Upload
phamthuan
View
216
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
1-1-2 小松川第二ポンプ所建設その 11 工事における
ケーソン沈設に伴う近接構造物への影響と対策について
第一基幹施設再構築事務所 工事第一課 山口 貴士
1.はじめに
小松川第二ポンプ所は、既設の大島ポンプ所と小松川ポンプ所流域の雨水流出量の増大
に伴う対応と、合流式下水道の改善対策として、雨水貯留池の整備を行うとともに、大島
ポンプ所の放流先を流れの少ない旧中川から荒川に変更するために新設するポンプ所であ
る。
本工事は、小松川第二ポンプ所建設のため、ニューマチックケーソン工法により東西方
向で最大 38.8m、南北方向 26.5m の 4 号ケーソンを T.P.-42.24m まで沈下させるものであ
る。
4 号ケーソンと近接する国土交通省の荒川ロックゲート(閘門)はケーソン南辺と平行
に位置しており、その離隔は約 26m(図 3)であった。ケーソン沈設は、傾斜・搖動の繰
返しを伴うことから、周辺地盤に傾斜・搖動による地盤の引き込みと押し込みによる影響
が交互に発生すると考えられた。
このことから、本工事では、4 号ケーソンの沈設において近接する荒川ロックゲートへ
の影響を最小限とするため、事前に荒川ロックゲート及び周辺地盤への変状等の影響解析
を行い、対策を検討、実施したことについて報告する。
P
放流渠
大島ポンプ所
小松川第二ポンプ所561ha
南大島幹線
P
小松川ポンプ所
P
小松川第二ポンプ所550ha 68.0m3/s
浸水対策幹線
合流改善対策幹線
幹線(各対策除く)
P ポンプ所
凡例
小松川第二ポンプ所流域
旧中川
荒川
小松川ポンプ所22.5m3/s
大島ポンプ所27.0m3/s
TP+4.50m(盛土)
シールド工事事務所
現場事務所
汚染水処理プラントホスピタル
ロックコンプレッサー防音ハウス
キューピクル
洗車場
施工位置(4号ケーソン)
荒川ロックゲート
荒川
1号ケーソン施工済み
2号ケーソン(東大島幹線シールド工事)
3号ケーソンその9工事
図 1 施工位置図 図 2 全体平面図
2.荒川ロックゲートへの影響検討
4号ケーソン沈設による影響範囲は、図 3 の
とおりであり、国土交通省との協議の結果、荒
川ロックゲートの基礎杭の許容水平変位量の管
理値は表 1 の数値に定められた。
荒川ロックゲート
第4号ケーソン
26m
33m
44
.9m
45°
影響範囲
図 3 影響範囲図
1次管理値 2次管理値 許容値
7㎜ 9㎜ 10㎜
引き込み 押し出し 許容値
ロックゲート最大水平変位量
20mm 13mm 10㎜
7
TP+4.50m(盛土)
シールド工事事務所
現場事務所
汚染水処理プラントホスピタル
ロックコンプレッサー防音ハウス
キューピクル
洗車場
施工位置(第4号ケーソン)
荒川ロックゲート
1号ケーソン
2号ケーソン
3号ケーソン
鋼矢板ⅤL型
延長=30m, 深さ=30m施工位置
(4号ケーソン)
地盤変状解析は、一般に有限要素法 (FEM)
による解析が採用されている。
本工事では、荒川ロックゲートと 4 号ケー
ソンが、ほぼ平行に位置することから、解析
は二次元FEMを採用した。モデル化にあた
っては、小松川第二ポンプ所地質調査報告書
1)を参照し地質構成を定め、土質定数を決定
した。
ケーソン沈設に伴う周辺地盤への主な影響
は、図 4 に示す引き込みと押し出しである。
無対策で 4 号ケーソンを沈設した場合の影響
解析を行った結果、表 2 より、荒川ロックゲ
ート基礎杭頭部の最大水平変位量は、許容値
(10 ㎜)以上となった。
このことから、4 号ケーソンの沈設による
荒川ロックゲートの変位量を許容値以内とす
るため、次に述べるような対策について検討
を行った。
3.対策工の選定
本工事では以下のとおり、ケーソン沈設に伴う引き込みと押し出しによる周辺地盤への
影響を低減する対策として、ケーソンと対象構造物の間に遮断壁を設置する方法について
検討を行った。
3.1 引き込み対策工(鋼矢板)の検討
