14
安藤建設技術研究所報 Vol.11 2005 41 1.はじめに (仮称)LM 四谷 4 丁目新築工事における高層棟は, 地下および地上 1 階の共用部分を在来工法とし,地 2 階以上の共同住宅部分にプレキャスト( 以下 PCa)化工法を計画している。PCa 化工法の概要は, 柱はフル PCa で,一部外部面の柱梁接合部は PCf( プレキャストコンクリート型枠工法) とし,梁 はスラブ厚部分を現場打ちとするハーフ PCa で, 一部妻側外部に面する梁はフル PCa の逆梁で計画 されている。また,床はスパンクリートと一部ハー PCa 床板で計画されており,架構全体では PCa 化率の高い建築物となっている。また,1,2 階の柱 は,設計基準強度 80(N/mm 2 )の高強度コンクリート で設計されており,この部分には当社を含む共研で 開発された爆裂抑制コンクリート工法(以下 FPC )が,はじめて採用されている。 そこで,地上基準階躯体工事の施工計画を策定し ていく上で,机上検討では予測しにくい項目につい て,施工方法・手順あるいは部材・鉄筋等の納まり 状況等を検証する目的で,実大モデルを用いて PCa 部材の建方・FPC 工法 80(N/mm 2 )コンクリートの打 設等について施工実験を実施した。 2.建物概要および試験体概要 キーワード:超高層 RC/プレキャスト/実大施工実験/逆梁/爆裂抑制コンクリート Actual-size Construction Experiment of High-rise Reinforced Concrete Housing 超高層RC共同住宅の実大施工実験 (仮称)LM 四谷 4 丁目新築工事の高層棟は,基準階の柱をフルプレキャスト,梁をハーフプレキャ スト(一部フルプレキャスト)として計画された,地下 1 階地上 29 階建ての共同住宅である。1,2 階柱 のコンクリートの設計基準強度は,80(N/mm 2 )で設計されており,この部分には当社を含む共研で開 発された爆裂抑制コンクリート工法を採用している。本報では,基準階躯体工事の施工計画を検証 するため,実大モデルで計画・実施された施工実験の概要を報告する。 Abstract A high-rise building in LM Yotsuya 4-chome newly-built construction is an apartment block, with one underground floor and 29 floors. These columns were planned with full precast concrete and the beams with half precast concrete (partially full precast concrete) on the standard floor. The specified design strength of the concrete of the first and second floor columns is designed to be 80(N/mm 2 ), and an explosion control concrete method, developed in joint research including our company, was also involved in this part. In this report, to verify the execution scheme of the standard floor body construction, we report on the outline of the construction experiment that was planned and executed using an actual-size model. 桜井 徹* 安部 弘康* 石川 伸介* 立山 創一* 五十嵐 貴志** by Toru SAKURAI, Hiroyasu ABE, Shinsuke ISHIKAWA, Souichi TATEYAMA and Takashi IGARASHI * 技術研究所材料施工グループ ** プレハブ事業部工事部門

Actual-size Construction Experiment of High-rise ... · 超高層rc共同住宅の実大施工実験 43 図2 y5・y6通り軸組図 図4 実験部躯体図(床伏せ図) 6600 x2 x3

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安藤建設技術研究所報 Vol.11 2005

41

1.はじめに (仮称)LM 四谷 4 丁目新築工事における高層棟は,

地下および地上 1 階の共用部分を在来工法とし,地

上 2 階以上の共同住宅部分にプレキャスト(以下

PCa)化工法を計画している。PCa 化工法の概要は,

柱はフル PCa で,一部外部面の柱梁接合部は

PCf(プレキャストコンクリート型枠工法)とし,梁

はスラブ厚部分を現場打ちとするハーフ PCa で,

一部妻側外部に面する梁はフル PCa の逆梁で計画

されている。また,床はスパンクリートと一部ハー

フ PCa 床板で計画されており,架構全体では PCa化率の高い建築物となっている。また,1,2 階の柱

は,設計基準強度 80(N/mm2)の高強度コンクリート

で設計されており,この部分には当社を含む共研で

開発された爆裂抑制コンクリート工法(以下 FPC 工

法)が,はじめて採用されている。

そこで,地上基準階躯体工事の施工計画を策定し

ていく上で,机上検討では予測しにくい項目につい

て,施工方法・手順あるいは部材・鉄筋等の納まり

状況等を検証する目的で,実大モデルを用いて PCa

部材の建方・FPC 工法 80(N/mm2)コンクリートの打

設等について施工実験を実施した。

2.建物概要および試験体概要

キーワード:超高層 RC/プレキャスト/実大施工実験/逆梁/爆裂抑制コンクリート

Actual-size Construction Experiment of High-rise Reinforced Concrete Housing

超高層RC共同住宅の実大施工実験

要 旨 (仮称)LM 四谷 4 丁目新築工事の高層棟は,基準階の柱をフルプレキャスト,梁をハーフプレキャ

スト(一部フルプレキャスト)として計画された,地下 1 階地上 29 階建ての共同住宅である。1,2 階柱

のコンクリートの設計基準強度は,80(N/mm2)で設計されており,この部分には当社を含む共研で開

発された爆裂抑制コンクリート工法を採用している。本報では,基準階躯体工事の施工計画を検証

するため,実大モデルで計画・実施された施工実験の概要を報告する。

Abstract A high-rise building in LM Yotsuya 4-chome newly-built construction is an apartment block, with one

underground floor and 29 floors. These columns were planned with full precast concrete and the beams with half precast concrete (partially full precast concrete) on the standard floor. The specified design strength of the concrete of the first and second floor columns is designed to be 80(N/mm2), and an explosion control concrete

method, developed in joint research including our company, was also involved in this part. In this report, to verify the execution scheme of the standard floor body construction, we report on the outline of the construction experiment that was planned and executed using an actual-size model.

