34
2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia) (2) 首都 (英語名) ウランバートル (Ulan Bator) (3) 面積 156万4,100平方キロメートル(日本の約4倍) (4) 民族 モンゴル人(全体の95%)及びカザフ人等 (5) 言語 モンゴル語(国家公用語)、カザフ語 (6) 宗教 チベット仏教等(社会主義時代は衰退していたが民主化(1990年)以降に 復活。1992年2月の新憲法は信教の自由を保障) (7) 政治体制 共和制 (8) 人口 293万300人(2014年、モンゴル国家統計委員会) (9) 人口密度 1.88人/km 2 (10) 名目GDP 120.4億ドル(2014年、世界銀行) (11) 一人当たりGDP (名目) 4,105米ドル(2014年、世界銀行) (12) 経済成長率 17.3%(2011年)、11.7%(2013年)、7.76%(2014年) (13) 物価上昇率 10.2%(2011年)、12.5%(2013年)、12.9%(2014年) (14) 外貨準備高 (US$) 11億9,300万ドル(2013年統計委員会) 輸出 5,775百万米ドル(2014年統計委員会) 輸入 5,237百万米ドル(2014年統計委員会) (16) 日本との貿易 対日輸出:17百万ドル、対日輸入:327百万ドル(2014年財務省貿易統計) (17) 使用通貨 トグログ(MNT) (18) 為替レート 1米ドル=1,995トグログ(2015年12月) (19) 失業率 (%) 7.7%(2011年)、7.9%(2013年)、7.93%(2014年) (統計委員会) (20) 在留邦人数/在日モンゴル人数 420名(2013年10月現在)/5,180名(2013年12月現在) (15) 総貿易額 (US$) 出所:「外務省ホームページ」、但し、(9)(3)(8)からの計算値、(10),(11)は「国際通貨基金(IMF)ホーム ページ」より作成 出所:CIA ホームページ

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2.7 モンゴル

- 436 -

2.7 モンゴル

1. 一般情勢

 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

 (2) 首都 (英語名) ウランバートル (Ulan Bator)

 (3) 面積 156万4,100平方キロメートル(日本の約4倍)

 (4) 民族 モンゴル人(全体の95%)及びカザフ人等

 (5) 言語 モンゴル語(国家公用語)、カザフ語

 (6) 宗教チベット仏教等(社会主義時代は衰退していたが民主化(1990年)以降に復活。1992年2月の新憲法は信教の自由を保障)

 (7) 政治体制 共和制

 (8) 人口 293万300人(2014年、モンゴル国家統計委員会)

 (9) 人口密度 1.88人/km2

 (10) 名目GDP 120.4億ドル(2014年、世界銀行)

 (11) 一人当たりGDP (名目) 4,105米ドル(2014年、世界銀行)

 (12) 経済成長率 17.3%(2011年)、11.7%(2013年)、7.76%(2014年)

 (13) 物価上昇率 10.2%(2011年)、12.5%(2013年)、12.9%(2014年)

 (14) 外貨準備高 (US$) 11億9,300万ドル(2013年統計委員会)

輸出 5,775百万米ドル(2014年統計委員会)

輸入 5,237百万米ドル(2014年統計委員会)

 (16) 日本との貿易 対日輸出:17百万ドル、対日輸入:327百万ドル(2014年財務省貿易統計)

 (17) 使用通貨 トグログ(MNT)

 (18) 為替レート 1米ドル=1,995トグログ(2015年12月)

 (19) 失業率 (%) 7.7%(2011年)、7.9%(2013年)、7.93%(2014年) (統計委員会)

 (20) 在留邦人数/在日モンゴル人数 420名(2013年10月現在)/5,180名(2013年12月現在)

 (15) 総貿易額 (US$)

出所:「外務省ホームページ」、但し、(9)は(3)と(8)からの計算値、(10),(11)は「国際通貨基金(IMF)ホーム

ページ」より作成

出所:CIA ホームページ

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2.7 モンゴル

- 437 -

2. エネルギー情勢 2013 年の一次エネルギー消費量は石油換算で 522 万トンと少ないが、2000 年以降、年

率 6.3%で着実に増加している。特に、2010 年以降 3 年間のの伸びは年率 14.7%と高い。

一次エネルギー消費に占める石炭のシェアは 2013 年で 72.0%と、石炭が主役という位置

付けである。なかでも、発電電力に占める石炭のシェアも 93%と極めて高い。

(1) エネルギー政策

2013 年 6 月の大統領選で、現職のエルベクドルジ氏が再選された。また、2014 年 11月の国会本会議でアルタンオヤグ首相の解任決議案が採択された。首相のスピーチを後述。

しかし、最近モンゴル経済が急減速している。世界的な資源安を受け、主要産業の石炭

採掘業などが振るわなくなったため。タバン・トルゴイ鉱山を本格開発しようと 10 年に

国際入札を公示したが、外資を受け入れる政策案が議会で審議されないなど混乱し、棚上

げになった。さらに、投資規制を強化したため、外国からの投資が激減した(2015.02.17 フジサンケイビジネスアイ)。 国際入札されているタバントルゴイの石炭開発が注目されているが、2014 年 12 月 24

日、中国神華集団、エナジー・リソーシズ社(LLC)と、住友商事のコンソーシアムが、

タバントルゴイの西ツァンキの開発者に選定された。同コンソーシアムは、開発に着手し

3 千万トン/年の石炭を生産し、大半は中国に出荷されるが、一部は日本や韓国などにも

輸出される。モンゴル政府は 2011 年 1 月に競争入札を実施したうえで、同年 7 月に西エ

リアの開発者に、中国神華集団、ロシア鉄道、ピーボディの 3 社を選定した。しかしその

後、モンゴル内部で意見対立があり、競争入札は棚上げにされていた。住友商事は「当社

は石炭の販売と海上貿易の機能を担う検討を進めていく」とし、採掘には直接関与しない

とみられる(2014.12.25 テックスレポート、日本経済新聞)。 POSCO/双日などがモンゴルで発電所建設。韓国の POSCO エナジー社や双日などコン

ソーシアムが、ウランバートル郊外に 45 万 kW の石炭火力発電所を建設する。2015 年に

建設開始、19 年に完了する。25 年間運営した後、所有権をモンゴルに移譲する。同コン

ソーシアムは POSCO、双日、仏 GDF スエズの 3社が 30%、モンゴルのニューコムが 10%保有する(2014.6.23 テックスレポート)。モンゴルでは石炭加工や高付加価値技術が

不足しているため、付加価値が低いまま輸出している。そのため、近年は石炭価格の下落

から貿易赤字が拡大している。その対策として、政府は石炭液化(CTL)技術を中心にし

た石炭化学産業を育成する方針を固めた。「日本からの技術・資金面の支援が重要」(ア

ルタンホヤグ首相)としている。モンゴルでは先頃、ポスコが現地企業の MCS と合弁で

ディーゼルオイル年産 45 万トン、ジメチルエーテルどう 10 万トンの CTL プロジェクト

を決め、LG 商社もアンモニア生産プロジェクトに出資を決めている(2013.9.25 化学工業

日報)。モンゴル国家統計局によると、対中輸出額は 09 年の 13.9 億ドルから 12 年には

40.6 億ドルと約 3倍に増えた。資源探査、採掘ライセンス計 1800件のうち 51%を中国が

占める。このままでは中国に吸収されると心配する声は大きい。中露に挟まれた中で、「

崩れたバランスを日米の力を借りて立て直したい」というモンゴルの危機感がある。タバ

ントルゴイ炭田などの開発も日米欧の資本を導入し、輸出先の多様化を図ろうとしている

(2013.7.18 読売新聞)。モンゴルは昨年 5 月に施行した「外資規制法」の廃止へ動き出

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2.7 モンゴル

- 438 -

す。6月26日の大統領選で成長重視のエルベグドルジ大統領が再選したことで、新法の制

定作業を本格化する。タバン・トルゴイ炭鉱の権益取得を目指す三井物産、伊藤忠商事な

ど外資にとっては計画が立てづらくなっていた(2013.7.2 日経産業新聞)。

♦ エネルギー基本政策としては、2002 年にモンゴル政府が採択・承認した“Mongolia Sustainable Energy Sector Development Strategy Plan(2002-2010)”が挙げられ

る。その中に、主要な目標として、① エネルギー部門における財政的持続可能性の

達成、② エネルギー部門の再編、③ エネルギーに関する能力増強、④ エネルギー

へのアクセス及び供給の増強、⑤ 省エネルギーの推進等が謳われている。 ♦ 従来は、鉱業資源・エネルギー輸出入に係る政策立案・実施は産業・通商省が管轄し、

自国内のエネルギー需給に係る政策は燃料エネルギー省が管轄していた。バヤル前首

相が省庁再編に着手し、2008 年 12 月の内閣府の発令により、産業・通商省を解体し

産業・通商省の鉱物資源部局を燃料・エネルギー省へ移管し、更に燃料・エネルギー

省を鉱物資源・エネルギー省(Ministry of Mineral Resources and Energy)へ改称

し一本化を図った。 ♦ 政策実施機関としては、鉱物資源・エネルギー省の下部組織として鉱物資源庁(Mineral

Resources Authority)、石油庁(Petroleum Authority)、エネルギー庁(Energy Authority)があり、石炭は鉱物資源庁の管轄である。

新政府発足から3ヶ月が経った。この間に政府は歳出を削減し、経済低迷を乗り越える計画を制定し、日本とのEPIを締結し、金採掘を拡大化する対策を実施しErdenet→Ovoot間の鉄道開発を議決した。解決した問題は少なくない。ただし、解決しなければならない問題はもっと沢山ある。3年間も中断したOyu Tolgoiの坑内堀鉱山問題、ここ6年間中断したTT問題が解決されることを全てのモンゴル人が待っている。OyuTolgoiの坑内堀鉱山に関する交渉が、長期に渡って実施された。双方が疑問点のコンセプトに合意。これから実施しなければならない手続きを実施し、近々国際的に公式発表する。TT交渉も完了する段階に至った。双方は基本的に概念に合意できたことに満足の意を表明している。閣議で議論し、TTプロジェクトを公式に開始する環境が設備された。TTプロジェクトが実施されたら、6年間も製図のみだった鉄道が開発され、前金の200百万USDを受領する。鉄道プロジェクトに経費された300百万USDが返済される。もしも国会が承認すれば、1072株式の配当金として2015年に全国民へ10万TGを配当することができる。 正直に言えば2つの巨大なプロジェクトがスタートされれば、外国投資が次々に流入する。モンゴルも経済困難を乗り越えられる。ここ数日でMRAM(鉱物資源庁)が130通の探鉱ライセンスに関するコメントを地方役所に確認したところ、30通が承認され、100通が拒否された。即ち現地の住民は探鉱事業に賛成していない。そのため、ローヤルティの30%まで、ライセンス料金の50%までが現地歳入になる法案を国会へ提出する。鉱業からの収入を現地の住民が利用、経費できるようになれば、鉱業に反対することもなくなる。 2015年7月1日から政府が石油製品、電力、小麦、小麦粉の価格最高限を開放する。小麦業者へ配布されていた補助金を、社会保障(必要性がある層へ)に経費する。 政府が何年にも渡って解決されなかったCHP5プロジェクトを促進させることを議決。私は首相として交渉している双方(政府ワーキングチーム及び投資家)と会談し、今月中に問題点を解決する義務を与えた。もしできなかったら公務員達を解雇する、投資家の場合は次の応札者と交渉することを勧告した。双方はCHP5の開発事業を2015年7月に開始すると約束した。我々は石炭ガス化、石炭液化プロジェクトの投資家を決定した。2015年に金鉱山が20t以上の金を中銀へ販売する。また、1062km道路の投資家、実施者が明確になった。道路のみならずErdenet→Ovoot間の572km、TT→Gashuunsukhait間の267kmの鉄道プロジェクトが実施される。ウランバートルの大気汚染問題を解決するガス工場、消費者へガスを提供するパイプライン・システムを、中国政府からのソフトローンで実施することを政府が議決。観光業、畜産物加工を政策として本格的に支援する。(2015年4月5日首相スピーチ)

