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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 〜持続可能な北海道、その将来像を描く〜 講演記録 平成22年3月 環境省 北海道地方環境事務所 環境対策課

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平成21年度

地域からの循環型社会づくりシンポジウム〜持続可能な北海道、その将来像を描く〜

講演記録

平成22年3月

環境省 北海道地方環境事務所 環境対策課

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目  次

実施概要 2

進行構成 3

開会挨拶 4

施策紹介 5 「第2次循環型社会形成推進基本計画の進捗状況の第2回点検結果(案)の概要」 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部企画課 循環型社会推進室 室長補佐 白石知隆

基調講演 9 「北海道の地域循環圏を考える」 北海道大学大学院工学研究科 教授 古市徹氏

事例発表① 14 「人が行き交う環境都市稚内 ~廃棄物処理の新たな転換~」 稚内市生活福祉部衛生課 課長 日向寺和裕氏

事例発表② 16 「当別ふれあいバスによるバイオディーゼル燃料活用の取り組み」 当別町企画部企画課 課長 五十嵐一夫氏

事例発表③ 18 「洞爺湖地域におけるバイオマス利活用の広域化検討」 株式会社循環社会研究所 主任研究員 小山博則氏

事例発表④ 20 「中・北空知地域における広域的ごみ処理」 北海道環境生活部環境局循環型社会推進課 主幹 川嶋幸治氏

事例発表⑤ 22 「環境モデル都市 下川町の取り組み」 下川町地域振興課環境モデル都市推進室 室長 長岡哲郎氏

パネルディスカッション 24 コーディネーター 北海道大学大学院工学研究科 准教授 谷川昇氏

閉会挨拶 32

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 2

実施概要

□開 催 目 的 : 持続可能な社会づくりのためには、物質循環を画一的なものと捉えず、地域の特性や循環資源の性質に応じて、最適な規模の循環を形成していくことが重要です。平成20年3月に改訂された「第2次循環型社会形成推進基本計画」においては、このような「地域循環圏」の形成を推進し、地域活性化につなげていくこととされており、各地域でその取組が始まったところです。 北海道は、広大な自然に恵まれ循環資源が豊かにあることから、環境分野への貢献が期待されており、地域循環圏を踏まえた循環型社会づくりにおいても、この状況を踏まえて推進していく必要があります。 本シンポジウムを通じて、国の施策の動向や道内の先進的な取組の情報を共有し、北海道らしい地域循環圏を考えていくことを目的とします。

□開 催 日 時 : 平成22年2月17日(水曜日) 13:00~17:20(開場・受付12:30)

□会     場 : ホテルニューオータニ札幌2階 鶴の間(札幌市中央区北2条西1丁目)

□主     催 : 環境省北海道地方環境事務所

□後     援 : 北海道

□講 演 内 容 : 別頁参照

□参加対象者 : 事業者、一般市民、行政関係者

□参 加 者 数 : 178名

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 3

進行構成

TIME LAP CONTENTS

12:30 30' 開 場 ・ 受 付

13:00 5' 開 会 挨 拶 環境省北海道地方環境事務所 所長 吉井雅彦

13:05 30'

施 策 紹 介 「第2次循環型社会形成推進基本計画の進捗状況の第2回点検結果(案)の概要」

環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室 室長補佐 白石知隆

13:35 50' 基 調 講 演 「北海道の地域循環圏を考える」 北海道大学大学院工学研究科 教授 古市徹氏

14:25 10' 休 憩

14:35 15' 事例発表① 「人が行き交う環境都市稚内 ~廃棄物処理の新たな転換~」 稚内市生活福祉部衛生課 課長 日向寺和裕氏

14:50 15'事例発表② 「 当別ふれあいバスによる

バイオディーゼル燃料活用の取り組み」 当別町企画部企画課 課長 五十嵐一夫氏

15:05 15' 事例発表③ 「洞爺湖地域におけるバイオマス利活用の広域化検討」 株式会社循環社会研究所 主任研究員 小山博則氏

15:20 15'事例発表④ 「中・北空知地域における広域的ごみ処理」 北海道環境生活部環境局循環型社会推進課 主幹 川嶋幸治氏

15:35 15'事例発表⑤ 「環境モデル都市 下川町の取り組み」 下川町地域振興課環境モデル都市推進室 室長 長岡哲郎氏

15:50 15' 休 憩

16:05 70'

パネルディスカッションコーディネーター 北海道大学大学院工学研究科准教授 谷川昇氏パネリスト 稚内市生活福祉部衛生課課長 日向寺和裕氏 当別町企画部企画課課長 五十嵐一夫氏 株式会社循環社会研究所主任研究員 小山博則氏 下川町地域振興課環境モデル都市推進室室長 長岡哲郎氏 北海道大学大学院工学研究科助教 石井一英氏 北海道環境生活部環境局循環型社会推進課参事 築地原康志氏 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室室長補佐 白石知隆氏

17:15 5' 閉 会 挨 拶 環境省北海道地方環境事務所環境対策課 課長 竹安一

17:20 − お 帰 り

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 4

開会挨拶環境省 北海道地方環境事務所 所長 吉井 雅彦

 本日は、厳冬の折、足元が悪い中、平成21年度地域からの循環型社会づくりシンポジウムを開催しましたところ、このように多くの方々に御参加いただきまして、誠にありがとうございます。主催者を代表いたしまして心より御礼申し上げますとともに、開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。

 昨今は、地球温暖化や生物多様性といった環境に関するキーワードを見ない日はなく、環境に対する国民意識の高まりを肌身に感じているところでございます。

 こうした状況の中、環境省では、平成22年度に重点的に取り組む施策として、「温室効果ガス25%削減目標の達成と豊かな暮らしの実現に向けた社会の変革」、「生物多様性の保全と持続可能な利用による自然共生社会の実現」、「循環型社会づくりに向けて」、「安全・安心な社会づくりに向けた環境保全の取組」という四つの柱を掲げ、持続可能で豊かな社会への変革に向けた本格的な第一歩を踏み出すべく、その施策を積極的に実行しようとしているところです。

 これらの柱のうち、循環型社会の構築につきましては、平成20年3月に改訂された「第2次循環型社会形成推進基本計画」において、大きな方針が示されたところであります。この改定のポイントの一つとして、今回のシンポジウムのテーマであります「地域循環圏」の考え方が新たに示されました。

 これは、地域で循環可能な資源はなるべく地域で循環させ、地域での循環が困難なものについては、循環の環を広域化させていくという考え方に基づく「地域循環圏」が幾重にも構築されることで、持続可能な地域づくりが進むというものです。

 この「第2次循環型社会形成推進基本計画」の改訂を受けて、各地で「地域循環圏」を踏まえた循環型社会づくりのための取組が始まっており、北海道においても、広大な自然に恵まれ、循環資源が豊かにあるという特徴を踏まえた「地域循環圏」の構築に向けた取組が必要であると考えられます。

 環境省北海道地方環境事務所としましても、本シンポジウムの開催を始め、国の施策の動向や道内の先進的な取組の情報を自治体、事業者、研究者、市民の皆様と共有し、北海道の特性を活かした地域循環圏を考えていきたいと思いますので、ぜひ、皆様の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 最後に、本シンポジウムが、北海道における循環型社会形成の一助となることを祈念申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。

 本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 5

施策紹介「第2次循環型社会形成推進基本計画の進捗状況の第2回点検結果(案)の概要」環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室 室長補佐 白石 知隆

 今日は、そもそも循環型社会とは何か、また、今、国全体としてどの程度進捗しているのかということを中心にお話しさせていただきたい。

 まず、循環型社会とは何かというと、平成12年にできた循環型社会形成推進基本法に定義があり、「廃棄物等の発生抑制と適正な循環的利用・処分により、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減できる社会」となっている。

 天然資源の投入が入り口として、それを生産、消費・使用、廃棄、処理して使っていくが、その中で、発生抑制、リデュース、再使用、リユース、再生利用、リサイクルを通じて、循環をさせるということ。循環ができないものについては処理をするしかないが、そのときもサーマルリサイクル(熱回収)をして、最終処分をする。できるだけ入口のところの天然資源投入を発生抑制などで減らしながら最終処分も減らす、その間の循環をさせていくということ。 つまり、20世紀は大量生産、大量消費、大量廃棄により、環境負荷が増大し、資源の消費が拡大した社会だったが、21世紀は環境と経済や社会が一体となって3Rを推進しながら、かつ、廃棄物を適正に処分することで循環型社会を構築し、環境負荷の低減と天然資源の消費抑制を図っていこうというものである。

 この循環型社会を形成するための法体系としては、一番上にすべての基本法である環境基本法があり、その下に循環型社会形成推進基本法がある。これは、循環型社会に向けた基本的な枠組みを決めた法律で、その中で、循環型社会を形成するために基本的な計画をつくることが位置づけられており、その規定を受け、平成20年3月に第2次循環型社会推進基本法に基づき、循環基本計画を作成し、今現在、それに基づいて取り組みを進めている。そして、循環型社会形成推進基本法あるいは循環型社会形成推進基本計画の下に、廃掃法や資源有効利用促進法、その他個別のリサイクル法が位置づけられている。

 第2次循環基本計画の内容について。循環型社会の中長期的なイメージとして、低炭素社会や自然共生社会に向けた取り組みとも統合した持続可能な社会の実現、ストック型の社会の形成などが示されている。また、地域循環圏という概念もここで述

べられている。 また、そのイメージを実現するために各主体がどういう取り組みをすべきか、国民の取り組み、事業者の取り組み、NGO、NPO、大学などの取り組み、地方公共団体の取り組み、そして国の取り組みと各主体の連携についても書かれている。

 循環型社会形成推進基本計画にはもう一つの特徴があり、数値目標を定めている。数値目標についても2種類あり、一つは“物質フロー”で、日本全体でどういう物質がどのように動いているのかを見る指標、もう一つは“取組指標”で、循環型社会に向けた具体的な取組についての指標。これらの二つの指標について数値目標を定めている。

 物質フローには、資源生産性、循環利用率、最終処分量が指標としてある。資源生産性とは、産業や人々の生活がいかに物を有効に利用しているかを総合的にあらわすもの。これについては、目標年次はすべて平成27年度だが、1トンで42万円の価値を生み出すことを目標とすることとなっている。 次の循環利用率は、経済社会に投入されるものの全体のうち、循環利用量の占める割合で、循環利用する量を増やし、それを14~15%にしようということ。最終処分量は、最終処分量をどんどん減らしていって、最後は2,300万トンにする。そのほかに、目標のレベルにまでは達していないが、それを補助する指標ということで、土石系資源投入量を除いた資源生産性、廃棄物由来の温暖化ガスの排出量などがある。そのほか、推移をモニターする指標も計画の中に示されている。

 もう一つの具体的な取組に着目した指標である取組指標であるが、これについても、目標を設定する指標とその推移をモニターする指標という二つに分かれている。 例えば、目標を設定する指標では、一つは廃棄物等の減量化ということで、一般廃棄物の減量化では1人1年当たりのごみの排出量を平成12年度比で約10%減にするとか、1人1日当たりに家庭から排出するごみの量を12年度比で約20%減にするということが定められている。12年度を基準にしているのは、循環型社会推進基本法ができた2000年を“循環型社会元年”と我々は位置づけているので、それと比べて進捗を見ていくということ。

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 6

 それから、循環型社会ビジネスの推進、グリーン購入の推進ということで、市町村、企業それぞれについて目標を設定している。環境経営の推進についてもエコアクション21の認証取得件数6,000件など、循環型社会ビジネス市場についても、市場規模について平成12年度比で2倍にするという目標を定めている。

 第2次循環基本計画に国の取組として定められたもののうち、主に環境省が担当するものについて。国内の取り組みと国際の取り組みの二つあり、基本的な方向としては、国全体の循環型社会形成に関する取組の総合的な推進と、地方公共団体を始めとする関係主体の連携協働の促進をするということになっている。 重点的な施策としては、低炭素社会、自然共生社会との統合ということで、例えば廃棄物発電の導入などによって温室効果ガスを削減するということや、里地・里山の利用管理などがある。そしてもう一つ、「地域循環圏」形成推進も重点施策の一つになっており、地域循環圏形成に当たってのコーディネ−ターや地域計画の策定の支援をしていく。そのほか、基盤的施策としては、循環資源の適正な利用や処分に向けた仕組みの充実ということで、リサイクル制度や廃棄物処理制度の充実強化、3Rの技術とシステム高度化、人材育成や情報の的確な把握をするための統計情報の整備などが書かれている。 また、国際的な循環型社会づくりということで、当然、循環をするにあたっては、地域循環圏も概念の一つだが、適切であれば、国際的な循環をすることもあり得る。例えば、日本は3Rが進んでいるので、日本が中心的役割を担って、東アジアで3Rイニシアチブをつくり、それを展開するということを国の取り組みとして行なうことが計画に示されている。

