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[email protected] 超音波技術者のためのレオロジー入門 The introduction to rheology for ultrasonic experts. 上田隆宣(日本ペイント) Takanobu Ueda (Nippon paint) The purpose of Rheology is to show relations between strain and stress as a function of the time. Rheology is the learning of a sense. Therefore, it is expressed with a logarithm. The directions which give material strain or stress are shear and extension. The methods which give material strain or stress are static measurement and dynamic measurement. Dynamic measurement is method which gives it Sine oscillation. Ultrasonic oscillation is very high frequency. Therefore, it is suitable for the phenomenon that a change is fast. レオロジーとは レオロジーは1929年にビンガムによって公にさ れた、その定義は物質の流動と変形を扱う科学である。中国語では流変学と訳されているそが、非 常に的を得た言葉でさすがは漢字の国でである。 レオロジーは流体力学と材料力学の学際分野 の学問で、やっている事は粘弾性に関する研究が ほとんどである。粘弾性の研究とは、液体ではべと べと、ねばねば、さらさら、しゃぶしゃぶというような 性質、固体では硬い、柔らかい、もろい、腰がある、 跳ねるなどの性質について、その性質をどのように 科学的に表現するか、何故このような性質がでてく るのかを考える学問である。 おさわりの学問 ねばねば、さらさら、硬い、柔らかいなどの性質 を我々はどうやって感じているのかを考えたとき、 目でみた感じでもある程度わかりますが実際には 手にとってさわってみるのが一番、さわるといっても じっとさわるだけでは駄目です、力をくわえてその 反応を確かめるのである。レオロジーとはまさにこ のさわるという行動そのものなのである。すなわち、 物に変形を加える時にどの位の力がいるか、どの 位変形したかという性質を調べるのである。 人間の手はさわる事でこれらの性質をすべて確 かめられ、結果を言葉としてねばねば、さらさら、硬 い、柔らかい、時には○×△のあいまいな評価を する。これを数値やグラフとして定量的にとらえよう としているのがレオロジーである。 これらの性質は温度や加える力の速さによって も変化します、例えば、プラスチックを曲げたいと 思った時、ドライヤーで暖めてやると小さな力で短 時間に曲げる事ができる、また、長い時間重りを乗 せておけば曲がってしまう事など皆さんが日常経 験している事である。この様な性質は時間温度喚 算則とよばれる性質で、暖めるとより短時間に同じ 力で同じ変形をさせる事ができるという、レオロ ジーでは重要な法則である。 変形と力と温度または時間との関係を調べること がレオロジーの目的である。人間の手は圧力と温 度を感じる事ができる、また非常に高精度に動か す事が出来まる、その意味ではレオロジーの測定 装置そのものである。従って、レオロジーはおさわ りの学問なのである。 口や舌もまたレオロジーの優秀なセンサーであ り、毎日の食事でみなさんはレオロジー測定を行 なって、肉が硬いとか柔らかいとか、そばに腰があ ると、食品にたいして重要なレオロジー的性質を研 究している事になる、まさに人類皆レオロジストな のである。 レオロジーがなぜ必要か? おさわりの学問が何故必要なのでしょうか、まず は触った感触を定量化するという事である、つぎに はなぜそのような性質が発現するかというメカニズ ムを考える事である、そして最終的な目標はこの様 な性質を付与するためにはどうするべきかという設 計そのものなのである。 数値として表現する事は、標準化を行なったり、 自動化をするばあいに、個人差をなくしたり、より精 度良く制御するために重要な事はよくおわかりの 通りである。定量化の中には経験的な現象を数値 化するだけの場合と、メカニズムを考えてゆくため の精密な測定がある。 Fig.1 Stomer viscometer Fig.1 に示す、塗料産業で使用されるストーマー 粘度計は経験を数値化している代表例で、塗料液 を混ぜるときにどの位の力がいるかと言うことを数 値化したものである。従って、メカニズムを推測に 利用するにはデータが不足しており、メカニズムの 推定をする為には様々な条件で精密に測定し、 データをとってゆく事が必要である。 例えば、塗料がたれるという現象を研究する場 合、粘度が高ければたれないというのは誰が考え ても当り前であり、たれるかどうかは塗ってみれば わかることである。 ところが粘度測定というのは剪断速度や温度に Proceedings of Symposium on Ultrasonic Electronics, Vol.28, (2007), pp. 355-358 14-16 November, 2007 3-INV

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超音波技術者のためのレオロジー入門The introduction to rheology for ultrasonic experts.