出所:2015年2月、JOGMEC情報、オリジナルはBlue Ridge有限会社

2015年4月6日の春季国会が開始され、Z.Enkhbold国会議長がスピーチをした。同スピーチでTTに対して以下のように述べた。TT開発について国会として注視している。モンゴル国憲法に“地下、地下資源は国家所有物”と示された。TTは国家予算融資で確定された戦略的な鉱床だ。政府は2010年に制定された国会第39規定に従って交渉を行っている。しかし、同交渉は2012年に制定された国会第37規定で制定された“2012年から2016年の政府スケジュール”に違反している。 国会議長としては上記に関する公式立場を2015年4月3日に政府へ表明。交渉条件によるとモンゴルの経済は1つの市場にほぼ100%頼る状況が発生している。上記は2010年に国会から制定された“国家安全理念”に1カ国の投資額は全投資額の1/3以下である条件に合っていない。政府が締結しようとしている契約ドラフトを要求し入手した。同契約ドラフトを国会議員各位へ引き渡した。同契約ドラフトを読んだら政府がどうして国会審議なしで今日中に議論しようとしているが理解できる。今日、締結する予定だった契約はモンゴル国民の権益を確保していない。例えば、①モンゴル政府の義務が明確で期間が指定されているが、相手側の義務に期間がない、義務というより目的に近い、実現されなかった時に追う責任がない。②有効期間は30年で、30年で延長可能。③モンゴル国民がもっている1072株式について不明。④追加探鉱で埋蔵量が増加した場合の関係が不明。⑤40億USDの投資額にEnergy Resources社の投資(既に実施された投資)を含めた。⑥鉄道拡大化権利を投資家のみに与えた。⑦MongoliinTumurZam社が経費した投資額を確認した後に政府へ返済する。⑧既に経費されたモンゴル側の投資を投資家がいかに評価しているかで金額を決める。⑨もし契約が解除されれば、Shenhua(神華集団)が30年間で得る利益を支払う義務をモンゴル政府が追う。⑩交渉中にモンゴル側が第3者のアドバイスを受けていない。投資家は世界中で認められたDeloitte,KPMGなどの企業からアドバイスを受けた。    以上のようなリスクがあり、モンゴル国が損害を受ける契約を締結することを私は納得しない。2010年に制定された第39番規定に従い、TT開発交渉を国会が審議しなければならない。国会審議なしで署名する決定をした、署名しようとした大臣をがいれば、解任させる。(2015年4月6日国会議長スピーチ)

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2.7 モンゴル

- 439 -

(2)石炭政策 ♦ モンゴル政府の基本的な石炭政策は、① 国内エネルギーの供給源として位置付け、既

存炭鉱の整備と拡大を行うこと、② 外貨獲得のために輸出に適した新規炭鉱の探鉱・

開発を行うことである。 ♦ 石炭利用の面では、経済発展に伴い拡大する石油製品の代替エネルギーとして、また

石炭を中心とした化学コンビナートの形成に対する期待も大きく、液化、ガス化、コ

ークス製造など石炭利用技術の開発、普及に積極的に取り組んでいる。さらに、山元

石炭火力による電力の輸出も視野に入れている。 ♦ なお、後述の 2014 年 2 月の情報のように、今後 20 年間で 10 億トンの石炭を中国に

輸出することを合意した。 (3)環境政策 ♦ 環境保全、自然資源の保護や生態系バランス維持の措置を有し、地質構造を破壊せず、

地形を回復することなどを強調した環境政策を掲げて、環境と調和の取れたエネルギ

ー開発・生産を図っている。 ♦ モンゴルでは、市場経済化に伴う経済活動の変化、都市への人口集中、地球温暖化に

伴う雨量の減少などにより、森林消失、砂漠化、水資源、生物多様性の減少、都市部

の大気汚染、廃棄物処理が大きな課題となっている。 (4)一次エネルギー消費量

(石油換算千トン)

2000 2005 2010 2011 2012 2013年平均伸び率'00-'13

年平均伸び率'10-'13

2005年のシェア

2013年のシェア

石 炭 1,817 1,918 2,459 2,401 3,383 3,759 5.73% 15.20% 73.9% 72.0%

石 油 434 560 829 1,029 1,162 1,211 8.21% 13.47% 21.6% 23.2%

ガ ス 0 0 0 0 0 0 0.00% 0.00% 0.0% 0.0%

原子力 0 0 0 0 0 0 0.00% 0.00% 0.0% 0.0%

水 力 0 0 0 0 0 0 0.00% 0.00% 0.0% 0.0%

その他 113 116 167 167 173 251 6.33% 14.55% 4.5% 4.8%

合 計 2,364 2,595 3,454 3,597 4,717 5,222 6.29% 14.77% 100.0% 100.0%

出所:IEA, “Energy Balances of Non-OECD Countries 2015” (5)一人当たりエネルギー消費量

2000 2005 2010 2011 2012 2013*

一次エネルギー消費量

(石油換算百万トン)2.36 2.60 3.45 3.60 4.72 5.22

人口(百万人) 2.4 2.5 2.8 2.8 2.8 2.8

一人当たりエネルギー消費

(石油換算トン/人) 0.983 1.040 1.232 1.286 1.686 1.864

出所:IEA, “Energy Balances of Non-OECD Countries 2015”

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2.7 モンゴル

- 440 -

(6)一次エネルギー需給バランス(2013 年)

(石油換算千トン)

石 炭 石 油 ガ ス 原子力 水 力 電 力 その他 合 計

国内生産 15,478 708 0 0 0 - 150 16,336

輸 入 1 1,253 0 0 0 103 0 1,357

輸 出 -12,415 -723 0 0 0 -2 0 -13,140

バンカー 0 -42 0 0 0 - 0 -42

在庫変動 696 15 0 0 0 - 0 711

一次供給 3,760 1,211 0 0 0 101 150 5,222 出所:IEA, “Energy Balances of Non-OECD Countries 2015” (7)電力消費

(GWh)

2000 2005 2009 2010 2011 2012 2013年平均伸び率'00-'13

年平均伸び率'10-'13

産 業 1,182 1,569 1,883 2,094 2,141 2,339 2,931 7.24% 11.86%

輸 送 79 106 126 140 144 157 197 7.28% 12.06%

家 庭 517 702 870 979 811 908 1,140 6.27% 5.21%

業 務 0 0 0 0 0 0 0 - -

その他 186 250 297 332 339 370 465 7.30% 11.88%

合 計 1,964 2,627 3,176 3,545 3,435 3,774 4,733 7.00% 10.11% 出所:IEA, “Energy Statistics of Non-OECD Countries 2015”

(8)発電電力量

(GWh)

2000 2005 2010 2011 2012 2013年平均伸び率'00-'13

年平均伸び率'10-'13

2005年のシェア

2013年のシェア

石 炭 2,913 3,408 4,302 4,300 4,563 4,666 3.69% 2.74% 97.0% 92.9%

石 油 87 104 179 236 253 269 9.07% 14.55% 3.0% 5.4%

ガ ス 0 0 0 0 0 0 - - 0.0% 0.0%

原子力 0 0 0 0 0 0 - - 0.0% 0.0%

水 力 0 0 0 0 0 0 - - 0.0% 0.0%

その他 0 0 0 0 0 85 - - 0.0% 1.7%

合 計 3,000 3,512 4,481 4,536 4,816 5,020 4.04% 3.86% 100.0% 100.0%

出所:IEA, “Energy Balances of Non-OECD Countries 2015” (9)部門別エネルギー消費(2013 年)

(石油換算千トン)

部 門最終エネルギー

消費量

産 業 1,105

輸 送 651

家 庭 964

業 務 233

農林漁業他 86

非エネルギー 1

その他 454

合 計 3,494

産 業

31.6%

輸 送

18.6%家 庭

27.6%

業 務

6.7%

農林漁業他

2.5%

非エネルギー

0.0%

その他

13.0%

出所:IEA, “Energy Balances of Non-OECD Countries 2015”

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2.7 モンゴル

- 441 -

(10)エネルギー需給の見通し ♦ アジア開発銀行が 2013 年 10 月に発表した「アジア太平洋地域の長期エネルギー需給

展望(Energy Outlook for Asia and pacific)」によれば、モンゴルの一次エネルギー

需要は、2010 年から 2035 年に向けて年率 5.4%で増加し、2010 年の 330 万 toe から

2035 年には 1,210 万 toe と約 3.7 倍に増加すると予測している。そして、石炭の占め

るシェアは 69.6%から 74.9%へと拡大して行く。1,210 万 toe のうち 680 万 toe は石

炭火力発電に使われる。また、石油の占めるシェアは 25.3%から 24.0%へと低下して

行く。石油は主に輸送用や産業用に使われる。国内には石油リファイナリーはまだな

く、ロシアからの輸入に頼っている。

出所:ADB, ”Energy Outlook for Asia and pacific,2013”

3. 石炭生産、消費動向

2014 年の石炭生産量は 3,026 万トンで、2013 年の 2,590 万トンよりも 16.8%増加した

が、ピーク時の 2011 年の 3,209 万トンよりも 5.7%の減少である。生産量の約 21%は褐

炭である。一方、消費量は生産量の 30%で、2013 年は 900 万トンである。消費の殆どす

べてが褐炭で発電用である。

(1)石炭埋蔵量 ♦ Mineral Resources Authority

によれば、石炭資源量は 1,623億トン、可採埋蔵量は 100 億

トン以上と報告されている。 ♦ Wood Mackenzie資料では可採

埋蔵量は 47.5 億トンである。 ♦ なお、World Energy Council

(WEC)の報告では、25.2 億

トンと評価されている。 出所:Mineral Resources Authority ホームページ掲載情報

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2.7 モンゴル

- 442 -

可採埋蔵量

(百万トン)

瀝青炭無煙炭

亜瀝青炭 褐 炭 計

1,170(46.4%)

1,350(53.6%)

2,520(100.0%)

出所:WEC, ”Survey of Energy Resources 2013”より作成

鉱床別資源量と可採埋蔵量

出所:燃料エネルギー省、現鉱物資源エネルギー省、Wood Mackenzie 資料

(2)炭田位置図、主要炭鉱位置図 ♦ 石炭はモンゴル全土に広く分布し、15 の「堆積盆」(12 の堆積盆と 3 つの石炭賦存地

域)中に、約 300 の石炭鉱床が確認されている。

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2.7 モンゴル

- 443 -

出所:Mongolian coal-bearing basins:Geological settngs,coal characteristics,distribution,and resources 2009 年 Bat-Orshik 他

