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- 1 - 長崎県言語聴覚士 県南ク 平成 平成 平成 平成 25 25 25 25 年度 年度 年度 年度 新症例 新症例 新症例 新症例発表 発表 発表 発表 開 催 日 :2014 年 1 月 25 日(土) :社福祉法恩賜財団済生支部 済生長崎病院 管理棟1階 議室 開催時間:14:00~ 受開始 14:30~17:40 発表

平成225525年度25 年度 新ㅴ症例発表㆟st-nagasaki.main.jp/temp/20140125.pdf · 60 歳代男性。経鼻経管栄養による代替栄養。医学的診断名:舌・喉頭癌、食道癌。現病歴:平成

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長崎県言語聴覚士会 県南ブロック

平成平成平成平成 25252525 年度年度年度年度

新人症例新人症例新人症例新人症例発表会発表会発表会発表会

開 催 日 :2014 年 1 月 25 日(土)

会 場 :社会福祉法人恩賜財団済生会支部

済生会長崎病院 管理棟1階 会議室

開催時間:14:00~ 受付開始

14:30~17:40 発表

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≪参加者のみなさまへ≫

・ 当日は参加受付をお願いします。

・ 開始直前は混雑が予想されますので、時間に余裕をもって会場へお越しください。

・ 会議室内では携帯電話の電源を切るかマナーモードに設定してください。

・ 活発な質疑応答を宜しくお願いします。

≪発表者のみなさまへ≫

倫理的配慮

・ 対象者を特定しうる情報を記載しないように、十分ご注意ください。

・ 個人を特定しうる情報には、イニシャル、カルテ番号、施設名、部署名、年齢、生年月日、発

症日、入院期間などが含まれます。

発表時間

・ 1 演題につき、発表 7 分・質疑応答 3 分です。発表時間は厳守してください。

発表形式

・ ご利用になるアプリケーションはマイクロソフト Power Point(2010 まで)にて作成して

ください。

発表データ作成にあたってのお願い

・ 保存するメディア媒体は CD-R、USB メモリースティックとしてください。ただし、Macintosh

をご利用の場合は、本体ごとお持ち込み頂き、プロジェクターとの接続ケーブルもご用意くだ

さい。

・ CD-R への書き込みの場合は ISO9660 方式でお願いします。

USB メモリーは最新のウイルス駆除ソフトにてチェックを行ってください。

・ プレゼンテーション内に動画がある場合は、すべてのデータを同一のフォルダに入れてくださ

い。

・ 動画ファイルは標準の Media Player にて再生できるように作成してください。

推奨動画形式:WMV 形式。

・ プレゼンテーションに動画を使用する場合は、バックアップとして動画ファイルを作成した PC

を持参してください。

また、発表データは、作成した PC 以外でも問題なく再生/表示出来ることを事前にご確認くだ

さい。

発表データの持参方法

・ データは受付開始 20 分前までに会場の受付へ持参してください。

また、受付ではデータの修正は行えませんので、最終データをお持ちください。

・ ファイル名は『演者名(フルネーム) タイトル 所属』としてください。

当日、発表データの確認

・ PC を持ち込まれる方は、各自で出力設定の方法を確認してください。PC によっては付属の

ケーブルが必要なこともありますのでご注意ください。

プロジェクターとの接続ケーブルは Dsub15 ピンを使用します。

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≪タイムスケジュール≫

開会挨拶

戸澤明美 先生(長崎北病院 長崎県言語聴覚士会 副会長) 14:25

第Ⅰ部 14:30 ~ 15:25

座長:楠本由美子 先生 (長崎県言語聴覚士会 学術局)

舌・喉頭癌により全摘手術を受け嚥下障害を呈した一症例舌・喉頭癌により全摘手術を受け嚥下障害を呈した一症例舌・喉頭癌により全摘手術を受け嚥下障害を呈した一症例舌・喉頭癌により全摘手術を受け嚥下障害を呈した一症例

社会医療法人 長崎記念病院 大塚聡子

多診療科目との連携により誤嚥性肺炎の原因が明らかになった症例多診療科目との連携により誤嚥性肺炎の原因が明らかになった症例多診療科目との連携により誤嚥性肺炎の原因が明らかになった症例多診療科目との連携により誤嚥性肺炎の原因が明らかになった症例

地方独立行政法人長崎市立病院機構 長崎市立市民病院 浦優子

STSTSTST 介入により嚥下機能、音声機能を再獲得した廃用症候群の一例介入により嚥下機能、音声機能を再獲得した廃用症候群の一例介入により嚥下機能、音声機能を再獲得した廃用症候群の一例介入により嚥下機能、音声機能を再獲得した廃用症候群の一例

地方独立行政法人 長崎市立病院機構 長崎市立市民病院 青木玲子

胃瘻造設者の在宅支援-家族が行える経口摂取・口腔ケアを目指して-胃瘻造設者の在宅支援-家族が行える経口摂取・口腔ケアを目指して-胃瘻造設者の在宅支援-家族が行える経口摂取・口腔ケアを目指して-胃瘻造設者の在宅支援-家族が行える経口摂取・口腔ケアを目指して-

社会医療法人春回会 長崎北病院 林加奈子

嚥下失行が疑われた誤嚥性肺炎を呈した一症例嚥下失行が疑われた誤嚥性肺炎を呈した一症例嚥下失行が疑われた誤嚥性肺炎を呈した一症例嚥下失行が疑われた誤嚥性肺炎を呈した一症例

社会医療法人 長崎記念病院 大橋奈美

第Ⅱ部 15:30 ~ 16:35

座長:安藤隆一 先生 (長崎リハビリテーション学院 事務局)