 地域循環圏は、循環計画の中で重要な概念として第2次で位置づけられた。循環資源の性質ごとに地域の範囲別に分類し、資源の性質ごとに適正な循環を行うということ。 例えば、コミュニティレベルで資源を循環させた方がいいものや、地域レベルで資源を循環させた方がいいもの、また、ブロック内でやればいいもの、国内でやればいいもの、国際的にやればいいもの、それぞれの循環資源について適正な規模で循環をさせることが必要であるということを概念上整理し

て、それを適切に進めようということで循環計画は書かれている。 例えば、コミュニティ資源だと、循環資源の例としては、不要になったものを近所で融通したり、廃食油のバイオディーゼル化など、生活圏を中心としたものになる。 地域レベルでの資源循環としては、バイオマス資源、間伐材、食品残さなど、ある程度の大きさは要るが、余り遠くまで行くと腐りやすいとか、経済的に有効でなくなったり、環境負荷が大きくなったりする。つまり、地域の中でやった方が経済的に有効で環境負荷も小さいと考えるようなものについては地域で回しましょうということ。 それよりもう少し大きいものについては国内で回す。さらに、日本国内だけではなくて、アジア圏も含めた形で循環させる。例えば、レアメタルなど、日本の方が技術が高いものについては、海外で日本の技術を生かしてやるという概念もある。

 こうしたイメージを地域循環圏と言う。これは、それぞれのレベルで、特定のものを絶対につくらなければいけないというわけではなくて、例えば、資源ごとに見たときには、こういう循環が幾つも重なり合って資源の適正な循環がなされるということを謳っている。

 そして、こういう資源から見たアプローチとともに、そういうものを支えるものとして、そのレベルで地域計画を策定し、例えば、ブロック圏とか県とか市とか地域レベルで、地域内での循環をさせるための計画をつくり、基盤整備を進める。また、“地域”循環圏という言葉から、地域だけというイメージが強くなる面もあるが、いろいろなレベルでのエリアという意味での循環があり得る。

 循環計画の中では、毎年度、どれくらい施策が進捗したかということを中央環境審議会において集中的審議を行うということになっている。第2回の点検は、平成21年9月から審議を行っており、平成22年1月15日から2月4日までパプリックコメントを実施したところである。  我が国における物質フローについて。平成12年度と平成19年度を比べてみると、平成19年度には入り口の部分が小さくなって、最終処分も小さくなって、循環利用量は少し増えている。

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 7

 先ほど申し上げた数値目標については、入り口部分の資源生産性については、平成19年度は1トン当たり36万1,000円ということで、今までとの推移を見ると右肩上がりに順調にきていて、目標は42万円/トンとなっている。循環利用率については、19年度は13.5%ということで、推移も右肩上がりで、目標は14~15%になっている。出口である最終処分量についても同様に順調に減っており、目標は23百万トンなっている。

 また、低炭素社会の取り組みとの連携ということで、廃棄物部門由来の温室効果ガス排出量がどれくらいあるかというと、平成19年度は平成12年度比で5%減になっている。廃棄物分野については、廃棄物発電などによって、ほかの部門で代替しているということがあるので、それを考慮すると、平成19年度は平成12年度比で75%ということで、他部門での効果が増えているという経過になっている。

 取組指標について。1人当たりのごみの排出量については、19年度は1人当たり1,089グラム。1人1日当たりの家庭から排出するごみの量の削減率も右肩上がりに順調に目標に向かっており、事業系ごみについても同様であるという結果になっている。産業廃棄物の減量化についても、減量化が順調に進んできており、19年度の最終処分量は、平成12年度比で54%、平成2年度比で77%の削減となっている。 国民の意識、行動の変化について見ると、意識についてはおおむね高いという結果が出ているが、高い意識にあるものを具体的な行動にまで結びつけていくことが重要である。 循環型社会推進ビジネスの推進と今の状況につ

いて。グリーン購入の推進について、平成27年度の目標は市町村については100%だが、平成20年度では全庁的に取り組んでいるのは62%で、何らかの形でやっているのが13.8%となっている。企業については、上場企業で50%、非上場企業で30%、という目標はもう達成していると思われる。 環境経営の推進について、数値目標の設定があるのはエコアクション21の取得件数6,000件だが、平成21年10月の取得件数は4,084件となっている。 循環型社会ビジネス市場の拡大ということで、市場規模については目標は平成27年度には平成12年度比で2倍にするということだが、平成19年度では1.3倍くらいになっている。ちなみに、雇用規模については、推計をしたところ、平成12年度は53万人だったものが平成19年には65万人になっていて、1.22倍になっている。

 推移をモニターする指標の中にあった循環基本計画等の策定状況だが、都道府県については、何らかの形で循環基本計画を立てている。市町村については、全国では54.2%となっている。北海道は42.8%という結果だった。 今回の進捗状況の点検について、全体的な評価と課題として次のようなことが挙げられている。一つは、循環型社会形成推進基本法ができて10年たっており、これまで前提となってきたシステムに大きな変化が生じているのではないかという指摘が審議会でもなされており、そのことについて長期的な視野に立って循環型社会の姿について引き続き検討を進めるべきということ。 また、低炭素社会、自然共生の取り組みと連携して循環型社会の取り組みを進めていくということ。廃棄物処理システムの確立に向けた技術開発の推

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 8

進、バイオマスの利活用については、今も行なわれているが、さらに利活用を徹底すること。 また、地域住民、NGO、NPO、事業者、地方公共団体等が連携して、地域循環圏を構築して、地域活性化に発展するように支援を行うべきだということ。

 以上、循環型社会の今の進捗状況について説明してきたが、地域循環圏に向けた事業として具体的にどういうものがあるかということを簡単にご説明する。 低炭素型「地域循環圏」整備推進事業ということで、国レベルでは関係府省が連絡会議を、それぞれのブロックごとに地域協議会を行い、それぞれが連携しながら地域計画を策定し、具体的なモデル事業を検討していくというのが全体像になっている。 今年度、国では、地域循環圏構築に向けた現状の把握ということで、どういう物質が動いているか、また、その課題は何かということをまとめて今後の施策の展開の方向性を出すということを行なっている。 地域においては、今年度は中部と近畿と九州ブロックにおいて地方環境事務所が調査検討を開始している。具体的には、中部ブロックでは、食品バイオマスに注目して、小売業務と農家が連携して、

モデル地域での検討を行っている。来年度以降に調査を継続して、最終的には地域計画の取りまとめを予定している。近畿ブロックでは、具体的にどういう廃棄物や循環資源が動いているのかを追いかけ、また、先進事例をまとめて、地域循環圏に向けて計画の準備を行なっている。九州ブロックでは、生ごみの食品リサイクルについての検討を行うということと、国土交通省とも連携しながらリユース瓶やレアメタルなど特定の物質についての地域循環圏を考えている。 環境省では、例えば、県をまたいで廃棄物等がどういうふうに動いているのかという調査も行っている。ちなみに、北海道については、我々が調べたデータでは、基本的に道内で循環がなされていて、外に出るものや中に入るものはそれほどないというデータが出ている。

 あとは、エコタウンを中心にした地域循環圏はどういうものがあるのかということについても、今、検討をしている。その他、循環型社会地域支援事業ということで、循環型社会の形成に向けた取り組みでNGO、NPOなどの民間団体や事業者が地方公共団体と連携して行うような事業についても支援を行っている。

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 9

基調講演「北海道の地域循環圏を考える」北海道大学大学院工学研究科 教授 古市 徹 氏

 この「地域からの循環型社会づくりシンポジウム」は昨年も実施しているが、昨年の私の発表のタイトルは「循環型社会における地域循環圏とバイオマス」ということで、バイオマスを取り上げて、地域循環圏の概念としてイントロの部分をお話しした。 昨年も申し上げたが、地域循環圏という概念はこれからみんなで作っていくもので、必ずしも定まったものではない。今日のお話も、私なりに考える地域循環圏。先ほど環境省の白石さんからも説明があったが、その線に沿って、現在考えているとことをご紹介したい。最終的には、北海道に適した地域循環圏とはどういうものであるか、今後どう展開していくかという話に結びつけたい。

 内容は四つのテーマからなる。 最初は地域循環圏の考え方について。これは昨年の復習になるかもしれない。 二つ目は、私の主宰している循環計画システム研究室の今年の卒論と修論の内容で、今日の演題に関係するものをご紹介したい。 三つ目は、稚内市の事例。今日も稚内市の日向寺課長から事例報告があるが、そのイントロ部分を紹介させていただくことになると思う。稚内市が精力的に広域計画、地域循環を考えているので、皆さんにも非常に参考になるのではないかという意味で取り上げたい。 四つ目は、今後の展望について。この線に沿ってお話ししたい。

 環境基本計画、循環基本計画、その下に8つの個別関連リサイクル法がある。こういう法体系のもとで資源の採取から最終処分、跡地利用も含めて資源保全、環境保全を満たすようにいかに廃棄物等、リサイクルする資源も含めて物流を管理していくかということを考えるのが循環型社会である。 そのときに、技術システムとしての処理システム

だけを考えるのではなくて、社会システムとして全般を考える必要がある。すなわち、法制度、経済的手法、環境教育、住民参加、情報公開という手段を講じながら循環型社会に向かうような社会システムを構築していく。

 「21世紀環境立国戦略」について。循環型社会、低炭素社会、自然共生社会の三つの社会を連携的、統合的に考えて、持続可能な社会をつくっていくというのがその概念である。主に循環型社会は廃棄物をベースにして考え、低炭素社会は、エネルギーとして化石燃料等の代わりに再生可能エネルギーの利用となる。それから、自然共生社会というのは食物を生産する場をあらわす。農場があったり、畑があったり、漁場があったりする。そういう三つの関係をつなぐものとして考えるが、バイオマスがこの三つを一番つなぎやすいということで例を挙げている。 我々は、食料を生産して、利用して、その後、食品廃棄物、家畜ふん尿、未利用バイオマスなどがウェイスト(廃棄物)で出てくる。このウェイストを3Rの後に適正処理するが、再利用、リサイクルするということが重要なので、特にエネルギーと結びつけるという意味で、ウェイスト・トゥ・エナジーということが今考えられている。 このラインとして、化石燃料のかわりに、カーボンニュートラルであるバイオマスを使うことによってCO₂を減らそうという関係になる。そのときに、資源作物そのものから直接バイオエタノールなどのエネルギーをつくるという流れは、食料とエネルギーとの競合関係が出てくるなど、いろいろな問題が生じてくる可能性がある。そういう意味で、この三つの社会というのは相互に関連し合っている。

 地域循環圏というのは、リサイクルする物の種類、地域特性に関係するが、いかに効率よく、循環シ

【略歴】京都大学大学院博士課程修了、京都大学工学部助手、厚生省国立衛生院廃棄物計画室長、大阪府立大学工学部助教授を経て1997年から北海道大学大学院工学研究科教授、同大学公共政策大学院教授を兼担、現在、循環計画システム研究室を主宰。「バイオガスの技術とシステム」オーム社・2006年、「不法投棄のない循環型社会づくり―不法投棄対策のアーカイブス化」環境新聞社・2009年等、日本学術会議連携会員、環境省中央環境審議会臨時委員、北海道環境審議会会長、土木学会環境システム委員会委員長など。

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 10

ステムを地域に合った地産地消の形で構築するかということを考えていきたいということ。当然、地域は循環する空間スケールがいろいろあるので、そのスケールごとに回すものや仕組みなどが変わっていく可能性がある。

 農山漁村における循環ということでみると、堆肥化、飼料化、メタン発酵等々の施設があったとして、農業、林業、漁業、畜産業、一般家庭それぞれから廃棄物として出てきたバイオマスをエネルギーなり飼料なり肥料なりにして返すということ。中小都市だと、幾つかの都市で少し広域的に連携していくということ。大都市になると、下水処理場や再資源化施設、それからホテルやコンビニなどの食品廃棄物をつなぐようないろいろな種類の循環システムを考えていくということになる。

 今日、少し特徴的にお話したいのは、北海道バイオコミュニティ開拓構想=北海道ABC開拓構想(Advanced Bio-Community Dream inHokkaido)である。これは、静脈系と動脈系をつなぐような総合的な廃棄物処理システムとして、廃棄物系、未利用系のバイオマスを中心に、利活用を実践するためのバイオリサイクル事業の開発や実践運転からバイオリサイクル事業の起業、施設展開まで、技術とシステムが集積した総合基地をモデル事業として作ることをコンセプトとしている。