上田隆宣(日本ペイント)Takanobu Ueda (Nippon paint)

The purpose of Rheology is to show relations between strain and stress as a function of the time. Rheology

is the learning of a sense. Therefore, it is expressed with a logarithm. The directions which give material strain or stress are

shear and extension. The methods which give material strain or stress are static measurement and dynamic measurement.

Dynamic measurement is method which gives it Sine oscillation. Ultrasonic oscillation is very high frequency. Therefore, it is

suitable for the phenomenon that a change is fast.

1 レオロジーとは

レオロジーは1929年にビンガムによって公にされた、その定義は”物質の流動と変形を扱う科学”である。中国語では流変学と訳されているそが、非常に的を得た言葉でさすがは漢字の国でである。

レオロジーは流体力学と材料力学の学際分野の学問で、やっている事は粘弾性に関する研究がほとんどである。粘弾性の研究とは、液体ではべとべと、ねばねば、さらさら、しゃぶしゃぶというような性質、固体では硬い、柔らかい、もろい、腰がある、跳ねるなどの性質について、その性質をどのように科学的に表現するか、何故このような性質がでてくるのかを考える学問である。

2 おさわりの学問ねばねば、さらさら、硬い、柔らかいなどの性質

を我々はどうやって感じているのかを考えたとき、目でみた感じでもある程度わかりますが実際には手にとってさわってみるのが一番、さわるといってもじっとさわるだけでは駄目です、力をくわえてその反応を確かめるのである。レオロジーとはまさにこのさわるという行動そのものなのである。すなわち、物に変形を加える時にどの位の力がいるか、どの位変形したかという性質を調べるのである。人間の手はさわる事でこれらの性質をすべて確

かめられ、結果を言葉としてねばねば、さらさら、硬い、柔らかい、時には○×△のあいまいな評価をする。これを数値やグラフとして定量的にとらえようとしているのがレオロジーである。

これらの性質は温度や加える力の速さによっても変化します、例えば、プラスチックを曲げたいと思った時、ドライヤーで暖めてやると小さな力で短時間に曲げる事ができる、また、長い時間重りを乗せておけば曲がってしまう事など皆さんが日常経験している事である。この様な性質は時間温度喚算則とよばれる性質で、暖めるとより短時間に同じ力で同じ変形をさせる事ができるという、レオロジーでは重要な法則である。

変形と力と温度または時間との関係を調べることがレオロジーの目的である。人間の手は圧力と温度を感じる事ができる、また非常に高精度に動かす事が出来まる、その意味ではレオロジーの測定装置そのものである。従って、レオロジーはおさわりの学問なのである。

口や舌もまたレオロジーの優秀なセンサーであ

り、毎日の食事でみなさんはレオロジー測定を行なって、肉が硬いとか柔らかいとか、そばに腰があると、食品にたいして重要なレオロジー的性質を研究している事になる、まさに人類皆レオロジストなのである。

3 レオロジーがなぜ必要か?おさわりの学問が何故必要なのでしょうか、まず

は触った感触を定量化するという事である、つぎにはなぜそのような性質が発現するかというメカニズムを考える事である、そして最終的な目標はこの様な性質を付与するためにはどうするべきかという設計そのものなのである。

数値として表現する事は、標準化を行なったり、自動化をするばあいに、個人差をなくしたり、より精度良く制御するために重要な事はよくおわかりの通りである。定量化の中には経験的な現象を数値化するだけの場合と、メカニズムを考えてゆくための精密な測定がある。

Fig.1 Stomer viscometer

Fig.1 に示す、塗料産業で使用されるストーマー粘度計は経験を数値化している代表例で、塗料液を混ぜるときにどの位の力がいるかと言うことを数値化したものである。従って、メカニズムを推測に利用するにはデータが不足しており、メカニズムの推定をする為には様々な条件で精密に測定し、データをとってゆく事が必要である。

例えば、塗料がたれるという現象を研究する場合、粘度が高ければたれないというのは誰が考えても当り前であり、たれるかどうかは塗ってみればわかることである。

ところが粘度測定というのは剪断速度や温度に

Proceedings of Symposium on Ultrasonic Electronics, Vol.28, (2007), pp. 355-35814-16 November, 20073-INV

Page 2: 3 -INVuse-jp.org/USE2010/proceedings/USE07_proceedings/3-X/355.pdfFig.2 Fÿ+¬ ·34#Ý V ,G , qFþ v · d)zG"&gFç FïG FþF÷F¸ g 3ÿ ØFÜ 0.1/s 3Æ F÷FïG öFø( ØFÜ%&6õFçFöFÔG

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よって大きく変化するために測定条件を検討する必要がある。

Fig.2 Flow curves of automotive topcoats.

