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平成 28 年度石油産業体制等調査研究 LP ガス自動車普及に関する海外実態調査 報 告 書 平成 29 2 日本 LP ガス協会

29 年2 月 - 経済産業省のWEBサイト(METI/経済産業 …¥継続性(BCP)にとって不安定な要素となるため、自動車用燃料の分散化が必要であり、LP

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平成 28 年度石油産業体制等調査研究

LP ガス自動車普及に関する海外実態調査

報 告 書

平成 29 年 2 月

日本 LP ガス協会

- 1 -

まえがき

2005 年当時、30 万台近いレベルにあった日本の LP ガス自動車の登録台数は、タクシー

車を中心に年ごとに減少し、2010 年には 26 万台、2016 年 4 月時点では 22 万台にまで減

少し、このままのペースが続けば、登録台数が 20 万台を割り込むのも時間の問題となって

いる。LP ガス自動車台数の減少に伴い、LP ガスを供給する LP ガススタンド数も近年で

は減少の一途を辿り、かつては 1,900 ヶ所ほどあったものが、 近では 1,500 ヶ所程度ま

で落ち込むなど、LP ガス自動車産業を取り巻く市場環境は極めて厳しいものがある。

こうしたなか、視点を世界に転ずれば、日本とは対照的に LP ガス自動車はむしろ着実な

ペースで増加傾向にあり、2005 年当時は 1,100 万台程度に過ぎなかった全世界での LP ガ

ス自動車台数は 2009 年に 1,500 万台、2011 年には 2,000 万台を突破し、2015 年には 2,600

万台にまで急速に普及が進んでいる。増加の牽引力となっているのが欧州であり、EU 加盟

28 ヶ国にトルコとロシアを加えた数字としては、2005 年当時は 620 万台であった LP ガス

自動車台数は 2009 年には 910 万台、2015 年には 1,510 万台まで増加し、10 年間に実に 2

倍強の登録車数の伸びを示しており、LPガスススタンド数もこれに比例して増加している。

こうした日本と世界、取り分け欧州各国とのLPガス自動車を取り巻く市場環境の違いの

背景には、OEM(相手先ブランド名製造)車を含めたLPガス自動車のラインアップ数(選択肢

の豊富さ)やLPガス自動車に搭載された燃料タンクの形状を含めた保安規制といった車の

ハード面の違いのみならず、LPガススタンドとガソリンスタンドとの併設を巡る保安距離

等の諸規制やインフラ整備面、或いは地球温暖化対策や大気汚染対策などの環境政策の違

いといったことが複雑に絡み合っていることが要因になっていると推察される。

LP ガスは環境負荷が低く、供給面においても災害時に強いといったことのみならず、グ

ローバルなベースでも供給安定性に優れた特性を有しているなかで、LP ガス自動車の市場

拡大が進んでいる欧州主要国での実態を調査・分析し、ガソリン車やディーゼル車、圧縮

天然ガス自動車(CNG 自動車)、水素自動車、電気自動車(EV 車)といった他燃料を用いた自

動車との対比を含め、減車傾向が続く日本との違いを浮き彫りにすることによって、LP ガ

ス自動車の普及促進に向けた手がかりを探し、日本における自動車燃料の分散化に繋げた

い。

- 2 -

目次 1. 事業目的 .................................................................................................................. - 4 -

2. 実施概要 .................................................................................................................. - 4 -

2-1.訪問先 ................................................................................................................... - 4 -

2-2.調査団メンバー .................................................................................................... - 6 -

3. 実施体制 .................................................................................................................. - 6 -

3-1.委員会の設置 ........................................................................................................ - 6 -

3-2.審議経過 ............................................................................................................... - 7 -

4. 調査内容及び調査結果 ............................................................................................. - 8 -

4-1. EU における LP ガス自動車普及状況 .............................................................. - 8 -

4-2. オートガス価格及び改造費用 ......................................................................... - 11 -

4-2-1.燃料税率 ...................................................................................................... - 11 -

4-2-2.燃料価格 ...................................................................................................... - 12 -

4-2-3.車体及び改造費用 ........................................................................................ - 18 -

4-2-4.採算ラインの比較 ........................................................................................ - 18 -

4-2-5.補助制度 ...................................................................................................... - 19 -

4-3. LP ガス自動車のインフラ整備状況 ................................................................ - 23 -

4-3-1.LP ガススタンド数の推移 ........................................................................... - 23 -

4-3-2.ガソリンスタンドとの併設状況 ................................................................... - 24 -

4-3-3.セルフ化の状況 ............................................................................................ - 26 -

4-4. EU におけるエネルギー・環境政策の動向と LP ガス自動車の位置付け ....... - 27 -

4-4-1.EU におけるエネルギー政策の動向 ............................................................ - 27 -

4-4-2.代替燃料車用設備指令(DAFI) ..................................................................... - 29 -

4-4-3.自動車に対する環境規制 ............................................................................. - 30 -

4-5. LP ガス事業者及び自動車メーカー等へのヒアリング調査 ............................ - 32 -

4-5-1.欧州 LP ガス協会(AEGPL) ......................................................................... - 32 -

4-5-2.欧州自動車工業会(ACEA) ........................................................................... - 33 -

4-5-3.EU 交通省 (DG MOVE) ............................................................................. - 33 -

4-5-4.EU 環境省 (DG CLIMA ) ............................................................................ - 34 -

4-5-5.イタリア天然ガス自動車協会 (NGV Italy) ................................................. - 34 -

4-5-6.ランディ・レンツォ社(イタリア) ................................................................ - 35 -

4-5-7.アラール社(ドイツ) ...................................................................................... - 37 -

4-5-8.SHV エナジー社 (オランダ)........................................................................ - 38 -

5. EU 加盟諸国における LP ガス自動車市場拡大の要因と今後の行方 ..................... - 40 -

5-1. EU 加盟諸国における LP ガス自動車市場拡大の要因 ................................... - 40 -

5-2. EU 加盟諸国における LP ガス自動車市場の今後の行方 ................................ - 41 -

6. 日本での LP ガス自動車市場拡大に向けて ........................................................... - 43 -

おわりに ......................................................................................................................... - 45 -

- 3 -

【参考資料】

① 欧州 LP ガス協会資料

② ランディ・レンツォ社資料

③ アラール社資料

④ 排気ガス試験結果の概要(欧州 LP ガス協会)

- 4 -

1. 事業目的

現在、世界におけるLPガス自動車の普及台数はおよそ2,600万台(2015年実績)で、ヨーロ

ッパ・ユーラシア地域(約1,870万台)及びアジア地域(約660万台)を中心として急速に普及が

進んできた。この背景には、LPガス車の排気ガスがクリーンでCO2排出も少なく、地球温

暖化対策や大気汚染対策として直ちに導入可能なことや税制優遇等の政策的な誘導により

価格が他の燃料に比べて相対的に安く維持されていることなどがある。特に欧州では、今後

CO2排出等の環境規制が更に強化される動きがあり、LPガス自動車は、現実的な解決策の

一つとして期待されているところである。

一方、日本において、LPガス自動車は燃料費がガソリンと比べ安いことから、主に年間

走行距離が多いタクシー用として利用され、全国に約22万台(登録自動車の約0.3%)が存在

するが、近年はタクシーの減車やガソリンハイブリッド車との競合等により減少傾向にあ

る。タクシー以外の用途については、ベースとなるガソリン自動車にLPガスタンク等を設

置するための追加設備や改造費用が高額であることやユーザーが求める性能やラインナッ

プが不十分なことなどの課題がある。

しかしながら、LPガス自動車は燃料の供給が安定しており、東日本大震災の発生時にも

タクシーや配送車等が物資や人の輸送に活躍し、その有効性が認められたところである。

また、輸送用燃料については、ガソリンなどの特定燃料だけに依存することは、災害時の事

業継続性(BCP)にとって不安定な要素となるため、自動車用燃料の分散化が必要であり、LP

ガス自動車は有望な自動車の1つである。さらに、LPガス自動車は、ガソリン自動車に比べ

て環境負荷が低く、日本においても環境対策としてLPガス自動車の普及を推進していく必

要があるものと考える。

こうした背景から、欧州など海外で LP ガス自動車の普及が進んでいる国々における現状

や今後の見通し及び各国政府における規制や普及促進策などについて調査・分析し、日本

における LP ガス自動車普及促進のための方策について検討を行うものである。

2. 実施概要

2-1. 訪問先

(1) 欧州 LP ガス協会(AEGPL)

①訪問日:平成 28 年 11 月 21 日

②場所:AEGPL office

③面会者: Samuel Maubanc, General Manager, Europian LPG Association

Cecile Nourigat, Autogas Manager, Europian LPG Association

Autogas Director, World LPG Association

- 5 -

(2) 欧州自動車工業会(ACEA )

①訪問日:平成 28 年 11 月 22 日

②場所:ACEA office

③面会者: Petr Dolejsi, Mobility & Sustainable Transport Director, Europian

Automoblie Manufactures Association

(3) EU 交通省(DG MOVE)

①訪問日:平成 28 年 11 月 22 日

②場所:DG MOVE office

③面会者: Hugues Van Honacker, Senior Expert, Clean Transport and Sustainable

Urban Mobility, Directorate-General for Mobility and Transport

(4) EU 環境省(DG CLIMA)

①訪問日:平成 28 年 11 月 22 日

②場所:DG CLIMA office

③面会者: Alexandre Paquot, Head of Unit, Road Transport, Directorate-General for

Climate Action

Filip Francois, Policy officer, Road Transport, Directorate-General for

Climate Action

Andreas Gumbert, Policy officer, Road Transport, Directorate-General for

Climate Action

(5) イタリア天然ガス自動車協会(NGV Italy )

①訪問日:平成 28 年 11 月 24 日

②場所:Mercuri Strasbourg Palais des Congre’s

③面会者: Mariarosa Baroni, President & CEO, NGV Italy

(6) LANDI RENZO 社

①訪問日:平成 29 年 1 月 24 日

②場所:LANDI RENZO S.p.A

③面会者: Cristiano Musi, CEO elect General Manager

Ciro Barberio, Vice President Research & Development

Corrado Storchi, Public Affairs Director

Fillippo Grosso, Head of Program Management

Giovanni Costi, R&D Labs Manager

Tommy Svenson, Business Development Manager

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(7)ドイツ LP ガス協会(DVFG) 、ARAL 社

①訪問日:平成 29 年 1 月 26 日

②場所:SS of Aral

③面会者: Tobias Wolny, Senior Political Advisor Deutshland, BP Europa SE

S. Pöpperling-Pawelzik, Autogas manager, ARAL Aktiengesellschaft

Dr. Nick Hecktor Technical Manager, Deutcher Verband Flüssiggas

(8) SHV Energy 社

①訪問日:平成 29 年 1 月 27 日

②場所:Brussels

③面会者: Andrew Ford, Group Public Affairs Manager, SHV Energy N.V.

2-2.調査団メンバー

上平 修 日本 LP ガス協会 事務局長

久保田誠 日本 LP ガス協会 技術グループ主任

荒畑 誠 株式会社アラハタ LPG コンサルティング 代表取締役

3. 実施体制

3-1. 委員会の設置

調査等を円滑に推進するため、外部有識者、LP ガス関連団体等で構成する調査委員会(LP

ガス自動車普及に関する海外実態調査委員会)を設置した。各調査から得られた内容を基に、

海外における LP ガス自動車の普及要因を分析し、今後の課題・問題点を抽出するとともに、

日本における LP ガス自動車普及に資する方策について検討を行った。

LP ガス自動車普及に関する海外実態調査委員会委員構成(アイウエオ順)

委員長 井 手 秀 樹 慶應義塾大学 名誉教授

委員 佐 藤 祐 司 日本 LP ガス団体協議会 事務局次長

宍 戸 孝 行 ㈱ジャパンガスエナジー 営業統括部 部長

神 野 雅 彦 アストモスエネルギー㈱ 国内事業本部 産業販売部 部長補佐

土 橋 一 夫 日本 LP ガス団体協議会 事務局長

速 水 修 二 LP ガス自動車普及促進協議会 理事・事務局長

廣 瀬 弓 岩谷産業㈱ 生活総合サービス部 部長

堀 江 章 浩 (一社)全国 LP ガス協会 事業推進部 スタンド担当部長

綿 貫 正 美 LPG 内燃機関工業会 専務理事

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オブザーバ 田久保 憲彦 資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 企画官

廣 瀬 浩 二 資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 課長補佐

事務局 上 平 修 日本 LP ガス協会 事務局長

井 上 美 晴 日本 LP ガス協会 技術グループリーダー

久 保 田 誠 日本 LP ガス協会 技術グループ主任

松 下 敦 子 日本 LP ガス協会 技術グループ

溝 添 智 子 日本 LP ガス協会 技術グループ

荒 畑 誠 ㈱アラハタ LPG コンサルティング 代表取締役

3-2.審議経過 平成 28 年 11 月 15 日 調査項目の打ち合わせ

第 1 回 平成 28 年 12 月 6 日 事前調査の報告及び全体実施計画(案)の検討

第 2 回 平成 29 年 2 月 16 日 調査結果の報告及び報告書の取り纏め

- 8 -

4. 調査内容及び調査結果

4-1. EU における LP ガス自動車普及状況

EU 加盟 28 か国における LP ガス自動車の台数は約 785 万台(2015 年実績)で、2005 年

の 425 万台から 10 年間で 360 万台増(+85.0%)と増加傾向にある(表 4-1-1、図 4-1-1)。特

に伸び率が高かった年が 2009 年と 2010 年で、原油価格の高騰による競合燃料に対する価

格的優位性の向上、イタリアやドイツ等における代替燃料車普及促進政策により、前年比

約 15%増と高い伸び率を示している。

また自動車全体に対する割合は 2.6%(2014 年実績)で、2005 年の 1.6%より 1 ポイント上

昇している。自動車の平均伸率が約 1.0%であるのに対し、LP ガス自動車は 2.2%あること

から、この 10 年において LP ガス自動車は他燃料の自動車を上回る勢いで増加してきたこ

とが分かる。ただし 2010 年以降、伸び率は減少傾向となっており、直近では前年比 2.7%

にまで低下している。

表 4-1-1 EU における自動車台数と LP ガス自動車台数の推移

図 4-1-1 EU における自動車台数と LP ガス自動車台数の推移

出所:自動車台数 国際自動車連合会(OICA)

LP ガス自動車 世界 LP ガス協会(WLPGA)

90.0%

95.0%

100.0%

105.0%

110.0%

115.0%

120.0%

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

LPガス自動車台数 全自動車台数

自動車伸率 LPガス自動車伸率

単位:千台

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

乗用車 227,964 232,144 231,703 236,501 238,302 241,216 244,147 246,351 248,845 251,938 ―

業務用 34,966 36,001 36,793 37,608 37,685 38,023 38,505 38,521 38,634 39,205 ―

合計 262,930 268,145 268,496 274,109 275,987 279,239 282,652 284,873 287,479 291,142 ―