桜井 徹* 安部 弘康* 石川 伸介* 立山 創一* 五十嵐 貴志**

by Toru SAKURAI, Hiroyasu ABE, Shinsuke ISHIKAWA, Souichi TATEYAMA and Takashi IGARASHI

* 技術研究所材料施工グループ ** プレハブ事業部工事部門

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安藤建設技術研究所報 Vol.11 2005

42

表 1 に本建物の工事概要,図 1,図 2 に基準階平

面図および Y5・Y6 通り軸組図を示す。本施工実験

では,基準階においてコンクリート強度が最も高く,

かつ鉄筋量も最も多く設計されている 2 階立ち上が

り部分について各種実験を行った。図 1,図 2 中の

網掛け部分は,本実大実験の試験体部位を示す。図

3 に実験部躯体図(見上げ図),図 4 に実験部躯体図

(床伏せ図)を示す。

また,これらとは別にコンクリート打設実験用に

1,000×1,000×3,300mmの独立柱を1体準備した。

施工場所 東京都新宿区四谷4丁目8番11他 用途 共同住宅(291戸)

店舗・駐車場・駐輪場 構造 鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)

場所打ちコンクリート杭 規模 地下1階地上29階PH1階 面積 敷地面積 2,812.23m2

延べ床面積 29,700.65m2 階高 最高高さ 96.78m

軒高 91.24m スパン 6×3スパン(最大スパン7.7m)

3.実験概要 3.1 実験項目および実験要領 a. PCa建方実験

実 験 項 目 実 験 要 領

①PCa 柱吊り治具・吊り金物

・PCa 柱の相対する 2 面に吊り上げ用インサート M24 を打ち込んでお

く。

・インサート M24 に対応する吊り金物(回転タイプ・斜めサポート兼用

タイプ)を装着する。

・吊り治具は既製品(T 社製)を使用する。

②PCa柱建て起こし手順 ・PCa柱の運搬は部材を倒した状態で行う。

B4B4EV

階段 EV

S2

B2

B2

B3

B3

S2

G30

CS1

CS1

S2S2

S2

S2

S2

S2

S2

S2

S2

S2

S2

S2

S2

S2

G10 G10

G30G6

G4 G4

G2 G2

G2G2

G8

G7

G9

G6

G5

G6

G6

G5

G6

G6

G5

G6

G6

G5

G6

G6

G5

G9

G7

G3

G3

G3G3

G1G1G1G1

G1G1G1G1

C2C4C4C4C4C4

C1 C1 C1

C1C1C1C1C1C5

C3 C1 C1 C3

C5

C6

C2C4C4C4 G4G3G3

G8

C2 G4

C2

C6

X8X7X6X5X4X3X2

770066006600660066006600

1475

7275

7700

3600

3675

770066006600660066006600

PS1 PS1 PS1

PS1

PS1 PS1 PS1 PS1 PS1 PS1

PS1

Y7

YD1

Y6

Y4

Y5

図1 基準階平面図

表1 工事概要

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超高層 RC 共同住宅の実大施工実験

43

図2 Y5・Y6通り軸組図 図4 実験部躯体図(床伏せ図)

6600X2 X3

7700

Y6

Y5

1500

325

325

45

45

597.5

597.5

柱天端SL+545

柱天端SL+545

595500

595 500

PC梁

天端

SL+180

290

110290

排水

溝(

深さ

40)

+30

±0

+30

±0

200

200

200

200

200

500 200290275

500 2

00

200

1797.5

2575

斜線部場所打ちコン強度80N/mm2

斜線部場所打ちコン強度80N/mm2

斜線部場所打ちコン強度80N/mm2

275

375

392.5

斜線部場所打ちコン強度80N/mm2

止枠:バタ角+ラス網

止枠:クシのみ

止枠:バタ角のみ

止枠:クシ+ラス網

50

50

立上

り:

PC製

品立

上り

:ベ

ニヤ

枠立

上り

:ア

ング

ル枠

PC梁

天端

SL+545~

495

2125

2455

325

275375

2470

325

天端

SL+

100

中空PC板

ベニヤスラブ

ベニヤスラブベニヤスラブ

ベニヤスラブ

床伏せ図

597.5

50

597.5

290

45

50

200

392.5

200

45

1,800

4,500

6,600

1504,360

3,110

13,050

91,090

3,260700

基礎下端

地中梁上端

B1 SL

2 S L

3 S L

2 9 SL

パラペット天端 RSL

1S LG L ( 1 0. 8 5)

650

6,300 6,600

4 S L

5 S L

6 S L

7 S L

8 S L

9 S L

1 0 SL

1 1 SL

1 2 SL

1 3 SL

1 4 SL

1 5 SL3,060 1 6 SL

1 7 SL

1 8 SL

1 9 SL

2 0 SL

2 1 SL

2 2 SL

2 3 SL

2 4 SL

2 5 SL

2 6 SL

2 7 SL

X1 X 2 X3 X 4 X 5 X 6 X7 X 8

6,600 6,600 6,600 6,600 7,700

47,000

3,060

3,110

3,260

2 8 SL

G 2 0C 2 1

G 2 G 1 G 1 G 70 G7 0 G 2

EW 5 0 A EW 5 0 EW 5 0 E W 50 E W5 0 E W5 0

EW 2 0

E W 50

C 1C 5 G 2 C1 G 1 G 1 C 1 G 1 G1C 1 C 1 G 2 C5

E W2 0

P 5 P 2 P 1 P 1 P1 P 2P 1 P 1

F G1

G 70

F G2

G 70

F G1

G 70 G 70

F G1F G1

G 70

FG 1

G7 0 G 70

F G2

杭芯

〃〃

〃〃

〃〃

〃〃

〃〃

〃〃

〃〃

〃〃

〃〃

〃〃

〃〃

図 3 実験部躯体図(見上げ図)

