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河川の調査点検におけるUAV活用方法の検討
東北技術事務所 品質調査課 郷家 康弘
○千葉 孝寿
北上川下流河川事務所 高田 浩穂
1.はじめに
本報告は、近年様々な分野で活用が進んでいるUAV(Unmanned Aerial Vehicle)
について、河川の調査・管理で活用を図るべく、UAVの特徴、計測精度、そして課
題把握などを検討した中間報告である。
2.UAVの特徴
機器使用などからUAVの長所・短所について表-1 に整理した。
表-1 UAVの長所・短所
長
所
小型・軽量のため運搬が容易
操縦者の免許不用
動作は静音、飛行は安定
簡単に上空から写真撮影
撮影写真から立体化が可能
CIM化により調査~維持
管理までの利用が可能
短
所
飛行時間が短い
天候により使用困難
目視操作が基本
150m以上高度飛行は許可必要
墜落・操作不能もあり得る
電波条件の影響を受けやすい
モラル無い利用が社会現象
3.河川調査や管理における活用シーンの想定と計測精度の把握
(1)河川調査・管理での活用シーン( 2 局面の視点から調査・検討を実施) ◆維持管理における堤防、構造物等の河川管理施設の変状把握 ⇒精度重視
◆洪水時における堤防の挙動 ⇒ 迅速性重視
図-2 河川調査・管理での活用シーン
①維持管理における活用 ②災害時に活用
【船や足場を必要とした場所や接近が困難な場合に有効】 【立入が困難な場合に有効】
(2)施設点検を想定したUAV計測の精度調査
河川調査・管理においてUAVの撮影や計測等の際に必要となる精度を確認するため、
図-3のように堤防護岸にスケール板を置いて、UAVの高度を変化させて板に記載の
線幅の判読を行った。その結果、カメラの解像度も踏まえて各基準における要求精度を
UAVを活用し満足できることを確認した(図-4)。さらに撮影画像を使って解析ソ
フトを使うと細かな幅まで判定することが可能であった。但し、影になる部分では判読
が著しく劣るため、撮影目的を踏まえて太陽の位置や天候などに配慮する必要がある。
図-1 UAVの概要
近接が困難な河岸(飛行イメージ) 高い場所の施設点検
破堤等容易に近づけない場所
(3)UAV撮影画像をもとにした立体化作成と横断図の抽出
UAV撮影画像をもとに立体化処理を行い、立体図から河川横断図を抽出することが
可能である(図-5)。この立体図からは、任意の横断図を抽出できるという活用が考
えられる。今回、高度別にUAVで撮影した画像から立体図を作成し、河川横断図を抽
出して過年度に実施した定期横断測量との精度比較を行った(図-6)。その結果、堤
防部分は約 50 ㎜程度の誤差であり、
精度として満足いくものであったが、
植生が繁茂する河川敷部分や水面は
立体化が難しいことがわかった。
◆堤防部分は横断図作成可能横断図作成は厳しい
図-4UAV撮影高度別のクラック認識幅
図-3 UAVの高度別のスケール板の撮影
調査
写真から 3 次元化して、横断図を作成(黄色線)
図-6 高度別に作成した立体図から抽出した横断図の比較
河岸肩標高の 真値との乖離値 ・高度 14m :617mm ・高度 50m :797mm
・高度 100m:450mm
水面付近はガラスのように撮影画像の特徴点がなく精度が悪い。
植生に隠れた地表面が捉えられず精度が悪い
堤防
堤防
UAV撮影の河川敷
河川敷 河川敷
水部
UAV撮影の水面 樹林が繁茂
■要求精度
・RC構造物調査:0.2mm
※コンクリート診断技術
・護岸調査:2mm
※河川管理施設の診断
補修マニュアル
・土構造物の高さ:5cm
※河川土工マニュアルの
盛土高管理基準
・災害応急復旧設計:0.1m程度
全景把握
局所把握
構造物把握
図-5 UAV撮影画像をもとに作成した立体図
堤防天端法肩標高の
真値との乖離値 ・高度 14m :52mm ・高度 50m :65mm
・高度 100m:51mm
4.災害時における活用
UAVの最大の活用方法として、災害時に迅速に被災現場を飛行して状況画像を撮影
し、画像の立体化により被災の具体状況の把握することが求められるものである。今回、
実際に河川沿いの道路路面にクラックが発生している現場にて調査を行った(図-7)。
調査の結果、現地に到着して49分という短時間で画像から立体化処理を行って現地
のおおよその被災状況を把握できることを確認した。
5.今後のUAV活用について
現時点で、UAVには明確な規制が無い。運用を図る上で
重要な配慮事項は安全確保であり事業者における最大の責務
である。日本国内では、首相官邸屋上で小型無人機が発見さ
れた事案以降も様々な落下事故の発生やプライバシーへの影
響がより懸念される状況下である。
このような背景の中で、河川調査・管理においてUAVの
活用を図る際に、事故や災害が頻繁に発生すると業界全体の
体質を問われ、適切なツール(UAV)の使用を妨げられて
しまう恐れがある。
写真:撮影規模 1,200 ㎡(400×300)撮影、高度 180m、撮影数約 400 枚(速報解析 70 枚、詳細解析 200 枚使用)
図-7 災害箇所をUAVで迅速に撮影し、立体化した画像
道路路面に亀裂が生じている状
況が確認できる。クラック幅についてもトラックとの対比によりおおよその大きさを把握
【作業時間】 合計49分
①作業開始準備:20 分
②撮影(1 フライト): 11 分
③データ移動:1 分
④解析:17 分
災害時に短時間でUAVを飛行させ3Dモデル構築が可能
速報で現地状況を把握・情報共有が可能
迅速な応急復旧に寄与
河道側からの被災状況把握が可能
立入困難な箇所での被災状況把握が可能
そのため、東北技術事務所では、安全かつ有効にUAVを運用することを目的と
して、特に現場での活用、請負者に対し、UAV運用に関する技術指導を促すための
基礎資料として【UAVによる河川調査・管理への活用の手引き(案)】を作成した。
(1)安全に関する配慮事例
↓墜落したUAV
(2)更なる活用事例
俯瞰的な写真による広報活動
【UAV活用
官民協力 制度】
災害時に備え
た体制確保が
重要
社会情勢ではUAVの運用に対し、疑
心暗鬼の状態である。しかし、UAVに
関心が高いことから、安全を確保し、モ
ニター画面より、直接撮影状況等を広報
することにより更なる河川行政への理解
を得ることも可能と考えられる。
5.まとめ
今後益々、安全・安心な運用の確保等に向けたルールがより具体化されることが考
えられる中で、使用次第で如何様にも変化するUAVに対して、河川管理者として適
切な利活用を図るため、使用方法や広報に必要な取り組みの周知徹底を図りたい。
また、従来の河川堤防の各種調査に比べ効率化や精度向上が見込まれるUAVにお
いて、他の調査・管理における活用シーンをさらに想定、検討し、活用の拡大を目指
すものである。
第三者被害対策(安全のために落下させない事が
BESTとは言い切れない)
出展:東京消防庁リチウムポリマー電池火災
電波状況の確認(Wi-Fiに注意)
スペクトル・アナライザー
(使用周波数・通信状況確認)
モニター画像