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V a l e V a l e S . A . ( - ) 1) 企業概要 本社 ブラジル Rio de Janeiro 主要事業〔鉱種〕 鉄鉱石、非鉄金属鉱山、運輸(鉄道・港湾)、水力発電 〔鉄鉱石, Cu, Al, Au, Mn, Ni, Co, 白金族, カリウム, リン鉱石〕 従業員数 79,646 (2011 年末) (バルクメタル 48,362 +ベースメタル 18,168 +肥料 6,903 +本社活動 6,213 ) 決算日 12 月末日 主要関連会社 Vale Canada(100%、ニッケル・銅・白金族・コバルト鉱業)2006 10 月買収(Vale Inco) Samarco(50%、鉄鉱石・ペレット) Hispanobras(51%、ペレット)Arcelor Zhuhai YPM(25%、ペレット)Yueyufeng Iron/SteelPioneer Iron/Steel Group Azul(100%、マンガン鉱業) Urucum(100%、マンガン鉱業、鉄鉱石) MRN(40%、ボーキサイト鉱業) Salobo(100%、銅鉱山探鉱開発) PPSA(85.57%0%、カオリン鉱業)2010 7 月売却 Shandong Yankuang Int. Coking Co.Ltd(25%、コークス、中国)Yukuang G.、伊藤忠 Henan Longyu Energey Resources Co.Ltd(25%、原料炭、中国) 2) 財務状況 (mUS$:US GAAP 米国会計基準ベース) 2011 年の売上高は前年比約 30%増の 60.4bUS$であった。主に、鉄鋼石、ニッケル鉱、肥料 用のリン鉱石等の生産増加と金属価格の上昇により、売上高が増加した。当期純利益は前年 比約 33%増の 22.9bUS$であった。当期純利益の増加も売上高の増加と同様の要因である。 年度 2009 2010 2011 売上高 Operating revenues, net of discounts, returns and allowances〔①〕 23,939 46,481 60,389 当期純利益 Net income attributable to the Company’s stockholders〔②〕 5,349 17,264 22,885 売上高利益率〔③=②/①〕 22.3% 37.1% 37.9% 資産 Total assets〔④〕 102,279 129,139 128,728 流動資産 Current assets 21,294 31,791 21,736 負債 Total liabilities〔⑤〕 42,513 57,410 49,119 流動負債 Current liabilities 9,181 17,912 11,043 純資産 Total shareholders’ equity〔⑥=④-⑤〕 59,766 71,729 79,609 探鉱費 Exploration Spending Totals 252.9 363.2 351.0 ※探鉱費は Major Company Exploration Profile (MEG)による。 図4.1 Vale: 財務状況の推移 (2006 年 Inco 買収) 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 2 0 0 2 2 0 0 3 2 0 0 4 2 0 0 5 2 0 0 6 2 0 0 7 2 0 0 8 2 0 0 9 2 0 1 0 2 0 1 1 売上高 当期利益 売上高利益率 (mUS$) 2006年に Inco買収 資源メジャー・金属部門の動向調査 2012 - 112 - 4.Vale

4.Vale: Vale S.A.(ヴァ-レ)mric.jogmec.go.jp/public/report/2013-02/Vale_2012.pdfしてブラジルにおいてCVRD 社(Companhia Vale do Rio Doce S.A.,現Vale)が設立された。その

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4.Vale: Vale S.A.(ヴァ-レ)

1) 企業概要

本社 ブラジル Rio de Janeiro

主要事業〔鉱種〕 鉄鉱石、非鉄金属鉱山、運輸(鉄道・港湾)、水力発電 〔鉄鉱石, Cu, Al, Au, Mn, Ni, Co, 白金族, カリウム, リン鉱石〕

従業員数 79,646 人(2011 年末) (バルクメタル 48,362 人+ベースメタル 18,168 人+肥料 6,903 人+本社活動 6,213 人)

決算日 12 月末日

主要関連会社

・Vale Canada(100%、ニッケル・銅・白金族・コバルト鉱業)※2006 年 10 月買収(旧 Vale Inco) ・Samarco(50%、鉄鉱石・ペレット) ・Hispanobras(51%、ペレット)※Arcelor ・Zhuhai YPM(25%、ペレット)※Yueyufeng Iron/Steel、 Pioneer Iron/Steel Group ・Azul(100%、マンガン鉱業) ・Urucum(100%、マンガン鉱業、鉄鉱石) ・MRN(40%、ボーキサイト鉱業) ・Salobo(100%、銅鉱山探鉱開発) ・PPSA(85.57%→0%、カオリン鉱業)※2010 年 7 月売却 ・Shandong Yankuang Int. Coking Co.Ltd(25%、コークス、中国)※Yukuang G.、伊藤忠 ・Henan Longyu Energey Resources Co.Ltd(25%、原料炭、中国)

2) 財務状況 (mUS$:US GAAP 米国会計基準ベース)

2011 年の売上高は前年比約 30%増の 60.4bUS$であった。主に、鉄鋼石、ニッケル鉱、肥料

用のリン鉱石等の生産増加と金属価格の上昇により、売上高が増加した。当期純利益は前年

比約 33%増の 22.9bUS$であった。当期純利益の増加も売上高の増加と同様の要因である。 年度 2009 2010 2011

売上高 Operating revenues, net of discounts, returns and allowances〔①〕 23,939 46,481 60,389 当期純利益 Net income attributable to the Company’s stockholders〔②〕 5,349 17,264 22,885 売上高利益率〔③=②/①〕 22.3% 37.1% 37.9%

資産 Total assets〔④〕 102,279 129,139 128,728 流動資産 Current assets 21,294 31,791 21,736

負債 Total liabilities〔⑤〕 42,513 57,410 49,119流動負債 Current liabilities 9,181 17,912 11,043

純資産 Total shareholders’ equity〔⑥=④-⑤〕 59,766 71,729 79,609

探鉱費 Exploration Spending Totals ※ 252.9 363.2 351.0※探鉱費は Major Company Exploration Profile (MEG)による。

図4.1 Vale: 財務状況の推移 (2006 年 Inco 買収)

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2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

売上高 当期利益 売上高利益率(mUS$)

2006年に

Inco買収

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012 - 112 -

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3) 主要鉱産物の生産・開発状況 〔※鉱山名(所在国、権益比率):生産量は権益分〕

2011 年の鉄鉱石生産量は、前年比約 5%増の 323mt であった。主に、中国等の需要増に対

応する形で設備稼働率が向上し、ほとんどの鉱山で増産となった。ニッケル鉱も同様の理由

により前年比約 35%増の 242kt であった。 年度 2009 2010 2011 '11 年の世界シェア等

鉄鉱石 グロス量(mt) 238.0 307.8 322.6 第 1 位(16.3%)

