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22回歯科医学会総会分科会プログラム シンポジウム 「歯の硬組織検査(ICDAS)に基づく齲蝕管理方法」 主催 一般社団法人日本口腔衛生学会 2012(平成24)年119日(金)14:0017:00 インテックス大阪2号館 ブースC

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第22回歯科医学会総会分科会プログラム

シンポジウム

「歯の硬組織検査(ICDAS)に基づく齲蝕管理方法」

主催

一般社団法人日本口腔衛生学会

2012(平成24)年11月9日(金)14:00~17:00

インテックス大阪2号館 ブースC

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【概要】

2009年にMI (Minimal Intervention)を理念としたう蝕治療ガイドラインが発表され、切削の基準が示

された。しかし、先進国は更に進んで「歯の硬組織検査(ICDAS)」を導入し、齲蝕を発症させない管理

システムを目指すようになっている。日本では関連学会が連携して「歯の硬組織検査と再石灰化促進治

療のガイドライン」を作成し、歯の硬組織検査とう蝕診断を医療保険に導入する必要がある。

【座長】

神原 正樹 (大阪歯科大学口腔衛生学講座)

花田 信弘 (鶴見大学歯学部探索歯学講座)

【内容・スケジュール】

1400-1405 「歯の硬組織検査(ICDAS)とフッ化物による再石灰化の意義:医療保険導入を目指して」

花田 信弘 (鶴見大学歯学部探索歯学講座)

1405-1420 「ICDASの歴史と展望:カリエスフリー社会を目指して」

神原 正樹 (大阪歯科大学口腔衛生学講座)

1420-1435 ICDAS(international caries detection assessment system)とは何か

土居 貴士 (大阪歯科大学口腔衛生学講座)

<途中休憩10分>

1445-1515 基調講演(1)「ICDASを利用したカリエスマネジメント」

杉山 精一 (医療法人社団清泉会杉山歯科医院)

1515-1545 基調講演(2) 「再石灰化理論に基づく初期齲蝕治療」

飯島 洋一 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科社会医療科学講座口腔保健学)

<途中休憩10分>

「歯の硬組織検査(ICDAS)に基づく齲蝕管理方法:これからの課題」

1555-1610 ICDAS in the Literature(文献の整理)

豊島 義博 (第一生命保険株式会社 日比谷診療所歯科)

1610-1625 フッ化物含有歯科材料を用いたう蝕ハイリスク部位の歯質強化および再石灰化療法

松久保 隆 (東京歯科大学衛生学講座)

1625-1640 QLFとICDASの関連

稲葉 大輔 (岩手医科大学歯学部口腔医学講座)

1640-1700 総合討論

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リスク評価に基づく齲蝕管理方法

鶴見大学歯学部探索歯学講座教授 花田信弘

「歯の硬組織検査(ICDAS)とフッ化物による再石灰化の意義:医療保険導入を目指して」

自然治癒のない齲窩(cavity)と自然治癒を含む齲蝕(caries)は異なる概念である。齲蝕の初期病変は脱

灰と再石灰化が繰り返される動的な平衡が脱灰に傾いた状態を指す。唾液中にはエナメル質の構成成分が含ま

れており、フッ化物を適確に応用すれば唾液が持つ再石灰化作用が促進され、脱灰した初期病変が再石灰化さ

れる。齲蝕の概念が変更されたため探針により齲窩を検出する検診システムは廃止され、視診で齲蝕の早期診

断をして、積極的にフッ化物による再石灰化治療を行うことになった。探針の廃止と同時に欧米では視診の見

直しがなされた。一部の先進国では新しい「歯の硬組織検査(International Caries Detection and Assessment

System: ICDAS)」を診療に導入し、齲蝕を発症させない管理システムを構築するようになっている。

ICDAS は画期的な検診と診断のシステムである。ICDAS では検診に先立って歯面清掃を行う事が求められる

からである。PMTC によって歯面バイオフィルムを除去しなければ診断を始めることができない。つまり、ICDAS

では検診の実施自体が疾病予防の価値を持つのである。

齲蝕と歯周病は様々な全身疾患を引き起す。歯面バイオフィルムの細菌は齲窩や歯周組織から日常的に血管

内に侵入して、血管にプラーク(粥腫)を形成する。そのため歯面バイオフィルムを除去しなければ全身の健

康を維持する事ができない。現在かかりつけ歯科医の制度的な確立が図られているが、歯科医院における定期

検診の実施とバイオフィルム除去は連動していない。医療保険の中に ICDAS を導入すれば、検診に先立って

PMTCが実施されるので、国民全体の歯と全身の健康度の向上が見込めるのである。

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第 22 回日本歯科医学会総会・分科会プログラム(日本口腔衛生学会)

「ICDAS の歴史と展望:カリエスフリー社会を目指して」

大阪歯科大学口腔衛生学講座

神原正樹

人々の口腔保健状態は,「オーラルヘルスアトラス,-世界の口腔健康関連地図―」(FDI;

2009)に示されているように,世界的に改善されてきていることは,明らかである.この

歯科疾患の罹患構造の変化は,過去 50年を振り返ってみても,とくに,齲蝕の罹患状態に

見られる齲蝕激増期から齲蝕減少期へのダイナミックな変動であり,この変動は他の疾患

に類を見ないほどの短期間で歯科界が獲得した歯科疾患減少の歴史である.一方,齲蝕学

の進展は,齲蝕減少をもたらしたとともに,健全歯増加という新たな健康な口腔への歯科

的課題に対し,各種方法を提示している現状である.その一例が,今回のシンポジウムに

示される ICDAS(International Caries Diagnosis and Assessment System;国際的齲蝕

診断・評価システム)である.このシステムは,これまで日本で用いられてきたWHOの

齲蝕診査基準の健全から Decayed 1(日本では C1(Caries1;エナメル質う蝕))をより詳し

く 3段階に分け診査しようとした齲蝕学のエビデンス(歯の表面の齲蝕進行プロセス)を

歯科臨床の場に導入しようとした診査方式である.この切削が必要な表層エナメル質の崩

壊(C1)前の段階を検出することにより,これも齲蝕学の重要なエビデンスである再石灰

を促進する処置で対応しようとするものである.

齲蝕診査基準については,ICDAS以外にも,Blackの齲蝕基準が公表されてから約 100

年が経過した今,齲蝕減少状態に対応した健全歯を観察しようとするものが提示されてい

る(図 1).ADA方式,ICCMS(International Caries Classification and Management

System)などである.