全失語症例への描画を用いた訓練~言語機能向上と伝達手段の獲得を目指して~

社会医療法人春回会 長崎北病院 田川あすか

自主練習の課題の選定と練習内容の工夫により、読解力と注意・記憶力が向上した高次脳機能障害症例

社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院 小松千衣

くも膜下出血により病識の欠如を呈した症例

国立長崎病院 久田愛

高次脳機能障害を呈した症例に対する日常生活に即したアプローチの工夫

社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院 田中 愛

認知機能の低下と失語症を呈した症例について

医療法人稲仁会 三原台病院 リハビリテーション科 木村江里

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語列挙能力の伸び悩みを認めた一症例

社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院 北別府亜美

第Ⅲ部 16:40 ~17:35

座長:平田あき子 先生 (長崎大学病院)

高橋理恵 先生 (長崎市障害福祉センター)

訓練に難渋したが機能面の改善を認めた構音障害を呈する一症例

社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院 久保花恵

脳梗塞再発により構音障害が重度化した一例

医療法人光善会 長崎百合野病院 南夕貴

エネルギー付加量を考慮できていなかった一症例

社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院 江頭香穂

蝸牛奇形児に対する人工内耳の検討

医療法人 萌悠会 耳鼻咽喉科 神田 E・N・T 医院 中田朱香

両側人工内耳装用児の聴取能

医療法人 萌悠会 耳鼻咽喉科 神田 E・N・T 医院 宮本美里

閉会挨拶 17:40

田上由貴子 先生

(小江原中央病院 通所リハビリテーション 長崎県言語聴覚士会 会長)

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舌・喉頭癌により全摘手術を受け嚥下障害を呈した一症例

Key Word:嚥下障害、音声障害、器質性構音障害、記憶障害

大塚聡子

社会医療法人 長崎記念病院

【はじめに】

今回、舌・喉頭癌により全摘手術を受け嚥下障害を呈した症例を担当し、「食べたい」という主訴に

より訓練を行った。

【症例紹介】

60 歳代男性。経鼻経管栄養による代替栄養。医学的診断名:舌・喉頭癌、食道癌。現病歴:平成

25 年 7 月 A 病院にて舌・喉頭全摘手術を行う。平成 25 年 10 月加療目的にて当院入院となる。コ

ミュニケーション手段:書字、ジェスチャー。

【結果】

VF にて入院当初の嚥下状態を評価した。VF 画像では舌の運動がみられず食物の送り込みが困難な

状況であった。また、永久気管孔があり嚥下圧をかけることが困難であった。現段階では経口摂取

不可能と判断し、間接訓練から実施することにした。開口範囲が 1 指半であり口腔内に指を挿入す

ることが困難であった。そのため、開口筋・口輪筋のマッサージから開始する。マッサージを開始

し、3 週間後には開口範囲が 2 指まで拡大した。また、口渇を訴えることが多いため、氷なめ訓練

も同時に開始した。舌の送り込み運動はみられないためベッドアップ 60 度にし重力にて水分を咽

頭まで落とす方法にした。少量ずつではあるが嚥下しているようであった。訓練 6 週間後にゼリー

による直接嚥下訓練を実施した。喉頭拳上は認められないが、口腔内視診によって確認したところ、

口腔内残渣は認められなかった。

【考察】

本症例は舌・喉頭癌により全摘手術を受け嚥下障害を呈した 60 歳代男性である。舌・喉頭を全摘

していることは、食物の送り込みや嚥下機能の低下が認められる。舌の運動困難、喉頭全摘のため

嚥下圧をかけられないことは、根本的に摂取方法や食物形態を変えていくことが必要だと考える。

また、本症例の精神的苦痛を緩和する必要もある。

【おわりに】

今回、経口摂取を目標に訓練を実施しているが、栄養不足のため経鼻経管栄養を続けている。また、

ご家族の協力など環境調整を行うことが必要なのではないかと考えた。

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多診療科目との連携により誤嚥性肺炎の原因が明らかになった症例

Key word:顕微鏡的多発血管炎、誤嚥性肺炎、後鼻漏

浦 優子

地方独立行政法人長崎市立病院機構 長崎市立市民病院

【はじめに】

当院には 24 の診療科目があり、入院時低栄養患者に対して栄養状態改善を目的に NST が早期介入

する。今回、多診療科目の連携により顕微鏡的多発血管炎(以下 MPA)と診断された症例に対す

る NST の介入及び VE により、新たな誤嚥の因子が明らかとなった。ST による誤嚥性肺炎に対す

るアプローチと食事環境調整、本人指導を行いケアハウスへの退院へ繋げられたため経過を合わせ

て報告する。

【症例紹介】

80 歳代女性。慢性心不全にて当院循環器内科に入院。不明熱あり第 25 病日目 MPA と診断される。

個人因子:他者からの干渉を好まず、疲労の訴えが多い為、訓練進行に支障を来たす。

【経過・結果】

第 36 病日目、耳鼻科にて VE 施行。食塊形成不全、喉頭蓋谷・梨状窩への食物遺残を認める。ま

た慢性副鼻腔炎、後鼻漏、右声帯ポリープ、声帯溝症が判明し以後耳鼻科治療開始となる。結果よ

り食形態を軟菜食から刻み食に変更。食事中の監視に不快感を訴えるため環境調整にて本人指導行

う。その後肺炎軽快し Alb2.8→3.3 と栄養状態も改善。ケアハウスへ退院となった。

【考察】

NST 担当医からの ST 処方と耳鼻科への紹介により誤嚥因子が明らかとなり、さらに多面的アプロ

ーチにより肺炎軽快に繋がったと考える。通常、鼻・副鼻腔から産生された鼻汁は鼻腔後方に向か

って運搬され、最終的には嚥下運動により消化管に排泄される。本症例の誤嚥性肺炎の因子は嚥下

機能低下と後鼻漏の気管流入が考えられた。また疲労の訴えが訓練進行に影響していたのは MPA

による全身の易疲労性とステロイドの服用によるものであったとも考えられた。

【おわりに】

誤嚥性肺炎の患者に対し嚥下リハビリだけでなく VE・VF にて病態を明らかにすることや易疲労性

の原因を解明すること、また検査結果や多診療科からの専門的見解をもとに食事調整や本人指導内

容を考える必要がある。肺炎の再燃防止のためにも可能な限り情報収集と客観的嚥下機能検査を行

う必要があると感じた。

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ST 介入により嚥下機能、音声機能を再獲得した廃用症候群の一例

