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【2】環境問題の歴史的変遷 環境デザイン工学科 「環境計画学」(担当:阿部宏史)

【2】環境問題の歴史的変遷...【2】環境問題の歴史的変遷 <講義のポイント> ①環境問題の質的変化(3段階) ②地球温暖化問題とその原因

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Page 1: 【2】環境問題の歴史的変遷...【2】環境問題の歴史的変遷 <講義のポイント> ①環境問題の質的変化(3段階) ②地球温暖化問題とその原因

【2】環境問題の歴史的変遷

環境デザイン工学科「環境計画学」(担当:阿部宏史)

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【2】環境問題の歴史的変遷

<講義のポイント>

①環境問題の質的変化(3段階)

②地球温暖化問題とその原因

- 環境、経済、社会、グローバル化

③環境問題を克服し、現代社会を持続可能にするためには何が必要か?

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地球環境問題 <1990年代~>

狭域 広域<空間軸>

<時間軸>

短期

長期

<環境問題の質的変化と社会への影響>

時間軸 → 次世代への影響(世代間の衡平性)

空間軸 → 他地域への影響(地域間(世代内)の衡平性)

産業公害問題 <1960年代>

都市・生活型環境汚染問題

<1980年代~>

<ほぼ解決>

1-8(再).環境問題の質的変化

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1-7(再).戦後の経済発展と地域づくりの課題・環境問題

②高度経済成長期(1955年頃~1973年)

・年平均経済成長率 約9%・重化学工業(鉄鋼,石油化学工業)・臨海工業地帯の建設(新産業都市など)

<1973年 第1次石油危機>

①戦後復興期(1945年~1955年頃)

・第2次世界大戦による国土の荒廃・治山治水,電源開発,食糧増産

③安定成長期(1973年~1992年)

・年平均経済成長率 約4%・加工組立型工業(自動車,電気機械)・高速交通網の建設(新幹線,高速道路,空港)

<1985年 プラザ合意 → バブル経済の形成と崩壊>

④バブル崩壊後の低迷期(失われた20年~アベノミクス)

・年平均経済成長率 約0.8%(1992~2009年度)・少子化,高齢化,人口減少<→限界都市,地方消滅>・高度情報化,グローバル化,サービス経済化

<→AI, IoT, Society5.0>

高速道路,空港建設による加工組立型工業の地方展開

・テクノポリス構想

グローバル化,少子・高齢化,サービス経済化に対応した大都市の再生,地方都市の中心市街地再生・市街地再編

臨海コンビナート建設による重化学工業の地方展開

・新産業都市・工業整備特別地域

<地域づくりの課題>

産業公害問題

都市・生活型環境問題

地球環境問題

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水俣病 新潟水俣病 イタイイタイ病 四日市ぜんそく

典型的症状

魚介類を食べて中枢神経がおかされ,めまい,手足のしびれから死に至る。

水俣病と同じ症状。

骨にカドミウムが付着し,骨軟化症に陥る。カドミウムの付着が妊娠中に起きるため,中年の経産婦に患者が多い。

気管支炎からぜんそく症状,肺炎・肺気腫から死亡にいたる。

被害地域熊本県水俣湾周辺

新潟県阿賀野川流域

富山県神通川流域

三重県四日市市

原因

チッソ水俣工場の廃液による有機水銀汚染

昭和電工鹿瀬工場の廃液による有機水銀汚染

三井金属神岡鉱山のカドミウム汚染

石油化学コンビナートから排出される硫黄酸化物、窒素酸化物

提訴 1969年6月 1967年6月 1968年3月 1967年9月

判決の概要

1973年3月原告勝訴

1971年9月原告勝訴。

1973年3月原告勝訴。疫学的因果関係の証明があれば,賠償請求ができるとした。

1972年7月原告勝訴。

(注)植田和弘「環境経済学」(岩波書店,1996年),及び宮本憲一「経済大国」(小学館,1983年

   に基づいて作成した。

2-1.四大公害病の発生と経緯

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1953年 熊本県水俣湾周辺地域で,魚介類の大量弊死,鳥の狂ったような乱舞,猫の狂い死になどの生物界の異変が発生。

1956年 新日本窒素(1965年以降「チッソ」)附属病院長の細川一が,「奇病」の子供4人を発見。

1957年 奇病の原因がチッソ工場からの排水にあるとの疑いが強まる。熊本県水産課が,食品衛生法に基づく漁獲禁止と工場排水の停止を行おうとしたが,実現せず。

1959年 熊本大学医学部水俣病問題研究班が,水俣病の原因は有機水銀中毒であると発表した。厚生省食品衛生調査会も,有機水銀中毒説を認めたが,厚生大臣が同調査会水俣部会を解散した。

