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平成30年度 質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業 (インドネシア・LNG 受入基地事業の形成に向けた 事業実施可能性調査) 調 査 報 告 書 平成 31 2 経済産業省 委託先: JFE エンジニアリング株式会社

平成30年度 質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可 …3 Pertamina (2018): “Pertamina Gas Roadmap” (Bali LNG Conference 2018) 10 天然ガスの需給ひっ迫を受け、インドネシアでは新たなガス田の開発及び増産に

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平成30年度

質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業

(インドネシア・LNG 受入基地事業の形成に向けた

事業実施可能性調査)

調 査 報 告 書

平成 31 年 2 月

経済産業省

委託先:

JFE エンジニアリング株式会社

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目次

第 1 章. 事業の目的....................................................................................................................... 5

第 2 章. 事業内容 .......................................................................................................................... 6

2.1 相手国への当該プロジェクト実施による裨益 ........................................................... 6

2.1.1 本プロジェクトの概要 ............................................................................................... 6

2.1.2 本プロジェクトの背景、及び必要性 ....................................................................... 6

2.1.3 インドネシアへの裨益 ............................................................................................... 6

2.2 相手国政府・自治体等の政策動向 ............................................................................... 8

2.2.1 天然ガス輸入及び活用の促進 ................................................................................... 8

2.2.2 中下流コストに係る規制 ......................................................................................... 10

2.2.3 エネルギーミックス政策 ......................................................................................... 11

2.3 インフラ・システムの基本的な設計等 ..................................................................... 12

2.3.1 本プロジェクトで必要なインフラ・システム ..................................................... 12

2.3.2 本邦企業の差別化技術の導入 ................................................................................. 12

2.3.3 第三国企業との連携 ................................................................................................. 15

2.3.4 オペレーション・メンテナンス 適化による中長期の収益向上 ..................... 15

2.4 提案に必要な情報収集・調査・分析 ......................................................................... 17

2.4.1 市場規模予測、及び需要予測 ................................................................................. 17

2.4.2 経済性評価 ................................................................................................................. 19

2.4.3 リスク分析 ................................................................................................................. 19

2.5 事業規模等の算出(運営、保守・メンテナンス費用を含む) ............................. 25

2.6 ファイナンスの検討・提案 ......................................................................................... 26

2.7 政策支援等の活用見込み(招聘・専門家派遣等の各種ツールの活用可能性の検

討) 29

2.8 日本企業の優位性の確認(必要に応じて競合他社の動向やそれと比較した場合

の競争優位性)、日本への裨益(経済効果)予測 ................................................................... 32

2.8.1 日本企業の優位性の確認 ......................................................................................... 32

2.8.2 日本への裨益(経済効果)予測 ............................................................................. 33

2.9 事業実施過程において、相手国関係者に要望・指摘された事項への対応等、プ

ロジェクト提案の充実化に必要な調査 ..................................................................................... 36

2.10 他国等への横展開の可能性及び展開促進策 ............................................................. 38

2.10.1 他国等への横展開の可能性 ..................................................................................... 38

2.10.2 他国等への展開促進策 ............................................................................................. 39

2.11 我が国企業が事業に参加する場合に講ずるべきコスト競争力強化策 ................. 42

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第 1章 . 事 業 の 目 的

新興国を中心とした世界のインフラ需要は膨大であり、急速な都市化と経済成長により、

今後の更なる市場の拡大が見込まれる。

このため、民間投資を喚起し持続的な成長を生み出すための我が国の成長戦略・国際展

開戦略の一環として、日本の「強みのある技術・ノウハウ」を 大限に活かして、世界の

膨大なインフラ需要を積極的に取り込むことにより、我が国の力強い経済成長につなげて

いくことが肝要である。

平成29年5月29日に経協インフラ戦略会議で決定(改訂)されたインフラ・システ

ム輸出戦略では、インフラ・システムの海外導入のためには、相手国の実情を十分に踏ま

え、様々な課題を複合的に解決できるソリューション提案を行い、我が国提案のコンセプ

トや技術の優位性・信頼性を相手国に十分に理解してもらうことの重要性が指摘されてい

る。

このような背景を踏まえ、本事業では、今後成長が見込まれる分野(※)等を対象とし、

世界の幅広いニーズに応えつつ、我が国企業等の優れた技術・ノウハウ等を活かしたイン

フラ案件の形成を目指し、相手国に提案可能な事業実施可能性調査の実施を目的とする。

※政府策定の「インフラ・システム戦略」(平成25年5月17日)P29~31に記載

の分野のうち、エネルギー、交通(うち、鉄道、次世代自動車)、情報通信、基盤整備(う

ち、工業団地)、生活環境(うち、水、リサイクル)、新分野(うち、医療、宇宙)

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第 2章 . 事 業 内 容

2 . 1 相 手 国 へ の 当 該 プ ロ ジ ェ ク ト 実 施 に よ る 裨 益

2.1.1 本プロジェクトの概要

JFE エンジニアリング株式会社(以下、「当社」という。)は、インドネシア企業で

ある P 社とパートナーシップを組み、同国において、ガス火力発電所を含めた地域

のガス需要家向けの LNG 気化設備・パイプライン運営事業の開発・投資プロジェク

ト(以下、「本プロジェクト」という。)を検討している。

当社とパートナーシップを組む P 社が、LNG 貯蔵事業(FSU)を行う事業者、及

び LNG 気化設備・パイプライン運営事業を行う当社との間で委託契約をそれぞれ締

結する。また、当社は P 社と共同で事業計画策定も行う。

次章では、天然ガスの需要・供給の両面から、本プロジェクトの必要性について

述べる。

2.1.2 本プロジェクトの背景、及び必要性

本プロジェクトのガス供給先である火力発電所は、以下に述べる理由により地域

にとって重要な発電所である。

まず国営電力公社(以下、「PLN」という。)による 2018 年から 2027 年における電

力供給総合計画「RUPTL 2018-2027」(以下、「RUPTL 2018-2027」という。)の予測デ

ータによると、同地域では今後のピーク需要の伸びに伴い、2020 年初頭から発電設

備容量の不足が予想されている。同発電所は、この容量不足を補う発電所として位

置付けられている。

また、同地域の日負荷曲線に、日本の電源構成と同様の考え方を適用した場合、

ベース電源を超える需要変動分をミドル電源若しくはピーク電源としてガス・石油

火力等に割り当てるのが妥当と考える。しかしながら、同地域では良好な負荷追従

性からピーク電源やミドル電源とされるガス火力及び石油火力が不足している。つ

まり同地域では、日負荷曲線の変動分をカバーするべきピーク・ミドル電源の容量

が不足している状況と考えられる。

以上より、同発電所は、同地域における電力の安定供給に寄与する重要な発電所

である。

2.1.3 インドネシアへの裨益

本プロジェクトが実現すれば、インドネシアにとって以下の裨益が考えられる。

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(1)電力安定供給

2.1.2 章で述べた通り、同発電所は地域における電力の安定供給に重要な発電所で

ある。よって同発電所にガスを安定供給する本プロジェクトにより、同地域の電力

安定供給に貢献する事ができ、同国の持続的な経済発展に寄与できると考える。

(2)中小 LNG 受入基地の「モデルケース」

インドネシアは天然ガス産出国でありながら、自国のガス需給は逼迫しており、

LNG 輸入を推進するため、LNG 関連インフラの整備が喫緊の課題となっている。一

方、インドネシアは島嶼国という国家の特性から、経済発展の遅れている同国東部

のエネルギー需要を満たすため、LNG 小型船での LNG 輸送を推進している。必然的

に LNG 受入基地も小型となるが、陸上ベースの受入基地では CAPEX が大きく、採

算が取れない例が相次いでいる。こうしたことから、浮体式 LNG 受入基地のニーズ

が高まっているが、本プロジェクトのような中小サイズのマーケットは新しく、世

界でも実現した例は極めて少ない。

そんな中、今回検討したケースは、標準的なタンクサイズの中古 LNG 船を浮体式

LNG 貯蔵設備(FSU)として利用し、LNG 再ガス化設備を洋上プラットフォーム上

に設置するものである(詳細は後述する)。これは中小 LNG 受入基地の第三の選択

肢として、同国の他地域にも応用できる。よって本プロジェクトの EPC、事業参画、

O&M を通して、課題解決に積極的に関与し、”Lessons learned”を積み上げ、中小型の

「モデルケース」を作る意向である。

この「モデルケース」を同国で横展開し、中小 LNG 受入基地で事業採算性を確保

する事ができれば、島嶼部の中小 LNG 受入基地導入促進、そして電化の促進、経済

の発展へと繋がり、それはインドネシア全体の持続的発展へと繋がる。

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2 . 2 相 手 国 政 府 ・ 自 治 体 等 の 政 策 動 向