モンゴルの炭田図および主要鉱床位置

(3)石炭生産量

(千トン)

2000 2005 2010 2011 2012 2013 2014*年平均伸び率'00-'14

年平均伸び率'10-'14

一般炭 70 2,192 10,025 1,426 11,684 12,692 13,654 43.75% 8.03%

原料炭 0 983 9,465 23,722 8,791 6,876 10,274 - 2.07%

計 70 3,175 19,490 25,148 20,475 19,568 23,928 43.75% 5.26%

褐 炭 5,115 4,341 5,723 6,938 5,936 6,330 6,330 1.53% 2.55%

合 計 5,185 7,516 25,213 32,086 26,411 25,898 30,258 13.43% 4.67%

注: *2014 年は見込み、出所:IEA, “Coal Information 2015” (4)炭種別石炭消費量

(千トン)

2000 2005 2010 2012 2013 2014*年平均伸び率'00-'14

年平均伸び率'10-'14

一般炭 70 1,093 1,374 2,028 2,243 2,508 29.13% 16.23%

原料炭 0 0 153 163 134 200 - 6.93%

計 70 1,093 1,527 2,191 2,377 2,708 29.84% 15.40%

褐 炭 5,142 4,380 5,430 5,487 6,212 6,287 1.45% 3.73%

合 計 5,212 5,473 6,957 7,678 8,589 8,995 3.98% 6.63%

注: *2014 年は見込み、出所:IEA, “Coal Information 2015”

(5)分野別石炭消費量 (a)ハード・コール

Page 9: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 444 -

(千トン)

2000 2005 2010 2012 2013

鉄鋼用 0 0 0 0 0

電力用 0 1,076 1,236

一般産業用 305 210

民生用 0 347 437

その他 0 463 494

合 計 70 1,093 1,527 2,191 2,377

注: 鉄鋼用にはコークス、高炉ガスへの転換分を含め、電力用には熱供給、自家発電などを含める。

出所:IEA, “Energy Statistics of Non-OECD Countries 2015” (b)褐炭

(千トン)

2000 2005 2009 2010 2011 2012

鉄鋼用 0 0 0 0 0 0

電力用 4,449 4,620 5,078 5,533 5,410 5,801

一般産業用 110 2 226 189 222 337

民生用 180 337 597 612 640 626

業務用 227 177 2 3 11 11

その他 176 231 522 569 474 540

合 計 5,142 5,367 6,425 6,906 6,757 7,315 出所:IEA, “Energy Statistics of Non-OECD Countries 2014”

(6)炭鉱開発状況及び新聞等によるニュース ♦ 中国、モンゴルと関係強化。習氏初訪問、鉄道開発など協力。中国の習国家主席が就 任後初めてモンゴルを訪問し、エルベグドルジ大統領と会談し両国の関係強化を図るこ

とで一致した。モンゴル側が要請していた中国との国境をつなぐ鉄道輸送計画で協力す

る方針を表明した。昨年、安倍首相はモンゴルを訪問。モンゴル政府関係者は、「対中

包囲網に、中国は強い不快感を持っている」、と話す。中国は今回の訪問を機に、モン

ゴルの石炭や石油、鉱物の資源開発に関与を強める方針だ(2014.08.22 朝日新聞)。

♦ モンゴルの原料炭輸出産業が苦境に陥る。中国向け輸出価格急落で大半の炭鉱が赤字

中国向け輸出減と価格下落で、モンゴルの原料炭輸出産業が苦境に陥る。価格の低迷

に加えて、輸出価格が長期低迷する中、中国が 2014 年に入り原料炭輸入を抑制したこ

とから、各炭鉱の経営が急速に悪化してきた。中国の 2014 年 1~3 月における原料炭

輸入量は 202 万トンと前年同期比 22%減となった。輸出先が中国にほぼ限定されてい

ることもあった、中国が輸入を抑制すれば、各炭鉱は減産を強いられる。 実際、カナダのサウスゴビ・リソーシズ社が操業するオボート・トルゴイ炭鉱の 2014

年 1~3 月における石炭販売量は 39 万トンと、前記より 133 万トン(77%)減少した。

サウスゴビ社は、石炭輸出マーケットの長期低迷によって、オボート・トルゴイ炭鉱

Page 10: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 445 -

の経営が悪化してきているため、同炭鉱の操業を継続するためには緊急の追加資金調

達が必要と訴えている。(2014.4.23 テックスレポート)。 ♦ モンゴルと共同でタバントルゴイ炭田石炭輸送鉄道建設。中国神華集団が、モンゴルに

おける資源輸送鉄道建設協議を締結した。神華集団はエルデネス・タバントルゴイなどモ

ンゴル企業 3 社と合弁会社を設立する。合弁会社はタバントルゴイ炭田と中国内モンゴル

自治区の甘其毛都とを連絡する石炭輸送鉄道建設を担当する(2014.4.17China Press)。 ♦ モンゴルから今後 20 年間で 10 億トンの石炭を輸入へ。 モンゴルのアルタンホヤグ

首相は石炭国際投資展覧会において、2013 年のモンゴルの石炭輸出量は 1.8 億トンに

なったと述べるとともに、今年の輸出量が3.4億トンになるとの見通しを示した。モン

ゴルは重要な石炭輸出市場である中国との間で石炭の輸出と加工について合意書を調印

した。これによると、今後 20 年間、中国はモンゴルから 10 億トンの石炭を輸入する

ことになる(2014.2.21)。 ♦ 石炭以外の化石エネルギー資源が乏しいモンゴルでは、石炭が唯一の化石燃料といっ

ても良く、自国に有する資源として古くから利用されてきた。現在では、全石炭消費

量の 8 割以上が電力用・熱供給用燃料として利用されている。 ♦ NEDO が実施した「平成 22 年度海外地質構造調査(モンゴルの石炭開発状況)」によ

ると、次表のように、モンゴルでは 10 の主要炭鉱が稼働しており、2009 年の生産量

は 1,440 万トンである(2013 年は 3,016 万トン)。 ♦ 本表で分かるように、2008 以降新たに生産された炭鉱は、マックナリンスハイト、オ

ボートルゴイ、UHG の 3 炭鉱である。 ♦ 安倍首相はウランバートルでモンゴルの大統領及び首相と会談し、世界最大級とされる炭

田の開発で連携する方針を確認した。両首相が合意したのは、火力発電所の設備更新のた

めの 42 億円の円借款や技術提供、地下鉄建設、環境対策(2013.3.310 日本経済新聞)。

主要炭鉱の石炭生産実績

出所:NEDO「平成 22 年度海外炭開発高度化等調査(モンゴルの石炭開発状況)」

オリジナルソースは、モンゴル鉱物資源エネルギー省(MRAM)

Page 11: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 446 -

(7)当該国が報告する消費・生産統計 ♦ 次図表のように 2009 年に国内で消費される石炭の約 75%が、発電用燃料(熱電併給

プラントを含む)として消費されている。 ♦ 2002 年までは国内で生産される石炭の全量を国内で消費していたが、2003 年以降、

生産量が消費量を上回るようになっている。消費量を上回る分は、中国向けの輸出に

供されている。 ♦ 2009 年では、生産量 1,300 万トン、消費量 570 万トン、輸出量 750 万トン、2010 年

では、生産量 2,520 万トン、消費量 700 万トン、輸出量 1,820 万トンである(後述)。 ♦ 近年の石炭生産量の拡大には、目を見張るものがある。2000 年から 2005 年に向けて

の生産量の年平均伸び率は 7.7%であったが、2005 年から 2009 年に向けての生産量

の年平均伸び率は 15.0%と 2 倍以上の伸び率となっている。 ♦ 次図表に示すように、2020 年の生産予測は 3,230 万トンで、国内需要予測は 790 万

トンであるから、2,440 万トンの輸出ポテンシャルがある。但し、後述 4(3)の NEDOが入手した最新予測とはかなり異なるので、利用には注意を要する。

♦ BHP Billiton が報告している原料炭供給の予測(第 1 章図 1.2.11-2)によれば、モン

ゴルの輸出量は 2020 年で 1,600 万トン、2025 年で 2,700 万トンまで増加するとして

いる。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

千t

その他 100 320 139 151 99 113 180 188 174 619 630 641 653 665 677 689 735 784 836

共同住宅地 406 334 436 465 451 514 550 455 581 632 643 655 666 678 691 703 750 800 853

農業 3 4 8 9 5 18 8 3 7 14 14 14 14 15 15 15 16 17 18

輸送 73 55 78 3 64 101 121 122 141 141 149 157 165 174 183 192 216 242 271

産業 180 152 152 154 91 107 237 203 190 226 236 247 258 269 281 293 336 386 443

火力発電所 4,449 4,324 4,723 4,380 4,479 4,620 4,595 4,935 4,850 5,078 5,154 5,231 5,310 5,389 5,470 5,552 5,807 6,073 6,351

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2020 2025 2030

出所:NEDO「平成 22 年度海外炭開発高度化等調査(モンゴルの石炭開発状況)」 MONGOLIAN STAISTICAL YERBOOK 2003,2006,2009、2010 年以降は「Energy Outlook for Asia and the Pacific」ADB

2030 年までの石炭需要予測

Page 12: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 447 -

4. 石炭輸出動向 2014 年の石炭輸出量は 1,930 万トン(TEX レポートでは 1,970 万トン)で、うち 5 割

強は原料炭である。生産量(3,026 万トン)のうち 6 割強を輸出に廻す形となっており、

殆どが国境を隔て中国向けである。輸出量は年々増加してきたが、2012 年(2,090 万トン)

よりも 12%減少した。この理由は、安く買いたい中国側と高く売りたいモンゴル側の売買

交渉の問題である。2013 年 3 月にも、モンゴル(エルデネス・タバントルゴイ社)と中

国(中国アルミ)との価格交渉が決裂し、輸出量が減少した。次表のように、2010 年以

降 3 年間の平均伸び率は 3.69%と高くはない。2015 年の輸出量は 1,447 万トンである。

第 1 章の図 1.3.3-8 のように、原料炭については 2014 年の輸出国ランキングは 11 年の

第 4 位から第 5 位に後退した。南ゴビ地方には良質の原料炭が大量に賦存しており、イン

フラや流通の問題があるが、今後のアジア市場に大きな影響を及ぼすものと思われる。

(1) 石炭輸出量

(千トン)

2000 2005 2010 2011 2012 2013 2014*年平均伸び率'00-'14

年平均伸び率'10-'14

一般炭 0 0 0 0 7,900 8,600 7,100 - -

原料炭 0 0 15,100 20,962 10,900 7,700 10,100 - -9.60%

計 0 0 15,100 20,962 18,800 16,300 17,200 - 3.31%

褐 炭 0 2,116 1,700 2,100 2,100 2,100 2,100 - 5.42%

合 計 0 2,116 16,700 23,062 20,900 18,400 19,300 - 3.69% 注:*2014 年は見込み、出所:IEA, “Coal Information 2015”

(2) 当該国が報告する輸出統計 テックスレポート「2015 石炭年鑑」ではモンゴルからみた輸出量が集計されていない。

そこで、輸入各国からみた量に基づいて集計した。合計量は後記の月別輸出量に合わせた。

隣国の中国が群を抜いて多いが、台湾、インド、日本、韓国も数万トン輸入している。2014年は 1,970 万トンで、前年よりも 7.1%増加したが、中国以外の国は不明である。13 年に