チッソが,水俣病患者との間で見舞金契約,また自主規制中の漁協との間で保証金契約を結ぶ。契約内容に,将来の補償金請求を放棄するとの条文があった。

1960年 東京工業大学の清浦雷作教授が,水俣病のアミン説を発表。奇病の原因は,腐敗した魚介類の摂取にあるとした。

1962年 熊本大学研究班が,アセトアルデヒド排水中に有機水銀を確認し,有機水銀説が立証された。

1968年 政府が水俣病をチッソの公害と認める。

1969年 水俣病裁判が始まる。

1973年 原告側勝訴の判決。

2-2.水俣病(熊本県)の発生経緯と公害裁判

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②産業と人口の大都市集中

①急速な重化学工業化

高度経済成長期における生産活動と環境汚染の国際比較

(kg/百万円)

国 名 SO2発生量 BOD発生量

日 本 (1970年) 50.2 29.3

アメリカ(1967年) 41.1 23.5

イギリス(1968年) 48.2 23.8

フランス(1965年) 34.1 20.7

西ドイツ(1970年) 40.6 21.0

資料:経済白書・1974年版に基づく。

大都市圏における可住地面積当たりの汚染物質排出量推計

  (単位:トン/km2)

地 域   硫黄酸化物(SOx)   窒素酸化物(NOx)

1955年 1971年 1955年 1971年

関東臨海 18.3 165.2 2.3 68.3

東 海 8.4 71.7 1.0 27.4

近畿臨海 27.8 188.2 3.0 61.1

三地域合計 16.2 131.3 1.9 49.8

全 国 6.6 45.5 0.6 17.0

資料:庄司光・宮本憲一「日本の公害」(1975年)に基づく。

③公害防止対策の立ち遅れ

<深刻な社会問題化>

・公害反対運動の激化

・新規工場立地の困難化

・行政:経済成長優先

産業界重視

官僚主義(無誤謬主義,官尊民卑)

・企業:公害対策はマイナス投資

企業城下町

2-3.産業公害問題の発生原因

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1958年 本州製紙江戸川工場の廃液問題 (地元漁民と工場の紛争)

1958年 水質二法の制定 (水質保全法,工場排水法)

< 公害問題の深刻化 → 4大公害病 >

1967年 公害対策基本法の制定

1968年 大気汚染防止法,騒音規制法の制定

1970年 第64会臨時国会 (公害国会) → 公害関係14法案の制定

・典型公害7種の明確化(大気汚染,水質汚濁,土壌汚染,地盤沈下,騒音,振動,悪臭)

・規制地域を全国に拡大 (指定地域性の廃止)

・事業者(企業)責任の明確化

1971年 環境庁の設置

1972年 自然環境保全法の制定

2-4.日本の産業公害問題と対策の経緯

強力な公害規制が導入され,公害防止技術も進んだ。

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民間産業の公害防止投資の推移(1970年度~87年度)(資料:通産省「民間設備投資実績」)

1,8833,057

5,147

9,1707,842

4,0493,265 3,128

4,037 4,5403,475

2,672

9,645

3,311

2,901

4,5163,668

2,507

5.3%

17.7%

13.3%

7.2%

4.5%3.6%

5.5%4.5%

3.9%4.8%

5.1%6.4%

4.9%

3.5%

10.6%

15.6%

8.6%7.6%

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

1970

71

72

73

74

75

76

77

78

79

80

81

82

83

84

85

86

87

年度

公害防止投資額 億円

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

20%

公害防止投資の割合

全設備投資に占める

    1961年     1974年     1986年

都道府県 市町村 都道府県 市町村 都道府県 市町村

公害担当組織のある団体 14 16 47 765 47 562

担当職員数     300 5,852 6,465 5,865 4,816

公害対策予算額(億円)   140 3,501 6,036 8,910 20,800

下水道を除く予算額 2 3,838 3,283 5,502

公害防止条例設置団体数 6 1 47 346 47 496

資料:1961年度は厚生省調べ,1974,1986両年度は「環境白書」に基づく。

地方自治体

の取り組み

企業の取り組み

2-5.公害防止に対する取り組み

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①政府による公害防止規制の強化

・エンド・オブ・パイプ規制の効果

・公害防止投資に対する政府の低利融資

②企業の公害防止投資

・1970年以後20年間に8.5兆円の公害防止投資

・公害防止技術による新産業の創出

③第1次石油危機(1973年)後の産業構造変化

・重化学工業から加工組立型工業,電気機械工業へのシフト

・石油価格高騰による省資源・省エネ化

④公害に対する企業意識の変化

・公害による企業イメージの低下

・公害補償による損失(水俣病・チッソの例)

