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31 31 4.成果(アウトカム) 月の地形図、日照率マップによる将来の有人活動にむけた月の利用可能性の調査のための世界でもっとも有 用なデータを日本が有する。 今後、月の科学研究、月利用可能性調査に必要な世界でもっとも詳細な月のデータおよび技術情報等を保有 する国・機関として、月探査において国際的なイニシアチブをとる立場を得ることができる。 月科学及び月利用調査 -将来の月面上活動や月利用のための調査に活用 かぐやレーザ高度計から得られた高度情報をもと に作られた月の日照率割合図 日照率マップ:黒は永久影、赤に近いところは ほぼ1年中日照のあるところ

4.成果(アウトカム)...2009/09/03  · 31 4.成果(アウトカム) 月の地形図、日照率マップによる将来の有人活動にむけた月の利用可能性の調査のための世界でもっとも有

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3131

4.成果(アウトカム)

月の地形図、日照率マップによる将来の有人活動にむけた月の利用可能性の調査のための世界でもっとも有

用なデータを日本が有する。

今後、月の科学研究、月利用可能性調査に必要な世界でもっとも詳細な月のデータおよび技術情報等を保有

する国・機関として、月探査において国際的なイニシアチブをとる立場を得ることができる。

月科学及び月利用調査-将来の月面上活動や月利用のための調査に活用

かぐやレーザ高度計から得られた高度情報をもと

に作られた月の日照率割合図

日照率マップ:黒は永久影、赤に近いところはほぼ1年中日照のあるところ

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4.成果(アウトカム)

•月への遷移軌道(フェージング軌道)設計し、500Nエンジンを用いて、月周回軌道に予定どおり投入

した。•高度100kmおよびそれ以下の低高度での月周回中の月心指向三軸姿勢制御、軌道制御、高温

(ベータ角※1

0度)から低温(ベータ角90度)などでの熱制御を目標の精度で実施できた。•14種類の観測機器の複雑な観測運用計画立案・運用、地上局と子衛星(リレー衛星)の通信運用を

成功理に実現した。•以上により、月軌道投入技術および月周回衛星の運用のための基本となる月心指向三軸姿勢制御、

熱制御、軌道制御等に関する1年以上のデータを取得・評価し、今後の月探査機のための衛星設計・

運用技術のノウハウを蓄積した。

※1

ベータ(β)角

:軌道面と太陽方向のなす角 (衛星の進行方向で背中から太陽が当たるときがβ=0°、進行方向の横から当たるときがβ=90°)。これらにより、衛星の熱条件が大きく変動する。

基盤技術の開発と蓄積-今後、月探査を進める上で必要となる基盤技術の開発及び蓄積

今後の我が国の月探査宇宙開発委員会計画部会月探査WG報告書の概要

かぐや

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4.成果(アウトカム)

宇宙開発、月探査の普及・啓発-ハイビジョンカメラによる「地球の出」等により、宇宙開発、月探査の普及・啓発

•成果DVDの配布による普及啓発ハイビジョンカメラによる「地球の出」「ダイヤモンド・リング」、地形カメラによるティコクレータ3次元

動画などの国内外のプラネタリウム・科学館・教育現場へのDVDによる配布(国際プラネタリウム

協議会、小中高大学などの教育現場など2000か所程度)による「かぐや」、月および宇宙開発の

認知度をあげることができた。

•宇宙少年団(YAC)分団活動との協力YACと協力し、SELENE画像で作った月シート、月カルタ、パネルなどを使って、子供たちの宇宙

への関心を高めることができた。

•特別番組の編成・放送、取材対応数多くの報道でとりあげられ、かぐやおよび宇宙開発の認知度を高めた。

-取材対応

約90件(平成15年から現在まで)-「かぐや」TV特別番組:、NHKスペシャル(平成19年11月)、BS-Japan「THE MOON

~人類の夢・月世界の未来~」(平成20年3月)、NHKサイエンスZERO「月が語る・地

球」(平成21年1月)、BS-朝日「峰竜太のナッ得!ニッポン」

(平成21年1月)、TBS

ニュースバード(CSニュースチャンネル)「ニュースの視点

「かぐや」月に還る」(平成21

年6月)-上記の特別番組以外にも、NHK(紅白歌合戦、週間子供ニュース、アースウオッチ)など

国内外のTV局の番組での「かぐや」映像の放送、ニュートンなどの科学雑誌や一般雑誌

などでも多く「かぐや」の画像がとりあげられている。

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4.成果(アウトカム)