500

97.5

97.5

1195

50095

1095

500

1000

5001000

500

97.5

1195

50095

1095

500

1000

500

1000

580290 290

785392.5 392.5

6600

3425

850

3425

650 2

75

375

650

275

375

565290 275

785392.5 392.5

650

375

275

650 375

275

1797.5

2575

1600 5000

C5

C1

C1

C3

X2 X3

(ス パンクリー ト)

仕口部分鉄板型枠

仕口部分鉄板型枠

11557.5

9770

7700

Y6

Y5

2060

G7

C1C5

G1G2

6600

1500

595 500

410

545

150 430

290

50

S7240

30 100

PS1(スパンクリート)

105

500

392.5

G5

850

▼3SL

▼2SL

3110

955

2245

610

240

15

S2115

75

190

X2 X3

スラブ型枠

仕口型枠仕口型枠

135

2870 2075

G2

G2

C5

3110

▼2SL

▼3SL

S2G9

180 410

4402245 15

597.5

597.5

410545

105

955

G7

100

立上

2870

2700

375275

375

275

597.5

597.5

480 410

1462.5

C3

実験部分躯体見上図

B-B

断面

A-A 断面図

スラ

ブ型

仕口

型枠

仕口

型枠

仕口

型枠

仕口

型枠配

筋、

型枠

のみ

G8

135

PS1(

スパ

ンク

リー

ト)

土間

コン

クリ

ート

150

2140

545 1

5

土間コンクリート

150

PC梁

ジョ

イン

ト部

分鉄

板型

中 空PC板

ベニヤスラブ

ベニヤスラブ

ベニヤスラブ

ベニヤスラブ

AA

BB

500

500

500

500

500

500

97.5

500

500

290

392.5

500

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安藤建設技術研究所報 Vol.11 2005

44

実 験 項 目 実 験 要 領

・倒した状態の移動は,柱頭部吊り上げ用金物と柱脚部に移動専用金物

の計 4 点吊りとし,ワイヤ長さはチェンブロックで調整し,仮置きは

端太角 2 点支持とする。 ・建て起こしは,柱脚部隅部が欠けないように緩衝材(ウレタンマット)

上で行う。 ・運搬車上からの直接建て起こしも,同様とする。

③柱脚柱主筋長さの違いによる

PCa 柱建方施工性

・柱脚柱主筋の四隅筋の内,1 本を通常レベルより 50mm 上げた柱を 2体,全ての柱筋レベルを同じにしたもの 2 体において,PCa 柱建方の

施工性に有意差があるかを検証する。 ④PCa 柱の建方・支持方法

・レベルライナーはスチール製とし,外周部 4 点と中央部 1 点の場合を

比較する。 ・平面位置調整は,柱脚目地部に床を反力としてバールを用いる場合,

主筋を反力として既製治具(T 社製)を用いる場合を比較する。 ・建て入れ調整は,下げ振り(重り式・防風式を比較する)により地墨を

基準に,斜めサポートの押し引きで調整する。 ・床側の斜めサポート固定は,床に埋込インサート+アイボルトとす

る。 ・斜めサポート数量は,XY 各 1 本とする。

⑤PCa 柱主筋継手および目地グラ

ウト同時注入

・全ての継手の注入孔および排出孔の栓を用意する。 ・下端目地部は,注入用グラウトを固練りして外周部を塞ぎ,1 日養生

する。 ・注入用グラウトを練り混ぜ,フロー試験を行う。 ・フロー試験結果が合格であることを確認して,1 ヶ所の注入孔から圧

入する。 ・各孔からグラウトが溢れ出たら栓をする。 ・全ての継手の注入孔および排出孔よりグラウトが溢れ出ることを確認

する。 ⑥PCa 梁吊り治具・吊り金物

・吊り金物は,梁の上部欠き込み天端に吊りフックを 2 ヶ所/ P 埋め込

む。 ・吊り治具は既製品(T 社製)を使用し,連続梁の水平を保つためのワイ

ヤ長さ調整はチェンブロックを用いる。

・連続梁における柱部分の露出梁下端主筋補強の必要性を検討する。 ⑦PCa 梁の建方手順

・PCa 梁の平面位置は,床上および PCa 柱側面に予め出しておく。 ・PCa 梁のレベル基準を,PCa 柱側面に予め出しておく。 ・下端筋用継手・下端筋端部定着用プレートナット・上端主筋および上

端筋用継手・接合部継手用スタラップが所要数量セットされているこ

とを確認する。 ・建方時における安全対策として,柱主筋に親綱支柱を差し込み,親綱

を張る方法を検証する。 ⑧PCa 梁の支持方法

・アルミサポートで支持することを基本として以下の差異を検証する。

ア.アルミサポートのみで支持する。(ただし,水平つなぎ・筋交いで固

定) イ.アに加えて,PCa 梁側面に打ち込んだインサートと床面を斜めサポー

トで固定する。 ウ. PCa 柱天端内部のバーサポートに PCa 梁下端主筋から荷重を伝達さ

せ,全体の固定度を確認する。(主荷重はアルミサポート負担) エ. PCa 柱天端外部に梁受けアングルを取り付け,これに PCa 梁の荷重

を伝達させ,全体の固定度を確認する。(主荷重はアルミサポート負

担) ⑨スパンクリート建方手順

・支保工としてパイプサポート,大引き材には端太角を用い,スパン中

央部に一列架設する。(3 点支持) ・PCa 梁に床板位置(割付)の墨を出す。 ・スパンクリートを荷揚げし,PCa 梁上に仮置きする。 ・専用吊りフックを用いて,所定位置に敷き並べる。