ケーソン沈設に伴う引き込みに対しては、一
般的に縁切りの鋼矢板が有効であり、小松川第
二ポンプ所内で先行的に施工した 3 号ケーソン
沈設においても L=30m の VL 型の鋼矢板を設置
している。そこで、本工事においてもケーソン
沈設に伴う引き込みによる周辺地盤への影響低
減のために、図 5 に示すように、L=30m の VL
型の鋼矢板をケーソン周辺に設置し、影響低減
に対する解析を行った(表 3)。解析結果より、
荒川ロックゲート基礎杭の最大水平変位量は、
1 次管理値内の 4 ㎜となり、鋼矢板は引き込み
に対して有効な対策であることが判明した。一
方、押し出しについては、最大水平変位量が 13
㎜となり、許容値を超える値となったため、押
し出しに対しての対策工が別途必要となった。
荒川ロックゲート
第4号ケーソン
引き込み
押し出し
図 4 ケーソン沈設に伴う近接
構造物への影響イメージ図
表 1 荒川ロックゲート基礎杭の
許容水平変位量
図 5 引き込み対策工(鋼矢板)
表 3 引き込み対策工の解析結果
表 2 無対策時の水平変位量
引き込み 許容値 ※押し出し荒川ロックゲート
最大水平
変位量4㎜ 10㎜ 13㎜
3.2 押し出し対策工(防護壁)の検討
上記のとおり鋼矢板による対策工は、ケーソンの引き込みの影響に対しては有効であっ
たが、押し出しに対しては有効ではないため、次に防護壁による対策工について検討を行
った。
二次元 FEM 解析の結果より、地盤の変形は、防護壁が防護する構造物に近い方が小さ
くなる結果となり、地盤を押し出す力が掘削面から離れるにつれて小さくなるためと推定
できた。そこで、押し出し対策の防護壁の設置位置について、敷地内で掘削面からロック
ゲートの最大離隔となる位置に防護壁を設置することについて検討を行った。
防護壁として、場所打ち杭(B=1.57m、L=32m)、鋼管矢板(φ 800、L=38m)、高圧噴射撹
拌杭 (L=38m)、SMW での壁体(L=38m)の 4 種類を考えた。
それぞれの案を解析した結果、いずれの対策工も、押し出しの影響については、許容値
を満足するが、引き込みについては、許容値を満足できなかった。
このため、引き込みと押し出しの対策工を組み合わせた併用工法を検討することとした。
表 4 押し出し対策工の解析結果
荷重ケース 押し出し 許容値 ※引き込み
場所打ち杭( B=1.57m、L=32m) 2 ㎜ 10 ㎜ 19 ㎜
鋼管矢板(φ 800、L=32m) 5 ㎜ 10 ㎜ 19 ㎜
高圧噴射撹拌杭(L=32m) 7 ㎜ 10 ㎜ 19 ㎜
SMW(L=38m) 6 ㎜ 10 ㎜ 19 ㎜
3.3 引き込み対策と押し出し対策の併用工法の検討
表 4 に示す 4 種類の押し出し対策工に、引き込み対策工の鋼矢板を追加した併用工法を
対象として、荒川ロックゲートの変形抑制効果 (基礎杭の水平変位量 )と経済性等の比較を
行い、対策工法を選定することとした。
解析の結果、図 6 に示すように、いずれの工法においても、荒川ロックゲート基礎杭の
水平変位量を許容値以下に抑えられることが判明した。
表 5 に示すとおり、鋼矢板と場所打ち杭による対策工は、荒川ロックゲートの変形抑制
効果及び工期、経済性のいずれにおいても有利な結果となったことから、本工事で採用し
た。
-45
-40
-35
-30
-25
-20
-15
-10
-5
0
5
-30 -25 -20 -15 -10 -5 0
TP(m
)
水平方向変位量(cm)
最近接杭(掘削部から27.8m)
無対策
縁切+コンクリート杭(φ2000)
縁切+鋼管矢板
縁切+高圧噴射(38m)
縁切+SMW(38m)-45
-40
-35
-30
-25
-20
-15
-10
-5
0
5
0 5 10 15 20 25 30TP
(m)
水平方向変位量(mm)
最近接杭(掘削部から27.8m)
無対策
縁切+コンクリート杭(φ2000)
縁切+鋼管矢板
縁切+高圧噴射(38m)
縁切+SMW(38m)
許容値
一次管理値
一次管理値
許容値
場所打杭無対策
鋼矢板+場所打ち杭
鋼矢板+鋼管矢板
鋼矢板+高圧噴射撹拌