Southeastern System 88.5 116.9 120.2

Itabira 31.1 38.7 40.0

Mariana 28.9 36.7 39.0

Minas Centrais 28.4 41.5 41.2

Midwestern System 1.0 4.2 5.6

Corumba 0.4 2.8 4.1

Urucum 0.5 1.4 1.5

Southern System 55.2 74.7 76.3

Minas Itabirito 18.1 30.1 30.4

Vargem Grande 20.6 22.0 21.4

Paraopeba 16.5 22.6 24.4

Northern System 84.6 101.2 109.8

Serra Norte(Carajás) 84.6 101.2 109.8

Samarco 8.6 10.8 10.8

ペレット(mt) 24.2 49.3 52.3

マンガン鉱 グロス量(mt) 1.7 1.8 2.5 第 4 位(4.5%)※2010 年データ

Azul(Pará 州、100%)、 1.4 1.6 2.1

Urucum(Mato Grosso do Sul 州、100%) 0.2 0.2 0.3

Morro da Minas(Minas Gerais 州) 0.1 0.1 0.1

フェロアロイ(kt) 223 451 436

ニッケル鉱(kt) 186.7 178.7 241.5 第 2 位(11.4%)

Sudbury(加 ON、100%) 43.6 22.4 59.7

Voisey’s Bay(加 NE、100%) 39.7 42.3 68.9

Thompson(加 MA、100%) 28.8 29.8 25.0

Sorowako(インドネシア、59.2%) 68.8 78.4 67.8

Onça Puma(ブラジル Pará 州、100%) 7.0 2010 年生産開始

Goro(ニューカレドニア、74%) 5.1 2010 年生産開始

その他(External Source) 5.8 5.9 8.0

コバルト鉱(t) 1,575 1,066 2,675 第 11 位(1.9%)※2010 年データ

Sudbury(加 ON、100%) 359 302 593

Voisey’s Bay(加 NE、100%) 971 524 1,585

Thompson(加 MA、100%) 181 189 158

Goro(ニューカレドニア、74%) 245 2010 年生産開始 External Source 64 51 93

銅鉱(kt) 198 207 302 第 12 位(1.7%)

Sossego(Pará 州、100%) 117 117 109

Sudbury(加 ON、100%) 42 34 101

Thompson(加 MA、100%) 1 1 1

Voisey’s Bay(加 NE、100%) 24 33 51

Tres Valles(チリ、90%) 9 2010 年 12 月にプロジェクト発足

その他(External Source) 14 22 31

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白金族(t) 7.9 3.0 13.1 第 6 位(2.8%)

白金(t) Sudbury(加 ON、100%) 3.2 1.1 5.4 第 5 位(2.9%)

パラジウム(t) Sudbury(加 ON、100%) 4.7 1.9 7.7 第 6 位(3.8%)

金(t) 4.6 4.5 8.5 第 35 位(0.3%)

Sudbury(加 ON、100%) 1.5 1.3 5.7

Sossego(Pará 州、100%) 3.1 3.2 2.8

銀(t) Sudbury(加 ON、100%) 51.2 46.4 78.9 第 39 位(0.3%)

ボーキサイト(kt)MRN(40%) 12,461 11,500 9,370 第 6 位(4.3%)

アルミナ(kt)Alunorte 5,910 5,805 '11 年 2 月売却

アルミ地金(kt) 459 447

Albras 450 '11 年 2 月権益売却 Valesul 9 '10 年 6 月資産売却

カオリン(kt) PPSA、Cadam 781 '10 年 PPSA 株を売却

カリウム(kt) Taquari-Vassouras 717 662 625 第 9 位(1.2%)※2010 年データ

リン鉱石 (kt) Vale Fertilizantes 他 NA 5,255 7,359 第 3 位(4.4%)

石炭計(kt) 5,419 6,899 7,272 第 80 位(0.1%)

原料炭(kt) 2,527 3,057 2,766

一般炭(kt) 2,892 3,832 4,506 (注)生産量は原則アニュアルレポート記載のものを使用しているが、世界シェアおよび順位に関しては Raw

Materials Group データの暦年データを使用 4) 沿革

(1) これまでの経緯

1942 年 6 月、第 2 次世界大戦中の米国、英国に対する鉄鉱石供給を目的とした国営企業と

してブラジルにおいて CVRD 社(Companhia Vale do Rio Doce S.A.,現 Vale)が設立された。その

後、非鉄金属、紙・パルプ製品、アルミなどを対象に事業を展開し、1990 年代には株式売却

による民営化が実施された。ラテンアメリカ最大の鉱山会社であり、世界最大の鉄鉱石とマ

ンガン鉱の生産者である。近年、銅とニッケルにも参入を果たし、総合資源メジャーとして

の体制を築きつつある。 1891 年 ブラジルでは共和国憲法下で外国企業も含めて土地の所有者に地下資源の所

有を認めたこと、同州内で大規模な鉄鉱床が発見されたことから欧米企業の参

入が始まった。 1903 年 Doce 川流域の開発を目的として英国人により設立された Itabira Iron Ore 社も

そうした企業の一つであった。 1919 年 同社は同地域で鉄鉱石の生産・輸出の独占権を得ようとした米国企業 Percival

Farquhar 社に買収された。 1930 年 Getulio Vargas 政権が誕生すると、独裁体制下で中央集権化が図られ、天然資

源の国有化が図られた。このため、Percival Farquhar 社は現地資本と提携して

Itabira Iron Ore 社をブラジル企業化し、円滑な運営を企図した。 1942 年 3 月、米国・英国企業のブラジル国内における鉄鉱生産・輸出を認める

『Washington合意』が 3国間で取り交わされた。同合意に基づいて英国は Itabira Iron Ore 社を買収し、これをブラジル政府に譲渡した。

6 月、ブラジル政府は Itabira 鉱山を母体として国営企業 CVRD を設立した。

1970~80 年代・外国企業との JV にも積極的に乗りだし、新規鉱山・プラント

の開発、企業買収によって事業規模を大きく拡大した。 1971 年 CVRD は探鉱子会社として Docegeo 社を設立、7 年間に 82 mUS$の探鉱費を投

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じて 35 の新鉱床を発見した。その中には世界最大規模の鉄鉱石埋蔵量が確認

された Pará 州の Carajás(カラジャス)鉱床も含まれる。 1990 年

代 ブラジル政府は財政再建策の一つとして国営企業の民営化に着手した。

1997 年 3 月、第一回入札が官報に公示された。入札の結果、ブラジル最大の鉄鋼メー

カーCSN社(Companhia Siderurgica Nacional)を中心とする Valepar コンソーシア

ムが、ブラジル最大の企業グループ Votorantim 社、AAC 社(現 AA)、日本企業

グループなどで構成される Valecom コンソーシアムなどに競り勝ち、政府の公

示した最低価格を 20%上回る 3.33 bBRL$(当時のレートで約 3.14 bUS$)で落

札、議決権付き普通株 41.7%を取得した。 2000 年 6 月、New York 証券取引所に上場するなど、グローバル化を進めると共に、

鉱業、運輸及びエネルギー部門をコア事業として位置付け、非中核事業の売却

を進めた。 2004 年 カナダ Noranda 社の買収合戦に失敗したが、ブラジル国内での鉄鋼プラント

への資本参加も積極的に検討する。 2006 年 10 月、Incos 社の 75.66%株式を約 15bC$(約 1.6 兆円相当)で取得し、事実上買

収したと発表。更に全株を 19.9bC$で買い取る意向を株主に提示。 2007 年 1 月、特別株主総会にて Inco 社の完全子会社化の手続き完了。 11 月 29 日、呼称を“Vale”に変更。正式名称“Companhia Vale do Rio Doce”