図 1 齲蝕診査基準の変遷 図 2 JADA 2012; 143(6): 546-551

( A new model for caries classification management: The FDI

World Dental Federation Caries Matrix, J Fisher, M. Glick)

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図 2に FDIがまとめた論文が,アメリカ歯科医師会雑誌に掲載されているので,参照していただきた久

思います(図 2~8).

図 3 基本的齲蝕分類 図 4 齲蝕分類システム 1

図 5 齲蝕分類システム 2 図 6 ICDAS, ADA and Sound

図 7 ICCMS 図 8 ICDASの展開

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図9に今年開催された第100回FDI香港大会で承認された政策声明を示した.FDIでは,

数年前から GCIとのプロジェクトを行ってきています.その目的は,図 11に示しますよう

に,世界から齲蝕の根絶をめざし,齲蝕の最新サイエンスと臨床現場とのギャップを近づ

けるなどである.その中で,ACCFでは,2026年に生まれた子供には,生涯を通じて齲蝕

を生じさせないことを目標として定めている(図 12).まさしく,齲蝕フリー社会を明確に

目指す社会の到来である.1994年,WHOのWorld Health Dayに「Oral Health」が主要

テーマに採択され,その際に「歯科疾患(齲蝕,歯周疾患)は予防できる」との明確なメ

ッセージが発信されて以来,約 20年経過し,Caries freeや Cavity free社会の創造という

形で現実のものになろうとしている.

図 9 FDIの政策声明 図 10 FDI の GCI活動

Classification of Caries Lesions of

Tooth Surfaces and Caries Management Systems

図 11 GCIの目的 図 12 ACCF ( Alliance for a cavity free

Future)

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さらに,FDIでは,齲蝕だけでなく,歯周疾患も口腔ガンも加え,一つの口腔の健康を

総合的にとらえる新たな考え方の GOHIMが検討されている(図 13).

図 13 GOHIM (Global Oral Health

Improvement Matrix)

日本においても,昨年「歯科口腔保健法」が施行され,国民皆保険 50年を迎えた今,歯

科医療を含めて,Caries freeや Cavity freeの日本社会を作るための働きかけを行っていく

時代になっているように思える.図 14に「歯科口腔保健法」の基本事項を審議する厚労省

の委員会において,この法律を意味あるものにするために述べた私の意見の冒頭に,むし

歯0(ゼロ)社会への転換を唱えた内容である.さらに,図 15に,このむし歯ゼロ社会に

必要な健全を対象にした健診システムを,これまでの疾患を対象にした健診システムの比

較を示した.当然,齲蝕の診査は,ICDASを採用しての診査である.

図 14 「歯科口腔保健法」への意見 図 15 健全と疾患を対象にした健診

しかし,ICDASの齲蝕診査システムが,日本の歯科界に普及していくためには,まだま

だ多くの課題がある(図 16).ICDASによる健診データの集積,DMF方式との比較,ど

のように指標化するのか,さらに初期齲蝕の活動性をどのように評価するのか等々である.

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図 16 ICDASの課題 図 17 ICDASの意味

11 月 8 日のいい歯の日に,日本歯科医師会が全国紙にキャンペーン広告を掲載した.タ

イトルは,健康な歯と歯ぐきのために,「歯周病」ケアを始めようである.この中に,「成

人の約 8 割は歯周病に罹患しており,その患者数の多さから国民病といわれています.初

期段階は目立った自覚症状はなく,自分が歯周病であることに気付かない人も多いので

す.・・・,・・・歯周病の主な原因は,プラーク(歯垢)に含まれる歯周病菌であると記

載されている.このことを振り返って考えてみると,約 50年前齲蝕についても同じことが

言われていたことに気付く.齲蝕の罹患率は 90%を超え,国民病であり,文明病であると

いわれていた.齲蝕の主要原因はプラークであり,ミュータンス菌であり,プラークコン

トロールが必要であると.その後齲蝕はフッ化物という武器を持ち,疾患自体は減少傾向

にある.Cariologyの進展により,今は文明により齲蝕は減少するとの認識である.その結

果として,ICDASのようなこれまでの健全歯を診る齲蝕診断方法が出現し,新たな局面を

向かえようとしている(図 17).

これらの新たな潮流が,健康で,豊かで,健康格差のないWell-beingな日本社会を作っ

ていくことへの歯科からの貢献に繋がるものと思われる.

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International Caries Detection and Assessment System(ICDAS)とは?

土居貴士,神原正樹

(大阪歯科大学口腔衛生学講座)

はじめに

臨床や多くの疫学調査では実質欠損の有無や治療の痕跡等を診査し,患者や被験者のう蝕経験によってう蝕

の罹患状態が表現される.近年,欧米先進諸国においてう蝕の減少している1).我が国においても,2011年歯

科疾患実態調査では12歳児のDMFT indexが1.4歯に減少している2).う蝕減少の背景にはフッ化物応用の普及

や口腔保健行動が普及・定着したことなどが報告されているが3),う蝕の発生・進行プロセスが明らかにされ

たことが最も大きな要因であると考えられる.しかし,PittsはThe Iceberg of Dental Cariesを用いて,DMFT

indexで表わされるう蝕は減少しているが臨床的に検出されるう蝕は氷山の一角であり,水面下には存在する

潜在的なう蝕(初期う蝕)を検出・管理することが重要であると提唱している4).

現在のう蝕の診断基準は実質欠損の有無に基準が置かれており,う蝕の発生・進行プロセスを評価する診断

基準ではない.2002年に開催されたInternational Consensus Workshop on Caries Clinical Trial(ICW-ICT)

においても「現在のう蝕診断基準は時代遅れのものとなりつつあり,う蝕の発生・進行プロセスを評価する新

しい診断基準の開発が必要である」と結論づけている4).また,FDIも新しいう蝕の診断基準の必要性につい

て見解を出しており,新しいう蝕の診断基準に求められる条件として以下の事を挙げている.

・科学的な根拠に基づいている

・健全からう蝕までの進行過程を評価できる

・う蝕活動性を評価できる

・う蝕管理のために質のよい情報が得られる

・臨床応用だけでなく,集団にも応用できる

このような背景の中で欧米のカリオロジーの専門家が中心となってICDAS Coordinating Committeeが設立さ

れ,新しいう蝕の診断基準であるInternational Caries Detection and Assessment System(ICDAS)が発表

された3).ICDASが発表された後も,診査基準の妥当性などが議論され,2005年に開催されたWorkshopにおい

てICDAS Ⅱが発表された.

