20
Ⅱ―41 3.合流式下水道の実態調査 3.1 国内における合流式下水道改善に関する取り組み状況 3.1.1 合流式下水道について (1)排除方式の特徴 下水道の排除方式としては、汚水と雨水を別々の管渠系統で排除する分流式と、汚水と雨水 を同一の管渠系統で排除する合流式がある。 各排除方式の特徴 ①分流式 ・管が2系統となるので、狭い道路では施工が困難であり、汚水管、雨水管を建設する場合は 高価となる。汚水整備のみの場合は、安価である。 ・汚水はすべて処理場で処理されるが、雨水はそのまま水域へ放流される。 ・誤接合に対する十分な指導が必要。 ②合流式 ・管が1系統で済むので、地下埋設物との競合は少なく、施工容易で、安価である。 ・管径が大きく管こう配が小さいので、管内に堆積し易い。雨による管内洗浄が行われる。 ・初期汚濁雨水を収集・処理することが可能である。遮集量を超える分は、未処理で水域へ 放流される。 ・汚濁物が水域へ流出し、水質汚濁・環境リスクのおそれがある。未処理放流等の対策が求め られている。 図3-1 分流式下水道と合流式下水道 出典:「日本の下水道(平成 12 年)」

3.合流式下水道の実態調査 3.1 国内における合流式下水道改善 ... · 2004. 3. 3. · 20.1% 2 42千 ha 15.6% 8千 ha 5.5% 千 ha 0.8% 合流式下水道を含む都市

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Ⅱ―41

3.合流式下水道の実態調査 3.1 国内における合流式下水道改善に関する取り組み状況 3.1.1 合流式下水道について (1)排除方式の特徴

下水道の排除方式としては、汚水と雨水を別々の管渠系統で排除する分流式と、汚水と雨水を同一の管渠系統で排除する合流式がある。

各排除方式の特徴

①分流式

・管が2系統となるので、狭い道路では施工が困難であり、汚水管、雨水管を建設する場合は

高価となる。汚水整備のみの場合は、安価である。

・汚水はすべて処理場で処理されるが、雨水はそのまま水域へ放流される。

・誤接合に対する十分な指導が必要。

②合流式

・管が1系統で済むので、地下埋設物との競合は少なく、施工容易で、安価である。

・管径が大きく管こう配が小さいので、管内に堆積し易い。雨による管内洗浄が行われる。

・初期汚濁雨水を収集・処理することが可能である。遮集量を超える分は、未処理で水域へ

放流される。

・汚濁物が水域へ流出し、水質汚濁・環境リスクのおそれがある。未処理放流等の対策が求め

られている。

図3-1 分流式下水道と合流式下水道 出典:「日本の下水道(平成 12 年)」

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Ⅱ―42

(2)合流式下水道

合流式下水道は、家庭などから排水される汚水、および雨天時に流出してくる雨水を合流管

に流入させ、晴天時には汚水を処理場に送水し全量を処理し、雨天時には雨水吐き室またはポ

ンプ場などから処理場に送水しきれない下水を河川などの公共用水域に放流するシステムであ

る。

Q:晴天時計画時間最大汚水量

図3-2 合流式下水道のイメージ図

遮集管 合流管 越流せき

放流管

公共用水 処理場へ

越流

雨水吐き室

汚水 雨水

下水管渠

雨水吐き室

汚水 雨水

下水管渠

ポンプ場

遮集管

遮集管

河川

高級処理

簡易処理

処理場

流入 最初沈殿池 エアレーションタンク 最終沈殿池 消毒施設

晴天時

雨天時(1Q 超過量)

河川等

放流

簡易処理のしくみ

高級処理

簡易処理

最初沈殿池 (簡易水処理施設)

消毒施設 (簡易水処理施設)