は変わらず。 2008 年 1 月、Xstrata 買収の交渉中であることを表明。 3 月、Xstrata 買収断念を発表。 6 月、JOGMEC とアフリカでの探鉱のための関係強化に関する MOU 締結。

国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)と資源開発融資に関する MOU を締

結。 11 月、韓国輸出入銀行(KEXIM)とプロジェクトファイナンスに関する MOU 締

結。 2009 年 1 月、RT は Corumbá 鉄鉱石鉱山(Matto Grosso do Sur 州、100%権益)を Vale に

750mUS$にて売却合意。 5 月、正式名称を“Vale”と改称。 2010 年 8 月、アルゼンチンの貨物輸送事業者 Ferrosur Roca S.A. 社と、Neuquén 州

Zapala と Buenos Aires 州 General Cerri を結ぶ延長 765km の鉄道の権益の譲渡

受け入れで合意。Rio Colorado プロジェクトの物流強化に貢献。 12 月、チリでの初のプロジェクトとなる Tres Valles 銅鉱山を開山。

生産能力は銅地金で年間 18.5kt で、湿式冶金プロセスを用いた初の産業規模で

の生産。 12 月、香港市場で、預託証券(Hong Kong depositary receipts)として同社普通株、

優先 A 株の上場を開始すると発表。Vale は重要な需要先であるアジア地域に

着目し、香港での資金調達に踏み切った。 (2) 最近の動向

2011 年 9 月、モザンビーク Moatize 炭鉱の第 I 期開発を 2011 年 5 月に終了させ、一般

炭の出荷を開始。石炭は Beira 港まで運ばれて輸出。 10 月、Vale Exploration Canada 社は米 AK 州で Millrock resources 社と共にポー

フィリー型銅・金鉱床の探鉱で戦略的合意を締結したと発表。

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10 月、アルゼンチン Mendoza 州の Rio Colorado カリウム肥料プロジェクトが

地元政府からのローカルコンテンツ(原材料や部品などのうち、現地で調達す

る割合(現地調達率))引き上げ要求によって中断していたが、このたび作業再

開。 11 月、ブラジル国内で急速に増産されているリン鉱石中のレアアースに注目

し、潜在的な含有量を調査。 11 月、モザンビーク Moatize 炭鉱の拡張計画を決定。石炭の生産能力は 11 百

万 t/年から 2014 年には 22 百万 t/年へと拡大する予定。

12 月、総額 214 億 US$にも及ぶ 2012 年の投資計画を発表。このうち探鉱分

野については、鉄鉱石に 2.82 億 US$、ニッケルに 2.02 億 US$、銅に 1.56 億

US$、石炭に 0.75 億 US$、カリウム・リン鉱石に 0.5 億 US$の資金が投下

される見込み。 12 月、アジア向け鉄鉱石輸出のために建造した 19 隻の 40 万 t 級大型鉱石輸送

船のうち、4 隻を売却。経済状況の変化と Vale の大型輸送船による鉄鉱石運搬

を警戒する中国海運業界による反対(中国政府による入港規制等も含む)等が

背景。 1 月、Rio Colorado プロジェクト(アルゼンチン Mendoza 州)について主要プラ

ント装置(蒸発及びカリウム結晶装置)についてカナダの Whiting Equipment 社とターンキー契約(全体を一括して請け負って試運転を行い、スイッチを入れ

ればすぐ運転を開始できる状態にして引き渡すことを約束した契約のこと)を締結。また、鉱山から Neuquen 州の鉄道ターミナルまでの鉄道支線建設のた

めにアルゼンチンの Chediack、Milicic 社のほか、スウェーデンの Skanska 社の

コンソーシアムに発注。 2012 年 1 月、これまで取ってきた石油・天然ガス開発の方針を転換し、これら資産を

売却した上で今後は鉱物資源開発に経営資源を集中する方向へ。 1 月、ブラジル Minas Gerais 州及び Espirito Santo 州における大雨のため、鉄鉱

石出荷が困難であるとして不可抗力を宣言。 1 月、Vale の鉄鉱石輸送船(総トン数 40 万t)がフィリピンへ向かう。大型鉄鉱

石輸送船の出現によって中国海運業界が懸念を示しているが、Vale ではフィリ

ピン及びマレーシアに中継基地を設ける計画。 1 月、モザンビーク Tete 州で操業中の Moatize 炭鉱について操業に反対する近

隣住民約 500 人が抗議活動を起こし、山元から Beira 港まで石炭輸送する鉄道

貨車の通行を妨害。 2 月、カナダ Coleman 鉱山における死亡事故発生をうけ、Sudbury 地区にある

鉱山操業を一時停止させると発表。同社の Clarabelle 選鉱場、Copper Cliff 製錬

所、Copper Cliff ニッケル精錬所は貯鉱による通常操業を維持。

2 月、ブラジル Para 州 Carajas の Serra Norte 鉄鉱石事業所において N5Sul Pit開発のための環境許可を取得。

2 月、ブラジル Sergipe 州 Carnalita のカリウム鉱床について、Petrobras 社と 30年間の鉱区リース契約を締結。また、ブラジル唯一のカリウム鉱山である

Taquari-Vassouras 鉱山(Sergipe 州)の鉱区についても Petrobras 社からリース

(1992 年から 25 年間)しており、本件で2件目となる。 2 月、鉄鉱石の 80%をスポット価格ベースで販売すると発表。従来主要生産者

と鉄鋼企業との間で年間ベースで決められるベンチマーク価格で取引されて

いたが、最大輸入国である中国等が価格下落時のメリットを最大化させるた

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め、より短期での価格設定を求めてきたことに応ずるもの。 3 月、アジア、中東、インド、北アフリカ向け鉄鉱石輸出において、豪州産鉄

鉱石に対抗するため、40 万t級大型輸送船の導入と積替用中継基地を建設(フィリピンの Subic Bay とマレーシアの Teluk Rubiah に積替施設、オマーンに中

東、インド等向けのペレット生産プラント及び積替施設)。 3 月、生産コスト削減のため、ブラジル国内における風力発電の市場調査、パ

ートナー調査を実施。

3 月、ブラジル Espirito Santo 州で新規ペレット工場建設に関する操業申請を実

施。 4 月、ブラジル Para 州 Carajas 南部で進めている Serra Sul プロジェクトの初期

投資額を 80 億 US$から 195 億 US$に引き上げ。主にロジスティック関連の

投資が増額。 4 月、モザンビーク Moatize 石炭プロジェクトの権益 5%を 2,100 万 US$でモ

ザンビーク政府に売却。 4 月、Petrobras が石油精製過程で用いる酸化ランタンの供給について Vale が

中国の肩代わりを行う計画を協議。Vale は Araxa(Minas Gerais 州)、Catalão(Goias州)でレアアース回収を検討。

5 月、ブラジル Apolo 鉄鉱石プロジェクト(Minas Gerais 州)が政府が設定を予定

している Serra do Gandarela 自然保護区と重複。今後開発対象地域と自然保護

区範囲の調整へ。 5 月、ドイツ Thyssen Krupp 社はブラジル・Rio de Janeiro の CSA(製鉄及び鉄鋼

中間製品生産の一貫製鉄所)と米 AL 州の圧延工場の売却を Vale に持ちかける

も Vale は参画の意志なし。 5 月、ブラジル Para 州の Onca Puma ニッケル鉱山に対して先住民の提訴があ

り、連邦検察局から操業停止命令を受ける。鉱山周辺地区の先住民に対する環

境負荷低減措置の義務不履行を指摘される。このほか、同じく Para州のSossego銅鉱山、Salobo 銅プロジェクト(建設中)では先住民土地の不正使用等で連邦検

