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46 4.2 廃タイヤの化学分析 本調査では、以下の目的のため、大連九州環境科技有限公司に委託し、中国で流通してい る廃タイヤの組成分析と有害性分析を行った。 ・中国製のタイヤの組成に大きなばらつきがないか ・特殊な物質が含まれていないか ・有害物質が含まれていないか なお、分析結果について、メーカーごとの製品の分析値を記載したが、これは1サンプル の分析結果にすぎず、あくまで製品のばらつき度合いを検証するために記載したものである。 各メーカーとも様々な種類の製品を出しており、ここで記載した数値がそれぞれのメーカー のタイヤすべてを代表するものではないことに留意いただきたい。 4.2.1 廃タイヤの組成分析 (1)分析サンプルの選定 本事業は中国大連市を中心として原料となる廃タイヤを収集してくるため、実際に収集さ れてくる可能性の高い廃タイヤの分析を行う必要がある。そのため、今回、大連市にあるタ イヤ販売店に対し聞き取り調査を実施し、タイヤ販売における人気ランキングを以下のとお りまとめた。このうち、上位 10 社中、8つの廃タイヤ(番号の横に*)を入手することがで きたため、そのほか2つのサンプルとともに分析のサンプルとして選定した。 4-6 大連におけるタイヤ人気ランキング No. メーカー名 産地 本社 経営方式 1* ミシュラン Michelin 中国 フランス 合弁 2* ブリヂストン Bridgestone 中国 日本 合弁 3* グッドイヤー Goodyear 中国 アメリカ 合弁 4 ピレリ Pirelli 中国 イタリア 合弁 5* ハンコック Hankook 中国 韓国 合弁 6 フェデラル Federal 中国 台湾 独資 7* クムホ Kumho 中国 韓国 合弁 8* 横浜 Yokohama 中国 日本 合弁 9* コンチネンタル Continental 中国 ドイツ 合弁 10* ダンロップ Dunlop 中国 日本(住友) 独資 注:中国では約 5 割のタイヤ製造企業が既に外国企業と合弁している。そのため、外資系タイヤの中国市場 の占有率も約 80%に達している。(各タイヤ販売店に電話ヒアリングを行った結果より)

4.2 廃タイヤの化学分析...77.735 10.780 6.734 0.005 0.007 0.026 0.197 1.918 0.139 2.459 4.2.2 廃タイヤの有害性分析 (1)分析サンプルと分析項目 今回、中国で流通している廃タイヤの有害性を調べるため、大連市内で入手できた上記

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Page 1: 4.2 廃タイヤの化学分析...77.735 10.780 6.734 0.005 0.007 0.026 0.197 1.918 0.139 2.459 4.2.2 廃タイヤの有害性分析 (1)分析サンプルと分析項目 今回、中国で流通している廃タイヤの有害性を調べるため、大連市内で入手できた上記

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4.2 廃タイヤの化学分析

本調査では、以下の目的のため、大連九州環境科技有限公司に委託し、中国で流通してい

る廃タイヤの組成分析と有害性分析を行った。

・中国製のタイヤの組成に大きなばらつきがないか

・特殊な物質が含まれていないか

・有害物質が含まれていないか

なお、分析結果について、メーカーごとの製品の分析値を記載したが、これは1サンプル

の分析結果にすぎず、あくまで製品のばらつき度合いを検証するために記載したものである。

各メーカーとも様々な種類の製品を出しており、ここで記載した数値がそれぞれのメーカー

のタイヤすべてを代表するものではないことに留意いただきたい。

44..22..11 廃廃タタイイヤヤのの組組成成分分析析

(1)分析サンプルの選定

本事業は中国大連市を中心として原料となる廃タイヤを収集してくるため、実際に収集さ

れてくる可能性の高い廃タイヤの分析を行う必要がある。そのため、今回、大連市にあるタ

イヤ販売店に対し聞き取り調査を実施し、タイヤ販売における人気ランキングを以下のとお

りまとめた。このうち、上位 10 社中、8つの廃タイヤ(番号の横に*)を入手することがで

きたため、そのほか2つのサンプルとともに分析のサンプルとして選定した。

表 4-6 大連におけるタイヤ人気ランキング No. メーカー名 産地 本社 経営方式

1* ミシュラン Michelin 中国 フランス 合弁

2* ブリヂストン Bridgestone 中国 日本 合弁

3* グッドイヤー Goodyear 中国 アメリカ 合弁

4 ピレリ Pirelli 中国 イタリア 合弁

5* ハンコック Hankook 中国 韓国 合弁

6 フェデラル Federal 中国 台湾 独資

7* クムホ Kumho 中国 韓国 合弁

8* 横浜 Yokohama 中国 日本 合弁

9* コンチネンタル Continental 中国 ドイツ 合弁

10* ダンロップ Dunlop 中国 日本(住友) 独資

注:中国では約 5 割のタイヤ製造企業が既に外国企業と合弁している。そのため、外資系タイヤの中国市場

の占有率も約 80%に達している。(各タイヤ販売店に電話ヒアリングを行った結果より)