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超高層 RC 共同住宅の実大施工実験

45

実 験 項 目 実 験 要 領

・位置合わせの微調整に,バールを用いる。 ⑩梁主筋継手作業性

・下端主筋のフリージョイントカプラーを,主筋のマーキング範囲内に

納まるようにねじ込む。(グラウト注入孔の最終位置に留意する) ・グラウト練り混ぜ,フロー値確認後注入を行い,継手端部からのグラ

ウト材の漏れを確認する。 ⑪柱梁接合部内フープ配筋方法

・逆梁以外の接合部は以下の 2 通りについて作業性等を検証する。 ア. PCa 梁に接合部内フープを予めセットしておき,PCa 梁建方時に鉄

筋工・PC 工相番で配筋する場合。 イ.施工箇所で鉄筋工が配筋する場合。

・逆梁部の接合部は,分割型(割バンド)フープとし,PC 工・鉄筋工相番

作業とし,クリップ接合の作業性を検証する。 ⑫梁上端主筋配筋作業性

・上端主筋を所定位置まで移動し,継手施工がある箇所は,エースジョ

イントのカプラー・ロックナットを主筋のマーキング範囲内に納まる

ようにねじ込む。(グラウト注入孔の最終位置に留意する) ・ロックナット・カプラーにトルク導入用マーキング後,専用レンチで

締め付け,全ての継手についてマーキングのずれを確認する。 ・グラウト練り混ぜ,フロー値確認後注入を行い,継手端部からのグラ

ウト材の漏れを確認する。 ・梁接合部継手部のスタラップを配筋する。

⑬柱梁接合部塞ぎ型枠材料比較 ・鋼製型枠,合板型枠の 2 種類について作業性を検証する。

⑭梁接合部型枠の施工方法

・存置期間の違いを考慮し,梁底は合板型枠,梁側は鋼製型枠の組み合

わせとし作業性を検証する。 ⑮床立ち上がり部分・床打ち込み

金物の位置・異強度コンクリート

打ち分け位置墨出し方法

・スパンクリート敷き込み後,床立ち上がり部分・異強度コンクリート

打ち分け位置の墨を出す。

・床打ち込み金物の位置をスプレーでマーキングする。 ⑯床立ち上がり部分の施工方法

・床立ち上がり部分の施工方法を以下の 3 種類検証する。

ア.床コンクリート同時打設する場合で,合板型枠を使用する場合。

イ.床コンクリート同時打設する場合で,鋼製型枠を使用する場合。

ウ. PCa 製品を打ち込む場合。 ⑰床打ち込み金物の施工方法

・柱および梁用斜めサポートの柱脚部分固定用金物の取付方法として以

下を検証する。 ア.アイボルト+長ナットをスラブ筋にボルト締めする。

イ.アイボルト+長ナットをスパンクリートに溶接アンカー固着させ

る。 ウ.アイボルト+長ナットをスラブ筋にボルト締めし,さらにスパンク

リートに溶接アンカーを打ち,倒れ止めを行う。

b. コンクリート打設実験

実 験 項 目 実 験 要 領

①80(N/mm2)コンクリートへの爆

裂抑制材混入確認

・爆裂抑制材混入前後のコンクリートの性状の変化を確認する。

使用するコンクリートの配合および練り混ぜ方法を以下に示す。

配合 水セメン S/a 水 セメント 砂 砕石1 砕石2 混和材ト比(%) (%) (kg/m3) (kg/m3) (kg/m3) (kg/m3) (kg/m3) (%)

734(嵩:520)

 ・砂 :富津、八戸混合(6:4)、FM=2.60、比重=2.62 ・砕石1 :山口県美弥氏伊佐産(70%)、実績率=61.0%、比重=2.69 ・砕石2 :青森県八戸市松館産(30%)、実績率=61.0%、比重=2.69 ・混和剤 :フローリック社製:SF500H ・爆裂防止用樹脂 :ダイワボウ(2.2dtx-2mm)→1kg/m3 ・練り混ぜ :4分撹拌

 ・樹脂の撹拌 :高速2分

 ・樹脂の投入方法 :1B練り上がり後、樹脂を全量投入。2Bを生コン車へ投入

 後高速で2分撹拌し出荷。樹脂の投入には樹脂製波板を

 使用。(サンドイッチ方式)

83-65-20M 24.9 46.9 170 683 597 256 C×1.85

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安藤建設技術研究所報 Vol.11 2005

46

実 験 項 目 実 験 要 領

②FPC80(N/mm2)コンクリートの受

入検査

・荷卸し時のコンクリートが所定の性能を確保しているか確認する。 ・目標フロー:65cm±10cm ・目標空気量:2%±1.5%

③FPC80(N/mm2)コンクリートの運

搬および打ち込み

・2.5m3 ホッパーとポンプ車を用いて打設する。 ・ポンプ車機種:極東開発工業(株)PY120-33 ・高周波バイブレータφ40 を 2 基使用して,締め固める。

④柱梁接合部-梁床異強度コンク

リート打ち分け方法

・柱コンクリート打設範囲は,一面につき柱寸法+200mm とする。 ・仕切は,スラブは樹脂製のコンクリート止めクシを用い,PCa 梁欠き

込み部は上部コンクリート止めクシ,下部ラス網の併用とする。その

他,適宜エアチューブを用いる。 ・打設手順は以下とする。 ①仕切をセットする。 ②仕切の内側に,柱用コンクリートを打設する。 ③柱コンクリートの硬化状況を確認し,クシを抜きながら梁床用コン