Fig.2 は自動車用上塗り塗料の流動曲線を示したもので、剪断速度が 0.1/s 近傍でたれ性と粘度が相関していることがわかる。1)

レオロジー測定は難しくて時間がかかるというのは事実であり、役にたつのかどうかは難しく、困った時の神頼みのように、困った時のレオロジーというような利用のしかたが現状であり、レオロジストは占師みたいなものになっている。占師はたくさんいると混乱しますので、どうしても研究者が少なくなっているのです。

最近、レオロジーがもてているという話がある。石油化学の発展段階では次から次へと新しい夢のような材料の開発がされてきた。しかし、環境問題への関心が高まり従来のような新規化学物質も簡単に作ることが難しくなってきて、新しい材料というよりも新しい加工技術が重要となってきたためだと考えられる。

材料の性質に関する研究が進み、性質を組み合わせる必要がでてきて、そのためには性質とメカニズム、構造を明確にして、それを作り出すために材料の質だけでなくどんな形がいいか、どのように加工すればよいかという事が重要な問題となってきたからだと考えられる。

物の性質といっても、化学的な性質と物理的な性質があり、レオロジーは物理的な性質に関係している。化学的な性質は、分析機器の進歩によりかなり明確になったもののその性質の発現メカニズムに関しては物理的な側面が大きい、そのような理由で、レオロジーがもてているのであろう。

4,レオロジー測定の種類

動的= Dynamic は一般には時間的に変化する状

態をさす場合が多いが、レオロジーでは動的=

Oscillation すなわち正弦振動を加えることをしめ

し、静的は一定方向に変形または力を加えるによ

る測定をしめすのである。

液体の測定で定常流測定、チクソトロピック測定

(等速昇降法)などは静的測定、正弦振動による測

定を単に動的粘弾性測定と呼ぶのである。

固体では引っ張り、クリープ測定、応力緩和など

が静的測定で、クリープ、応力緩和は静的粘弾性

測定と呼びます、正弦振動による測定は液体同様

に動的粘弾性測定である。

次に、測定治具、測定方法による分類がある、液

体では二重円筒(ボブシリンダー、コレット)、円錐

円盤(コーンプレート)、平行円盤(プレートプレー

ト)など測定治具で分類される。固体では引っ張

り、曲げ(1点支持、2 点支持)、ねじりと測定方法

によって分類される。

さらにレオロジーはひずみと力の関係を調べるた

めに、ひずみ制御(Strain Control)、すなわち変形

させえて力を測定する方法と、応力制御(Stress

Control)、すなわち力をかけてどのくらい変形する

かを測定する方法がある。

5.レオロジー測定で何がわかるのか?

液体の測定結果の評価は、静的測定では剪断

速度 dγ/dt (/s)と剪断応力 σ(Pa)を、動的測

定では角速度ω(rad/s)と複素剛性率G*(Pa)ま

たは分解した貯蔵剛性率G’(Pa)、損失剛性率G”

(Pa)をグラフにする。剪断速度と角速度はコックス

-メルツ則により等価とみなせるので一枚の両対数

グラフに流動のカルテとして整理される。

縦軸は粘度でまとめるより、分散状態や高分子の

絡み合いの程度を考察する上では縦軸を応力と

するほうが望ましい。

レオロジーは感覚を定量化する学問である、感

覚はウェーバー・フェフィナー則で対数変化してい

る場合に検知できるといわれ、測定結果に優位差

があるかどうかは対数上で差異があるかどうかでわ

かるのである。

Fig.3 Flow curves of dispersion systems.