鋼矢板+SMW
無対策
鋼矢板+場所打ち杭
鋼矢板+鋼管矢板
鋼矢板+高圧噴射撹拌
鋼矢板+SMW-45
-40
-35
-30
-25
-20
-15
-10
-5
0
5
-30 -25 -20 -15 -10 -5 0
TP(m
)
水平方向変位量(cm)
最近接杭(掘削部から27.8m)
無対策
縁切+コンクリート杭(φ2000)
縁切+鋼管矢板
縁切+高圧噴射(38m)
縁切+SMW(38m)-45
-40
-35
-30
-25
-20
-15
-10
-5
0
5
0 5 10 15 20 25 30
TP(m
)
水平方向変位量(mm)
最近接杭(掘削部から27.8m)
無対策
縁切+コンクリート杭(φ2000)
縁切+鋼管矢板
縁切+高圧噴射(38m)
縁切+SMW(38m)
許容値
一次管理値
一次管理値
許容値
場所打杭無対策
鋼矢板+場所打ち杭
鋼矢板+鋼管矢板
鋼矢板+高圧噴射撹拌
鋼矢板+SMW
無対策
鋼矢板+場所打ち杭
鋼矢板+鋼管矢板
鋼矢板+高圧噴射撹拌
鋼矢板+SMW
水平方向変位量(mm) 引き込み:負 水平方向変位量(mm) 押し出し:正
図 6 引き込み対策と押し出し対策の併用工法の解析結果
表 5 引き込みと押し出しの両方に有効と考えられる対策工の比較
工法分類
① ② ③ ④
備考鋼矢板+
場所打ち杭
鋼矢板+
鋼管矢板
鋼矢板+
高圧噴射撹拌杭
鋼矢板+SMW
効果
引き込み 7㎜ 7㎜ 7㎜ 7㎜許容値10㎜
押し出し 2㎜ 4㎜ 5㎜ 5㎜評価 ◎ ○ ○ ○
工期98日◎
175日×
150日△
156日△
費用 ◎ ○ × △
総合評価 ◎ △ × △
施工箇所(第4号ケーソン)
第2号ケーソン(既設)東大島幹線シールド工事
第1号ケーソン(既設)
荒川ロックゲート
場所打ち杭
鋼矢板
第3号ケーソン(既設)
施工箇所(4号ケーソン)
2号ケーソン(既設)東大島幹線シールド工事の
立坑として利用
図 7 引き込みと押し出し対策の併用工法のイメージ図
3.4 計測管理及び計測結果
前項において選定した対策工の施工は、荒川ロックゲートと周辺地盤の挙動を計測管理
しながら慎重に進めることとした。
図 8 に計測位置、表 6 及び図 9 に計測結果を示す。
工事期間を通して、ロックゲートへの影響を管理値内に抑えることができ、無事に竣工
を迎えることができたことから、今回採用した引き込みと押し出しの併用工法は有効な対
策だったといえる。
計測地点
水平変位量
(最大値)実測値
(引き込み)実測値
(押し出し)
荒川ロックゲート基礎杭
2mm 3mm
H25/10/1 H25/12/1 H26/2/1 H26/4/1 H26/6/1 H26/8/1 H26/10/1 H26/12/1
一次管理値(7mm)
許容値(10mm)
押し出し最大3mm
引き込み最大2mm
図 9 荒川ロックゲート基礎杭計測結果
4.まとめ
本工事では、ニューマチックケーソン工法を採用した場合の重要構造物との近接施工に
あたり、ケーソン沈設による周辺地盤への影響低減対策として、引き込みについては鋼矢
板を、押し出しについては場所打ち杭を対策工とする併用工法を採用し施工した。
また、本工事では対策工に加えて、荒川ロックゲート及び周辺地盤の挙動の計測管理に
より、常にケーソンの施工によるリスクを最大限低減する措置を講じた。
今後も、当局のポンプ所等の大規模構造物の建設において、本工事と類似するような重
要構造物との近接施工に際し、引き込みと押し出しの両対策が必要となると考えられる。
今回の経験を活かし、第一基幹施設再構築事務所の「安全は、何よりも優先する」を合言
葉に、ケーソン沈設に伴う重要構造物への影響を最小限にとどめる対策を図り、工事を安
全に施工していきたい。
参考文献
1) 小松川第二ポンプ所地質調査報告書、平成 10 年
表 6 荒川ロックゲート基礎杭計測結果
図 8 計測位置図
水平変位量(最大値)
実測値(引き込み)
実測値(押し出し)
荒川ロックゲート基礎杭
2mm 3mm
実測値(引き込み)
実測値(押し出し)
基礎杭水平変位量(最大値)
2mm 3mm
(mm) 引き込み:負 押し出し:正