クリートを打設する。 ④境界近辺は入念に締め固める。

⑤表面ひび割れ低減剤の有効性(鏝押さえ時)

・コンクリート打設天端半分に液状表面ひび割れ低減剤を散布しながら

金鏝押えを行い,散布しない部分とのコンクリート押えの施工性,お

よび乾燥後の表面ひび割れ状況を比較する。

⑥PCa 柱-PCa 梁間のセメントペ

ースト漏れ止め方法

・PCa 柱と PCa 梁の取り合い(架かり代ゼロ)部分の梁受けアングルに隙

間埋め材(バックアップ材)を貼る場合と,貼らない場合のセメントペ

ーストの漏れ具合を比較する。 ⑦スパンクリート-スパンクリー

ト,スパンクリート-PCa 梁間の

セメントペースト漏れ止め方法

・スパンクリート同士の突きつけ部分に①ガムテープ貼り,②コーキン

グ打ち,③隙間埋め材(エサフォーム)挿入を行い,施工性とセメント

ペーストの漏れ具合を比較する。また,PCa 梁とスパンクリートの取

り合い(架かり代 40mm)はガムテープを貼る部分と貼らない部分の漏

れ状況を比較する。 ⑧型枠脱型後の表面性状

・柱梁接合部コンクリートを密実に打設し,型枠脱型後,コンクリート

表面状況や PCa 柱との表面のズレ等を確認する。 ⑨FPC80(N/mm2)コンクリート中の

爆裂抑制材の混入状況

・荷卸し時のコンクリート中での爆裂抑制材の分散状況を確認する。ア

ジテータ車の初流,中流,終流からコンクリートを採取し,爆裂抑制

材を洗い出し,乾燥後計量を行う。 ⑩独立柱 FPC80(N/mm2)コンクリ

ートの温度履歴および硬化性状

・独立柱に熱電対を設置することにより,温度履歴の測定を行う。測定

は高さ 300mm および 1,600mm としそれぞれ中心部と表面から 50mmの位置で行う。

・独立柱からコア供試体を採取することにより強度性状を把握する。

4.実験結果 4.1 実験結果および考察 a. PCa建方実験

実 験 項 目 実 験 結 果 および 考 察

①PCa 柱吊り治具・吊り金物

・吊り金物は,回転タイプ・斜めサポート兼用タイプ共に作業性に関し

ては特に問題はなかった。ただし,一箇所当たり 2 本のボルトで取り

付けるもの方が安全上好ましい。 ・金物埋込位置について,

①高さは床から 1,800mm 程度が作業性がよい。 ②横方向は柱幅の中心であったが,PCf 立ち上がり部がある場合に

は,重心位置とし揚重中に傾斜しないようにする必要がある。 ・吊り治具は実験に用いた T 社製の既製品が活用できる。写 1

②PCa柱建て起こし手順

・隅部欠け防止に用いたウレタンマットは,有効である。 ・搬入車両(10t 車)上においても,地上における手順と同様である。写 2 ・車上二段積みの場合は,上段の部材を一旦地上仮置きとする。

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超高層 RC 共同住宅の実大施工実験

47

実 験 項 目 実 験 結 果 および 考 察

③柱脚柱主筋長さの違いによる

PCa 柱建方施工性

・柱脚柱主筋長さの違いによる PCa 柱建方施工性には,特筆する大きな

差異は認められない。これは,柱脚柱主筋の平面位置精度および PCa柱の製品精度が確保されていることを前提として,建方時には PC 工

は柱型の墨のみを基準に作業を行っているためである。写 3

④PCa 柱の建方・支持方法

・レベルライナーの設置箇所数の違いは,中央 1 点では斜めサポートの

巻き上げ・巻き下げ・固定までの建て入れ調整時間が,外周部 4 点の

場合より多くかかり,この間クレーンの補助を要するため,効率が悪

い。 ・建て入れ計測は,風の影響がない場合は重り式下げ振りの場合の方が

簡便である。防風式は目盛り表示が片面のみなので,立ち位置によっ

ては目盛りが見づらい場合がある。 ・水平位置の微調整には,簡便性においてバール・隅部の欠けがなく作

業性も良好な T 社製既製治具ともに有効である。ただし,バールは隅

部欠け防止アングルを添え,既製治具は PCa 面を押し込む方向のみの

調整である。写 4 ・レベルライナー4 点支持の場合には,斜めサポートは XY 方向各 1 本

で十分である。 ・レベルライナーの設置場所について,鉄筋同様スチールライナーに対

するかぶり厚さを考慮する必要がある。また,床コンクリート鏝押さ

えの精度についても留意する必要がある。 ⑤PCa 柱主筋継手および目地グラ

ウト同時注入

・継手の性能評価資料に示された施工手順を遵守する。 ・目地部のシールは,注入施工日の前日(以前)に,注入用グラウト材の

固練り材を用いる工法で妥当である。 ・排出孔からのグラウトの漏れによる汚れを防止するためのビニルシー

ト養生は有効である。 ・グラウト材の圧縮強度は,材令 28 日現場水中養生で 111~116(N/mm2)