は中国とは売買交渉が折り合わず減少したが、14 年に再び増加した。速報として 2015 年

のデータを追加するが、15 年には減少した。 国別の石炭輸出量

(千トン)

相手国 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014伸び率14/13(%)

2015

中 国 2,352 3,241 4,044 6,002 16,595 20,155 22,128 17,495 19,269 10.1% 14,123

台 湾 0 0 0 0 0 148 91 0 0 0

日 本 0 0 23 0 60 0 50 28 0 0

韓 国 0 0 0 0 0 64 0 0 0 0

インド 0 0 0 0 0 0 33 0 0 0

その他 0 4 133 998 45 733 -1,402 877 431 347

合 計 2,352 3,245 4,200 7,000 16,700 21,100 20,900 18,400 19,700 7.1% 14,470

出所:TEX レポート「2015 石炭年鑑(貿易統計)」及び最新情報の輸入相手国データより作成

Page 13: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 448 -

① モンゴリアン・マイニング社

UHG炭鉱 BN炭鉱 合 計

2009年 1,841 0 1,841

2010年 3,932 0 3,932

2011年 7,077 0 7,077

2012年 8,598 822 9,420 5,600 84.8

2013年 9,182 500 9,672 5,700 76.4

2014年 4,619 0 4,619 5,400

原炭生産量(千トン) 石炭販売量(千トン)

石炭販売価格(US$/トン)

② サウスゴビ・リソーシズ社

2010年 2,790 2,540 34.61

2011年 4,570 4,020 54.03

2012年 1,340 1,340

2013年 3,060 3,260 24.25

2014年 1,570 2,040 14.76

2015年 1,950 1,070

石炭販売量(千トン)

石炭販売価格(US$/トン)

原炭生産量(千トン)

③ ウインズウェー社

モンゴル炭 海外炭 合 計

2011年 7,040 2,600 9,640

2012年 4,298 3,634 7,932

2013年 5,118 6,674 11,792

2014年 989 6,478 7,667

石炭調達量(千トン)

JOGMEC 入手情報によると、2014 年の石炭輸出量は 1,968 万トンで、前年比 131 万ト

ン(7.1%)増加した。2013 年にエルデネス・タバントルゴイ社が中国アルミとの 2.5 億

ドルの売買契約を撤回すると発表したのは 2013 年 3 月であり、下表のように 4 月~7 月

に前年同期から急減したこととマッチする。2013 年 10 月からは再び増加した。しかし、

2015 年に入って中国が輸入を制限したことが影響し減少している。速報によると、2015年の石炭輸出量は 1,447 万トンで、昨年比 520 万トン(26.3%)の減少である。

Page 14: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 449 -

5 年間の月別の石炭輸出量

(千トン) (百万トン)

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合 計

2010年 697 358 1,069 1,239 1,335 1,630 1,565 1,833 1,291 1,693 1,911 2,104 16.7

2011年 668 704 1,563 1,744 1,359 1,706 1,656 2,329 2,093 1,873 2,773 2,638 21.1

2012年 671 1,018 1,712 1,932 2,065 2,904 902 1,063 2,029 2,252 2,322 2,047 20.9

2013年 1,284 501 1,660 1,562 1,325 1,152 776 1,335 1,786 2,062 2,661 2,264 18.4

2014年 1,265 816 1,663 1,619 1,892 2,102 1,035 1,851 1,248 1,366 2,070 2,753 19.7

2015年 1,160 550 1,534 1,010 964 1,683 1,259 1,456 888 1,084 1,289 1,596 14.5

出所:2016年2月、JOGMEC情報、オリジナルはBlue Ridge有限会社

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

2014 年の石炭輸出額は 849 百万 US$で、前年比 263 百万 US$(23%)減少した。輸出

量は増加したが、単価が下落したため輸出額が減少した。輸出平均価格は 43.10US$で、

前年比 17.88 US$(29%)の下落であった。この 2 年間で 47.96US$(52.6%)の下落と

なった。価格低下の原因は、中国へ石炭を輸出する各国の競争が激しくなったことに加え、

中国が 2015 年 1 月から「商品炭品質管理弁法」を施行したためである。モンゴルの場合、

採炭コストは安いが中国黄海周辺に位置する冶金プラントまでの輸送コストが 80~90 US$になる。エルデネス・タバントルゴイ社は 2014 年に 1,100 万トン(2013 年は 530万トン)を採掘する計画であったが、縮小されたもようである。モンゴルの企業らが中国

の神華集団と契約を締結、神華の国境検問所鉄道をモンゴルに繋ぐことで合意した。2014年春からモンゴル国内で 17-18km の国境検問所専用の鉄道を開発する予定である

(JOGMEC 入手情報)。なお、2015 年 3 月時点の品質ごとの標準価格を記載した。 2015 年の石炭輸出額は 556 百万 US$で、前年比 41.4%減少した。月別の FOB 価格みると

連続して下落しており、12 月時点で最低の 29.2 US$/トンとなっている。 5 年間の月別の石炭輸出額

(百万US$)

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合 計

2010年 29.5 15.7 64.5 64.5 63.9 91.7 91.7 91.3 66.7 94.9 111.3 122.0 908

2011年 40.1 50.2 112.0 182.5 161.7 188.8 164.3 256.3 379.8 187.2 330.0 300.0 2353

2012年 77.3 110.3 179.0 212.8 222.9 284.9 81.7 91.0 171.6 194.8 134.7 139.8 1901

2013年 87.6 35.2 86.5 129.5 109.8 93.8 53.1 97.6 90.8 96.8 126.1 115.2 1122

2014年 61.3 47.3 97.8 66.4 82.5 92.7 51.6 88.9 45.0 50.3 76.3 88.9 849

2015年 38.4 27.1 75.8 53.0 44.8 70.4 44.4 48.2 30.8 35.5 40.9 46.6 556

(百万US$)

Page 15: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 450 -

出所:2016年2月、JOGMEC情報、オリジナルはBlue Ridge有限会社

0.0

50.0

100.0

150.0

200.0

250.0

300.0

350.0

400.0

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

5 年間の月別の石炭輸出 FOB単価

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2010年 42.3 43.9 60.3 52.1 47.9 56.3 58.6 49.8 51.7 56.1 58.2 58.0

2011年 60.0 71.3 71.7 104.6 119.0 110.7 99.2 110.0 181.5 99.9 119.0 113.7

2012年 115.2 108.3 104.6 110.1 107.9 98.1 90.6 85.6 84.6 86.5 58.0 68.3

2013年 68.2 70.3 52.1 82.9 82.9 81.4 68.4 73.1 50.8 46.9 47.4 50.9

2014年 48.5 58.0 58.8 41.0 43.6 44.1 49.9 48.0 36.1 36.8 36.9 32.3

2015年 33.1 49.3 49.4 52.5 46.5 41.8 35.3 33.1 34.7 32.8 31.7 29.2

出所:2016年2月、JOGMEC情報、オリジナルはBlue Ridge有限会社

(US$/トン)

(US$/トン)

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

120.0

140.0

160.0

180.0

200.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

Page 16: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 451 -

無煙炭 65.20

原料炭 40.81

原  炭 粘結性が低い 31.80

一般炭 24.49

褐炭 16.48

無煙炭 66.95

加工した 原料炭 56.35

石炭 粘結性が低い 44.07

一般炭 28.84

出所:2015年12月、JOGMEC情報、オリジナルはBlue Ridge有限会社

価 格(US$/トン)

石炭種

ここで、中国サイドから見た輸入 CIF 価格について、モンゴル価格と平均価格の比較を

した。モンゴル炭は原料炭については 40US$/t(平均価格の 50%程度)、一般炭(瀝青炭)

については 24US$/t(平均価格の 39%程度)、一般炭(その他石炭)については 18US$/t(平均価格の 36%程度)であり、モンゴル以外の他国からのフレート(約 10~15 US$/t)を勘案しても極めて安価で契約していることが窺える。

原料炭CIF:US$/t

平均価格 モンゴル価格

2011年 149.65 79.24

2012年 142.61 82.86

2013年 130.10 73.02

2014年 103.37 56.80

2015年 79.82 39.57

出所:TEXレポートより作成

0.00

20.00

40.00

60.00

80.00

100.00

120.00

140.00

160.00

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

平均価格 モンゴル価格

一般炭(瀝青炭)CIF:US$/t

平均価格 モンゴル価格

2011年 117.65 53.84

2012年 103.53 42.18

2013年 87.39 33.54

2014年 76.98 26.63

2015年 62.02 24.37

出所:TEXレポートより作成

0.00

20.00

40.00

60.00

80.00

100.00

120.00

140.00

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

平均価格 モンゴル価格

Page 17: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 452 -

一般炭(その他石炭)CIF:US$/t

平均価格 モンゴル価格

2011年 92.37 60.00

2012年 85.36 45.37

2013年 69.21 23.64

2014年 60.05 19.18

2015年 49.61 17.90

出所:TEXレポートより作成

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

50.00

60.00

70.00

80.00

90.00

100.00

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

平均価格 モンゴル価格

NEDO が 2011 年 11 月にモンゴル政府から入手した情報に基づき、生産量及び輸出量

の 2010 年までの実績と予測をまとめた。4.(2)で前述した 2015 年の実績値よりもかなり

大きい。中国の需要減速の影響により、計画が大幅にくるってしまったので、参考に留め

たい。

モンゴルの石炭生産量及び輸出量の実績と予測(参考)

出所:2011 年 11 月、NEDO がモンゴル政府より入手の資料

モンゴルの石炭生産量及び輸出量の実績と予測

Page 18: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 453 -

5.鉱業法と関連法制度 (1)鉱業管轄官庁と関連政府機関

a)管轄官庁 • 鉱物資源・エネルギー省(Ministry of Mineral Resources and Energy)、

http://www.mmre.energy.mn/home/ • 鉱物資源庁(Mineral Resources Authority)、

http://mram.gov.mn/en/index.php?option=com_frontpage&Itemid=1 b)関連政府機関

• 道路・運輸・建設・都市開発省(Ministry of Roads, Transportation, Construction and Urban Development)、http://www.mrtcud.gov.mn/

• 自然・環境・観光省(Ministry of Nature, Environment and Tourism)、

http://mne.mn/mn/ • 外国投資・外国貿易庁(Foreign Investment and Foreign Trade Agency)、

http://www.investmongolia.com/

(2)鉱業法 1 ♦ 1997 年に制定されたモンゴルの鉱業法では、国内はもとより、外国からの申請者に対し

ても鉱区が開放されており、税の優遇措置も受けることが可能であった。このため、国内

では一部に、貴重な資源の国外持ち出しにより自国への利益の還元がない、国益の損失で

ある、といった批判が出ていた。このような背景から、1997 年 7 月 8 日に鉱業法の一部

の改定が行なわれた。 ♦ 鉱業法改定のポイント

• 鉱業権の乱発と転売を避けるため、鉱区申請者の資格を決め、探査に対する年間投資

額の最低額を決める。 • 鉱業権者の条件: 合法的な会社等の団体のみで、個人には与えられず。従って、現

在の鉱区権者は会社あるいは共同体を形成するために 6 ヵ月間の

猶予が与えられる。 • 鉱区の許認可に関して、対象鉱区に関係する地方の拒否権を認める。 • 国家戦略上、重要な資源開発にかかる国家の権益保有の明確化。 • 環境保護の観点から、採掘後のリハビリテーションの義務付けを行う。