察局の調査を受ける。 6 月、加 ON 州先住民と Totten ニッケル鉱山に関し、環境保護、人材育成、地

元業者の指示等共通利益を構築、維持するための相互協力を促進するための契

約を締結。

7 月、鉄道や各種機械向け燃料としてのバイオ燃料開発に関し、2019 年までの

生産目標を 600 千t/年に引き上げ。Biopalma と世界最大クラスのパームオイ

ル処理プラントを計画しているほか、2014年の発電及び売電を目指してPacific Hydro 社とブラジル東北部における風力発電設備の建設を計画。

7 月、Vale 率いるモザンビークのコンソーシアム(Sociedade Corredor Logistico Integrado do Norte)に対してMoatize市からNacala港を結ぶ鉄道の建設及び運営

に関する許可がモザンビーク政府から得られる。 7 月、鉱業ロイヤルティの算出についてブラジル連邦政府鉱物資源局へ不服を

申し立てていたが、ワーキンググループにおける検討を経て解決へ。 7 月、加 NF 州 Long Harbour ニッケル加工工場に関するストライキ差し止め命

令を裁判所に求めていたところ、同州最高裁判所から認められる。

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012- 117 -

4.Vale

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5) 事業内容

Vale は、世界最大の鉄鉱石及びペレット生産者であると共に、世界第 2 位のニッケル生産

者であり、マンガン鉱石、フェロアロイの主要生産者である。これらの鉱種の他、Vale は銅、

石炭、コバルト、貴金属、リン鉱石、カリウムの生産も行っている。ブラジル国内に鉄、金、

マンガンなどの鉱山を所有するほか、鉄鉱山と統合したロジスティックシステム(鉄道、鉱石

積込み施設、港湾施設)、JV によるアルミ、鉄鋼製品部門に権益を保有していたところ、2006年の Inco 社買収によりカナダ、インドネシア、ニューカレドニアにおけるニッケルに随伴す

る銅、コバルト、白金族、金など鉱業資産を手中にした。また、探鉱活動を世界 21 か国で展

開すると共に、関連会社を通して、エネルギー、鉄鋼生産を行っている。 業績好調な鉄鉱石部門での収益をベースに銅、ニッケルなどの非鉄金属部門や石炭、天然

ガス、電力への参入による多角化を積極的に展開している。

表4.1 Vale: 事業部門別投資計画の推移 (単位:mUS$)

年 2010 2011 2012 2012/’11 鉄鉱石 3,863 8,522 10,002 17.4% 鉄鋼 343 677 621 -8.3% 非鉄 4,075 4,310 4,630 7.4% 肥料 2,505 2,050 -18.2% 輸送 2,654 5,014 518 -89.7% 石炭 892 1,588 1,901 19.7% 発電 834 794 775 -2.4% その他 235 590 914 54.9% 合計 12,896 24,000 21,411 -10.8%

図4.2 Vale: 事業部門別投資計画の推移

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2007 2008 2009 2010 2011 2012

その他

発電

石炭

輸送

肥料

非鉄

鉄鋼

鉄鉱石

(mUS$)

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012 - 118 -

4.Vale

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表4.2 Vale: セグメント (鉱種・品目別売上高)

売上高(mUS$) 割合(%)

2009 2010 2011 2009 2010 2011 鉄鋼関連 14,700 33,708 43,890 61.4 72.5 72.7

鉄鉱石 12,831 26,384 35,008 53.6 56.8 58.0 ペレット 1,352 6,402 8,150 5.6 13.8 13.5 マンガン 145 258 171 0.6 0.6 0.3 合金鉄 372 664 561 1.6 1.4 0.9

アルミ 2,050 2,554 383 8.6 5.5 0.6 ニッケル及び

副産物 3,947 4,712 8,118 16.5 10.1 13.4

銅 682 934 1,126 2.8 2.0 1.9 貴金属・その

他金属

カオリン・カ

リウム(肥料) 413 1,846 3,547 1.7 4.0 5.9

石炭 505 770 1,058 2.1 1.7 1.8 ロジスティク

ス 1,104 1,465 1,726 4.6 3.2 2.9

その他 538 492 541 2.2 1.1 0.9

合計 23,939 46,481 60,389 100.0 100.0 100.0

図4.3 Vale: セグメント (鉱種・品目別売上高)

図4.4 Vale: セグメント (鉱種・品目別売上比率)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

2006 2007 2008 2009 2010 2011

ロジスティクス・その他

石炭

カオリン・カリウム

貴金属・その他金属

ニッケル等

アルミ

合金鉄

マンガン

ペレット

鉄鉱石

(mUS$)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2006 2007 2008 2009 2010 2011

ロジスティクス・その他

石炭

カオリン・カリウム

貴金属・その他金属

ニッケル等

アルミ

合金鉄

マンガン

ペレット

鉄鉱石

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012- 119 -

4.Vale

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次表に Vale の M&A 実績を示す。

表4.3 Vale: M&A 実績一覧 (2000~2012 年 2 月) 買収対象

分野 買収年月 買収額 (mUS$)

企業/プロジェクト 案件別 年計 Socoimex 鉄鉱石 May, 2000 48

849Samitri / Samarco 鉄鉱石、ペレット May, 2000 710 GIIC ペレット Oct, 2000 91 Ferteco 鉄鉱石、ペレット Apr, 2001 566

609Sossego 銅 Oct, 2001 43 Salobo 銅 May, 2002 51

95Alunorte アルミナ Jun, 2002 42 MVC ボーキサイト Jul, 2002 2 Caemi 鉄鉱石、カオリン Dec, 2001 /Mar,2003 705

850Rana 鉄合金 Feb, 2003 18 CST 鉄鋼 Mar, 2003 60 FCA 鉄道 Sept, 2003 67 Canico ニッケル Dec, 2005 800 800Caemi 鉄鉱石、カオリン May, 2006 2,552

20,870Valesul アルミ地金 Jul, 2006 28 Rio Verde 鉄鉱石 Jan, 2006 47 Inco ニッケル Nov, 2006 18,243 AMCI HA 石炭 Apr, 2007 656

977EBM/MBR 鉄鉱石 May, 2007 231 Belvedere 石炭 Jul, 2007 90 Apolo 鉄鉱石 May, 2008 128 128Teal 銅 Mar, 2009 65