流入

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Ⅱ―43

191 192 192

689

2027

20 69 1261 8

21527

0

500

1000

1500

2000

2500

~S19年 S20年代 S30年代 S40年代 S50年代 H11年

実施

都市

合計

分流式

合流式

2219

881

40615377

21

(3)現在の諸元

① 合流式下水道整備都市

昭和 30 年代までの下水道は、河川の下流部にある大都市を中心として、浸水防除と下水道の

普及促進を重要テーマとしていたため、雨水と汚水を同時に収集できる合流式下水道による整

備が積極的に図られていた。その後、昭和 45 年の下水道法の一部改正により下水道の目的に「公

共用水域の水質の保全に資すること」が加えられ、以降、分流式下水道により重点的に整備さ

れている。

国土交通省の調査では、平成 11 年度における合流式下水道と分流式下水道の都市数及び面積

は以下の表の通りである。合流式下水道を採用している都市は、全国で 192 都市、処理面積は

約 227 千 ha 程度である。

表3-1 合流式下水道と分流式下水道の都市数及び計画面積 項目 合流式 分流式 合計 都市数 192 2,027 2,219

処理面積(千 ha) 227 1,389 1,616

資料:「国土交通省調査」

合流式下水道計画区域が多くを占める神田川流域においても、下水道の普及率の増加に伴い、

汚濁が進んだ都市河川の水質は年とともに回復している。このことからも、合流式下水道も公共

用水域の水質保全に貢献していることがわかる。一方で、未処理放流等の問題が顕在化するよう

になった。図3-4に神田川の水質変化を示す。

図3-4 神田川の水質の経年変化 出典:「東京都下水道局ホームページ」

図3-3 下水道着手都市の推移 出典:「下水道統計(平成 11 年度版):日本下水道協会」

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Ⅱ―44

昭和 20 年代 49 都市

(25.5%)

昭和 30 年代 57 都市

(29.7%)

昭和 40 年代 65 都市

(33.9%) ~昭和 19 年

20 都市(10.4%) 昭和 50 年代 1 都市(0.5%)

昭和 47 年 15 都市 177 都市

凡 例

● 昭和 19 年まで ● 昭和 20 年代 ● 昭和 30 年代 ● 昭和 40 年代 ● 昭和 50 年代

② 合流式下水道実施都市の分布

※昭和 47 年「下水道施設 設計指針」の改訂により、 分流式下水道が原則とな っている。

合流式下水道を実施している都市は、192 都市であり、ほぼ全国に広く分布し、かつ主要都

市で多く採用されている。

合流式下水道の整備区域は全整備面積の約 20%を占めている。また、合流式下水道は、大

都市で多く採用されている。

40

図3-5 日本及び米国における合流式下水道実施都市一覧

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Ⅱ―45

10

20 30 40

50

60

70

80

90

人口規模 100 万人以上 50~ 100 万人 30~50万人 10~30 万人 5~10万人 5 万人未満

総人口 (万人) 2,513 666 1,755 2,616 1,557 3,500 12,607

合流都市数 12 10 34 77 34 25 192 全体整備面積(千 ha) 267 67 169 270 146 247 1,166

合流式の処理面積(千 ha) 127 14 34 42 8 2 227

合流式の占める面積割合 47.6% 20.9% 20.1% 15.6% 5.5% 0.8% 19.6%

合流式の処理面積割合(%)