出ており,柱コンクリートの設計基準強度 80(N/mm2)を上回ってい

る。 ⑥PCa 梁吊り治具・吊り金物

・チェンブロックを直接吊りフックに掛けた場合,上端主筋あるいは直

近のスタラップに引っかかることがあり,不安全となるので吊りフッ

クにシャックル+ラッチロック+玉掛けワイヤ+シャックル+チェン

ブロック+吊り治具とする。 ・吊り治具は T 社製既製品が活用できる。また,連続梁の水平保持に

は,チェンブロックが有効である。チェンブロックにより水平性が確

保できるため,揚重・建方時には露出梁下端主筋に対する補強は不要

である。写 5 ・PCa 梁天端に打ち込む吊りフックは,上端主筋をよけた位置に 2 箇所

/P 直列に配置されるが,配置する軸が梁芯と異なる場合(上端主筋が

奇数本配列となる場合)には,同じ列に配置せず,交互に梁芯を跨いだ

列に配置する。 ⑦PCa梁の建方手順

・PCa 梁の位置決め・建方精度は PCa 柱の建方精度に依存させることと

し,よって,PCa 梁建方用の墨(床上および PCa 柱側面への平面位

置・PCa 柱側面へのレベル墨)は,完全なものでなくともよく,建方中

および建方後にチェックできるポイントがあればよい。ただし,スパ

ン間に PCa 梁接合部がある場合は,梁の通り確認用に床上に梁位置の

墨が必要である。

・実験要領での PCa 梁建方時の作業手順では,柱梁接合部内のフープ挿

入時は,一時的に親綱支柱を外す必要があり不安全となるため,安全

作業手順を以下とする。

①PCa 梁端部に親綱支柱を差し,親綱を載せておく。

②タチウマから柱天端に乗り,柱主筋に安全帯フックを掛け,PCa 梁

を巻き下げる。

③梁上の支柱に親綱を張る。

④その後の梁上筋移動,柱梁接合部フープ挿入,後行の梁の巻き下げ

は,親綱に安全帯フックを掛けて行う。

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48

実 験 項 目 実 験 結 果 および 考 察

⑧PCa 梁の支持方法

・ア.アルミサポートのみの支持では,水平方向への移動が抑制できな

い。

イ.斜めサポートで,水平方向への移動が抑制できる。特に,スパン中

央部に接合部を有する部材端部の水平移動拘束に有効である。

ウ.エ.採用したバーサポートの強度にも依るところであるが,バーサポ

ートの変形量が大きく,アングルと比較して,水平移動拘束力はア

ングルの方が効果が大きい。写 6

・PCa 梁の荷重はアルミサポートで支持し,水平移動拘束として梁受け

アングルを架設する。さらに,中間接合部では先行梁の材端部に斜め

サポートで固定し,後行梁は速やかに下端梁主筋を接合する。写 7

⑨スパンクリート建方手順

・基本的にメーカーの建方手順書に従い,専用の吊金物を用いる。 ・実験ではスパンの端から敷くことが出来ず,建方順序に従った搬入車

両上の積み込み順序の計画が必要となる。 ・割付墨に合わせる際,バールによる微調整で角が欠けやすい。 ・長さ方向の中央部にむくりがあるので,建方完了後大引きに接地して

いない場合は,接するまでサポートを巻き上げる。 ・梁への架かり寸法に注意し,梁建方施工誤差により不足してしまう場

合は端部にサポートを追加する。

⑩梁主筋継手作業性

・フリージョイントはほとんどの箇所で,手でねじ込むことが可能であ

る。多少きつい箇所は,レンチを利用すれば施工可能である。レンチ

でもねじ込めない箇所があるが,主筋の折れ曲がりであり,専用治具

で矯正して施工可能である。 ・グラウト注入孔の最終位置は重要である。 ・フリージョイント専用のグラウト材を注入すること。エースジョイン

ト用との混用に注意する。 ⑪柱梁接合部内フープ配筋方法

・最下段のフープ 1 組は PCa 柱建方前に地上にて組み入れることとす

る。 ・ア.イ.を比較して,施工時間に大きな差異は認められない。イ.の場合,材

料を施工階まで準備する手間は省略した方がよいと思われる。 ・さらに挿入し易くして施工時間を短縮するために,構造設計者と協議

の上,接合部内のみフープ外径をかぶり厚さを確保しつつ大きくす

る。 ・逆梁部は,机上の計画に反し,施工に相当の時間を要する結果とな

る。 ①フープを割バンドとする必要があり,所定場所に挿入して仮結束し

ないとすぐバラバラになる。 ②逆梁(フル PCa)の上端主筋が固定状態なので,逆梁の中吊り状態で

割バンドを挿入する必要がある。 ③梁せいが異なる 2 本の逆梁が取り合っておりさらに煩雑である。 ④外周側に PCf 立ち上がりがあり,割バンドのクリップ接合が施工で

きる実質の作業空間が確保できない。 ・逆梁部は上端主筋が固定状態であることが原因で上記①~④について

施工困難と判断し,逆梁部においてもハーフ PCa 梁への設計変更を前

提とし,上端主筋を移動可能と想定して,再実験を行い以下の結果を

得る。 ①割バンドでなく閉鎖型で施工でき,挿入手間効率が格段に上がるう

え,仮結束も無くなる。 ②クリップ接合が不必要となる。 ③PCa 梁の中吊り状態での作業が無くなり,クレーンの稼働効率が上

がる。 ・逆梁部のフル PCa は,ハーフ PCa に設計変更することを協議する。

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実 験 項 目 実 験 結 果 および 考 察

⑫梁上端主筋配筋作業性

・梁軸方向の主筋の移動に,主筋下部に挿入した丸鋼は有効である。 ・継手作業の内,カプラーのグラウト注入孔の最終位置を確認する。 ・エースジョイント専用のグラウト材を注入すること。フリージョイン