2,042Rio Colorado/Regina カリウム Jan, 2009 857 Argos 石炭 Apr, 2009 306 Corumbá 鉄鉱石 Sept, 2009 814 Fertilizantes assets 鉄鋼 Jan-10/Dec-10 5,829

7,335Simandou 鉄鉱石 May, 2010 500 Belvedere 石炭 Jun, 2010 92 SDNC ロジスティックス Sep, 2010 21 FNS ロジスティックス Sep, 2010 893 Biopalma エネルギー Feb, 2011 174

1,486 Norte Energia S.A. エネルギー Apr, 2011 1,400 Termina Ultrafertil - TUF ロジスティックス Jun, 2011 95 Vale Fertilizantes 肥料 Dec, 2011 1,217 Carborough Downs 石炭 Feb, 2012 69

506 EBM 鉄鉱石 Jun, 2012 437 合 計 36,547

(出典:Vale HP)

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012 - 120 -

4.Vale

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(1) 鉄鋼原料部門

① 鉄鉱石

Vale のブラジルにおける鉄鉱石採掘・ペレット生産は、それらを輸送する鉄道及び港湾設

備と統合されており、ブラジル南部に位置する南部システム(Southern System)、南東部システ

ム(Southeastern System)とブラジル北部に位置する北部システム(Northern System)、さらに中西

部システム(Midwestern System)の 4 システムから構成されている。南部システム及び南東部シ

ステムは、鉄鉱石埋蔵量 45 億 t、年産能力 1.7 億 t を有する。

<南東部システム>

南東部システムは、Minas Gerais 州 Iron Quadrangle 地域の Itabira(2 鉱山)、Minas Centrais(4鉱山)、Mariana(3 鉱山)の 3 事業所より構成される。3 採掘地区の鉱石の特徴は Itabirite 鉱を主

体とすることで、鉄品位はヘマタイト(平均鉄品位 66%)より低く通常 35-60%であるが、出荷

可能な鉄品位 63.5%までの濃縮が可能である。これらの鉱山は積出港である Tubarao 港

(Espírito Santo州Vitória)までEstrada de Ferro Vitória a Minas社(EFVM)社の鉄道システムでつな

がっている。南東部システムにおける 2011 年の生産量は 120.2mt である。

<南部システム>

Minas Gerais 州に位置し、子会社である MBR 社が所有する鉱山から構成される。南部シス

テムは、Itabirito(2 鉱山)、Vargem Grande(3 鉱山)、Paraobeba(4 鉱山)の 3 事業所から構成され

る。南部システムでは、sinterfeed、塊状鉱(lump ore)、ペレット鉱、hematitinha(銑鉄生産用)が生産されている。積出港である GuaibaIsland、Itaguai(Rio de Janeiro 州)まで、子会社の MRS Logistics S.A.が運行する鉄道システムで繋がっている。2009 年に南部システムでは、消費電

力の 100%が自社水力発電所から供給されている。南部システムにおける 2011 年の生産量は

76.3mt である。

<北部システム>

ブラジル北部 Pará 州と Maranhão 州に跨る世界最大の鉄鉱石賦存地域である Carajás 地域に

位置する。Carajás 地域は、それぞれ 35km 離れた北部レンジ、南部レンジの二つの鉱床帯か

ら構成されており、北部レンジの 3 鉱体を 1983 年から採掘している。積出港である Ponta da Madeira 港(Maranhão 州 São Luís)と鉄道システム(EFC、892km)で結ばれている。Carajás 地域

の鉱山の鉱石は高品質(平均鉄品位 66.7%)である。鉱石が高品位であるため、鉱山の付属施設

は粉砕と分級で、粒度別に、焼結鉱、ペレット鉱、直接還元用粉状鉱、塊状鉱が生産されて

いる。Carajás地域での消費電力は全て商業ベースで買電している。北部システムにおける2011年の生産量は 109.8mt である。

<中西部システム>

中西部システムは、Mato Grosso do Sul 州にある Urucum 鉱山及び Corumba 鉱山から成る。

Urucum 鉱山は高品位なヘマタイト鉱床であり平均鉄品位 63.3%である。一方、Corumba 鉱山

は2009年12月に取得した鉱山であり塊鉱石を生産している。両鉱山からの生産物は、Paraguay川と Parana 川を利用して船舶輸送されている。中西部システムにおける 2011 年の生産量は

5.6mt である。

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012- 121 -

4.Vale

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図4.5 Vale: 鉄鉱石生産システム

出典:Vale

表4.4 Vale: 鉄鉱石の埋蔵量と生産量 (生産部門別:2011、2005 年 12 月 31 日時点比較)

オペレーション名 埋蔵量(mt) 品位(Fe%) 含有量(mt) 生産量(mt) ライフ試算

(年) 2005 2011 2005 2011 2005 2011 2005 2011 2005 2011

Southeastern System 4,029 3,508 52.1 49.4 2,099 1,733 90 125.3 23 13.8 Southern System 1,766 4,210 57.4 47.8 1,014 2,012 70 74.7 14 26.9 Midwestern System 35 62.2 22 5.6 3.9 Northern System 2,117 7,383 66.8 66.7 1,414 4,924 73 109.8 19 44.8 Vale 合計 7,912.0 15,136.0 57.2 57.4 4,527.0 8,691.5 233.0 315.4 19.4 27.6

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012 - 122 -

4.Vale

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② ペレット

Vale のペレット生産は、北部システム(Sao Luis)、南部システム(Tubarao、Fabrica、Vargem Grande)の自社工場、北部システム Tubarao の JV プロジェクト(Arcelor Mittal 社との JV)、Samarco の JV プロジェクト(BHPB との JV)、中国における JV プロジェクト(Zhuhai YPM(広東省珠海)及び Anyang(河南省)の 2 件)において行っている。各プロジェクトの概要は下表の

とおりである。ペレット工場への鉄鉱石供給は全量 Vale が行っているが、Samarco 及び Zhuhai YPM プロジェクトについては権益相当分を供給している。このほか、オマーンの Sohar 工業

団地でも新規ペレット工場(生産能力 9mt)を建設し、2011 年 4 月から生産を開始している。

2011 年におけるペレットの生産量は、52.3mt である。

表4.5 Vale: ペレット生産

操業企業名 位置 Vale権益(%) JV パートナー 生産能力 2011 年生産

量(mt)

Vale (北部システム) SaoLuis (Maranhao 州) 100 -

45.3 (Vale 計)

39.0 (Vale 計) (※1)

Vale (南東部システム) Tubarao I、II (Espírito Santos 州)

100 -

Vale (南部システム) Fabrica (Minas Gerais 州) 100 -

Vale (南部システム) Vargem Grande (Minas Gerais 州) 100 -

Vale Oman Pelletizing Company

Oman (Sohar industrial complex) 100 - 9

Itabrasco Fabrica (Espírito Santos 州) 50.9 Ilva 3.3

Kobrasco Fabrica (Espírito Santos 州) 50 Posco 4.3

Nibrasco Fabrica (Espírito Santos 州) 51

新日鐵、住友金属工業、

JFEスチール、神戸製鋼、

日新製鋼、双日 8.4

Hispanobras(※2) Tubarao (Espírito Santos 州) 50.9 Arcerol Mittal 4.5 2.1

Samarco(※2)

Mariana (Minas Gerais 州) Anchieta (Espírito Santos 州)

50 BHPB 22.3 10.7

Zhuhai YPM (※2) Zhuhai(広東省) 25

Zhuhai Yueyufeng Iron and Steel Co. Ltd.、Pioneer & Steel Group Co. Ltd.