「公害大国」から

「公害防止先進国」へ

OECD(経済協力開発機構)環境委員会報告書,1977年

『日本の経験-環境政策は成功したか』

日本は,数多くの公害防除の戦いを勝ち取ったが,環境の質を高めるための戦争ではまだ勝利を収めていない。

2-6.産業公害問題の沈静化

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2-7.水俣病患者への補償問題

チッソは、水俣病損失のために大幅な債務超過となっており、公的支援によって、やっと経営が維持されている状態である。しかし、事業自体は、年間の連結利益が約200億円に上り、事業に供する純資産(資産と負債の差額)も約500億円となっている。

特措法ではチッソホールディングスが水俣病補償等の責任を完遂するため、将来この子会社株式を上場・売却し、事業会社を独立させることによって、その時の事業価値に見合った代金を入手し、この資金をもとに患者の将来に亘る継続補償等の責任を果たすとともに、公的債務の早期返済を行うこととしている。

(出所:チッソHP http://www.chisso.co.jp/minamata/torikumi.html)

<水俣病患者認定の経緯>

①認定患者:2,975人公害健康被害補償法(1974年)

一時金1500万円~1800万円

②1995年政治決着:約1.1万人一時金260万円など

③関西訴訟最高裁判決:37人国や熊本県の責任を認める

④水俣病救済特別措置法(2009年7月)

第2の政治決着:約6.5万人(2012年7月申請締切)

(2011年4月1日)

JNC(株)

チッソの水俣病関連損失(2012年3月期末時点)

・水俣病関連損失累計3,614億円

・公的債務残高1,969億円

チッソの分社化

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2-8.都市・生活型環境問題から地球環境問題へ

日本では,1970年代に発生した2度の石油危機後は,資源・エネルギー消費が一貫して増加傾向にある。

特に民生(生活者)と運輸(自動車利用)は,景気動向にかかわらず,豊かさを求めるライフスタイル等を背景に,一貫して大きく伸長している。

資料:資源エネルギー庁HPhttp://www.enecho.meti.go.jp/energy/japan/japan01.htm

1973年~2000年度の部門別エネルギー消費

◇産業部門 :100→106( +6)◇運輸(貨物)部門:100→148( +48)◇運輸(旅客)部門:100→270(+170)◇民生(業務)部門:100→189( +89)◇民生(家庭)部門:100→226(+126)

省エネの進展

エネルギー消費の急増

クルマと家庭が問題

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2-9.第1次、第2次石油危機(オイルショック)の概要

<第1次石油危機の経緯>1973年10月6日に第4次中東戦争が勃発した。10月16日には、石油輸出国機構(OPEC)加盟産油国のうちペ

ルシア湾岸の6ヶ国が、原油公示価格を1バレル3.01ドルから5.12ドルへ70%引き上げることを発表した。10月17日には、アラブ石油輸出国機構(OAPE)が、原油生産の段階的削減を決定した。また、アラブ石油

輸出国機構(OAPEC)諸国は10月20日以降、イスラエルが占領地から撤退するまでイスラエル支持国(米国、オランダなど)への経済制裁(石油禁輸)を相次いで決定した。さらに12月23日には、OPEC加盟のペルシア湾岸の産油6ヶ国が、1974年1月より原油価格を5.12ドルから11.65ドルへ引き上げることを決定した。

<日本経済への影響>石油価格の上昇は、エネルギー源を中東石油に依存してきた先進工業国の経済を脅かした。エネルギー

革命によりエネルギー源を石油に置き換えていた日本では、ドル・ショックから立ち直りかけていた景気を直撃した。前年からの列島改造ブームによる地価急騰で急速なインフレが発生していたが、石油危機により相次いだ便乗値上げなどにより、インフレが加速された。消費者物価指数は1974年に23%上昇し、「狂乱物価」という造語まで生まれた。インフレ抑制のために経済の引き締め政策がとられた結果、1974年には-1.2%という戦後初めてのマイナス成長を経験し、高度経済成長が終焉を迎えた。

<第2次石油危機の経緯>1979年のイラン革命により、イランでの石油生産が中断したため、イランから大量の原油を購入してい

た日本は需給が逼迫した。また1978年末に、OPECが「翌1979年より原油価格を4段階に分けて計14.5%値上げする」ことを決定し、原油価格が上昇し、第1次石油危機並に原油価格が高騰した。