KeyWord:廃用症候群、嚥下障害、スピーチカニューレ、短腸症候群

青木玲子

地方独立行政法人 長崎市立病院機構 長崎市立市民病院

【はじめに】

ストーマ造設術後、カフ付気管切開カニューレによる声の喪失、重度嚥下障害、また長期臥床と栄

養不良による廃用症候群を呈した症例を担当した。ST 介入により音声の再獲得と経口摂取可能と

なったため報告する。

【症例】

66 歳男性。既往・現病歴:クロンカイトカナダ症候群・直腸癌。2013 年 2 月イレウスで当院消化

器外科入院したが状態悪化し A 病院に転院。穿孔性腹膜炎により小腸切除し残存小腸 80 ㎝の短腸

症候群となる。ストーマ造設術後、呼吸状態悪化し気管切開。同年 4 月、療養目的で当院転院。栄

養:TPN・経鼻経管栄養。栄養状態:高度栄養不良。Needs:話したい。意思伝達手段:筆談、ジェ

スチャー。性格:明るく世話好き、神経質。易疲労性あり。伝わらないと即不機嫌になる。

【経過・結果】

第 2 病日 NST 介入。第 4 病日 PT・ST 開始。入院時の嚥下機能は口唇・舌の筋力低下(+)・可動

域正常、口腔内唾液貯留多量、廃用とカフ付カニューレにより喉頭挙上困難。FOIS1。ST 訓練①

機能的口腔ケア・間接的嚥下訓練②コミュニケーションボードを作成③主治医・耳鼻科医とスピー

チカニューレへの交換時期を検討。第 100 病日、杖歩行可能。第 103 病日、スピーチカニューレに

交換、発声可能となる。VE にて先行期・口腔期は異常所見を認めず、咽頭期で咽頭残留は少量、

唾液量減少、喉頭挙上可能を確認。FOIS3。ゼリーを用い直接的嚥下訓練開始。第 130 病日 1 日 1

食ペースト食が可能。

【考察】

本症例の嚥下機能改善は、①早期的な NST 介入により栄養状態の改善が図れたこと②消化器外科・

耳鼻科・NS・NST・PT・ST が連携し、適切な時期にスピーチカニューレへ交換できたこと、が寄

与している。ST は栄養状態を見ながら間接的嚥下訓練を行い、伝わりにくさからの心的ストレス

に配慮した。結果、意思伝達意欲の拡大、さらにカニューレ交換直後から音声を意思伝達手段とし

て活用できたことに繋がったと考える。

【終わりに】

介入当初、嚥下機能にのみ着目し、コミュニケーション面に配慮できなかった点が反省点である。

ST 内で訓練を見直し、意思伝達手段の環境調整を行った結果、ニーズに応えることができた。今

後は患者様を多角的に捉え、問題抽出ができるよう経験を積んでいきたい。

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胃瘻造設者の在宅支援

-家族が行える経口摂取・口腔ケアを目指して-

Key Word:嚥下障害、胃瘻造設、在宅支援

林 加奈子1)

社会医療法人春回会 長崎北病院1)

【はじめに】

今回,脳梗塞後遺症により胃瘻造設後の症例を担当した.家族より「何か食べて欲しいけど誤嚥が心

配」と不安が聞かれていた.自宅退院に向け,家族へ経口摂取・口腔ケアの指導と環境設定を行った結

果,症例の嚥下機能向上と家族の不安軽減が図れ,自宅退院が実現したため報告する.

【症例紹介】

90 代女性 身長 148cm 体重 33kg BMI15,今回 3 度目の脳梗塞,要介護Ⅳ.ADL は全て全介助.音声言

語面は単語レベルで理解曖昧,発語なし.必要カロリー:960kcal/日 摂取カロリー:900kcal/日.長女(key person)

と 2 人暮らし【評価】発声発語器官自歯,常時閉口状態,口腔内乾燥+ 咬反射+ 開口は 3 横指分 口腔

ケア時,舌の強い抵抗+ 嚥下機能①反復唾液嚥下テスト反復唾液嚥下テスト反復唾液嚥下テスト反復唾液嚥下テスト::::0 回/30 秒②改訂水飲みテスト改訂水飲みテスト改訂水飲みテスト改訂水飲みテスト:評価基準 1b 嚥下

反射惹起遅延・ムセ+.喉頭挙上 1.5 横指③フードテストフードテストフードテストフードテスト::::評価基準 5 弱い咀嚼後嚥下反射惹起+.口腔咽頭

残留・ムセ-.

【結果】

第 41 病日目,機能的口腔ケア,嚥下反射誘発訓練,経口摂取を実施.第 48 病日目,経口摂取時,嚥下反射促

通手技実施するが嚥下反射-.第 62 病日目より口腔内乾燥改善するも,口腔ケア時,開口位延長に伴い

唾液でのムセ頻発.①姿勢調整(30 度仰臥位→30 度左側臥位・頸部右回旋)②開口位の時間短縮による

ムセ軽減を図った.第 83 病日目,退院先が「自宅」に決定.翌日,訓練と並行して家族指導開始.第 134 病

日目,徐々に開口が容易となりトロミ水を連続 10 口摂取可能となった.