•講演による普及啓発-200回の一般講演(平成19-20年度)を実施。その大半は教育機関、科学館などからの依頼に

よるもの。•「かぐや」の展示による広報普及

-G8サミット、サラゴサEXPOや国内外の科学館などにおける展示および学会等で100回程度の

展示を実施。また、日本写真測量学会誌、日本リモートセンシング学会、航空宇宙学会などの学

会誌の表紙にも「かぐや」の画像が使われている。•「かぐや」応援キャンペーンなど産業との連携

-映像・画像のTV、雑誌、ポスター、インターネットなどでの活用されている(TV

CM

2件を含め

約60企業がキャンペーン参加)-有償提供

約26件

(平成19-20年度)

宇宙開発、月探査の普及・啓発-ハイビジョンカメラによる「地球の出」等により、宇宙開発、月探査の普及・啓発

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4.成果(アウトカム)

外部表彰

表彰年月日 表彰名称 表彰業績名 表彰主催団体名

平成20年3月4日

(受賞者氏名:滝澤悦貞およびSELENEプロジェク

ト)

Laureate Award for Space Laureate Award for Space Aviation Week社

平成20年3月5日

(受賞者氏名:SELENEプロジェクトほか)

「第18回

読者が選ぶネーミング大賞」ビ

ジネス部門第2位

「かぐや」のネーミング 株式会社

日刊工業新聞社

平成20年3月12日

(受賞者氏名:SELENEプロジェクトほか)

第53回前島賞 宇宙開発や情報通信技術の発展に貢献 財団法人 逓信協会

平成20年6月11日

(受賞者氏名:SELENEプロジェクトほか)

2007年度

技術開発賞

審査員特別賞 月周回衛星「かぐや(SELENE)」が映し出した月と地

球に関する撮影システム

社団法人

日本映画テレビ技

術協会

平成20年7月4日

(受賞者氏名:SELENEプロジェクト)

第18回「TEPIAハイテク・ビデオ・コン

クール」奨励賞

ドキュメンタリービデオ「遥かなる月へ

~月周回衛

星『かぐや』の軌跡~」

財団法人 機械産業記念事業

財団

平成20年8月28日

(受賞者氏名:国土地理院、国立天文台、JAXA)

優秀地図 LALTで作成した月の地形図 地図学会

平成20年11月11日

(受賞者氏名:かぐやサイエンスチーム)

International Lunar Exploration Awards 2008

重力場、地形、化学組成のマップや高解像度画像の

作成などの科学成果

ILEWG: International Lunar Exploration Working Group

平成20年11月27日

(受賞者氏名:JAXA SELENEプロジェクト)

「第5回

音の出る地図コンテスト」

グラ

ンプリ

LALTデータを可聴化(高度データを音程になおした

もの)したMoon bellシステム

日本サウンドスケープ協会

平成21年2月27日

(受賞者氏名:JAXA)

第3回科学技術における「美」パネル展

優秀賞

パネル2点(H-ⅡA13号機打上げ画像、かぐやのハ

イビジョンカメラが撮影した画像)

科学技術団体連合

平成21年3月9日

(受賞者氏名:JAXA)

第50回科学技術映像祭

部門優秀賞

(科学技術部門)

ドキュメンタリービデオ「遥かなる月へ

~月周回衛

星『かぐや』の軌跡~」

財団法人

日本科学技術振興

財団

平成21年4月7日

(受賞者氏名:滝澤悦貞、佐々木進、加藤學、高

橋道夫、祖父江真一)

平成21年度科学技術分野の文部科学

大臣表彰

科学技術賞(理解増進部門)

月周回衛星かぐやを用いた月探査・科学研究に対

する理解増進

文部科学省

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4.成果(アウトカム)

• 「かぐや」の観測機器開発・解析研究作業を通じて、大学における延べ約600名の惑星科

学、情報工学などの分野の学生が大学・大学院を卒業し、次世代を担う人材育成に寄与し

た。

人材育成

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5.成果(インパクト)