<日本経済への影響>日本では、第1次石油危機による学習効果、省エネルギー政策の浸透(深夜テレビ放送の自粛、ガソリン

スタンドの日曜祝日休業など)、企業の合理化効果などにより、日本経済に対する影響は第1次石油危機ほどではなかった。また、第1次石油危機の頃ほどは値上げが長引かず、その後イランも石油販売を再開し、数年後には価格下落に転じて危機を免れた。

一方で、米国におけるインフレと長期金利の高騰にともなう金融市場の混乱が深刻さを増し、石油危機を端緒とした不況は米国経済の復調を示す1983年ころまで長引いた。

出所:ウィキペディア(http://ja.wikipedia.org/wiki)

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2-10.日本の自動車保有台数の推移

日本の自動車保有台数(出所:自動車検査登録情報協会HP)

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

1966

1968

1970

1972

1974

1976

1978

1980

1982

1984

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

2010

2012

万台 乗用車 貨物車 乗合車 特殊車 二輪車

自動車保有台数(1966年~2012年(46年間))

全車種 : 812万台 → 7,911万台(+7,099万台, 9.74倍)

乗用車 : 229万台 → 5,873万台(+5,643万台,25.65倍)

貨物車 : 469万台 → 1,500万台 (+1.031万台, 3.20倍)

乗用車

貨物車

バブル崩壊

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1972年 6月 ストックホルムで国連人間環境会議開催。「人間環境宣言」,「行動計画」採択。

1972年12月 国連環境計画(UNEP)発足。

1974年 8月 世界人口会議開催。「世界人口行動計画」採択。

1975年 7月 絶滅の恐れのある野生動植物種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)発効。

1977年 8月 UNEP主催の国連砂漠化防止会議が砂漠化防止行動計画を採択。

1982年 6月 国連人間環境会議10周年を記念し,UNEP管理理事会特別会合が開催される。「ナイロビ宣言」採択。

1985年 南極でオゾンホールが発見される。

1987年 4月 環境と開発に関する世界委員会が,報告書「われら共通の未来(Our Common Future)」を発表し,「持続可能な発展(Sustainable Development)」を提唱。

1987年 9月 オゾン層保護に関する「モントリオール議定書」採択。

1988年11月 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)初会合。

1989年 3月 ハーグにて環境首脳会議開催。地球温暖化対策に関する「ハーグ宣言」採択。

1989年 7月 アルシュサミット経済宣言の中で,環境問題がクローズアップされる。

1989年12月 国連総会において,「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)をブラジルで開催することを決議。

1990年 7月 ヒューストンサミット経済宣言で,森林保全のための合意作成を提唱。

1991年 3月 湾岸戦争によって深刻な環境テロが発生。地球環境問題に対する新たな懸念が生じる。

1992年 6月 「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)をリオ・デ・ジャネイロで開催。

2-11.地球環境問題の認識:1970年代~1990年代初頭

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国連人間環境会議(United Nations Conference on the Human Environment)

1972年6月に世界113ヶ国の代表が参加して,ストックホルムで開催された環境問題についての最初の世界的なハイレベル政府間会合。会議テーマ「かけがえのない地球(Only One Earth)」は,環境問題が地球規模,人類共通の課題になってきたことを表すものとして有名。また,26項目の原則からなる「人間環境宣言」および109の勧告からなる「世界環境行動計画」は,同年に発表されたローマクラブによるレポート「成長の限界」とともに,世界の環境保全に大きな影響を与えた。(ECIネットHPより)

1-23(再掲).1972年の国連人間環境会議に向けた2つの書物

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2-12.環境と開発に関する国連会議の経緯

1972年6月 国連人間環境会議(ストックホルム)

-「かけがえのない地球(Only One Earth)」→人間環境宣言,世界環境行動計画,ローマクラブ報告書

1982年5月 国連環境計画(UNEP)管理理事会特別会合(ナイロビ)

-日本が「環境と開発に関する世界委員会」の設置を提案→1984年に国連が委員会設置(「持続可能な開発(Sustainable Development)」の普及)

1992年6月 環境と開発のための国連会議(リオ地球サミット)

-環境と開発に関するリオデジャネイロ宣言(リオ宣言),アジェンダ21,森林原則声明,気候変動枠組み条約,生物多様性条約への署名開始

2001年 ミレニアム開発目標(MDGs)(← 2000年 国連ミレニアム宣言)

2002年8月 持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ)

-日本が「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」を提案

2012年5月 国連持続可能な開発会議(リオ+20)

2015年 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals(SDGs))