【考察】

松村ら(2009 年)は機能的口腔ケアを「口腔の持っている摂食・咀嚼・嚥下・唾液分泌機能の維持向上」

と述べている.本症例も機能的口腔ケアにより嚥下機能改善がみられたと考える.さらに,家族指導と環

境調整により安全な口腔ケアと経口摂取が可能となり,家族の不安軽減と自宅退院が実現したと考え

る.

【おわりに】

胃瘻造設者の自宅退院を実現するために、機能改善だけでなく家族の不安を軽減するようなリハビ

リ提供の重要性を感じた。

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嚥下失行が疑われた誤嚥性肺炎を呈した一症例

Keyword 嚥下失行,口腔顔面失行,誤嚥性肺炎

大橋 奈美

社会医療法人 長崎記念病院

【はじめに】

嚥下失行が疑われた誤嚥性肺炎を呈した症例を経験した.急性期リハビリでの課題と自宅の環境調

整の実施を含め報告する.

【症例紹介】

80 歳代の右利き男性.既往歴として H22 年脳梗塞(病巣;左頭部~前頭葉,右中大脳動脈完全閉

塞,右島,左大脳半球,前頭葉,側脳皮質,深部白質),HT,慢性逆流性食道炎.H25 年脱水,肺

炎,慢性腎不全.現病歴として肺炎治療終了し退院後約 1 週間後に発熱.肺炎の疑いにて加療目的

で入院.自宅での活動性は低い.認知機能として MMSE15 点,嚥下機能では,RSST 実施困難,

WST では5㏄にて咽頭残留,FT とともに口腔内残留,喉頭挙上不全,嚥下反射惹起遅延,意図的

な嚥下場面で嚥下躊躇による口腔から咽頭への送り込み障害あり.

【結果】

間接的嚥下訓練では,口腔内アイスマッサージ,構音器官の自動・他動運動,発音訓練,口腔ケア,

頭部挙上訓練,頭部反復挙上訓練を実施した.直接的嚥下訓練では,ギャッジ 60°,頭部突出前屈

位,ミキサー食にて嚥下反射促通訓練,ストローを用いての送り込み訓練を実施.構音器官の運動

において,探索行動が減少し修正の促しは時折必要ではあるが反復動作が可能になった.直接的嚥

下訓練では,約 1 時間の食事時間の短縮がみられた.自宅退院に向けての環境調整として,家族・

在宅スタッフへの説明,家屋調査時の実技での指導を実施した.

【考察】

本症例の嚥下失行と考えられる症状の原因について,脳梗塞後遺症と認知機能低下が考えられたが,

原因は不明であり,嚥下失行・廃用の両面よりアプローチを実施した.構音器官の運動の向上はみ

られたものの著しい向上ではなく,食事時間の短縮について重力とストローを用いての代償的嚥下

方法の使用がつながったと考える.【おわりに】本症例の廃用の原因の一つである活動性低下につい

て,向上のためのリハビリには早期に他職種の介入の検討も必要であったと考える.

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自主練習の課題の選定と練習内容の工夫により、

読解力と注意・記憶力が向上した高次脳機能障害症例

Key Word: 自主練習、課題の選定、高次脳機能障害

小松 千衣

社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院

【はじめに】

高次脳機能障害を呈した症例に対し、病前から馴染みのあった活動をもとに自主練習を行った。結

果、読解力と注意・記憶力に向上がみられた為、報告する。

【症例紹介】

60 歳代女性。診断名:クモ膜下出血。障害名:左片麻痺・高次脳機能障害(注意障害、記憶障害、

遂行機能障害、見当識障害)。ニード:復職。職業:病院勤務。入院時 WAIS-Ⅲ:言語性 IQ94,動

作性 IQ59。

【経過】

自主練習の提案(入院~1 週)目的:読解力と注意・記憶力の向上。本人の反応:ST練習自体がス

トレスとの発言があったが、練習前に新聞を要約し、練習時に説明する事を提案すると、本人より

「やってみます」と発言があった。この為、以下の通り自主練習を実施していくこととした。1.課

題の導入(1 週~4 週)練習内容:自主練習の定着、メモを見ながら記事を探す。本人の反応:新聞

のタイトルやページ数をメモするようになった。結果:新聞を見る活動が定着し、メモを見て記事

を探す事が可能。2.内容の工夫①(4週~8 週)練習内容:記事内容について説明。本人の反応:

記事の中の数字や単語をメモして来る等工夫するようになった。結果:メモの活用ができず説明は

困難。3.内容の工夫②(8 週~退院)練習内容:記事内容について要約し説明。本人の反応:練習

で行った 5W1H の要約を自主練習にも取り入れるようになった。結果:メモを見て要約した説明が可

能。これらの結果、読解力と注意・記憶力が向上し、退院時の WAIS-Ⅲでは動作性 IQ:72 であっ

た。また、練習にも積極的に取り組み、自ら別の自主練習課題を ST に要求する場面がみられた。

【考察】

本症例において、自主練習の導入を本人の習慣・性格を知り、取りかかりやすい新聞を使用した事

で、本人のモチベーションを上げる事が出来た。また、患者の能力に合わせた段階的な課題を行う

事で、患者自身の練習に取り組む姿勢が徐々に変化した。その事が能力向上へ繋がったと考える。

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くも膜下出血にくも膜下出血にくも膜下出血にくも膜下出血により病識の欠如を呈した症例より病識の欠如を呈した症例より病識の欠如を呈した症例より病識の欠如を呈した症例