♦ 鉱業権は、探鉱権(Exploration License)と採掘権(Mining License)からなる。 ♦ 探鉱権にかかる費用

• 探鉱費用の最低額にかかる規定は今回新たに制定されたもので、金額に見合う探鉱の

実施が要求される。今後は、探鉱活動のない権益のみを目的にした鉱業権の維持は難

しくなる。 • 探鉱対象鉱区の広さは、25 万~40 万 ha に規定され、鉱区面積と期間に応じて次表

の鉱区料に基づく費用を納付する。また、同様に毎年次表に示す最低探鉱費用に基づ

いた探鉱費用をかける義務が発生する。

1 JCOAL、「メルマガ 12 号」、2006 年 8 月 16 日、および JOGMEC、「世界の鉱業の趨勢 2008」

Page 19: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 454 -

鉱区料 (US$/ha)

最低探鉱費用 (US$/ha)

1年目 0.1 0 2年目 0.2 0.5 3年目 0.3 0.5

4~6年目 1.0 1.5 7~9年目 1.5 1.5

♦ 採掘権にかかる費用

• 申請費用: US$15/ha/年 下記以外 US$5/ha/年 石炭と広範囲に分布する鉱物資源(具体的な鉱

物名の記載はない) • ロイヤルティ: 国内向け石炭 販売価格の 2.5%

輸出向け石炭 販売価格の 5% ♦ 鉱業権の許可期間

• 探鉱権: 当初 3 年間、最長 9 年間(3 年の延長 2 回可能) • 採掘権: 当初 30 年間、最長 70 年間(20 年の延長 2 回可能)

♦ 国による鉱業権益保有比率 • 戦略的重要鉱床(strategically important deposits)については、国の予算で調査を

実施した場合は上限 50%、それ以外については 34%まで国が参入できる。 • また、企業が 10%以上のシェアを売却する場合にはモンゴル証券取引所を通しての

み売却できる。 ♦ 投資協定(Investment Agreement)

• これまでの安定契約(Stability Agreement)に替わるもので、モンゴル政府と企業

が投資協定を締結する。開発の最初の 5 年間に一定規模以上の投資を行う場合には、

その後、税率の変更などがあっても適用しない旨の協定を締結し、投資環境を安定さ

せることにより海外からの投資を促進させる。 ♦ 環境保護(リハビリテーションに関する規制)

• 鉱山開発事業には、政府機関による許可書と環境評価書が必要である。環境評価書に

は開発計画が環境に及ぼす影響を評価するだけでなく、環境保全計画を明示しなけれ

ばならない。 • これまでは鉱業権者は(採掘後の)リハビリテーションの義務を有していなかったが、

今後は無条件にこれを実施することになる。環境、動物、人の健康に重大な損害を与

えた者に対しては、鉱業権の取り消しと向こう 20 年間の鉱業権の付与を禁止する。 ♦ 外国人雇用の上限

• 外国人従業員数は、全従業員の最大 10%までとする。 ♦ モンゴル鉱業法制

2006 年 7 月の鉱業方改正及びその後の制度変更のポイントは以下の通り。 • ロイヤルティ引き上げ(2.5%→5%)。 • 鉱業権はモンゴルで登記し、かつ納税実績のある企業のみが取得可能。

Page 20: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 455 -

• 鉱物資源探査の段階で国(モンゴル政府)が投資した「戦略的鉱床」の国の権益比率

は 50%(国が関与せず発見された鉱床の場合は 34%)。 • 国が関与したウラン(ウランに随伴するレアアースを含む)鉱山開発の場合、国の権

益比率は 51%以上。 (3)関連法制度 2 ♦ 海外からの直接投資を促進する政策を進めており、1991 年に外国投資法(Foreing

Investment Law)が制定された。モンゴルの国内法に触れない限り、全ての分野に対し

て海外からの投資が可能である。投資の 25%以上が外国資本による場合、外国投資とみ

なされ、外国投資家は国内投資化と同様に扱われる。外国投資の窓口となる機関は、外国

投資・外国貿易庁(Foreign Investment and Foreign Trade Agency)である。 6.石炭輸送インフラ状況と整備計画 モンゴルの主要石炭輸送用鉄道プロジェクト(2014.4.22 テックスレポート)

モンゴルでは、自国で生産した原料炭を中国などに大量に輸出するため、石炭輸送用鉄道プ

ロジェクトが相次いで具体化している。主なプロジェクトは以下の通り。 ① UHG-GS 鉄道プロジェクト

モンゴリアン・マイニング社が南ゴビ県で操業する UHG 炭鉱と、中国国境を接するガ

ッシュンスハイトを結ぶ総延長 240km の鉄道で国営モンゴリアン鉄道が推進。2014年内に完成し、2015 年から本格操業が開始される。

② クロス・ボーダー鉄道プロジェクト モンゴルのガッシュンスハイトと中国の甘其毛都を結ぶ約18kmでガッシュンスハイト

鉄道が推進。同社には神華集団が 49%、モンゴルエルドネス等 3 社が各 17%出資。2014年内に完成し、2015 年から本格操業が開始予定。上記 GS とともに両線が開通すれば

UHG の原料炭を甘其毛都まで運び、さらに神華が運営する甘泉鉄道で包頭まで輸送す

ることができる。 ③ ノーザン鉄道プロジェクト

豪州のアスパイア・マイニング社が開発を予定しているオボート鉱区と、既設鉄道が通

るエルデネットを結ぶ総延長 595km の鉄道。2017 年内に完成が見込まれる。 ♦ モンゴルには中国とロシアを結ぶ国際鉄道が走り、この鉄道の枝線としてバガヌール炭鉱

への支線、エルデネット銅山への支線がある。ウランバートルの発電所へ石炭供給はこの

鉄道を利用して行われてきた。しかし、今後既存鉄道から離れた地域での石炭開発には、

輸送インフラの建設が必要となる。 ♦ 原料炭賦存地域として世界的な注目を集めている南ゴビは、モンゴルの既存鉄道から300km以上離れており、石炭の大規模開発にあたり鉄道建設が必要となる。次図(South Gobi Energy Resources ホームページより引用)は、現在の南ゴビ周辺の鉄道インフラ状況と

同社の計画を示したものである。南ゴビの西側では、Nariin Sukhait 炭鉱からの中国向け

輸出が 2003 年から開始され、中国側では Jiuquan(酒泉)からモンゴル国境にある Ceke

2 JOGMEC、「世界の鉱業の趨勢 2008」

Page 21: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 456 -

(策克)までの鉄道が 2006 年に敷設された。現在、国境までトラック輸送された石炭は、

この鉄道を利用して輸送されている。一方、南ゴビの東側には鉄道はなく、同地域から中

国へ石炭が輸出されているが、300km を超える距離をトラック輸送に頼っている。

出所:SouthGobi Energy Resources ホームページより ♦ 現在、中国側では、Ceke と Linhe(臨河)間の鉄道を建設中であり、また Bautou(包頭)

から国境までの鉄道の建設が進められている。今後、モンゴル側でも炭鉱開発と併せて鉄

道建設が必要となる。 (1)鉄道輸送の現状と今後の整備計画 次表は輸送手段別貨物輸送量を示しているが、輸送量の大半が鉄道と道路によるもので、

2000 年以降は、道路による輸送量が大幅に増加している。2010 年の中国への石炭輸出量は

1,500 万トン近くに達したものと思われ、多くがトラックによる輸送である。 また、南ゴビにおける石炭や銅の開発・輸送を目的として、新規の鉄道建設が計画されて

いる。Phase 3までの合計距離は 5,500kmにもなる。しかし実際は、Phase 1は、タバント

ルゴイでの入札が延びたことにより、建設はまだ着手されておらず、2011 年以降にずれ込

むことになる。

貨物の輸送手段と輸送量

Page 22: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 457 -

新規鉄道敷設計画

出所:NEDO「平成 22 年度海外炭開発高度化等調査(モンゴルの石炭開発状況)」 (2)我が国及びアジア太平洋地域への輸出ポテンシャル

NEDO「平成 22 年度海外炭開発高度化等調査(モンゴルの石炭開発状況)」では、輸

送コストの試算を行っている。 モンゴル(スフバートル) → ロシア(ナウスキ経由で極東のロシア港まで) モンゴル(ザミンウッド) → 中国(エリアン経由で天津港まで) タバントルゴイを起点として、ロシアを経由して輸送するルートと、中国を経由して

輸送するルートの比較を行った。次表に示すように、採炭コストを$12 とすれば、ロシ

アルートは輸送距離が長いため$81~$95、中国ルートは$48~$56 となる。

Page 23: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 458 -

石炭輸送コストのルート別試算

A B C D E出発地

→ガシュンスハイト →サインシャンド →サインシャンド →アイラグ゙(7)

→アイラグ゙(7)

→ザミウド →チョイバルサン →チョイバルサン →ウランバートル

中国/ロシア経由地 → バオトウ →ダトン →ソロビエスフスク →ウランウデ

港 →黄華(神華集団) →秦皇島 →ウラジオストック →ウラジオストック →ウラジオストック

新規のモンゴル鉄道 (2) (410km) (385km) (870km) (860km) (390km)

 輸送量 10百万 $21.00 $19.70 $44.50 $44.00 $20.00

 20百万 $14.80 $13.90 $31.40 $31.00 $14.10

  30百万 $12.70 $12.00 $27.00 $26.70 $12.10

既存のモンゴル鉄道 (3) (240km) (350km) (360km) (760km) 輸送量 10百万 $4.80 $7.00 $7.20 $15.20  20百万 $8.25 $12.60 $13.00 $27.40   30百万 $7.10 $10.90 $11.20 $23.60ゲージ交換(貨車積替)   - (6) $1.00

既存中国鉄道 (4) $23.50 $18.00(3,172km) (3,172km) (3,634km)

$31.40 $31.40 $35.98 合 計 輸送量 10百万 $56.50 $55.50 $94.90 $94.60 $83.18  20百万 $50.30 $53.15 $87.40 $87.40 $89.48   30百万 $48.20 $50.10 $81.30 $81.30 $83.68(註)

(4) 中国の鉄道運賃は実際の基本運賃設定(2008年)にもとづくもの

経由地

(7) 当初あったタバントルゴイからアイマグ間の新規鉄道建設案はモンゴルの建設優先順位から外れているが、比較するため本表に入れた。

(1) 露天掘炭鉱の生産コストを一律$12と設定。ここでは、簡易化するため生産コスト= FOR(Free on Rail)とする。 モンゴルでの露天掘り 生産コストは$11-$28。

(2) 新規鉄道建設のキャピタルコストをUS$180万/kmとし、20年の償却、15%の割引率と設定。鉄道のオペレーティングコストを$0.02/トン・キロ

(5) ロシアの鉄道運賃は、基本運賃に対しロシア側からのディスカウント・オファー(約62%)を加味して設定、前出の表8.3.1の割引後料金の単価(0.99米㌦/トン・100km)に距離数を乗じて求めた。