 2番目のテーマとして、ここで5人の卒修論を紹介したい。 1番目の修士の五島典英君の研究は、バイオガスの直接利用ということで、食品廃棄物等からガスをつくるという利用の仕方。2番目の卒論の田中慧悟君は、下水汚泥、し尿汚泥等のバイオガス化の事

例。3番目の修士の橋本翔伍君は、コンバインド・ヒート・アンド・パワーシステム(CHP)ということで、熱電併給システムについて。それから、4番目の卒論の矢萩健太君は、稲わらの熱利用。ペレット化して温泉などに供給するシステムについて検討している。最後の卒論の近藤恭平君は、離島、今回の場合は礼文島と稚内市の連携だが、そこでの生ごみの広域処理システムについて検討している。 うちの研究室で考えているのは、リサイクルする物の違い、種類。つまり、いろいろなリサイクルする物によってそれぞれ地域循環圏のつくり方も変わってくるということ。その検討内容についてもいろいろあることを紹介したい。

 1番目は、「動脈系、静脈系連携によるエネルギー循環のための廃棄物バイオバス化の検討」、副題として、「石狩湾新港地域におけるバイオガス直接利用システムの検討」となっている。 これは、動脈系と静脈系を結んだところで、石狩湾新港でなくても苫小牧でも室蘭でもいいが、そういうところで融合したバイオマス利活用の拠点をつくろうということ。そういうものをつくっていくことを北海道ABC開拓構想と私どもは呼んでいる。そこでは、バイオマスの事業化と同時に、教育機能や情報発信機能も持たせていきたい。

 次は、生ごみ、下水汚泥、し尿汚泥等の混合処理によるバイオガス化システム。これは、生ごみ、下水汚泥、し尿汚泥を混合処理する可能性を検討している。北海道には中小の自治体が多く、現在は、各自治体で下水汚泥の処理をしているが、消化処理をしているところが少ない。そこにごみを一緒に入れて混合処理することによってリサイクル率が上がるのではないか、エネルギー効率も上がるのではな

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いかということを検討している。 例えば、生ごみと下水汚泥とし尿汚泥では、現状、北海道は生ごみ資源化率は7%しかない。下水汚泥だと、生ごみと混合処理することによって国交省の補助が出る。環境省の方も汚泥再生センターの更新補助があるので、これも一緒にできないかということ。

 次は、「CHPシステムを目指した木質系バイオマスエネルギー利用実態のアンケート調査による分析」。 去年、私どもでフィンランドの視察を行った。向こうでは、林地残材なり切り出したものを発電利用している。CHPプロセスというものがかなり普及してきている。そういうものが日本で、特に北海道で可能だろうかということを検討している。 日本の全バイオマス別のエネルギーポテンシャルを見ると、木質系バイオマスが一番多く、3分の1くらいを占めている。あとは、食品系、家畜ふん尿など。日本の木質系バイオマス全体で有効利用されているのは、たかだか20%である。北海道では、その地域特性を活かし、有効利用率をさらに上げていくことを考えている。 例えば、北欧が進んでいるが、スウェーデンだと、CHPによって1次エネルギー生産の16%が木質系からつくられているという実態がある。林地残材とか木材加工業から出てきた残さ、建設廃材などを使って大規模なCHPプラントをつくれないか。そして、地域の電熱併給システムで発電と熱供給ができないか。フィンランドでは、石炭とか重油とか天然ガスの発電施設を解体して、非化石系、木材を使う炉に変換しようとしている。日本もそういう方向でできないか、可能性を検討すべきではないか。

 今回のアンケート結果をみると、ペレット製造は小規模施設の割合が高く、発電利用は大規模施設が中心となっている。利用状況は、発電用のものでは、自社内で7割、外部に売電などをしているものが3割くらい。熱利用は、ほとんど所内の暖房などに使っている。ここで申し上げたいことは、大規模な産廃業者によって、ここの場合は建設現場等の建設廃棄物が主体だと思うが、木質系バイオマスの利活用を大規模にやってCHPシステムをつくることができないかということ。  四つ目は、「南幌町稲わら熱利用システムの事業性評価のための影響要因の検討」。 南幌町では、稲わらをペレット化して熱利用することをここ二、三年ほど調査研究している。これは、NEDOの研究で、私もそれに2年間関係させていただいた。その成果から、事業採算性でペレット価格が対抗できない部分があるので、その辺で何か工夫できないか。また、温泉で利用する場合、使用量や使用形態に工夫できないか。 これがうまくいけば、稲わらというのは日本の場合は、お米をつくっているところではどこでも出てくるし、“すき込み”は、土壌がよくなるという議論と同時に、逆に悪くなるという議論もあるので、そうしたことも解決できるし、有効利用の可能性も出てくる。稲わらのペレット化というのは非常に有効ではないかと考えている。 温泉などへのヒアリング調査を行い、いくつかのシナリオを検討したところ、以前2年間実験を行った時のコストよりもかなり下げられる可能性があるということが今回の研究でわかった。 また、ペレット利用により、重油利用やすき込み等のCO₂排出も削減できることがわかり、採算性も、温暖化に対しても貢献できるという結果が出ている。

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 次に、3番目のテーマとして稚内の事例を紹介する。 最北端の宗谷岬では、全部で74基の風車が回っており、76,355kWhの発電がされている。太陽光も5,000kWh。これだけの再生可能エネルギーがある。さらに、ここにクローズド型の処分場のほかに、隣接してバイオガス化施設が平成24年に稼働する。それらを連携しながら、トータルとしてバイオマスとエネルギーをうまく回していくようなことを考えている。 私もお手伝いをして、稚内市ではごみ処理基本計画、新ごみ処理計画を策定した。このごみ処理計画は、いろいろな上位の計画や関係計画と連携している。まちづくりとしての稚内市の総合計画や、環境基本計画の中に位置づけられ、また、循環基本計画、廃棄物処理計画、上位の減量化計画等にも結びつけられる。おもしろいのは、生涯学習の推進計画とも連携していること。ごみの出し方の教育などにも関係しながらつくられている。 稚内市の総合計画では、まちづくりの基本理念を五つ上げている。特に、「人と物が行き交うにぎわいのあるまち」ということで、礼文や利尻など観光で非常に有名なところと人の行き来をしていくということを想定している。それから、宗谷地域をけん引する中心都市であるということ。総務省の方で定住自立圏という構想もあるが、そういう意味も含めて広域化を目指している。もちろん、まちづくりなので、市民が中心に地域自治をやっていくのだということを大きくうたっている。 ごみの現状をみると、20年度は、事業系と家庭系は非常に多く、1,448グラム/人・日。全国平均が1,089で、北海道が1,134。これらに比べて稚内は多いので、平成36年度を目標にして、900グラムまで下げていこうということ。

 そのごみ処理の基本的な方向として六つ上げられている。 特に注目したいのは、国の第2次環境基本計画の目玉になっている地域循環圏の理念に基づいて計画を構築しようということ。そういう意味で、全国の模範になるべく頑張っておられると思う。 それから、廃棄物系バイオマスの利活用を推進するということと、再生可能エネルギーの利活用の推進ということも柱立てにされている。

 また、離島、周辺市町村を含めて広域化することによって環境面やコスト面で効率的な計画を立てるものであるということ。地域循環圏のスケールによって違うが、第1段階として稚内市の広域を少し広げて、礼文・利尻と主に生ごみバイオマスで連携する。さらに、大きな循環圏として、西天北五町衛生施設組合や、南宗谷衛生施設組合等々とも連携してやっていくということも考えている。

 稚内市では生ごみの中間処理施設が平成24年に稼働する。生ごみ、下水汚泥、水産廃棄物等の混合ごみをメタン発酵させてバイオガスを生産し、それを有効に活用しようという計画である。また並行して、プラスチックごみ、燃料化可能ごみを燃料として供給すること、BDFや剪定枝などのリサイクルシステムとの連携も考えておられる。

 それに関連して、最後のうちの学生の卒論だが、「海上輸送による離島の生ごみ広域処理システムのシナリオ検討」。地続きでの広域ということもあるが、稚内の特性としては、利尻、礼文とうまくつないでいけないか。海上のフェリー、これは観光用と商用といろいろあるが、そういうものを利用できないかということを考えている。

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 現在、礼文では、観光客の方々が非常に多く、ホテルなどの施設から生ごみがたくさん出る。そういうものをいかに効率よく活用するか。今のシステムではそれができていない。それを、先ほどの稚内市の施設に持ってくれば有効活用できるのではないか。中間施設の運用で重要なのは、効率よく運転するために搬入するバイオマスを定常的に確保することなので、二つをあわせたらうまく総合的にできないかということ。 シナリオを検討した結果、CO₂の排出量が現状の焼却処理に比べて減ると試算している。

 最後のテーマ、北海道の地域循環圏について展望したい。 北海道ABC開拓構想は、当面、「道央集積圏」をベースに、北海道全体のバイオマスの利活用を図っていこうという構想である。 道央地域には、石狩湾新港、苫小牧、室蘭にリサイクルポートがある。それから、空港もあるし、大都市札幌がある。これらを「J」の字に結んだ「道央集積圏」は、製品出荷額は全道の5割を占める工業地域。こういう動脈系のところにうまく静脈系を組み込んでいこうという発想。 これと関係したものとして、去年の10月から3年間の計画で、「バイオウェイストマネジメント工学講座」という寄附講座が北大で立ち上がっており、9社の民間の方と一緒に研究を進めている。その一つの柱がABC開拓構想を実現するモデルの提案と実践である。今、北海道は、机上の空論ということではなくて、どのように実践していくか、いかにその実績を上げていくかという段階に来ている。 あとは、循環型社会の最終処分システムというものが、クローズド型になってきているし、さらにストックヤード的な機能を付加し、循環資源を動脈系に返していくような仕組みを処分場が持つ可能性がある。 それから、処理だけでなくリサイクルの廃棄物ビジネスモデルをどう展開していくか。そういうことについても研究していこうとしている。

 もう一つ、北海道には非常に強力なバイオマスの利活用を図るネットワークがある。今から4年半前に、道庁が中心になって「北海道バイオマスネットワーク会議」が立ち上がっている。全道のいろいろなNPOや地域の研究会、会議などと一緒にネットワークを組んでおり、ヒエラルキーではなくて、

フラットな連携関係で研究活動、普及活動をしている。これがハブ的な機能を果たして、北海道のバイオマスの利活用を推進して欲しい。

 最後に先ほど環境省からもご紹介があった低炭素型地域循環圏整備推進事業について。ぜひ申し上げたいことは、3地方事務所、中部、近畿、九州のブロックで協議会を設立して地域計画策定に向けて今年度からもうやられているが、北海道はまだ入っていない。7ブロックあって、3ブロックはもう先行している。なぜ北海道は入らないのか。バイオマスが一番進んでいるのは北海道のはず。地域特性もあって、それぞれ特色のあるバイオマスの利活用のリサイクルをされている。北海道のこういう強みをもって、ぜひ北海道地方環境事務所が中心になって、その辺のところをもっと宣伝して、ぜひ来年の22年度は北海道地方環境事務所も加われるように頑張っていただきたい。

 21年度に事業の認定を受けたところは、地域循環圏のモデル事業の予算がついて進むことになる。ぜひ北海道もそういうモデル事業にまでつなげてやっていただきたい。そのためには、今日のような集まりが非常に重要であって、われわれも地域循環圏とはいかなるものか、地域計画とはいかなるものかということを詰めて、北海道が十分に地域循環圏を推進するポテンシャルをもっており、全国の模範となりうることを示していきたい。

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事例発表①「人が行き交う環境都市稚内 ~廃棄物処理の新たな転換~」稚内市生活福祉部衛生課 課長 日向寺 和裕 氏

 稚内市は、昭和40年代には漁業が大変盛んだったが、漁業の衰退とともに著しく人口も減少し、財政状況も厳しくなった。その再生の方策として、観光や国際交流はもとより、自然環境を生かした取り組みとして、風力、太陽光、バイオマスによる再生可能エネルギーの活用を進め、「人が行き交う環境都市」を今後の市政の柱としている。

 年間を通じて吹く約7.5メートルを超える風に着目し、現在74基の風車が稼動している。出力は、7万6,000キロワットで、本市の年間電力消費量の85%を賄うことができ、いわゆる“風のまち”から“風力発電のまち”になった。さらに、積雪寒冷、強風という厳しい気象条件ではあるが、一方では広大な土地を有していることから、大規模太陽光発電の実証実験の誘致に成功し、本年で工事も終了し、本格的な調査が始まっている。