127 千 ha 47.6%

14 千 ha 20.9%

34 千 ha 20.1%

42 千 ha 15.6%

8 千 ha 5.5%

2 千 ha 0.8%

合流式下水道を含む都市

資料:「国土交通省調査」

図3-6 都市規模別の合流式下水道整備状況

図3-7 実施都市の処理面積について

実施都市の処理面積について 市町村

T

合流区域

分流式

合流式を採用している都市の多くは、心部は合流式、の他の区域は分流式で整備している場合が多いため、一都市で合流式と分流式が混

在している。

T

A 処理区

B 処理区 分流区域

汚水

雨水

越流水

河川

雨水吐き室

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Ⅱ―46

(4)合流式下水道改善対策に関する指針について

暫定指針の内容 ① 改善目標の考え方

改善目標の決定の基本として、以下のような考え方が参考となり、このうち、一般的に

は1)の考えにたてばよく、地域によって、放流先水域の水質保全に特に配慮を必要とす

る場合には2)の考えにたつことも必要となる。

1)越流水による汚濁負荷量(越流負荷量)は、年間の管渠内を流下する汚濁負荷量(年間

発生負荷量)に対し、相当小さな割合でなければならない。越流負荷量をどの程度まで

下げる必要があるかの判断に際しては、放流先水域の水質保全上の効果を考慮すること

は当然であるが、越流水対策に要する費用と削減した負荷量(又は越流負荷量)との関

係を考慮し、費用対効果の面で効果的な計画の規模を決定することが大切である。

2)対象の合流式下水道を、仮に分流式下水道に置き換えてみて、分流式下水道の雨水管渠

から年間に放流される汚濁負荷量と同程度の越流負荷量となるようなレベルを設定する

ことも一つの考え方である。

② 改善計画の目標

原則として、年間晴天時発生 BOD 負荷量に対する越流 BOD 負荷量の割合を5%(削減

率 95%)程度以下とする。なお、全国的にみて平均的な地域については、遮集雨水量を2

mm/時とするか、又は、それと同程度以上に越流 BOD 負荷量を削減する。

③ 改善計画の実施

遮集管渠容量の増大を基本とするが、雨水吐き室、ポンプ場及び処理場の状況を考慮し

て、目標を達成するために全体的な改善計画を策定する。又、改善計画は、遮集管渠、遮

集方式及び雨水吐き室の改善、分流化、浸入水対策、雨水流出量及び発生源の制御等、地

域の実情、実施の可能性、経済性等を考慮して策定する。

合流式下水道改善対策に関する指針としては、「合流式下水道越流水対策と暫定指針

1982 年(昭和 57 年)」がある。

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Ⅱ―47

3.1.2 合流式下水道改善対策施設の概要

図3-8 合流式下水道の改善対策施設の一覧

管路施設に関する対策 維 持 管 理 管 路 の 清 掃

管 路 の 補 修

不 明 水 対 策

オリフィス

ヴォルテックスバルブ

ゲ ー ト

膨 張 式 ダ ム

背 水 ゲ ー ト

遮 合 流 の 改 善

流 量 制 御

吐き口の統廃合

分 合 流 の 改 善

遮 集 量 の 増 大

バイパス管

ループ管

リアルタイムコントロール

拡 水 法

井 戸 法

オンサイト貯留

遮 集 能 力 改 善

既 存 管 路 の 有 効 利 用

分 流 化

オフサイト貯留

ろ過スクリーン

雨天時越流水スクリーン

トラベリングスクリーン

回転ドラムスクリーン

その他簡易なスクリーン

雨 水 沈 殿 池

渦 流 式 固 形 物 分 離 装 置

傾 斜 板 沈 殿 池

貯留・浸透に関する対策 浸 透 浸透ます

浸透トレンチ

透 水 性 舗 装

浸 透 井

公 園 貯 留

校 庭 貯 留

広 場 貯 留

駐 車 場 貯 留

棟 間 貯 留

各 戸 貯 留

貯 留

処理に関する対策 きょう(夾)雑物対策

固 液 分 離

加 圧 浮 上 法

高 速 凝 集 沈 殿 法

高速ろ過法

雨 天 時 下 水 活 性 汚 泥 処 理 法

好気性ろ床法

塩 素 消 毒

その他の消毒

簡 易 処 理 の 高 度 化

高 級 処 理 量 の 増 大

消 毒

晴天時のドライ化

スクリーンの目幅縮小

オイルフェンスの設置

道 路 清 掃

面的排水系統と屋根からの排水系統の分離

ますの清掃

施 設 機 能 改 善

市街地ノンポイント 汚 濁 負 荷 対 策

ごみ捨ての管理

商業、産業施設敷地からの流出管理

排 出 者 対 策

発生源に関する対策

融 雪 時 の 対 策 簡 易 処 理 の 高 度 化

高 級 処 理 量 の 増 大

合 流 改 善対 策

ポンプ施設に関する対策

ディスクスクリーン

ハイドロジェットスクリーン

マイクロディスクフィルター

雨 水 滞 水 池

インライン貯留管

管 路 の 清 掃

フラッシング

クリーニングボール

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Ⅱ―48

(1)個別対策の概要、対策事例、その効果

① 管路の清掃

合流式下水道の管渠においては、晴天時汚水量が雨天時下水量に比べて極端に少ないことから、晴天時に十分な掃流力が得られず汚物が堆積しやすい状況である。特に、掃流力の小さい管路や伏せ越し部、雨天時のみに流れるインバート部、損傷(不陸)部等に堆積しやすく、堆積した砂や汚濁物質は、雨天時にファーストフラッシュとして公共用水域に越流する場合もある。 このため、定期的に管路内の清掃を行い、雨天時に越流する汚濁物質を削減する。 ●効果:管渠の流下能力確保及び越流水の汚濁負荷量の削減。

●課題:清掃による効果の定量化手法を確立する必要がある。

② 吐口の統廃合

合流式下水道の吐口は、雨天時において未処理下水が流出する。吐口は数も多く全ての吐口で対応することは困難であり、また未処理下水対策を実施するにも用地の確保が困難な場合が多い。このため、吐口を統廃合し、越流回数、越流水量を削減し、汚濁負荷の流出を防止する。 ●効果:越流回数、越流水量を削減し、汚濁負荷の流出を軽減する。