ICDASとは

ICDASはEkstrandらが考案した歯冠部う蝕の診断基準5)をベースに考案された.ICDASの名称が示すように,

う蝕の診査を検出(Detection)と活動性の評価(Assessment)の二つの視点によって行うものである.検出

とは歯面を健全・初期う蝕・う蝕のどの状態であるか診査すること,修復物やシーラントの状態,喪失歯では

原因を診査する.

一方,評価とは検出されたう蝕の活動性を診査することである.すなわち,検出された初期う蝕が将来う蝕

に進行するのか,健全に回復するのかを診査し,その結果をう蝕予防や健康増進プログラムの実践に用いるこ

とである.

ICDASによる診査方法

診査対象部位の選択および歯面清掃 診査を開始するにあたり,まず初めに診査対象部位の選択を行う.歯単位の診査を行うのか,歯面単位の診

査を行うのかを決定しなければならない.また歯面単位の診査を行う場合,一つの歯面の中で診査対象になる

部位を決める必要がある.すなわち,大臼歯の咬合面であれば近遠心の裂溝ごとに,また大臼歯の頬(口蓋・

舌)側面では溝と歯頚部のように細かく対象部位を分けて診査を行う.

次に診査対象部位が決定した後,対象部位の機械的清掃を行い着色,プラークおよび歯石などの除去を行う.

この際,後述するう蝕活動性を評価するために歯垢の付着部位を確認しておく必要がある.

診査結果の記入方法 ICDAS-Ⅱでは診査結果を2桁の数字によってコード化する.10の桁には表1「restoration/sealant coding

system」に示される基準に従って診査結果を記入する.この基準は対象部位のシーラントの状態,修復物の種

類,喪失の原因,萌出または未萌出の状態を示している.

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表1 restoration/sealant code

Code Description Code Description

0 No restoration 7 Lost or broken restoration

1 Sealant, partial 8 Temporary restoration

2 Sealant, full 9 Used for the following condition

3 Tooth colored restoration 96 Tooth surface cannot be examined:

surface excluded

4 Amalgam restoration 97 Tooth missing because o caries

5 Stainless steel crown 98 Tooth missing for reasons other than

caries

6 Porcelain or gold or PFM crown or veneer 99 Unerupted

次に1の桁には以下に示す診査基準による結果を記入する.

ICDAS-Ⅱの診査基準 ICDAS-Ⅱの基本的なエナメル質の診査基準を表2に示す.この基準をベースに臼歯咬合面の小窩裂溝部の診

査基準,隣接面の診査基準,平滑面の診査基準が決められている.

表2 ICDAS-Ⅱのエナメル質の基本的診査基準

Code Description

0 Sound

1 First visual changes in enamel (seen only after prolonged air drying or restricted to

within the confines of a pit or fissure)

2 Distinct visual changes in enamel

3 Localized enamel breakdown (without clinical visual signs of dentinal involvement)

4 Underlying dark shadow from dentin

5 Distinct cavity with visible dentin

6 Extensive distinct cavity with visible dentin

以下に各部位の診査基準の詳細を示す.

歯冠部の診査基準 *小窩裂溝 Code0:健全歯面

う蝕による変化が認められない.エアーによる乾燥後もエナメル質の色調変化が認めらない.また,形成不

全,エナメル質の過石灰,歯のフッ素症,咬耗,摩耗,外来性色素沈着およびErosionはCode0に分類される.

Code1:エナメル質に認められる最初の視覚的変化

歯面がWetな状態ではう蝕のサインとなるエナメル質の色調変化が認められないが,エアーシリンジを用い

て歯面を5秒間乾燥させた後,健全エナメル質とは異なった色調変化が認められる.

健全なエナメル質には認められないう蝕による色調変化が小窩裂溝に限局して認められる.

Code2:歯面がWetな状態で認められるエナメル質の明確な視覚的変化

歯面がWetな状態であっても小窩裂溝よりも広い幅で健全エナメル質とは異なった乳白色や茶色の色調変化

が認められる.

Code3:う蝕による初期のエナメル質喪失(象牙質は視認できない)

歯面がWetな状態であっても乳白色や茶色の色調変化が小窩裂溝よりも広い幅で明確に認められる.歯面を

乾燥させた後にエナメル質の喪失が小窩裂溝の入口に認められる.またエナメル質脱灰の影響が小窩裂溝に認

められるが,象牙質は視認できない.

視診のみでCode3を確認できない場合,WHO periodontal probeによる触診を行うが,この際,歯質を破壊

しないようにprobeをスライドさせてエナメル質の喪失を確認する.

Code4:象牙質の色調変化

う蝕による象牙質の色調変化(grey,blueまたはbrown)がエナメル質を透けて認められる.しかし,象牙

質は視認することができない.この変化は歯面が湿っている状態の方が確認しやすい.

Code5:象牙質が視認できる明確なう蝕

歯面がWetな状態で象牙質の暗色化が視認でき,歯面乾燥後,歯質の崩壊が小窩裂溝に認められる(frank

cavitation).また,象牙質の色調変化が小窩裂溝に沿って認められるとともに,エナメル質の崩壊も認めら

れる.

う窩が象牙質に達しているか否かを確認するためにWHO periodontal probeを用いるが,歯質を壊さないよ

うに細心の注意をはらう必要がある.

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Code6:象牙質が視認できる広範囲にわたる明確なう蝕

う窩の窩底と窩壁に象牙質が視認されるう蝕.または歯髄に達するう蝕.

*近心面および遠心面の診査基準 隣接面の視診を咬合面,頬側面および舌側面から行う際の診査基準

Code0:健全歯面

う蝕による変化が認められない.エアーによる乾燥後もエナメル質の色調変化が認めらない.また,形成不

全,エナメル質の過石灰,歯のフッ素症,咬耗,摩耗,外来性色素沈着およびErosionはCode0に分類される.

Code1:エナメル質に認められる最初の視覚的変化

隣接面を頬側面または舌側面から診査した場合,歯面が湿った状態ではう蝕のサインとなるエナメル質の色

調変化が認められないが,エアーシリンジを用いて歯面を5秒間乾燥させた後,健全エナメル質とは異なった

色調変化が認められる.