インドネシア政府、及び自治体等の政策動向は、以下の通りである。

2.2.1 天然ガス輸入及び活用の促進

インドネシアは LNG 産出国であり、1977 年より LNG 輸出を開始し、2000 年代中

頃まで世界 大の LNG 輸出国であった。

以降、国内需要の高まりを受け、需給バランスがタイト化し続けている。2013 年

以降、インドネシアで生産された天然ガスの 5 割以上が国内向けであったが、この

割合は年々高まっており、2018 年は 6 割(3,926 BBTUD)が見込まれている。尼石

油ガス上流事業実行特別部局(以下、「SKK Migas」という。)によると、今後もこの

傾向が続く見通しである。

図 1 ガス配分の内訳(国内と輸出)

他社資料より引用1

具体的には、2016~2030 年にわたり、総ガス需要は年率 5%程度伸びる見込みで

あり、けん引役は従来と同様、電力と産業である。

1 Directorate General of Oil and Gas, Ministry of Energy and Mineral Resources) (2018): "Moving Ahead with Natural Gas and LNG Utilization for Indonesia" (Bali LNG Conference 2018)

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図 2 主なガス需要家

他社資料より引用2

また、2025 年以降は国内ガス需要に供給力(LNG 輸入含む)が追い付かない状況

が続く。

図 3 インドネシアにおける天然ガス需給バランスの経年推移

他社資料より引用3

これらのことから、LNG の輸入及び活用を促す必要があり、そのためには天然ガ

スインフラの強化及び開発が不可欠である。具体的には、インドネシア西部ではイ

ンフラのさらなる強化、東部ではインフラの開発が求められている。

2 Pertamina (2018): “Pertamina Gas Roadmap” (Bali LNG Conference 2018) 3 Pertamina (2018): “Pertamina Gas Roadmap” (Bali LNG Conference 2018)

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天然ガスの需給ひっ迫を受け、インドネシアでは新たなガス田の開発及び増産に

向けた開発が行われているが、その多くがジャワ島以外で予定されている。特に、

同国東部に大きなプロジェクト(Tangguh、Abadi 等)が集中している。

SKK Migas は、こうした東部での余力をインドネシア経済の中心である西部の供

給不足に充てるとしている。そのためには LNG 関連インフラ(LNG 輸送、LNG 気

化・貯蔵、天然ガス輸送)のさらなる強化が必要である。

一方、天然ガスの生産は東部に集中しているにもかかわらず、大半が西部の需要

や輸出に充てられていることに対する現地の不満が募っている。また、ジョコウィ

政権は、辺境・後進地域開発の推進と国内の貧困格差の是正を目指している。これ

らのことから、東部においても LNG 関連インフラの必要性は高まると考えられる。

2.2.2 中下流コストに係る規制

インドネシアにおいては 2017 年、エネ鉱省大臣令 No.45 が発効し、発電所プラン

トゲートでの天然ガス価格の上限が ICP×14.5%(USD/mmbtu)に設定された(ICP:

Indonesia Crude Oil Price、インドネシア公式原油価格)。本大臣令はエネ鉱省大臣令

No.11/2017 を改定するものであり、改定前は国内発電用 LNG の FOB 価格のベンチマ

ークは ICP×11.5%(USD/mmbtu)であった。

したがって、LNG 輸送、気化・貯蔵コスト、及び天然ガス輸送に係るコストは差

分の 3%であると推測される。例えば、ICP が 70USD/bbl である場合、インドネシア

政府が求めている中下流コストは 2.1USD/mmbtu であると想定される。

本規則は現状、厳格に適用される見込みである。インドネシア・カタール両政府

は 2017 年 10 月、カタールからインドネシアに LNG を販売することで合意した。本

協定において、カタール産天然ガスの価格は ICP×14%に設定されている。本合意に

ついて、エネ鉱大臣(Ignasius Jonan)は、以下の通り発言4している。

“PLN と Nebras Power 間の「スマトラ島北部のガス炊き発電所に係る協定書5」

において、インドネシア政府はカタールからの LNG 調達を許可している。プラ

ントゲートでのガス価格は ICP×14%以下になる見込みである。国産ガス/LNG

がこの価格と同等、あるいは安ければ、そちらを使う。輸入 LNG が国産よりも

安ければ問題ない。”

上記より、中下流コストを低減することが不可欠となるが、同コストに係る PLN

4 TEMPO (October, 2017): “Govt to Finalize LNG Purchase from Qatar” Media Monitoring Oil and Gas (October, 2017): "Nebras Guarantees Gas Supply" 5 PLN と Nebras Power(カタールの国営エネルギー企業である QEWC (Qatar Electricity & Water Co.) の子会社)は、共同でスマトラ島北部において 2×250MW のガス炊き発電所及

び LNG 受入基地の整備計画を進めている。

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の検証6に拠れば、ICP を 70USD/bbl、LNG の FOB 価格 ICP×11.5%を前提とした場合、

14.5%の上限を満たすのは困難であり、さらなる努力が必要としている。

具体的には、①FSRU の活用(CAPEX 及び OPEX の低減)、②ガス需要の統合/ビ

ジネスモデルのオープンアクセス化(FSRU を Hub として活用し、特にインドネシア

西部に拡散している需要を統合)である。洋上基地は、陸上基地と比較して CAPEX

を 大 50~75%削減することが可能であることから、インドネシアにおいて有用な

解決法としている。

2.2.3 エネルギーミックス政策

上述した通り、インドネシアにおける今後のガス需要のけん引役の一つが電力であ

る。

RUPTL 2018-2027 によれば、発電容量は 2027 年にかけて、年率 6.86%で増える見込

みである。内訳は、以下の通りであり、再生可能エネルギーへの依存度が大きくなる。

石炭火力:約 5%減

ガス火力:ほぼ横ばいで 20%台前半

再生可能エネルギー(水力、地熱、その他):約 63%増

図 4 で示す通り、より長期的に見てみても、2050 年に向けて原油、石炭からガス、

再生可能エネルギーへのシフトが起こる見通しであるが、再生可能エネルギー事業の

開発には時間がかかり、また出力が不安定である。

図 4 エネルギーミックスの推移

他社資料より引用7

上記より、代替エネルギーとして、天然ガスのポテンシャルが も大きいと Pertamina

は予測している。

6 PLN Gas & Geothermal (2018): “LNG for Electricity” (Bali LNG Conference) 7 Pertamina (2018): “Pertamina Gas Roadmap” (Bali LNG Conference)

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2 . 3 イ ン フ ラ ・ シ ス テ ム の 基 本 的 な 設 計 等

2.3.1 本プロジェクトで必要なインフラ・システム

本プロジェクトでは LNG 気化設備とガスパイプラインが必要で、どちらも新設と

なる。

LNG 気化設備は、ガス需要家の需要に応じて LNG を気化して天然ガスを払い出す

機能を有する。本プロジェクトでは、ガス需要家の立地と事業採算性の観点、及び

将来の事業拡張性を考慮し、LNG 貯蔵船(FSU)を常時係留し、それに隣接する洋

上プラットフォーム上に LNG 気化設備を設置する案を検討した。また、ガスパイプ

ラインは LNG 気化設備からガス需要家へ天然ガスを輸送するためのものである。

LNG 気化設備及びガスパイプラインは、それぞれに標準的な機能・性能を具備させ

る。

これに加え、事業採算性の向上などの目的のために、本プロジェクトでは、以下

の取り組みの可否・効果などを検証した。

2.3.2 本邦企業の差別化技術の導入

(1)人工知能による LNG 受入時期の 適化

LNG 受入基地を含む LNG バリューチェーンにおいて、FSU への LNG 供給量と需

要家(発電所など)のガス消費量の間には常に需給ギャップが存在している。つま

り、LNG 受入は数日から数週間に 1 回であるのに対し、ガス消費は毎日ある。この

ギャップを調整しているのが、FSU の LNG タンクであり、LNG 供給がない間は、同

タンクから毎日のガス需要に応じて LNG を気化して払い出している。

この需給ギャップは LNG を扱う以上避けては通れないものではあるが、需給ギャ

ップを調整するために要するコストを 小化する余地はまだあると考えられる。そ

の中でカギとなる要素が LNG 受入時期の 適化である。LNG 受入には当然 LNG タ

ンクが受入量以上に空いている必要がある。タンクに十分な空き容量がない段階で

LNG 輸送船が到着すればデマレージ(滞船料)が発生し、事業コストを増加させる。

逆に、LNG 輸送船の到着が遅れれば、急激な需要増の時に LNG が足りない事態に陥

る。

当社が開発した人工知能「WinmuSe®」は、様々な自然条件や社会的要因(季節、

天候、曜日、他)と日々変動する電力・ガス需要の過去のデータからディープラー

ニングの手法を用いて因果関係をモデル化することが出来る。数日先の天気予報な

どの情報を入力すると、その数日間の電力やガスの需要が精度よく予想されるので、

その想定値をもとに「LNG の 適受入時期の特定」が可能となる。

本プロジェクトでは、各天然ガス需要家の数日先の需要量を予測し、それを FSU

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へフィードバックして、数日先の LNG 残存量を推算する。この LNG 残存量の推算

