギーの中で重篤な症状をあらわすもの、全⾝⿇酔中に多いのは筋弛緩薬、ラテックス製品•筋弛緩薬アレルギー︓化粧品や鎮咳薬との交差反応が疑われているため、それらに該当する場合、⿇酔科医に伝える•ラテックスアレルギー︓天然ゴム製品に含まれるラテックスアレルゲン(花粉、果物・野菜、カビに交差リスクの⾼いものがある)などに曝露することでアレルギー反応が誘発

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安全な移送、移乗•昔はベッドによる⼊室が主流であったが、最近は歩⾏⼊室が多い•患者の⾝体・⼼理状態によっては、⾞椅⼦・ベッドでの⼊室を考慮•点滴・ドレーンの有無を確認し、患者に声をかけ次にどのような動作に移るかを患者に理解できるよう説明し、安全な移送・移乗を提供する

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⼿術安全チェックリストを⽤いた確認

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http://www.anesth.or.jp/guide/pdf/20150526guideline.pdfより引⽤(2020.9.6閲覧)

各場⾯でチームとして確認を⾏い、より良いコミュニケーションを

育てる

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モニタリング•⽣体監視装置の装着︓⼼電図、⾎圧計、パルスオキシメーターの装着⇨⼿術部位、⼿術体位を考慮•マンシェットの巻き⽅や巻く位置、シャントの有無や乳がん術後の確認を忘れない•パルスオキシメーターはマニキュアによってSpO2の値が低く測定されるため、⽖の観察をする

⼿術室看護師の役割 39

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⼿指消毒と個⼈防護具(PPE)の着⽤•5つの適切なタイミング(Vライン刺⼊前後、薬剤投与前、尿道カテ留置前後、挿管介助前後、ガーゼ・器械の術野への提供など)で⼿指消毒•特に、⾎液・体液に暴露するリスクの前(挿管介助、ガーゼカウント、検体取り扱いなど)には、⼿指消毒とPPEを着⽤(ゴーグル、エプロンガウン、⼿袋)

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患者への感染予防と⾃⾝の職業感染防⽌を徹底

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脊髄くも膜下⿇酔・硬膜外⿇酔•脊髄くも膜下⿇酔は下腹部以下の⼿術の際に⾏われる•硬膜外⿇酔は頭部以外の⼿術に適⽤される•体位は側臥位(肥満だと座位で⾏うことも)•穿刺時の看護のポイントは体位の保持p患者の背⾯が⼿術台の縁に来るところで、⼿術台に対して垂直にする

p棘突起間が広がるように体位を整える

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語りかけ看護 草柳かほる(2018)⼿術看護ー術前術後をつなげる術中看護ー第⼆版より引⽤

•患者は脊髄くも膜下⿇酔、硬膜外⿇酔などでは側臥位で⾏うことによって背部側での状況が認識できない•消毒、穿刺などにより不安や恐怖などのストレスの度合いは計り知れない•⼿術室看護師はこのような患者のケアとして⼿技の前に声かけを⾏い説明を⾏う「語りかけの看護」が重要となる

⼿術室看護師の役割 42

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局所⿇酔•単独では末梢神経のみの除痛になるため、意識は保たれる•⾝体に⽣じた異常を患者⾃⾝が訴えることができ、医師や看護師は患者の表情や呼吸状態などの変化で読み取ることができる•⾎圧低下、局所⿇酔中毒(初期症状︓多弁、興奮、⼝唇のしびれなどから意識消失、呼吸停⽌につながる)などに注意する•局所⿇酔中毒が起こった場合︓局所⿇酔使⽤を中⽌し、⼈を集め、気道確保を実施し、痙攣の治療(ベンゾジアゼピン)などの対応

⼿術室看護師の役割 43

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気管挿管の介助1. 酸素投与2. ⿇酔薬の投与3. 筋弛緩薬の投与4. 喉頭展開5. 気管チューブの挿⼊6. カフエアー注⼊と⿇酔回路への接続7. テープで気管チューブを固定

⼿術室看護師の役割 44

モニターの変化に注意しながら介助を⾏う

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挿管困難時に使⽤する器具器具 特徴 ポイント

ビデオ喉頭鏡エアウェイスコープマックグラス

• 声⾨、喉頭、咽頭などビデオ画像で⾒ながら挿管ができる

• 頭頸部の伸展・屈曲が少なくて済む

• 電池もしくはバッテリー式であるため、使⽤前に電池の残量マークを確認する

• ブレードを確実に固定する• カメラ部分を汚染しない

気管⽀鏡 • 気道の変形や病変を⽬で確認し、スコープの先端の⾓度を調整しながら気管内に進めることができる

• 挿管困難、肥満など誤嚥リスクが⾼い時の覚醒下挿管に⽤いられる

• スコープの光源をあらかじめ確認(電池式は残量に注意)