吐口の維持管理及び越流水の水質監視が容易になる。

●課題:統廃合箇所の選定手法の考え方をとりまとめる必要がある。

放流先

吐口(廃止)

遮集管渠

合流管渠雨水吐き室

[対策後]

放流管渠(新設)雨水滞水池

(新設)

放流先

吐口

遮集管渠

合流管渠雨水吐き室

[対策前]

放流管渠

吐口 吐口(廃止)吐口

吐口(新設)

吐 口 の 統 廃 合 例

出典:「下水道維持管理指針、管路施設編、(社)日本下水道協会、1991」

高圧洗浄車による管路清掃の例

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Ⅱ―49

③ 遮合流の改善

遮合流とは、遮集管が再び合流管として集水し、遮集下水を再三再四、下流の雨水吐き室で越流させてしまう遮集方式である。 このような遮集方式では、降雨によっては越流堰の分水特性から下流側の雨水が優先的に遮

集され、上流側の遮集下水が雨水吐き室から放流されてしまうため、改善が必要である。 対策として遮集管に直接接続された合流管を分離し、新たな専用の遮集管を設け、遮集能力

の改善を図る。 ●効果:越流回数、越流水量を削減し、汚濁負荷の流出を軽減。

●課題:新たな専用の遮集管を建設する必要がある。

④ 分合流の改善

合流式下水道で整備を始めた都市の多くは、その後(昭和 47 年)の「下水道施設計画・設計指針と解説」の改定により、「原則として新たに着手するときは分流式で計画する」こととなったため、処理区の一部を分流式下水道に切り替えて整備を進めることとなった。 分合流とは、上流の分流式下水道の汚水が直接下流の合流管へ接続されている状態である。このような状態では、分流式下水道で集められた汚水が雨天時に合流式下水と混合し、雨水

吐き室から公共用水域へ放流されることになり、雨天時の越流負荷量の増大を招く一因になっている。 対策として汚水管渠を別系統で処理場へ送ることで対応することができる。

●効果:越流回数、越流水量を削減し、汚濁負荷の流出を軽減。

●課題:新たな専用の分流汚水管を建設する必要がある。

放流先

遮集管渠

合流管渠雨水吐き室

[対策前]

遮集管渠(新設)

放流先

吐口

遮集管渠(廃止)

合流管渠雨水吐き室

[対策後]

放流管渠吐口 放流管渠

(廃止) (廃止)

放流先

吐口

遮集管渠

合流管渠

雨水吐き室

[対策前]

放流管渠

処理場

分流式下水道区域

放流先

吐口

遮集管渠

雨水吐き室

[対策後]

処理場

分流式下水道区域

合流管渠(一部廃止) 分流管渠(新設)

合流式下水道区域 合流式下水道区域

遮 合 流 の 改 善 例

分 合 流 の 改 善 例

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Ⅱ―50

⑤ 遮集量の増大

適切な遮集管の能力は都市により異なっているが、これまで多くの都市で晴天時時間最大汚水量の3倍(3Q)を計画遮集量としている。しかし、汚水量の増加により計画遮集量を確保できなくなってきている場合がある。 このため、計画遮集量に対する不足分をまかなうための新たな遮集管を増設する。 ●効果:越流回数、越流水量を削減し、汚濁負荷の流出を軽減。

●課題:新たな遮集管を建設する必要がある。

⑥リアルタイムコントロール(RTC)

RTCとは、施設能力の最大活用を図るため、排水システム全体を監視しながらゲート、ポンプ等の制御を行うことである。 従来の雨水排水施設はある一定の計画降雨に対しては最適に設計されているが、それ以外の

降雨に対しては柔軟に対応できず、施設能力を十分に発揮できないことがある。RTCを用いた場合、変化する様々な降雨パターンに対し、降雨量や管内水位などを監視し、ゲートやポンプ等を適正に制御することにより、雨水排水施設の流下能力や貯留能力を最大限に活用することができる。浸水対策では管渠システムの排水能力や調整池のピークカット能力を最大限に、越流水対策では越流頻度、越流負荷量を最小にするために管渠システムの貯留能力を発揮させるようにする。 ●効果:越流回数、越流水量を削減し、汚濁負荷の流出を軽減。