を日々更新し、LNG タンクに十分な空きが確保出来る日を特定し、次回の LNG 受入

日を決定する。

WinmuSe®の導入効果に関しては、上述の LNG 輸送船受入基地の 適化によりデ

マレージ(滞船料)が節約できることである。一般にデマレージは傭船費と概ね同

額であるが、2018 年 10 月現在の LNG 輸送船(13 万 m3級)の傭船費は 57,000 米ド

ル/日(出所:船舶ブローカー情報)とかなり高額である。LNG 輸送船の傭船料は 2018

年中旬の底値(35,000 米ドル/日)から脱し上昇傾向にあり、今後はさらに値上がり

する可能性もあるので、これも加味するとその節約効果はかなりインパクトがある

と考える。

(2)パイプライン運転監視システムによる操業の 適化

インドネシアのガスパイプラインは、今でもオペレーターの経験と勘に依存した

属人的な操業が行われており、そのため余計な OPEX(電気代・燃料代)が発生して

いる。

本プロジェクトでは、上記のような無駄を防止するために、当社が開発したパイ

プライン運転監視システム「Win GAIA®」の導入を検討している。Win GAIA®は、非

定常流送解析でパイプライン内のガス流れを精度よくかつ高速で再現するもので、

このシミュレーション技術をベースに(a)オフライン計画支援、(b)リアルタイム状態

監視、(c)近未来運転支援の 3 機能をオペレーターへ提供する(下表参照)。

表 1 Win GAIA®のシステム構成

出所:当社資料

本プロジェクトでは、前述の人工知能「WinmuSe®」で予測したガス需要を入力値

として、(c)近未来運転支援機能により、OPEX を 小化する運転シナリオを作成し、

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それに基づいてオペレーターが LNG 気化設備とパイプラインを運転することを考え

ている。なお、(b)リアルタイム状態監視機能も併せて利用し、実際の状況がシナリ

オの前提条件(ガス需要等)と異なった場合でも、瞬時にシナリオを修正・ 適化

することも想定する。この組み合わせで、OPEX 小化を目指す。

Win GAIA®導入における課題は LNG 気化装置との連携につき実績のないことであ

るが、実際に Win GAIA®が提案する対象は気化装置の LNG ポンプの出口にある圧力

調整弁の開度であり、内部流体が液体か気体かの違いこそあれ、パイプラインに一

般的に設けられている圧力調整弁と大差ない。よって、特段大きなハードルではな

いと判断する。また、パイプライン自体は、極めて単純なパイプラインであり、実

績面を含めて Win GAIA®導入に全く支障がない。Win GAIA®は、首都圏の都市ガス

導管網のように複数のパイプラインが複雑に交差するパイプライン網におけるガス

の流れをシミュレーションできるので、本プロジェクトのように、入口と出口が一

対になっているパイプラインのシミュレーションは全く問題なく出来る。

(3)次世代電縫管

電縫管とは、熱間圧延鋼板を円弧状にロール成形して、その両端部同士を高周波

抵抗溶接法により溶接して製造された鋼管である。溶接管(UOE 等)と比較して数

割安価である。鋼管コストはパイプライン建設費の相応な割合を占めるので、事業

性へのインパクトは大きい。

しかしながら従来の電縫管の溶接部は、①溶接時に発生した酸化物の影響で著し

く靭性が低下することと②熱履歴の影響で母材部と異なる組織となり、この組織差

に起因する電位差により溝状腐食が発生することが懸念となり、かつては石油ガス

などの危険物を輸送するパイプラインに使用されることがなかった。ところが JFE

スチールが開発した次世代電縫管「Mighty SeamTM」は、溶接時の入熱速度等を適切

に制御することで上記懸念を払しょくし、さらに独自の超音波探傷検査技術により

万一の欠陥も検出することが可能となり、高品質を実現した。既に北海の海底石油

パイプライン等へ採用されるなど実績もある。

本プロジェクトでの Mighty SeamTMの採用であるが、輸送流体が LNG 気化ガスで

腐食の遠因となる硫黄分や水分がほとんど含まれていないこと、海底パイプライン

の敷設場所の水深は浅いためパイプライン敷設時に鋼管に発生する応力がさほど大

きくならないこと、さらに海象条件も我が国の台風に相当する強風が 100 年に 1 回

程度しか襲来しない非常に穏やかな海であることを勘案すると、実績がある北海よ

りもはるかに条件のいい環境であるため、技術面の問題は特にないと判断している。

価格面については、インドネシアには鉄鋼メーカーがありラインパイプも製造し

ているが、価格競争力は高くない。従って、Mighty SeamTMはインドネシア市場でも

十分価格競争力を持つと思われる。

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2.3.3 第三国企業との連携

洋上設置型の LNG 気化モジュールは、北欧のバルチラ社が市場を席巻しており、

他に有力な対抗馬がいないことより、価格が高止まりしている状況である。業界の

各社が同社に対抗しようとしているが、なかなか成果が挙がっていない。

バルチラ社に挑戦を試みている 1 社が A 社である。同社は石油ガス設備のモジュ

ール製作では世界有数の企業であり、FPSO 等の上流関連設備で豊富な経験があるが、

LNG 気化プロセスに関しては経験が浅い。そこで、陸上 LNG 受入基地のプロセス設

計の経験が豊富な当社とタッグを組み、そのシナジー効果によりバルチラ社の牙城

を崩すべく、協力関係を築いた。

本プロジェクトでは、A 社と当社の共同でバルチラ社より安い LNG 気化モジュー

ルを製作し、洋上プラットフォームへ設置する計画である。

2.3.4 オペレーション・メンテナンス 適化による中長期の収益向上

本プロジェクトは当社が事業主体として推進する予定である。従って、LNG 気化

設備・ガスパイプラインのオペレーション・メンテナンスを主体的かつ中長期的に

実施する立場である。

その上で、さらに事業性を向上させる目的で、LNG 受入基地のオペレーション・

メンテナンスの経験が豊富な本邦ユーティリティ企業(例:電力会社、都市ガス会

社)に本プロジェクトへ参画させ、ノウハウを余すことなく提供してもらうことも

考えられる。奇しくも国内の電力・ガス市場自由化に伴い、各社とも従来以上にコ

ストダウン施策を遂行中であり、そういう新たな知見の導入も期待される。

本プロジェクトにおいて、本邦企業が保有するオペレーション・メンテナンスの

ノウハウを本プロジェクトへ適用する場合の課題と対応策は下記の通りと考える。

日本の場合、LNG 受入基地で必要な電力は電力会社から購入するか、若しくはガ

ス火力発電所に併設する LNG 受入基地の場合はその発電所から受電するのが一般的

である。しかし、インドネシアでは電力インフラが日本と比較して脆弱であり、日

本より頻繁に停電が起きている状況にある。この状況下で LNG 受入基地の必要電力

を PLN のグリッドから受電するとした場合、この頻繁な停電に対応しなければなら

ず、オペレーション・メンテナンスの手間が増え、またガス供給の不安定化も加味

され、 終的に事業の収益悪化にも繋がりかねない。

従って、インドネシアで LNG 受入基地を計画・運営する場合、自家発電を選択肢

に入れる必要がある。浮体式 LNG 気化設備(FSRU)の場合は、ほぼ必然的に船内

で自家発電設備を持つが、本プロジェクトは浮体式 LNG 貯蔵設備(FSU)と洋上バ

ース上の LNG 気化設備で構成される。停電による収益悪化リスクを考慮し、本プロ

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ジェクトでは自家発電設備を浮体式 LNG 貯蔵設備(FSU)に設置する案とした。