伸び率 ― 102.0% 100.1% 102.1% 100.7% 101.2% 101.2% 100.8% 100.9% 101.3% ―

台数 4,246 4,639 4,815 4,905 5,645 6,430 6,803 7,117 7,321 7,521 7,845

伸び率 ― 109.3% 103.8% 101.9% 115.1% 113.9% 105.8% 104.6% 102.9% 102.7% 104.3%

LPG率 1.6% 1.7% 1.8% 1.8% 2.0% 2.3% 2.4% 2.5% 2.5% 2.6% ―

自動車台数

LPガス

自動車台数

- 9 -

欧州の主要国における LP ガス自動車台数の推移を表 4-1-2 に示す。直近において EU 加

盟国で も普及が進んでいる国はポーランドで 291 万台、第 2 位がイタリアの 214 万台、

第3位がブルガリアの49万台となっている。2005年対比の伸び率でみると、ドイツが632%

増、ルーマニアが 171%増、イタリアが 116%増と、概ね 2 倍以上と大きく伸びている(図

4-1-2)。傾向としては、2005 年から 2010 年前後までは各国とも順調に台数が増加している

が、それ以降は横ばいか減少に転じる国が多く、直近で増加傾向にあるのはポーランドや

トルコ、ウクライナ等 EU 非加盟の東側諸国に偏っているのに対し、西側で増加傾向にあ

るのはイタリアのみとなっている。つまり、直近における LP ガス自動車の増加率は、西側

諸国では停滞しており、東側諸国で高くなっている。

以上のような状況を踏まえ、本調査では、LP ガス自動車が急速に普及し、かつ先進国と

して経済状況が日本に比較的近いと考えられる国として、特にイタリアとドイツに焦点を

当て実態調査を実施した。次項では、LP ガス自動車普及の要因と考えられる燃料価格とイ

ンフラ事情について述べる。

表 4-1-2 国別 LP ガス自動車台数推移

出所:WLPGA

※EU 非加盟国

単位:千台

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

ポーランド 1,770 1,980 2,050 2,080 2,170 2,325 2,477 2,615 2,750 2,846 2,914

イタリア 990 950 925 930 1,500 1,753 1,787 1,867 1,930 1,970 2,137

ブルガリア 216 216 220 210 222 455 459 458 470 470 490

ドイツ 65 125 200 300 380 430 455 495 501 494 476

ギリシャ 2 2 2 2 2 40 160 180 220 300 400

フランス 160 150 140 140 120 182 255 257 262 223 207

ルーマニア 70 125 180 185 185 190 190 190 195 190 190

オランダ 248 275 275 240 235 223 218 209 204 200 180

チェコ 170 200 200 200 208 170 170 170 180 172 179

イギリス 128 138 144 153 149 165 170 156 150 144 135

トルコ※ 1,500 1,800 2,050 2,240 2,320 2,973 3,335 3,649 3,934 4,076 4,272

ウクライナ※ 28 35 20 35 56 1,300 1,300 1,380 1,500 1,600 2,000

ロシア※ 500 550 600 600 581 1,300 3,000 2,500 3,000 3,000 3,000

日本※ 295 294 292 287 277 257 248 240 232 224 216

- 10 -

(単位:千台)

出所:WLPGA

図 4-1-2 LP ガス自動車台数の国別の推移

1,770

1,980 2,050 2,0802,170

2,3252,477

2,6152,750

2,846 2,914

990 950 925 930

1,500

1,753 1,7871,867 1,930 1,970

2,137

216 216 220 210 222

455 459 458 470 470 490

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

ポーランド イタリア ブルガリア ドイツ

ギリシャ フランス イギリス 日本

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4-2. オートガス価格及び改造費用

4-2-1.燃料税率

自動車用燃料の価格は、燃料そのものの価格と、それに課せられる税金によって決まる。

欧州の各国が自動車用燃料に対して課している税には燃料税(excise duty)と付加価値税

(Value Added Tax, VAT)の 2 種類あるが、各燃料間での差別化を図るために政策的な優遇措

置が適用されるのは、燃料税率である。

欧州連合(EU)の前身である欧州共同体(EC)は 1992 年の欧州指令1により、石油製品に課

せられる燃料税の 低税率を規定した。その後 2003 年に公布された改定2では、課税対象

が電気や石炭等のエネルギー全般に拡張され、税率も改められた(表 4-2-1)。この指令は当

初、EU 加盟国間における税率の違いによる域内市場への悪影響を縮小させること、石油系

燃料と他の燃料との公正な競争環境を確保すること等、経済的な目的が主であったが、1997

年の京都議定書の発効以降、省エネや省 CO2 に対するインセンティブを与えること等、地

球温暖化対策の手段としても考慮されるようになった。この中で自動車用 LP ガス(オート

ガス)の税率は、その環境性が考慮され、1,000kg 当たり 125 ユーロ、リッター換算で 0.064

ユーロに設定され、ガソリンや軽油のおよそ 1/5 程度に抑えられた。さらにこの規制では例

外規定として、燃料用の LP ガスと天然ガスの税率を 低税率以下の水準に設定することが

認められている。

なお、2007 年に欧州委員会が提出した通報3では、ガソリンと軽油の 低税率を段階的に

引き上げる(ガソリンは 2014年以降 380ユーロ/1000ℓ、軽油は 2012年以降 359ユーロ/1000

ℓ、2014 年以降 380 ユーロ/1000ℓ)とされていたが、2016 年時点では軽油が 330 ユーロに

増額されているのみで、LP ガスも含めその他の燃料は 2003 年時点のまま据え置きとなっ

ている4。

表 4-2-1 燃料税の 低税率

1 Council Directive 92/81/EEC, 92/82/EEC 2 Council Directive 2003/96/EC 3 European Commission COM(2007) 52 4 LP ガスの 低税率を円に換算すると、15.4 円/kg(7.9 円/ℓ)となる(1€=123 円で換算)。

単位 1992※1 2003 2016

ガソリン(無鉛) ユーロ/1000ℓ 287 359 359

軽油 ユーロ/1000ℓ 245 302 330

LPガスユーロ/1000kg(ユーロ/1000ℓ) 100 125(64) 125(64)

天然ガスユーロ/GJ

(ユーロ/1000ℓ)※3 100※2 2.6(101) 2.6(101)

※1 1992年の通貨単位はECU

※2 1992年の天然ガスの単位は1000kg

※3 軽油密度ベースによる試算

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表 4-2-2 に各国の燃料税率の推移を示す。2015 年時点でオートガスに対する燃料税率が

も低い国はフランス(0.06 ユーロ/ℓ)で、EU における 低税率を下回る水準に設定されて

おり、結果的にガソリン及び軽油に対する税率の約 12%と、 も強い優遇措置が取られて

いる。また同国の税率の年次推移を見ると、ガソリンと軽油が年ごとに細かく増減を繰り

返しながら全体として増税傾向にあるのに対し、LP ガスは一定額に固定されており、その

格差は拡大する傾向となっている。

その次に強い優遇措置を取っているのはドイツ(0.092 ユーロ/ℓ、ガソリン税率の 14%)、

イタリア(0.147 ユーロ/ℓ、同 20%)で、フランスを含めたこの 3 か国では、オートガスに対

し明確な優遇措置を与えていることが分かる5。

一方、普及が進んでいるポーランドやトルコでは、オートガスに対する税率がガソリン

及び軽油のおおよそ 50%前後と、上記の先進国に比べて比較的高い水準で設定されている

が、これは両国における燃料自体の価格の安さを考慮したものと考えられる6。また日本の

オートガス税率(石油ガス税)については、ガソリンに対する税率の 18.2%、同じく軽油に対

して 30.5%と、税率上は EU7 か国平均(同 27.8%、32.1%)よりも強い優遇措置をとってい

るが、フランスやドイツと比べると若干弱い措置となっていることが分かる。

4-2-2.燃料価格

上記の燃料税を加えた自動車用燃料の 終小売価格の推移を表 4-2-3 に示す。これをみる

と、2015 年実績でオートガスの価格が も安い国はポーランド(約 0.492 ユーロ/ℓ)で、 も

高い国はイギリス(0.813 ユーロ/ℓ)、西側 5 か国の平均値は 0.685 ユーロ(約 92 円/ℓ)となっ

ている。フランスは税制上の優遇措置にも関わらず 終小売価格は も高い水準となって

いるが、これは燃料に対する炭素税が別途課税されること、燃料自体の価格が相対的に高

いことなどが背景にある。一方、普及が進んでいるドイツ(0.600 ユーロ/ℓ)やイタリア(0.613

ユーロ/ℓ)などではいずれも平均以下となっている。

次にオートガス価格とガソリン・軽油価格との比をみると、2015 年実績でガソリンに対

して割安な水準となっているのがオランダ(ガソリン価格の 39.7%)、次いでイタリア(同

39.9%)、ドイツ(同 43.0%)、逆に も割高なのがフランス(同 57.8%)となっており、全体

的には概ね 40~60%の範囲に収まっている(図 4-2-1)。また時系列でみると、 終小売価格

が上昇傾向にあるのは各国共通であるが、ドイツ、イタリア、オランダにおいては特に直

近 5 年間でオートガスの割安感が強まる傾向にあるのに対し、フランス、イギリス、トル

コでは 50~60%の水準で横ばいとなっており、欧州内で傾向が異なっていることが分かる。

なお日本は 2015 年実績でガソリン価格の 64.8%と、欧州諸国と比較するとやや高い水準と

なっている。

一方、軽油に対しては 2015 年実績でイタリア(軽油価格の 43.6%)が も割安で、次いで

ドイツ(同 51.2%)、イギリス(同 51.8%)、逆に も割高な国はフランス(同 67.8%)となって

5 ドイツは、オートガスの税率を他燃料よりも十分に低く設定する方針を少なくとも 2018 年まで継続する

ことを決定している。またベルギーでは、2016 年時点においてオートガスの税率が無税となっている。 6 表 4-2-3 に示す通り、結果的に 終小売価格は EU の平均的な水準となっている。

- 13 -

おり、概ね 40~70%の水準となっている。また時系列でみると、イタリアやオランダなど

ではオートガスの価格的優位性が増加する傾向にあるのに対し、フランスではオートガス

価格の相対的な高止まりが続いているなど、ガソリンと同様の傾向にあることが分かる(図

4-2-2)。

- 14 -

表 4-2-2 EU 各国の燃料税(excise tax)率推移

出所:Autogas Incentive Policies (WLPGA)を基に作成7

※トルコは EU 非加盟

7 イギリス、ポーランド、トルコ、日本は European Central Bank の reference rates (http://sdw.ecb.europa.eu/browse.do?node=9691113)によりユーロに変換した(表 4-2-3 燃料価格も同様)。