ト用との混用に注意する。 ・柱梁接合部を跨いで挿入されている上端主筋を,交差する梁の建方時

に一旦片側に全数送り込む必要がある場合,梁上の欠き込み深さが浅

く,スムースに送り込めない。現状より,欠き込み深さを主筋径分程

度深くする必要がある。 ・上端主筋の移動順序を効率よくさせるために,全 X 方向梁の建方完了

後に,Y 方向梁の建方とはならない。上端主筋の移動を考慮した建方

順序を策定し,図面化する。 ・上端主筋の移動量が多い梁があり,効率が悪い。上端主筋継手位置を

増設する方向で再検討し,図面化する。

⑬柱梁接合部塞ぎ型枠材料比較

・鋼製型枠は,緊結用のボルト孔をルーズホールとし,PCa の製品誤

差・建方誤差などが吸収できるようにする。 ・柱梁接合部は型枠面積が小さいので,合板型枠とした場合は,材料の

補強が比較的多く,剛性を考慮するとセパレータが不可欠となり,鋼

製型枠に比べて煩雑である。 ・鋼製型枠用のライナーを専用に計画したが,PCa 梁受けアングルを架

設することとするので,梁受けと型枠受けの兼用アングルを計画す

る。写 8

⑭梁接合部型枠の施工方法

・梁底は合板,側面は鋼製の組み合わせとする。写 9 ・梁接合部長さおよび PCa 側面のインサートの間隔をさらに狭くして,

型枠長さを短くし軽量化する。 ・緊結用のボルト孔をルーズホールとし,PCa の製品誤差・建方誤差な

どが吸収できるようにする。 ⑮床立ち上がり部分・床打ち込み

金物の位置・異強度コンクリート

打ち分け位置墨出し方法

・床打ち込み金物の位置は,カラースプレーでスパンクリート上にマー

キングし,床立ち上がり部分・異強度コンクリート打ち分け位置はス

パンクリート上に線墨を打つ。 ⑯床立ち上がり部分の施工方法

・ア.イ.合板および鋼製型枠の場合,浮かし枠としての位置・高さ精度確

保が煩雑なことに加えて,解体手間,補修手間がかかる。

・ウ. PCa 製品は取付精度さえ確保できれば,解体手間もなく効率的であ

る。 ⑰床打ち込み金物の施工方法

・ア.スラブ筋止めはスラブ筋の振動により回転してしまう。

・イ.溶接箇所のみではスラブ歩行時にやや強度不足であり,溶接部が折

れた場合すぐに復旧できない。

・ウ.最も堅固である。

b. コンクリート打設実験

実 験 項 目 実 験 結 果 および 考 察

①80(N/mm2)コンクリートへの爆

裂抑制材混入確認

・爆裂抑制材の混入前後で,約 10cm のスランプロスを想定し練り混ぜ

を行い,1 台目では 6~7cm,2 台目では 2 バッチ目で混和材の添加量

を増やしたこともあり,2~3cm のロスとなる。

表 2 フロー試験結果 試験 試験 測定 経過時 スランプ 50cmF 停止時 空気 混和 CT 単位水量 備考

台数 時期 時間 間(分) フロー(cm) 時間(秒) 間(秒) 量(%) 材(%) (℃) (kg/m3)ベース(1B)練り上がりベース(1B)練り上

がり

1台目

2台目

10:50

11:10

11:32

11:51

0

20

0

19

74.5×74.0

68.5×67.0

75.0×73.0

72.0×71.0

4.3

4.8

5.2

5.1

51.3

43.4

76.9

71.5

0.9

1.3

0.9

1.3

1.85

同上

1.875

1.925

21.5

22

21.5

22

-

171.2

-

170.23

レンジ法

レンジ法

②FPC80(N/mm2)コンクリートの受

入検査

・今回は遠方にある実験場までの輸送ということで,荷卸しまで 3 時間

近くを要したが,スランプフロー,空気量とも,目標値を満足する結

果である。表 3 に検査結果を示す。写 10

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50

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

初流 中流 終流

繊維

量(kg/

m3)

図 5 爆裂抑制材の洗い試験結果

実 験 項 目 実 験 結 果 および 考 察

表 3 受入検査結果 試験 試験 測定 経過時 スランプ 50cmF 停止時 空気 混和 CT 単位水量 備考

台数 時期 時間 間(分) フロー(cm) 時間(秒) 間(秒) 量(%) 材(%) (℃) (kg/m3)荷卸し時

荷卸し時

13:30 160 5.4 40.2 1.6 同上

9 50.4 1.1 1.9

65.0×63.5 28 169.9 RI法

28.5 -14:35 183 62.0×61.0

1台目

2台目

③FPC80(N/mm2)コンクリートの運

搬および打ち込み

・ホッパーによる運搬,および選定した機種によるポンプ圧送性に問題

はない。 ・締め固め方法について,通常と同様で特筆すべき事項はない。

④柱梁接合部-梁床異強度コンク

リート打ち分け方法

・コンクリート止めクシのみ,コンクリート止めクシ+ラス網併用とも

に,ある程度コンクリートが仕切外に漏れ出るが,この方法で十分に

打ち分け可能である。また,エアチューブにも径に種類があり(実験で

はφ50,φ100),チューブ単独あるいはクシとの併用が効果的であ

る。写 11・12・13 ・実験当日の気候では,クシおよびエアチューブは柱コンクリート打設

後 15 分程度で,撤去可能である。(柱コンクリートの自立を確認)逆に,遅いと撤去しにくい。

⑤表面ひび割れ低減剤の有効性(鏝押さえ時)