 本市は、恵まれた自然環境の中で、家畜ふん尿、水産廃棄物など豊富なバイオマスが多く存在している。さらに、家庭や事業所からの厨介ごみ、下水道汚泥のバイオマスを廃棄物として処理しているが、最近、このバイオマスは新エネルギーとして注目されている。 これらを新エネルギーとして活用する検討が庁内でも始まり、まずは生ごみ中間処理施設、稚内市のバイオマスエネルギーセンターの建設に着手した。この施設は、生ごみと下水道汚泥、さらには水産廃棄物を受け入れて、日31トンを処理する機能を有し、メタンガスはエネルギー回収し、発電や温水、蒸気を製造し、さらに余剰の電力は売電し、ガスは天然圧縮ガス、いわゆるCNGとしてごみ収集車に活用することにしている。また、残さも堆肥として農家や市民に供給する。 廃棄物処理施設の運営に当たっては、ストックマネジメント手法を取り入れることによって計画的な保全対策を講じながら、施設の延命化を図り、さらに施設の建設、維持管理、運営に当たっては、民間の創意や工夫を引き出すPFI事業を推進することとしている。施設は、できるだけ集約して、さまざまなPFIの組み合わせによるストックマネジメントによって施設間の連携を図る。

 次に、今日の本題である地域からの循環型社会づくりということで、宗谷管内、とりわけ稚内市を中心とした地域循環圏づくりについて。

 宗谷管内は、二つの広域処理、三つの単独処理で賄われているが、南宗谷は四つの市町村、西天北は五つの町によって広域組合をつくっている。また、稚内市、礼文町、利尻、利尻富士町は利尻郡ということで、単独処理として位置付けられているが、最北の地、離島、観光地としてごみ処理に対しては同じような課題があることから、広域処理の可能性についても検討することとしている。広域処理は、廃棄物施設の効率的な運営と建設費の経済的な価値の側面から、複数の自治体が行なうことが望ましい。

 人口の推移を見てみると、稚内市は、5万5,000人をピークにした人口が平成20年には4万人を切り、28年には3万5,000人になるのではないかと予測されている。利尻・礼文も同様で、稚内地域は著しい人口の減少が予測されている。 これらの人口減を背景に、広域処理の望ましい姿として、今後、ごみ処理の方向性として地域循環圏の構想を掲げている。現在の単独処理から、近い将来は利尻、礼文との連携、また将来は宗谷管内を廃棄物の資源物を広域的な処理によって活用するということも目指している。

 地域循環圏を形成し、地域で廃棄物を循環させるには、地域の特性を考慮して、環境や資源の有効利用、さらには輸送の効率、処理コスト、経済面において最適かどうか検討する必要がある。 地域循環圏形成のメリットを整理すると、国立公園を有する地域として環境保全、環境美化によるイメージアップが図れる、離島における環境負荷の低減が図れる、再生可能エネルギーとして利活用することができる、広域処理によって財政負担を軽減することができる、人口減によって余裕施設の効率的運営が図れる、といったことが挙げられる。

 次に離島の特徴についてお話したい。両島は、観光地としては比較的人口が少ないのが特徴。宿泊施設から出る廃棄物は一般廃棄物に含まれるので、結果的には一般廃棄物の排出量が極めて多い。北海道の1人当たり1日の平均排出量が1,160グラムと言われているが、利尻島は2,300グラム。リサイクル率は北海道平均が19%に対して、利尻は0.07%。排出したごみの半分は焼却処分、残りは埋め立て処分している。礼文町も同じような状況で、利尻より排出量はさらに多く、4,186グラムで道内のワーストワン。さらに、リサイクル率も0.4%である。

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 広域処理の方法としては、今、二つの方法を考えている。定住自立圏と地域循環圏の構築の二つの方法である。定住自立圏構想とは、集約とネットワークの観点のもとで、近隣する市町村がさまざまな分野で相互に連携協力し、定住のための必要な諸機能を総体的に確保し、自立のための経済基盤や魅力ある地域づくりを目指して、圏域全体で活性化を図るというもの。稚内市としては、この3月に定住自立圏の宣言を行い、その項目の一つとして利尻、礼文を含めた広域処理も一つの課題として協議を進めることとしている。二つ目は、地域循環圏の構築ということで、この二つの構想をもとに広域処理を進めていきたいと考えている。海上輸送やコストの問題があるが、生ごみのバイオマス化を積極的な協力の中で可能にしていければと思っている。それによって、両島のごみ処理施設の低減が図られ、しいては財政負担の軽減を図れるということが大きい。

 本市では、3種13分類のごみの分別を4種18分類に拡大しようと考えている。現在11.3%のリサイクル率を平成24年には28%、30年には

30%を超えることを目標にしているが、廃棄物の広域処理というのは、排出抑制、リサイクル率の向上など、同じレベルのごみ処理体制で行うことが必須条件である。

 最後に、稚内市は、今、パック旅行から環境、自然をテーマにした旅行形態に変えようとしている。例えば、稚内市には民間が設立した「風の学校」というものがあり、そこで自然エネルギーや循環型社会について学び、さらに2日目には自然エネルギー施設を見学してフットパスなどを経験してもらう。3日目には、終日、就業体験、漁業などを体験していただいて、最終日に南極観測施設などいろいろなものを見ていただいて帰っていただく。このような教育旅行も、今後、両町の自然環境を生かした取り組みの進め方の一つではないかと思っている。

 稚内市は、日ロ友好最先端都市として、サハリン交流が活発に行われている。さらに、循環型、低炭素、自然共生という三つの社会を基本に、人が行き交い、にぎわいのある稚内のまちを目指していきたい。

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事例発表②「当別ふれあいバスによるバイオディーゼル燃料活用の取り組み」当別町企画部企画課 課長 五十嵐 一夫 氏

 当別町は、現在、人口が1万8,870人。一時期は2万人を超していたが、いまだに少しずつ減っている。札幌市と石狩川を挟んで北隣のまちで、石狩平野の北側に位置している。町内にはスウェーデンヒルズと言うまち並みがあり、東京など本州方面からの移住者が多い。

 当別のふれあいバスではどういうことを行ったのかということだが、かつては、行政が路線バスや福祉バスを担っていた。それから、北海道医療大学という私立の大学と、当別整形外科という医療機関が、両方ともまちの中心部から少し離れたところに施設を構えており、学生や患者の無料の送迎バスを運行していた。それから、スウェーデンヒルズも、最寄りのJR駅から離れたところにあり、地域の住民限定でバスで通勤通学、買い物などの送迎をしていた。

 それぞれ勝手にばらばらに走っていたものを、全部一つにまとめようということで、平成18年に四つの事業者をまとめる形で、「当別ふれあいバス」が誕生した。まとめる前は、四つの事業所で7台のバスを所有していた。バスは一元化により4台に減らして運行することができ、コストの削減につながった。料金は1路線200円である。バス停一つ乗っても200円、路線の出発から終点まで乗っても200円となっている。

 このバスをBDFを使って走らせている。BDFを使っているということで、「てんぷら油を使った環境にやさしいバス」といったことをはじめとして、環境に関する授業も子どもたちに対して行っている。住民の方には、モビリティ・マネジメントなどで環境に対する意識を向上していただく、そして、バスに乗ってもらって、バスを支えてもらう。それから、燃料、BDFの原料になるてんぷら油を出してもらう。官、民、住民が一体となることで究極の循環型のコミュニティバスを目指している。

 BDFの原料は廃てんぷら油。そこにメタノールとアルカリの触媒を入れて、温めてまぜてやることでBDFができる。イニシャルで100リットル入れるとすると、完成時には95リットルくらいになる。5%くらいしか目減りしない。今、軽油は100円か105円くらいだったと思うが、人件費等も全部含めて、BDFは1リットル当たり75円くらいでつくられている。

 ふれあいバスでは、精製した燃料は軽油と混合せずに100%で車両に使用している。実は、法律の仕切りがあり、軽油にまぜてしまうと、まぜたBDFの分にまで軽油取引税がかかってしまう。例えば、軽油70%で30%のBDFをまぜると、その30%の部分にまで軽油取引税がかかってしまうということがあり、あえて100%でやっている。

 ただ、北海道には地域特性があり、このBDFは、冬にマイナス5℃以下くらいになると、急に粘性が増して、エンジンの方まで燃料が行かなくなるという欠点がある。なので、今のところ、夏場は全部のバスでBDFを使っているが、冬場はそのうちの何台かのバスだけで試験的に使っている状況。

 実際の取り組みの経過だが、平成18年8月に、「下段」というのは社長の名字だが、下段モータースさんが役場に来て、BDFでコミュニティバスを走らせてみたいという相談を受けた。町内の飲食店、てんぷら屋などから廃油の回収を始め、19年度は、夏の間は100%使用した。それから、役場のほか、公共施設などでも回収拠点を設け、一般家庭からの回収も始めた。20年度には、「廃食油回収キャンペーン」を打ち上げた。

 これにあわせて、オフセットクレジット創出モデル事業の申請を行い、平成21年1月に創出モデルの認可を受けた。21年度は、冬にも、2台から3台、試験運行をしている。

 廃食油回収キャンペーンでは、まず、回収場所をふやし、回収用ボトルを配布した。ペットボトルの場合、口が非常に細くて、そこにてんぷら油を入れるときにどうしてもこぼしてしまって手を汚してしまうということで、大学の研究室でよく使うような、ポリエチレン製の広口の内ぶたつきの500ccのボトルを無償で、ペットボトルを持ってきてくれた人に、“次からこのボトルに入れて持ってきて”ということでお渡しした。

 それから、インセンティブとして、500ccにつき、ふれあいバスの回数券200円1枚を差し上げた。これにより、以前は80リットル弱だったのが、このキャンペーンにより、5.33倍の420リットル集まり、大成功だった。追加の効果として、町民の皆さんに非常によく知られたということと、今ま

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でなかった飲食店からも取りに来てほしいという電話が入るようになった。

 その推移をみると、キャンペーンを打った1ヶ月間で、飲食店、一般家庭ともはね上がった。その後、一般家庭は元に戻るかと思ったら、ずっといい経過をたどっている。飲食店の方も、ちょっとばらつきはあるが、1,000リットルの線から下がることが少なくなっており、2割増しぐらいの数字になっている。

 来年度は、子どもたちが学校に行くときに持ってきてもらったり、町内会単位で廃品回収などを行うときに、一緒に集めるという取り組みも考えている。

 この取り組みの特徴だが、小さな町の小さな取り組みでもあり、実は、下段モータースが回収からBDFをつくってバスを走らせるということを全部1人でやっている。普通だと、回収業者がいて、精製業者がいて、事業者が燃料を入れて走るということなので、ここで二酸化炭素の発生があるが、それ

がないということもメリットではないかと考えている。

 小学生に対して、モビリティ・マネジメントに関する環境教育も行っている。交通手段によって温室効果ガスの排出量がどれくらい違うのか。できるだけバスや鉄道に乗るように移動手段をシフトしていきましょうという話をしている。実際にバスを持ち込み、排気管のところからにおいをかいでもらう。あと、当別町の子どもたちは、JRが通っているので鉄道の乗り方はわかるが、バスの乗り方を知らない。バスの乗り方教室も実施している。

 現在、J−VER制度にも申請している。削減した二酸化炭素をクレジットとして銀行の預金口座のようなところに置いて、これを排出削減できない大手企業の二酸化炭素と相殺するという制度。BDFを使って運行しているふれあいバスを排出量削減のモデル事業として申請してポジティブリストというものに載せていただいた。来年度からモニタリングに入りたいと考えている。

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事例発表③「洞爺湖地域におけるバイオマス利活用の広域化検討」株式会社循環社会研究所 主任研究員 小山 博則 氏

 私は、洞爺湖地域で、いろいろとバイオマスの利活用を実践している行政の方、農家の方々の支援を行っており、今日はその方々のピンチヒッターという形で、取り組みの内容をご紹介したい。

 まず、今回のシンポジウムは、広域的展開、地域循環圏など、広域的な展開がテーマになっているとお聞きしているが、洞爺湖地域では、平成20年度からバイオマスの利活用について、広域的な視点から、その流れをスムーズにしようと検討を行っている。

 農林水産省の平成20年度バイオマス利活用加速化事業において、バイオマスの利活用を加速化する1つのキーワードとして「広域的」が位置づけられ、国内3つの地域で検討が行われた。青森と岩手をまたぐ形の広域である北東北馬渕川流域、愛知県の豊橋を中心した東三河地域、もう一つが洞爺湖地域である。