Code2:歯面がWetな状態で認められるエナメル質の明確な視覚的変化

歯面がWetな状態であっても小窩裂溝に健全エナメル質とは異なった乳白色や茶色の色調変化が認められる.

この色調変化は頬側面または舌側面から直接視認されか,咬合面からは影のように認められる.

Code3:う蝕による初期のエナメル質喪失(象牙質は視認できない)

約5秒間の歯面乾燥を行った後,頬(唇)側面または舌(口蓋)側からエナメル質の明確な喪失が直接視認

される.

疑わしい場合や視診の結果を確認する場合,WHO periodontal probeによる触診を行うが,この際,歯質を

破壊しないようにprobeをスライドさせてエナメル質の喪失を確認する.

Code4:象牙質の色調変化

う蝕による象牙質の色調変化(grey,blueまたはbrown)がエナメル質を透けて認められる.しかし,象牙

質は視認することができない.この変化は歯面が湿っている状態の方が確認しやすい.

Code5:象牙質が視認できる明確なう蝕

象牙質の露出を伴ったエナメル質の色調変化.

疑わしい場合や視診の結果を確認する場合,WHO periodontal probeによる触診を行うが,この際,歯質を

破壊しないようにprobeをスライドさせてエナメル質の喪失や象牙質の露出を確認する.

Code6:象牙質が視認できる広範囲にわたる明確なう蝕

う窩の窩底と窩壁に象牙質が視認されるう蝕.または歯髄に達するう蝕.

*頬側面および舌側面の診査基準 Code0:健全歯面

う蝕による変化が認められない.エアーによる乾燥後もエナメル質の色調変化が認めらない.また,形成不

全,エナメル質の過石灰,歯のフッ素症,咬耗,摩耗,外来性色素沈着およびErosionはCode0に分類される.

Code1:エナメル質に認められる最初の視覚的変化

歯面が湿った状態ではう蝕のサインとなるエナメル質の色調変化が認められないが,エアーシリンジを用い

て歯面を5秒間乾燥させた後,健全エナメル質とは異なった色調変化が認められる.

Code2:歯面がWetな状態で認められるエナメル質の明確な視覚的変化

歯面がWetな状態であっても小窩裂溝に健全エナメル質とは異なった乳白色や茶色の色調変化が認められる.

また,色調変化は歯頚部から1㎜以内の範囲に認められる.

Code3:う蝕による初期のエナメル質喪失(象牙質は視認できない)

約5秒間の歯面乾燥を行った後,エナメル質の明確な喪失が直接視認されるが象牙質は視認できない.

疑わしい場合や視診の結果を確認する場合,WHO periodontal probeによる触診を行うが,この際,歯質を

破壊しないようにprobeをスライドさせてエナメル質の喪失を確認する.

Code4:象牙質の色調変化

う蝕による象牙質の色調変化(grey,blueまたはbrown)がエナメル質を透けて認められる.しかし,象牙

質は視認することができない.この変化は歯面がWetな状態の方が確認しやすい.

Code5:象牙質が視認できる明確なう蝕

象牙質の露出を伴ったエナメル質の色調変化.

疑わしい場合や視診の結果を確認する場合,WHO periodontal probeによる触診を行うが,この際,歯質を

破壊しないようにprobeをスライドさせてエナメル質の喪失や象牙質の露出を確認する.

Code6:象牙質が視認できる広範囲にわたる明確なう蝕

う窩の窩底と窩壁に象牙質が視認されるう蝕.または歯髄に達するう蝕.

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*修復物およびシーラント処置が施された歯面の診査基準 Code0:健全歯面

歯面と修復物およびシーラントの間のギャップが0.5mm以内であり,歯面にもう蝕による変化が認められな

い.エアーによる乾燥後もエナメル質の色調変化が認めらない.また,形成不全,エナメル質の過石灰,歯の

フッ素症,咬耗,摩耗,外来性色素沈着およびErosionはCode0に分類される.

Code1:エナメル質に認められる最初の視覚的変化

歯面がWetな状態ではう蝕のサインとなるエナメル質の色調変化が認められないが,エアーシリンジを用い

て歯面を5秒間乾燥させた後,健全エナメル質とは異なった色調変化が認められる.

Code2:歯面がWetな状態で認められるエナメル質の明確な視覚的変化

修復物の辺縁がエナメル質の場合:

歯面がWetな状態であっても小窩裂溝に健全エナメル質とは異なった乳白色や茶色の色調変化が認められる.

修復物の辺縁が象牙質の場合:

歯面がWetな状態であっても健全な象牙質やセメント質には認められない色調変化が認められる.

Code3:Code2の条件+修復物およびシーラントと歯面の隙間が0.5mm以下の場合

修復物およびシーラントと歯面の隙間が0.5mm以下であり,健全歯面には認められず,脱灰または象牙質の

変色に起因する色調変化が認められる.

Code4:象牙質の色調変化を併発した二次う蝕

歯の表面はCode2と同様の色調変化が認められ,また象牙質の色調変化(grey,blueまたはbrown)がエ

ナメル質を透けて認められるが,象牙質は視認できない.この変化は歯面がWetな状態の方が確認しやすい.

アマルガム充填されている場合ではアマルガムの影と鑑別しなければならない.

Code5:象牙質が視認できる明確なう蝕

象牙質に達する実質欠損を伴ったう蝕.Code4のような色調変化に加え,修復物と歯質の間に0.5mm以上の

隙間が認められる.

修復物の辺縁が目視できない場合,WHO periodontal probeを用いて触診によって辺縁の非連続性や象牙質

が触知できる.

Code6:象牙質が視認できる広範囲にわたる明確なう蝕

う窩の窩底と窩壁に象牙質が視認されるう蝕.または歯髄に達するう蝕.

以上がICDAS-Ⅱによるエナメル質の診査基準である.図1に診断基準の考え方を示す.

図1.Decision tree for primary coronal caries detection

*根面の診査基準 根面を診査した結果,1根面に対して以下に示す1つのコードを診査結果として用いる.頬(唇)側面,口

蓋(舌)側面,近心面および遠心面それぞれについて診査を行う.

また,歯石沈着が認められる場合は歯石除去後に根面の状態を診査する.

Code E

歯肉退縮がなく根面が目視できない.