Fig.3 に示すように流動曲線は両対数グラフでの

検討が適切である。

図中一番下の剪断応力σ が右上がり 45°の直

線となっているものがでニュートン流動である。

また、図中の分散系で見られる低剪断領域の平

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坦部は第2平坦部とよばれ分散体の相互作用が

大きく影響する、高剪断部はあまり大きな特長はな

く分散媒体の分子量の影響が大きい。1)

Fig.4 Temperature dispersion of paint film

FIg.4 に示すように固体では横軸に温度を縦軸

に貯蔵弾性率E’(Pa)、損失弾性率E”(Pa)、損失

正接 tanδ(-)を片対数グラフにプロットする。

このグラフからはE’から各温度でのヤング率、

また変化から軟化温度や架橋密度、流動開始温

度が、E”または tanδ のピーク温度からガラス転

移温度、および側鎖の絡み合い状態、その形から

相溶性、配向結晶化の程度、などを読み取ること

ができる。1)

溶融粘弾性をレオメーターを利用して測定した

場合は貯蔵剛性率G’および損失剛性率G”を3倍

してE’、E”上にプロットすることにより室温固体の

状態から溶融状態までの高分子のカルテを作成

することができる。

硬化過程では動的粘弾性を一定周波数で測定

して変化を測定し、横軸を熱硬化では温度、時間

による硬化では時間とし縦軸に貯蔵剛性率G’と損

失剛性率G”の変化を片対数上にプロットする。

貯蔵剛性率G’の変化から硬化開始、硬化終

了、形から硬化の速度がG’とG”の交点からゲル

化温度を読み取ることができる。

レオロジーの専門書では緩和スペクトルやクリー

プコンプライアンスなどに変換して解説している

が、はじめからこの領域に足を踏み入れる必要も

なく、かなりベテランの研究者でもG’、G”、E’、E”

の挙動だけで充分である。

スペクトルへの変換は高分子理論の研究者に

とっては重要であるが、実工業界での現象把握や

材料開発においてはここに上げたような整理で充

分である。

6.超音波とレオロジー

超音波のレオロジーでの利用は塗料や接着剤な

どの硬化過程の観察で、特に光硬化など硬化速

度が速く大きな状態変化が起こる場合のレオロ

ジー測定の切り札的存在で利用されることが多く

見られる。しかし、ほとんどの場合超音波の伝搬速

度の変化から相対的な粘度変化をとらえており、

動的測定本来の加える振動と応答振動との位相

差と振幅比から弾性と粘性に分離して考察を行う

ような測定はあまり行われていない。

先に述べたようにコックス・メルツ則により動的で

の角速度(周波数の2π倍)と剪断速度が等価と

なることから塗装や充填など高剪断での現象の解

明方法として高周波数での動的粘弾性が利用さ

れており、可聴周波数領域では解析例がある。

超音波は分散系において分散手段として利用さ

れる事が多いことより、超音波を用いた動的測定に

は課題も多いと考えられるが、今後の研究が期待

できる分野である。レオメーターでの応力検知部として水晶を用い

て超音波を利用してひずみが極端に小さい状態でのレオロジー測定を可能とする装置を開発された例もあったが、温度に敏感であることから波及することはなかった。

7.レオロジーからの開発著名なレオロジストである村上謙吉先生の入門

書の中に次の様な一節がある。2)

「石油化学と結びついて華やかにデビューした戦後の花形、高分子科学と、当時まったくお呼びでなかったレオロジー。将来の理想的な材料科学の発展は、長らくお呼びでなかったレオロジストが、材料設計、合成化学の担当者を奴隷のように酷使する時に始まる。」

レオロジーを研究する物にとってはたのもしいばかりの名言である。高分子関連の開発にはレオロジーは大変重要な基盤技術である。

さらに、塗料や化粧品などの分散系とよばれる、粒子を溶液に混ぜた物のレオロジーの研究も盛んになり、これらの材料開発においてはますます重要な基盤技術になってきている。

8.材料開発からの脱皮塗料は典型的な材料開発を行なっている産業

です、塗料を1kgいくらという値段でお客さんに売る。町のペンキ屋さんで売る塗料はこれで良いが、

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自動車会社などでは塗って、塗膜になり、それがどれ位の性質を持つかということまでもサービスとして含まれているのである。この様な事情は、当社に樹脂や顔料を納入している多くのメーカーも同じことである。