Key word:高次脳機能障害

久田 愛

国立長崎病院

【はじめに】【はじめに】【はじめに】【はじめに】

今回、注意障害・記憶障害に対する病識理解へと繋がった症例について報告する。

【症例紹介】【症例紹介】【症例紹介】【症例紹介】60 歳代男性。くも膜下出血により注意障害・記憶障害の病識の欠如を呈している。主 訴

は言葉が詰まってしまう。デマンドは自動車の運転・復職。

【評価・結果】【評価・結果】【評価・結果】【評価・結果】

初期評価では、認知機能は正常。TMT-A:1 分 57 秒、TMT-B:2 分 16 秒。仮名拾いテスト:28/40

点。三宅式記銘力検査:有関係語 1 施行 2 正答、2 施行 7 正答、3 施行 8 正答・無関係語 1.2.3 施

行正答なし。本症例は注意機能と記憶機能の低下を認め、仮名拾い、記銘・想起課題、音読を繰り

返し実施した。退院時の再評価では、仮名拾いテスト:39/40 点。三宅式記銘力検査:有関係語 1

施行 7 正答、2 施行 8 正答、3 施行 10 正答・無関係語 1.2.3 施行 1 問正答。検査結果では仮名拾い

テストは注意機能の改善はあるが、三宅式記銘力検査は大きな改善は認めなかった。訓練場面では

介入当初は見直しや確認動作はなかったが、回数を重ねるに連れて自己修正やメモを取るなどの代

償行動が見られ始めた。

【考察】【考察】【考察】【考察】

本症例は、くも膜下出血により注意障害・記憶障害の病識欠如を呈していたため、症例の病識理解

に繋げる目的で同じ課題を用いた。症例からできないことに対しての苛立ちが見られた。ミスを数

値化しフィードバックを行い、日々の変化を視覚的判断できたことで記憶機能・注意機能の低下の

理解に繋がったと考える。検査結果では改善は認める一方で記憶能力低下も残っているため、家族

など周りの支援は欠かせないと示唆される。今回、症例自身が現状を理解し、代償行動を取るなど

日常生活での改善は認める。

【おわりに】【おわりに】【おわりに】【おわりに】

今回の症例は、同じ課題を通して視覚的にフィードバックを行ったことで病識の理解へと繋がった

症例であった。今後も症例を分析し、その症例にあったアプローチ方法を学んでいきたい。

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高次脳機能障害を呈した症例に対する日常生活に即した

アプローチの工夫

Key Words:高次脳機能障害、認知・行動チェックリスト、IADL

田中 愛

社団法人 是真会 長崎リハビリテーション病院

【はじめに】

高次脳機能障害を呈し病識が低下した症例が、日常生活での問題点を理解して、訓練に臨めるよう

に工夫を行ったので報告する。

【症例紹介】

60 歳代女性。診断名:脳梗塞(橋)。障害名:右片麻痺、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、構音

障害。既往歴:高脂血症、陳旧性多発性脳梗塞、認知症。病前:専業主婦で息子 2 人と同居。服薬、

金銭管理で介助必要。入院時評価:MMSE23/30。FIM77/126(運動 56/91,認知 21/35)。発話明瞭度 2。

【経過】

入院時は構音訓練を中心に実施した。また地誌的失見当識があり、場所を把握する訓練を行った。

入院 2 か月目評価:MMSE25/30。FIM102/126(運動 81/91,認知 21/35)。発話明瞭度 1.5 へ改善。高

次脳機能の精査から、注意の分配や短期記憶の障害が生活に影響していると考え、機能の改善目的

で文字拾いや視覚性の 3 単語記銘課題を開始した。しかし症例からは訓練の必要性を感じていない

ような発言が聞かれた。そこで基盤的認知能力を整理するため、認知・行動チェックリスト(以下、

チェックリスト)を実施した。得点は 42点(中等度)であり注意の分配や近時・展望記憶、病識に低

下を認めた。更に病前の IADL 状況に沿って、現在何ができるかできないかを表にして共有し病識の

向上に繋げた。買物や予定管理などが問題点としてあり、広告から商品を選び値段を概算する課題

や、メモの活用訓練に変更した。退院時評価: MMSE25/30。FIM113/126(運動 86/91、認知 27/35)。

チェックリスト:55(軽度)。

【考察】

チェックリストを使用して基盤的な認知能力を把握し、病前の情報収集を含め IADL の側面を可視化

して共有した。このことは注意障害・記憶障害を呈する症例にとって話の要点の理解や記憶の補助

手段となり、障害像の理解や病識向上に繋がった。(795/800 字)

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全失語症例への描画を用いた訓練

~言語機能向上と伝達手段の獲得を目指して~

Key Word:全失語,描画

田川あすか

社会医療法人春回会 長崎北病院

【はじめに】

今回,左中大脳動脈領域の脳梗塞により全失語を呈した症例を担当した.重度失語症検査において描画の

表出が可能であった為,全般的な言語機能の賦活,表出手段の獲得を目指した訓練を行った.考察を加え経

過を以下に報告する.

【症例紹介】

60 代女性,右利き.診断名:脳梗塞(前頭葉・側頭葉・頭頂葉・島)既往歴:アルコール依存症.障害名:全失語 右

片麻痺(ⅳ‐ⅴ‐ⅳ)現病歴:X年 6 月新聞配達員が 3 日分の新聞がたまっていることに気づき,うつ伏せに

倒れているところを発見.病前生活:独居,無職. ●言語機能評価:SLTA 実施困難.WAB の Yes-No 検査→

45/60.重度失語症検査→非言語基礎課題 44/45.非言語記号課題 49/60.ジェスチャー・描画の表出良好.言

語課題 25/90.●高次脳機能評価:kohs 立方体組合せテスト→IQ81.RCPM→27/36 点.●発声発語器官評

価:舌・口唇において軽度 ROM 制限あり.交互反復運動は動作緩慢.