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Code0

根面にう蝕を疑う色調変化が認められない.また,限局した根面の喪失が認められたとしても,その喪失が

う蝕のプロセスによるものでない場合,例えば摩耗やErosionの場合はCode0に分類される.

Code1

根面やセメント・エナメル境に限局した色調変化(dark,brown,black)が認められるが,実質欠損(0.5mm

以上の深さ)が認められない.

Code2

根面やセメント・エナメル境に限局した色調変化(dark,brown,black)が認められ,0.5mm以上の深さの

実質欠損が認められる.

図2に根面を診査する場合の考え方を示す.

図2.Decision tree for primary caries on the root surface

*修復物およびシーラント処置が施された根面の診査基準 修復物が認められる場合も診査基準は先述した根面の診査基準に準じる.図3にフローチャートを示す.

図3.Decision tree for caries association with root restorations

う蝕活動性の評価

う蝕活動性の評価基準は1999年にNyvadらが発表したう蝕活動性の評価基準6)を改良し,視覚的変化,触診

および歯垢の付着状態により行う.

歯冠部のう蝕活動性の評価 *Active Lesion Code1~3:明確な白斑や黄色身がかった白斑として検出される.触診の結果,表層にザラツキ感が触知でき

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る.部位は小窩裂溝,歯頸部および隣接面の歯垢が付着しやすい部位に認められる.

Code4:全てのCode4はActive Lesionである.

Code5~6:触診の結果,う窩の窩底や窩壁にザラツキ感や軟化感が触知できる.

*Inactive Lesion Code1~3:白斑が茶色味または黒味がかった色調である.触診の結果,表面が滑沢であり,平滑面では歯頸

部から離れた位置に認められる.

Code5~6:触診の結果,う窩の窩底や窩壁が硬く,滑沢である.

根面のう蝕活動性の評価 根面に検出されたCode1および2の歯面はその形状や視診による評価,および硬さなどからう蝕活動性を判

定する.図4に判定のためのフローチャートを示す.

図4.Decision tree for root caries activity

まとめ

ICDAS-Ⅱはエビデンスに基づいてう蝕の発生および進行プロセスを評価する診査基準であると考えられる.

しかしながら,根面カリエスに対する診査基準の信頼性や妥当性を検討したデータがないことや,隣接面う蝕

の診査にも問題があることが言われている7).また,う蝕の評価に関する評価基準も信頼性や妥当性を検討し

た報告がないのが現状である.今後,根面の診査基準やう蝕活動性の評価基準に関するエビデンスの構築が必

要である.

参考文献

1)Kaste LM, Selwitz RH, Oldakowski RJ, Brunelle JA, Winn DM, Brown LJ:Coronal caries in the primary

and permanent dentition of children and adolescent 1-17 years of age:United States. J. Dent Res.

631-641 1996.

2)平成23年歯科疾患実態調査 結果の概要について.

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-23-02.pdf

3)神光一郎,上根昌子,小室美樹,河村泰治,中川哲也,三宅達郎,神原正樹:わが国の齲蝕減少に影響を

与えている社会経済的要因についての検討.口腔衛生学会 57:438,2007.

4 ) Nigel B. Pitts : Review of the ICW-CCT Meeting, the importance of Early Detection and

Philosophy/Approach of ICDAS (International Caries Detection & Assessment System). Early Detection

of Dental Caries Ⅲ 1-17,2005.

5)Ekstrand KR, Ricketts DN, Kidd EA:Reproducibility and accuracy of three methods for assessment

of demineralization depth of the occlusal surface: an in vitro study. Caries Res 31: 224-231, 1997

6)Nyvad B, Machiulskiene V, Baelum V: Reliability of a new caries diagnostic system differentiating

between active and inactive caries lesions. Caries Res 252-260, 1999

7)A.I. Ismail, W. Sohn, M. Tellez, A. Amaya, A. Sen, H. Hasson, N.B. Pitts:The International Caries

Detection and Assessment System (ICDAS): an integrated system for measuring dental caries.

Community Dent Oral Epidemiol 170-178, 2007.

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ICDASを利用したカリエスマネジメント

医療法人社団清泉会杉山歯科医院 杉山精一

小児若年者のう蝕は減少してきているが、しかし、日々の臨床では、う蝕治療は相変わらず大きな割合を占

めている。成人以降の治療の半数近くは、充填物や補綴物の脱離やそれらによる二次的な疾患によるものであ

り、小児若年期にいかに健全な歯質を保存できるかが、生涯の口腔の保健に大きな影響を与えていることを開

業医として実感している。

私の医院では、15年ほど前から、う蝕治療の診療方針の転換をはかり、定期的にリスクアセスメント、口腔

内写真による記録、レントゲン検査を実施して、歯質の保存を第一に考えたう蝕治療(カリエスマネジメント)

を行ってきている。これらのデータは、すべてデータベースに記録し評価を行っている。その結果、歯質の保

存を第一に考えた診療方針で定期的に管理することにより、切削治療はかなり減少できることを臨床結果とし

て確認している。(1)(2)

カリエスマネジメントでは、初期病変を的確にDetectionして記録することが大事である。残念ながら、現

在、日本のう蝕治療で使われているC1~C4, COは、そのような目的に適していない。ICDASは、視診による歯面

の診査コードであり、特にう窩が出来る前の初期病変を詳細に分類しているのが特徴である。私の医院では、

2009年からICDASを臨床に導入し、患者さんへの説明、院内のの情報共有として活用し、カリエスマネジメン

トには必須のツールであると実感している。しかし、導入にあたっては、事前の研修、診査時間の確保などの

問題もある。2010年と2011年に日本ヘルスケア歯科研究会では、ICDASの臨床導入についての問題点などを把

握する調査を行い(3)~(5)問題点をあきらかにした。今後、このような問題点を解決して、ICDASを利用したカ

リエスマネジメントを日本で広く普及させる必要があると考えています。

参考文献

1) 杉山精一 杉山歯科医院における定期予防管理の結果から長期管理の効果を予測する:最終メインテナン

ス年齢19歳以下・5年以上来院者を対象とした調査, J Health Care Dent. 2004; 1: 11-16

2) 藤木省三、杉山精一 診療機関における子供の定期管理のう蝕予防成績に関する調査報告, J Health Care

Dent. 2006; 1: 38-45

3) 日本ヘルスケア歯科研究会ICDAS部会 杉山精一 林美加子, ICDASの認知度と導入における問題点に関す

る調査(第1報), J Health Care Dent. 2010; 12: 6-12.