• 気管内吸引ができるよう確実に接続する

• 使⽤する前に気管チューブ内に挿⼊できるか確認した後、潤滑剤をつけ、滑りを良くする

⼿術室看護師の役割 45

⼿術看護ー術前術後をつなげる術中看護ー第⼆版より器具・特徴について引⽤・改変

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困難気道対策( Difficult Airway Management)• DAMの定義︓⼀般的なトレーニングを積んだ⿇酔科医が、マスク換気または気管挿管、あるいはその両⽅とも困難• DAMカートの作成、準備︓喉頭鏡、ビデオ喉頭鏡、各種気管チューブ、チューブエクスチェンジャー、ファーストトラック、輪状甲状膜(CTM)穿刺セットなど⇨困難気道な場合、必要な器具をまとめて準備しておく

⼿術室看護師の役割 46

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体温管理ー低体温ー•中枢温の観察︓36.0-37.9℃に維持する(36℃未満は低体温)•低体温︓出⾎量の増加、免疫能の低下、⼼筋虚⾎発⽣率増加•⼿術を受ける患者は⿇酔、室温、⼿術操作などにより容易に体温低下をきたす•保温・加温︓術前より靴下・ブランケットなどで保温するよう説明、⼊室時・⼿術終了時の室温を26-28℃に調整する、⼊室から退室まで加温装置を⽤いて加温する

⼿術室看護師の役割 47

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体温管理ー⾼体温ー•能動性⾼体温(発熱)︓感染、⼿術侵襲、外傷、アレルギー反応、異型輸⾎など原因が判明している場合は原因の改善が必要•受動的⾼体温(異常⾼体温)︓甲状腺機能亢進症、過剰な加温、うつ熱など⇨加温の中⽌または室温送⾵に切り替え、被覆材の除去、必要に応じて冷却•悪性⾼熱症︓呼気⼆酸化炭素濃度の上昇、頻脈、SpO2低下に続く急激な体温上昇(40℃以上または15分間に0.5℃以上または1時間に2℃以上)⇨薬剤の中⽌、ダントロレンナトリウムの投与など

⼿術室看護師の役割 48

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⼿術体位固定•⼿術のための体位の固定は、⼿術操作を⾏うために極めて重要•⼿術を受ける患者は⿇酔薬や筋弛緩薬などによって、過伸展や特定部位の圧迫を感知することができない•体圧分散器具を⽤いて⽪膚・神経障害とならないように褥瘡圧迫部位や関節可動域、神経⾛⾏を考えながら体位固定をする

⼿術室看護師の役割 49

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安全・安楽な⼿術体位

① 全⾝の関節が可動域内② 過度な圧迫・牽引・伸展がない③ 呼吸・循環・神経系の機能を障害しない④ 意識下であっても⻑時間耐えられる⑤ ⼗分な術野が確保でき、⼿術がしやすい⑥ 安全な⿇酔管理ができる

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草柳かほる(2018)⼿術看護ー術前術後をつなげる術中看護ー第⼆版より引⽤

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⼿術体位が及ぼす影響呼吸運動の影響•臥位になることで肋⾻の動きが制限され、腹腔内臓器が上⽅へ押し上げられて横隔膜の運動が制限•⿇酔による呼吸抑制により1回の排気量が500ml-400mlに減少•極端な肥満患者は、より⼀層呼吸抑制が著しくなる

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⼿術体位が及ぼす影響循環器系への影響•砕⽯位では下肢を挙上したときに⽚側下肢の循環量が400mlから800mlに増⼤し急激に⼼臓に負担がかかる•代償機能が抑制される⿇酔下では体位による影響を⽣理的に緩和することができない

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⼿術体位に関する看護の流れ1. 術前情報をもとにアセスメントし、最良の器具を選択•陰圧固定器具・⽀持器・体圧分散具・固定帯など正しくスムーズに使えるように確認し、過不⾜なく準備する2. 体位変換の実施と確認、観察•局所圧迫がなく体圧が分散されているか、神経圧迫の有無、関節は安全な可動域内か、チューブ類などの圧迫の有無、⾦属や⽪膚同⼠に密着していないか•⼿術終了時まで常に観察し、適宜修正3. 評価•⽪膚状態、神経障害の有無の観察