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2 . 4 提 案 に 必 要 な 情 報 収 集 ・ 調 査 ・ 分 析

2.4.1 市場規模予測、及び需要予測

インドネシア政府は、2015 年 1 月、総額 5,500 兆ルピア(約 50 兆円)のインフラ開

発 5 カ年計画を発表した。その主たるインフラ事業は、発電所、運輸(新港整備、新

空港新設)、道路、及び水処理設備であり、上記の理由より発電所向けの LNG 受入基

地はその開発計画の 右翼に位置づけられると考えられる。

表 2 は、エネルギー・鉱物資源省が策定した「Gas Infrastructure Roadmap 2016-2030」

からの抜粋であるが、2030 年までに計 80 の受入基地の整備が必要と想定されている。

表 2 インドネシアにおける LNG 受入基地の整備計画

出所:エネ鉱省資料(バリ・カンファレンス 2016)に基づき当社作成

上記計画では、陸上受入基地の計画数は洋上と比べて 5 倍以上の開きがあるが、表 3

に示す現在稼動中の受入基地を見ると洋上の方が多い(陸上は Aceh 1 件のみだが、本

基地は元々LNG 液化基地であったことから、グラス・ルーツ・プラントは全て洋上と

考えることができる)。これは、洋上は土地収用の問題がなく、より短期間で運転開始

できる傾向にあるのに対して、陸上の場合、土地収用の問題に加えて、初期投資額が

大きくなるため基地の規模を大きくしないと(十分なガス需要を確保できないと)十

分な採算が見込めない、といった理由が考えられる。

表 3 インドネシアにおいて稼働中の LNG 受入基地の概要

出所:Global Data に基づき当社作成

基地名 運転開始年 容量 [mmscfd]

West Java 2012 400

Aceh 2015 400

Lampung 2014 240

Bali 2016 50

LNG 受入基地の整備は喫緊の課題であることから、洋上が好まれる傾向は今後も続

Period I Period II Period III

既存 2016 2017 2018 2019 2020 2021-

2025

2026-

2030

洋上 [件] 2 2 5 9 10 11 11 12

陸上 [件] 1 17 24 46 62 64 66 68

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く可能性が十分ある。中古 LNG 船を浮体式 LNG 貯蔵設備(FSU)として利用し、LNG

再ガス化設備を洋上プラットフォーム上に設置する本プロジェクトは、この流れに沿

ったものであり、同国東部を含めた他地域への横展開のモデルケースとなり得る。

また、インドネシアにおいては、エネ鉱省の規則の下、自国で産出されたガスの配

分の優先順位が規定されている(表 4 参照)。

表 4 ガス配分に関する現規制と旧規制の比較

本プロジェクトのガスオフテイカーには発電事業者が含まれるが、上表に示す通り、

発電事業へのガス配分の優先順位は一貫して高い。

図 5 に示す通り、インドネシアにおける LNG 受入基地の計画は 70 件以上あり、市

場規模は今後も拡大し続ける蓋然性が高いと考えられる。

図 5 インドネシア LNG 受入基地マップ

出所:第 8 回バリ LNG 会議(2018 年 9 月開催)における 尼国エネルギー鉱物資源

省、国営石油会社、国営ガス会社、国営電力会社資料より当社作成

旧規制(ESDM 2010 年 No.3) 現規制(ESDM 2016 年 No.6)

1. 石油・ガスの増産

2. 肥料産業

3. 発電事業

4. その他の産業

1. 政府の計画(輸送用、家庭用、小規模ユ

ーザー用)

2. 石油・ガスの増産

3. 肥料産業

4. ガス産業(ガスが原料)

5. 発電事業

6. ガス利用産業(ガスが燃料)

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2.4.2 経済性評価

前提条件を整理した上で、本プロジェクト用に作成した経済性モデルに基づき評価

を行った。

(1)前提条件

経済性評価の前提条件を表 5 に整理した。

表 5 経済性評価の前提条件(当社作成)

プロジェクト期間 30 年

EPCC 期間 約 2 年

プロジェクトコスト 39.3 百万 USD

- CAPEX:38 百万 USD

- 運転資金:0.8 百万 USD

- 建中利子:0.5 百万 USD

負債資本倍率(D/E レシオ) 8/2

操業費用 4 百万 USD/年

法人税率 25%

付加価値税 10%

土地・建物税 0.2%

金利 5.5%

なお、CAPEX 及び OPEX の内訳は、2.5 章を参照されたい。

(2)評価結果

本プロジェクトの経済性は下表の通りである。

表 6 本プロジェクトの経済性(当社作成)

Project-IRR 15.6%

回収期間(税後) 9 年

ただし、前提条件を含め、本試算には少なからず不確定要素が含まれるため、今

後、より詳細な調査が必要となる。

2.4.3 リスク分析

本プロジェクトの実施に当たり、様々なリスクが想定される。リスクをリスクテ

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イクする、あるいは極小化するのに、 も適した立場にある者が負担する、あるい

は無理をせず、関係当事者の身の丈に合った、合理的な内容のリスクシェアに努め

る、というリスク・コントロールの基本に沿った対応を行う。

表 7 に主要リスク、その発生可能性と影響度、及び対応策を整理した。

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表 7 主要リスク、発生可能性・影響度、及び対応策(* High/Medium/Low ** High/Medium/Low)

主要リスク 発生可能性* 影響度

**

対策後

(発生可能性/

影響度)

対応策

FSU との Interface M H M/L • P 社との基地使用契約に取合い条件を定め、その条件で LNG

を BL まで送るのは、PDG の義務とする。

• 気化設備への LNG の供給が滞った場合でも Use or Pay 契約

に基づき、定額を支払わせる。

FSU の事故により生じた SPC の逸失利益を Use or Pay 契約

に基づく定額でカバーできない場合は、Contingent Business

Interruption Insurance により差額を補填。

発電所との Interface M H M/L • P 社との契約を上限付 LD とする。

• P 社との基地使用契約に取合い条件を定め、その条件で BL

でガスを受取るのは、P 社の義務とする。

• 発電所の都合で引取りが滞った場合でもUse or Pay契約に基

づき、定額を支払わせる。

発電所の事故により生じたSPCの逸失利益をUse or Pay契約

に基づく定額でカバーできない場合は、Contingent Business

Interruption Insurance により差額を補填。

当社事由での COD の

遅れ

M H M/M P 社との契約を上限付 LD(基本使用料×90 日分※)とする。

※ インドネシアでの同様の案件で適用

その上で、同額以上の LD を EPC コントラクターに課す

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主要リスク 発生可能性* 影響度

**

対策後

(発生可能性/

影響度)

対応策

事故事由の場合、LD でカバーできない部分については、開

業遅延保険(Advance loss of profit)の付保を検討。

P 社、他の事業者事由

での COD の遅れ

M H M/M P 社との契約に盛り込む。

Waiting Period のコントラクターへの支払分は、P 社から徴収

する。

COD、Final Acceptance の定義をはっきりさせる。

事故事由の場合、カバーできない部分については、開業遅延

保険(Advance loss of profit)の付保を検討。

運転開始後、不可抗力

(自然災害、天気・天

候、火災、落雷、爆発、

自身、その他の事故)

により電力事業者がガ

スを引き取れない

L H L/L • 14 日間の猶予期間後、定額部分(固定費)は P 社が負担。

• Contingent business interruption insurance を購入。

運転開始後、不可抗力

によりSPC施設に損害

が生じたことにより操

業が停止あるいは阻害

された結果、逸失利益

が発生

L H L/L • Property Damage 保険を購入。

• Business Interruption Insurance を購入。

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主要リスク 発生可能性* 影響度

**

対策後

(発生可能性/

影響度)