●課題:強い降雨の移動を高精度・高速で予測する技術の開発が必要である。

浸水対策への切り替えの判断基準の明確化及びフェイルセーフの確立。

放流先

吐口

遮集管渠

合流管渠

[対策前]

放流管渠

吐口

放流先

吐口

遮集管渠

合流管渠越流堰(新設)

[対策後]

放流管渠

吐口

遮集管渠(増設)

処理場処理場

処 理 場

地 上 雨 量 計

降 雨 レ ー ダ ー

光ファイバーケーブル

ポンプ場

可 動 堰

雨 水 貯 留

幹 線 放 流 ポ ン プ

送 水 ポ ン プ

管 渠 内 水 位 計

流 入 予 測 ・ 操 作 支 援 R T C シ ス テ ム

遮 集 量 増 大 の 例

RTCを適用したポンプ排水システム例(東京都)

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Ⅱ―51

⑦分流化

分流化は、合流式下水道の排除方式を雨水管と汚水管に分離するもので、雨水吐き室からの越流水が解消されることや、雨水ますからの臭気対策などと併せて実施できる長所を有するが、その反面、一般的に費用が高いことや、整備に長期間を要する。 分流化の手法は、汚水管を新設する場合と雨水管を新設する場合がある。 ●効果:越流水を無くし、汚濁負荷の流出を防止。

●課題:宅内の汚水・雨水の分離が必要である。

すべて切り替わるまでには時間を要することから、分流化の効果が現れにくい

⑧浸透ます、浸透トレンチ

浸透施設は、雨水を表面流出水として排除する代わりに、地下への浸透、浸透施設の空隙内での貯留により、雨水流出量の抑制、小降雨時の越流頻度低減等の効果を発揮するものである。 浸透ますは、側面や底面に浸透孔等を有する透水性ますとその周囲の充填材から構成され、

集水した雨水を側面および底面から地中へ浸透させる構造物である。浸透トレンチは、浸透管(有孔管、ポーラス管等)とその周囲の充填材から構成され、雨水を導き貯留し、側面および底面から地中へ浸透させる構造物である。また、浸透ますと浸透トレンチは組み合わせての使用が可能である。 ●効果:雨水流出量の抑制により、越流回数、越流水量を削減し、汚濁負荷の流出を軽減。

地下水の涵養

●課題:目詰まり、地下水位による浸透能力の低下、及び地下水汚染について留意する必要

がある。また、地盤・地下水位条件により、浸透適地が限定される。

全ての家で切替えが必要

縦断的に取付可能かのチェック

放流渠

遮集幹線

希釈倍率は分流化の程度により高くなる。

汚 水 管 新 設 の 例

出典:「下水道雨水浸透施設技術マニュアル(本編)、(財)下水道新技術推進機構、1997 年2 月」

雨水浸透施設の設置イメージ図

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Ⅱ―52

⑨オンサイト貯留(棟間貯留)

オンサイト貯留とは、雨水の移動を最小限に抑え、雨が降ったその場所で貯留し、雨水の流出を抑制するもので、現地貯留とも呼ばれている。一般に、公園、校庭(運動場)、広場、駐車場、集合住宅の棟間等での貯留、及び各戸貯留などが該当する 棟間貯留とは、集合住宅の棟間の芝生等に設ける貯留施設をいう。 ●効果:雨水流出量の抑制により、越流回数、越流水量を削減し、汚濁負荷の流出を軽減。

●課題:降雨後の水はけや、団地の景観に与える影響等について留意する必要がある。

⑩オフサイト貯留(雨水滞水池,貯留管)

雨水滞水池とは、降雨初期の高濃度下水及び雨水吐き室やポンプ場からの越流水を貯留し、降雨終了後に処理場に送水して高級処理を行い、排水区域からの放流汚濁負荷量を削減する施設である。 施設の形状としては、「滞水池タイプ」と「貯留管タイプ」に区別できる。 ●効果:雨水流出量の抑制により、越流回数、越流水量を削減し、汚濁負荷の流出を軽減

●課題:貯留した下水を降雨終了後に処理場に送水し、処理を行う必要がある

出典:「札幌市下水道局ホームページ」

集合住宅棟間での設置例 棟間貯留のイメージ図

貯留管による改善効果のイメージ

A棟 B棟

U 型 側

溝 雨水管

進入路

雨水管

U 型側溝

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Ⅱ―53

⑪ろ過スクリーン

合流式下水道での夾雑物には、厨芥類、紙・布類、ビニール類、草木類、不燃物類など多種多様である。国内においては、夾雑物対策として、そのほとんどが処理場やポンプ場でのスクリーン設備を中心とした対策であった。これら夾雑物が、雨天時に雨水吐き室や簡易処理放流口から流出し放流先水域の美観を悪化させたり、様々な利水障害を引起こしている。 ろ過スクリーンは、雨天時合流式下水に含まれる夾雑物が、河川等の公共用水域に流出する