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不特定多数限定原因者と被害者

困難可能技術的解決

長期短期~中長期影響期間

物質そのものによる被害ではなく,間接的な被害の恐れ

物質が直接人体に影響する恐れ対象地域

産業公害問題 → 都市・生活型環境問題 → 地球環境問題

不特定多数限定原因者と被害者

困難可能技術的解決

長期短期~中長期影響期間

物質そのものによる被害ではなく,間接的な被害の恐れ

物質が直接人体に影響する恐れ対象地域

産業公害問題 → 都市・生活型環境問題 → 地球環境問題

1-16(再掲).地球環境問題とその特徴

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<地球温暖化の状況>

・地球の平均気温は約15℃であるが,大気がなければ-18℃になる。

・最後の氷河期(11万年~1万年前)は現在より-5℃低

・氷河期終了後,1000年間に5℃上昇

→ 0.5℃/百年の上昇割合

・約9000年前から現在の気温で安定

・今後の地球温暖化(IPCC第5次評価報告書)

→今世紀末に平均気温0.3~4.8℃上昇平均海面水位は、最近20年と比べて26~81cm上昇<過去1000年間と21世紀末までの地球平均気温予測>

これまでの気候の温暖化と寒冷化は,太陽活動の影響が大きかった。

2-13.地球温暖化問題

資料:環境庁「地球温暖化の重大影響」,1997年IPCC第2次評価報告書(1995年)の温暖化予測

http://www.epcc.pref.osaka.jp/apec/jpn/earth/global_warming/dounaru.html予想される影響

・海面水位の上昇・水資源への影響と自然災害・農業と食糧需給への影響・健康への影響・生態系への影響

人為的変化

不確実性不可逆性

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1-14(再掲).地球温暖化と世界各国のCO2(≒エネルギー使用量)

2011年人口13.49億人

3.10億人

12.24億人1.43億人1.27億人0.82億人

出所:全国地球温暖化防止活動推進センターHP より引用

地球温暖化によるリスク

人口1億人当たり1.99%

5.35%

0.47%3.71%2.91%

2.68%

人口1億人当たりの差に注目!

I=P(人口)×A(1人当たり)×T(技術)

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2-14.世界各国のCO2排出量の推移

43 47 47 49 51 57 58 58 56 52

10 11 11 10 98 8 8 8 8

89 9 11 11

12 12 12 1211

22 1615 15 16 16

15

89 14

22 3030

51 60 65 68

22 3

6 810

1214 14 16

5259

76

7070

77

89

95 96 94

0

50

100

150

200

250

300

350

1971年 1973年 1980年 1990年 1995年 2000年 2005年 2007年 2008年 2009年

二酸化炭素排出量 億t-CO

2

アメリカ カナダ イギリス ドイツ フランス イタリア 日本

ロシア 中国 インド ブラジル 韓国 その他の国

141156

181

210218

135

272

290 295 290

(環境省:平成23年度版環境統計集に基づいて作成)

中国が最大排出国に

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2-15.世界各国のエネルギー起源CO2排出量

主な国別の1人当たりエネルギー起源CO2排出量(2010年)

(2010年)

出所:環境省HP(http://www.env.go.jp/earth/cop/co2_emission_2010.pdf)

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2-16.日本の部門別二酸化炭素排出量の推移

2007年のサブプライム住宅ローン危機に端を発した米国バブル崩壊を動機に、多分野の資産価格暴落が起こった。リーマン・ブラザーズも多大な損失を抱え、2008年9月15日に連邦破産法の適用を連邦裁判所に申請した。そして、負債総額約6,000億ドル(約64兆円)という史上最大の倒産劇が発生した結果、米国経済に対する不安が広がり、「リーマン・ショック」と呼ばれる世界的な金融危機へと連鎖した。 (出所:ウィキベディア)

(環境省:平成23年度版環境統計集に基づいて作成)

4.8

4.7

3.9

2.2

2.7

2.3

1.6

2.1

2.2

1.3

1.6

1.6

0.7

0.7

0.8

0.4

0.5

0.6

0.3

0.3

0.2

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0

基準年

2000年

2009年

二酸化炭素排出量 億t-CO2

産業 運輸 業務その他 家庭

エネルギー転換 工業プロセス 廃棄物 燃料からの漏出

11億4,413万t-CO2

12億5,156万t-CO2

11億4,457万t-CO2

(基準年比 -3.1%) (+22.1%) (+25.4%) (+23.6%)

(基準年比 -19.5%) (+5.8%) (+31.2%) (+26.9%)

<産業部門> <運輸> <業務・他><家庭>

(+9.4%)

(+0.04%)

(1990年)