4) 日本ヘルスケア歯科研究会ICDAS部会 杉山精一 林美加子, ICDASの認知度と導入における問題点に関す

る調査(第2報),J Health Care Dent. 2012; 13: 48-52

5) 日本ヘルスケア歯科研究会ICDAS部会 杉山精一 林美加子 高木景子ICDASを取り入れた新しいう蝕治療

マネジメント その日本における普及に向けた問題点把握のための調査, J Health Care Dent. 2012; 13:

36-47

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1

再石灰化理論に基づく 初期齲蝕治療

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科口腔保健学 飯島洋一

1

齲蝕誘発性の評価項目

健全エナメル質 ● 健全歯質の強化

口腔細菌の吸着 ● 初期付着能

● バイオフィルム形成能

口腔細菌の固着

● 糖質の種類

食品の摂取

● 酸産生能

●菌体外多糖形成能

酸産生

歯垢pHの低下 ● 緩衝能

初期う蝕病変 ● 再石灰化ミネラルの

量と質(in vivo)

初期う蝕

● 臨床疫学調査

歯質の脱灰・再石灰化 ● 再石灰化促進能

● 脱灰抑制能 (in situ)

SurrogateからTrue endpoint MI Dentistry

フッ化物は必須

2

3

エナメル質の初期齲蝕

表層下脱灰病変の特徴(臨床的には白斑)

1)表面の連続性 2)酸は浸透 口腔細菌の侵入はない 3)表層下でCa/P 濃度を長期維持可能

MR像

3 4

再石灰化期間 > 脱灰期間 低濃度高頻度

Iijima et al J Dent Res1988;

67: 577‐581

In vitroからは3倍長い期間

エナメル白斑; WSの耐酸性(in situ)

0

20

40

60

80

100

0 200 400 600 800 1000

Mineral vol%(Baseline)

Mineral vol%(After 2 weeks)

Min

era

l v

ol%

Depth (µm)

Iijima et al: Caries Res 2000; 34: 388 - 394

フッ化物応用由来のWS 2倍の耐酸性

5

セルフケアとして応用されるフッ化物 ●フッ化物配合歯磨剤の予防効果について

主要な結果:74の論文を採択し、データ分析に供したのは70の研究であり、

被験者総数は42,300名であった。

データ分析に供した70の研究の結果:D(M)FSの予防効果の推定値は24%(95%の信頼区間、21-28%、p<0.0001)であることを示す。

出典【http://www.mrw.interscience.wiley.com/cochrane/clsysrev/articles/CD002278/frame.html】

データ分析に供した53の研究の結果:D(M)FTの予防効果の推定値は23%(95%の信頼区間、19-28%、p<0.0001)であることを示す。

6

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2

年齢に応じた

歯磨剤量の

選択

1 2

歯磨剤を歯面全体に広

げる

2分間歯みがきが重要

歯磨剤での泡立ちを保つ、必要以上に吐き

出さない

上手なフッ化物配合歯磨剤の使い方研究が行われた地域の名前をつけてイエテボリテクニックといわれる 出展:Caries Res. 29;435-441,1995.

10mlの水で

洗口

5 6

1分間程度 ブクブクうがい

吐き出した後うがいはしない

2時間は飲食をしない

7

フッ化物局所応用の効果についてD(M)FS指標の推定値

―プラシーボやフッ化物非使用群との比較―

フッ化物配合 歯磨剤(70)* 24% 21-28%

バーニッシュ(7) 46% 30-63%

フッ化物ゲル(23) 28% 19-37%

フッ化物洗口(34) 26% 23-30%

各種フッ化物(研究数) 予防効果 95%信頼区間

*プラシーボと比較、その他のフッ化物応用剤との組み合わせ効果あり

コクランレビューでのフッ化物局所応用による介入成果 第一に、介入による予防効果は認められたか。第二に、安全であったか。最後に、利用可能であるか。

8

フッ化物配合歯磨剤の単独使用とフッ化物配合歯磨剤+他のフッ化物

局所応用製剤(バーニッシュ、ゲル、洗口)との組み合わせによる予防効果

データ分析に供した9

研究の結果:D(M)FS

の予防効果の推定値は10%(95%の信頼区間、2-17%、p<0.01)であることを示す。

洗口との組み合わせ(5研究):効果の推定値は7%。P=0.06

ゲルとの組み合わせ(3研究) :効果の推定値は14%。P=0.2

バーニッシュとの組み合わせ(1研究) :効果の推定値は48%。P=0.009

ゼロを境に右が好ましい組み合わせ効果を示す

【各種フッ化物応用法の組合せ効果】

9

【メカニズムについて】WFnist 関係者は?

J Public Health Dent, 1993;53(1),17-44.

Mechanisms of action of

Fluoride in Drinking water

フッ化物のメカニズムに関する研究は健全歯での高濃度フッ化物の生成(全身的効果)から低濃度のフッ化物が口腔環境に常在していること(局所的効果)と再石灰化に果たす役割に転換した。フッ化物特別委員会は萌出前のフッ化物取り込み理論は価値を下げたと言及。 10

11

フッ化物の作用機序は脱灰(歯垢)‐再石灰化(唾液・歯質)を通じた再石灰化ミネラルの形成を主体とする局所作用が中心で、健全なHAのOH基へのFイオンの置換作用としてのFAの形成ではない。

【2011】 Topical Use of Fluorides for Caries Control.

pp 115-132.

The current scientific consensus regarding

a constant supply of low levels of fluoride,

especially at the biofilm/saliva/ dental

interface (topical effect), as being the most

beneficial in preventing dental caries .

Therefore,the classification of the methods

of fluoride delivery into topical and systemic

has been recently questioned.