 洞爺湖地域では飛び地合併の大滝地区も含めて、1市3町での検討であった。 まず、バイオマス利活用を実際に広域的に展開する場合、どんなメリットがあるかを整理した。 1つ目は、例えば単体の市町村だと、ペレットストーブを入れたいという市民がたくさんいても、原料がないという地域もあること、逆に、森林資源が豊富にあるが、利活用する場がないところがある。これらを広域的に展開することで、非常にローカルな物の流れではあるが、原料調達から変換してそれを利用するところまで一体的にとらえることができるというメリットである。 次に、洞爺湖地域でもそうであったが、行政よりも農協とか森林組合など民間サイドの方が合併の速度が早い。そうなると、当然、関係者が一緒に進めなければならない場合に、行政側も広域化することで、窓口が1本化され、コミュニケーションがスムーズになる。 さらに、各市町村単位でいろいろなバイオマスの検討とか資源エネルギーの調査とか実際に実証試験などを個別にやっていると思うが、そのノウハウの共有なども挙げられる。最後に、地域共通の目標が描けるということが挙げられる。

 実際に、洞爺湖地域では、1市3町それぞれで、既

に具体的な取り組みは行われていた。バイオマスタウン構想や新エネビジョンなど関連する計画を個々に持っていた。それらを広域的に展開するために、二つのポイントを挙げた。 1つは既に進行中のものを有機的につなごうということ。もう1つは、地域振興が主目的であり、環境配慮は手段であるということ。現場を回りながら痛感したことだが、環境保全のために頑張ろうとか、リサイクル率を上げようという形で提案をしても、実際の農家や漁家、林業家たちからは余り良い反応が得られない。今回の検討で、農業や洞爺の場合は基幹産業である観光の振興に役立てたい、地域振興が主な目的で環境配慮をうまく使おうではないかという形で提案をしたところ、おおむね、受け入れられやすくなってきたという経緯がある。

 洞爺湖地域は1市3町でエコミュージアム構想なども取り決められており、ジオパークにも加盟している。そこでバイオマス分野からも貢献しようということで、バイオマスの取り組みを位置づけたところである。

 この地域では、マスツーリズムからエコツーリズムに、薄利多売から個人重視や体験志向、リピーター重視の方向に観光産業も変えていかなければならない、地域の魅力も再演出しなければならないということを目標に掲げているが、実際は苦労も多い。

 1つめの広域的展開の具体例について、旧大滝村、現在は合併で大滝地区になっているが、この地区は林業のまちである。そして伊達市(伊達地区)は、施設園芸、ハウス農家がたくさんある。合併を機に、現市長が、大滝の豊富な木材資源で大滝と伊達を有機的につなごうという構想を持たれていた。タイミングよく、サミットの開催もあり、そちらの関連予算からの支援もあり、木質ペレット製造のプラントができた。洞爺湖温泉でも、温泉を沸かすボイラーまではいっていないが、ロビーのストーブなどには普及してきている。

 もう1つは堆肥化。洞爺湖地域は、室蘭も含めた一部事務組合でごみ処理を広域で行っている。可燃ごみ中の生ごみは分別してそれぞれの地域が堆肥化を行っている。いずれも畜産堆肥のラインと生ごみ堆肥化ラインの2つを持っている。現状で

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は堆肥がなかなかさばけないという課題がある。 一方、農業分野では、たくさんの野菜を少し作っており、品種によって必要な堆肥成分が異なる。この地域では四つの堆肥化拠点があるので、必要なものを必要なところに供給するような仕組みを提案している。しかし、実際に圃場で使ってもらえるためには、これからもう少し頑張らなければならないという状況にある。

 以上が検討だが、既に実践している部分として、今年度は、農業振興、観光振興につなげるものとして、CO₂の見える化、可視化を行っている。端的に言えば、トマト1個つくるのにCO₂はどれぐらいかかっているかというものである。この点について、従来型と洞爺湖地域の野菜を比較しながら洞爺湖ブランドをPRしていくというものである。

 今回は生産段階だけの数字だが、重油なり軽油を燃やしながらハウスを加温しないで、先ほどの大滝でつくったペレットを使うと7割ぐらいCO₂が少

ないという計算結果になる。それに加えて、苗用のポットを繰り返し使ったり、ハウス用のビニールも、通常だと3、4年で張りかえるところ、なるべく丁寧に使って7、8年持つようにしたり、いわゆる3Rにつながるようなことも行っている。

 “おいしい、新鮮”は当たり前であり、今後はエコの部分もどんどんPRしていこうと考えている。 販売の現場でもPRを行っており、おおむね良い取り組みだというインタビューの結果もいただいている。アンケートによると、消費者にとって、買うときのポイントは、やはり新鮮さや産地、安全・安心であり、環境配慮・エコは2%未満であるのが現状でもある。逆に、値段や新鮮さ、産地も一緒の場合はCO₂が少ない方を選ぶという結果となっている。現在のところは、買い物において、環境配慮が主目的になるのではなく、最後の後押しになるような位置づけになっている。このような現場感覚は、今後のPRに役立てたいと考えている。

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事例発表④「中・北空知地域における広域的ごみ処理」北海道環境生活部環境局循環型社会推進課 主幹 川嶋 幸治 氏

 中・北空知地域における広域的ごみ処理について、平成13年から15年の間に起こった事柄を中心にご紹介させていただく。広域化における一つのモデルとしてお考えいただきたい。家庭系一般廃棄物の生ごみのバイオガス化が北海道の中・北空知地域の3地域で一挙に起こったことは、日本で初めてと言っていいと思うが、特異な事例でもある。それから、当・時、私は道から滝川市に職員として派遣されたということもあり、その内容について知る機会ができたということから、地域循環資源の地域的な利用、地域循環圏の構築ということについて、広域的な枠組みの中から考えを述べてみたい。

 中・北空知地域は、平成10年3月に中・北空知ごみ処理広域化検討協議会というものができ上がり、その中で大きく北ブロック、中ブロック、南ブロックと分かれている。

 広域化の取り組みの状況だが、既にご承知のとおり、平成9年に北海道のごみ処理の広域化計画がつくられ、当時、それに基づいて全道が32のブロックに分けられた。そうした中で、この地域においても広域化の取り組みが始まった。

 大きな枠組みとしては、深川市の北空知衛生センター組合を中心とした1市4町のブロック、滝川市の中空知衛生施設組合を中心とした3市2町のブロック、砂川市の砂川地区保健衛生組合を中心とした2市3町のブロックになっている。焼却については、エコバレー歌志内という民間の焼却施設に可燃ごみを持っていくという枠組みであった。 歌志内のエコバレーでは、発電効率が下がるということと、歌志内市の市民感情として、各地の生ごみが入ってくることが受け入れ難いということで、生ごみの受け入れはせず、生ごみ施設をそれぞれがつくることになり、それがメタン発酵施設(バイオガス化施設)となった。

 メタン発酵施設は中ブロックが55トン、北ブロックが16トン、それから南ブロックが22トンの規模となっている。なぜメタン発酵だったのか。当然、既存の技術としては堆肥化が中心だったが、やはり堆肥をつくった後の利用先の確保がなかなか難しいという問題があった。エコバレーに可燃ごみを持っていくとしても、その生ごみの利用の問題が残る。堆肥をどうするかという課題がなかな

か解決されないというところに、たままた平成13年から、当時、メタン発酵施設、いわゆるバイオガス化施設が環境省の補助対象になったことからメタン発酵が取り入れられることとなった。

 各施設を簡単にご紹介させていただく。 砂川の「クリーンプラザくるくる」は、メタン発酵施設で、55度という高温発酵の施設。発酵槽、ガスホルダー、ガスボイラー、発電機などがある。発電は、マイクロガスタービンになっている。それから、手選別コンベア、コンテナの移動装置などが、先ほどの可燃ごみの中継施設ということで、それぞれつくられており、コンテナ車の互換体制も3組合の中で考えられている。

 次に、北空知衛生センター組合だが、これはメタン発酵施設の部分だけである。受け入れホッパー、メタン発酵槽などがある。こちらも高温発酵になっている。ガス発電機の方はピュアガスエンジンとなっている。3施設それぞれ発電方式も違うし、発酵温度も違いがあるということで、ある種、バラエティーに富んだプラントが三つでき上がっている状況。

 次に、滝川の中空知衛生施設組合の「リサイクリーン」。管理棟には、リサイクル工房や展示コーナーを設けている。次に、リサイクルプラザでは、資源選別を行なっており、圧縮装置、破砕機、カレットヤード等々が併設されている。次に中継施設だが、専用のコンテナを運搬する運搬専用車両が出入している。ホッパーに投入後、可燃コンベアで上に上がって、落ちて圧縮されてフックロール車に積み上げていく。 生ごみの処理フローとしては、投入後、異物を除去して、滝川の場合は中温発酵になっているが、ガスホルダーでガスを貯留して、あとは排水処理をして放流する。発電については、デュアルガスエンジンということで、軽油を一部混焼して発電するという施設である。滝川については、汚泥、発酵残渣が出るので、それを脱水・乾燥させて堆肥化している。堆肥も、今、リサイクル認定製品として認定を受けて地元で利用されている。 施設の概要としては、中温発酵式55トン、3系列になっており、それぞれ発酵槽が三つあり、3系統でガス化を行なう。発電は、80キロワットのデュアルガスエンジンが5基ということで、400

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 21

キロワットの能力を持っている。 総建設費は29億4,000万円だが、これに外溝工事が入るので、計約33億円。これは、中継、選別、バイオガス化など全ての施設を入れた総費用。

 これまで5年間のごみの処理量について、ガスの発生状況、発電状況等々をまとめた。ごみ処理量については、受け入れ量とは違い、異物の部分が入っている。この中で特徴的なのは、滝川の中空知衛生施設組合は異物の混入率が10~15%という数字になっているが、砂川地区保健衛生組合は非常に少なく、数%と聞いている。 ガス発生効率をみると、通常、高温発酵の方はガスの発生量が多いと言われるなど、それぞれの施設の性能はあるが、トン当たり100~190キロワット、200キロワット近くで推移している。いずれも、発電した量については場内利用、また一部は売電している。売電する場合、購入価格が安いということがあるので、コストバランスをどう考えるかということが課題だと思っている。

 最後に滝川市のごみ処理の事例をご紹介させていただく。 滝川市は昭和61年に定額制で有料化をしていた。平成15年に従量制に切り変わっている。これは、3ブロックそれぞれ一斉に行われている。新しいプラントをつくるまでは、滝川市はおよそ4億2,000万円のごみ処理費用がかかっていた。新しいごみ処理にはさらに4億3,000万円が必要となり、増額部分の3分の1は市民負担をいただいて、3分の2は公費負担で賄うということから割り返していって、1袋80円という標準ベースが出ている。 80円という費用は、滝川市民、周辺自治体の町民にとっても負担は小さくはないと思うが、循環型社会形成のため新しいごみ処理が必要ということでご理解をいただくことができている。

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事例発表⑤「環境モデル都市 下川町の取り組み」下川町地域振興課環境モデル都市推進室 室長 長岡 哲郎 氏

 「環境モデル都市 下川町の取り組み」をご紹介する。下川町は、北海道の北東部に位置し、面積は約6万4,000ヘクタール、東京23区とほぼ同じであり、そこに約3,700人が暮らしている。気象条件は大変厳しく、冬はマイナス30度を下回ることがある。積雪の合計は10メートルを超え、スキーのジャンプ競技が大変盛んな町である。アイスキャンドル(氷のランプシェード)の発祥地でもある。

 町の面積の90%が森林で、古くから森林・林業の恩恵を受けてきた町。昭和28年に、町の基本財産とするため、1,221ヘクタールの国有林取得を機に、機会あるごとに森林を取得するとともに、循環型の森林経営を理念に毎年一定の面積(40から50ヘクタール)の植林をこれまで進めてきた。現在、人工林で約3,000ヘクタールを確保、天然林を含めると約4,500ヘクタールの町有林による適正な森林管理の下、雇用の確保や地域の産業振興を図っている。

 下川町は、国の環境モデル都市に認定されている。環境モデル都市は、地球温暖化が深刻化しているなかで、国が、世界の先例となる「低炭素社会」への転換を進めるため、より大幅な温室効果ガスを削減する目標を掲げ、先駆的な取組みにチャレンジする地域を「環境モデル都市」として認定したもの。平成20年7月に横浜市、北九州市、富山市、水俣市、北海道では帯広市と下川町の6都市が選ばれた。平成21年1月に7都市が追加されて、現在、13都市が環境モデル都市として「低炭素社会の構築」に向けて、先進的な取組みを進めている。