• 日本の科学技術・環境への取り組みの広告塔

としての利用– 主要8カ国(G8)環境大臣会合で「満地球の出」

の上映

– G8洞爺湖サミットでの首脳のサインシート利用

およびHDTV上映

– スペイン

サラゴサのEXPOの日本館での

HDTV上映

– 日米首脳会議用のお土産

– チームマイナス6%のポスターなど

• 教育教材としての利用

– 新しい指導要領で小学校教育の理科に月がと

りあげられたが、この際これまでの理科教材で

はアポロからみた地球が使われていたのが「

かぐや」ハイビジョンカメラによる地球の出、月

面画像に置き換えられている。

• 小学校6年理科補助教材

• 中学校3年理科補助教材

• 中学理科資料集

「かぐや」成果の応用利用

G8洞爺湖サミットでの首脳

サインシートチームマイナス6%

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5.成果(インパクト)

• YouTube– 「かぐや」HDTV映像を71映像(日英語ナレーション付き)を登録し、公開している(4月末現在)。

今後、70映像を追加登録予定(6月末目標)。

– 3月末までで、10万回以上のアクセスがあり、日本のYouTubeのトップページのお薦めの映像と

して、満地球の映像が選ばれた。

– 4月からは、JAXA全体としてYouTubeで映像公開をしているが、日本のコンテンツとしては月間

の映像再生がもっとも多いチャンネルに選ばれている。また、6月に公開した超低高度のHDTV 映像は1週間で閲覧が33万回を超えるとともに、Yahoo!のヘッドラインでも紹介された。

広報

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5.成果(インパクト)

• 「かぐや」の開発に、延べ約3000名の衛星システム開発・地上システムの開発の技術者

が国内メーカーで従事し、最先端の宇宙技術開発のための人材育成および知識の継承に

貢献した。特に「かぐや」においては、観測機器開発などにおいて、中小企業がその先端技

術をもち開発に参加している。さらに、「かぐや」の開発・運用を通じて、述べ約8000名の

2次的な雇用が発生した。

雇用効果

A

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6.成否の要因に対する分析

項目 得られた教訓

1開発開始当初、「かぐや」は軌道上周回機と着陸機から構成されていたが、より確実な開発を目指し、開

発要素の多い軟着陸ミッションを切り離した。これによりリソースを周回機に集中投資することができ、ミッ

ション成功につながった。

適切なリスク管理と柔軟な

判断が必要

2リレー衛星(おきな)及びVRAD衛星(おうな)を主衛星から分離させる際は、所定のスピンを与えつつ放

出することを要請され、難易度の高い分離機構が必要だった。SELENEに先立って小型衛星(マイクロラ

ブサット)を用いて同等の分離機構を軌道上実証した。

技術開発要素の識別とプロ

ジェクト外の関係部門との連

携が重要

月の微弱な残留磁場、月周辺の電磁波環境を計測するために極めて高精度の検知器を搭載することか

ら、従来の一般的な衛星に比べて100倍以上厳しい電磁適合性(EMC)基準を定め、不要磁場及び電磁

波放射の抑制を徹底した。衛星構体表面を覆う断熱材(MLI)として炭素を練りこんだ導電性素材を使用

する、構体パネル間の電気抵抗を低減するために導電性のファブリックシートを追加する、不平衡電流を

計測することで不要放射を管理する、等の工夫を行い、打上げ後の高精度観測を可能にした。

ワーキンググループを組織

し、専門家の知見を集約す

ることが重要

414の搭載観測機器は何れも最先端の性能を有するものであり、開発が困難であったが、観測機器チーム

の科学者とプロジェクトの技術者が連携して開発管理を実施し、製造試験中に発生した不具合を確実に

処置したことで、打上げスケジュールをキープすることができた。

関係者間の信頼関係の熟成

が重要。また、こまめなイン

タフェース調整、取り決めの

文書化などが重要

射場作業中、他衛星プロジェクトからの水平展開を受けて、リレー衛星(おきな)及びVRAD衛星(おうな)