【結果】

表出手段の獲得と全般的な言語機能の賦活を目的とし描画訓練を実施.模写課題から導入し,絵に対応す

る文字と音声を Th が入力した.模写が可能となった為,描画を用いた PACE 訓練へ移行した.伝達では絵

カードを選択し描画を行い,Th が推測困難な時は Yes-No 反応で目標語を引き出した.受け手では,描画で

の解答が困難であった為,意味的 cue を与え絵の 1/3pointing を実施.徐々に推測可能な描画表出が可能と

なった.しかし,日常生活において使用することはみられなかった.

【考察】

手束(1991)は訓練に描画を用いることが意味的側面の障害を改善する可能性を示唆した.本症例において

も通常の理解訓練に加え描画を取り入れたことで,意味的側面が活性化し理解力向上に繋がったと考え

た.日常に汎化しなかったことについては,日常生活において描画を用いたコミュニケーション場面の提

供が不十分であったことが考えられた.

【終わりに】

今回,全失語症例に描画を用いた訓練を行った.訓練場面だけでなく日常生活場面へのアプローチの難し

さを痛感した.

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認知機能の低下と失語症を呈した症例について

Key Word:失語症、認知機能、自宅復帰

木村江里

医療法人稲仁会 三原台病院 リハビリテーション科

【はじめに】

今回、脳挫傷、外傷性クモ膜下出血により認知機能の低下と失名詞失語を呈した症例の評価、訓練

を実施したのでここに報告する。

【症例紹介】

本症例は 70 歳代後半の男性である。性格は穏やかでとても謙虚であり、慣れてくると笑顔がよく

見られるようになる。自分に自信がないようで、日常会話や課題の遂行においてもその一面が頻回

に見られる。日常生活でのコミュニケーションについてはほぼ問題なく可能。しかし、時折言葉が

出てこず「あれ」や「何だっけ」といった発言や周辺情報を話す姿が見られる。

【結果】

本症例には標準失語症検査(以下 SLTA)とレーヴン色彩マトリックス検査(以下 RCPM)、改訂長谷

川式簡易知能評価スケール(以下 HDS-R)等の検査を実施。結果、SLTA では語の列挙と書く課題に

おいて若干の低下を認めた。RCPM では 70 歳代の平均が 26.9 点なのに対し、17 点と大幅な低下

が認められた。HDS-R では 22 点と認知症の疑いは認められなかった。

【考察】

本症例は、脳挫傷、外傷性クモ膜下出血により認知機能の低下と失名詞失語を呈した 70 歳代後半

の男性である。SLTA を行った結果、軽度の失名詞失語が認められた。また、RCPM と HDS-R の

結果からは見当識や記銘力は保たれているが、計算能力やその他の認知機能が低下していることが

分かった。これらのことを踏まえ、自宅復帰が目標である本症例には、自宅に帰られてからも自身

で行えることが減らないようにするため、認知機能の維持・向上を中心とした訓練立案を行った。

また、病識があることや言葉が出ないこと等から生じていた自信のなさを改善し、進んで他者との

コミュニケーションを取ることが出来るようになることも目標の一つとした。

【おわりに】

今回、本症例を担当させていただき自宅復帰するためにはどのような機能が必要となるか、また、

本症例に沿った訓練は何か等、改めて様々な視点から患者様を見ることが大切なことだと学んだ。

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語列挙能力の伸び悩みを認めた一症例

Key Word:失語症、喚語困難、語列挙、アプローチ

北別府亜美

社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院

【はじめに】

今回、脳出血により失語症を呈した症例にアプローチを行った結果、やりとりのスムーズさは向上

したが、喚語困難は退院時まで残存した。また、SLTA では呼称に比べ語列挙の成績に変化を認めな

かった。そこで本症例の失語症状・アプローチを再度分析し、語列挙能力が伸び悩んだ要因につい

て先行文献を基に検討したので考察を含め報告する。

【症例紹介】

60 歳代女性。原疾患は脳出血(頭頂側頭葉)。障害名は失語症、高次脳機能障害。麻痺はなく ADL

は自立していた。

【評価およびアプローチ】

理解面は 3 文節より低下し、表出面は文レベルの流暢な発話であったが、喚語困難、意味性錯語、

迂言を認めた。日常会話場面では、聴理解低下と喚語困難により発話できなくなるといった混乱が

みられた。SLTA では理解に比し復唱以外の表出面で特に低下を認めた。そこで 1 ヶ月の目標を「迂

言表現を用いながら自己に関する説明ができる」とし、良好な聴理解と読解を前刺激として用い絵

カードの視覚的呼称を行った。

【結果】

理解面は 5 文節程度まで向上し、表出面は入院時に比べ意味性錯語の減少や迂言の実用性が向上し

た。その為、日常会話場面で混乱はなくなったが、喚語困難により発話に停滞がみられた。SLTA で

は全体的な成績の向上を認めたが、語列挙のみ成績が伸び悩んだ。

【考察】

宇野らは、言語モダリティを記号論から整理しており、言語理解にあたる decoding と、言語表出に

あたる encoding に分類する二方向の記号処理を提唱している。この二方向の記号処理によると呼称

はdecodingとencodingの両方の要素を含むとされている。語列挙はencodingに該当すると思われ、

今回前刺激として用いた聴理解、読解では decoding のみが賦活され、encoding の賦活には至らな

かった為に語列挙の成績が伸び悩んだと考えられる。漢字の音読や仮名振り訓練など encoding を賦

活させるアプローチを行うことで語列挙能力はより向上し、日常生活場面での喚語困難の減少に繋

がるのではないかと考えた。

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訓練に難渋したが機能面の改善を認めた構音障害を呈する一症例