対応策

不可抗力が原因で発電

施設に損害が生じ、

COD が遅延

L H L/L 発電施設に生じた損害で補修が間に合わない場合、猶予期間

後 Deemed commissioning。COD が 180 日超遅れた場合、解

除権が発生。「元利金+出資金+利益 15%」で P 社に買い

取らせる。

不可抗力が原因で SPC

施設に損害が生じ、

COD が遅延

L H L/L • 工事保険にて CAPEX 相当額をカバー。

• COD と契約期間を延長。

• 付保できない事由で完工が遅れた場合、新しい建設期間と通

行料を交渉することとし、合意できない場合は SPC に解除

権が発生。

• 同額以上の LD を EPC コントラクターに課す。

• 事故事由の場合、LD でカバーできない部分については、開

業遅延保険(Advance loss of profit)の付保を検討。

政府不可抗力(法令変

更等)が原因で COD

が遅延

L H L/L • COD と PPA 期間は延長。SPC が完工テストできない場合は

Deemed commissioning。

増加費用が発生した場合、通行料金を増額変更。

• COD が 180 日超遅れた場合、SPC は契約を解除、「元利金

+出資金+利益 15%」で P 社に買い取らせる。

政府不可抗力(法令変

更等)が原因で逸失利

益が発生

M H M/M • 増加費用が発生した場合、通行料金を増額変更。

• 売電できない場合は Deemed dispatch で固定費部分を支払→

180 日以上の継続で PPA 解除により施設の買取(元利金+出

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主要リスク 発生可能性* 影響度

**

対策後

(発生可能性/

影響度)

対応策

資金+利益 15%)

ルピア払い H M H/L • 「契約通貨:米ドル、支払通貨:ルピア」を P 社と協議、基

地使用料契約に盛り込む。

※従来、PLN と IPP 間の PPA においては、資本支出と送電

線建設部分は完全ドルリンクのルピア払い。

• P 社の支払直後にルピアを米ドルに変換(現地作業員の給料

等の支払いに必要なルピアは保有)。

インフレにより収益性

が悪化

H M M/L • 基地使用料をインフレとリンクさせる。

OPEX の低減 M H L/L • FSU に Accommodation を借りる。

• オペレーター人数を 小にする。

• マネジメントの人件費を下げる(尼人の起用)。

• BOG 再液化装置を設置。

• 海水方式の気化器を起用。

• 3 年分の消耗品は EPC コントラクターのスコープとする。

許認可取得の遅れ M H M/M 許認可取得を EPC コントラクターのスコープに入れる。

• EIA は P 社のスコープに入れる。

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2 . 5 事 業 規 模 等 の 算 出 ( 運 営 、 保 守 ・ メ ン テ ナ ン ス 費 用

を 含 む )

(1)初期投資費用

まず、プラットフォーム上に設置される LNG 気化設備一式の初期投資費用は約 12

百万 USD である。

次に、プラットフォーム及びパイプライン建設費用として、合計 25 百万 USD が見

込まれる。

また、海底土質調査、海底地形調査、及び環境アセス、許認可取得費用、気象・海

象調査費用については、合計 0.7 百万 USD を見込む。

これらの費用を合わせ、今回の見積手法である主要機器のファクター法の見積精度

(+50%~-30%)を考慮した本プロジェクトの初期投資金額は、38 百万 USD と見積ら

れる。

(2)運営・保守、メンテナンス費用

本プロジェクトで見込まれる運営・保守、及びメンテナンス費用(運転員費用、修

繕維持費、保険料、電気代、SPC 費用、本社費用等)は、約 4 百万 USD/年を見込む。

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2 . 6 フ ァ イ ナ ン ス の 検 討 ・ 提 案

本プロジェクトにおいて必要となる資金の調達手段については、市中銀行に対して、

本プロジェクトのビジネスモデル等について説明の上、主に融資条件について確認した。

結論として、コーポレート・ファイナンスによる資金調達が 適と判断した。

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表 8 コーポレート・ファイナンスに係る融資条件の確認結果

確認事項 確認結果

融資適格性 コーポレート・ファイナンスを

適用する場合の融資適格性

本プロジェクトの資金規模(30~40 百万 USD)であれば、コーポレート・ファ

イナンスが 適

また、(インドネシア企業を入れず)当社単独出資であれば、信用補完の問題も

生じない

FSU 側、発電所側との責任所掌の明確化は必須

必要なステップ どのようなステップで進めるの

コーポレート・ファイナンスでは、プロファイのような確定プロセスがあるわけ

ではなく、融資契約までに要する期間は案件によって異なるが、通常 1~2 カ月

程度

一般的なステップは、以下の通り

必要なドキュメンテーションを当社より提供

これを基に、行内調整を行い、提案書(融資額、融資期間、金利等)を作成

本提案を受け、当社と銀行とで条件面のすり合わせ

ドキュメンテーシ

ョン

審査に必要な情報 コーポレート・ファイナンスでの 重要審査項目は、保証を差し出す会社(当社

あるいは当社親会社)の「信用力」である

ただし、焦げ付くとわかっている案件に融資することはなく、以下の情報は精査

する(全て決定である必要はない)

事業計画(プロジェクト・スキーム、経済性モデル、リスク等)

契約内容(特に、基地使用契約書、EPC 契約、株主間契約)

パートナーとオフテイカーの信用リスク

株主間契約のタームシート、等

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確認事項 確認結果

評価のポイント 審査で重視するポイント コーポレート・ファイナンスで も重要な評価のポイントは保証提供者の与信で

ある

加えて、コーポレート・ファイナンスにおいても Covenants(Net debt/EBITDA 等)

が設定されるため、収益性は重要となる

融資期間 融資期間はどの程度か コーポレート・ファイナンスでの融資期間は通常、3~5 年。親会社保証の内容に

よっては、5 年超となることもある

ただし、5 年超となった場合、refinance を前提にストラクチャーすることになろ

返済方法 返済方法に決まりはあるのか コーポレート・ファイナンスの場合、元利均等返済あるいは元本均等返済が基本

であるが、プロジェクト・ファイナンスと同様の形で debt sizing することも可能

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2 . 7 政 策 支 援 等 の 活 用 見 込 み ( 招 聘 ・ 専 門 家 派 遣 等 の 各

種 ツ ー ル の 活 用 可 能 性 の 検 討 )

インドネシアにおいては、中産階級の広がりと共に、高等教育を受けた者が増加して

いる。同国での就業は好調であるものの、職場が先端技術を有しているケースは稀であ

る。特に、LNG 輸出国であった故、インドネシアが LNG 受入基地の建設、所有、運転を

始めたのは、ごく 近である。その為、LNG 受入については、LNG 輸入大国である日本

程の先端技術を有していない。本事業で海洋担当調整省及びエネ鉱省と協議を重ねる中

で、 も強く・多く寄せられた要望は、「小規模 LNG 受入基地のパッケージ化」であっ

た。

将来的に企業レベルで何が出来るか、具体的にどのような政府の協力を仰ぐ必要かあ

るかを検討した。

(1)小規模 LNG 受入基地設計(気化設備)のパッケージ化と課題

日本では専ら大規模の受入基地が主流となっているが、インドネシアでは小規模で

納期が短く、且つコストの安価な設備が必要とされている。所謂、サテライト、若し

くは、二次基地レベルのものである。

パッケージ化されているものが好まれており、当社に問い合わせが多く寄せられて

いる。本事業でもパッケージの起用について検討したが、以下の課題に直面した。

① 国際規格での標準化

日本のサテライト・二次基地は電気事業法、若しくはガス事業法の下、JIS 規格に

よって設計・建設されているが、これを API、ASME、ANSI といった国際規格に展

開する必要がある。

② 設計要領書、マニュアルの整備

標準化をもとにカスタマイゼーションが行われるが、標準設計パッケージの設計指

針、要領書、マニュアル等が伴わなければその意図は伝わりにくい。「よりどころ」

となるものが必要である。

③ 人材育成と技術のトランスファー

上記のような文書が存在したとしても、一朝一夕で技術がトランスファーされるわ

けではない。標準パッケージの中の設計書類はあくまでも基本設計書であり、これ

をもとに現地の法規制に基づいた建設用の図面(詳細設計書)を作成するには、基

本設計者のある程度のスーパービジョンが必要となる。高等教育を受けていればそ

の素養は身につくとしても、インドネシア国内で必要としているものの、広まって

いない技術の修得には指導が必須である。

④ 品質管理・保証

現地の設計者が作成した建設用の設計書をレヴューする必要がある。設計書のみな

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らず、購入した機器が仕様書通りであるかなど、溶接などの施工も含め所謂 QA/QC