の搭載部品の極性が逆に取り付けられていることを発見した。その時点では正常に動作していたものの、

軌道上でのミッションを完遂できる保証がなかったため、射場作業を中断して部品の交換を実施した。そ

れにより、リレー衛星(おきな)及びVRAD衛星(おうな)とも設計寿命を超えてミッションを実施することが

できた。

迅速な不具合情報の伝達・

共有、水平展開を可能とす

る仕組みが重要

40

(1)開発時の課題及び発生した問題への対応

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6.成否の要因に対する分析

(2)軌道上で発生した問題への対応問題点 推定原因 対処 水平展開

姿勢制御に用いるリアクシ

ョンホイール4基中1基が故

障した。さらに後期運用段

階に入りもう1基が異常と

なった。

予圧が低いこと、予圧

バネの向きが逆であっ

たことの複合要因と推

定。

1基故障時は残りの3基による姿勢

制御を継続した。さらに1基が異常

となった後はスラスタ制御とするこ

とにより運用に支障はなかった。

関係プロジェクトに推定

原因を展開した。海外メ

ーカは情報入手の制約

が大きいので留意する。

蛍光X線分光計(XRS)の

計測ノイズが増加する不

具合が発生した。

X線CCDが放射線でダ

メージを受けたものと

推定。

CCDの冷却によりノイズを低減させ

て観測を継続したが、ミッション期

間を通じて太陽活動レベルの低い

状態が継続したこともあり、必要な

X線強度のデータを取得できなかっ

た。

X線CCDを用いる場合は

放射線(特に低エネルギ

ーの陽子)を受けることで

性能が劣化することを考

慮する。

粒子線計測器(CPS)の5

つの検出器のうち2つが電

源投入後短時間しか動作

しない不具合が発生した。

電源部品の偶発故障

と推定。

正常な3つの検出器及び電気系を

共用しているガンマ線分光計(GRS

)を優先して観測を行った。2009年5

月にGRS等の観測を停止して復旧

作業を実施したが、不具合が再現

した。

可能な範囲で電源部品

はなるべく共用としない。

月レーダサウンダー(LRS)

が観測モードに移行できな

い不具合が発生した。

電気回路の温度依存

性が原因と推定。

昇温することで観測復帰することに

成功した。

機器立上げ時に流れる

過渡的な電流(インラッシ

ュ電流)の温度依存性に

注意する。

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7.プロジェクトの効率性に対する分析 –スケジュールとコストの差異分析

計画見直し(平成15年度)

(A)開発完了時

(平成18年度)

(B)打上げ延期、衛星特別点検等

による追加

(B-A)

衛星システム 297 320 23

ロケット 93 115 22

地上システム 50 120 70

(1)スケジュール• 平成8年度の研究要望の段階では平成15年度を打上げ目標としていたが、その後の打ち上げ計画見直しを経て、平

成19年度に打ち上げた。

• 打上げ延期により、試験の充実等のさらなる信頼性向上に取り組むことができた。

(2)コスト• 長期資金については、平成15年7月の計画・評価部会時に比べて、115億円増額した。主として全社的な信頼性向

上の要求を受けて、より確実な開発、打上げ、運用のための対策を講じたものである。主な要因は、衛星特別点検、ロ

ケット信頼性向上作業、地上システム運用の確実化、打上げ延期に伴う追加作業等である。

• 「かぐや」のトータルコストとしては、追加した後の総経費ベースでも米国の代表的な衛星と同規模であり、2つの子衛

星を含めた14の観測機器を搭載しているという観点も考えると、非常に効率的であるといえる。例:

NASA

月探査衛星LRO

540百万ドルで7の観測機器、LANDSAT継続ミッション

800百万ドルで3の観測機器

• 地上システム開発・運用費は、米国の代表的な衛星では、トータルコストの中で10-30%である。「かぐや」の地上シ

ステムの開発・運用費は、トータルコストの約20%である。14という他の衛星の倍以上の種類の観測機器による複雑

な運用、観測データの処理、提供という機能を実現してることから、「かぐや」の地上システムの開発・運用は、効率的

なシステムであるといえる。例:

NASA

月探査衛星LRO

10%(ただし、データ処理・提供は含まず)、X線天文衛星

20%など

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7.プロジェクトの効率性に対する分析

•機関統合によるシナジー効果の活用

-月探査機「SELENE」は旧宇宙科学研究所(ISAS)と旧宇宙開発事業団(NASDA)の共同プロ

ジェクトを引き継いだもので、機関統合のシナジー効果として、指揮命令系統の一元化のもとでの

プロジェクト管理・システムエンジニアリング手法の推進により、開発、運用の効率化、確実化が実

現され、機関統合の意義、成果を立証するモデルケースとなった。

-また、SELENEの開発は、衛星システムおよびマネージメント手法は確実かつ信頼性の高いNAS

DA方式、観測機器は最先端のミッションを実現するための研究者主体のISAS方式を採用した。

•プロジェクト管理について

-開発にあたってのミッション要求定義、インタフェース仕様、コンフィギュレーションをJAXA標準で

文書化するとともに、これらを電子化し、共有できるようにした。あわせて、打ち合わせ議事録、技

術連絡書などについても、電子化した。品質管理において、ISO9000の品質管理マネージメント

を導入するとともに、信頼性管理システムを用いて、不具合管理の確実化および情報継承を図っ

た。

-予算およびスケジュールを電子化し、管理、共有化した

他の衛星開発への応用:マネージメント方式

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まとめ

• JAXAおよび観測機器チームにより、各観測機器の解析研究をさらに進めると

ともに、データ品質確認のための校正・検証作業を継続する。

• 平成21年11月1日から、観測機器チームが処理した標準成果物であるL2プ

ロダクトをJAXAからインターネットで一般に公開する予定である。

• 月の起源と進化に迫る研究を実施するために、複数の観測機器のデータを統

合して利用する統合サイエンスをJAXAと観測機器チームの研究者が協力し、

平成21年11月開始を目標に進めていく。

• 観測機器個別および統合サイエンスの結果は、月の起源と進化の解明に必要

なモデリング作業への入力情報として提供するために、関係機関と調整を進め

ていく。

• データの相互校正などを通じた国際協力を進めていく。

• 観測データを用いた将来の利用に関する可能性調査検討も実施していく。44

(1)かぐやの開発・運用を行い、ミニマム・フル・エクストラ成功基準を達成すること

ができた。これにより、世界最先端あるいは世界で唯一の月の観測データを日

本は有することとなった。

(2)今後の計画としては、次のとおりである。

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45

観測項目と代表的な性能

観測領域

元素分布

鉱物分布地形、

日照条件

など

表層構造

重力分布

磁場分布

放射線

環境

プラズマ

環境

そのほか衛星名 運用期間 軌道高度 データ公開 Al,Si,Fe,Ti等

エネルギ分解能

空間分解能

空間分解能

かぐや

SELENE

2007.9.14~

高度100km2009.11~一般公開

全域 140eV 20m 10m

地下

5km

までの

構造

全球、

裏側

月全域高エネ

ルギー

放射線

イオン、

電子の

エネ

ギー、

質量

UPIにより、地球

電磁気圏を観測50km以下

(後期)(現在は

チーム内)

チャンドラ

ヤーン

1号

(インド)

2008.10.22~

(2年間の

予定)高度100km

現在はチーム内

(データ取得

半年から1年後

の予定?)

全域140eV(*1)

80m(*2)

8m(*3)

× × ×○

(*4)○

(*5)

米国製の合成

開口レーダでの

氷観測

チャンゲ

1号

(中国)

2007.10.24~

2009.3.1

高度200kmチーム内のみ

全域 600eV 200m 120m ××

(注5)× ○ ○

マイクロ波放射

計でレゴリス観

LRO

(米国)

2009.5月ごろ 高度50kmデータ取得半年後

極域など × × 0.5m × × × ○ ×合成開口レーダ

で氷観測

注1:○はSELENEと同等の観測を行うことを示す。

注2:×は観測を行わないことを示す。注4:チャンドラヤーン1号搭載機器の補足

*1:英国製機器(1機器)及びインド製機器(2機器)により、元素分布を計測。代表的な性能は英国機器の性能。

*2:米国製機器(1機器)、ドイツ製機器(1機器)及びインド製機器(1機器)機器により、鉱物分布を計測。代表的な性能は米国機器の性能。

*3:インド製機器*4:ブルガリア製機器

*5:スエーデン製機器

注5:チャンゲ1号(中国)には、全て、中国製の観測機器を搭載。注6:月の科学において重要な、月の裏側の重力分布はインド,中国は観測しない。

月全球の表層構造,重力分布及び磁場・プラズマ圏の3次元分布同時観測ができる機能を持つのは「かぐや」だけである。

8.そのほか

–諸外国との比較