単位:ユーロ/ℓ

国名 燃料 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

LPG 0.092 0.092 0.092 0.092 0.092 0.092 0.092 0.092 0.092 0.092 0.092

ガソリン 0.655 0.655 0.655 0.655 0.655 0.655 0.655 0.655 0.655 0.655 0.655

軽油 0.470 0.470 0.470 0.470 0.470 0.470 0.470 0.470 0.470 0.470 0.470

対ガソリン比 14.0% 14.0% 14.0% 14.0% 14.0% 14.0% 14.0% 14.0% 14.0% 14.0% 14.0%

対軽油比 19.6% 19.6% 19.6% 19.6% 19.6% 19.6% 19.6% 19.6% 19.6% 19.6% 19.6%

LPG 0.157 0.149 0.125 0.124 0.125 0.125 0.127 0.147 0.147 0.147 0.147

ガソリン 0.564 0.564 0.564 0.564 0.564 0.564 0.598 0.717 0.728 0.728 0.728

軽油 0.412 0.414 0.420 0.422 0.423 0.423 0.459 0.606 0.617 0.617 0.617

対ガソリン比 27.8% 26.4% 22.2% 22.0% 22.2% 22.2% 21.2% 20.5% 20.2% 20.2% 20.2%

対軽油比 38.1% 36.0% 29.8% 29.4% 29.6% 29.6% 27.7% 24.3% 23.8% 23.8% 23.8%

LPG 0.060 0.060 0.060 0.060 0.060 0.060 0.060 0.060 0.060 0.060 0.060

ガソリン 0.589 0.602 0.606 0.606 0.606 0.606 0.611 0.604 0.613 0.624 0.490

軽油 0.417 0.417 0.426 0.428 0.428 0.428 0.437 0.430 0.439 0.486 0.498

対ガソリン比 10.2% 10.0% 9.9% 9.9% 9.9% 9.9% 9.8% 9.9% 9.8% 9.6% 12.2%

対軽油比 14.4% 14.4% 14.1% 14.0% 14.0% 14.0% 13.7% 14.0% 13.7% 12.3% 12.0%

LPG 0.055 0.055 0.059 0.062 0.071 0.087 0.087 0.094 0.096 0.172 0.179

ガソリン 0.676 0.676 0.687 0.697 0.709 0.723 0.724 0.736 0.747 0.759 0.766

軽油 0.371 0.371 0.371 0.413 0.420 0.428 0.430 0.437 0.440 0.478 0.482

対ガソリン比 8.1% 8.1% 8.6% 8.9% 10.0% 12.0% 12.0% 12.8% 12.9% 22.7% 23.4%

対軽油比 14.8% 14.8% 15.9% 15.0% 16.9% 20.3% 20.2% 21.5% 21.8% 36.0% 37.1%

LPG 0.069 0.091 0.121 0.131 0.154 0.184 0.182 0.195 0.186 0.196 0.218

ガソリン 0.689 0.692 0.715 0.634 0.611 0.676 0.668 0.715 0.683 0.719 0.799

軽油 0.689 0.692 0.715 0.634 0.611 0.676 0.668 0.715 0.683 0.719 0.799

対ガソリン比 10.0% 13.1% 17.0% 20.6% 25.2% 27.2% 27.2% 27.2% 27.2% 27.2% 27.2%

対軽油比 10.0% 13.1% 17.0% 20.6% 25.2% 27.2% 27.2% 27.2% 27.2% 27.2% 27.2%

LPG 0.112 0.116 0.119 0.128 0.106 0.115 n.a n.a n.a n.a 0.198

ガソリン 0.390 0.359 0.436 0.470 0.381 0.416 n.a n.a n.a n.a 0.349

軽油 0.296 0.306 0.315 0.327 0.263 0.320 n.a n.a n.a n.a 0.399

対ガソリン比 28.7% 32.1% 27.3% 27.3% 27.9% 27.7% ― ― ― ― 56.8%

対軽油比 37.8% 37.8% 37.8% 39.1% 40.4% 35.9% ― ― ― ― 49.7%

LPG 0.257 0.273 0.240 0.361 0.308 0.380 0.347 0.303 0.291

ガソリン 0.811 0.752 0.761 0.750 0.689 0.947 0.808 0.942 0.860 0.750 0.721

軽油 0.495 0.459 0.465 0.462 0.430 0.651 0.556 0.687 0.628 0.547 0.526

対ガソリン比 0.0% 0.0% 33.8% 36.4% 34.9% 38.1% 38.1% 40.4% 40.4% 40.4% 40.4%

対軽油比 0.0% 0.0% 55.4% 59.1% 55.9% 55.4% 55.4% 55.3% 55.3% 55.3% 55.3%

LPG 0.072 0.067 0.061 0.064 0.075 0.084 0.088 0.096 0.076 0.070 0.073

ガソリン 0.393 0.368 0.334 0.188 0.413 0.463 0.485 0.525 0.415 0.383 0.401

軽油 0.235 0.220 0.199 0.098 0.246 0.276 0.289 0.313 0.248 0.229 0.239

対ガソリン比 18.2% 18.2% 18.2% 34.1% 18.2% 18.2% 18.2% 18.2% 18.2% 18.2% 18.2%

対軽油比 30.5% 30.5% 30.5% 65.3% 30.5% 30.5% 30.5% 30.5% 30.5% 30.5% 30.5%

ポーランド

トルコ

日本

ドイツ

イタリア

フランス

オランダ

イギリス

- 15 -

表 4-2-3 EU 各国における燃料価格推移-

出所:Autogas Incentive Policies (WLPGA)を基に作成

※トルコは EU 非加盟

単位:ユーロ/ℓ

国名 燃料 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

LPG 0.642 0.710 0.711 0.762 0.676 0.735 0.736 0.780 0.738 0.722 0.600

ガソリン 1.223 1.289 1.341 1.403 1.295 1.417 1.560 1.651 1.598 1.659 1.394

軽油 1.056 1.116 1.169 1.333 1.090 1.226 1.425 1.490 1.429 1.449 1.171

対ガソリン比 52.5% 55.1% 53.0% 54.3% 52.2% 51.9% 47.2% 47.2% 46.2% 43.5% 43.0%

対軽油比 60.8% 63.6% 60.8% 57.2% 62.0% 60.0% 51.6% 52.3% 51.6% 49.8% 51.2%

LPG 0.570 0.647 0.626 0.681 0.563 0.660 0.755 0.823 0.807 0.777 0.613

ガソリン 1.220 1.285 1.298 1.379 1.232 1.363 1.554 1.786 1.749 1.712 1.535

軽油 1.108 1.165 1.163 1.342 1.081 1.214 1.447 1.706 1.659 1.620 1.405

対ガソリン比 46.7% 50.4% 48.2% 49.4% 45.7% 48.4% 48.6% 46.1% 46.1% 45.4% 39.9%

対軽油比 51.4% 55.5% 53.8% 50.7% 52.1% 54.4% 52.2% 48.2% 48.6% 48.0% 43.6%

LPG 0.642 0.710 0.711 0.762 0.676 0.735 0.853 0.882 0.873 0.834 0.780

ガソリン 1.161 1.237 1.273 1.356 1.207 1.344 1.500 1.567 1.538 1.339 1.350

軽油 1.023 1.079 1.092 1.270 1.002 1.145 1.336 1.396 1.350 1.150 1.150

対ガソリン比 55.3% 57.4% 55.9% 56.2% 56.0% 54.7% 56.9% 56.3% 56.8% 62.3% 57.8%

対軽油比 62.8% 65.8% 65.1% 60.0% 67.5% 64.2% 63.8% 63.2% 64.7% 72.5% 67.8%

LPG 0.510 0.598 0.692 0.675 0.578 0.644 0.700 0.769 0.732 0.680 0.620

ガソリン 1.352 1.415 1.459 1.537 1.343 1.503 1.640 1.759 1.736 1.661 1.560

軽油 1.023 1.087 1.087 1.287 0.996 1.170 1.348 1.444 1.421 1.267 1.230

対ガソリン比 37.7% 42.3% 47.4% 43.9% 43.0% 42.8% 42.7% 43.7% 42.2% 40.9% 39.7%

対軽油比 49.9% 55.0% 63.7% 52.4% 58.0% 55.0% 51.9% 53.3% 51.5% 53.7% 50.4%

LPG 0.612 0.660 0.691 0.702 0.596 0.754 0.871 0.930 0.847 0.863 0.813

ガソリン 1.269 1.339 1.379 1.345 1.115 1.363 1.532 1.687 1.585 1.577 1.525

軽油 1.330 1.396 1.416 1.476 1.469 1.391 1.595 1.768 1.651 1.645 1.571

対ガソリン比 48.2% 49.3% 50.1% 52.2% 53.5% 55.3% 56.8% 55.1% 53.4% 54.8% 53.3%

対軽油比 46.0% 47.3% 48.8% 47.6% 40.6% 54.2% 54.6% 52.6% 51.3% 52.5% 51.8%

LPG 0.465 0.524 0.529 0.618 0.425 0.556 - - - - 0.492

ガソリン 0.992 1.022 1.113 1.224 0.952 1.139 - 1.673 - 1.365 1.028

軽油 0.915 0.981 0.997 1.202 0.841 1.067 - 1.663 - 1.336 1.006

対ガソリン比 46.9% 51.3% 47.5% 50.5% 44.7% 48.8% - - - - 47.9%

対軽油比 50.8% 53.4% 53.1% 51.4% 50.5% 52.1% - - - - 48.9%

LPG 0.774 0.957 1.075 0.929 1.012 0.992 1.085 1.066 0.950 0.797

ガソリン 1.537 1.612 1.684 1.442 1.843 1.792 2.062 1.887 1.603 1.477

軽油 1.227 1.287 1.505 1.197 1.748 1.570 1.846 1.697 1.373 1.256

対ガソリン比 - 50.4% 59.4% 63.9% 64.4% 54.9% 55.4% 52.6% 56.5% 59.2% 53.9%

対軽油比 - 63.1% 74.3% 71.4% 77.6% 57.9% 63.2% 58.8% 62.8% 69.2% 63.4%

LPG 0.495 0.518 0.492 0.626 0.592 0.734 0.804 0.915 0.757 0.700 0.634

ガソリン 0.910 0.942 0.867 1.029 0.922 1.144 1.314 1.435 1.203 1.126 0.978

軽油 0.733 0.774 0.737 0.922 0.794 0.984 1.150 1.259 1.055 0.976 0.834

対ガソリン比 54.4% 55.1% 56.7% 60.9% 64.1% 64.1% 61.2% 63.8% 62.9% 62.2% 64.8%

対軽油比 67.5% 67.0% 66.7% 68.0% 74.5% 74.6% 69.9% 72.7% 71.7% 71.7% 76.0%

ポーランド

トルコ

日本

ドイツ

イタリア

フランス

オランダ

イギリス

- 16 -

図 4-2-1 ガソリン価格との比較

図 4-2-2 軽油価格との比較

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

ドイツ

イタリア

フランス

オランダ

イギリス

ポーランド

トルコ

日本

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

ドイツ

イタリア

フランス

オランダ

イギリス

ポーランド

トルコ

日本

- 17 -

なお、欧州では一般的に、オートガスの価格は他の燃料と共にスタンド店頭に掲示され

ており、ユーザーはオートガスの価格やガソリンとの価格差を簡単に知ることができるよ

うになっている(図 4-2-3)。その他、民間の価格情報サイト8も充実しており、ユーザーは自

らの状況に応じて燃料を購入する店舗を選択することもできる(図 4-2-4)。

以上のように、EU では少なくとも 2003 年の燃料税の 低税率導入以降、オートガスの

価格はガソリンや軽油に対し 40%~70%程度の水準で安定的に推移しており、燃料税率の

コントロールによる政策的な意図も相まって、他燃料に対して十分な競争力を有する水準

を保ってきたことが、欧州全体における LP ガス自動車の普及に強く影響を及ぼしたものと

考えられる9。

図 4-2-3 スタンドに掲示された価格表(ベルリン市内)

図 4-2-4 スタンド検索サイト

8 https://www.myLPg.eu/ このサイトでは改造事業者の検索をすることもできる。 9 このことは、後述する事業者に対するヒアリング結果からも明らかになっている。

- 18 -

4-2-3.車体及び改造費用

欧州における LP ガス自動車の製造方法には、自動車メーカーが製造する方法(OEM 車)

と、ユーザーが購入した自動車を自ら改造事業者等に持ち込んで、市販の改造キットを利

用して改造する方法(改造車)の 2 つの方法がある。表 4-2-4 に、EU 主要国における LP ガ

ス自動車(OEM 車)の車両費用と、改造費用を示す。なお車両費用は、同タイプのガソリン

車に対する追加費用額である。

車両費用では、フランスとイタリアが 600~2,000 ユーロと比較的安く、それに対してド

イツは 1,900~3,500 とやや割高となっている。また普及が進んでいるトルコでは 1,700 ユ

ーロと、西側諸国とほぼ同等の水準となっており、OEM 車の価格については西側と東側で

それほど大きな差はない。なお、イギリス、オランダ、ポーランド等、OEM 車がほとんど

販売されていない国もあり、欧州全体としては OEM 車よりも改造車の方が多いものと考え

られる。

一方改造費用でみると、普及が進んでいるイタリアやポーランド、トルコにおいて 600

~1,200 ユーロと低価格で、ドイツやフランスと比較しておよそ半分以下の水準となってお

り、大きな価格差があることが分かる10。なお、日本の改造費用はイタリアの約 4 倍~5 倍、

ドイツやフランスと比べても約 2 倍~3 倍と割高になっている。

表 4-2-4 LP ガス自動車(OEM 車)車両費用及び改造費用

※車両費用は同タイプのガソリン車に対する追加費用11

出典:Autogas Incentive Policies 2016 (WLPGA)他を基に作成12

4-2-4.採算ラインの比較

上記の通り、LP ガス自動車の製造には改造のための追加費用が発生するため、他燃料車

に対してコスト面での優位性を発揮するためには、割安に設定されている燃料価格の差に

よって採算を取ることが前提となる。表 4-2-5 に、欧州主要国における車体費用及び改造費

用、補助金も含めたイニシャルコストと、走行距離による採算ラインの比較を示す。対ガ

ソリンでみると、OEM 車で も早く採算が取れているのがイタリアの 10,000km、次点が

オランダの 25,000km となっており、改造車ではトルコの 15,000km、イギリスが 25,000km

と、上位の国では大よそ 10,000km~25,000km で採算が取れていることが分かる。一方対

軽油では、イタリア、フランスなどの多くの国で走行距離に寄らず割安になっている。

10 LANDY RENZO 社への聞き取り調査によれば、イタリアでの平均改造費用は約 1,000 ユーロで、その

うち燃料タンクの費用は 100 ユーロである。 11 ディーゼル車については、同タイプのガソリン車より概ね2,000ユーロ程度割高となる。 12 イギリス、トルコ、日本は、European Central Bank の reference rates (http://sdw.ecb.europa.eu/browse.do?node=9691113)によりユーロに変換した。

単位:ユーロ

種別 ドイツ フランス イタリア イギリス オランダ ポーランド トルコ 日本

車両費用 1,900~3,500 600~1,500 800~2,000 ― ― ― 1,700 2,200

改造費用 2,000~2,400 1,500~3,500 700~1,200 1,700 2,200 800 600 3,700~4,500

- 19 -

なお、日本については OEM 車で約 75,000km と、欧州諸国と比較しても採算ラインがか

なり高くなっている。

表 4-2-5 LP ガス自動車と他燃料車との採算ライン(走行距離)

※同タイプのガソリン車及びディーゼル車との比較

※〇は走行距離によらず常に割安であることを示す。

出典:Autogas Incentive Policies 2016 (WLPGA)

4-2-5.補助制度

欧州各国では、LP ガス自動車を含む代替燃料車の普及促進のため、燃料税率の優遇措置

以外にも、様々な政策を導入している。表 4-2-6 に示すように、それらは一般的に、「金融・

財政面での支援」、「法律による義務付けや規制緩和」、「その他」の 3 つのカテゴリーに区

分できる。

「金融・財政面での支援」としては、燃料にかかる消費税等の減免・還付措置、車両購

入あるいは改造費用に対する補助制度、自動車税等の課税の減免措置がある。燃料に課せ

られる税の軽減措置は、ユーザー自身が自ら燃料価格の相対的な割安感を確認できるため、

代替燃料車の優位性を も直接的にアピールすることができる。自動車関連諸税の減免も

相対的に割高な代替燃料車の購入・維持費用を軽減するために有効な手段の一つである。

例えばフランスの一部の都市では、自動車取得税の 50%が還付される。

「法律による義務付けや規制緩和」では、自治体や民間企業に対する導入義務付け、都

市部の一定区域内に代替燃料車以外の車両の走行を制限する規制区域の設定、路上駐車場

の使用料金や有料道路の利用料免除等がある。例えばフランスの 21 の都市では、LP ガス

自動車の駐車料金が 2 時間まで無料となっている。

さらに間接的な方法としては、技術開発やインフラ整備等への投資の促進、業界内連携

に対する支援、または政府と民間企業との連携、代替燃料車の認知度向上を目的とした広

報や教育などがある。

表 4-2-7 に、各国で実施されている LP ガス自動車に関連する政策を示す。これをみると、

燃料税の優遇措置についてはほぼすべての国が実施しており、 も一般的な手段となって

いることが分かる。その他には、車両購入・改造費用に対する補助制度(インド、イタリア、

日本、アメリカ)、国あるいは地方自治体への導入の義務付け(インド、イタリア、韓国、ア

メリカ)を実施している国が多い。後者の例として、例えばアメリカでは、連邦政府が購入

する新規車両のうち、75%を代替燃料車とすることが義務付けられている。また、地方行

政レベルでは、大気汚染時における自動車走行制限の免除(ミラノ、パリ)や、専用車線の走

行許可等が与えられているケース(アメリカの都市)もある。

単位:km

燃料 種別 ドイツ イタリア フランス イギリス オランダ ポーランド トルコ 日本

OEM車 50,000 10,000 40,000 ― 25,000 〇 45,000 75,000

後改造車 45,000 30,000 75,000 25,000 35,000 50,000 15,000 200,000

OEM車 50,000 〇 〇 ― 〇 〇 ― 115,000

後改造車 30,000 〇 〇 22,000 〇 〇 ― ―

対ガソリン

対軽油

- 20 -

表 4-2-6 代替燃料車普及促進のための政策手段

財政・金融支援

・自動車重量税、自動車取得税等の免除、還付

・消費税の免除、新車購入時の所得税の免除

・設備投資、研究開発費用に対する減税

・新車購入、改造費用に対する補助金、減税

・新車取得、設備投資に対する即時原価償却

法的義務付け

・公共及び民間事業者に対する導入義務付け

・燃料充填施設の基準策定

・健康及び安全性に関する規制

・駐車場、有料道路使用料金の免除

・走行制限区域の免除

その他

・政府自身による購入

・定期的な広報活動、認知度向上キャンペーンの実施

・技術開発に関する事業者間連携の促進

・研究開発費用、広報活動に対する財政支援

出所:WLPGA

表 4-2-7 世界各国の LP ガス自動車政策支援策(2015 年)

燃料税の優遇措置※1

自動車関連諸税の免除もしくは還付

※2

改造、OEM品購入に対する助成、税

額控除

オートガス車の導入義務付け※3

オーストラリア ○

フランス ○ ○

ドイツ ○

ギリシャ ○

インド ○ ○ ○

イタリア ○ ○ ○

日本 ○ ○

韓国 ○ ○

メキシコ ○

オランダ ○

ポーランド ○

タイ ○

トルコ ○

イギリス ○

アメリカ ○ ○

※1 リッター当たりの燃料税をガソリンや軽油の半分以下とする

※2 自動車取得税、登録税、重量税、自動車税等を含む

※3 国や県(州)の公用車両

- 21 -

代表的な補助制度の例として、イタリアにおける 2009 年及び 2010 年時の補助制度の概

要を示す(表 4-2-8)13。これをみると当時の補助制度においては、新規購入する車両の CO2

排出量に応じて交付される補助金の他に、環境性の低い旧車を中古車市場へ売却せず廃車

にした場合、さらに追加で補助金が交付される仕組みとなっており、補助金額は 大で

3,500 ユーロ(約 43 万円)に達する。これにより、環境性能の低い旧車から代替燃料車への

切り替えを促しつつ、旧車が中古車市場へ再流入することを防ぐ目的であったものと考え

られる。

図 4-2-5 は、イタリア国内における OEM 車と改造車の比率の推移を示したものである。

これをみると、補助制度が開始される以前の 2008 年ごろまでは、LP ガス自動車の大部分

を改造車が占めていたが、2009 年の補助制度導入以降、新規購入の OEM 車が過半数を超

えるまで急激に増加している。これと同時期にイタリアの LP ガス自動車台数及びオートガ

スの需要量も急激に増加していることから(図 4-2-6)、補助制度の導入が需要増に大きく寄

与したことが分かる。

表 4-2-8 イタリアにおける新規購入車に対する補助制度(2009 年、2010 年)※1

図 4-2-5 OEM と改造車の台数比率の推移

出典:Landi Renzo 社資料 13 この制度は代替燃料車の普及促進を目的としているため、対象には EV 車や CNG 自動車等の代替燃料

車が含まれている。

条件(車両のCO2排出量)

1台当たりの

補助金額

旧車を廃車した

場合の追加分※2 合計

<120g/km € 2,000 € 1,500 € 3,500

120><140g/km € 1,500 € 1,500 € 3,000

>140g/km € 1,500 € 0 € 1,500※1 改造車は€350~€500の補助

※2 業務用のトラックを廃車した場合、さらに€4,000を補助

- 22 -

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

需要量 台数

(千台)(千トン)

図 4-2-6 イタリアのオートガス需要・LP ガス自動車台数推移

なおこの補助制度については、毎年その内容が改訂されているものの、2016 年時点にお

いても継続されているが、条件はさらに厳しくなっている(表 4-2-9)14。

表 4-2-9 イタリアにおける新規購入車に対する補助制度(2014 年)