<合計>

リーマンショック

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2-17.家庭の二酸化炭素排出量(2007年度)

家庭からのCO2排出量の3割近くをマイカーが占める

※家庭からのCO2排出量は、インベントリの家庭部門、運輸(旅客)部門の自家用乗用車(家計寄与分)、廃棄物(一般廃棄物)処理からの排出量、および水道からの排出量を足し合わせたものである。「動力他」とは、電気を使用し、他の用途に含まれないものが含まれる。例:照明、冷蔵庫、掃除機、テレビなど。

※※一般廃棄物は非バイオマス起源(プラスチック等)の焼却によるCO2及び棄物処理施設で使用するエネルギー起源CO2のうち、生活系ごみ由来分を推計したものである。

※※※日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット家庭原単位マトリックスをもとに、国立環境研究所温室効果ガスインベントリオフィスが作成。

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2-18.交通手段と二酸化炭素排出量(人キロ当たり)

単位輸送当たりのCO2排出量(全国平均・旅客輸送) 

出所:都市交通研究会,”これからの都市交通”,山海堂,2002年.

19

8

24

30

5 63

9 7

45

0

10

20

30

40

50

60

自家用車

乗合バス

貸切バス

フェリー

航空

鉄道

新幹線

地下鉄

路面電車

AGT

CO2排出量(g-C/人キロ)

42%

20% 16%11% 7%

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<地球温暖化防止交渉の経緯>

1992年 5月 気候変動枠組み条約(FCCC)を採択92年 6月 地球サミット(リオデジャネイロ)94年 3月 気候変動枠組み条約発効95年 3月 第1回締約国会議(COP1,ベルリン)~ 4月 これまでに160カ国余りがFCCCを

批准。2000年以降の排出につき,先進国は削減目標の交渉を進め,1997年までに合意すべきと決定。

96年 7月 第2回 〃(COP2,ジュネーブ)97年12月 第3回 〃(COP3,京都)98年11月 第4回 〃(COP4,ブエノスアイレス)99年11月 第5回 〃(COP5,ボン)

2002年の議定書発効を目指すと表明

2000年11月 第6回 〃 (COP6,ハーグ)議定書運用規則の決定に失敗

01年 7月 第6回 〃 再会合(ボン)議定書運用規則の主要部分に合意

01年10月 第7回 〃(COP7,マラケシュ)~11月 米国抜きで議定書運用規則を

採択02年 9月 地球サミット開催(ヨハネスブルグ)

05年 ロシアの批准により議定書が発効

<京都議定書の主な内容>

①温暖化ガス削減の目標期限を2008年~2012年とする。

②国別の削減目標(1990年基準)を先進国全体で最低5%とし,日本6%,米国7%,EU8%とする。

③森林による二酸化炭素吸収を一部算入する。(ネット方式)

④他国との排出権取引や共同実施を認める。

⑤先進国援助による途上国のCO2削減分を,先進国の目標達成分に利用する。(CDM (Clean Development Mechanism))

気候変動枠組条約・締約国会議(COP, Conference of the Parties to the FCCC)

第3回会議(COP3)1997年11月・京都

2-19.地球温暖化防止の国際交渉:1992年~2005年

ポスト京都議定書(2013年以降)へ

経済政策

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・気候変動枠組み条約(FCCC:Framework Convention on Climate Change)

大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を究極的な目的とし,地球温暖化がもたらすさまざまな悪影響を防止するための国際的枠組みを定めた条約。1992年の地球サミットにおいて採択され,1994年3月発効。

・気候変動枠組条約締約国会議(COP:Conference of the Parties to the UNFCCC)

1997年の京都会議(COP3)以降,気候変動枠組条約締結国会議のことを指す。COPは条約の最高機関であり,毎年開催される。

・気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)

人為的な気候変動のリスクに関する科学・技術・社会経済的な知見をとりまとめて評価し,各国政府にアドバイスを提供することを目的とした政府間機構。

<補足> 地球温暖化防止関連の用語について

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2-20.ポスト京都議定書をめぐる動き

COP18(2012年11月22日~12月8日、カタール):ドーハ合意

・京都議定書の第2約束期間を2013年~2020年とする。EUは1990年比で20%削減。日本は不参加。・2015年5月までに新枠組みの交渉文書を作成し、2015年末のCOP21で採択する。・CDMによる他国との売買は第2約束期間の目標を持つ国のみとする。・2020年までに開発途上国に1000億ドル投入の約束を再確認。増額を促す。