をインドネシアの人員でできるようにするにはそれなりの努力を要する。

⑤ ライセンシング

上記のような努力には時間とお金が伴う。それを回収できるだけの見込みがなけ

れば企業はなかなか踏み出せない。この課題のひとつの解はライセンシングであ

る。

(2)パイロットプロジェクト

以上のような課題を体系的に解決する手法として、「パイロットプロジェクト」が考

えられる。パイロットプロジェクトの目的は、CAPEX、OPEX、スケジュール、採算性

などのベンチマーキングである。その国によって、材料の調達容易性、技術者のレベ

ル、規制・規格の違い等により、日本で設備を建設するようにはいかない。技術を供

与する立場としては、図面を丸投げして現地の業者に建設してもらうというわけには

いかず、設計書類が意図するものが正しく伝わっているか、正しく施工されているか、

所謂 QC/QA を含む指導・管理が必要となる。故に、ある技術をひとつの国から他の国

へ導入する際、その国に導入した場合はどうなるかを把握する為のパイロットプロジ

ェクトが、多くの場合遂行されている。

「小規模 LNG 受入基地のパッケージ化」と併せ、本プロジェクトにベンチマーキン

グ的な性質を持たせることで 2.1.3(2)で謳っている中小 LNG 受入基地のモデルケー

スとしての位置づけが高まる。

① 本邦企業への裨益性

LNG 受入基地事業への参画には、近年、専ら「入札」という形式をとることがほ

とんどである。しかし、ベンチマーキング目的の「パイロットプロジェクト」で大

学との提携であれば、必ずしも入札と言う形をとるとは限らない。本邦企業が優位

性を担保した形で、事業参入するきっかけになるのではないかと考えられる。

インドネシアで高等教育を受けた者、受けている者のほとんどが英語が堪能である。

企業は日本の LNG 関連技術者で英語あるいはインドネシア語が堪能なシニア層

(定年層)を同国技術者の指導に当てることができる。企業は人を派遣する見返り

として、実プロジェクトに繋がった場合、ライセンスフィーが入る。

② インドネシアが享受するもの

インドネシアの政府及び教育機関は今後同国で必要となる小規模 LNG の技術を獲

得するに留まらず、その仕事に従事できる貴重な人材を育成できる。パイロットプ

ロジェクトの成果物としてのプラントは、BOOT, Build Own Operate and Transfer, の

形であれば、インドネシアのものとなる。政府は特に、パイロットプロジェクトの

成果であるベンチマーキングの値を政策、規制・規格に反映することができる。

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(3)招聘・専門家派遣等の各種ツールの活用可能性

これに際し、政府の協力を仰ぐことは不可欠であるが、今現在あるプログラムに乗

せられるかは、ステークホルダーと更なる協議が必要である。現在あるツールとして

考えられるのが、専門家招聘・派遣である。国営企業、大学、大学院、若しくは、職

業訓練校との提携であれば、企業の負担が軽減され、体系的にプログラム化が可能で

ある。エネ鉱省は、同国の工業発展を目指し、バンドンに職業訓練校設置を考案して

おり、この方向性へ共鳴できると考える。

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2 . 8 日 本 企 業 の 優 位 性 の 確 認 ( 必 要 に 応 じ て 競 合 他 社 の

動 向 や そ れ と 比 較 し た 場 合 の 競 争 優 位 性 )、日 本 へ の

裨 益 ( 経 済 効 果 ) 予 測

2.8.1 日本企業の優位性の確認

(1)WinmuSe®の優位性

LNG バリューチェーンへの WinmuSe®に類似した人工知能の適用に関する他社の動

向に関し、「Artificial Intelligence」や「LNG」などの単語を用いてインターネットで検

索・調査したところ、未だ構想段階の学術論文的な記事は数件見つかったものの、実

用化・商業化を踏まえたものは下表の 3 件に留まった。

表 9 LNG バリューチェーンにおける人工知能導入の動向

出所:各社ウェブサイト

企業名 導入時期 内容

千代田化工建設㈱ 未定 UAE・ADNOC LNG 社の LNG 液化プラントに対して、

AI/Big Data 解析等の 新デジタル技術を提供すること

に関する覚書を締結。プラントの 適運転・保全およ

び生産効率の改善が目的。

2018 年 5 月 2 日発表

千代田化工建設㈱ 未定 インドネシア・ドンギスノロ LNG 液化基地への AI の

本開発に着手。過去の運転データを AI が、刻々と変化

するプラント運転条件下で常に 適な運転パラメータ

を提示し、生産効率の改善と LNG 増産を図る。

2018 年 8 月 6 日発表

日揮㈱ 未定 マレーシア・ペトロナス社の空冷式 LNG 液化プラント

の生産性向上に関する協業に合意。AI や IOT を活用し

て高温排気再循環(HAR)予測システムの構築を今後

進める。

2018 年 8 月 6 日発表

図らずも 3 件とも本邦企業のものであったが、いずれの事例も LNG 液化プラントを

対象にした人工知能であり、本プロジェクトの対象である「LNG 受入基地+パイプラ

イン」とは全く競合しない。また、上記 3 件はいずれも LNG 液化プラント自体の 適

化運転を目指しているのに対して、当社の Winmuse®は「LNG 受入基地+パイプライン」

の 適化のみならず、 終需要家における天然ガス需要も予測して 適化を図る点で、

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33

同 3 件とは根本的に目指すところが異なる。従って、他に競合技術がないため、当社

技術の優位性は高いと思われる。

(2)Win GAIA®の優位性

Win GAIA®に競合するパイプライン・シミュレーターとして、Pipeline Studio(米 ESI

社)、Atmos SIM(英 Atmos 社)が挙げられる。いずれも海外のパイプライン・オペレ

ータに採用されているシミュレーターである。

競合他社が開示している技術情報が極めて限定的であるため、残念ながら Win

GAIA®の優位性を決定づける事実はつかめなかった。但し、計算速度については、競

合各社が採用している演算手法より、Win GAIA®が も速いと推定される。また、需要

予測機能は Win GAIA®しか持っていない。よって、少なくともこの 2 点については優

位性があると思われる。

2.8.2 日本への裨益(経済効果)予測

本プロジェクトは、我が国が世界で一番実績のある LNG 受入の分野において事業

開発から投資まで行う息の長い事業である。事業開発から参画することで、我が国

の豊富な実績・ノウハウを取り込むチャンスが見込め、またオペレーション・メン

テナンスや事業運営を通して中長期的な収益獲得が期待できる。

この点において、本プロジェクトは政府が作成したインフラシステム輸出戦略の

具現化に貢献できるものであるが、我が国のやり方をそのままインドネシアに持ち

込んではコスト高となり、ガス価格の上昇につながる懸念がある。本事業では、ガ

ス需要家やインドネシア政府のニーズを念頭に、我が国への裨益性をいかに 大化

するか検討した。

(1)WinmuSe®および Win GAIA®

両技術ともソフトウェアであるので、技術保護の観点より、ソフトウェアの改良・

アップデートなどは引き続き日本国内で行われることが前提になるが、それがビジネ

スチャンスを阻害するとは考えにくい。

むしろ裨益性を 大化する鍵は、インドネシアのユーザーからのフィードバックで

ある。我が国とインドネシアでは天然ガス需要に影響を与える要因などが異なるため

(2.3.2 (1)参照)、インドネシアのユーザーからのフィードバックはこれまで当社

が国内顧客より得たものとは全く異なる可能性がある。このような新たなコメントが

今までにない改良点を見出すことになる可能性もあり、それがインドネシア内外での

新たなユーザーの創出につながると考えられる。

インドネシアユーザーからのフィードバックの受け皿はインドネシア人が担うのが

望ましいと考えている。この受け皿はトラブルシューティングの対応を兼ねるため、

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問題が発生すればすぐに駆け付けられる対応も必要になる。また言葉もインドネシア