 下川町の環境モデル都市のイメージを示す。循環型森林経営を推進し、森林の吸収機能を最大限に高める。 また、下川町の森林は、自然と経済と社会に配慮し適正な森林の証とされている世界的認証機関「FSC(森林管理協議会)」の認証を受けている森林から木材を供出し、その時に発生する未利用な林地残材等を活用し、ペレット、ブリケット、バイオコークスやエタノール等々の様々な燃料を開発・生産し、バイオマスエネルギーの有効活用により、地域のエネルギー自給・自立を目指す。また、資源エネルギー作物として早生樹「ヤナギ」の栽培に取り組み、バイオマスエネルギーとしての活用とともに都

市や企業活動から排出されるCO₂を相殺する仕組みであるカーボンオフセットを推進する。 さらに地域の木材を利用し、家を建てることで木材の輸送に係るエネルギーコストを抑制するウッドマイルズに取り組み、さらにはゼロカーボンの住宅を提案・推進し、住民に快適な住環境を提供するとともに地域活性化と温暖化対策を併せて推進する。以上が概要であり、環境モデル都市の提案とした。

 こうした取り組みの中で、2020年の中期目標として、1990年比で温室効果ガスについては16%削減、森林の吸収量で3.2倍、2050年には66%の温室効果ガスの削減と4.5倍の森林の吸収量を目指している。

 下川町の木質バイオマスの取り組みだが、平成16年に公共温泉に木くずボイラーを導入した。現在、効率的な運転等が実現し、化石燃料に比べて年間500万円程度のコスト削減がなされ、年間250t−CO₂の削減削減につながり、環境省のJ−VERに登録となっている。この木質バイオマスボイラーを成功事例として、各公共施設に導入を進めている。

 また、今年度、環境省の支援により、森林バイオマスエネルギー事業として、地域における間伐材、林地残材、建設副産物の有効利用を進めるため、集積基地として木質原料製造施設を整備した。ここで製造された木質燃料は、同じく今年度整備を進める公共施設の地域熱供給施設に提供する。

 もう一つ、森林バイオマスエネルギーの事業として次世代型エネルギーであるバイオコークスの実証実験を行っている。経済産業省の支援を受け、近畿大学、北海道大学、民間各企業等と連携して、トラックを活用したモバイル型製造機や小型ボイラーを開発し、町内の農家でトマト栽培の試験などを行なっている。

 また、資源エネルギー作物として、食料自給に影響しないエネルギー資源作物「ヤナギ」の栽培を日本で初めて進めている。スウェーデン等ではすでに実用化されており、直接燃料やバイオエタノールなどに活用するため、森林総合研究所と共同研究・実用化を進めている。

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 23

 さらに、家庭用のてんぷら油の廃油利用について。現在、町では14分類のごみ分別を行なっているが、15番目の分類として、てんぷら油の廃油によるBDF事業に取り組んでいる。このBDFにより、音響設備の電気を賄う“バイオマスライブ”を開催するなどの普及活動を実施した。

 また、森林づくりから住宅づくりまでのシステム化を長年にわたり検討しており、現在、環境省のモデル事業により、エコハウスのモデル住宅を建築中である。今後エコハウスの普及促進を図り、家庭部門の環境負荷低減と地域産業の振興を図る。

 最後に森林吸収量活用の取り組みについて。京都議定書が採択後、森林によるCO₂吸収機能が評価された。下川町は、いち早くこれに取り組み、全国の山村地域自治体に呼びかけ会議を開催、また、北海道の39の自治体による研究会を立ち上げた。さらに取り組みを発展させるため、足寄町・滝上町・美幌町とともに4町協議会を立ち上げ、有識者を交

えカーボンオフセットの制度設計に取り組んだ。成果として音楽家の坂本龍一氏が代表を務めるモアトゥリーズ社との間に森林づくり協定を締結。また、環境省のJ−VERの森林管理プロジェクトの第1号登録として、クレジットを発行できるまでに至った。

 山村社会における産業振興である森林・林業の活性化の取り組みは、温暖化対策など企業や都市の経済活動による環境負荷の低減が可能で、新たなビジネス展開にも可能性がある。下川町は、森林・林業により地球温暖化対策と地域の活性化を連動させながら、低炭素な社会の構築に向けて積極的に取り組みを進めている。

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パネルディスカッション

平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 24 平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム

◦谷川 今回のシンポジウムのテーマは、持続可能な社会づくりのために必要な地域特性、循環資源の内容、性状に応じて最適な規模での循環を形成すること、すなわち地域循環圏の形成をするためにはどのようにしたらよいかを具体的に考えることです。既に、前段の国の施策の動向や道内の先進的な事例の情報共有については、古市教授の基調講演及び5名の方々の事例発表によって達成されたと思います。

 そこで、このパネルディスカッションでは、会場にお集まりの皆さんと一緒に、この北海道の地で具体的に行動できる北海道らしい地域循環圏のイメージを共有していただき、地域循環圏の具体化への第一歩を踏み出せたらと考えて

います。 それではまず、北海道らしい地域循環圏のイメージを考えるに当たって、白石室長補佐から、もう一度、全国の各地域における地域循環圏の形成についての進行状況とそのイメージについてご紹介いただけますでしょうか。◦白石 地域循環圏は、それぞれの循環資源の性質に応じて適切な規模で循環を行っていくものです。例えばバイオマスタウンのようなものにつきましては、バイオマスに注目した地域循環圏の一つの形なのかもしれませんが、バイオマスタウン構想としては全国で現在200以上策定されていると思います。 地域循環圏に関する計画とは別かもしれませんが、地域の循環基

本計画については、これは、ごみ処理計画も一体になっているようなものも入っていると思いますが、そういうものについては、市町村レベルだと国の循環基本計画の点検に記載している数くらいはあるということです。地域循環圏の計画としては、ブロックレベルで言いますと、例えば、今、中部ブロックと近畿ブロックと九州ブロックで我々が行なっている事業があります。 イメージとしては、それぞれの地域に応じた循環資源があると思いますので、それを適切な規模で循環させていくということだと思いますが、それぞれの地域によって地域循環圏の内容は異なるものになると考えています。◦谷川 ありがとうございました。 各地において地域循環圏のイメージづくりが始まっているということです。それぞれの地域にふさわしいものがつくられていくことになると思います。 指標として循環利用率など、全国版をつくられているということでしたが、これは各地方においてもつくられているのでしょうか。◦白石 各地方公共団体について

コーディネーター 北海道大学大学院工学研究科准教授・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・谷川昇氏パネリスト 稚内市生活福祉部衛生課課長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日向寺和裕氏 当別町企画部企画課課長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・五十嵐一夫氏 株式会社循環社会研究所主任研究員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小山博則氏 下川町地域振興課環境モデル都市推進室室長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・長岡哲郎氏 北海道大学大学院工学研究科助教・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・石井一英氏 北海道環境生活部環境局循環型社会推進課参事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・築地原康志氏 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室室長補佐・・・・白石知隆氏

谷川氏

白石氏

パネルディスカッション

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム

パネルディスカッション

平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 25

は、循環型社会形成推進基本法に基づき、国の循環基本計画に倣って策定しているところもあると思います。その中で、どこまで数値目標を決めているかというのは、それぞれの地域の判断になっています。◦谷川 築地原さん、今、北海道の中で、そういう指標づくりはされていらっしゃいますか。◦築地原 道も、現在、循環型社会推進基本計画を、一昨年に制定された道の循環条例に基づいて策定中です。その中では、国の循環計画にもあったように、取り組み指標や物質フローといった部分について目標値を設定しています。◦谷川 ありがとうございました。 長岡さんに幾つか質問が来ていますが、一つだけ選ばせていただきたいと思います。 ペレットを作成するエネルギー源として電気を使うと思うが、トータルのCO₂削減を考える場合、使用する電力などがどの程度勘案されているかという質問です。◦長岡 下川町ではペレットについては試験研究段階であり、まだペレット自体の製造は行っていません。

 現在、実用化しているものは、木屑焚きボイラーを使用しています。主に集成材工場から出る端材を粉砕したものを燃料としています。ペレットはこの木屑を乾燥させ、そして一定の大きさに固めるという作業が生じますのでエネルギー・コストがかかります。よって、ペレットの低コスト・低エネルギー使用による方法が無いか試験研究を行っている段階です。さらに、新たな固形燃料としてバイオコークスの実証試験も行っています。

 今、バイオコークスの製造を試験的に行なっていますが、今のところ、エネルギー的にはペレットをつくるよりもかなり低コストで、低エネルギーでできるのではないかという試算をしております。◦谷川 ありがとうございました。 その辺りの成果は、是非、どこかで発表していただきたいと思います。 ほかに幾つかいただいておりますけれども、時間の関係がございますので、本題のパネルディスカッションに移らせていただきたいと思います。 それでは、北海道らしい地域循環圏のイメージづくりに当たって、まず北海道庁の築地原参事から、今、北海道におけるごみの処理にかかわる地域計画がどのように進められているのかを紹介していただけますでしょうか。地域計画と地域循環圏形成は非常に密接な関係にあると思いますので。◦築地原 道の循環型社会推進課の築地原と申します。どうぞよろしくお願いします。 道のごみ処理の広域化計画につきましては、平成9年12月にごみ処理の広域化を進めるということ、これはダイオキシン類対策と排出抑制対策がベースになっていますが、それとあわせて、資源化の促進、ごみの減量化といったことも含めて広域化計画を策定しているところです。 策定当初は、全道24の広域ブロックと八つの離島や単独市のブロック、あわせて32ブロックという形で進めておりました。しかし、現在は、市町村合併の関係もありまして、広域ブロックが23ブロックとなっております。 計画策定の趣旨につきましては、ごみの減量化やリサイクルの推進によって焼却量の抑制を図るということが一つ目です。それから、高度な排ガス処理を有する全連続炉の整備を進めるということが二つ目です。廃棄物処理の効率的な運営と施設建設費の経済的側面、効率化と安定的な運営を図るということが三つ目です。

 排出抑制と資源化の推進、全連続炉による焼却処理、埋め立て量の抑制、市町村の役割分担の明確化の四つを基本方針として掲げています。 ブロックの区割りは、市町村の動向、意向、それから人口規模で10万人程度を目安としています。 広域化の状況ですが、焼却施設、資源化施設、最終処分場について、ブロック全体で広域整備ができているもの、予定をしているところ、検討中のところなど23のブロックそれぞれで進行状況は異なります。 焼却施設につきましては、おおむね道の広域化計画をベースにした形で広域が進んでいると考えております。資源化施設につきましては、広域化計画の中で余り明確化はしていませんが、それなりに広域化のブロックをベースにした取り組みが進められていると考えています。最終処分場については、単独整備という形の市町村が多くなっています。 広域化計画の課題としましては、平成9年に策定後、既に12年を経過してますが、当初はダイオキシン類発生抑制対策に主眼を置いた計画であったということもあり、資源化施設、最終処分場の広域的な整備というところの考え方が不明確な部分があります。 2点目としては、市町村合併等により広域化計画策定当初の市町村の意向が変わってきているという部分があります。 3点目としては、再資源化技術が多様化してきたということ、コンパクトな施設が開発されてきているということもあり、市町村のごみ処理方法の選択の幅が広がっ

長岡氏

築地原氏

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パネルディスカッション

平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 26 平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム

てきています。そういったことから、一概に広域化で大きな施設をつくるということではなく、いろいろな選択肢を持った考え方が市町村の中にも出てきておりますので、そういった部分を今後どうするかといったことがあります。 4点目といたしまして、このパネルディスカッションのテーマの一つになろうかと思いますが、広域化計画のブロックと地域循環圏の広がりの考え方をどういうふうに整理するのか、というところに課題があろうかと思っております。 今後の対応としましては、運営、建設コストの低減といった部分では広域化を図るということはメリットがありますので、そういう意味では引き続き広域的な整備というものを中心に考えていただくように進めていきたいと思っております。しかしながら、今、課題で申し上げたような点がありますので、必要に応じて計画の見直しを行って、さらにどういった広域化がいいのかといったところを考えていかなければならないと思っております。 最後に、地域循環圏の構築を目指す広域化のあり方とはどういうことなのかというところについても検討を進めていく必要があるものと考えております。◦谷川 ありがとうございました。 現実に先行する計画として広域化計画があります。リサイクル率はまだ20%を超えたばかりで、残りの80%の廃棄物等の適正処理処分を行いながら地域循環圏のあり方を考えていかなければいけない状況にあるということだと思います。 続きまして、その流れの中で、地域計画を改善する考え方があります。石井助教からその考え方を述べていただけますでしょうか。◦石井 北海道大学の石井と申します。 自己紹介も兼ねて、2枚スライドを用意しましたので、説明させていただきます。 先ほど説明のあった事例も地域循環圏ということで非常に好事例