(6) 本ルートは中国ルートであるが、位置的観点から本線を利用して将来的に中国以外の国への輸出はないものと想定。したがって新規の鉄道のゲージは中国基準と同一にすることをモンゴル政府が認めることを前提としている。

(3) モンゴルの鉄道の年間輸送量を1000万トンとし、このときのオペレーティングコストを$0.02/トン・キロと設定。 取扱量が1000万トンを超える場合は新規の鉄道の建設が必要と仮定。新規の鉄道建設費は(2)の設定と同じ。

既存ロシア鉄道 (5)

石炭生産コスト

(露天掘)(1) $12 $12 $12

タバントルゴイ中国ルート ロシアルート

$12 $12

出所:NEDO「平成 22 年度海外炭開発高度化等調査(モンゴルの石炭開発状況)」

2009 Southern Mongolia Infrastructure Strategy, IBRD & World Bank

7.石炭供給能力の検討 ♦ モンゴルの南ゴビ堆積盆には原料炭が賦存し、開発が進められている。現在は数ヵ所

の炭鉱で生産が行われ、中国へ輸出されている。今後も既存炭鉱の拡張が計画され、

出所:NEDO「平成 22 年度海外炭開発高度化等調査(モンゴルの石炭開発状況)」 2009 Southern Mongolia Infrastructure Strategy, IBRD & World Bank

凡  例

A B C D E

点線:新規建設  実線:既設

ソロビエスフスク

サインシャインド

ガシュンスハイト

ウランウデ

タバントルゴイ

黄華

パオトウ

ダトン

ウラジオストック

秦皇島

チョイバルサンアイラグ

Page 24: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 459 -

7.石炭供給能力の検討 ♦ モンゴルの南ゴビ堆積盆には原料炭が賦存し、開発が進められている。現在は数ヵ所

の炭鉱で生産が行われ、中国へ輸出されている。今後も既存炭鉱の拡張が計画され、

新規炭鉱が開発されるが、モンゴルの石炭をアジア市場へ出すためには、前述のよう

に、中国もしくはロシアを経由する必要があり、この地域の大規模な開発には輸送イ

ンフラ(鉄道)の建設と輸送ルートの検討が必要である。 8.主要炭鉱の概要

NEDO「平成 22 年度海外炭開発高度化等調査(モンゴルの石炭開発状況)」において報

告されている 10 ヵ所の主要炭鉱の概要を記載する。

(1) アドンチュルン炭鉱(Aduunchuluun) 本炭鉱は、ウランバートルから東660km、ドルノド県(Dornod)のチョイバルサン(choibalsan)

市から北 5km に位置する。鉱区面積は 92ha で 1998 年 10 月 29 日に登録されている。鉱業権

者は Aduunchuluun 社である。テビシンゴビ夾炭層は、北西方向に 6~7km に亘り向斜構造

的な広がりをみせ、中心部へ向けて 5~6°傾斜している。この鉱床の炭層は、南から北の方向

に向けて厚さを減少し、場所によっては完全に消滅している場合もある。炭層が肥化する鉱床

の南部では炭層厚は 52.2m になる。炭層は地表から 2.5~79.0m の深さに賦存している。資源

量は 4 億トンと言われている。 1954 年から坑内採掘が行われており、1969年から露天採掘が開始された。年間生産能力は、

60 万トンであるが、近年は 30 万 t の生産量で推移している。生産された石炭の発熱量は 3,000~4,000kcal/kg(3,200kca/kg平均)で、主にチョイバルサンの石炭火力発電所に供給されている。

採掘は、容積 4.6~5m3の電気ショベルで行われており、剥土比は 1.3m3/t である。 本炭鉱では、豪州企業(White Energy)と日本企業(IB Daiwa)の協力で、褐炭のアップ

グレードを計画中である。試料(500 トン)を豪州へ送付し、試験結果が良ければ改質工場の

設計を開始する。褐炭のアップグレードモデル事業として年間 100 万トンを計画している。ま

た、ガス化についてもドイツの研究所レベルでの検討が進められている。 (2) バガヌール(Baganuur)炭鉱 バガヌールの石炭鉱床は、ウランバートル市から東 110km に位置する。1975 年から 1978

年にかけて旧ソ連が開発し、1978年から出炭を開始している。1995年にBaganuur Joint Stock Company となり、株式の 75%は国が保有し、25%は民間が保有している。2016 年には政府

所有を 75%から 51%にする。生産された石炭は主にウランバートルにある石炭火力発電所に

送られている。 この鉱床の炭層は、向斜構造を呈し、北東方向に延びている。鉱床の広がりは、長さ 15km、

幅 8km(鉱区内のピットサイズは 12km×4km)となっている。炭層は、南側で 8~10°の傾斜

を持ち、西方向に傾斜は増加し、15~20°となる。また、中央ではほぼ水平であるが、断層近

辺では傾斜は急激に増大する。3 つの主要な断層が確認されている。このうち 2 つの断層は鉱

床の南側に位置し、もう 1 つは中央部に位置している。断層の落差は 40~50m である。炭層

Page 25: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

- 460 -

は 5 層で、下位から 2 番目の炭層が採掘対象となっている。資源量は 5 億 9,980 万トン、2009年時点での可採埋蔵量は 2 億 3,120 万トンである。 石炭品位は、灰分は 12~17%であるが、最も高いところでは 40%という高い値を示す。水

分は 31.8~35.9%、発熱量は 2,783~3,615 kcal/kg となっている。地表下 20~25m では、石

炭が風化により、発熱量が 2,000 kcal/kg にまで低下している。 (3) シャリンゴル(Syaryn gol)炭鉱 3 本炭鉱はダルハンオール県(Darxan-Unl)ダルハン市(Darkhan)の南東 45km に位置する。

鉱区面積は 1,827.9ha、1999 年 4 月 20 日に登録、鉱業権社は、SHARYN GOL JSC 社である。

1930 年代に発見され、1962 年から開発が始まり、1965 年より採掘が開始されている。石炭

鉱床は中・後期ジュラ系に属し、北東と南西の大規模断層の間に賦存する。北東―南西方向の

軸を有する向斜構造を呈する。傾斜は東側で 8~12°、西側で 10~28°である。炭層は 10 層か

らなり、このうち、ベリカン(Velican)層が採掘対象としてシャリンゴルの可採埋蔵量はこ

れをもとに 1 億トンと確定された。ベリカンの採掘丈は 4.1~34.1m で、平均の厚さは 19.1mとなっている。露天採炭場ではベリカン層は、落差が 10m 未満の幾つかの断層によって切ら

れている。採掘は 3 台のドラッグライン、6 台のショベル、2 台のブルドーザー、8 台のダン

プトラックで行われている。剥土比は 6 m3/t である。 設計生産能力 250 万 t/年に対して、近年は、地質的条件、経済性などの理由から、70 万t

/年で推移している。シャリンゴル炭鉱からの石炭は、鉄道とトラックにより輸送されている。

主なユーザーはエルデネット石炭火力発電所、ダルハン石炭火力発電所である。2003 年に民

営化され、アメリカの投資会社 FIREBIRD GLOBAL MASTER FUND が株式の 54.42%を保

有している。

(4) シベオボ(Shivee-Ovoo)炭鉱 本鉱山は、ゴビスンベル(Govis’ber)県チョイル(Choyr)町より南東 20km に位置する。

鉱区面積は 91ha、鉱業権者は、Shivee-Ovoo 社で 1997 年 12 月 30 日に登録される。1990 年

より露天採掘を開始し、年産 120~140 万トンの褐炭を生産している。生産された石炭の大部

分はウランバートルの石炭火力発電所に供給されている。 石炭の確定資源量は 6 億トンで、鉱床の面積は 24.4km2、深さ 250m まで炭層の賦在が確認

されてしている。8 炭層が賦存するが、この内 4 層が採掘対象となっている、炭層の厚さは 4層の合計で平均 50.4m、炭層の傾斜は 6~10°と緩く、向斜構造を呈する。採炭には、5m3 の

電動式掘削機と容量 40 トンのダンプカーが利用されている。石炭は褐炭で、水分 39~42% 、灰分 7~9.5% 、発熱量は 2,970~3,050kcal/kg、硫黄分は 0.6~0.9% である。

(5) マックナリンスハイト(MAK Narryn Sukhait)炭鉱 4 ナリンスハイトの石炭鉱床は、ウムヌゴビ県のダランザドガド市から西 296km、中国との

国境シブフレン検問所(Shiveekhuren)から北 50km に位置するグルバンテス村(Gurvantce) 3 http://www.mongolia-investment.com/top-30-index/companies/sharyn-gol-/、他 4 平成 19 年度海外炭開発高度化等調査「中国における石炭輸出入動向とアジア石炭市場に与える影響」、

2009 年 3 月

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2.7 モンゴル

- 461 -

にある。1991 年にこの鉱床に対し探査が実施され、46~55°の傾斜を有する 9 枚の炭層が発見

された。その内の No.1 と No.5 の炭層が稼行対象炭層である。現在は No.5 層を採掘している。

No.5 の炭層は、厚さ 53.3m で、硫黄分は 1%以下、灰分は 5~30.3%、水分は 1.6~2.8%、発

熱量は 6,435~6,935 kcal/kg である。一般的な製品炭の分析値は、硫黄分が 0.37~0.9%以下、

灰分が 4.18~7.44%、水分が 5.8~11.5%、揮発分が 33.34~36.46%、発熱量が 6,354~7,217 kcal/kgである。また、本炭鉱の石炭は原料炭特性も有しており、粘結性を示すボタン指数(CSN)

は 4~6 である。 MONGOLYN ALT CORPORARION(以降「MAK」)社が 100% 保有する炭鉱である。鉱区

番号は 5458A、面積は 131ha、鉱業権登録日は 2003 年 2 月 25 日、鉱業権者は MAK 社であ

る。本炭鉱は 2008 年より生産が開始され、2009 年の生産量は 160 万トン、2010 年は 500 万

トン、2011 年以降は 1,000 万トンを計画している。使用している重機はロシアの Belaz 社製

のトラック(130t×12 台:モーター駆動)、EKG-10 ショベル(13m3×2 台:モーター駆動)、

CAT ホイルローダー(2 台)、CAT バックホー(4.6m3×6 台)である。必要な電力は 35kV 送

電線で中国から買電し、変電所において 6kV にして配電している。地表下 100m までの確定

炭量は 2.29 億t、現在地表下 300m まで調査を実施している。剥土比は、計画では 3.2 m3/tを想定しているが、現時点の剥土比は 1.6m3/t である。出荷は、切羽で買付け業者のトラック

(90~100t)が直接に積込み、場内において関税手続きを行い、そのまま中国国境まで運搬さ

れる。現在、生産する石炭は全量を選炭せずに中国に輸出しているが、2011 年には選炭設備

(500 万 t)を建設する計画を有している。 2010 年 10 月に山元から中国国境まで 56km の石炭運搬道路(舗装道路)が完成した。しか

し、調査時点(2010 年 10 月)では周辺炭鉱との協議・運搬業者との協議が遅れ運用はされて

いなかった。将来的には、中国国境まで鉄道を敷設する計画を持っている。鉄道敷設について

は、2008 年 8 月 20 日政府決定 319 号で山元から国境までの鉄道敷設の許可を得ている(敷設

に当たっての環境影響調査は完了、2011 年より建設を計画)が、その後の政府方針により同

区間の敷設はフェーズ 2 以降になった。鉄道敷設後の生産計画においては、当初 1,800 万トン

/年その後、2,600 万トン/年に増強する計画を立案している。 2010 年現在の生産量は、中国との国境の通過能力(2010 年 10 月調査時点では一日 430 台