また、イタリアでは改造車に対する補助制度も実施されており、2016 年現在では、Low

Impact Fuel Initiative(ICBI)に加盟している 674 の地方自治体の住民で、LP ガス自動車の

改造をする者に対し 500 ユーロ補助金が交付されている。

その他の支援策としては、自動車重量税の減免、自動車取得税の減免(一部地域限定)があ

る。また多くの都市では、環境保護を目的として、公共部門が所有する車両を LP ガス自動

車や CNG 自動車などのより排気ガスがクリーンな車両へ改造することを義務付けており、

そうした車両は、ガソリン車やディーゼル車の走行が規制されているエリアでも走行でき

る優遇措置が取られている。

14 2015 年の改正において、補助金額がそれぞれ 3,000 ユーロ、1,800 ユーロに引き下げられた。

条件(車両のCO2排出量) 適用

1台当たりの

補助金額※1

51><95g/km 自家用・業務用 € 4,000

96><120g/km 業務用※2 € 2,000※1 全費用の20%を上限

※2 登録から10年以上経過した旧車を廃車することが条件

- 23 -

4-3. LP ガス自動車のインフラ整備状況

4-3-1.LP ガススタンド数の推移

欧州(EU+トルコ、ウクライナ)における LP ガススタンド数は約 44,000 ヵ所(2014 年実

績)で、2005 年の 25,000 ヵ所より約 75%の増加となっており、依然として増加の傾向にあ

る(図 4-3-1)。

国別でみると、2014年時点で も多いのがドイツ(6,850ヵ所)、第 2位がポーランド(5,460

ヵ所)、第 3 位がイタリア(3,600 ヵ所)となっている。特に増加率が高い国がドイツであり、

2005 年から 2010 年にかけて約 6 倍と大幅に増加している(図 4-3-2)。その他の国について

は、イタリアとギリシャで微増している他は、概ね横ばいとなっている。なお、EU 外のト

ルコは 10,394 ヵ所、ウクライナは 3,000 ヵ所、日本は 1,500 ヵ所(いずれも 2014 年実績)

となっている。

図 4-3-1 欧州の LP ガススタンド数推移

図 4-3-2 主要国別 LP ガススタンド数推移

出所:WLPGA

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

50,000

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

1,000

2,300

3,200

4,400 5,500

6,050 6,2006,500

6,750 6,850

5,900

6,800 6,7006,350

6,050

5,9005,700 5,600 5,520 5,460

2,300

2,350

2,350 2,350

2,592

2,7732,955

3,230 3,2503,600

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

ドイツ ポーランド イタリア ブルガリア オランダ

フランス イギリス ルーマニア 日本

- 24 -

図 4-3-3 に、1 ヵ所の LP ガススタンドを利用する LP ガス自動車の平均台数(LP ガス自

動車台数を LP ガススタンド数で除したもの)を示す。これをみると、イタリアが 547.2 台、

ポーランドが 521.2 台で、他の諸国に比較して突出して多くなっている。いずれの国も LP

ガス自動車の台数が多いため、それだけ回転率が高くなっていると考えられる。逆に も

低い国はドイツの 72.1 台で も回転率が低く、その他の国は概ね 100 台~200 台の範囲に

収まっている15。ドイツのスタンド数が突出して多い背景には、同国ではよく発達した高速

道路網(アウトバーン)での長距離移動が多く、移動途中での燃料切れを避けるためスタンド

設備が非常に多く設置されているものと考えられる。

図 4-3-3 LP ガススタンド 1 ヵ所当たりの平均使用台数(2014 年実績)

出所:WLPGA

4-3-2.ガソリンスタンドとの併設状況

欧州では一般的に、オートガス用ディスペンサーとガソリン用ディスペンサーを同一ア

イランド内に設置することが認められており、オートガススタンドはその大部分がガソリ

ンスタンドと併設されている(図 4-3-4)。表 4-3-1 に示すように、ガソリンスタンドとの併

設率は国によって大きくばらつきがあるが、 も低いイタリアやフランスにおいても概ね

15%以上となっており、CNG スタンドと比較してよく普及していることが分かる。また、

普及台数の多いトルコやポーランドでは併設率が 80%を超えており、ほとんどのスタンド

でオートガスを購入できる体制が整っていることが分かる。

15 なお日本は 150.6 台、トルコは 392.0 台となっている。

65.0 54.3 62.5 68.2 69.1 71.1 73.4 76.2 74.2 72.1

300.0 291.2306.0

327.6

358.7

394.1

434.6467.0

498.2521.2430.4

404.3

393.6 395.7

578.7

632.2604.7

578.0593.8

547.2

0.0

100.0

200.0

300.0

400.0

500.0

600.0

700.0

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

ドイツ ポーランド イタリア ブルガリア オランダ

フランス イギリス ルーマニア 日本

- 25 -

図 4-3-4 同一アイランド内に設置されたマルチディスペンサー

表 4-3-1 ガソリンと LP ガススタンドの併設率

出典:

ガソリン:FulesEurope Statistical Report 2015 (2014 年実績)

LPG:Statistical Review of Global LPG 2016 (2015 年実績)

CNG:Natural & bio Gas Vehicle Association(NGVA Europe) WEB サイト

(2017 年 1 月調査時点における実績)

※1 工事中の設備を含む

ガソリン LPG CNGLPG併設率

CNG併設率

イタリア 21,800 3,800 974 17.4% 4.5%

ドイツ 14,562 7,000 882※1 48.1% 6.1%

トルコ 12,623 10,600 19 84.0% 0.2%

フランス 11,356 1,750 40 15.4% 0.4%

イギリス 8,609 1,400 12 16.3% 0.1%

ポーランド 6,479 5,420 25 83.7% 0.4%

オランダ 3,825 1,750 128 45.8% 3.3%

- 26 -

4-3-3.セルフ化の状況

表 4-3-2 に、欧州主要国における LP ガススタンドのセルフ給油、地下駐車場への駐車の

可否の状況を示す。セルフ化については、今回調査した範囲では大よそ半数の国で認めら

れている。特に台数の多いドイツやイタリア等の国ではセルフ給油が認められており、ス

タンド運営コストの削減やユーザーの利便性向上が図られている16。

表 4-3-2 LP ガススタンド法規制の状況

※1 法的には認められているが、一般には認可されていないと誤って

認識されている

図 4-3-5 LP ガススタンドでセルフ充填をする男性

16 イタリアでは、オートガスを他の用途へ転用することを防止するためのデバイスを設置

している SS 限定の措置となっている。

国 セルフ化の状況 地下駐車場への駐車

ドイツ ○ ○

デンマーク × ○

フランス ○ ○

ギリシャ × ○

アイルランド × 不明

イタリア ○ ○

オランダ × ○

スペイン × ○

イギリス ○ ○

チェコ ○※1 ×

ポーランド 不明 ○

トルコ 不明 ×

- 27 -

600

650

700

750

800

850

900

950

1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014

4-4. EU におけるエネルギー・環境政策の動向と LP ガス自動車の位置付け

4-4-1.EU におけるエネルギー政策の動向

欧州は、欧州連合(EU)を中心として、気候変動に対する対応、とりわけ温室効果ガスの

排出削減に係る国際的な取組みにおいて、常に中心的な役割を果たしてきた。EU は 2010

年にエネルギー新戦略を発表し、温室効果ガスの排出量(1990 年対比)、全エネルギーに占

める再生可能エネルギーの導入目標、エネルギー効率の改善(1990 年対比)をそれぞれ 2020

年までに 20%とする目標を設定した。続く 2014 年には 2030 年までの目標を公表し、温室

効果ガスの排出量を 40%削減(1990 年対比)、再生可能エネルギーの導入割合を 27%、エネ

ルギー効率の改善を 27%(1990 年対比)とするなど、積極的な取組方針を示している。

EU における陸上輸送部門の CO2排出量は約 8 億 3,500 万トン(2014 年実績)で、EU 全

体の CO2排出量のおよそ 1/5 を占めている。CO2排出量の推移をみると、基準年度である

1990 年以降右肩上がりで増加し 2007 年にピークとなる 9 億 2,000 千万トンを記録、その

後減少傾向となるが、2013 年からは再度上昇に転じ、2014 年実績では依然として基準年度

実績を約 17%上回る結果となっている(図 4-4-1)。

(100 万トン)

図 4-4-1 陸上輸送部門の CO2排出量推移

出所:DG MOVE

こうした状況の中、EU 委員会は 2011 年の交通白書において、EU 内の陸・海・空を含

む全ての輸送部門における CO2排出量を、2050 年までに 1990 年比 60%削減するという目

標を設定した。その内自動車輸送については、都市部をガソリンや軽油などの従来型燃料

で走行する自動車の台数を 2030 年までに半減、2050 年までに撤廃すること、また主要都

市において CO2を排出しない交通手段 essentially CO2-free city logistics を 2030 年までに

確立することが謳われるなど、輸送部門における脱炭素化を促進するため、石油依存度を

- 28 -

低減させる方針を打ち出した。

EU ではこの目標を達成するため、様々な政策を実施している(表 4-4-1)。エネルギー供

給に対する指令については、2009 年 4 月に公布された「再生可能エネルギー導入指令(RED)」

がある。この指令では、 終消費エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合を 2020 年

までに 20%とすること、またその内数として、輸送部門における再生可能エネルギーの割

合を 10%とする目標が設定された17。その他、EU 加盟国に対し、再生可能エネルギーの導

入目標及び活動計画の策定、関連する法律の整備、技術等に関する情報公開、EU 委員会に

対する結果の報告等を義務付けている。

その後、2014 年から 2016 年にかけて行われた政策評価(Regulatory Fitness Programme、

REFIT)では、RED 導入の結果、 終消費エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合は、

2007 年の 10.4%から 2015 年には 17%にまで上昇し、一定の成果を得たと評価された。し

かし、輸送部門の目標達成度については具体的に記載されず「目標達成のためにはさらな

る努力が必要」との指摘がなされるに留まっている。その背景として、 も有力な手段と

見られていたバイオ燃料の原料の調達手段について、農地保全や食糧確保の観点から、食

糧由来の原料からの調達を一定割合以下に制限しようとする制度の導入の是非に関する議

論が長引いたことが、市場にネガティブな印象を与えたと指摘されている18。

表 4-4-1 EU の主なエネルギー・環境政策

17 ここでいう「再生可能エネルギー」とは、風力、太陽光、ヒートポンプ aerothermal、地熱、水熱

hydrothermal and ocean energy、水力、バイオマス、埋め立て地から排出されるガス landfill gas、廃棄

物処分場から排出されるガス sewage treatment plant gas、バイオガスを指す。 18 バイオ燃料の普及促進については、2003 年に EU 指令 Directive 2003/30/EC が公布されている。

対象 指令 名称 内容

燃料Directive

2009/28/EC再生可能エネルギー導入指令Renewable Energy Directive

・ 終消費エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合を2020年までに20%・輸送部門における再生可能エネルギーの割合を2020年までに10%・食物由来のバイオディーゼル導入の上限を7%(2015年改正時に追加)

燃料Directive

2009/30/EC燃料品質指令Fuel Quality Directive

・自動車用燃料の生産から消費に至る過程で排出されるCO2を2020年までに2010年 度比6%削減

設備Directive

2014/94/EU

代替燃料車用設備指令Deployment of AlternativeFuels Infrastructure Directive

・電気自動車用充電スタンドを10台に1ヵ所程度の割合で設置

・CNGスタンド150kmごとに1ヵ所程度の割合で設置

自動車Reg. No.443/2009Reg. No.333/2014

CO2排出量規制・乗用車のCO2排出量を2021年までに95gCO2/km以下

・軽量業務用車のCO2排出量を2020年中に147gCO2/km以下

自動車Reg.(EC)

No.715/2007 排気ガス規制・排気ガスに含まれるNOXを0.06g/km(ガソリン車)、0.08g/km(ディーゼル車)以下

・排気ガスに含まれる微粒子を0.0045g/km(ガソリン車、ディーゼル車)以下

自動車Directive

2009/33/ECクリーン自動車指令Clean Vehicle Directive

・自治体等が自動車を購入する際、全体のエネルギー効率や環境に 対する影響を考慮

- 29 -

4-4-2.代替燃料車用設備指令(DAFI)

また設備関連としては、2014 年 10 月に公表された「代替燃料車用設備指令(DAFI)」が

ある。この指令では、ガソリン車やディーゼル車に替わる代替燃料自動車普及のための課

題の一つであるインフラ整備を促進するための一般的な枠組みが示された。その中で代替

燃料として、電気、水素、バイオ燃料、天然ガス(生物由来、CNG、LNG)、合成パラフィ

ン系燃料 synthetic and paraffinic fuels、LP ガスの 6 つの燃料が規定された19。それらの

内、普及促進策について特に詳細に記述されている燃料が、電気と天然ガスである。

電気については、2020 年までに適切な数の充電スタンドを設置すること、2017 年 11 月

以降に設置された充電スタンドについては DAFI で規定された技術基準に従うこと、今後

設置する充電スタンドはスマートメーターintelligent meter system を活用することなどが

記載されており、中でも充電スタンドの設置数の指標として、少なくとも EV 車 10 台に 1

ヶ所程度の設置数が望ましいとの記載がされている。

天然ガスについては、CNG と LNG に分けて記載されている。CNG については、2020

年までに都心部や郊外、その他人口密集地域内に適切な数の CNG スタンドを設置すること、

また同様に、2025 年までに TEN-T Core Network20内に適切な数の CNG スタンドを設置

することなどが記載されており、特に CNG スタンドの設置数については、指標として、

CNG 自動車の航続距離の 低ラインを考慮し、150km ごとに 1 ヵ所の割合で設置するこ

とが必要としている。一方 LNG スタンドについては、2025 年までに TEN-T Core Network

内に大型車向けの適切な数の LNG スタンドを設置すること、また LNG タンクローリー用

出荷基地を含む LNG 供給システムを構築することなどが記載されており、LNG スタンド

の設置数については、指標として約 400km に 1 ヵ所の割合で設置することが必要としてい

る。

その他の燃料では、水素について 2025 年までに適切な数のスタンドを設置すると記載さ

れている他は、LP ガスも含め特に詳細な規定はなされていない。

EU 加盟国ではこの指令に基づき、自国内におけるインフラ整備を推進するための政策枠

組みについて検討を行っている。指令では具体的な検討事項として、インフラ整備市場の

現状と将来見通しの把握、国ごとの目標と取組方針の策定、都市部や人口密集地域におけ

る EV 車用の充電施設や CNG 自動車向けの充填施設の指定等の項目が含まれている。EU

加盟国は 2016 年 11 月 18 日までに EU 委員会に検討結果を提出し、そこで EU 全体の目標

との整合性が図られることになっている。

以上、DAFI においては、「技術中立的立場」を取るとしながらも、電気と天然ガスにつ

いてのみ具体的な規定や達成状況の報告義務等が課せられていることから、特にその 2 つ

の燃料が重要視されていることが分かる。他方、LP ガスについては、「LP ガススタンドは

相対的によく普及しており、EU 域内で既に約 29,000 ヶ所のスタンドが存在している」と

19 当初、LP ガスは代替燃料に含まれていなかったが、欧州 LP ガス協会(AEGPL)の積極的な働きかけに

より、 終的に代替燃料として認められたという経緯がある。 20 The trans-European transport network(TEN-T)は、EU 域内の道路、鉄道、空港、港などの輸送イン