う蝕予防に最も効果があるのは、バイオフィルム/唾液/歯質の界面への低濃度フッ化物の恒常的な供給である(局所効果)。そうなると、全身的、局所的というフッ化物応用法の分類には疑義が唱えられている。

Ca2+

F-

CaF2 CaF2

Ca2+

F-

HPO4 2-

Ca2+ HPO4

2- F-

唾液

口腔内環境でCaF2が少しずつ溶け出し、低濃度のフッ化物イオン、Ca

イオンを提供し、脱灰部を唾液成分のCa・HPO4イオンとともに修復する。

唾液ならびにフッ化物応用を通じた再石灰機構の模式図

CaF2

反応生成物CaF2は口腔内

環境では、唾液由来のタンパク質とリン酸、さらに歯垢に覆われている。pHが低下すると溶出し低濃度フッ化物イオンとして作用する。

CaF2様物質

歯質の状況によって異なる作用

【歯質とフッ化物の作用】

健全部の脱灰抑制

脱灰部の再石灰化促進

再石灰化部の耐酸性付与

12

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3

歯質の状況によって異なる作用

【歯質とフッ化物の作用】 【健全部の脱灰抑制】

【脱灰部の再石灰化促進】

【再石灰化部の耐酸性付与】

D

E

13 デンタルダイヤモンド社2010年発行

14

う窩

脱灰病変 回復

健全

初期齲蝕はReversible Caries

進行

進行停止

回復

初期う蝕:3つの反応様式

14

特定保健用食品の再石灰化 あるいは耐酸性に関与する成分

再石灰化・耐酸性関与成分 食品形態 製品例

CPP-ACP ガム (乳タンパク分解物-非結晶性リン酸カルシウム)

CaHPO4 – 2H2O ガム (第二リン酸カルシウム)

Funoran

(フノリ抽出物)

POs-Ca ガム (リン酸化オリゴ糖カルシウム)

お茶抽出物中のフッ化物 ガム

(緑茶フッ化物)

リカルデント

キシリトール

ポスカム

キシリッシュ

プラスエフ

15

CPP-ACPについてのSurrogate EndpointからTrue Endpoint

In situ 再石灰化促進

耐酸性能

In vitro 脱灰抑制

In vitro 再石灰化促進

RCT う蝕の回復促進

う蝕の進行抑制

Animal study う蝕抑制 In situ

脱灰抑制

Case-Control study

Cohort study

RCT

Case Reports/Case Series

Biologically Plausibility Animal study/Bench research/Expert opinion

16

【脱灰状態】

【再石灰化状態】

【酸浸漬後8時間】

【酸浸漬後16時間】

再石灰化能評価の情報リンク Surrogate EndpointからTrue Endpoint

In situ 再石灰化と耐酸性

Caries Res.

38(6): 551-

556, 2004.

右側がCPP-ACPガム

左側は対照ガム

17

特定保健用食品での耐酸性層の例

CPP‐ACPガムで再石灰化後、 再度、酸に16時間浸漬後

出典:Iijima Y et al, Caries Res, 38(6), 2004

control cpp-acp

緑茶抽出ガムで再石灰化後、 再度、酸に3日間浸漬後

出典:須山ら, 健康・栄養食品研究, 10(3/4), 2007

Suyama E, Iijima Y, et al: Remineralization

and acid resistance of enamel lesions after

chewing gum containing fluoride extracted

from green tea. Aust Dent J. 56(4):394-

400. 2011. 18

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4

Regression of post-orthodontic lesions by a remineralizing cream:再石灰化クリームによる歯科矯正由来ホワイトスポット病変の回復 J Dent Res. 2009 Dec;88(12):1148-53. 2009. D.L. Bailey, G.G. Adams, C.E. Tsao, A. Hyslop, K. Escobar, D.J. Manton, E.C. Reynolds*, M.V. Morgan.

19

3か月期間で

初期齲蝕の

31%が回復

矯正治療直後の初発の脱灰性病変

050210

拡大

20

矯正治療後の各個トレーによるセルフケア 再石灰化治療後(フッ化物配合歯磨剤+MIペースト)

050609

拡大

21

再石灰化処置前 再石灰化処置後

4/23フッ素塗布+MIペースト、4/30 フッ素塗布+MIペースト、5/02 MIペースト、5/08 MIペースト、 5/14 MIペースト、5/28

フッ素塗布+MIペースト、7/2フッ素塗布+MIペースト、その後、定期健診へ

家庭ではフッ素入り歯磨剤(2回以上/day)+フッ素洗口を実施 22

DM

FS

0

DM

FS

2

DM

FS

4

DM

FS

6

dfs

0 dfs

3

dfs

6

dfs

9

dfs

12

dfs

16

4

3

21

4

1

3

1 2

8

4

1

1 3

9

4 3

2 210

5

1 0

1 5

2 0

2 5

3 0

3 5

4 0

4 5

度 数

d f s と D M F S と の 関 連

d f s 0

d f s 1

d f s 2

d f s 3

d f s 4

d f s 5

d f s 6

d f s 7

d f s 8

d f s 9

d f s 1 0

d f s 1 1

d f s 1 2

d f s 1 4

d f s 1 5

d f s 1 6

d f s 1 9

d f s 2 1

乳歯の齲蝕状態(dfs)と,Professional careとSelf care後の永久歯の齲蝕の状態(DMFS)の関連性

80%のCaries Free (口腔衛生会誌、55(5), 625,2005.)

3歳6か月までにフッ化物の使用開始 オッズ比2.50 (p<0.01)

エナメル白斑(White Spot)の 有無 オッズ比4.34 (p<0.07)

再石灰化治療

1) 定期的なフッ化物応用

(プロフェッショナルケア+セルフケア)

2)再石灰化促進効果のある製品や

特定保健用食品の活用(Ca,P,F)

3)十分な再石灰化期間

(安静唾液:唾液は液体エナメル質 )

-初発の脱灰病変の改善矯正治療後-

24

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「ICDAS in the Literature(文献の整理)」

豊島 義博 (第一生命保険株式会社 日比谷診療所歯科)