1.2 0.3

Anyang Yu Vale Yongtong Pelle (2011 年 3 月操業開始) (※2)

Anyang (河南省) 25 Anyang Iron & Steel Co.Ltd. 1.2 0.2

※1 Itabrasco、Kobrasco、Nibrasco の生産量を含む ※2 生産量は権益分

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012- 123 -

4.Vale

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③ マンガン

マンガン鉱石は、ブラジルのAzul(Pará州Carajás地域)、Urucum(Mato Grosso do Sul州Pantanal地域)、Morro da Minas(Minas Gerais 州)の 3 鉱山で生産されている。Vale は世界最大級のマン

ガン鉱石生産者でもあり、フェロアロイ用、バッテリー用の二酸化マンガン、肥料・殺虫剤

など化学用に出荷される。なお、Azul、Urucum 鉱山とも山元に処理プラントを保有するほか、

100%子会社の Vale Manganese France 社(フランス)、Vale Manganese Norway AS 社(ノルウェー)などを通じて、フェロマンガン、フェロシリコンマンガンを生産している。2011 年における

マンガン精鉱の生産量は 2.5mt(グロス重量)であり、フェロマンガン及びフォロシリコマンガ

ン等の鉄合金の生産量は 436kt(グロス重量)である。

表4.6 Vale: マンガン鉱の埋蔵量と生産量 (鉱山別:2011、2005 年 12 月 31 日時点比較)

オペレーション名 埋蔵量(mt) 品位(Mn%) 含有量(mt) 生産量(mt) ライフ試算(年)

2005 2011 2005 2011 2005 2011 2005 2011 2005 2011

Azul(露天) 45.7 45.4 35.7 40.5 16.3 18.4 2.2 2.1 7.0 8.8

Urucum(坑内) 8.2 6.2 45.3 45.1 3.7 2.8 0.4 0.3 9.0 9.3

Morro da Minas(露天) 9.6 14.8 23.0 25.1 2.2 3.7 0.3 0.1 7.0 37.1

Vale 合計 63.5 66.4 35.0 37.5 22.2 24.9 2.9 2.5 7.7 10.0

(2) ベースメタル・貴金属部門

① 銅・金

銅、金の生産は、Vale 本社及び子会社の Vale Canada 社(旧 Vale Inco)で行っている。 ブラジルCarajás地域にValeが100%権益を保有する Sossego鉱山にて生産を行っている他、

カナダの Sudbury 地域、Voisey’s Bay 鉱山にてニッケルの副産物として生産を行っている。ま

た、新規開発案件として、ブラジル国内に BNDES(ブラジル国立経済社会開発銀行)との合弁

による 3 プロジェクトを含め、銅鉱山開発プロジェクトを 5 件有しており、これら銅鉱石の

鉱量は 1.1 bt、平均品位 Cu 0.96%、本格生産時の 銅生産量 526kt、金 16.6t となり、銅生産に

おいても世界第 10 位内に入る産銅会社になると予想される。 金についてはブラジル Pará 州 Carajás 地域における銅生産に伴って、副産品として金・銀

が回収される。 <ブラジル> Sossego 銅鉱山(Pará 州 Carajás、100%、露天採掘)

ブラジル北東部に位置し、Vale による銅鉱山第 1 号として 2004 年 6 月から商業生産を開始

した。同鉱床は 1997 年に発見され、2002 年に開発着手、初期投資額 430 mUS$。銅精鉱の生

産計画量は銅含有量で 140 kt/年(金含有量 3 t/年)、マインライフ 17 年である。2011 年におけ

る生産量は 109kt(純分換算)である。採掘は Sequeirinho ピット(長径 2,800m×短径 1,000m×深

度 450m)と Sossego ピット(径 800m×350m 深度)からなり、鉱石は一次破砕後、選鉱場まで 4kmをベルトコンベヤーで輸送される。精鉱輸送は既存の鉄鉱石用の Carajás 鉄道(850km)を活用

して Ponta da Madeira 港に輸送され船積みされる。精鉱は主に長期契約によって、南米、欧州、

アジアの製錬所に出荷されている。 <カナダ> (Sudbury、Voisey's Bay、Thompson、いずれも 100%)

カナダにおける旧 Inco 社資産である Ontario、Voisey’s Bay、Manitoba 各ニッケル事業所の

副産物として産出する銅のほか、新たに開発された Totten ニッケル鉱床(Sudbury)の副産物と

して得られる銅を生産している。カナダ地区における 2011 年における生産量は 183kt(純分換

算)である。

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012 - 124 -

4.Vale

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<チリ> Tres Valles (Coquimbo 地域、100%)

SxEw 銅カソード生産 18kt/年の計画で、2010 年 12 月に完成した。Vale にとってチリにおけ

る初のプロジェクトである。投資総額 109mUS$である。2011 年における生産量は 9kt(純分換

算)である。

表4.7 Vale: 銅鉱石の埋蔵量と生産量 (鉱山別:2011、2005 年 12 月 31 日時点比較)

オペレーション名 埋蔵量(mt) 品位(Cu%) 含有量(kt) 生産量(kt) ライフ試算

(年) 2005 2011 2005 2011 2005 2011 2005 2011 2005 2011

<ブラジル> Sossego(OP) 225.1 154.1 1.0 0.8 2,206.0 1,248.2 107.0 109.0 21.0 11.5

Salobo(OP) 1,112.8 0.7 7,678.3 <カナダ> Sudbury、ON 州(UG)

163.0 105.4 1.3 1.5 2,135.0 1,591.5 126.0 101.0 17.0 15.8

Thompson、MB 州(UG) 25.0 26.7 0.1 0.1 33.0 26.7 0.0 1.0 0.0 26.7 Voisey’s Bay、NL 州(OP) 32.0 21.8 1.6 1.4 509.0 303.0 4.0 51.0 127.0 5.9

Vale 合計 445.1 1,420.8 1,097.1 763.5 4,883.0 10,847.8 237.0 262.0 20.6 41.4 ② ニッケル

Vale は、100%子会社である Vale Canada 社(旧 Vale Inco 社)及びその出資子会社において、

ニッケルの資源開発、製錬、精錬ならびにニッケル関連製品及び副産物の白金族、金の生産

を行っている。2011 年のニッケルの出荷先は、アジアが 53%、北米が 27%、欧州が 17%、そ

の他が 3%であった。Vale のニッケルの販売先としては、2011 年の世界消費量のうち 64%を

占めるステンレス以外の割合が 34%と低く、残りの 66%がステンレス以外の製品であること

に特徴がある。主な生産拠点は以下のとおりである。

表4.8 Vale: 主な生産拠点 位置 企業名(Vale シェア) 生産工程

Sudbury (加 ON 州) Vale Canada 鉱山・鉱石処理、製錬、精錬の一貫工

程 Voisey’s Bay 鉱石も処理 Thompson (加 MB 州) Vale Canada 鉱山・鉱石処理、製錬、精錬の一貫工

程。Voisey’s Bay 鉱石も処理 Voisey’s Bay (加 NL 州) Vale Canada 鉱山及び鉱石処理

ニッケル精鉱及び副産物

Clydach(英 Wales 州) Vale Canada ニッケル中間産物、酸化物からニッケ

ル製品生産を生産する精錬所

Sorowako (インドネシア Sulawesi 島)