程度しか国境を通過できない)によって生産量が規制されている。そのため政府に対して、10時~18 時の国境検問所の業務を 24 時間にするように要望をしている。

(6) オボート・トルゴイ(Ovoot Tolgoi)炭鉱 5 ナリンスファイト炭鉱の南に隣接する。鉱区番号は 12726A、鉱区面積は 9,308ha、鉱業権

者はカナダ SouthGobi Resources(中国語表記:南戈壁資源公司)、鉱業権登録日は 2007 年 9 月

20 日である。 2008 年より生産が開始された。2009 年 10 月に中投公司が 5 億ドルを出資した。2009 年の

生産量は 132.7 万トン、2012 年以降は 800 万トンを生産する計画である。確定及び推定炭量

は 171百万トン、予想炭量は 13百万トン、坑内採掘対象の確定及び推定炭量は 78.8百万トン、

予想炭量 20.5 百万トンである。

5 SouthGobi Resources ホームページ他

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2.7 モンゴル

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採掘対象は No.5、No.8、No.9、No.10 炭層で、No.5 炭層の硫黄分は 0.6% 、No.8、9、10炭層の硫黄分は平均で 1.3% 以下である。2011 年に Dry Air Separation 設備を導入、2013年には Washing 設備の導入を計画している。 石炭の販売については、中国の輸入炭サプライヤー“Winsway Coking Coal Holdings

Limited(永暉焦煤股份有限公司)”と戦略的提携を結び、2011 年に 320 万 t の石炭販売契約を

締結している。South Gobi Resources 社によると、2011 年第 1 四半期は既に合意された価格

に基づいて石炭を販売し、第 2~第 4 四半期は前もって行われる交渉で価格を決定する。デリ

バリー量は各四半期 80 万 t である。一方、5 年間の戦略的提携合意で SouthGobi Resources社は、少なくとも 320 万トン/年の石炭を Winsway に販売することになっている。 (7) タバン・トルゴイ(Tavan Tolgoi)炭鉱 6 タバン・トルゴイ炭鉱は、ウムヌゴビ(O’mnogovi)県のツォグセシ(Tsogttsetsii)村にあ

り、ウランバートル市の南 540km、中国国境から 250km の場所に位置している。鉱区番号は

287A(面積:89ha、登録日:1995 年 9 月 8 日、鉱業権者:Tavan tolgoin nuursnii uurkhai)、11945 A(面積:80ha、登録日:1995 年 9 月 8 日、鉱業権者:Tavan tolgoin nuursnii uurkhai)である。 本炭鉱が位置するタバントルゴイ石炭鉱床は、モンゴルで最大の石炭鉱床の一つで総埋蔵量

は約 60 億トンと言われている。1900 年代の初期にすでに探査が実施されていたが、石炭の生

産は 1955 年から国営炭鉱として、小規模に行われていた。小さいタバントルゴイとか既存タ

バントルゴイと言われ、新規開発中の炭鉱と区別されている。1995 年以降は国が 51%、民間

資本 49%の体制で操業されており、2007 年からは生産が拡大し、2009 年における石炭生産は

約 250 万 t に至った。採掘対象炭層は 4 番層(炭丈 18m)と 8 番層(炭丈 40m)の 2 炭層で、

287A 鉱区では 4 番層、11945A 鉱区では 8 番層が採掘されている。炭層傾斜は 22~23 度。石

炭は硫黄分とリン分は少なく、灰分は中程度、熱供給量は 6,500~7,500kcal/kg の高い値を示

している。現在の剥土比は 2.8 m3/t。採掘した石炭はトラックで全量中国に輸出している。 (8) エルデフ(Eldev)炭鉱 本炭鉱はドンドゴビ(Dornogovi)県ダラガンジャルガラン村(Dalanjargalan)に位置し、

チョイル町(Choir)から南東 40km、オロンオボー駅(Olon Ovoot)より東に 21km にある。

鉱区面積は 19ha、鉱業権者は Mongoliin alt Mak 社で 1997 年 7 月 31 日に登録されている。

炭層は一部熱変質を受けており、発熱量が 5,000~6,000 kcal/kg と比較的高い。生産能力は

100 万トン/年であるが、50 万トン/年の生産量で推移している。生産量の 50%は中国向け

に輸出している。石炭を乾留して半成コークス製造設備(30,000トン/年。6,500~6,800kcal/kg)が 2011 年 3 月に完成予定である。

(9) UHG(Ukuhaa Khudag)炭鉱

UHG(Ukuhaa Khudag)炭鉱は、ウムヌゴビ(O’mnogovi)県のツォグセシ(Tsogttsetsii)村にあり、タバントルゴイ炭鉱に隣接する。鉱業権者は、エナジーリソーシス社(Energy 6 SouthGobi Resources ホームページ他

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2.7 モンゴル

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Resources LLC 中国表記:蒙古焦煤企業)で 2006 年 8 月 29 日に鉱業権登録されている。 2009 年 4 月よりコントラクト・マイニング(コントラクター:Leighton Asia LLC 社)により

採掘を開始した。生産量は 2009 年が 190 万トン、2010 年が 350 万トン(計画)、2011 年は

500 万トン、2012 年以降は 1,000 万トンに拡張する計画で、資源量は 141 百万トン(原料炭)、

67 百万トン(一般炭)である。現在は原料炭特性のある 4 番層を採掘中である。 鉱業権者であるエナジー・リソーシス社は UHG 炭鉱を中核として、石炭輸送会社、石炭火

力発電会社、選炭設備会社等 9 社を設立している。石炭輸送を担当する会社(Coal Road LLC)

は、現在中国国境までの石炭運搬道路を建設中で 2011 年には完成予定である。石炭火力発電

会を担当する会社(Ukhaa Khudag Power Plant LLC)は、6MW×3 基の山元発電所を建設中

(将来的には 6MW×3 基に拡張する計画)、選炭設備を担当する会社(Enrestechnology LLC)

は、能力 500 万トン/年の選炭設備(Coal Handling and Preparation Plant)2 基の建設を

豪州のセッジマン社(Sedgman Limited)に 2 千万豪ドルで一括発注し(2008 年 3 月 3 日)、

建設中(さらに 1 機建設する計画を有している)である。2010 年 10 月 13 日にエナジー・リ

ソーシス社は全体の 20%に当たる 7 億 1940 万株を香港証券取引所に上場し、炭鉱開発のため

の資金を調達した。 (10) チンファマックナリンスハイト(Qinhua-MAK-Naryn Sukhait)炭鉱 本炭鉱は、ナリンスハイト炭鉱の西 3.5km に位置する WEST MINE(鉱区番号 5459A:面

積 70ha:鉱業権登録日 2003 年 2 月 25 日)と南東 2km に位置する EAST MINE(鉱区番号

227A:面積 91ha:鉱業権登録日 1995 年 10 月 8 日)から構成される。本炭鉱

(Qinhua-MAK-Naryn Sukhait)は、蒙古慶華集団(Qinhua)と MAK 社の合弁会社(50対 50)である Qinhua-MAK-Naryn Sukhait LLC が 2003 年より操業を行っている。WEST MINE と EAST MINE ともに、鉱業権者は MAK 社である。EAST MINE は切羽調整中で 2011年 1 月より出炭の予定とのことであった(2010 年 10 月調査時点)。現在は、地表から-55mの深度を採掘中である。2009 年の生産量は 185 万トン、使用重機は 4.5m3の積込重機とトラ

ック(同力重工製 30t×37 台)、剥土比は 4.5m3/t である。 出荷は、切羽で買付け業者のトラック(90~100 トン)に直接積込み、山元において関税手

続きを行い、そのまま中国国境まで運搬している。

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2.7 モンゴル

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モンゴル主要操業炭鉱の概要

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2.7 モンゴル

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炭鉱名 オボートトルゴイ炭鉱

位 置 ナリンスト炭鉱の南に隣接

歴 史 2008年 生産開始

権益保有者 カナダSouth Gobi Resources社

資源量 1.71億トン

可採埋蔵量

発熱量水分

原料炭、一般炭

生産量(販売量)

2012年:198万トン(原料炭125、一般炭73)2013年:326万トン(原料炭281、一般炭45)

供給先 トラックで全量中国へ輸出

備 考

中国の輸入炭サプライヤー"Winsway"と戦略的提携を結び、2011年以降5年間毎年320万トンを販売する。

モンゴルの主要開発プロジェクトの概要

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2.7 モンゴル

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9.タバン・トルゴイの石炭開発 タバン・トルゴイの石炭開発に関しては、以下に示すとおりである。西ツァンキプロジ

ェクトについては、2011 年 6 月に、モンゴル政府は 6 グループに共同開発案を、発電所、

製鉄所、化学プラント、鉄道など輸送インフラを含めるという条件付きで提示した。7 月

に神華/三井、日本・韓国・ロシアの 5 社コンソーシアム、ロシア鉄道の 3 グループに落

札者が内定したと報道されたが、政府案が審議されなかった。その後の情報では、大統領

は、ピーボディーやロシア鉄道、神華集団などとの交渉が行き詰まっており、9 月発足の

新政権において本交渉が最優先課題である(2012.7.2 ブルームバーグ)。 政府は昨年 2012 年 5 月、外国企業が資源や金融などの分野に投資する際は当局の承認

が必要と決めるなど規制を強化した。これは「日本企業進出の足かせとなる」(日系商社

幹部)と懸念されている。日本が権益獲得を目指すタバン・トルゴイ炭鉱の国政入札は結

論が先送りされたままである(2013.5.27 ウランバートル共同)。ガンホヤグ鉱業相は、タ

バン・トルゴイ鉱山開発の国際入札について「日本や韓国などの国々と石炭売買の長期契

約を目指したいる」として、日本の資源確保に配慮する姿勢を示した。また、「日本は先

端技術を持っており、モンゴル経済と相互補完関係にある。日本企業の投資を支持する」

と強調した(2013.5.29 ウランバートル共同)。タバン・トルゴイ鉱山の日本企業などが国

際入札に参加した鉱区で、落札業者未定のままモンゴル国営企業(エルデネス)が今月中

にも石炭採掘に着手することが分かった。中国への石炭輸出を重視するモンゴル側は、国

際入札手続きより早期開発を優先した。日本企業関係者は「国際入札は事実上、白紙化さ

れる恐れがある」と、日本が同鉱山の権益を逃がす懸念が広がっている。バトスーリ CEOは「国際入札結果が決まるまでの間、他のモンゴル企業と協力して採掘行う」とし、年内

に 260 万トン生産し中国に供給する見通し(2013.6.10 北京共同)。

タバントルゴイの石炭開発の概要

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2.7 モンゴル

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10.炭鉱の権益獲得に関する情報 HNR がモンゴル政府との直接交渉開始へ。オボート・エルデネット鉄道の権益に関して。