ことを防止するための施設で、雨水吐き室内の越流堰上に設置される。 ●効果:夾雑物の除去率は、60~80%程度。(SS等にも除去効果が認められる)

●課題:捕捉された 夾雑物は遮集管を通じて処理場に流下するので、処理場での対策が必要

である。また、目詰まりによる水位上昇の危険性があり検討が必要である。

⑫小型スワール分水槽

小型スワール分水槽は、雨水吐き室に代わる施設として設置され、スワール分水槽の接線方向から下水を流入させることにより渦流を発生させ、渦流に伴う慣性力により、ゴミなどの固形物と下水とを分離させ、固形物を中央に集めて除去する施設である。 これまでは、直径 10~30m 程度のスワール分水槽を設置した実績はあるが、近年、直径 3~4m

といった小型のスワール分水槽が開発され、実用化が図られようとしている。

●効果:SS除去率は約 40~80%である。(米国コロンバス市での実験結果より)

●課題:国内の実績がないので、実証試験を行い、その適用性を検討することが望ましい。

放流先

吐口

遮集管渠

合流管渠

雨水吐き室

放流管渠

処理場

マンホール

流入管渠 搬入出口

遮集管渠

放流管渠 雨水吐き室

ろ過スクリーン

ろ過スクリーン構造図と設置例

小型スワール分水槽の設置位置 小型スワール分水槽の概念図

ゴミ等も含めて下水処理場へ送水

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Ⅱ―54

P

MMMMM

MP

P

P

無機凝集剤 高 分 子 凝 集 剤 排出スラッジ

集 水 樋

処理水

凝集汚泥掻寄機

⑤循環ポンプ凝 集 汚 泥

④ 沈 殿 槽

③フロック形成槽②注入撹拌槽①急速撹拌槽

原水ポンプ

スクリーン槽

原水

傾 斜 板

⑥マイクロサンド回 収 装 置

マイクロサンド自 動 供 給 装 置マイクロサンド

⑬高速凝集沈殿法

高速凝集沈殿法は、マイクロサンドを核として下水中のSSを凝集剤により凝集させて比重を大きくし、短時間での凝集沈殿を可能とする技術である。 この施設は従来の凝集沈殿処理施設と比較して、処理時間が短縮されており、施設面積も少

なくすむ。このため、短時間で多量に発生する雨水の処理に有効である。 ●効果:高速凝集沈殿法の除去率(事例)

項目 S S COD BOD T-P T-N 除去率(%) 80 55* 65* 80 15*

*本法は凝集処理のため、SS、T-P の除去性能は確実性があるが、他の水質項目の除去率については原水の組成(溶解性成分、固形物の割合)により異なる

●課題:国内の実績がないことから、実証試験を行い、その適用性を検討し採用する必要

がある。

⑭雨天時下水活性汚泥処理法 晴天時には標準活性汚泥処理法で運転し、雨天時に従来簡易処理を行っていた晴天時時間最

大汚水量(1Q)以上の下水を、ステップ水路を利用してステップ水路の最終端から流入させることにより、最終沈殿池の固形物負荷を大幅に高める事なく2~3Qの雨天時合流式下水を活性汚泥処理するものである。既存施設を有効に活用することにより対策を早期に実施できるため、コストパフォーマンスが高い対策手法である。 ●効果:雨天時活性汚泥処理法の除去率(大阪市平野処理場の実験結果,Qsh=237,600m3/日)

雨天時活性汚泥処理 雨天時現状処理 晴天日処理 下水処理量 1.77~3.54 Qsh 0.89~1.90Qsh 1.00Qsh

沈殿池出口 終沈流出 沈殿池出口 終沈流出 沈殿池出口 終沈流出 平均水質 (mg/l) 93 8.2 93 6.3 97 5.5

BOD

平均除去率(%) 91 93 94 沈殿池出口 終沈流出 沈殿池出口 終沈流出 沈殿池出口 終沈流出 平均水質 (mg/l)