~訓練意欲と信頼関係の構築を通して~

Key Word:構音障害、訓練意欲、信頼関係

久保 花恵

社団法人 是真会 長崎リハビリテーション病院

【はじめに】

今回、仕事復帰の不安や糖尿病に対し精神的な落ち込みを認めた症例を担当し、訓練に難渋したが、

構音の改善を認めた為、その要因を考察する。

【症例】

糖尿病を有する 60 歳代男性、診断名:脳梗塞(右橋、小脳、右前脈絡叢動脈領域)、障害名:左片

麻痺、構音障害(発話明瞭度 2.5。以下、明瞭度)、嚥下障害(嚥下 Gr.7。以下、Gr.)、高次脳機能

障害。発症から 29 日目に当院入院。入院時 FIM52 点、MMSE30 点、構音の自己評価 3/10。

【経過】

ST では長期目標(5.5 ヶ月)「家族・友人との会話がストレスなく可能」、短期目標(1ヶ月)「スタ

ッフに聞き返されず会話が成立、トロミなしで飲水可能」とし、顔面ストレッチ、発声発語器官運

動、呼吸発声訓練を行った。2 ヶ月目には明瞭度 2、Gr.8 へ改善したが、仕事復帰の不安や目の見

え難さの訴えが増し訓練を中断するようになった。訓練プログラムは変更せず、本人の意向も踏ま

えながら運動回数の調整を行うことで訓練の中断は減り、Gr.9 へ改善した。3ヶ月目、不安の訴え

は更に増し訓練中に声を荒げて会話が成立しないようになった。訓練では舌圧測定器で舌圧の変化

を数値で提示する方法を導入し、舌圧は 10kPa から 20kPa へ、鼻漏出は左 3 度から 2 度、右 3 度か

ら 0度へ改善を認めた。また、同時期に症例の気持ちと担当 STの気持ちを話し合う場を持った。そ

の後、訓練の中断が減り運動量も増加、会話も行えるようになり、退院時(6 ヶ月目)、明瞭度 1.5、

Gr.9、構音の自己評価 7/10、鼻漏出は左右 0 度、舌圧 22kPa へ改善した。

【考察】

構音機能の変化がわかりやすいよう数値化して提示することで訓練意欲の向上に繋がったと考える。

更に、本人の意向を踏まえながら必要な運動を継続して実施したこと、患者と向き合う場を持った

ことが、信頼関係の構築に繋がり、機能改善に至ったと考える。

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脳梗塞再発により構音障害が重度化した一例

Key Word:構音障害、重度化、障害認識

南夕貴

医療法人光善会 長崎百合野病院

【はじめに】

回復期病棟入棟中に多発性脳梗塞を発症し、構音障害が重度化した症例に対し検査・訓練を行なっ

たので考察を交えここに報告する。

【症例紹介】

80 歳代女性。4月に尻餅を付き腰痛出現後、体動困難となり当院受診。L1 圧迫骨折診断で入院。そ

の後 6 月に呂律障害出現し、頭部 CTにて多発性脳梗塞と診断される。

【結果】

7 月上旬に AMSD 実施。発話明瞭度は段階 4、発話特徴は開鼻声、声量の低下、努力性嗄声が見られ

た。また、呼吸機能、発声機能、鼻咽腔閉鎖機能全てに標準よりも低下が見られた。その後訓練を

行い、1ヶ月後に再評価を行なった。発話明瞭度は段階 3、発話特徴は変化なし。呼吸機能では呼気

圧・持続時間で向上。発声機能でも最長発声持続時間・/a/の交互反復共に向上。鼻咽腔閉鎖機能で

もブローイング時の鼻漏出に軽減が見られた。

【考察】

本症例は以前から存在していた構音障害が多発性脳梗塞発症により重度化し、病棟スタッフより「言

葉が聞き取りづらくなった」という主訴のもと、リハビリを開始した症例である。今回言葉が聞き

取りづらい理由として声量の低下と開鼻声が大きく関係しているのではないかと考え、この 2 点に

集中して訓練を行なった。約 2 ヶ月間の訓練で僅かな改善は見られたが、全体的にリハビリに対し

て消極的であった。それは STのリハビリ介入時期が遅かった事により本症例の障害に対する認識不

足が生じた為と考えられる。もし早期に介入していれば障害への認識度も高まり、更なる改善が見

られたのではないかと考える。

【おわりに】

本症例を担当した事で、一つの障害に対し様々な側面から捉え、一人ひとりに適切なアプローチを

提供していく事が必要であり、そのためには多職種との連携を密にしていく必要があると感じまし

た。

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エネルギー付加量を考慮できていなかった一症例

Key Word:栄養管理,エネルギー付加量,総エネルギー消費量

江頭 香穂

社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院

【はじめに】

今回、食事摂取量にムラはあるものの総エネルギー消費量(以下 TEE)は確保できていたにも関わら

ず、体重が増加しなかった症例を経験した。その中で、ST の視点から TEE には考慮されていなか

った消費エネルギーがあるのではないかと考えた為、考察を踏まえ報告する。

【症例紹介】

80 代女性。診断名:脳梗塞、障害名:左片麻痺、構音障害、摂食嚥下障害。努力性・気息性嗄声、

発声持続・呼気圧低下あり。既往歴:脳梗塞、脳出血が併せて 4 回。

【経過】

入院時は体重 39.8kg であり、るい痩を認めた為、目標体重を前回退院時の 42 ㎏台に設定した。栄

養補助食品の導入や食事摂取方法の変更などを行い、徐々に食事摂取量が安定し、2 週間後には

600g 体重が増加した。それに伴い耐久性が向上したため、離床・活動時間が増加し、計算上は TEE

を確保していたが約 1 週間で 700g 体重減少した。

【考察】