と思いますが、もう一方、違った観点もある、議論を広げるためのチャレンジとして聞いてください。 築地原さんからお話があったように、今までの広域化というのは、焼却施設をいかに効率よく整備するかということが中心で、資源化は二の次といいますか、焼却処理に重点がありました。当然、広域処理ですから、可燃ごみをこういう形でやる、不燃ごみはどうするのだ、埋立地はどうするのだということで、みんなで相談しながら、できるだけ足並みがそろう形でやらざるを得なかったというのが今までの広域化です。 広域化する際には、施設整備のタイミングというものが各市町村で合っていないこと、施設整備に関する問題を共有できずに、一緒にやるぞといっても、なかなか足並みがそろわないという問題がそもそもあったと思います。 それから、焼却施設に関しては、基本的に自区内処理の原則がある中で、特に当時、ダイオキシンの発生ということで含水率の高い生ごみ等の受け入れが敬遠されるということもあり、生ごみのリサイクルに関しても随分工夫がされてきた経緯があります。 例えば、ということで聞いてほしいのですが、私が申し上げたいのは、一つは、余裕能力のある既設の処理施設をできるだけ活用する中で、広域化の区域でまとまってやらなければいけないという枠を外してもいいのではないかということ、それから、燃えるごみから考えるのではなくて、生ごみの分別から考えてはどうかということで、既存施設などをいろいろ使いながら生ごみと可燃ごみは別々に考え

る議論もありうるのではないか、ということを提案させていただきたいと思います。 当然、既設施設への委託ということでは、時間軸で考えると長期的にどこまで委託できるのか、などいろいろな議論はあろうかと思います。または、既存施設を使うことに関しては、新たな住民合意が必要であるとか、あちこちでやるのはいいが、地区全体の適正処理は本当に担保できるのかなど、いろいろな問題があろうかと思います。 そういった問題を認識しつつ、地域特性を考慮しながら、総合的に物ごとの最適な処理というものをそろそろ議論してはどうかと思うのです。私もこの提案には非現実的な要素が多分に含まれているということを百も承知しておりますが、そろそろ新たな役割分担みたいなものも考えてよろしいのではないかというのが私の今日の提案でございます。◦谷川 ありがとうございました。 やはり、ごみ処理については、最終的にはそれぞれの自治体が責任を持たなければいけません。また、既存のごみ処理システムを動かすことはなかなか難しい。そういう中で、新たに地域循環圏の考え方をどう導入していくべきかの問題提起であり、今までの考え方にとらわれないで大胆にやらないと、計画倒れになってしまうという御提案だと思います。 今、築地原さん、石井さんから地域循環圏に対する広域のごみ処理計画の考え方の違いを少し出していただきました。ほかのパネラーから、これまでの広域のごみ処理計画と、地域循環圏の考え方は、どう違うと思っているのか、あるいは同じだと思っているのか、それぞれコメントをいただければと思います。 それでは、長岡さんの方から順番にお願いします。◦長岡 下川町のごみ処理ですが、生ごみは、町の土壌改良施設により土壌改良材として活用する自己完結型。紙ごみなどの炭化ごみを

石井氏

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム

パネルディスカッション

平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 27

広域で炭化を行っております。資源物は、さらに広い範囲となっていると思います。一方、地域循環圏については、ごみなどを含め資源となる物を活用していくという考えから、エリアは一つでなく、多様にあると考えます。それを活用し資源化することにより、エネルギーとするなど産業を興すことが必要ではないかと感じております。◦小山 洞爺湖地域では、未利用資源、バイオマスを中心に検討しています。廃掃法は避けて通れないケースも多々ありますが、今、検討している中ではごみ処理という概念は余り持っておりません。処理責任というよりは、地域で使える資源をどう農家につなげていくか、それを使った野菜をどう消費者に伝えていくかということが関心事です。特にブロックという概念もありません。バイオマス等を取り入れた農産物が札幌で売れるのであれば札幌でもウェルカムですし、本州で洞爺湖の野菜が評判良くて売れれば、それも非常にハッピーな姿ということです。 生ごみ処理の場合、処理責任といった事は当然、関係してくる部分ではあるのですが、堆肥化後、どう農家につなげていくか、いわゆる民間の産業につなげていくかというところが一番頑張っているところです。その後の流通では、市場によって求められるところへ一番効率的に、一番高く買っていただけるところに流せるような仕組みが既に構築されているという認識を持ちます。ごみ処理と関連するところもありますし、もう少しビジネスライクに考えているようなニュアンスも強く持っております。

◦五十嵐 広域ごみ処理計画と地域循環圏の考え方は何となく違うのだろうということはわかるのですが、そもそも地域循環圏の考え方というのは、日本で出た考え方なのでしょうか、それとも別にこういう考え方の先進国があるのでしょうか。逆に教えていたただきたいと思います。

◦谷川 後ほど白石さんにお答えいただきたいと思います。◦五十嵐 先ほど石井先生の方から、生ごみと可燃ごみは別々にした方がいいのではないかという問題提起がありましたが、そういう考え方は非常にいいなと私は思いました。ドイツに行きますと、資源物の分別がすさまじいです。実際に見てきたのですが、田舎村の80歳を過ぎたおばあちゃんが、ズック靴をペンチとカッターを持って一生懸命分解しているのです。はとめの部分は金属だから別といって分解している。そういう考え方もできるだけ資源とごみを分けるということでは有用な考え方ではないのか。答えにはなっていないかもしれませんが、今、皆さんのお話を聞いていてそんなことを感じました。◦日向寺 稚内市、利尻・礼文は道内では、唯一、単独処理です。先進地の西天北、南宗谷も広域化が進んでいますし、利尻・礼文は離島ということで、稚内市が単独処理をせざるを得ないという状況があったと思います。その結果、稚内市もごみ処理では最悪の状態まで落ち込みました。同時に、利尻・礼文は海上輸送の問題がありますので、リサイクルがほとんど進まないということで、これもまた最悪の状況にありました。やはり離島とい

うこと、最北の地ということ、さらに観光地であるために観光ごみがかなり置いていかれるということ、そういった大きな問題も抱えております。 稚内市は、昨年ごみの有料化を始め、施設の計画もPFIで、民間事業者の提案力を使いながら、何とか回復を図っていこうということで進めてきました。今、バイオ施設を整備していますが、このバイオ施設が、今後の地域の循環圏を構築するところで大きなポイントになると思います。さらに、稚内市も両島も人口減が今後著しく進んでいくということで、施設の余裕化の問題も出てくると思います。同じ地域として、同じごみ処理のレベルを図りながら、持っている能力をお互いに補完し合うということで地域循環圏をつくっていければと思っております。

 そういう意味では、ごみ処理の広域化計画と地域循環圏というのは少し違う分野もあるのですが、一方では、今後、結びつくための一つの要素となり得るだろうと思っています。◦谷川 ありがとうございました。 それでは、白石さん、地域循環圏の考え方に、何か手本があるのかということですが。◦白石 私の認識だと、第2次循環計画の審議のなかで提唱されたと思っていますが、古市先生、いかがでしょうか。◦古市 平成20年の3月に第2次の循環基本計画が出されました。そのときに初めて地域循環圏という概念が出てきました。◦谷川 それは議論の中から自然に出てきたのでしょうか。どこか外国を手本にしたということはな小山氏

五十嵐氏

日向寺氏

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パネルディスカッション

平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 28 平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム

かったのでしょうか。◦古市 そのものの手本はないと思います。 最近は、ごみ処理では3Rの方が重視されています。資源の循環についても、物ごとにやった方がいいのではないかという概念が非常に強くなってきました。それが地域循環圏ということになってきたのです。そのときに、今度は地域という概念、スケールも入ってきた。ですから、基本は物と地域と両方なのです。◦谷川 先ほど、築地原さんがその違いについて問題提起をされましたが、何かつけ加えることがございましたらお願いします。◦築地原 環境省の方から、最初に循環型社会という概念の説明がありました。そういうリサイクルループをベースにしながら、物ごとにどういう広がりを持たせていくかということが地域循環圏なのかなと私は思っております。広域化計画というのは、処理を中心とした考え方で、地域循環圏というのは、今、古市先生からもお話がありましたけれども、物を回すということをベースに考えたときの広がりなのだろうと思います。 例えば、循環資源の要素としては、性状であったり、量であったり、価値ですね。処理という部分については、処理施設の整備状況や処理コストがどうなのか。需要というところは、どれだけの需要量があるか、どれだけで買ってもらえ

るかという話の中で、広がりが決まってくるのだろうと思います。 今回、こういう機会を与えていただいたので、私もいろいろ調べてみましたが、バイオマスタウンというものは個々のまちごとでの考え方です。例えば、生ごみであれば、それぞれのまちがそれぞれのまちで生ごみを使いますというのがバイオマスタウン構想です。近くにあっても、近くのまちも同じことを言うわけです。そういった生ごみは、洞爺湖地域の事例のように、そういったものを資源としてもっと規模を大きくして集める。ただ、性状によってどこまで広げるかといったことになると、考え方が複雑になってくると思います。これは、古市先生の教室で分析を進めていただけるとありがたいのですが、そういったことで広がりが変わってくると思います。 これまでの広域化計画というのは、廃棄物と処理という形の中で、運営の効率化、施設整備の規模をベースに広がってきた考え方だと思いますので、処理と循環資源、そこを廃棄物に置き換えれば、そこだけの関係だったと思うのです。地域循環圏となると、需要が一番重要なのかなと思っております。 先ほどの洞爺湖の事例でも、高く買ってくれるところに持っていきたい、まさに需要があるところですね。それがどこにあるかということで、その広がりもまた変わってきます。

 最初に申し上げたように、処理というベースだけで考えられないのが地域循環圏だろうと思います。あわせて、低炭素社会の構築ということで、運搬や処理によって出てくるCO₂の排出抑制といったことも要素として広がりを決めていくという考え方にこれからなってくるのではないかと思います。◦谷川 ありがとうございました。 もともと、地域循環圏は、地域の循環資源をどう集めてきて、加工・変換して、どう地域で使うかを考えなければいけません。これまでの広域計画だと、計画を実施する行政区が決まってしまったら、課題があるエリアがあっても関係なく、全てやっていくもので、ある意味では画一的になっていました。 それを、今度の地域循環圏では、ブロックを今までの行政区域と関係なく進めていくというのが一つ大きなことです。特に、需要と供給のことを考えれば、行政区域はある意味では関係ありませんので、その地域地域においてどう需要と供給を考え、あるいは、既存の施設をどう有効利用していくかが問題になってくると思います。 それから、今日、事例発表をしていただいた方々が頑張っていらっしゃる地域は、どこも決して人口規模が大きなところではありませんね。非常に広い行政区域の中で区域を考えないでやるとなると、非常に大変になると思います。 では、今後、北海道らしい地域循環圏をつくるとときに、何に注目しないといけないでしょうか。皆さんは、今、現実に地域循環圏をつくるのと同じようなことをやっていらっしゃいますので、その経験を踏まえて、北海道において地域循環圏をつくるためには何を重要視したらいいかのコメントをいただければと思います。◦日向寺 最北の地稚内、それから、最北の離島、利尻・礼文からすると、例えば稚内からプラごみを苫小牧、室蘭まで運ぶといっても、かなりの時間とCO₂を出しながら行かなければなりません。ですから、やはり、この最北の地で循環化

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 29

を図るというのがベストだろうと思います。それには、やはりバイオマスという部分があると思います。それから、私どもが取り組んでいる新エネルギーです。再生可能エネルギーをしっかり使っていくということです。それから、もともとの基盤である漁業、農業はもちろん、観光についても、新しい観光のスタイルの実現ということにおいて、稚内、利尻・礼文、周辺の宗谷管内の市町村とも連携し合うことができるだろうと思います。そういう意味では、地域循環圏は、それぞれの地域で北海道らしさが出るのではないかと思います。それには、北海道には調整役をしていただきたいと思いますし、国などの支援もお願いしたいと思います。◦五十嵐 私も、今、皆様のお話を聞いていて感じたのは、余り広域的にやってしまうと、かえって低炭素というキーワードがないがしろにされてしまうのではないか、市町村合併と同じで、北海道は広過ぎますので、それぞれの地域に合ったコンパクトな取り組みから始めた方が物事が進みやすいのではないかと思います。◦谷川 ありがとうございます。◦小山 結論から言いますと、先ほど石井先生の方からご説明があった提案が理解できてきました。賛成です。洞爺湖地域には、堆肥化施設、生ごみ施設など既存のリサイクル施設が四つもある一方、広域化している焼却施設の稼働率がどんどん低下している状況があります。また、今後もリサイクル分野は、どんどん進んでいくような状態にあります。このような状況をうまく整合させようとすると、石井先生の御提案にあるようなごみ処理施設(焼却施設)の扱い方、ハンドリングを柔軟に考え、適正な規模、適正なエリアというものに対応させていくことが必要になってきます。これは、循環圏を構築する上ではかなり重要な機能になってくるのではないかと思います。◦長岡 北海道全体のことはわか