フラの総合的な整備に関する計画で、1996 年にガイドラインが制定された。そのうち、戦略上特に重要な

交通網を Core Network としている。

- 30 -

の認識が示されていることから、特に数値目標等について設定する必要はないと判断され

たものと考えられる。つまり DAFI においては、EV 車や CNG 自動車と比較して、LP ガ

ス自動車の更なる普及促進を図るという方向性にはないと考えられる。

図 4-4-2 代替燃料車用設備指令(DAFI)の概要

4-4-3.自動車に対する環境規制

EU は域内における大気汚染問題に対応するため、1992 年の EURO1 の導入以降、段階

的に規制を強化してきた。EU 委員会は 2005 年 9 月、大気汚染問題に対応するための戦略

を提示し、大気汚染源である輸送部門(航空、海運、陸上輸送)、家庭及び産業部門のすべて

の部門における更なる包括的な削減を進める必要があるとした21。そして続く 2007 年 6 月、

そのうちの陸上輸送対策の一つとして、EURO 規制 Regulation (EC) No 715/2007 が交付

され、いわゆる EURO5、EURO6 の規制値が規定された。

表 4-4-2 に EURO 規制の流れを示す。ここにある通り、 新の EURO6 においては、特

にディーゼルにおいて NOXの規制値が 1992 年規制の 1/10 以下となっている他、新たに超

微粒子数(PN)に関する規定が追加されるなど、規制が厳しく強化されている。

また、EU 内で独自の規制を設定している自治体もある(表 4-4-3)。AEGPL によれば、都

心部の大気汚染対策として自動車走行が制限されている区域(Low emission zones, LEZ)は

欧州全体で約 200 ヶ所あり、また EURO 規制を満たす代替燃料車のみ走行を認める区域も

21 COM(2005) 446

- 31 -

存在する。このように自動車に対する環境規制は、EU レベルから地方自治体レベルまで広

範囲に存在しており、総じて規制強化の方向にあると言える。

なお AEGPL では、代表的な LP ガス自動車 5 車種の実走行による排気ガス試験を実施し

ており、ほとんどの車が EURO6 の基準を満たしていることを確認している(詳細は参考資

料を参照)。

表 4-4-2 欧州における排気ガス規制の流れ22

出所:欧州自動車工業会(ACEA)

(1) HC+NOx で表示 (2) 直噴ガソリンエンジンに適用 (3) ディーゼルエンジンのみ適用 (4) 直噴ガソリンエンジンの制限 (5) 2017 年 9 月からの直噴ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの一般制限 (6) km あたりの超微粒子数

表 4-4-3 都市における通行規制

出所:AEGPL

22 規制値は主要なもののみ記載。

ガソリンディーゼル

新モデル 全新規登録車 NOx PM NOx PM PN(6)

Euro 1 1992年7月 1992年12月 970(1) 970 140

Euro 2 1996年1月 1997年 1月 500(1) 900 100

Euro 3 2000年1月 2001年 1月 150 500 50

Euro 4 2005年1月 2006年 1月 80 250 25

Euro 5 2009年9月 2011年 1月 60 4.5(2) 180 4.5 6×1011(3)

Euro 6 2014年9月 2015年 9月 60 4.5(2) 80 4.5 6×1011(4)(5)

ガソリン ディーゼル発効日

ミラノ

・ガソリン車(EURO0)、ディーゼル車(EURO0,3)の日中の区域内走行を禁止

・エリア内に居住している場合、40日/年間までは無料、それ以降は1日2ユーロ、非居住者は1日5ユーロを徴収

・LPG・CNG自動車、ハイブリッド、EV車は走行可

・改造車は自治体に申請すれば走行可

ナポリ・ナポリ市内の100万人以上の区域で平日の特定の時間帯が対象区域

・EURO4を満たすガソリン車、ディーゼル車は走行可

・EV車、LPG・CNG自動車は無条件で走行可

アテネ

・ナンバープレートに応じて隔日で市の中心部への乗り入れを制限

・EV車、EURO5以降を満たし、CO2排出量が140g/km以下の自動車、EURO4を満た

し、CO2排出量が140g/km以下のLPG・CNG自動車は制限対象外

- 32 -

4-5. LP ガス事業者及び自動車メーカー等へのヒアリング調査

本調査では、欧州における LP ガス自動車普及の背景や今後の見通しについて、より実態

に即した情報を入手するため、EU の政策当局、業界団体、LP ガス事業者、改造キットメ

ーカーにヒアリング調査を実施した。訪問者、訪問先の詳細については、「2.実施概要」

に記載した通りである。

調査は 2 回に分けて実施され、1 回目の事前調査では EU 政策当局を中心にこれまでの政

策における LP ガス自動車の位置付けと今後の方向性について、2 回目の本調査では LP ガ

ス事業者や改造キットメーカーに対し、普及に向けたこれまでの取組みや背景等について

聞き取り調査を行った。なお一部の面談者に対しては事前に質問票を送付し、それに対す

る先方からの回答を中心に議論を行った。以下にその概要を記載する。

4-5-1.欧州 LP ガス協会(AEGPL)

① 組織概要

AEGPL は欧州の LP ガス関連事業者 33 社、欧州各国の業界団体 17 団体で構成されて

いる。WLPGA の事務局組織も一部兼ねており、EU 当局に対するロビイングを行って

いる。

② 欧州における LP ガス自動車の普及状況

LPガス自動車は欧州の西部地域では減少傾向であるのに対し、東部地域では増加傾向。

オランダでは LP ガス自動車が 2.4%を占めるが、古い車が多くなっている。

EU における代替燃料の車両数は全体の 5.4%(2015 年)で、そのうち約 80%を LP ガス

自動車が占めている。直近では CNG 自動車と EV 車が増加、LP ガス自動車は減少傾

向にある。

③ 政策支援の状況

フランスでは 2010 年から 2011 年にかけて 2,000 ユーロ/1 台の補助金があった。イタ

リアは改造費用として 500 ユーロの補助金(CNG も同様)。ベルギーでは優遇措置によ

りオートガスの燃料税がゼロ。ドイツでも 2008 年より燃料税軽減を実施中。

④ LP ガス自動車に対するイメージ

LP ガス自動車は一般的に、安全性が低く、品質が悪く、低所得者向けの車両であると

イメージされている。一方、車の 40%が LP ガス自動車であるトルコや 大の OEM 市

場であるイタリアでは、広告効果などにより評価が高くなっている例もあり、AEGPL

では認知度(public awareness)のさらなる向上が必要と考えている。

⑤ EU 当局の組織体制

EU の指令や規制は、官僚組織である「欧州委員会(European Commission)」が原案を

作成し、各国政府閣僚級メンバーによる「EU 理事会(Council of the EU)」と、EU 加

盟国の国民によって選ばれた議員(総数 751 名)によって構成される「EU 議会

(European Parliament)」によって決定される。策定には 2~5 年、更に決定には 2~

2.5 年ほどかかる。

- 33 -

DG MOVE は代替燃料車の普及促進、DG CLIMA は社会全体の温室効果ガスの削減、

Ministry of Industry が排ガス規制と、項目によって自動車の規制に係る所轄官庁が異

なっている。

当初 LP ガスは代替燃料でなかったが、AEGPL のロビー活動により認められた。

⑥ 燃料品質

PB比率等の燃料規格はEN589(European Standard for Auto Gas Quality)で規定され

ているが、これを義務化するかどうかは各国の裁量に任せられている(例えばドイツで

は義務化されているが、イタリアではそうではない)。大手メーカーでは原則順守して

いる。一方、品質に関心がない小規模な事業者もいる。

⑦ その他

LP ガス自動車普及の要素は、車両価格、燃料価格、中古車価格、消費者の認知の 4 つ。

今後の動静によって、LP ガス自動車の中古車価格はさらに下落する可能性がある。

中古車価格相場は CNG自動車 > LPガス自動車≒ディーゼル車 > ガソリン車の順。

AEGPL では 2015-2016 年にかけて Skoda, Fiat, Opel, Alfa Romeo, Kia の 5 車種によ

る実走行排気ガステストを実施。Kia 車を除き、Euro6 に好成績で適合していることが

確認されている(詳細は参考資料を参照)。

4-5-2.欧州自動車工業会(ACEA)

① 組織概要

ACEA は世界の自動車メーカー15 社、自動車関連団体 29 団体からなる自動車業界団

体。日本のメーカーではトヨタが会員となっている。政策提言、規制、情報提供、産

業界全体の戦略策定などの活動を行っている。

② 代替燃料車普及促進に対する ACEA としての方向性

EU では DAFI(Deployment Alternative Fuels Infrastructure)によって代替燃料車の

普及目標が定められているが、税制等を含めた各国の方針が極めて不透明であり、ま

た Euro6 及びポスト Euro6 の行方も不透明な中、自動車メーカーとしてどのようなパ

ワートレインを進めていけばよいのか、非常に難しい状況にある。どの車に重点を置

いて投資していくかは各社の判断に委ねられており、ACEA として統一的な見解を持

っているわけではない。

② OEM 車の購入方法

LP ガス自動車の OEM 車は FIAT 等自動車メーカーのホームページにもガソリン・デ

ィーゼル車との燃費比較とともに紹介されており、ユーザーはディーラーに LP ガス自

動車を注文すれば購入することができる。

4-5-3.EU 交通省 (DG MOVE)

① 充填口の統一問題

現在欧州の LP ガス自動車の充填口には、口径が異なる 4 種類のタイプが存在し統一さ

れていない(CNG 自動車は 1 種類に統一されている)。この点で LP ガス自動車はユー

- 34 -

ザー志向ではなく、「付加価値のある車」として見られていない。これに対し、DG MOVE

は LP ガス業界に充填口の統一化を働きかけたが、イタリアやポーランドをはじめとし

て業界から強い反対の声が上がった。以後この問題については、業界判断に委ねるこ

とにしている※。

※現在、WLPGA 及び AEGPL を含め業界で統一化の動きがある。

② EU 加盟国の政策決定

EU 加盟国は、税制、防衛、教育等の政策については、EU 指令の方針に沿いつつ、各

国で独自に決定することができる。従って、燃料税率についてはそれぞれの国の政策

に基づいて決定されている(EU 指令では 低税率を定めているのみ)。

DAFIは代替燃料車普及のためのインフラ政策についてEUとして取りまとめたもので

あるが、具体的な進め方は、各国政府及び自動車メーカーの判断に委ねられている。

現在、DAFI 実現に向けた各国の具体的な方策を取りまとめ中。今後 DG MOVE とし

ては、それらを取りまとめた上で、法制化に向けて欧州議会に諮っていく方針である。

③ その他

トヨタをはじめとする日本の自動車メーカーは、長期的な戦略に基づいて事業を進め

ており、特に EV 車の普及を掲げているが、残念ながら欧州メーカーにはそのような長

期的戦略に基づいた動きが見られない。

4-5-4.EU 環境省 (DG CLIMA )

① CO2規制

EU では、2021 年までに乗用車の CO2排出量を 95g/km(現行 120g/km、新車ベース)

に引き下げることが義務化されている。

DG CLIMA としては、2050 年のゼロエミッション化が究極的な目標。それが達成で

きるなら、燃料の種類は問わない。同省としては、どの燃料を伸ばすかという問題に

は関知しない。

CO2 排出量の測定方法は車両の排気筒からの排気ガスを測定するもの(Tail Pipe

emission)で、井戸元からの排出量(well-to-wheel)は関知していない。

4-5-5.イタリア天然ガス自動車協会 (NGV Italy)

① EU 指令と CNG 自動車

DAFI に基づく代替燃料車向けのインフラ投資の対象としては、EV 車か CNG 自動車

がある。ただし EV 車については、カリフォルニアなどで販売がうまくいっていないこ

ともあり、消去法で CNG 自動車をやるしかないと考えている。

CNG はバイオと組み合わせて使用できる可能性があるが、LP ガスにはその選択肢が

ないので※、その点 CNG の方が環境性の面で有利である。

※オランダの LP ガス事業者(SHV)では、フィンランドの NESTE 社がロッテルダムに

建設中のプラントから生産するバイオプロパンの購入契約を結んでおり、この指摘

は事実ではない。

- 35 -

イタリアでは CNG 業界のロビー活動が活発で、その結果、乗用タイプの CNG 自動車

には 5,000 ユーロ、CNG トラックには 20,000 ユーロの補助制度が実施されている。

一方、LPガス業界は活動をしてはいるものの、今のところ目立った影響は見られない。

インフラ投資の面では、とりわけパイプライン設備を取り扱っている企業(SNEM)によ

る CNG スタンドへの投資が活発。一方、LP ガススタンド数は既に十分であり、その

面で積極的な投資は行われていない。

政治家は EV 車の普及促進をやりたがっているが、メーカーとして現実的な処方箋は

CNG 自動車であると考えている。

② 保証問題

フィアット、フォルクスワーゲン、BMW、メルセデスは、後付けの改造に対し、エン

ジンのみならず、改造後の車両本体の保証をも打ち切るので、改造車の購入にはそれ

なりの覚悟を強いられる。

4-5-6.ランディ・レンツォ社(イタリア)

① 組織概要

LANDI RENZO 社は、LP ガス自動車及び CNG 自動車の改造用キットを製造するメー

カー。創業は 1954 年で自動車用部品の製造については 60 年以上の歴史を持つ。本社

のあるイタリアの他、13 ヵ国に 16 の支店を有しており、改造キット市場では世界でト

ップとなる約 30%以上のシェアを誇る企業である(第 2 位は WESTPORT 社でシェア

は約 27%)。資本金は 1,125 万ユーロ(約 14 億円)、売上高約 300 億円、従業員数約 850

名。

創業後、順調に業績を拡大し、世界約 70 ヵ国で事業を展開。2006 年には改造事業者

向けの教育や自動車文化の研究等を行う教育施設を設立。2007 年にイタリア証券取引

所に上場。2012 年より子会社を通じ、CNG スタンドの建設にも取り組んでいる。

主な事業は LPG・CNG 用システム開発部門、スタンド関連部門、自動車用オーディオ・

電子部品部門の 3 事業。

2014 年、本社脇の 1 万 6 千㎡の敷地に新しい研究開発センターを設立。コンポーネン

トの改良、LP ガスエンジンシステムの 適化、新型インジェクターや電子制御システ

ムの開発等を行っている。LP ガスエンジンの研究開発拠点としては世界 大規模。

同社は、OEM の供給先である OPEL や RENAULT 等の自動車メーカーと対等の立場

で、連携を図りながらキットの開発、性能試験、製造を行っている。そのため、後改

造であっても、同社製品の品質上の安定性に関する技術レベルは極めて高く、世界で

のトップシェアを維持している。

② イタリアにおける LP ガス自動車普及の背景

イタリアのユーザーは選択の際、ガソリン車に対してどれだけコストを抑えられるか

という点を も重視する。したがって、LP ガス自動車の普及のためには、ガソリンに

対して競争力のある燃料価格を確保することが も重要なポイントとなる。ガソリン

価格に対する優位性が低下すれば、その分 LP ガス自動車のシェアも減少する。

- 36 -

地域別では、ヴェネト州、エミリア=ロマーニャ州、ロンバルディア州の北東部地域

がシェア 10%以上と多くなっている。

③ 採算ライン及び改造費用

OEM 車の場合、採算ラインは 1 万 km 以内(約半年)である。

イタリアでの改造費用は 700~1,200 ユーロ、平均で約 1,000 ユーロ。そのうち燃料タ

ンク代は 100 ユーロ、その他はキット価格及び作業費となる。作業に要する時間はお

よそ 2 日。

④ 生産能力

同社における改造キットの生産数量は過去 3 年間の平均で約 86,000 台/年(イタリア国

内向けのみ)。そのうちおよそ 6 割が OEM 車(OPEL 社、DACIA 社がトップシェア)、

残りの 4 割が改造車である。改造部門は、直営の改造事業会社が 35 社、同社が技術的

に認定した系列企業が多数あり、それらの生産台数は平均 200 台/月程度。

⑤ 保証制度

OEM 車については、それを販売する自動車メーカーが保証する。一方レトロフィット

に対しては同社が 2 年間の保証を付けている。

⑥ LP ガススタンド

イタリアの LP ガススタンド数は、2005 年時点で約 2,300 ヵ所だったが、以後急増し

2015 年には約 4,000 ヵ所にまで増加。2016 年末から防犯面での条件を満たした SS に

限りセルフ化も認められる。一方、CNG スタンドは約 1,000 ヵ所程度で、イタリア全

20 州の内 8 州にしかなく、足りていないため、同社では今後増やしていく方針である。

なお CNG スタンドはガソリン等との併設は可能であるが、セルフ化についてはまだ実

現していない。

⑦ 認知度向上策

2010年前後にOPELが有名俳優(リチャード・ギア)を起用したテレビCMを制作。2011

年には車種のラインアップが 89 車種まで拡大したが、その後低下し、2016 年では 63

車種となっている。

⑧ 補助制度

2009 年、2010 年のイタリア政府による補助政策により OEM 車の需要が急増したが、

現在その制度は終了し、地方自治体の補助金制度があるのみである。一部の州で road

tax(100~150 ユーロ)の免除制度がある。一方、改造車に対しては 500 ユーロ(CNG 自

動車は 750 ユーロ)の補助金がある。

⑨ CO2排出量規制の影響

EU による Reg. No.443/2009 及び Reg. No.333/2014 による CO2規制には罰則規定が

あり、2019 年以降、基準の 95g/km を 1g 超過するごとに 95 ユーロ/登録 1 台の課徴金

を支払わなければならない。この規制が、ディーゼル代替として LP ガス自動車の需要

増につながる可能性がある。

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⑩ 今後の事業展開

同社では、今後の需要増加が見込まれるトルコやウクライナ等の東部地域を も重要

視している。日本については、市場規模がそれらに比べて圧倒的に小さく、また縮小

傾向にあることから、投資の優先度はかなり低くせざるをえないと考えている。

4-5-7.アラール社(ドイツ)