・金鏝押えの施工性について,特に高強度コンクリート部分に関しては

材料の粘性が高いため、表面ひび割れ低減剤を散布した方が押え易

い。写 14 ・乾燥後,散布したスラブ北半分にはコンクリート表面に初期ひび割れ

は見られないが,散布しない南半分には長さ 50~100mm・巾 0.1mm程度のひび割れが全面に見られ,初期ひび割れ抑止に効果的である。

⑥PCa 柱-PCa 梁間のセメントペ

ースト漏れ止め方法

・梁受けアングルに隙間埋め材を貼った場合,貼らない場合に比べ漏れ

は防止できるが,隙間埋め材がコンクリートにくい込んでしまうとセ

メントペーストよりも取り除き難くなり,貼る位置精度に注意する必

要がある。 ⑦スパンクリート-スパンクリー

ト,スパンクリート-PCa 梁間の

セメントペースト漏れ止め方法

・スパンクリート同士間について,3 種類とも漏れ止めの効果は認めら

れるが,コーキングは材料費,エサフォームは施工手間がかかる。こ

れらと比較してガムテープが妥当と思われる。 ・スパンクリート-PCa 梁間はスパンクリートにむくりがあるため隙間

が生じ,何もしない部分は漏れが多い。ガムテープ貼りとしたいが,

撤去手間が発生するため監理者と協議の上,アルミテープ貼り(テープ

存置)を提案する。 ⑧型枠脱型後の表面性状 ・脱型後のコンクリート表面は空隙もなく、良好である。

・PCa 部材との境界に 5~6mm のズレが認められる。主要因は,型枠の

密着度不足および PCa 部材の建方精度と思われる。 ⑨FPC80(N/mm2)コンクリート中の

爆裂抑制材の混入状況

・爆裂抑制材の洗い試験の結果

を図 5 に示す。抑制材の量に

大きな差は見られず,アジテ

ータ車により十分分散してい

ることが確認できる。

⑩独立柱 FPC80(N/mm2)コンクリ

ートの温度履歴および硬化性状

・独立柱の温度履歴を図 6 に示す。最高温度は 71.2℃,温度上昇量は約

50℃である。 ・硬化コンクリート圧縮強度結果を表 4 に示す。管理強度 83N/mm2 に対

して標準養生材齢 28 日,コア供試体材齢 91 日いずれも 100N/mm2 程

度の強度を示しており,良好な強度発現が見られる。28S91 も設定の

3N/mm2 に対して,1N/mm2 程度の値である。コアの圧縮強度,ヤング

係数,単位容積質量の垂直方向の分布を図 7 に示す。

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超高層 RC 共同住宅の実大施工実験

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写真 1 柱PCa吊り治具 写真 2 柱PCa車上建て起こし

実 験 項 目 実 験 結 果 および 考 察

いずれも大きなばらつきはなく,均一に密実に打設できている。

図 6 独立柱の温度履歴

表 4 圧縮強度(N/mm2) (3台目) 材 齢

試験体種類 7 日 28 日 56 日 91 日

標準養生 72.4 101 106 115 コア供試体内側 -- -- -- 99.5 コア供試体外側 -- 90.2 95.6 100

0

500

1000

1500

2000

2500

80 100 120

圧縮強度(N/mm2)

高さ(m

m)

中心部角隅部

0

500

1000

1500

2000

2500

35 40 45 50

ヤング係数(×105)

高さ(m

m)

中心部

角隅部

0

500

1000

1500

2000

2500

2.30 2.40 2.50単位容積質量(t/m3)

高さ(m

m)

中心部

角隅部

図 7 コアの圧縮強度,ヤング係数,単位容積質量の垂直分布

独立柱コンクリート温度履歴

0

10

20

30

40

50

60

70

80

4月8日 4月10日 4月12日 4月14日 4月16日 4月18日 4月20日

温度

(℃

外気温

1600mm中心

1600mm外側

300mm中心

300mm外側

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写真 9 梁PCa接合部型枠 写真 10 FPC80Nコンクリート受入検査

写真 4 柱PCa水平位置決め治具写真 3 柱脚主筋長さの違い

写真 5 梁PCa吊り治具 写真 6 梁PCa受けアングル

写真 7 梁PCa接合部斜めサポート 写真 8 柱梁接合部鋼製型枠

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超高層 RC 共同住宅の実大施工実験

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写真 14 ひび割れ低減剤散布

写真 12 異強度コンクリート打ち分け(2)

写真 13 異強度コンクリート打ち分け(3)

写真 11 異強度コンクリート打ち分け(1)

5.まとめ 机上における検討を基に,PCa 建方関連・FPC 工

法コンクリート打設関連の実大施工実験を行い,以

下の知見が得られた。

・柱 PCa 建方においては,主筋高さが全て同一レ

ベルでも,建方時間に差異はない。

・梁 PCa の支持方法では,梁受けアングルを利用

することで平面位置精度確保に対して有効であり,

建方作業時間もかからないことから,クレーン稼働

効率向上にも貢献できる。ただし,梁中間接合部で

は,梁側に斜めサポートの架設が必須となる。梁受

けアングルは,柱幅まで長さを長くして,柱梁接合

部鋼製型枠のライナーを兼用すると効率的である。

・外周部妻側逆梁は,机上検討ではフル PCa とす

ることで現場工数が削減され工期短縮が見込まれた

が,計画案どおりの施工計画とするとクレーンの効

率が極めて悪い上に,柱梁接合部フープは,分割タ

イプにする必要があり,この場合フープ継手は PCf立ち上がり部により,作業スペースが確保できず物

理的に成立しない。フル PCa からハーフ PCa の変

更を提案する。

・梁上端主筋継手位置は,継手数量が最小となるよ

う計画したが,交差する梁 PCa 建方時に一時的に

移動させる量が多い部材が発生し,引き戻す手間も

加えて配筋工事が煩雑になる。継手位置の増設を検

討する必要がある。

・FPC80(N/mm2)コンクリートについて,初めての

採用であったが,爆裂抑制材の混入がな い

60(N/mm2)レベルの高強度コンクリートと同等の作

業性である。 ・異強度コンクリート打ち分け方法は,コンクリー

ト止めクシ+ラス網に適宜エアチューブを併用する

ことで打ち分け可能である。ただし,打設日の外気

温等を考慮して,クシおよびエアチューブの撤去時

間の管理が必要である。

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