TEE 以上の栄養摂取ができていたにも関わらず体重が減少したことから、加算されていない活動量

があるのではないかと考えた。本症例は 5 度目の発症であり、円背や両片麻痺、パーキンソニズム

等を合併している。その為、努力性の呼吸発声、上肢機能や嚥下機能の低下による摂食時の過剰な

努力、頻回な咳嗽を呈している。田村ら(2012)は、咳嗽によるエネルギー消費量の大きさを測定し

た結果、各肢位を平均して安静時に比べ 62%増加したとしている。このように、全般的な過剰努力

がエネルギー付加量となり、本来 TEE に加算されるべきだったのではないかと考えた。よって、

ADL や食形態の向上ばかりに目を向けた訓練だけではなく、過剰努力を軽減させる訓練を優先的に

提供することが必要だったのではないか。また、栄養管理に関しては、管理栄養士と協働する中で、

訓練負荷量や日常生活上で考えられるエネルギー付加量などの情報交換を今まで以上に密に行う必

要性を再認識した。

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蝸牛奇形児に対する人工内耳の検討

(~CT により蝸牛無形成/低形成がわかった児~)

Key Word:蝸牛奇形、人工内耳、蝸牛無形成、Auditory-Verbal Therapy

中田 朱香

医療法人 萌悠会 耳鼻咽喉科 神田 E・N・T 医院

【はじめに】

当院において、蝸牛奇形児の新生児聴覚スクリーニング(以下新スク)後の精密検査から人工内耳手

術に至る経緯を報告し、今後の支援の在り方を検討する。

【症例紹介】

初診時1ヶ月、女児。正常妊娠後正常分娩。出生時体重 3080g。出生後心雑音を認め、心エコーに

より動脈管開存が認められたが手術の必要性はなし。耳小骨の突出もあり、来院時は耳小骨奇形が

疑われていた。入院中及び退院後、1ヶ月健診と計3回両耳の OAE を実施したが、いずれも両側共

Refer であった。精密検査のため、産婦人科から当院を紹介されて初診となった。

【結果】

初診時にAABR、2度目の来院時にABR,ASSRを実施。いずれの検査も左右共にNo Responseであった。

CT 撮影より、両側蝸牛無形成/低形成+前庭半規管の低形成と思われる所見。耳小骨奇形はなかっ

た。MRI では右の内耳道は確認でき、蝸牛神経は少し見えるがはっきりしない様子であった。左は

内耳道もあり、蝸牛神経は少し確認できた。なお、半規管は左右共にみられた。補聴器を試したが

嫌がって外し、音に対する反応は見られるが言葉は表出されず。両親共に人工内耳の手術を希望さ

れていたため、本児が 2 歳の時に手術となった。

【考察】

本症例が人工内耳手術に至った要因として、①新スク及びその後の精密検査で何れも No Response

であった②内耳奇形がみられたが、蝸牛神経は確認できた③言葉が表出されず、補聴器の装用も嫌

がった④ご両親の希望があった等が考えられる。

【おわりに】

現在、本症例は両耳共に人工内耳の埋め込みを行っており、当院だけでなく家庭でも

Auditory-Verbal Therapy を実践している。今後は引き続き定期的な聴覚管理を行い両耳の補聴聴

力を維持する事で、語彙の増加と発話明瞭度の改善などが期待される。そして幼稚園・保育園の選

択や、それぞれの機関との連携が今後の課題として考えられる。

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両側人工内耳装用児の聴取能

-両耳聴と単耳聴の比較-

key words:小児,両側人工内耳,聴取能

宮本 美里

医療法人 萌悠会 耳鼻咽喉科 神田 E・N・T 医院

【はじめに】

日本では、近年まで人工内耳(以下 CI)の一側装用が一般的であったが、両側 CI での聴取能の向上

が確認され、当院でも両側装用者が増加している。今回は、その内一症例の装用閾値、静寂下およ

び騒音下での語音聴取能を両耳聴、単耳聴で比較検討したので報告する。

【症例紹介】

7歳男児。新生児聴覚スクリーニング検査で両側 Refer、ABR は右 105dBHL 無反応、左 100dBHL

で両側高度感音難聴の診断を受けた。7 ヶ月より両耳補聴器装用を開始し、聴覚活用していたが、

十分な補聴効果が得られなかった為、3 歳 8 ヶ月時右耳に一側目 CI 手術を受けた。4 歳 11 ヶ月時、

更なる聴取能の改善を目的に本人・家族の希望で、左耳に二側目 CI 手術を受けた。術後の経過は

良好で、当院での CI 調整および長崎聾学校での聴覚活用療育を経て、普通幼稚園年長クラスへ転

入。現在普通小学校に在籍している。

【結果】

装用閾値は両耳聴で最良であった。静寂下での語音聴取は、70dBHL では単音節、単語共に両耳聴

と単耳聴で同成績であったが、50・60dBHL では両耳聴で最良であった。騒音下(S/N+10)では単

音節、単語共に両耳聴で最良であった。

【考察】

両側 CI 装用では、騒音下やより小さな音で聴取能の改善が認められた。両耳補聴には、両耳加算、

融合、分離効果があるとされており、本症例においても同様の効果があったと推測される。特に騒

音下での聴取について、本人も「両耳になって煩い所でもよく聞こえる」と言っており、雑音の多

い教室で過ごす小児においては極めて有効であると考える。また、両側 CI 装用では、一側にトラ

ブルがあった場合の保険として不安感の軽減にもなり、心理面へ効果もあると思われる。

【おわりに】

本症例の聴取能は左右共に良好である。今後も引き続き、定期的な CI 調整や装用指導などの聴覚

管理を行い、現在の聴取を維持していく必要があると考える。