語でやり取りされる方が、より正確なフィードバックが得られる。

インドネシアでは現時点で 70ヶ所以上の LNG受入基地の計画があるが(図 5参照)、

仮にこのうちの 20 か所(約 3 割)で WinmuSE®や Win GAIA®が採用されたとした場合、

数十億円のライセンス料収入が期待される。また同国のパイプラインへの導入に波及

すれば、さらなる上積みが期待される。

(2)Mighty SeamTM

この次世代電縫管は、前述の通り、既に北海の海底パイプラインで採用されている

等、世界的で着実に実績を積み上げており、インドネシア市場へ浸透する上で障害に

なる事項はないと考えている。

同ラインパイプをインドネシアで製造することでコストダウンを図ることに関して

は、その有効性は現時点ではなかなか見通せない。2.3.2(3)で記載した通り、イン

ドネシアの鉄鋼メーカーのコスト競争力が高くないためである。また、技術移転では

常に問題になる製造技術の漏洩のリスクもある。

よって本邦企業の裨益性の 大化に も貢献するのは、本プロジェクトで Mighty

SeamTMを採用し、その実績を広くインドネシアの業界関係者へ宣伝することと考える。

例えば、同国の業界誌等に事例紹介を掲載することである。

インドネシアでは現時点で 70ヶ所以上の LNG受入基地の計画があるが(図 5参照)、

仮にこのうちの 20 か所(約 3 割)で Mighty SeamTMが導入された場合、数十億円の売

上が本邦企業にもたらされる。また同国の LNG 基地とは関連がないパイプラインへの

導入に波及すれば、さらなる上積みが期待される。

(3)本邦 LNG 関連技術がインドネシアへ浸透するためのポイント

インドネシアでは現時点で 70 ヶ所以上の LNG 受入基地計画がある(図 5 参照)。従

って、優れた LNG 関連技術を多数保有する本邦企業にとっては非常に大きなビジネス

チャンスに溢れたマーケットであると思われる。

この背景にあるのは、同国では経済発展に伴いエネルギー消費量が増大する一方、

原油価格の高騰、石炭火力への逆風、既存ガス田の生産量の減退などの影響で、これ

まで主に日本等へ輸出されていた LNG を国内の消費へ回す必要が出てきたためである。

インドネシア政府並びに傘下の国営企業(プルタミナ、PLN、PGN など)は、異口同

音に LNG 受入基地の整備の必要性を様々な場で発信している。

しかしながら、インドネシアにおける LNG/天然ガスの需要は、下記の通り、日本の

それとは異なる特徴があるため、これらへの適切な対処が必要になる。

① 一箇所当たりの需要が小さい(大規模需要は一部の大都市のみ)。

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② 上記のような小規模需要が非常に多く、しかも全土に点在している。

③ 需要地の大半が LNG 液化基地より遠く、しかも海で隔てられている。

④ ほとんどの需要が発電用で、現在は石油を燃料にしている。発電機は石油・ガ

スのどちらでも発電可能な仕様になっている。

よって、本邦企業が自社製品を同国市場で浸透させるためには、機器や装置の小型

化とコストダウンを同時に達成しなければならない。さらに、前述の通り、コストダ

ウン目的で LNG 受入基地全体を浮体として設置する事例が出現しており、これらの機

器・装置に関しても船級協会の型式認定を得るなどの対応も必要になる。

当社の LNG 関連技術の中で挙げれば、超小型 BOG 再液化装置がこれに当たる(下

図参照)。本プロジェクトでは事業主としてのリスクを 小化するために採用は予定し

ていないが、同装置は LNG 気化設備の小型化や低コスト化に貢献する技術であるので、

正にインドネシアのニーズに合っている。

図 6 超小型 BOG 再液化装置(従来型との比較)

出所:当社作成

他の本邦企業も自社技術につき同様なブレークスルーに成功すれば、インドネシア

市場で大いに業績を挙げられる可能性は高く、それによる裨益性は大きなものになる

ことは想像に難くない。

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2 . 9 事 業 実 施 過 程 に お い て 、 相 手 国 関 係 者 に 要 望 ・ 指 摘

さ れ た 事 項 へ の 対 応 等 、 プ ロ ジ ェ ク ト 提 案 の 充 実 化

に 必 要 な 調 査

本プロジェクトのガス需要家からは、以下の 2 点について要望を受けており、本プロ

ジェクトにおいても重点的に、かつ、合理的な説明がなされるよう配慮し、調査を実施

した。

(1)CAPEX、OPEX の低減

インドネシアでは、発電コストが上昇しているものの、政府は消費者に販売する電

力価格を据え置いているため、PLN の財務は悪化の一途をたどっている。こうした背

景から、インドネシアにおいては発電用ガスについて上限価格が導入されており、同

社はガス価格の低減化を強く要望している。

一方、事業主体にとっては、技術の信頼性を維持しつつ、必要な事業性を確保すべ

く、CAPEX、及び OPEX の低減が重要であり、本プロジェクトにおいてもこの点を重

点的に検討した。詳細については、2.3 章及び 2.5 章を参照されたい。

(2)技術の信頼性

本プロジェクトは、発電所という基礎インフラへのガス供給を担うことから、技術

の信頼性が重要となる。当社は、LNG 受入基地やパイプライン整備に係る豊富な知見

を有しており、計画段階で課題の洗い出しが可能となる。これにより、問題を未然に

防止することができる。

本プロジェクトにおいては、特にプロセスの 適化、及び発電所への追随性等の観

点から、ガスの安定供給に資する信頼性向上に用いられる手法を特定した。

一般的に用いられる幾つかの手法の中で、エネルギー業界で も起用されているの

が RAM スタディである。

RAM(Reliability, Availability, Maintainability)は、保全におけるリスク分析手法であ

り、保全や運転の実績、及びそのデータを分析し、計画立案を行い、保全・運転の実

施を行う。(*1)

同国で LNG 受入基地事業は現在 4 件のみであり、そのうち小規模受入基地は 1 件の

みで、RAM スタディは導入されていない。今後、小規模の LNG 受入基地が増加する

ことに鑑み、RAM スタディを本プロジェクトに導入することは、エネルギーの安定供

給ひいては、国のサステイナビリティに繋がると考える。

RAM スタディは、稼働時間や保守効率、さらには生産効率などの評価指標をベース

として、設備、プラントに期待されている信頼性を保つことができるかを検証し、必

要な改善策を実践するために使用される。(*1)

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信頼性は、稼働時間(平均故障間隔)で評価される。また、保守性は、設備の故障

修理時間(平均修理時間)で評価される保守の難易度である。

モンテカルロシュミレーションのような定量的な信頼性解析により設備計画の改善

を行う。故障率、平均修理時間を整理し、各構成要素の稼働率低下の重要度をランク

付けし、重要度の高い要素は冗長化をするなどの措置をする。

稼働率は、事業の採算性にも大きく影響を与える。 終投資判断の際には、一定の

稼働率を仮定するが、実運転がそれを大きく下回れば、採算性は当然悪化する。

RAM スタディの導入は、基本設計時になされることが多く、本事業終了後、直ちに

発生する作業である。情報収集に当っては、パートナーの協力を仰ぐことが確約済み

である。

(*1): 日揮情報システム(現:富士通エンジニアリングテクノロジーズ)「プラント

ライフサイクルマネジメント(PLCM)」

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2 . 1 0 他 国 等 へ の 横 展 開 の 可 能 性 及 び 展 開 促 進 策

2.10.1 他国等への横展開の可能性

現状、アジアの年間 LNG 輸入量は 大 185MTPA であり、世界の LNG 市場の 7 割

を占めている。世界の LNG 需要は 2035 年までに 470MTPA に達する見通し(2010

年:200MTPA、2000 年:100MTPA)であるが、環太平洋地域の需要の伸びが一番大

きい(2015~2035 年の期間において 100%超の増加)。

日本以外の主要輸入国は中国、インドであり、石炭使用量の削減により LNG 需要

は大きく伸びていく見込みである(その他、シンガポール、タイ、フィリピン、ベ

トナム市場の重要性も高まる)。

表 10 地域の需給バランス8

Pacific Atlantic Middle East

供給(MT) 220 215 105

需要(MT) 400 110 30

需給バランス(MT) 180 100 75

706 bcm(2016 年)

欧州

52%

アジア

37%

その他

1,230 bcm(2040 年)

欧州

35%

アジア

60%

その他

図 7 天然ガス輸入地域の内訳

他社資料より引用9

また、近年の技術革新により、米国産シェールガスの生産コストの低減(現在、

損益分岐コスト$4/mmbtu 未満)や、生産量の増加が可能となり(2010 年:5tcf ⇒

2035:13.6tcf)、米国から環太平洋市場への輸出が増える見込みである。

こうした中、太平洋地域では、2030 年までに 260MTPA 超相当の LNG 受入基地プ

ロジェクトが計画されており、横展開の可能性は十分あると言える。

8 Galway Group (2018): "FSRU outlook and Opportunities in South East Asia" (3rd FSRU and Small-Scale LNG Shipping Forum 2018) 9 Nusantra Regas (2018): "FSRU as an effective LNG integrated system " (3rd FSRU & Small Scale LNG Shipping Forum 2018)