自社で材料を作るだけでなく、一歩進んで加工技術を積極的に取り入れることで新たな分野へ事業を展開している会社も多くなってきている。

レオロジーはここにあげたようなどちらかと言えば加工技術で必要な場合が多い技術である。

今後様々な方向での材料開発事業を行なったり、少し踏み込んで加工技術を含めた事業展開をしてゆくためにはレオロジーは必要不可欠な基盤技術であると考えられる。だからこそ、占師でない、商品開発の中心的な役目をするレオロジストを養成する必要があるのである。

9.技術翻訳家レオロジストレオロジストは物理的な現象のメカニズムを推定

してゆく事から、ライン担当が実際に困っている問題を聞き、いったい何が問題のボトルネックとなっているかを考える。

そして、様々な物性値を参考にして材料開発か加工技術かなど問題を基礎技術のどの分野で解決すべきかを判断するのである。

その意味では、レオロジストは基礎研究と応用開発技術との間で技術の翻訳する役目ができるのである。

また、営業分野でユーザーの要求を的確に自社の技術に伝えてゆくためには、技術翻訳家としてのレオロジストは大変役だっていくものと考えられる。技術翻訳家はレオロジストだけとは限りませんが、レオロジーという学問の性格からして、すべての技術者が専門家でなくともレオロジーの臭いがかげるぐらいになることは重要である。

10.五感への挑戦溶液の物理的性質を決める特数値として、粘度

と表面張力がある。粘度や表面張力はまさに、おさわりの学問レオ

ロジーで検討されている。しかし、最近の要求として力を加えず測定したいという要求がある、この場合おさわりが使えないので、見るだけでなんとかする必要がある。

画像処理の技術が進み、見ることから粘度を測定したり、表面張力を測定したりする技術の開発がだんだん出来るようになってきている。

さらに、レーザーや電場などを用いた非接触での変形を加える研究も盛んに行われており、さわることなく粘度や表面張力を測定することが可能になってきている。

このようにレオロジーは人間の五感に対する挑戦です、従って、目標は人間の感じ、五感そのものなのである。だからそんなに難しく考えず、気楽に取り組んでほしいものなのである。

人間の感覚が最も優秀で、その感覚を定量化してゆくことがレオロジーなのであるから。

讃岐うどんとスーパーで安売りの3個100円のうどんの差異がわかる人はレオロジストの資格が十分ありますのでレオロジー的な評価について関心を持っていただければ幸いと考えるものである。

10.おわりに昔々、当社の樹脂部門の責任者が会社をおや

めになるまえに私の所にこられてレオロジーの測定をしたいと言われた。その人の話では、昔樹脂を合成している時に、樹脂合成をどこでやめるかを判断するために手にとって樹脂を引っ張ったり、たたいたりしてさわってみて、「ボディがでる」という感じで評価をしていた、あれはきっとレオロジーだと思うので測定してみたいと言われて、1週間ほど測定をした。測定の結果、「ボディ」はまさに粘弾性で説明ができることがわかったのである。

経験で行なっている事は本当に正確であり、学問とか難しい技術は必要がないように思えますが、技術を高め、普及してゆくためには多少面倒でも科学的な根拠を持つことは重要であると思う。

技術翻訳家レオロジストとしてレオロジーの臭いを感じ、少しでも興味を持って、皆さんの中でレオロジーが珍しいもので無くなる事を願い、話を終わりにする。

11.おまけ(2匹のかえる)はじめのカエルのお話は水の中にカエルを入れ

て加熱するとカエルは”いい湯だな”と思っている

間にゆでがえるになってしまうが、沸騰したお湯に

入れると逃げ出す。状況判断が大事だというお話

である。(NHKのテレビでノースダコタ大学のノエ

ルティシュ教授がバブルに揺れる日本を批判して

たとえ話をしていた、米国では有名な話のようだ)

もう一方のカエルのお話はクリームの中に入れた

物分かりのいいカエルは抵抗もせずに沈んでし

まったが。もがき続けたカエルはクリームがダイラタ

ンシーなので、いやいやバターができて助かったと

いうお話である。状況判断よりも最後までもがきな

さいという話である。(ブルーバックスの2+2=5に

する発想より、最近見た"Catch me , if you can."で

はカエルではなくネズミでクリームがバターになると

いう話だった)

引用文献1)上田隆宣,「レオロジーなんかこわくない」,サイエンス&テクノロジー,20062)村上謙吉,「やさしいレオロジー」,産業図書,1986