① 組織概要

ARAL 社はドイツの石油小売業 大手。ガソリンスタンド(SS)数は約 2,500 ヵ所、市

場シェア 21.5%でトップ(2 位は SHELL の 20%)。内直営の約 280 ヵ所の SS で LP ガ

ススタンドが併設されている。なおオートガス市場における同社のシェアは 4%(トップ

は SONSTIGE 社の 29%)。

② ドイツにおける LP ガス自動車普及の背景

ドイツで LP ガス自動車が普及した要因は、税制によって割安となった燃料価格の影響

が も大きい。車の大部分は後改造のバイフューエル車で、OEM 車はほとんどない。

ユーザーがバイフューエル車を選択する背景には、アウトバーンを長距離移動する際、

単一の燃料に依存することにはリスクが伴うと考えるという同国固有の事情がある。

LP ガス自動車の登録台数は 47 万 6 千台(2015 年実績)。2013 年にピークとなる 50 万

台を記録した以降、減少傾向となっている。

③ 自動車政策の見通し

ドイツでは今秋(2017年 9月)に総選挙が実施される予定であるが、そこで現政権(CDU)

か左翼政権(SPD)のどちらが勝つにせよ、環境政策は少なくとも現状維持か、あるいは

強化される見通しである。

政府関係者の間では、LP ガスよりも CNG の方が好まれる傾向にある。現在実施され

ている燃料税の優遇措置は 2018 年が期限となっているが、CNG については 2024 年

まで優遇措置を延長する方向で議論されているのに対し、LP ガスについては延長され

ない可能性が高くなっており、消費マインドの冷え込みにつながっている。

自動車の排ガスに含まれるCO2を 2021年までに平均で 95g/km以下とする規制につい

ては、現状概ね達成できる見込みである。ただし 2021 年以降規制が強化されれば、取

り得る選択肢としては EV 車しかなくなるので、そこで LP ガスか CNG にするかとい

う議論の余地はない。

ドイツ政府は 2016 年 5 月より EV 車の普及支援として一台当たり 4,000 ユーロを補助

する制度を開始したが、今のところ思わしい成果は上がっていない。また EV 車の月間

販売台数は現状 800~1,000 台あまりで、政策による方針とのギャップが大きく、それ

をどのようにして埋めるかが課題である。

④ CNG 自動車普及促進の課題

一方、CNG 自動車にも技術的な課題が多い。例えば、燃料品質の問題がある。CNG

燃料は供給事業者によって成分や熱量等のスペックがそれぞれ異なっており、品質が

安定していない。アウトバーンを高速で 300km 以上もの距離を走行するためには、さ

- 38 -

らに安定的な燃料品質の確保が必要である。国内の自動車メーカーが CNG 自動車の開

発にあまり積極的でないのも、そこに原因がある。この問題は、LP ガスについても同

様に当てはまる。なお BP(ARAL 社の親会社)では、自社基準により LP ガスの品質管

理を行っている。

また CNG スタンドの建設費が 25 万~30 万ユーロと高額なことも、スタンド事業者に

とって障害の一つである。

数ヶ月前に CNG 自動車のタンク爆発事故があり、消費者の間には CNG 自動車の安全

性に対する不信感が強い。同じガス体燃料ということで、LP ガス自動車もその影響を

受けている。

以上に加え、EV 車の急速な普及により、CNG 自動車の「橋渡し役」としての位置付

けが揺らぎつつある。

⑤ スタンド事業について

ARAL のスタンドの一部では CNG も供給しているが、ARAL としては場所を提供して

いるだけで、実際の運営は都市ガス事業者が行っている。

ドイツでは地上タンクも可能である中、BP では安全確保の観点から地下埋設タンクを

標準化している。CNG を含めて 10 年以上前からセルフ化している。

バリューチェーンの観点から、今後同社の SS に充電スタンドを設置することは考えら

れない。

4-5-8.SHV エナジー社 (オランダ)

① 組織概要

SHV Energy 社は、オランダの LP ガス小売大手。欧州を中心に南アメリカや東南アジ

アなど世界各国で事業を手掛ける多国籍企業である。主力の LP ガスの他、太陽光発電

やバイオエネルギー事業等の再生可能エネルギー分野にも取り組んでいる。年商約 60

億ユーロ(約 7,000 億円)。年間販売量約 700 万トン(推定)。

② オートガス市場に対するスタンス

EU による 2003 年の燃料 低税率導入以降、LP ガス自動車は環境にやさしいという

ことで台数を伸ばしてきたが、例えば 2014 年のオランダにおける優遇税制の縮小や、

ドイツの 2019 年以降の税制の動向など、現状は政策上の不透明感が強く、ヨーロッパ

全体として LP ガス自動車の位置付けは端境期にある。ゆえに、SHV として LP ガス

自動車に対し積極的に投資する状況にはない。

LP ガス自動車用の燃料のスペックを規定したものとして EN589 があるが、あくまで

もガイドラインであり、拘束力はない。同社では、民生用も工業用も自動車用も特に

区別せず、同じローリーで供給している。燃料のスペックは実際には各供給事業者の

基準によって決定されており、その意味で品質面での安定性に欠ける。そのことが、

自動車メーカーの開発の妨げになっている。CNG についても同様の問題がある。

③ LP ガス自動車に対する認知

イギリスにおける政策的な促進策としては、燃料税の優遇措置の他、一部大都市にお

- 39 -

ける通行税の免除などがあった。

需要としては、ユーザーが高級車の中古車を購入して LP ガス自動車化し燃費を改善さ

せることにより、比較的所得の低い層でも高級車を入手できる手段として、主に中古

車市場での引き合いが強かった。

LP ガス自動車に対するイメージは、「古い」「低所得者向け」など、よいイメージはな

い。かつてイギリス王室や政府高官(トニー・ブレア元首相)が、環境性 PR のため公用

車に LP ガス自動車を採用したこともあったが、結果的に悪いイメージを覆すほどの影

響力はなかった。

10 年前に比べてガソリン車の燃費が大きく改善している中、環境性の低い古い中古車

を LP ガス自動車に改造したとしても、その貢献度には限界があり、LP ガスだからと

いって環境に優しいとは一概には言えなくなってきている。

CO2等の環境規制については今後どうなるかわからないが、LP ガス仕様のプリウスハ

イブリッド(改造車)は、排ガス規制をクリアーするために有効と考えている。

- 40 -

5. EU 加盟諸国における LP ガス自動車市場拡大の要因と今後の行方

5-1. EU 加盟諸国における LP ガス自動車市場拡大の要因

本調査では、2000 年代以降の EU 加盟諸国、とりわけイタリアやドイツにおいて LP ガ

ス自動車の登録台数が飛躍的に増加してきた背景として、次に掲げる 4 つの要素が相互に

強く作用し合うことによって、インフラ整備を含めて LP ガス自動車市場を拡大させてきた

ことを詳細に論じてきた。

① 環境政策などによるオートガスに対する価格インセンティブ(税制優遇)