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2.10.2 他国等への展開促進策

アジアにおいて LNG 受入基地の必要性は高まっているものの、実際には思ったよ

うに導入が進んでいない。その理由の一つは、LNG/天然ガスのコストである。

上述した国に共通する点は、従来は自国の需要(主に肥料、電力、産業向け)を

国内産天然ガスで賄ってきたが、需要の伸びに供給力が追い付かず、また国内ガス

田が枯渇しつつあることである。

しかし、LNG を他国から輸入すれば、LNG 液化費用、LNG 輸送費用、気化・貯蔵

費用等が追加コストとして上乗せされる。これらが電気料金やモノ・サービス価格

の上昇という形で国民や産業の負担増につながる。特に電気料金は、各国政府が規

制していることから、日本の総括原価方式のような考え方をそのまま適用するわけ

にはいかない。

例えば、インドには 4 つの陸上 LNG 受入基地があり、総容量は約 30million MTPA

である。主な天然ガス需要家は、肥料、電力である。電力について見てみると、23GW

相当のガス火力発電所が存在しており、必要なガス量は約 113mmscfd だが、2015-2016

の消費量は 28mmscfd である。インドの 1 世帯が支払う電気料金は 2~8 セント/kWh

と非常に安く、地元の政治家が電気料金を上げないよう規制当局に圧力をかけるこ

とがある。一方、電力会社としては原価が上がっているのに、電気料金が据え置き

となることから、慢性的な赤字となり、天然ガスを引き取れない状況にある。LNG

輸入実績と LNG 受入容量の関係は以下の通りであり、契約量が受入容量を大きく下

回っている。LNG 受入基地を整備したにもかかわらず、高くて使われない実態が如

実に表れている。

図 8 インドの LNG 受入基地容量に対する輸入量

他社資料より引用10

10 H-Energy (2018): "Opportunities in small-scale LNG in India" (3rd FSRU and Small-Scale LNG Shipping Forum 2018)

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次に、発電コストについて見てみる。米国やカナダ(AMER)、及び欧州、中東、

アフリカにおいては、ガス火力発電の発電コストは他に比べて低いが、APAC(アジ

ア太平洋地域)では地熱、バイオマスに次いで高く(2017 年時点で 102 USD/MWh)、

石炭(50 USD/MWh)の 2 倍である。

図 9 各地域の均等化発電原価(Levelized Cost of Electricity)

他社資料より引用11

上記より、アジア諸国への輸入をさらに促進するには、ガス価格の低減が不可欠

である。つまり、LNG 受入基地に要する CAPEX 及び OPEX の低減が求められる。

近年、浮体式受入基地への移行が世界的に進行しており、2017~2030 年の期間で開

発予定(建設中/提案済み)プロジェクトの 60%は浮体式である12。

浮体式 建設中 11 件、提案済み 57 件

陸上 建設中 17 件、提案済み 28 件

この浮体式案件のうち約半分がアジアで開発されている(浮体式は約 30 件、陸上

は約 20 件)。また、現在 27 の FSRU プロジェクトが運用中であり、新たに 70 の浮

体式 LNG 受入プロジェクトが建設中あるいは提案中である。

11 Galway Group (2018): "FSRU outlook and Opportunities in South East Asia" (3rd FSRU and Small-Scale LNG Shipping Forum 2018) 12 Galway Group (2018): "FSRU outlook and Opportunities in South East Asia" (3rd FSRU and Small-Scale LNG Shipping Forum 2018)

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このようにアジアで浮体式が積極的に選択される背景には、以下のようなメリッ

トの存在がある。

事業開発期間 陸上に比べて土地収用に係る許認可が限定的であり、事業開発期間

が短縮できる可能性がある

CAPEX・OPEX の低

陸上に比べて CAPEX・OPEX の低減が可能

ロケーション

操業柔軟性

仕様に拠るが、FSRU は移動式資産であり、他のロケーションに移動

したり、あるいは船舶として活用したりすることができる

途上国では、規制環境が十分に整備されていない、あるいは LNG 契約体系が硬直

的(LNG 価格、LNG 供給期間等)であるなど、他にも多くの課題が存在するのが現

実であるが、事業者の立場ではCAPEX及びOPEXを低減させることが急務であろう。

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2 . 1 1 我 が 国 企 業 が 事 業 に 参 加 す る 場 合 に 講 ず る べ き コ ス

ト 競 争 力 強 化 策

前述の我が国技術を本プロジェクトへ導入する際は、技術のエッセンスを惜しみ

なく導入することで技術的優位性を確保すると同時に、その導入のプロセスは極力

インドネシア人技術者等に委ね人件費を下げることで、コスト競争力も維持する。

また、前述の LNG 気化装置の例のように、全てを本邦企業で行うのではなく、適

切な第三国の企業に一部のコンポーネントの設計・製作・建設等をゆだねることで、

事業費全体のコストダウンを図ることを検討する。但し、所謂「丸投げ」は避け、

要所は本邦企業が適切に管理し、全体として品質・納期を維持したまま十分なコス

トダウンを図れる体制を整える。

なお、技術エッセンスの導入に際しては、我が国企業の技術が不当に模倣される

ことを防ぐために、知的財産の保護や実施料などが明記された適切な契約(例:ラ

イセンス契約)をインドネシア企業と締結する。

(1)WinmuSe®および Win GAIA®

両ソフトウェアの導入に際しても、極力インドネシア人の起用によりコストダウン

を図る方針である。そのためにも、操作画面や取扱説明書などの言語をインドネシア

語へ翻訳し、インドネシア人オペレーターの誤操作などを防止することが肝要である。

また、トラブルシューティング対応要員もインドネシア人として、商業運転開始か

ら数ヶ月の間は現地に駐在し、問題が発生すればすぐに対応可能な体制とする。これ

により、WinmuSE®や Win GAIA®が本プロジェクトでその持てる性能を 大限発揮でき

る環境を整えると同時に、両ソフトウェアが同国他案件で普及した場合のフィードバ

ックの受け皿要員(2.9.2(1)参照)へ横滑りさせることも可能になり、まさに一石

二鳥となる。

技術保護は、契約面ではユーザー(SPC)とはライセンス契約を締結し、あくまでも

ソフトウェアの利用許諾のみをユーザーに与えるものとする。つまりソフトウェアの

所有権は引き続き当社が保有する。この中では、ソフトウェアのコピー、他施設への

転用、サブライセンスを禁止する。

(2)LNG 気化設備

前述した A 社と共同でバルチラ社に対応する LNG 気化設備を製作する場合、2.8 章

(1)で述べた通り、同設備の設計をパッケージ化して A 社へ移転し、このパッケー

ジに基づいて同社に設備の製作を委託することが も有効なコスト競争力強化策であ

る。

前述の通り、A 社は石油ガス設備のモジュール製作では世界有数の企業であるため、

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設計パッケージさえ準備すれば、それを基に詳細設計(モジュール化設計も含む)を

展開し、資機材調達や設備の製作までを一括して実施可能である。しかも同社の質が

高くかつ安価な労働者(溶接工など)を 大限に有効活用することが出来る。

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(様式2)

頁 図表番号8 図19 図29 図311 図413 表117 表217 表318 表418 図519 表519 表621 表727 表832 表935 図638 表1038 図739 図840 図9

Win GAIA®のシステム構成

タイトルガス配分の内訳(国内と輸出)

主なガス需要家インドネシアにおける天然ガス需給バランスの経年推移

エネルギーミックスの推移

インドネシアにおいて稼働中のLNG受入基地の概要ガス配分に関する現規制と旧規制の比較

インドネシアLNG受入基地マップ

二次利用未承諾リスト

委託事業名質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業

報告書の題名平成30年度質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(我が国企業によるインフラの海外展開促進調査事業:インドネシア・LNG受入基地事業の形成に向けた事業実施可能性調査)調査報告書

受注事業者名JFEエンジニアリング株式会社

インドのLNG受入基地容量に対する輸入量各地域の均等化発電原価(Levelized Cost of Electricity)

主要リスク、発生可能性・影響度、及び対応策コーポレート・ファイナンスに係る融資条件の確認結果

LNGバリューチェーンにおける人工知能導入の動向超小型BOG再液化装置(従来型との比較)

経済性評価の前提条件本プロジェクトの経済性

地域の需給バランス天然ガス輸入地域の内訳

インドネシアにおけるLNG受入基地の整備計画