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事前にシミュレーションしてみましょう

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深部静脈⾎栓症(DVT)予防•周術期に発症するDVTから深部静脈⾎栓(特に下肢のヒラメ静脈は好発部位)が遊離し肺動脈に閉塞して⽣じる肺⾎栓塞栓症(PTE)に注意•術前の患者状態により各々の症例ごとにリスクレベルを評価し予防法を決定する•弾性ストッキング・間⽋的空気圧迫装置を装着する場合、⽪膚・循環・末梢神経損傷に留意し適切に使⽤する

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⼿術中の看護•⼿術中の患者は、⿇酔や体位、⼿術による刺激や出⾎などのために、不安定な状態となっている•さまざまな⽣体監視装置(モニター)による観察だけではなく五感を使った観察・確認が必要•意識下でも⿇酔下でも患者の羞恥⼼はあるので、⾝体の露出は最⼩限に(⼿術部位の確認や特殊体位の固定では安全のために露出させることもある)

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⼿術野の消毒•⼿術野に応じて消毒薬を選択(イソジン消毒がほとんど)アレルギーに注意•消毒薬の使⽤前に⽪膚表⾯の汚れを⼗分に除去する(外傷・開放⾻折などは先に⽣理⾷塩⽔で洗浄する)•除⽑は⽪膚を損傷し細菌の増殖を招くので⾏わない•⽑量が多い時、⼿術直前にクリッパーを⽤いることもある•⽪膚切開部を中⼼に内から外へ円を描くように消毒

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術中の観察•⿇酔による影響の観察︓局所⿇酔による中毒症状、ショック症状の有無、脊髄くも膜下⿇酔は作⽤範囲の観察(呼吸抑制に注意)全⾝⿇酔は気管⽀喘息発作や気管⽀痙攣に注意•⽣理機能の観察︓呼吸機能(気管チューブのズレ、外れ)循環機能(⾼⾎圧、激しい出⾎、敗⾎症、脱⽔の患者は急激な⾎圧下降)尿量(⾊にも注意)出⾎量(Hbが低いと輸⾎)

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⼿術摘出標本の取り扱いー外回りー•標本のトラブルには、標本の紛失や廃棄、不適切な保存⽅法、間違ったラベルの貼付など運⽤上のミスが関係している•容器のラベルや記⼊した⽒名は2名以上で確認する•退室前に全ての標本の確認を声に出して⾏い、正確であるかどうかを確認する

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体内遺残防⽌•⼿術で使⽤するすべての器械・器材は体内に残存する可能性があることを念頭に置き、ガーゼや鋭利器材、使⽤する器械の数、形状を記録に残す•⼿術の前後で、器械・器材が遺残していないかカウントを実施し、数が⼀致していることを確認していかなければならない•⼿術チームとしてカウントを実施し、共同で責任をもつ

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覚醒・抜管の介助1. ⿇酔薬の投与終了2. 気管内・⼝腔内吸引3. 気管チューブの抜管4. 気道・呼吸状態の観察

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上気道閉塞・喉頭痙攣・⿇酔薬残存による呼吸抑制を引き起こすおそれ

異常時にエアウェイの挿⼊や再挿管などに対処できる準備が必要

抜管基準︓• 呼名開眼、従命反応• ⾃発呼吸8-25回/分• TOF⽐0.9以上• 循環動態の安定上嶋浩順,磨⽥裕(2014)⿇酔と気道確保④⿇酔覚醒時の戦略.⽇本臨床⿇酔学会誌Vol.34No.3,p472-476より引⽤(2020.9.8閲覧)

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⼿術終了時の看護•⿇酔からの覚醒後、⼿術を終えた患者の体内では、⼿術侵襲と⿇酔によって乱された恒常性を回復させようとする反応が活発化•看護師は、患者の呼吸・循環・免疫などの全⾝機能が最⼤限に発揮できるよう援助する•気管チューブ抜管時には嘔吐、喉頭痙攣が起こりやすいため、酸素マスクを接続し酸素を与え、⿇酔科医とともに呼吸の状態を観察•激しく体動することがあるため患者の側から離れない

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全⾝機能に対する援助•酸素吸⼊、呼吸を整える︓気道の閉塞が起こっていないか、(⾆根沈下など)呼吸抑制がないか(浅く早い呼吸にも注意)•循環を整える︓異常な⾼⾎圧・低⾎圧、脈拍、⼼電図、創部・ドレーンからの出⾎、輸液・輸⾎の管理•体温を整える︓体温が少しでも低下するとシバリング(震え)を⽣じ酸素を⼤量に消費するため加温を続ける