PT Vale Indonesia Tbk.(Vale Canada 59.2%、住友金属鉱山 20.3%、その他20.5%)

鉱石生産(Sorowako、Pomalaa) 精製及びニッケルマット生産

Matsuzaka(日本) 旧 Inco TNC (インコ東京ニッケル)

Vale Japan Ltd.(Vale Canada 76.1%、住友

金属鉱山 12.8%、三井物産 6.8%、住友商

事 2.6%、双日 1.7%) 精製

Goro (ニューカレドニア)

Vale Nouvelle Caledonie SAS (Vale 74%、住友金属鉱山・三井金属

21%、SPMSC5%)

鉱石生産 酸化ニッケル、コバルト

Kaoshiung(台湾) Taiwan Nickel Refining Corp .(TNRC)(49.9%) 精製

Dailian(中国 Liaoning) Vale New Nickel Materials(Dalian) Co.Ltd.(INNM)(98%) 精製

Onsan(韓国) Korean Nickel Corp.(25%) 精製

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012- 125 -

4.Vale

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Sudbury(加 ON 州)

Sudbury では、当初坑内採掘によってニッケル硫化鉱が開発された。銅・コバルト・白金族・

金・銀を随伴するニッケル硫化鉱体の採掘から精製までの一貫生産を行っている。Voisey’s Bay 鉱山の鉱石も処理している。生産した中間産物を英国 Wales、台湾、中国、韓国等に出荷

している。2011 年における生産量は、5,612kt(精鉱ベース)である。 Thompson(加 MB 州)

Sudbury と同様に、当初坑内採掘によってニッケル硫化鉱が開発され、副産物として銅・コ

バルトを含む。鉱石生産から精製までの一貫生産を行っている。Voisey’s Bay 鉱山の鉱石も処

理している。生産した中間産物を英国 Wales、台湾、中国、日本、韓国等に出荷している。2011年における生産量は、1,903kt(精鉱ベース)である。 Voisey's Bay(加 NL 州)

露天採掘により、ニッケル硫化鉱を生産している。鉱石は副産物として銅・コバルトを含

む。将来的には坑内採掘を行う計画がある。精鉱の大部分は Sudbury、Thompson に輸送され

て処理されるが、一部欧州の精錬業者に売鉱している。2011 年における生産量は、2,366kt(精鉱ベース)である。 VNC(New Caledonia)

2010 年から生産を開始した露天掘りのニッケル鉱山があり、2011 年における生産量は、

1,043kt(精鉱ベース)である。 Sulawesi(インドネシア)

1 鉱山(Sorowako)及び精製所(Sorowako)を操業している。鉱山では、露天採掘によってニッ

ケル・ラテライト鉱が生産され、Sorowako 精製所でニッケルマットが生産されている。ニッ

ケルマットは主として日本向けに出荷され、80%が Vale Canada 向け、20%が住友金属鉱山向

けとされる。2011 年における生産量は、3,848kt(精鉱ベース)である。 Onca Puma(ブラジル)

2010 年より生産を開始した露天掘りのニッケル鉱山であり、2011 年における生産量は、

1,466kt(精鉱ベース)である。

表4.9 Vale: ブラジル Pará 州 Carajás 地域及びカナダのニッケル鉱床の埋蔵量とライフ試算

オペレーション名 埋蔵量(mt) 品位(Ni%) 含有量(kt) 生産量(kt) ライフ試算(年)

2005 2011 2005 2011 2005 2011 2005 2011 2005 2011<カナダ> Sudbury、ON 州

163 105.4 1.2 1.2 1,989 1,243.7 96.5 59.7 21 20.8

Thompson、MB 州 25 27.5 1.9 1.8 475 481.3 48.6 25.0 10 19.3 Voisey’s Bay、NL 州 32 21.8 2.8 2.5 880 545.0 68.9 7.9 <インドネシア> Sulawesi 147 109.4 1.8 1.8 2,646 1,958.3 73.9 67.8 36 28.9

<ニューカレドニア> Goro(OP) 120 126.8 1.5 1.4 1,776 1,825.9

<ブラジル> Onca Puma(OP) 82.9 1.5 1,260.1

Vale 合計 487 473.8 1.6 1.5 7,766 7,314.2 219.0 221.4 35 33.0

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012 - 126 -

4.Vale

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③ 貴金属部門

貴金属の生産は、カナダの Sudbury におけるニッケル生産の副産物として、白金族、金、

銀の生産を行っている。生産施設は、Port Colborne(ON 州)にある。また精製工程は Acton(英国)にあり、自社製品の精製及び委託精製を行っている。

また、ブラジルでは Sossego 銅鉱山の副産物として金の回収を行っているかほか、2012 年

に稼動予定の Salobo 銅鉱山からも金の回収が予定されている。

表4.10 Vale: 白金族及び金の埋蔵量と生産量 (鉱山別:2011、2005 年 12 月 31 日時点)

オペレーション名 埋蔵量(mt) 品位(g/mt) 含有量(t) 生産量(t) ライフ試算(年)

2005 2011 2005 2011 2005 2011 2005 2011 2005 2011 <カナダ Sudbury> 白金(Pt,坑内)

163 105.4 0.8 0.8 130 84.3 5.4 5.4 24 15.6

パラジウム(Pd,坑内) 163 105.4 0.8 1.1 130 115.9 6.9 7.7 19 15.0 金(Au,坑内) 163 105.4 0.3 0.4 49 42.2 2.5 5.7 19 7.4 <ブラジル> 金(Au,Sossego)

154.1 0.2 30.8

金(Au,Salobo) 1,112.8 0.4 478.5 ④ アルミ部門

従来、Vale はアルミ他社との合弁の MRN 社(Minerção Rio do Norte:Vale 権益 40%)、Alunorte社(同 57.03%)、CAP 社(Albras(同 51.0%)及び Valesul 社(同 100%)等を通して、それぞれボー

キサイト、アルミナ、アルミ地金の生産を行い外部に販売する他、ボーキサイト、アルミナ

は自社でも処理を行っていたが、2010 年に資産ポートフォリオ戦略の一環として、ボーキサ

イト、アルミナ分野の資産を売却している。 2011 年 2 月には Norsk Hydoro ASA 社(Hydoro 社)に対して、Albas 社、Alunorte 社、CAP 社

の全株式と、Paragominas ボーキサイト鉱山権益の 60%及びその他ブラジルに所有する全ての

ボーキサイト関連権益を売却しており、現在は Hydro 社の株式 22%を保有しているのみであ

る。Vale のアルミ関連事業の実施体制は下表のとおりである。

表4.11 Vale: アルミ関連生産体制 操業企業名 生産品目 権益

Vale (Paragominas 鉱山) ボーキサイト Vale 100%→60%を Hydro 社に売却(今後、2014~2016 年までに

残りの権益を全て売却することも発表)

Mineracao Rio do Norte S.A.(MRN) ボーキサイト

Vale 40%(今後、2014~2016 年までに残りの権益を全て売却す

ることを発表) Alumina LLC 、 Alcoa 、 RioTintoAlcan 、 Alcoa World AluminaLLC(AWAC)、BHPB Metais、Companhia Brasileira de Alumino(CBA)、Norsk Hydro、Participacoes Ltd.