COP17(2011年11月28日~12月11日、南アフリカ):ダーバン合意

・米国や中国を含む新たな枠組みで「ダーバン・プラットホームのための作業部会」を設置する。・条約の全締約国に適用される新たな議定書、または他の種類の法的枠組づくりを目指す。・作業部会の交渉はできるだけ早く、遅くとも2015年に終え、2020年発効を目指す。・京都議定書は2013年以降も継続する。2012年に、第2約束期間の長さ、数値目標などを決め、

議定書改正を目指す。

COP15(2009年12月7日~12月18日、デンマーク):コペンハーゲン協定 (合意なし)

・地球の気温の上昇を2℃以内に抑える。・先進国は2020年までに削減目標、途上国は削減の行動を決めて、2010年1月末までに提出する。・先進国の削減目標と途上国の削減行動の結果は、COPによって確立される(既存も含む)ガイドラインによって、測定、報告、検証(MRV)がなされること。

・途上国の温暖化対策を支援するため、先進国合同で2010~2012年に300億ドル、2020年までに毎年1000億ドルを支援動員の目標とすること。

COP16(2010年12月29日~12月10日、メキシコ):カンクン合意

COP19(2013年11月11日~11月23日、ポーランド):ワルシャワ合意

・2020年以降の次期枠組み発効に向け、15年末のCOP21で合意することを確認。・2015年3月末までに準備可能な国は、自主的に削減目標や計画を提示すること。

東日本大震災

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2-21.COP21「パリ協定」採択(2015年12月12日)

COP21(2015年12月7日~12月12日・パリ):パリ協定採択

・産業革命前からの気温上昇を2度よりかなり低く抑え、1.5度未満に向けて努力する。・今世紀後半に人為的排出と吸収を均衡させることを目指す。

(※CO2の人為的排出量・約337億トン(2002~2011年平均)、森林や海洋吸収・約180億トン)・世界全体の取り組み状況について、2023年に1回目の評価、以後5年ごとに評価を行う。・全ての国は削減目標を5年ごとに出し直す。・協定の発効条件

「世界の55%以上の排出量を占める55カ国が批准してから30日後に効力を生じる。」

項目 京都議定書 パリ協定

採択年 1997年 2015年

対象国 38ヵ国・地域(第2約束期間) 196ヵ国・地域

目的大気中の温暖化ガス濃度の安定化(気候変動枠組み条約で規定)

産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満に。1.5度以下に努力。

長期目標今世紀末に人為的な温暖化ガスの排出量を実質的にゼロに。

各国の削減目標の扱い

国際交渉で決定。達成できなければ罰則。

全ての国が自ら作成。提出義務を負う。達成義務はなし。

日本の削減目標

第1約束期間:1990年比6%削減第2約束期間:不参加(自主目標策定)

2030年までに2013年比26%削減

対象期間第1約束期間:2008年~2012年第2約束期間:2013年~2020年

2018年頃に発効2023年に1回目評価、以後5年ごとに評価

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2-15(再掲).<合意の障害>各国のエネルギー起源CO2排出量

主な国別の1人当たりエネルギー起源CO2排出量(2010年)

(2010年)

出所:環境省HP(http://www.env.go.jp/earth/cop/co2_emission_2010.pdf)

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施行年次 法律名称(略称を含む)

<基本法>

1994年施行 環境基本法

2001年施行 循環型社会形成推進基本法

<リサイクル関連>

2001年改正施行資源有効利用促進法

2000年施行 容器包装リサイクル法

2002年施行 建設リサイクル法

2001年施行 家電リサイクル法

2001年施行 食品リサイクル法

2005年施行 自動車リサイクル法

2001年施行 グリーン購入法

<省エネ・省資源関連>

1998年制定 地球温暖化対策推進法

2003年施行 改正省エネ法

<環境保全関連>

1999年施行 環境アセスメント法

2000年施行 ダイオキシン類対策特別措置法

2001年施行 化学物質管理(PRTR)法

2001年施行 改正廃棄物処理法

<廃棄物の種類と排出量>

①一般廃棄物

主に家庭から発生する「家庭ごみ」,オフィスや飲食店から発生する「事業系ごみ」及び「し尿」に分類

・2013年度排出量4,487万トン(前年度4,523万トン、0.8%減)958g/人・日(前年度964g、0.6%減)

リサイクル率:20.6%

②産業廃棄物

事業活動に伴って発生する廃棄物のうち,法律で定める次の19種類。

燃えがら,汚泥,廃油,廃酸,廃アルカリ,廃プラスチック,紙くず,木くず,繊維くず,動植物性残さ,ゴムくず,金属くず,ガラスくず及び陶磁器くず,鉱さい,がれき類,動物のふん尿,動物の死体,ばいじん,処分するために処理したもの