Page 2: 4.2 廃タイヤの化学分析...77.735 10.780 6.734 0.005 0.007 0.026 0.197 1.918 0.139 2.459 4.2.2 廃タイヤの有害性分析 (1)分析サンプルと分析項目 今回、中国で流通している廃タイヤの有害性を調べるため、大連市内で入手できた上記

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分析サンプル(10メーカー分) サンプルの形状

(2)分析手順

・まず、廃タイヤから鉄を手作業で取り出し、鉄とゴム部分とを分けて分析を行った。

・分析を行う際には、薬品の中にサンプルを入れ、圧力や熱を加えて溶かし、その液体を組

成分析の機械にて測定した。

サンプル準備の様子

分析の様子

Page 3: 4.2 廃タイヤの化学分析...77.735 10.780 6.734 0.005 0.007 0.026 0.197 1.918 0.139 2.459 4.2.2 廃タイヤの有害性分析 (1)分析サンプルと分析項目 今回、中国で流通している廃タイヤの有害性を調べるため、大連市内で入手できた上記

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マイクロウェーブ分解 マッフル炉加熱

(3)分析結果

中国の廃タイヤの組成分析の結果は以下の表のとおりである。

当初心配されていたサンプル毎の組成のばらつきはほとんど見られず、また、その構成割

合についても、特殊な物質は多量に含まれておらず、日本のタイヤと同等であることが確認

された。

表 4-7 中国の廃タイヤ組成分析結果(%) サンプル名 C Fe H Al Ca Zn S O N その他

1.ミシュラン 78.600 10.980 6.415 0.005 0.005 0.026 0.666 1.665 0.076 1.563 2.ダンロップ 80.482 9.510 6.942 0.004 0.011 0.029 0.442 1.205 0.000 1.375 3.コンチネンタル 78.175 10.820 6.668 0.006 0.007 0.027 0.245 1.994 0.085 1.972 4.WINGRO 71.968 13.360 6.053 0.005 0.004 0.022 0.246 3.012 0.000 5.331 5.warrior 78.423 10.420 7.888 0.007 0.005 0.025 0.082 1.645 0.157 1.349 6.クムホ 77.842 11.210 6.334 0.005 0.011 0.026 0.071 2.109 0.107 2.286 7.ブリジストン 75.206 10.740 7.467 0.007 0.004 0.021 0.074 1.383 0.652 4.446 8.ハンコック 78.768 10.410 6.438 0.005 0.006 0.026 0.059 1.935 0.103 2.251 9.ヨコハマ 77.807 10.500 6.311 0.005 0.007 0.033 0.046 2.742 0.112 2.438 10.グッドイヤー 80.080 9.860 6.821 0.006 0.009 0.031 0.038 1.487 0.104 1.564 平均値 77.735 10.780 6.734 0.005 0.007 0.026 0.197 1.918 0.139 2.459

44..22..22 廃廃タタイイヤヤのの有有害害性性分分析析

(1)分析サンプルと分析項目

今回、中国で流通している廃タイヤの有害性を調べるため、大連市内で入手できた上記の

同じ 10サンプルについて、鉛(Pb)・水銀(Hg)・カドミウム(Cd)・六価クロム(Cr6+)の

含有率を分析した。

(2)分析方法

今回の分析は、ICP質量分析装置を使用して、有害物質の分析を行った。

Page 4: 4.2 廃タイヤの化学分析...77.735 10.780 6.734 0.005 0.007 0.026 0.197 1.918 0.139 2.459 4.2.2 廃タイヤの有害性分析 (1)分析サンプルと分析項目 今回、中国で流通している廃タイヤの有害性を調べるため、大連市内で入手できた上記

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■ 分析の様子

(3)分析結果

中国の廃タイヤの有害性分析の結果は以下の表のとおりである。

水銀(Hg)・カドミウム(Cd)・六価クロム(Cr6+)については、いずれも検出下限以下の

数値であり問題ないレベルである。鉛(Pb)については、ごく少量検出されたが、いずれも

RoHS指令の規制数値をはるかに下回るレベルであった。

Page 5: 4.2 廃タイヤの化学分析...77.735 10.780 6.734 0.005 0.007 0.026 0.197 1.918 0.139 2.459 4.2.2 廃タイヤの有害性分析 (1)分析サンプルと分析項目 今回、中国で流通している廃タイヤの有害性を調べるため、大連市内で入手できた上記

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表 4-8 中国の廃タイヤの有害性分析結果

サンプル名 Pb

ppm

Cd

ppm

Hg

ppm

Cr6+

ppm

1.ミシュラン 15.20 <3 <5 <5 2.ダンロップ 14.60 <3 <5 <5 3.コンチネンタル 8.46 <3 <5 <5 4.WINGRO 7.08 <3 <5 <5 5.warrior 23.30 <3 <5 <5 6.クムホ 8.35 <3 <5 <5 7.ブリジストン 22.10 <3 <5 <5 8.ハンコック 35.40 <3 <5 <5 9.ヨコハマ 20.40 <3 <5 <5 10.グッドイヤー 23.30 <3 <5 <5 平均値 17.82 <3 <5 <5 RoHS 指令規制数値 1000 1000 1000 100