Alumino do Norte do Brasil S.A.(Alunorte) アルミナ

Vale 57.0%→Hydro 社に売却 Hydro Aluminum Brasil Investment BV Companhia Brasileira de Alumino(CBA)、 Japan Alunorte Investment Co.(JAIC)、 三井物産、日本アマゾンアルミ(NAAC)、

CAP アルミナ Hydro Aluminum Para BV →Hydro 社に売却 Dubai Aluminum Co, Ltd.

AluminoBrasileiro S.A. (Albras) アルミ地金 Vale 51%→Hydro 社に売却、日本アマゾンアルミ(NAAC)

Valesul Aluminio S.A. (Valesul) アルミ地金 Vale 100%→資産を売却

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4.Vale

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6) 探鉱活動

(1) 概要

Vale は、探鉱活動を最も費用対効果の高い鉱床獲得手段と捉えており、歴史的にもブラジ

ルにおける鉱山の発見・開発の主役を演じてきた。また、初期探鉱においてリスク分散のた

めに JV を組み、有望鉱床選定に係るコストを削減すること、同時に JV のパートナーから新

しい探査技術を習得することを戦略としており、外国資本などとの新たな提携を模索してい

る。対象鉱種は、鉄鉱石、銅、ニッケル、ボーキサイト、石炭、肥料原料(リン)等である。対

象地域は中南米に集中しているが、最近はアフリカでの探鉱も行っている。 ・鉄鉱石 :ブラジルのほか、アフリカ、豪州、インドで探鉱を実施。 ・マンガン :主にアフリカ、ブラジルで探鉱を実施。 ・ニッケル :グリーンフィールド探鉱は、豪州、ブラジル、カナダ、イエメン、モンゴ

ル、フィリピンで実施。ブラウン・フィールド探鉱は、カナダとインドネ

シアで実施。 ・ボーキサイト:ブラジル及びギニアで探鉱実施。 ・銅 :主に、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、チリ、DRC コンゴ、カ

ザフスタン、ペルー、フィリピンで実施。 ・カリウム :主にアルゼンチン、ブラジル、カナダで実施。 ・リン鉱石 :主にブラジル、モザンビーク、ペルーで実施。 ・石炭 :豪州、ブラジル、コロンビア、モンゴル、モザンビークでグリーンフィー

ルド探鉱を実施。 (2) 対象段階・対象鉱種・対象地域

MEG によれば、2012 年度の Vale の探鉱予算 538.3mUS$を探鉱段階別に見ると、Mine Site(鉱山周辺探鉱)166.7mUS$(31.0%)、Late Stage(後期ステージ探鉱・FS)283.0US$(52.6%)、Grass Roots探鉱 88.6mUS$(16.5%)となっている。鉱種別内訳は、ベースメタル 288.7mUS$(53.6%)、その

他 249.6 mUS$(46.4%)となっている。 また地域別では、中南米 225.8mUS$(41.9%)、カナダ 168.1mUS$(31.2%)、アフリカ

82.2mUS$(15.3%)、太平洋・東南アジア 39.5mUS$(7.3%)、豪州 7.6mUS$(1.4%)、米国

5.5mUS$(1.0%)、その他 9.6mUS$(1.8%)となっている。 (3) 最近の動向 Salobo 銅プロジェクト(ブラジル)

Para 州 Carajas で開発中の Salobo 銅プロジェクトについては、当初 2011 年の操業開始が予

定されていたが、その後建設工事が遅延したために 2012 年 H1 にずれ込むと語った。同プロ

ジェクトは、初期投資コスト 18 億 US$で、年間生産量が銅 100 千 t、金 130 千 oz(約 4 t)の計

画であるが、拡張計画(Salobo II)によって生産量を 2 倍に引き上げる計画もある。なお、Valeは、Salobo プロジェクト以外にも、ブラジル、チリ、カナダ、アンゴラ、ザンビア、カザフ

スタン等で銅開発プロジェクトを推進中である。

エチオピアにおける金鉱床の探鉱(エチオピア)

エチオピアで 900 km2の探査鉱区を 2011 年 10 月に取得し金探鉱に着手している。物理探査

により、金、銅、コバルト、亜鉛等の鉱徴を探すとしている。

Simandou 鉄鉱床の開発(ギニア)

ギニア東部の Simandou において Zogota 鉄鉱床の開発を行っている。本プロジェクトが事

業化した暁には年間 15mt の鉄鉱石を生産できるようになるものとみられている。現在開発段

階に入っており、早ければ 2012 年に鉄鉱石の生産を開始できるものとみられている。

資源メジャー・金属部門の動向調査 2012 - 128 -

4.Vale

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Alaska Range 及び Alaska Peninsula Prophyry Belts(米 AK 州)

カナダの子会社である Vale Exploration Canada 社は、Millrock Resources 社(トロント上場)と共に米 AK 州におけるポーフィリー型銅・金鉱床の探鉱で戦略的合意を締結した。これら両

社は、これまでに米 AZ 州で共同探鉱を実施した実績がある。当面は Vale 側が資金提供を行

い、初期探鉱プロジェクトを実施して、有望案件を絞り込む予定である。対象とする地域は、

Alaska Range、Alaska Peninsula Porphyry Belts の 2 か所であり、初年度に 1 百万 US$、第 2 年

度にオプションとしてさらに 1 百万 US$を負担する予定である。

Carajas 鉄鉱山の周辺における探鉱(ブラジル)

Serra Norte 鉄鉱山(Para 州 Carajas)に隣接する N5 Sul Pit を開発するための環境許可を政府か

ら 2012 年 1 月に取得した。同鉱床は Serra Norte 鉄鉱山事業所のうち、N5 鉱山の一部を占め

る鉱体であるが、N5 鉱山は Vale の鉄鉱石鉱床の中でも鉄品位が高いことから、品位低下が

著しい Minas Gerais 州での生産を補完することが期待されている。このほか、Carajas 地域で

は、Carajas S11D(Serra Sul)鉄鉱石開発プロジェクトについても環境予備許可を取得すること

に成功している。同プロジェクトは、鉄鉱石鉱山と鉱石処理施設を建設するもので、当初生

産量は 90 百万 t/年(鉄品位 66%)を予定しており、世界最大級の鉄鉱石生産を行う計画となっ

ている。初期投資額 80 億 US$で、2016 年に生産開始を目指している。 なお、Carajas 地域での新規鉱床開発は環境許可の取得が難しくなった状況での許可取得と

なった。

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4.Vale