・2012年度排出量3,79億トン(前年度3.81億トン、0.5%減)

リサイクル率:54.7%

③特別管理一般廃棄物,特別管理産業廃棄物

廃棄物のうち,爆発性,毒性,感染性,その他,人の健康や生活環境に被害を生じる恐れがあるもの

<法制度の整備>

2000年は「循環型社会元年」

2-22.廃棄物問題と循環型社会形成

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2-23.循環型社会形成推進基本法の考え方

大量生産,大量消費,大量廃棄型の社会のあり方や国民のライフスタイルを見直し,社会における物質循環を確保することにより,天然資源の消費が抑制され,環境への負荷の低減が図られた「循環型社会」を形成するため,平成12年6月に「循環型社会形成推進基本法」が公布され,平成13年1月に施行された。

同法では,対象物を有価・無価を問わず「廃棄物等」として一体的にとらえ,製品等が廃棄物等となることの抑制を図るべきこと,発生した廃棄物等については,その有用性に着目して「循環資源」としてとらえ直し,適正な循環的利用(再使用,再生利用,熱回収)を図るべきこと,循環的な利用が行われないものは適正に処分することを規定し,これにより,「天然資源の消費を抑制し,環境への負荷ができる限り低減される社会」である「循環型社会」を実現することとしている。

循環型社会基本法では,施策の基本理念として「排出者責任」と「拡大生産者責任」という2つの考え方を定めている。

出所:環境省編,循環型社会白書・平成16年版

※循環型社会白書・平成16年版のHP:http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/junkan/h16/

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2-24.21世紀環境立国戦略(2007年6月1日閣議決定)

戦略1.気候変動問題の克服に向けた国際的リーダーシップ 戦略2.生物多様性の保全による自然の恵みの享受と継承戦略3.3Rを通じた持続可能な資源循環 戦略4.公害克服の経験と智慧を活かした国際協力戦略5.環境・エネルギー技術を中核とした経済成長 戦略6.自然の恵みを活かした活力溢れる地域づくり戦略7.環境を感じ,考え, 行動する人づくり 戦略8.環境立国を支える仕組みづくり

①温暖化防止

省エネルギー

②ゴミ削減

省資源③自然保護

④担い手づくり

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2-25.第4次環境基本計画(2012年4月27日閣議決定)

9つの優先的に取り組む重点分野

①経済・社会のグリーン化とグリーン・イノベーションの推進

②国際情勢に的確に対応した戦略的取組の推進

③持続可能な社会を実現するための地域づくり・人づくり、基盤整備の推進

④地球温暖化に関する取組 ⑤生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組

⑥物質循環の確保と循環型社会の構築 ⑦水環境保全に関する取組

⑧大気環境保全に関する取組 ⑨包括的な化学物質対策の確立と推進のための取組

目指すべき持続可能な社会の姿

「安全」が確保されることを前提として、「低炭素」・「循環」・「自然共生」の各分野が、各主体の参加の下で、統合的に達成され、健全で恵み豊かな環境が地球規模から身近な地域にわたって保全される社会

持続可能な社会を実現する上で重視すべき方向

(1)政策領域の統合による持続可能な社会の構築(2)国際情勢に的確に対応した戦略をもった取組の強化(3)持続可能な社会の基盤となる国土・自然の維持・形成(4)地域をはじめ様々な場における多様な主体による行動

と参画・協働の推進

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2-26.第5次環境基本計画(2018年4月17日閣議決定)

出所:環境省HP https://www.env.go.jp/press/105414.html

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2-26-1.第5次環境基本計画の概要①

Page 37: 【2】環境問題の歴史的変遷...【2】環境問題の歴史的変遷 <講義のポイント> ①環境問題の質的変化(3段階) ②地球温暖化問題とその原因

2-26-2.第5次環境基本計画の概要②

Page 38: 【2】環境問題の歴史的変遷...【2】環境問題の歴史的変遷 <講義のポイント> ①環境問題の質的変化(3段階) ②地球温暖化問題とその原因

2-26-3.第5次環境基本計画の概要③

Page 39: 【2】環境問題の歴史的変遷...【2】環境問題の歴史的変遷 <講義のポイント> ①環境問題の質的変化(3段階) ②地球温暖化問題とその原因

2-26-4.第5次環境基本計画の概要④

Page 40: 【2】環境問題の歴史的変遷...【2】環境問題の歴史的変遷 <講義のポイント> ①環境問題の質的変化(3段階) ②地球温暖化問題とその原因

2-26-5.第5次環境基本計画の概要⑤