ICDASについてPubMed検索を行い、その結果をまとめ、若干の考察を加えた。

検索実施日は2012/10/29 である。検索用語は「ICDAS」である。この用語はまだMesh Termには登録され

ておらず、Free Termである。93の文献がヒットし、うち20文献はタイトルにICDASを含んでいた。最初の文

献は2004年のPitts N.による総説である。2006年以降急速に論文数が増えている。使いはじめてまだ日が浅い

用語であり、citationをたぐっても追加の論文は見当たらない。当面は「ICDAS」という検索用語のみで事足

りると思われる。著者の所属する研究施設の所在地から国別に見ると米国、ブラジルの20件を筆頭に、英米独、

ブラジルで7割を超える。

研究デザインによる内訳

一番多い研究デザインは、抜去歯を用いて従来のWHOう蝕コードや、蛍光診査機器、レントゲン写真、組織

学的診断などとの関連をみたもので、28件あった。ついで、疫学研究では、横断研究によって地域や、社会階

層のう蝕リスクを検討したものが20件あった。診断については、審査者による再現性、審査者間の一致、他の

検査機器との関連を見た断面調査が10件あった。臨床試験もすでに8件報告されている。DMFのアウトカム指標

では、う蝕の発生、進行までの時間が長く、多大の研究資金を必要とした臨床試験もICDASの導入によって、

短期間に判定が可能となっている。

ところで、一番数が多い、抜去歯を用いた組織学的研究には、注意が必要である。抜去歯から得られる検査

精度の研究は、各種診断方法の値と、組織学的所見の一致率を見ているにすぎない。実際の臨床では、歯を抜

いて標本で検査するわけにはいかない。

臨床では、Gold standard とおぼしき指標を常に合意で形成しているのが一般的である。。臨床における

診断は調査集団の有病率に左右される事は、広く知られている。したがって、検査機器の精度を検討する時に

は、患者集団から得られた有病率が判明しているデータから感度、特異度、尤度比などを求めるべきである。

この視点が欠落すると患者のリスクを考えずに、検査機器のデータだけで病態を決めるというミスを犯しやす

い。実際、ダイアグノデントの数値だけで、病態を説明するwebサイトなども散見されるが、年齢やリスクな

どを注意深く考慮しないと過剰診断を招く恐れがある。ICDASを、患者のために役に立つ指標に育てるには、

臨床現場で過剰診断に留意し、リスクマネージメントを優先する対処が重要だと思われる。

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フッ化物含有歯科材料を用いたう蝕ハイリスク部位の歯質強化および再石灰化療法

東京歯科大学衛生学講座 松久保 隆

ICDASに基づいて早期に診断されるエナメル質の初期脱灰部位に対する予防処置は現段階ではフッ化物歯面

塗布のみであり、保健指導としてフッ化物配合歯磨剤を用いた口腔清掃指導やフッ化物洗口が行われている。

しかしながら、このようなう蝕リスクのきわめて高い症例への口腔清掃指導の効果は実際にはほとんど認めら

れないことが多い。演者らは10年前から、このような症例のエナメル質の再石灰化や歯質強化を図るために予

防処置としてPMTCとフッ化物歯面塗布後にグラスアイオノマーセメントでカバーする方法を行ってきた。これ

は口腔清掃が十分でない症例のハイリスク歯面の初期脱灰部位の進行阻止、さらに歯質強化や再石灰化療法と

して有効と考えられる。今後は、本方法を応用したときに起こるエナメル質の変化を形態学的、結晶レベルで

の解析、ならびに化学的な手法により検索し、本目的に適した材料は何か、また、有効な処置方法は何かを見

出すことが必要である。

-----------------------------------------------------------------------------------------------

QLFとICDASの関連

稲葉 大輔

岩手医科大学歯学部口腔医学講座予防歯科学分野・准教授

ICDASの初期齲蝕の判定は視診で行うために標準化が必ずしも容易ではなく、また同じくスクリーニング特性

としては敏感度が低くなる可能性がある。そこでICDAS判定の客観化、自動化を目的として光学的な齲蝕診断

装置であるQuantitative Light-induced Fluorescence (QLF;光励起蛍光定量法)の測定値と対比させる試み

が進んでいる。本報告ではその概要を紹介した。

Alammariら(文献1)は、83名の被検者が有する臼歯部の未処置齲蝕病巣をICDAS II およびQLFの従来モデル

であるInspektor Pro(Inspektor Research Systems bv, The Netherlands)で同時評価を行った。その結果、

ICDAS IIとQLFより得られる緑色蛍光平均減少率ΔF(%)の間に有意な高い順位相関を確認した(r : 咬合面

0.843、頬面0.846、舌面0.907)。また、緑色蛍光積算減少率ΔQ(= ΔF x A, mm 2 •%) についても同様の結果

を得ており(r :咬合面0.800 、頬面0.870 、舌面0.897)、さらに赤色蛍光強度ΔR (%)とくに進行した齲蝕

で高い相関を示したと報告している。これらの結果を総合し、ICDAS IIとQLFの関係について表1の対応を提

唱している。

表1 ICDAS IIとQLF 測定値の対応.(Alammari et al., 2010)

ICDAS II QLF

ΔF [%] Max ΔF [%] ΔR [%]

0 <10.5 <22.5 0-20

1 10.5-15 22.5-30 21-35

2 15.5-25 30.5-45 36-60

3 25.5-30 45.5-65 61-78

4 30.5-35 65.5-72 79-92

5 35.5-45 72.5-85 93-99

6 >45.5 >85 >99

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その後、著者らはQLFの後継機種として撮像素子と光学フィルターを改良した高精細QLF-D(Biluminator 2,

Inspektor Research Systems bv, The Netherlands)を開発し、ICDAS IIとの対比を試みた(文献2,3)。ICDAS

IIコード0-6に分布する抜去歯(20例)を対象に評価した結果、QLF-Dより得られる赤色蛍光強度S(= R/G) は

0.85~1.28に分布し、ICDAS IIスコアと有意な相関を示した(r = 0.60; Spearman rank correlation; p = 0.0048)

であった。また、ロジスティック回帰分析によれば、赤色蛍光強度Sのカットオフを1.06とした場合、コード3

と4を判別する性能は敏感度0.78、特異度0.73であった。

現段階まので結果から、QLFシステムの緑色蛍光平均減少率ΔFはICDAS IIの判定に、またQLF-Dの赤色蛍光強

度Sはコード3以上の進行齲蝕の判別に有用であることが示唆される。QLF-Dについては目下、臨床研究による

有効性の検証を企画中である。

参考文献

1. M. Alammari, S.M. Higham, E. de Josselin de Jong, M. Balmer, P. Smith: Development of A Clinical

Caries Index Using Quantitative Light-induced Fluorescence. 88th IADR General Session and

Exhibition abs. 3123, 2010.

2. E. de Josselin de Jong E, MH van der Veen: Automatic quantification of plaque coverage for

light-induced fluorescence images. Caries Research, 58th ORCA Lithuania vol 45 issue 2 pp 239 abs

157, 2011.

3. Inaba D, Kim B-I, de Josselin de Jong E and van der Veen MH (2011) Aspects of occulsal red

fluorescence in relation to ICDAS scoring in vitro. Caries Research, 58th ORCA Lithuania vol 45

issue 2 pp 239 abs 114, 2011.