りませんが、私ども農山村は言ってみれば、北海道の縮図であると思います。私どもが地域で自立できれば、北海道の地域は自立できるというふうに日ごろから考えております。 そういう中で、地域資源を活用しながら、地域で食料やエネルギーを自給していける地域を作り出し、さらに外に売り出していけるような、地産外消の考え方も一つの大切な考えだと思っております。◦石井 先ほど、バイオガス化施設の話がありましたが、例えば既存の下水処理施設を使うとか、稚内市も生ごみのバイオガス化施設ですが、下水の汚泥が入ったり、水産系の産廃が幾つか入るということで、北海道はいろいろな廃棄物があちこちで少しずつ出るので、それらを混合してできるようなものも一つのキーワードになるのかなという気がします。 そういう形で、ウエットなものが少しずつ抜けていくと、当然、ドライなものが家庭ごみに残ります。そういうものは、先ほど古市先生のお話にあったCHP、木材系のものと一緒に燃料化するといった新しいやり方を北海道で創造できるのではないかと思います。ぜひとも皆さんこれからも一緒に考えていきましょう。◦築地原 北海道の産業廃棄物の排出量の半分以上は家畜ふん尿です。それから、一般廃棄物のうち

生ごみが30%を占めます。木質バイオマスで言えば、全国の森林面積の22%程度を北海道が持っており、木質バイオマス資源は豊富にあります。物としては、こういったところがターゲットではないかと我々も考えております。使い方としては、中・北空知でもありましたし、稚内市さんでもこれからやろうとしているエネルギーの利用という部分です。これは、消費という部分では売電ということがありますが、直接経済という形ではなくて、エネルギーを自己利用なり、地域での利用というところに結びつけられるという利点があるのではないかということです。 それから、農業主体の北海道ですから、堆肥化は随分行なわれていますが、本当にいい堆肥ができているかどうか。大分良くなってきていると思いますが、その辺にもまだ課題があると思っています。こういった部分を視野に置きながら、北海道らしい需要を作り出せるような技術開発をすると、環境産業の振興という部分にもつながっていくのではないかと思います。◦谷川 それでは、白石さん、東京から見て北海道らしさはどのように考えられますか。◦白石 北海道らしいというのは、北海道のみなさまの方がお詳しいのでお任せしたいと思います。ここから先はあくまでも私見ですが、廃棄物を資源だと見るということ

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 30 平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム

がそもそもの循環型社会といいますか、循環基本法の考え方の基本的なところにあると思っています。要は、廃棄物や副産物、そういうものを資源と見た段階で、地域に本当にある資源は何なのかということを考え、それを地域循環圏に生かすということではないでしょうか。 そういう意味で、ソフトのような形でまちづくりの計画に近いような地域循環圏のイメージ、例えばそこから循環ビジネスが発展するようなイメージもあると思いますが、少しごみ処理と違う意味も含めて、地域の資源は何かということで北海道らしいものを考えていただければいいかと思います。◦谷川 ありがとうございました。 やはり、北海道の場合ですと、森林、あるいは家畜ふん尿や生ごみも含めて、いろいろなバイオマスが豊富にあります。そういったものをどう対象にするかが共通すると感じました。 二つ目は、北海道は広いということがありますが、地域循環圏は広過ぎてはいけなくて、コンパクトでなければいけないということです。例えば、洞爺湖ですと市町村がある程度集中していますが、下川や道北の稚内、道東の方へ行きますと非常に広い範囲の中でどのように地域循環圏を構築していくかということを考えなければいけないと思います。 三つ目は、既存の施設をどううまく生かしていくかということです。地域循環圏を考えるのに、新たなものをつくるのではなくて、既存のシステムをどう有効に利用していくのかということだと思います。 当別町のふれあいバスも、今あるシステムを無駄なくどう使用したらいいのかという意味では共通する話だと思います。稚内市が提案されたものも、お互いにプラスになる方向で既存の循環リサイクル施設をどう利用していくかということだと思うのです。 ある範囲を超えて行なうと、厄介なことも自治体の中で起こるは

ずですが、それを補うだけのプラス面があると進むのではないかと思いました。そういう意味で、既存施設をうまく使っていくということが非常に大きいと思います。 特に、今の法制度上、産業廃棄物と一般廃棄物を別々に循環利用や適正処理をしなければいけません。許可をとればいいのですが、バイオマスの場合ですと、発生源が違うだけで性状は一般廃棄物と産業廃棄物では同じだと思いますので、それらをどう同時に利用していくのか。おそらく、そういう制度的なことも含めて、北海道における地域循環圏を考えていかなければいけないのではないでしょうか。 ここで会場の方から、今までの議論も踏まえて、北海道らしい地域循環圏をつくるに当たっての課題とか要望がございましたら、一、二件、お受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。◦フロア 先ほどの地域循環圏の説明の中で、非常にピンときたのが、いわゆる資源になるものを対象にした計画だということです。そのときに、資源になるとは言いながら、結局、生ごみ処理にしても、委託費を払うわけですから、廃掃法上はやはりごみなのですね。物を動かすときの制約が非常に強いわけです。特に、民間の方がこの分野に入られるとなると、いくら国の方が地域循環圏という新たな発想を持ち出しても、現実に動くときにぱたっととまってしまうことがあります。もしかすると、これは廃掃法を徐々に変えていこうというような、戦略のようなものまであるのかなと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。◦白石 私は廃掃法を担当していませんのでお答えするのは難しいですが、先ほどの循環型社会に関する法体系の図にもありますように、循環基本法というのは廃掃法の上にもある基本的な法律ですから、廃掃法の担当課とも連携しながらやっています。また廃掃法など法制度ついては、別途、中央環境審議会検討がなされているところです。

◦谷川 たぶん、これから地域循環圏のモデル事業等をやっていくと、技術的、社会的、制度的な課題も出てきます。その中で、そういうものをどんどん上げていっていただいて進めていくという趣旨だと思います。今、ここにお集まりの皆さんも含めて、意見をどんどん言っていただければと思います。 もう1件、ぜひ意見をおっしゃりたいという方がいらっしゃいましたらお願いいたします。◦フロア 先ほど、どなたかが発表の中で若干触れられていたかもしれませんが、先住民の方との協働ということをお話しされた方がいらしたかと思います。それこそ、北海道らしいと言っていいかどうかわかりませんが、いわゆる先住民族の人たちとの協働を何とかできないかということを日々考えています。エコツーリズムなどでアイヌ民族の方が加わってくださっていることがあるのですが、ツーリズムだけではなく、廃棄物処理に関しても、協同できることがあると思うのですが、そういうことは視野に入れていらっしゃいますでしょうか。◦谷川 今、この場は、北海道らしい地域循環圏というものはどういうふうにしていったらいいかを考える場なので、今のご発言も含めて考えていったら良いというコメントとしていただきたいと思います。◦フロア 北海道らしさとして入れていただきたい要素だと思います。◦谷川 ありがとうございました。 それでは、最後にパネラーの方から、今後、北海道らしい地域循環圏を構築するための課題というものがございましたらコメントをいただければと思いますが、いかがでしょうか。◦石井 先ほど古市先生からもお話がありましたが、来年度から再来年度にかけて北海道も地域循環圏で手を挙げるということであれば、やはり、道庁と北海道地方環境事務所がタッグを組む必要があると思います。今までは、広域化、広

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パネルディスカッション

平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 31

域化と言いながら、何となく地元に少し任せていたようなところもあるような気がするのですが、今後は、道や国がもう少しイニシアチブをとりながらいろいろやっていくということも必要ではないかと思っております。◦日向寺 私も、今後、利尻・礼文を含め、また宗谷管内ということになれば、稚内市が主導的に役割を果たしていくといっても、また北海道にもいろいろ調整役をお願いしたいし、制度などで環境省にもいろいろとご支援をいただければと思っています。いずれにしても、地域のパワーがなければ進めることができませんので、そういう部分ではひとつよろしくお願いしたいと思います。◦谷川 ありがとうございました。 白石さん、このパネルディスカッションを通して、北海道における地域循環圏について、ほかの地域の状況と比べてどういうふうな感想を持たれましたでしょうか。◦白石 やはり、北海道にはバイオマスがたくさんあると思いますので、そういう資源についての取り組みも進んでいるという印象を持ちましたし、何よりも、携わっておられる方々のパワーがあるなという感じがしましたので、地域に応じた地域循環圏を構築していただければと思います。

◦谷川 そういう感想を持っていただけると、大変ありがたいです。時間が参りました。今回、地域循環圏づくりは、国の循環型社会、低炭素社会、あるいは自然共生社会の実現には不可欠だということで、現在は、ある意味ではイメージが出された段階だと思います。それを本当に具体化して実現させるには、北海道は非常にいい場であると思います。それは、我々道民にとっても必要不可欠なことだと思います。 これから我々は、北海道の中のバイオマスに更に注目をして、バイオマスの発生特性、すなわち、それぞれの地域にどういうバイオマスが発生しているのか、それをどの程度の規模で利用していったらいいのかを考えなければなりません。その際には、循環資源ばかりではなくて、適正処理をしなければいけない廃棄物と関連させながら。バイオマスを含めた廃棄物等の有効利用と適正処理は、当然、自治体が主体となってやらざるを得ない部分がありますが、その地域の事業者、あるいは道民、NPO、NGO、あるいは研究者といった方々の連携で成り立っていくものだと思います。 地域循環圏という構想を打ち上げたのは環境省です。環境省は、その流れが定着するまでは、ぜひ

ともイニシアチブを発揮させながら、同時に、特に北海道の中ですと、どうしても道庁とオーバーラップしてしまうところがありますので、そこはお互いに忌憚のない意見を言いつつ、リードしていただいて、ぜひ道内における地域循環圏が早く構築されて、ほかの地域よりも進めばと思っております。 それでは、ここに参加された皆さんも北海道における地域循環圏の具体化にぜひとも協力していただきたいということも申し上げて、パネルディスカッションを閉じさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

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平成21年度 地域からの循環型社会づくりシンポジウム 32

閉会挨拶環境省 北海道地方環境事務所 環境対策課長 竹安 一

 本日は、長時間にわたり、平成21年度地域からの循環型社会づくりシンポジウムを御清聴いただきまして、誠にありがとうございました。また、基調講演をいただいた古市先生、事例発表をしていただいた先生方、パネルディスカッションで発表していただいた先生方、お忙しい中、時間をいただき発表していただきましたことに、厚くお礼申し上げます。

 このシンポジウムは、皆様ご承知のように、第2回目であります。 第1回目は、昨年3月に開いております。そのときは、今日もお話に出ましたが、地域循環圏という聞きなれない言葉について理解していただくということを主な目的にしておりました。

 今回は、北海道内で地域循環圏を形成するにはどうしたらいいかということを私どもの方で検討してみたいということで、皆様方の御意見をお伺いしたいと思い開催いたしました。

 今日のテーマとしては、“一般廃棄物”がキーワードになるかと思いました。昨年度の第1回目では、農業系の産業廃棄物、家畜ふん尿や稲わらがキーワードであったかと思います。いずれにしましても、北海道ではバイオマスということが大きなキーワードになるのではないかと思っております。

 私ども環境省北海道地方環境事務所では、来年度以降、事業という形かどうかは別にいたしまして、地域循環圏形成ということにつきましては、環境対策課の重点事項として取り組んでいくこととしております。

 今日の皆様の御意見を参考にいたしまして、来年度の業務に生かしていきたいと思っております。本日は、どうもありがとうございました。

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平成21年度地域からの循環型社会づくりシンポジウム 講演記録

平成22年 3月

発  行 : �環境省 北海道地方環境事務所 環境対策課�

〒060-0808�札幌市北区北8条西2丁目��札幌第1合同庁舎

TEL�:�011-299-1952FAX�:�011-736-1234

委託機関 : �株式会社ノーザンクロス�

〒060-0001�札幌市中央区北1条西5丁目3番地�北一条ビル5階

TEL�:�011-232-3661FAX�:�011-232-4918

本事業は、環境省北海道地方環境事務所の委託により実施したものです[禁無断転載]