44 12.9 44 11.3 49 12

COD 平均除去率(%) 71 74 77

沈殿池出口 終沈流出 沈殿池出口 終沈流出 沈殿池出口 終沈流出 平均水質 (mg/l) 83 7.8 83 6.0 61 6.0

SS

除去率(平均%) 91 93 90

●課題:流入変動や負荷変動に対する問題を含めた運用方法を確立する必要がある。

微細砂粒子を用いた

高速凝集沈殿法の処理フロー(例)

簡易処理後に放流

最初 沈殿池

1Q

反応タンク

最終 沈殿池

3Q

2Q

雨天時の使い方

ステップ水路

最初 沈殿池

1Q

反応タンク

最終 沈殿池

3Q

1~2Q

従来の簡易処理法

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Ⅱ―55

⑮塩素消毒

雨天時下水中には、消化器系由来の病原性微生物が含まれているおそれがあり、これらを消毒したのち放流することは疫学上重要なことである。一般に、下水中から病原性微生物を検出することは困難であることから、その存在を間接的に知る指標として大腸菌群数が用いられている。 塩素剤の注入制御としては、残留塩素濃度を一定の範囲になるように、残留塩素計からフィー

ドバック制御を行う。

●効果:塩素注入濃度と接触時間と大腸菌群数の減少の傾向(川崎市の事例)

出典:「合流式下水道越流水の消毒対策、月刊下水道、2000年4月」

●課題:残留塩素は生物に対して急性毒性があり、持続性も高いので、放流先の水生生物に

対する影響に留意する必要がある。塩素注入量の制御が難しい。

遊離型塩素は有機物と反応して発ガン性を有する有機塩素系化合物等の塩素副生成物

を生成させるおそれがあり、放流口の下流側に水道水源の取水をしている箇所におい

ては留意する必要がある。

⑯オゾン消毒

オゾンによる消毒は、細菌の細胞膜の破壊または分解によるとされており、塩素剤が細菌の細胞膜を通過して吸収系酵素を阻害し細菌の同化作用を停止させて消毒するのに比べ、消毒速度が速いといわれている。未処理放流等に対する効果の検証は行われていない。 ●効果:オゾンは水生生物に急性毒であるが、急速に自己分解するため持続性がない。

脱色及び脱臭に効果がある。

●課題:濁水を対象とする場合、消毒を効果的に行うために前処理を組み合わせる必要がある。

設備費、運転費は高価である。

オゾン添加にともなって、発ガン性を有する臭素酸イオンが発生するため、今後その

安全性等について検討する必要がある

オゾン発生設備 注入装置 反応タンク 排オゾン処理装置

原水

前処理施設

放流水

オゾン反応設備

オゾン消毒施設のフロー図

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Ⅱ―56

⑰ポンプ施設に関する対策

ポンプ施設に関する対策として、晴天時のドライ化、スクリーンの目幅縮小、オイルフェンスの設置が挙げられる。 ・ポンプ施設に関する対策の全体イメージ

出典:「東京都下水道局ホームページ」

⑰―1.晴天時のドライ化

ポンプ場では、雨水ポンプ運転終了後に、ポンプますや雨水沈砂池に雨水や堆積物が残留する。この滞留水には、汚濁物が含まれているため、放置しておくと嫌気化し、悪臭を発生する。また、次降雨における雨水ポンプ稼動時には、その嫌気化した黒い濁水が、放流水とともに放流先に越流されてしまうため、雨水ポンプ運転終了後に、ポンプ井や雨水沈砂池に残った滞留水を汚水管に送水し、処理場で処理を行う必要がある。 ●効果:ポンプ施設から放流される汚濁負荷量の削減。

●課題:既設のポンプ施設での採用にあたっては、大幅な改造が必要となる場合がある。

遮集管

処理場へ

流入管

集砂装置のイメージ図

集砂装置と揚砂ポンプを

活用したドライ化の例

排水ピット

揚砂ポンプ 集砂ノズル

流入

ポンプ井

ゲート室

ポンプます

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Ⅱ―57

対 策 前 対 策 後

⑰―2 スクリーンの目幅縮小

ポンプ施設では、雨水沈砂池の後段に比較的大きなゴミなどを除去する目的で、スクリーンが設置されている。しかし、捕捉しきれない細かな沈砂池堆積物や流入水に含まれるごみや白色固形物等が流出する。このため、スクリーン目幅を縮小することは、これらの汚濁物質の流出を抑制する対策として有効である。 ●効果:ポンプ施設から流出する夾雑物の削減