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退室時の観察•気道・呼吸状態の観察︓気道閉塞がない、SpO2:96%以上、呼吸回数8-25回/分•意識の確認︓覚醒し簡単な命令に従う•循環状態︓HR60-100bpm、不整脈なし、⾎圧術前の±20%以内、出⾎なし•低体温とシバリングの有無︓36.0℃以上、シバリングなし•疼痛・神経損傷の有無︓創痛の評価、四肢の⾃動運動の観察•⽪膚の観察︓表⽪剥離、発⾚の有無

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病棟への引き継ぎ(継続看護)•引き継ぎは⼿術後の看護を継続しえ⾏う上で不可⽋•どのような⼿術を実施したか、ドレーン挿⼊部位、出⾎・尿量、輸液量・輸⾎量、現在の患者の問題点についての説明をつけて引き継ぐ•後⽇、術後訪問により⼿術中に⾏われた看護が患者に適切であったかどうかを評価•体位による⽪膚・神経障害は⼿術後しばらくしてから発症することがあるので観察の継続が必要

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急変時の対応•患者急変時︓⼼停⽌、アレルギー反応、⼤量出⾎、局所⿇酔中毒、全⾝⿇酔中の異常体温など•応援の⼈を要請︓適切な処置を迅速に⾏うため、躊躇することなく要請する•⿇酔科医への状況報告、記録︓担当看護師が⾏い、治療のため新たに挿⼊されたライン類、患者に施された治療とその結果、実施者を記載

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不測の事態を予測し急変に対応できるよう備えておく

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急変時の対応•⼤量出⾎時︓•出⾎状況を素早く正確に観察(⼿術台の下などに⾎液が貯留している場合はガーゼで拭いて測定)•出⾎量や尿量を医師に報告•輸⾎在庫の確認、輸⾎・輸⾎ルートの準備•コマンダーの指⽰により輸液や輸⾎のポンピング•医療材料の術野への提供•圧迫⽌⾎の場合、ガーゼの種類と枚数の把握

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⼿術看護記録•術前訪問から術後訪問までの⼀連の過程を記録し、看護に必要な情報、看護計画、経過記録で構成① 周術期看護の実践とその適切性を証明② ⼿術室看護師の看護ケアの根拠を明⽰③ 周術期看護ケアの評価・質向上・開発の資料④ 診療報酬上の要件を満たしていることを証明⑤ ⼿術室看護師ー患者ー医療者間の情報交換、継続看護の⼿段

⑥ 医療事故の法的資料⼿術室看護師の役割 67

⼿術医療の実践ガイドライン改訂第三版2019より引⽤

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事故・災害発⽣時の対策•事故には⼈為的事故から災害までさまざま•災害マニュアルやアクションカードをもとに発⽣時はできるだけ落ち着いて⾏動できるよう備える•⼈為的事故が発⽣した場合、起こした⼈を責めるのではなく原因を追求する•業務の標準化やスリム化、スタッフや他職種とのコミュニケーションによる円滑な協調関係を保つことが重要

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患者が安⼼して安全な⼿術を受けるために•患者の⾝近な存在である看護師が、⼿術中の患者に変わって代弁者(アドボケート)とならなくてはいけない•患者がどんな職業をしているか︖家族的役割は︖⇨患者背景を理解して受け持つと、重みが違う•「⼿術以外の傷を作らない」という信念を持ち、患者が安全に⼿術を受けられるよう、さまざまな安全対策を講ずることが⼤事

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参考⽂献• ⽇本⼿術医学会(2019)⼿術医療の実践ガイドライン改訂第三版• 草柳かほる(2018)⼿術看護ー術前術後をつなげる術中看護ー第⼆版.医⻭薬出版株式会社• 公益社団法⼈⽇本⿇酔科学会(2016)周術期管理チームテキスト第三版• ⼟藏愛⼦(2015)こころに寄り添う⼿術看護ー周術期患者・家族の⼼理とケア.医⻭薬出版株式会社• ⼟藏愛⼦(2015)⼿術看護に⾒る匠の技.東京医学社• WHO安全な⼿術のためのガイドライン2009http://www.anesth.or.jp/guide/pdf/20150526guideline.pdf(2020.9.6閲覧)• 野村実(2014)周術期管理ナビゲーション.医学書院• 上嶋浩順,磨⽥裕(2014)⿇酔と気道確保④⿇酔覚醒時の戦略.⽇本臨床⿇酔学会誌Vol.34No.3,p472-476 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/34/3/34_472/._pdf/-char/.ja(2020.9.8閲覧)

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