② ガソリン・軽油給油設備との併設やセルフ化などによるインフラ整備

③ OEM による新型モデルや改造車市場(アフターマーケット)の充実

④ 消費者に対する LP ガス自動車の認知度向上策

言い換えれば、今後日本においても LP ガス自動車市場を拡大させて行くためには、単独

の施策に絞った波及効果は限定的であり、前述の 4 つのサイクルを効果的に回していくた

めの総合的なアプローチが不可欠であると言える。

では実際に EU 加盟諸国では、この 4 つのサイクルを同時併行的に進めることによって

LP ガス自動車市場の拡大がもたらされたのかと言えば、必ずしもそうではなく、市場拡大

の直接の“引き金”となったのは、EU 委員会が 2000 年代前半に打ち出した「 低税率制」

の導入提案であり、そのなかに盛り込まれたガソリン価格や軽油価格に対するオートガス

への優遇措置であった23。結果的に EU としての統一制度の実現には至らなかったものの、

低炭素化社会実現に向けた切り札として、EU 加盟諸国間で LP ガスに対して寄せられた期

待は大きく、なかにはベルギーのようにオートガスへの全額税免除を行う国も現れた。ま

た今回詳細に亘る調査を行ったドイツでは、少なくとも 2018 年までの長期間に亘って LP

ガスに対する優遇税制措置の実施を国民にコミットしたことが、ユーザーに安心感を与え、

市場拡大の起爆剤となったことは疑いの余地はない。

EU 加盟諸国による LP ガス自動車への支援は燃料価格税制に止まらず、その後はガソリ

ンスタンド(SS)での LP ガスディスペンサーの併設(同一アイランド化)やセルフサービス化

といったインフラ面、あるいは LP ガス自動車への改造費用の補助や自動車税の免除(イタ

リア)、大都市での通行規制の免除(イギリス)といった様々な支援優遇策に拡充されてきた

ことは、本文でも述べてきたところである。

23 ドイツやフランスなどでは 低税率(125 ユーロ/1000kg、日本円換算で約 8.6 円/ℓ)付近に税率が維持

され、結果としてオートガス価格はガソリン価格の概ね 40~60%となっている。

- 41 -

5-2. EU 加盟諸国における LP ガス自動車市場の今後の行方

こうしたなかで、足元でのイタリアやドイツでの LP ガス自動車市場の動向としては、本

文 4-4 で論じたとおり、脱石油を主眼とする CNG 自動車や EV 車を軸としたインフラ整備

に向けた EU としての立法化の動き(DAFI)、さらには 2020 年を期限として自動車メーカ

ー別に課せられたテールパイプ(tail-pipe)ベースでの CO2 排出規制値の更なる強化の動

きによって、EV 車への舵取りの流れが強まっている。

また近年ではガソリン車・ディーゼル車の燃費性能や排ガス性能の向上に伴い、LP ガス

自動車が従来から享受していた環境特性に対する評価が薄められつつあることもあって、

石油系燃料から将来的な無公害車世界の実現に至るまでの橋渡し役(ブリッジ)として LP ガ

ス自動車が担った役割の重要性が後退しつつあることも懸念材料の一つだ。これは、現在

強力に普及促進に向けてロビー活動を展開している、同じガス体エネルギーである CNG 自

動車業界にとっても例外の話しではない。

このように、EU 諸国内ではオートガスに対する従来の支援姿勢が徐々に変わりつつあり、

その たる例として、オランダのように 2014 年以降のオートガスへの優遇税制措置を縮小

する国も出てきた。またドイツでも、長年に亘って続いてきたオートガスへの優遇措置が

2018 年を以っていったん終了となり、今後の行方は本年 9 月に行われるドイツ国会の総選

挙によって大きく左右されることが予想されている。こうした税制面での不透明感の増加

により、消費者の間には LP ガス自動車の新規購入や改造を手控える動きが出始めている。

加えて行政当局と欧州の LP ガス事業者が協力し合って規格統一化を目指すべきであっ

た LP ガス燃料規格も標準仕様の設定(EN589)に止まり、運用上はプロパン・ブタン比率の

みならず、硫黄分濃度を始めとする品質管理が燃料販売業者ごとに異なった形で委ねられ

ることになったことも、自動車メーカーが高性能 LP ガスエンジンの開発を進めるうえでの

障害になったとも言われている。こうした背景もあって、今や欧州の大部分の街中を走る

LP ガス自動車の大半が、年数が経過したガソリン中古車を用いた改造車であり、「LP ガス

自動車はチープで古臭い」とのマイナス印象を消費者に与える要因となっていることも事

実だ。EU 加盟諸国での LP ガス自動車市場はまさに分水嶺の時期に差し掛かっていると言

えよう。

- 42 -

- 43 -

6. 日本での LP ガス自動車市場拡大に向けて

欧州での実態を踏まえると、LP ガス自動車市場を拡大させていくうえには、①環境政策

などによるオートガスに対する価格インセンティブ(税制優遇)、②ガソリン・軽油給油設備

との併設やセルフ化などによるインフラ整備、③OEM による新型モデルや改造車市場(ア

フターマーケット)の充実、④消費者に対する LP ガス自動車の認知度向上策の 4 つのサイ

クルを同時併行的に進めて行くことが重要である。翻って日本においては、4 つの重要ファ

クターの実現に向けた取り組みが何れも欧州と比べて不十分である現状は否めず、その解

決に向け、以下に掲げるような規制緩和等を進めて行く必要がある。

1) オートガス価格インセンティブの改善

欧州ではオートガスの 低税率が「石油代替燃料推進」の政策的な観点からガソリンや

軽油と比べて低く設定されており、LP ガス自動車台数の伸びが著しいドイツ、イタリアで

は、燃料価格は、対ガソリンで約 40%、対軽油で約 45~50%程度となっている。日本での

燃料価格は、対ガソリンで約 65%、対軽油で約 75%と EU に比べて、価格インセンティブ

が小さくなっている。

日本でも燃料課税に関してはガソリンや軽油などに比べて、オートガスは優遇されてい

るものの、今後 LP ガス自動車の市場拡大を図るためには、CNG との比較も考慮しながら、

価格インセンティブ改善に向けた取組みを検討する必要がある。

2) SS との併設(ガソリン・軽油給油設備との同一アイランド化)およびセルフサービス

化の許認可

欧州では、LP ガス自動車は主に自家用乗用車として消費者に利用されており、逆に日本

の需要の大部分を占めているタクシー用にはほとんど使われていない。そのような背景の

下、欧州の LP ガススタンドはガソリン・軽油給油設備(SS)と併設になっていることが一般

的で、消費者は SS で給油するのと全く同じように、オートガスの充填もできるようになっ

ている。またおよそ半数の国でセルフ充填が認められるなど、日本における SS とほぼ同等

の利便性が図られている。

それに対して、日本の LP ガススタンドは主としてタクシー事業者向けになっていること

から消費者にとって場所が分かりづらい。またオートガスと SS の同一アイランド併設が消

防法によって規制されているため、欧州のように消費者が SS でオートガスを充填すること

ができず、セルフ充填も認められていない。加えて、欧州では各燃料の価格が SS に掲示さ

れており、それによって消費者が簡単に価格情報を取得し比較することができるようにな

っている点も、日本と大きく異なっている。

今後日本において LP ガス自動車の市場拡大を図っていくためには、タクシーを始めとす

る従来の業務用用途に加え、自家用乗用車向けの需要を伸ばしていく必要がある。そのた

めには、日本においても欧州と同様に、タクシー事業者以外の消費者でも SS において気軽

にオートガスが充填できるような体制の整備が必要であり、その観点から LP ガスと SS と

- 44 -

の併設やセルフサービス化等の規制緩和が必要である。

3) 改造費用の引き下げに向けた LP ガス燃料タンクの欧州並みの規制緩和等

欧州では、自動車メーカーが改造キットメーカーと開発段階から連携し、高品質かつ多

様な車種の LP ガス自動車が販売され、消費者は系列ディーラーでガソリン車やディーゼル

車と同じように LP ガス自動車を購入することができる。それに対し日本では、主にタクシ

ー向けのごく少数の車種が生産されているに留まり、消費者にとって魅力のあるラインア

ップとなっておらず、また LP ガス自動車を取り扱っている事業者も限定されているため、

欧州のように多様な車種から選択しながら LP ガス自動車を購入することができない。

一方改造車については、イタリアでは燃料タンク費用(約 100 ユーロ)を含め、改造費用が

1,000 ユーロ(約 13 万円)程度に抑えられ、ガソリンとの価格差では 1 万キロ程度の走行

で相殺出来る状況にある他、2 年間の品質保証も与えられ、消費者の間には改造車への高い

安心感が浸透している。これに対し、日本では 低でも改造費用に 50~60 万円を要し、欧

州では一般的なスペアタイヤ空間を用いたコンパクトな燃料タンクの利用も認められない

日本の現状では、消費者に対するインセンティブが働いているとは言えない。改造費用の

更なる低減化に向けた取組みを進めて行くうえでは、燃料タンクの問題を含めた規制緩和

等が必要である。

4) 消費者に対する LP ガス自動車の認知度向上策

欧州では LP ガス自動車は自家用向けが多いことから、TV コマーシャル等によるマスメ

ディアを利用した消費者向けの大規模なプロモーションが実施されており、LP ガス自動車

に対する認知度向上に大きな役割を果たしている。それに対し日本では、タクシーや配送

車等の業務用ユーザーが主であったこともあり、一般向けの広報活動については自動車関

係の展示会やインターネット等を通じて展開してはいるものの、効果は限定的であった。

今後自家用乗用車向けの需要を伸ばしていくためにも、これまでのような地道な広報活

動も継続しながら、マスメディアやインターネットを通じた消費者向けの広報活動をより

積極的に展開し、LP ガスの環境性や経済性等について訴求を図ることも検討していく必要

がある。

- 45 -

おわりに

このような規制緩和等を進めて行くうえで、プラグインハイブリッド車に代表されるよ

うな低燃費・低公害車の普及が進んでいる日本の現状において、税制面での LP ガス燃料に

対するガソリンや軽油価格との一段の差別化(価格競争力の向上)や改造車に対する補助

支援策の実施、あるいは SS での LP ガスディスペンサーの併設に向けた規制緩和といった

方策を推し進めていくためには、政策的に「今なぜ LP ガス自動車市場の拡大を目指すの

か?」という視点に立ち戻った再検証が求められる。

その観点でひとつ重要だと考えられることは、日本が抱えている自然災害への対応力の

強化(レジリエンス)を視点に据えた LP ガス自動車普及戦略の再構築であろう。東日本大

震災で見られたように、被災地ではガソリンや軽油供給に重大な支障をきたしたなかにあ

っても、タクシーを始めとする LP ガス自動車は、分散型エネルギーとして有する供給面で

の特性を活かし、救援活動や被災地復旧に大きな役割を果たした。これまでも、例えば石

油製品利用促進対策事業において、レジリエンス的観点からの普及促進が図られてきたが、

さらなる拡大を目指すためには、公共輸送機関としての役割を含めた LP ガス自動車市場の

再整備を進めて行くことの重要性を行政当局にこれまで以上に強く訴え、国民生活の安

心・安全確保に資するサプライチェーンの強化に繋げる取組みが必要である。

また、レジリエンス対応の一環として、家庭用燃料としても輸送用燃料としても使用可

能な LP ガスの特性を活かし、過疎化対策への取組みのひとつとして議論が奨められている

「コンパクトシティ構想」においても、LP ガス自動車を有効な移動手段として定義付けて

いく取組みも重要だ。

明るい話題も出てきた。トヨタ自動車が年内に市場投入を予定している「ジャパンタク

シー」の登場だ。パワートレインには LP ガスを用いたハイブリッドシステムが搭載され、

エコカー減税などの優遇措置が受けられることに加え、電動スライドドアの導入によって

乗り降りの利便性も従来のセダンタイプのものに比べて格段に向上している。

2020 年の東京オリンピックの開催に向けて、街中にユニバーサルデザイン(UD)タクシー

が盛んに見られる日も遠くないと思われる。ジャパンタクシーの登場を契機に LP ガス自動

車が次々に市場投入され、人々により身近な存在になってくれば、LP ガス自動車が持つ環

境性や経済性への関心も高まる可能性があり、それによって LP ガスの需要喚起の契機とな

っていくことも期待される。

- 46 -

後に、2 回に亘る現地調査での面談アレンジやデータ提供等、本調査に惜しみのない協

力を頂いた欧州 LP ガス協会(AEGPL)の Samuel Maubanc 氏と Cecile Nourigat 氏に感謝

致したい。

参考資料

① 欧州 LP ガス協会

Meeting between AEGPL and the Japan LP Gas Association

Brussels, 21 November 2016

Your schedule

Monday 21 November13.30‐15.30: Meeting with AEGPLPossibility to arrange a visit to a LPG filling station with Samuel Maubanc

Tuesday 22 November9.00‐10.00: Meeting with Petr DolejsiMobility & Sustainable Transport DirectorEuropean Automobile Manufacturers' Association – ACEA

11.00‐12.00: Meeting with José Fernandez Garcia and Hugues van HonackerPolicy officers, Unit on Sustainable and Intelligent TransportDG MOVE, European Commission

12.30‐14.00: Lunch

15.00‐16.00: Meeting with Alexandre PaquotHead of unit, Unit on Road TransportDG CLIMA, European Commission

Autogas in EuropeOverview

Alternative fuels in the EU

Alternative fuels in the EU

Top autogas markets

Top 10 autogas markets in Europe (volumes)

Top growing markets in Europe (volumes) ‐ 10+% growth compared to 2014

1. Turkey2. Poland3. Italy4. Ukraine5. Germany6. Bulgaria7. Romania8. Serbia9. Greece 10. Netherlands

1. Kazakhstan2. Greece3. Macedonia4. Tajikistan5. Spain6. Bulgaria7. Czech Republic8. Ukraine9. Slovenia10. Turkey

50 58

207

2137

135 2914

490

400

476

Number of LPG vehicles in European countries and evolution(thousand vehicles)

4272

190

180

Autogas fleet

78446107

2010 2015+28%

2000

Markets in decline (compared to 2014)Markets in growth (compared to 2014)

179

112

85

87

Share of LPG cars in total passenger car park, 2014

1.1% 0.2%

5.3%

0.4% 14.2%

15.6%

5.9%

1.1%

3.8%

2.4%

0.8%0.2%

0.7%

5.6%

3.5%

0.2%

1.8%

0.2%

8.6%6%

1.2%

3%

340 807 3767

1400 5420

2900

850

7000

1200

1750

Number of Autogas filling stations in the EU 

30011

2010 2015+8%

175050

509

310

1100

42

600

67

210690

210

100

27809

Network in decline (compared to 2014)Network in expansion (compared to 2014)

European Union legislation on Autogas

Introduction to the EU

Co‐decisionEuropean ParliamentAmends and decides751 elected MEPs

EuropeanCommission

Proposes and draftslegislative proposals28 Commissioners

Council of the EUAmends and decidesNational government

ministers

EuropeanCouncil

Provides politicaldirection

Heads of states

Introduction to the EU

Share of competences between the EU and Member States

Exclusive EU competences

• Customs

• Competition

• Trade

• Single currency

Sharedcompetences

• Single market

• Transport

• Environment

• Climate

• Etc

National competences

• Fiscal regimes

• Defense

• Education

• Employment

• Etc

Incentives for Autogas

Fiscal/Financial Regulatory Other

Excise‐duty exemption or rebate Mandatory purchase requirements for public and/or private fleets

Government own‐use

Road‐tax exemption or rebate Standards to harmonise refuelling facilities

Information & public awareness campaign

Vehicle sales‐tax exemption or income/profit tax credit

Vehicle conversion standards Voluntary agreements with OEMs

Tax credits for investment ininfrastructure and R&D

Exemptions from city‐driving restrictions

Direct funding for R&D

Grants/tax credits for conversion/acquisition

Exemption from parking/road‐use charges

The EU supports and promotes harmonisation but incentives are set up at national level

EUROPEAN COMMISSION

European Commission structure

European Commission structure

CABINET CABINET

MIGUEL ARIAS CANETECOMMISSIONER FOR CLIMATE AND ENERGY

VIOLETA BULCCOMMISSIONER FOR TRANSPORT

DG CLIMADirector-General: Jos Delbeke

Dir C — Climate Strategy, Governance And Emissions from non-trading sectors

Director: Artur Runge-Metzger

Unit C.4 – Road TransportHead of Unit: Alexandre Paquot

DG MOVEDirector-General: Henrik Hololei

Dir B: investment, innovativeand sustainable transportDirector: Herald Ruijters

Unit B.4 – Sustainable and Intelligent Transport

Head of Unit: Claire Depre

EU legislation – Alternative fuels – DG MOVE

Directive on Alternative Fuels Infrastructure Deployment Adopted in 2014 Objective: Support the uptake of alternative fuels – focus on building‐up 

refuelling infrastructure  In the process of being implemented: National Policy Frameworks

Key elements for Autogas: Clear definition of alternative fuels incl. LPG

“‘alternative fuels’ means fuels or power sources which serve, at least partly, as a substitute for fossil oil sources in the energy supply to transport and which have the potential to contribute to its decarbonisation and enhance the environmental performance of the transport sector. They include, inter alia: electricity, hydrogen, biofuels, synthetic and paraffinic fuels, natural gas (CNG and LNG) and LPG”

Recognition that LPG infrastructure is well developed”LPG infrastructure is relatively well developed, with a significant number of filling stations already present in the Union (approximately 29 000)”

Methodology for fuel price comparison

Directive 2014/94/EU 

Art. 7 para. 3: Where appropriate, and in particular for natural gas and hydrogen, when fuel prices are displayed at a fuel station, a comparison between the relevant unit prices shall be displayed for information purposes. The display of this information shall not mislead or confuse the user. 

In order to increase consumer awareness and provide for fuel price transparency in a consistent way across the Union, the Commission shall be empowered to adopt, by means of implementing acts, a common methodology for alternative fuels unit price comparison. 

EU legislation – Alternative fuels – DG MOVE

Background: According to DAFI Directive, a comparison between the relevant unit prices 

shall be displayed for information purposes. The Commission shall come up with a methodology

DG MOVE commissioned to Dena a study on possible options

AEGPL actions: Participated in stakeholders’ workshop Developed written comments Coordinated positions with FuelsEurope and UPEI

Next steps: Finalisation of Dena study Development of a Commission proposalfor a methodology (2017) Adoption by Member States (2017)

EU legislation – Alternative fuels – DG MOVE

Methodology for fuel price comparison

Decarbonisation package (July) ‐> European Strategy for Low‐Emission Mobility

3 main priorities: Higher efficiency of the transport system, incl. efficient and fair pricing Low‐emission alternative energy for transport, in particular renewable 

energy sources Low‐ and zero emission vehicles, which needs to be clearly defined and 

integrated in the post 2020 strategy for LDV and HDV

Commission launched 2 public consultations: on the reduction of CO2 emissions from cars and vans post 2020 on the monitoring of heavy‐duty vehicles CO2 emissions

Legislative proposals expected in 2017

EU legislation – Transport Decarbonisation – DG CLIMA

AEGPL calls upon the European Commission to:

Fully recognise the potential of alternative fuels as defined in DAFI Introduce measures to promote all alternative fuels (tech.neutral) Low‐emission vehicles should be defined upon objective criteria, to reward 

technologies on the basis of their environmental performance Favour a well‐to‐wheel approach, or even a life‐cycle approach, to transport 

emissions Favour solutions that improve both CO2 and pollutant emissions Actively support the establishment of incentives (e.g. fiscal, financial and non 

financial) at Member States level for cleaner vehicles Develop tools to address emissions from the existing vehicle fleet e.g. fuel 

switching

EU legislation – Transport Decarbonisation – DG CLIMA

EU transport decarbonisation agenda and LDV / HDV CO2 emissions

Self service stations ‐ OverviewCountry Status Specific requirements

Germany AuthorisedAdditional requirements for unattended operation are for example the usage of a breakaway coupling, sort of an “emergency call” system where e.g. the user can push a button and talk to competent person (24/7), emergency shut off installed….

Denmark Not authorised

France AuthorisedMandatory measures: emergency stop button; gas detection devices; communication device to alert a competent person in case of  incident; system to stop the gas flow from outside the filling area

Greece Not authorised

Ireland Not authorised but under consideration

Italy In the process of being authorised

Project under discussion:Specific device in the station and in the vehicle, connected by Wi‐fi, ensuring:‐ the identification of the vehicle‐ that the tank is still valid‐ the notification of refuelling issues

The Netherlands Not authorised

Spain Not authorised The legislation currently says that operation personnel must be available to act under any emergency situation or if they are required by any driver, this is why unmanned stations are not authorised

UKAuthorised ‐ unmanned filling stations are not regulated as such but fall under industry guidance

If the LPG filling station is on a unmanned petroleum forecourt, the following conditions must be met:a) The site has continuous remote monitoring 24 hours b) The site can be shut down remotely in emergency c) There must a be emergency response on site is applicable within a defined period.

Czech Republic

Authorised in principle but widely recognised as being not authorised due to a wrong interpretation of the standard

Slovenia Authorised, but rare in practice

Portugal Not authorised

LPG cars in underground parking ‐ Overview

Austria, Belgium, Bulgaria, Denmark, France, Germany, Greece, Italy, Luxembourg, Netherlands, Poland, Portugal, Slovenia, Spain, Switzerland, UK, Ukraine

Hungary, Czech Republic, Turkey

But some challenges in practice !

Fuel specifications

Autogas in Europe is a mix of butane and propane Some countries progressively tend towards a 100% propane supply (e.g. 

Portugal, France) EN 589 is generally followed but not mandatory in all European countries EN 589 mandates:

Minimum octane 89 Minimum 60% propane in winter Minimum 40% propane in summer

② ランディ・レンツォ社

© LANDI RENZO SPA 2016.

DRIVING LPG VEHICLES IN ITALYcurrent overview and future scenarios 

Meeting with JLPGA, Landi Renzo headquarter – February 24, 2017

THE COMPANY, THE GROUP

World leader in a profitable niche

• World leader manufacturer in designing and manufacturing of alternative fuel components, solutions and systems for use in transportation, industrial and power generation

• Market share over 30% in a pretty fragmented market: follower at approx. 27%, while remaining players are local and small companies offering technologically simpler products

• Expected growing demand due to increasing governmental pressure for the reduction of polluting emissions

International presence with a strong

distribution network

• International direct presence (16 subsidiaries in 13 countries)

• Strong distribution network (products distributed in more than 70 countries) with focus on high growth profile countries

Flexible and efficient business model

• Consolidated expertise in outsourcing the bulk of the production which allows the company to focus on the most strategic activities:• R&D• Production of high value added components• Quality control• Sales and marketing

Excellence in technological

innovation

• Constant technological innovation aimed at:

• Strengthening the traditional technology leadership in gas conversion systems

• Expanding the range of vehicles convertible to alternative fuels

Consolidated relationships with

leading OEM customers

• Consolidated relationships with OEM manufacturers like FCA, RSA, GM, PSA, Volkswagen, Suzuki and many others, offering them customized components and systems for their models

3

Executive SummaryA leading player with a strong international exposure

Brands

Business description

Key operating data

Gas(System for Cars)

Gas(Distribution System)

Other Businesses

LPG CNG

4

Business OverviewIntroduction

• LPG and CNG systems for cars and heavy duty vehicle ("HDV") targeted on:

• OEM manufacturers

• AM distributors and workshops

• Main products: reducer, ecu, multivalve, rail injectors 

• Worldwide production network

• SAFE (Oil & Gas): equipment destined to oil & gas applications

• Business acquired in 2012

• Constructions of various kind of CNG stations

• Extremely complementary to core business, being the forerunner of  evolutions in system for car sector

18 sound: loud speakers for OEM manufacturers and after market distributors

Med: car alarms and electronic components

• ~30% market share 

• 4 brands to fulfill all market segments

• More than 70 countries served

• More than 5,000 customers

• Modular equipment dedicated

• 200+ customers, over 44 countries

• 200+ projects

• 75% export sales on total turnover

• More than 500 customers

Geographical FootprintInternational product presence

Sales

Branches

SNAPSHOTS ABOUT ITALY: AN LPG SUCCESS STORY

6 QUESTIONS THAT DESERVE ANSWERS

1. HOW MUCH DOES OIL PRICE AFFECT FUEL PRICES ?

2. HOW MUCH DO TAXES AFFECT FUEL PRICES ?

3. HOW MUCH DO FUEL PRICES AFFECT FUEL MARKET SHARE ?

4. IS IT JUST A MATTER OF FUEL PRICE OR ADVERTISING AND PRODUCT PORTFOLIO AS WELL ?

5. WHAT ABOUT SUBSIDIES ?

6. WHAT ABOUT CO2 EMISSIONS ?

1. HOW MUCH DOES OIL PRICE AFFECT FUEL PRICES ?

OUTPUT: LPG FINAL PRICE IS LESS AFFECTED BY OIL PRICE

TOP OIL PRICE SINCE 2008

2. HOW MUCH DO TAXES AFFECT FUEL PRICES ?

OUTPUT: LPG FINAL PRICE IS LESS AFFECTED (IF COMPARED TO GASOLINE AND DIESEL)BY OIL PRICE BECAUSE OF LOWER TAX %

3. HOW MUCH DO FUEL PRICES AFFECT FUEL MARKET SHARE ?

OUTPUT: IS THE LPG MARKET SHARE SO MUCH LINKED WITH LPG YEARLY SAVING OR …

3. HOW MUCH DO FUEL PRICES AFFECT FUEL MARKET SHARE ?

… IS MAYBE MORE A MATTER OF FINAL USER PERCEPTION LINKED TO GASOLINE AND DIESEL PRICES ?