豪州のアスパイア・マイニングは 11 日、同社子会社のノーザン・レイルウエイズが、モンゴ

ル政府と石炭輸送鉄道の権益に関する直接交渉を開始すると発表した。オボート・エルデネッ

ト鉄道はオボート鉱区と既設鉄道が通るエルデネット間を結ぶ石炭輸送鉄道で、総延長は547km。

オボート鉱区では 2019 年に石炭生産が開始される予定で、フルスケール段階で 1 千万トンが

生産される(2015.5.12 テックスレポート)。 神華/住商/ERL がタバン T 鉱床の開発者に。西エリアで 3 千万トンの石炭を生産へ。 中

国神華集団、エナジー・リソーシズ社、住友商事のコンソーシアムが、タバントルゴイの西ツ

ァンキの開発者に選定された。同コンソーシアムは、開発に着手し 3 千万トン/年の石炭を生

産し、大半は中国に出荷されるが、一部は日本や韓国などにも輸出される。モンゴル政府は 2011年 1 月に競争入札を実施したうえで、同年 7 月に西エリアの開発者に、中国神華集団、ロシア

鉄道、ピーボディの 3 社を選定した。しかしその後、モンゴル内部で意見対立があり、競争入

札は棚上げにされていた。住友商事は「当社は石炭の販売と海上貿易の機能を担う検討を進め

ていく」とし、採掘には直接関与しないとみられる。(2014.12.25 テックスレポート、日本経

済新聞)。

POSCO/双日などがモンゴルで発電所建設。 韓国の POSCO エナジー社や双日などコンソ

ーシアムが、ウランバートル郊外に 45万 kWの石炭火力発電所を建設する。2015年に建設開

始、19 年に完了する。25 年間運営した後、所有権をモンゴルに移譲する。同コンソーシアム

は POSCO、双日、仏 GDF スエズの 3 社が 30%、モンゴルのニューコムが 10%保有する

(2014.6.23 テックスレポート)。 中国向け輸出減と価格下落で、モンゴルの原料炭輸出産業が苦境に陥る。 価格の低迷に加

えて、中国が 2014 年に入り原料炭輸入を抑制したことから、モンゴルの各炭鉱の経営が急速

に悪化してきている。2014 年 1~3 月におけるモンゴルからの原料炭輸入量は 202 万トンにと

どまり、前年実績を 22%下回った。カナダのサウスゴビ・リソーシズがモンゴルで操業する

オボート・トルゴイ炭鉱の 2014 年 1~3 月における生産量は 39 万トンで、、前年同期比 77%も減少した(2014.4.23 テックスレポート)。

中国がモンゴルから今後 20 年間で 10 億トンの石炭を輸入へ。モンゴルのアルタンホヤグ首

相は石炭国際投資展覧会において、2013 年のモンゴルの石炭輸出量は 1.8 億トンになったと

述べるとともに、今年の輸出量が 3.4 億トンになるとの見通しを示した。モンゴルは重要な石

炭輸出市場である中国との間で石炭の輸出と加工について合意書を調印した。これによると、

今後 20 年間、中国はモンゴルから 10 億トンの石炭を輸入することになる(2014.2.21 エイジ

アム研究所情報)。 モンゴル経済政策、「脱中国」日米欧資本で。モンゴル国家統計局によると、対中輸出額は

09 年の 13.9 億ドルから 12 年には 40.6 億ドルと約 3 倍に増えた。資源探査、採掘ライセンス

計1800件のうち51%を中国が占める。このままでは中国に吸収されると心配する声は大きい。

中露に挟まれた中で、「崩れたバランスを日米の力を借りて立て直したい」というモンゴルの

危機感がある。タバン・トルゴイ炭田などの開発も日米欧の資本を導入し、輸出先の多様化を

図ろうとしている(2013.7.18 読売新聞)。

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2.7 モンゴル

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モンゴル、外資規制廃止へ。モンゴルは昨年 5 月に施行した「外資規制法」の廃止へ動き出

す。6 月 26 日の大統領選で成長重視のエルベグドルジ大統領が再選したことで、新法の制定

作業を本格化する。タバン・トルゴイ炭鉱の権益取得を目指す三井物産、伊藤忠商事など外資

にとっては計画が立てづらくなっていた(2013.7.2 日経産業新聞)。 モンゴル炭鉱の国際入札、日本勢の関心は高く。60~70億トンの石炭埋蔵量があるタバン・

トルゴイ西鉱区の国際入札に、米国などに交じって日本からは伊藤忠商事や住友商事などの商

社連合、三井物産が参加している。モンゴル側の対応は遅く、利益配分も含め時間がかかる。

このため、先月末に安倍首相がモ首相と会談し、42 億円の円借款や技術協力を表明した

(2013.4.3 日経産業新聞)。 安倍首相、モンゴル炭田開発で連携。 安倍首相はウランバートルでモンゴルの大統領及び

首相と会談し、世界最大級とされる炭田の開発で連携する方針を確認した。両首相が合意した

のは、火力発電所の設備更新のための 42 億円の円借款や技術提供、地下鉄建設、環境対策

(2013.3.31 日本経済新聞)。 モンゴル「脱中国」図る。モンゴルが日本に一番期待するのは、タバン・トルゴイ炭田の石

炭を、中露国境に近い当方のチョイバルサンまで輸送する 1100 キロの鉄道建設計画への参加

で、計画ルートは中国を避けるルートになっている。将来的に資源輸出先の多角化を図るのが

戦略である。エルデネス・タバントルゴイは 1 月、中国へのコークス炭輸出を突然「停止する

」と発表した。中国国内の販売価格とモンゴルから輸出する際の価格差は「約 15 倍」とされ

、不満を持つモンゴル側の駆け引きとされる(2013.3.30 読売新聞)。 モンゴルが中国向け原料炭輸出を増加。中国の需要増が見込まれることから、モンゴルは中

国への原料炭輸出を増やすことにした。サウスゴビグループは中国の原料炭貿易企業のWinsway Coking Coal と 120 万トンのセミソフト原料炭売買契約に調印した。2012 年下半期からサウ

スゴビグループ傘下の Ovoot Tolgoi 炭鉱は生産を停止し、販売量は激減していた。たとえ、中

国への原料炭輸出がが拡大しても、年間目標の 320 万トンは達成できない(2013.7.26)。 モンゴルからの輸入量が 8 割以上減少。 策克通商口では依然、1 日 600~700 台のトラッ

クが行き来していたが、今は 1 日僅か数十台、原炭輸入量は 4,000~5,000 トンで 8 割以上減

少している。中国国内の鋼材やコークス等の市場低迷、モンゴルの石炭山元価格高騰が影響し

て、策克通商口の輸入炭は販売不振となっている。輸入企業は以前の十数社から 3、4 社に減

っている(2013.5.20)。 モンゴルから中国への石炭輸出が減りロシアが中国向けを増やした。2 月の中国のコークス

用炭の輸入は 540 万トンになった。これは前月比 24.5%減少しているが、前年同月比では 16%増加している。モンゴルからの輸出は 33.6 万トンで 1 月比 76%減、昨年同月比 80.7%減であ

る。一方、ロシアはコークス用炭を中国へ輸出する意思を明確にしており、2 月の輸出量は 52.7万トンで前年比 35%増である(2013.3.12)。 モンゴルが中国アルミとの 2.5 億ドルの石炭売買契約を撤回すると発表。 エルデネス・

タバントルゴイ社は、昨年 7 月に 2.5 億ドルに上る原料炭を中国アルミに販売する契約をして

いたが、モンゴル側はもっと高い価格で売ることを希望しており、代金返却後に改めて契約条

件の協議をする(2013.3.4)。

モンゴルに関しては、豪州フンヌコール社が 2010 年に既に 3 つの資産(Eldnes:80%、Unst Khdag:60%、Tsant Uul:90%、出所:テックスレポート)を獲得済みであるが、さらに 6 月

Page 34: 2.7 モンゴル - JOGMECcoal.jogmec.go.jp/content/300315157.pdf2.7 モンゴル - 436 - 2.7 モンゴル 1.一般情勢 (1) 国名 (英語名) モンゴル国 (Mongolia)

2.7 モンゴル

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に南ゴビブヤン原料炭プロジェクトの権益を 60%獲得した。また、モンゴル政府は 7 月にタ

バン・トルゴイ(東ツァンキ鉱区)の権益を 50%放出することを決めた。これにより、50%は政府が保有するが、30%は市場を通じて国内外の企業に売却、10%はモンゴル企業に売却、

10%は国民に与えられる。

日本企業に関する権益獲得への取り組み情報

企業名 年 月 出 所

伊藤忠 2010年5月 伊藤忠HP等

丸 紅 2010年7月 丸紅HP等

2012年6月 日刊産業新聞

2010年7月Prophecy

ResourcesのHP等

三井物産等の日本企業

2011年1月

三井物産等の日本企業

2011年6月 日本経済新聞

住友商事、神華集団、エナジーリソーシス

2014年12月テックスレ

ポート

日本経済新聞

モンゴル国営企業エルデネスMGL LLCが行ったタバントルゴイ石炭鉱床の投資・開発の事前資格審査の国際入札に対して、三井物産は中国神華エナジー社と共同で応札、住友商事、伊藤忠商事、双日、丸紅はロシア鉄道、韓国の企業体と共同で応札した。2011年3月4日モンゴル閣議はショートリストに残す6グループを発表し、日本企業の2グループも残った。

神華/住商/ERLがタバンT鉱床の開発者に。西エリアで3千万トンの石炭を生産へ。中国神華集団、エナジー・リソーシズ社、住友商事のコンソーシアムが、タバントルゴイの西ツァンキの開発者に選定された。同コンソーシアムは、開発に着手し3千万トン/年の石炭を生産し、大半は中国に出荷されるが、一部は日本や韓国などにも輸出される。モンゴル政府は2011年1月に競争入札を実施したうえで、同年7月に西エリアの開発者に、中国神華集団、ロシア鉄道、ピーボディの3社を選定した。しかしその後、モンゴル内部で意見対立があり、競争入札は棚上げにされていた。住友商事は「当社は石炭の販売と海上貿易の機能を担う検討を進めていく」とし、採掘には直接関与しないとみられる。

モンゴル政府はタバントルゴイ炭鉱開発で、石炭を利用した発電所、製鉄所、鉄道施設などのインフラを重視し、6グループのうち、モンゴル側の要求を受け入れたグループの連合体と合意する計画である。総投資額は約1兆円を超えると思われるが、1社当たりの事業規模小さく採算確保が難しくなる。

双 日 Prophecy Resource Corporationは、双日と同社が保有するモンゴル北部のウラン・オボー(Ulaan Ovoo)炭鉱で採掘される一般炭208万トンを中国及び中国経由で韓国、日本へ販売する契約を結んだと発表した。契約期間は1年で双方の合意で延長できるという。

記事概要

モンゴル炭を扱うWinsway Coking Coal(永喗焦炭股扮社)の転換社債1,000万ドルを受け入れたと発表した。

丸紅も、Winsway 社と戦略的包括提携協定を締結したと発表。新聞等の報道によれば、丸紅はWinsway 社との株式数%を保有する。出資額は10億円未満の模様と報じられた。Winsway 社は2009中国に輸入されるモンゴル炭の55.5%を取り扱っている。

モンゴルで資源事業を手掛ける中国オルドス集団の子会社中蒙集団に10%(約3億7,500万円)出資すると発表した。