●課題:目詰まりによる水位上昇の危険性も増すため、目幅の設定に留意する必要がある

スクリーンの目幅縮小による対策効果のイメージ

⑰―3 オイルフェンスの設置

ポンプ施設の放流口からは、スクリーンで捕捉しきれない細かな汚濁物質が公共用水域に流出する場合がある。このため、捕捉されずに流出する浮遊性のゴミや白色固形物を放流口にオイルフェンスを設置して捕捉し、降雨後に回収する。 ●効果:ポンプ施設から流出する夾雑物の抑制

●課題:降雨後に捕獲した浮遊性のゴミや白色固形物の回収を行う必要がある

出典:「東京都下水道局ホームページ」

対策前 対策後

オイルフェンスの設置例

オイルフェンス設置による対策効果のイメージ

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Ⅱ―58

(2)合流式下水道改善に係る地方公共団体の取組事例

①札幌市における取組み

遮集管を増強するとともに、雨天時・融雪時における未処理放流等による水質汚濁を解消するため、創成川処理区において内径5mの貯留管(46,400m3)を設置している。

②仙台市における取組み

未処理下水の対策を段階的に行うため、第1段階で吐口からの夾雑物の流出を防止するようスクリーンを設置し、第2段階で汚水の流出を減らすよう雨水貯留管を設置している。

③大阪市における取組み 未処理放流等の流出を防止するため、雨水を一時貯留するための雨水滞水池の建設や傾斜板沈殿池による簡易処理の高度化を図っている。また、下水管内の堆積物を無くすよう、マンホール底部の「泥だめ」を無くすインバート化を進めている。また、平野処理場では、雨天時簡易放流水をステップ流入を使って活性汚泥処理(「(1)⑭雨天時下水活性汚泥処理法」を参照)を試みている。

降雨時には管渠内流量が増大し、「泥だめ」に堆積

した汚濁物、夾雑物が掃流され、下流側にある吐口から越流してしまう。このため、「泥だめ」を埋めることで、汚濁物、夾雑物が停滞しないようにすることで、雨天時越流水の汚濁負荷削減を図ることができる。

出典:大阪市ホームページ

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Ⅱ―59

④川崎市における取り組み

4つの未処理下水貯留施設(雨水滞水池:貯留能力 89,280m3)を設置している。また、5つ

の雨水ポンプ場で塩素消毒対策を実施している。

⑤東京都における取組み(合流改善クイックプラン)

従来から進めている中期的対策としての「合流式下水道改善の全体計画」に加え、緊急対策

としての「合流改善クイックプラン」を着実に推進し、段階的に合流式下水道を改善。

「クイックプランの特徴」 ・白色固形物(油の塊)や雨の日に流出する大きなゴミの除去など、水辺環境を守る対応を実施。 ・内部河川や運河等の閉鎖性水域、下水再生水の導入により清流が復活した河川に重点化。 ・計画期間は平成12年度から平成16年度までの5カ年間。 ・下水道部局のみの対応ではなく、都民や道路管理者等へも協力要請。

合流改善クイックプランの全体イメージ図

出典:川崎市ホームページ

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Ⅱ―60

(参考)オイルボール等問題の顕在化

東京都港区にあるお台場海浜公園は、砂浜も整備され親水公園として多くの人に親しまれてい

る。この公園内に平成 11 年度頃から、白色固形物質が漂着し問題となっている。

これは、手のひらぐらいの大きさで、動植物の構成成分である脂肪酸が主成分である。これら

の物質は、一般家庭や飲食店等で利用されており、処理場や下水管に付着していた塊が、雨天時

の下水により洗い流され、公共用水域に流出したものと考えられる。

東京都では、処理場放流管にオイルフェンスを張る等の対策を行うほか、管内の清掃を強化し

流出防止に努めている。しかし、下水へ流入する油を減らす必要があるため、排出事業者等への

指導も進めている。

国内において最近問題となったのは、このオイルボール問題であるが、未処理放流等により水

環境がどの程度影響を受けるか知見がないため、今後はモニタリング等を行うことにより、この

関連性について調査する必要がある。

オイルボールの写真

出典:「東京都下水道局ホームページ」

平成 12 年に、下水管渠内に付着・堆積した汚濁物質が雨天時に吐口から放流され、お台場海

浜公園に白色固形物が漂着するなどの問題が生じており、水辺レクリエーション利用への影響が

顕在化している。