4. IS IT JUST A MATTER OF FUEL PRICE 

OR ADVERTISING AND PRODUCT PORTFOLIO AS WELL ?

Starting from September 2015 only Euro 6 car sale was allowed; some OEM were not offering LPGEuro 6 models at that time, but later on.

5. WHAT ABOUT SUBSIDIES ?

• ROAD TAX EXEMPTION

• RETROFIT SUBSIDIES

• FREE ACCESS TO RESTRICTED‐TRAFFIC ZONE

• ALLOWED TO MOVEWHEN OTHER FUELS ARE BANNED, DUE TO POLLUTION REASON (WINTER MONTHS)

SUBSIDIES TODAY: PATCHY ! (DEPENDS ON CITIES GOVERNMENTS)

5. WHAT ABOUT SUBSIDIES ?

6. WHAT ABOUT CO2 EMISSIONS ?

EURO 3

LPG 71,7 %

GASOLINE 43,5 %

DIESEL 65,3 %

2015 IN USE CARS

LPG 114 g/km

Cars are responsible for around 12% of total EU emissions of carbon dioxide (CO2), the main greenhouse gas.EU legislation sets mandatory emission reduction targets for new cars. Targets are different for each car producer and linked to sold car weight.By 2021, phased in from 2020, the fleet average to be achieved by all new cars is 95 grams of CO2 /km. This means a fuel consumption of around 4.1 l/100 km of gasoline or 3.6 l/100 km of diesel. The 2021 targets represent reduction of 40% compared with the 2007 fleet average of 158.7g/km.If the average CO2 emissions of a manufacturer's fleet exceed its limit value, the manufacturer has to pay an excess emissions premium for each car registered. From 2019, the cost is equal to €95 from the first gram of exceedance onwards.With Diesel forecasted decrease of registrations after Dieselgate, LPG is going to represent a big chance in order to help Car Producers reducing CO2 emissions and avoid penalties.

FEW MORE SNAPSHOT

© LANDI RENZO SPA 2016.

HOW MANY OF CAR PRODUCERS 2016 REGISTRATIONS WERE LPG REGISTRATIONS ?

Italy

© LANDI RENZO SPA 2016.

THE ITALIAN MARKETSTILL A GROWTH AFTER 2009/2010 SUBSIDIES

© LANDI RENZO SPA 2016.

THE LPG FLEET SHARETHE LPG FILLING NETWORK DISTRIBUTION

> 10%

8% >< 10%

6% >< 8%5% >< 6%

3% >< 5%2% >< 3%< 2%

ITALY5,7%

VEN

EMR

LOMPIE

TOS

LPG FLEETSHARE x AREA

REGIONALLPG FLEET % andFILLING NETWORK %vs ITALY

© LANDI RENZO SPA 2016.

LPG AND CNG:THE FILLING NETWORK DRIVES THE GAP

© LANDI RENZO SPA 2016.

A TOYOTA CONVERSION !

TOYOTA PRIUS PLUS 1.8 HYBRID + LPGGASOLINE LPG

CO2 95 g/km 85,5 g/km

Combined fuelconsumption 4,1 lt/100 km 4,9 lt/100 km

100 km cost (€) 5,95 2,43 (‐59%)

© LANDI RENZO SPA 2016.

ありがとうございます

③ アラール社

Overview:- Fuels policy in Germany- BP and its Autogas business Meeting with Mr. ArahataBerlin, 26.1.2017

www.bmvi.de24. Februar 2017

Energiekonzept Bundesregierung

Government objective: Reduction of final energy consumption

www.bmvi.de24. Februar 2017

Verkehrsprognose 2030

Government forecast: Strong transport sector growth till 2030

Drivers of „Verkehrwende“ (= transformation of transport sector

Dieselgate1

2

3

Paris Climate Summit

/decarbonisation

EU objectives 2020-2030;

FQD 7a/ILUC/AFID Directives

CO2 gap and higher than

expected consumption

Poor performance of

alternative fuels4

New and ambitious GHG

quota from 2015

5E-mobility objective 2020

1 Mio. passenger cars

6

Significance for BP

• Higher political risk• Adapting lobby strategy• Scope for new business opportunities and partnerships?

7

Climate Protection Plan 2050

New ordinances for GHG Quota

Public Investment into infrastructure

Extensive financial support for E-Mobility

Key actors

Government: BMVI vs. BMUB vs. BMWI vs. BMF

NGOs: Project Renewbility, Agora Verkehrswende

NCP 2050 – Emission reduction requirements of various sectors

5

NCP 2050 – Impact on passenger car C02 emissions:

6

Assuming no change in truck emissions, passenger car emissions need to decrease

by 72% to meet NCP 2050 objective!

CNG and Autogas Update

• Both fuels are stagnating

− Slogan „natural gas as a bridge“ may have lost traction

− VW safety incident at Aral site

− Autogas for German OEMs no option

• Tax reduction for CNG aund Autogas is running out at the end of

2018.

− Protracted inter-ministerial negotiations on a possible

continuation beyond 2018

− Political bias in favour of CNG

− BP lobbying against discrimination of Autogas

− How financed?

• Potential opportunity: use LPG to generate tickets under GHG

Quota Act

7

Aral – Retail market leader

8

• 21% market share

• Sales: 7,2 million t

• Approx. 2,500 retail stations

• More than 1.6 million customers a day

• 90 % brand awareness

• The Aral brand stands for:

- Top fuels and lubricants quality

- Customer-focused services

- Car wash, shop and B2B business

- Positive service station experience

• CNG and LPG expand Aral’s fuels offer

• Aral is a member in the PAYBACK network (Germany’s

largest loyalty programme)

Neues Foto (Dirk Sauer)

Status: End of 2014

Number of petrol stations in Germany

9

Market share by sales

10

LPG – clean and efficient

• Sale of Propan, Butan, blends and Autogas

• Rapidly establishing a nationwide Aral Autogas retail site network

• Market share of more than 20 % in Germany

• Customer Group: LPG suppliers, traders, (chemical) industry, filling stations

• Excellent supply channels thanks to five refineries in Germany and high-class import infrastructure spanning several European terminals

11

④ 排気ガス試験結果の概要 (欧州 LP ガス協会)

Samuel Maubanc General Manager, [email protected]

Up to 16% CO2 emissions saving compared to petrol;

If 10% of the car fleet in Europe was LPG, would result in 350 million tonnes of CO2avoided, and a reduction in external cost (e.g. medical treatment, premature deaths,etc.) of pollutant emissions of over 20 billion euros;

From a well-to-wheel perspective (including emissions from production anddistribution of fuels, in addition to tail-pipe emissions), GHG footprint respectively21% and 23% lower than petrol and diesel - cf the EU Fuel Quality Directive;

LPG proven benefits for climate and air quality

Up to 96% less NOx (Nitrogen Oxide) than diesel and 68% less than petrol

Almost no particulate matters and black carbon, contrary to diesel whose fumes were classified as carcinogenic by the World Health Organisation in 2013;

THE GAME CHANGER

The European industry’s response

Clarify Autogas vehicles’ performance in terms of CO2 and pollutant emissions

Proactive testing programme undertaken by the LPG industry, as a commitment to transparency and accuracy

Overcome the limits of tests in laboratories by reproducing real driving conditions

Based on state-of-the-art test procedures, RDE and WLTP, to become mandatory in the EU in September 2017

Make it possible to compare the environmental performance of Autogas with traditional fuels (diesel and gasoline)

Measure simultaneously a number of GHG and pollutants: CO2, CO, NOx, HC, particle number

RDE: Real Driving Emissions, ruled by Commission

Regulation (EU) 2016/646

WLTP/C: Worldwide harmonized Light vehicles

Test Procedures/Cycle

CO2: Carbon Dioxide

CO: Carbon Monoxide

NOx: Nitrogen Oxides

HC: Hydrocarbons

5 vehicles tested (in 2015-2016)

Skoda Octavia: Euro 6 homologated; LPG system retrofitted (Port Injection); mileage of 74,000 km

Alfa Romeo Mito: Euro 5 homologated; LPG system retrofitted (Port Injection); mileage of 65,000 km

Opel Astra: Euro 5 homologated; original LPG vehicle from manufacturer (Dual injectors); mileage of 71,000 km

Fiat 500L: Euro 6 homologated; original LPG vehicle from manufacturer (Port Injection); mileage of 6,300 km

Kia Sportage: Euro 5 homologated; LPG system retrofitted (Direct Injection); mileage of 27,000 km

Methodology (1)

Tests undertaken by independent experts in two different countries: the University of Applied Sciences in Saarbrücken, Germany, and the engineering consultancy V-Motech in France

Emission data collected by a Portable Emission Measurement System (PEMS) fitted on the cars

Series of at least three tests on each model and in each fuel mode (LPG, gasoline and diesel) to guarantee quality, according to the provisions of the RDE Regulation, following a specific route with urban, rural and motorway segments

Series of tests on WLTP/C for comparison purposes

Methodology (2)

Results overview

Emission levels in comparison with Euro 6 limits

0

1

2

3CO

NOx

HC

PN

Alfa Romeo Mito

0

1

2

3CO

NOx

HC

PN

Fiat 500L

PN = 8.6 times the Euro 6 limit

0

1

2

3CO

NOx

HC

PN

Skoda Octavia

0

1

2

3CO

NOx

HC

PN

Opel Astra

LPG

Gasoline

Euro 6

Diesel

0

1

2

3CO

NOx

HC

PN

Kia Sportage

NOx = 5.8 times the Euro 6 limit

PN = 8.3 times the Euro 6 limit

* Euro 6 PN limit applicable to new vehicles with direct injection engines from 1 September 2017

Conclusion

Autogas vehicles, even older converted cars, bring significant reductions in NOx and particles emissions when compared to equivalent diesel and gasoline models respectively

The WHO’s air quality guidelines clearly identify NOx and particles emissions from transport as causes of negative health effects

In addition, Autogas cars also bring a 10-20% CO2 gain compared with gasoline equivalents, helping Europe reaching its climate change objectives

Key results for the Autogas vehicle compared to gasoline

CO2 CO NOx HC PN

-13% -45% Similar Similar -90%

Key results for the Autogas vehicle compared to diesel

CO2 CO NOx HC PN

Similar Higher but

below Euro 6

-98% Similar and

below Euro 6

Higher but

below Euro 6

Detailed RDE test results

RDE tests - CO2 emission results

0

50

100

150

200

AlfaRomeo

MitoGasoline

Fiat 500LGasoline

SkodaOctavia

Gasoline

OpelAstra

Gasoline

KiaSportageGasoline

AlfaRomeo

Mito LPG

Fiat 500LLPG

SkodaOctavia

LPG

OpelAstra LPG

KiaSportage

LPG

OpelAstraDiesel

CO

2 (

g/km

)

- Gasoline models average value- LPG models average value

- 13%

LPG cars emit in average 13% lessCO2 than equivalentgasoline models

RDE tests - NOx emission results

Euro 6 limit

LPG cars emit in average 98% less NOxthan the equivalentdiesel model

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

AlfaRomeo

MitoGasoline

Fiat 500LGasoline

SkodaOctavia

Gasoline

OpelAstra

Gasoline

KiaSportageGasoline

AlfaRomeo

Mito LPG

Fiat 500LLPG

SkodaOctavia

LPG

OpelAstra LPG

KiaSportage

LPG

OpelAstraDiesel

NO

x (m

g/km

)

RDE tests - NOx emission results

Euro 6 limit

LPG cars emit in average 98% less NOxthan the equivalentdiesel model

- Gasoline models average value- LPG models average value

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

Opel Astra Diesel Average Gasoline Average LPG

NO

x (m

g/km

)

NOx emissions

RDE tests – PN emission results

Euro 6 limit

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

AlfaRomeo

MitoGasoline

Fiat 500LGasoline

SkodaOctaviaGasoline

OpelAstra

Gasoline

KiaSportageGasoline

AlfaRomeo

MitoLPG

Fiat 500LLPG

SkodaOctavia

LPG

OpelAstraLPG

KiaSportage

LPG

OpelAstraDiesel

PN

(E+

11

)

LPG cars emit in average 90% less PN than equivalentgasoline models

*PN limit applicable to new vehicles with direct injection engines from 1 Sep 2017

RDE tests – PN emission results

Euro 6 limit LPG cars emit in average 90% less PN than equivalentgasoline models

0

2

4

6

8

10

12

14

16

Opel Astra Diesel Average Gasoline Average LPG

PN

(E+

11

)

- Gasoline models average value- LPG models average value

*PN limit applicable to new vehicles with direct injection engines from 1 Sep 2017

RDE tests – HC emission results

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

AlfaRomeo

MitoGasoline

Fiat 500LGasoline

SkodaOctavia

Gasoline

OpelAstra

Gasoline

KiaSportageGasoline

AlfaRomeo

Mito LPG

Fiat 500LLPG

SkodaOctavia

LPG

OpelAstraLPG

KiaSportage

LPG

OpelAstraDiesel

HC

(m

g/km

)

HC emissions from LPG, diesel and gasolinevehicles are broadlysimilar, and well belowthe Euro 6 limit

Euro 6 limit

RDE tests – HC emission results

HC emissions from LPG, diesel and gasolinevehicles are broadlysimilar, and well belowthe Euro 6 limit

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Opel Astra Diesel Average Gasoline Average LPG

HC

(m

g/km

)

Euro 6 limit

- Gasoline models average value- LPG models average value

RDE tests - CO emission results

Euro 6 limit

LPG cars emit in average 45% less CO than equivalentgasoline models0

500

1000

1500

2000

2500

3000

AlfaRomeo

MitoGasoline

Fiat 500LGasoline

SkodaOctavia

Gasoline

OpelAstra

Gasoline

KiaSportageGasoline

AlfaRomeo

Mito LPG

Fiat 500LLPG

SkodaOctavia

LPG

OpelAstraLPG

KiaSportage

LPG

OpelAstraDiesel

CO

(m

g/km

)

For the Kia Sportage, the LPG system was retrofitted. Gasoline and LPG performance are similar, therefore we expect that when the gasoline model will be calibrated for the RDE test, the LPG vehicle will be compliant with Euro 6 limits as well.

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

Opel Astra Diesel Average Gasoline Average LPG

CO

(m

g/km

)

RDE tests - CO emission results

Euro 6 limit

LPG cars emit in average 45% less CO than equivalentgasoline models

- Gasoline models average value- LPG models average value