22
法政大学 デザイン工学部システムデザイン学科 安積伸ゼミナール ヒューマニティデザイン研究室 2019 年度 卒業制作 / 修了制作 Degree Works Hosei University Department of Engineering and Design Shin Azumi / Humanity Design Laboratory

2019 Degree Works - azumilab.ws.hosei.ac.jp · アームチェアによる新たなテンセグリティ バックミンスター・フラーによって提唱されたテンセグリティ構造。不

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法政大学 デザイン工学部システムデザイン学科安積伸ゼミナール ヒューマニティデザイン研究室2019 年度 卒業制作 / 修了制作

Degree WorksHosei University Department of Engineering and DesignShin Azumi / Humanity Design Laboratory

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Introduction

01

THE SESSION

法政大学デザイン工学部システムデザイン学科(法政 SD 学科)ヒューマニティデザイン研究室(安積ゼミ)では、人間行動・生活文化の研究を軸に、デザインの可能性について考える教育と作品制作を行っています。

法政 SD 学科は、基礎教育においてクリエーション・テクノロジー・マネジメントの三分野を横断的に学ぶことを特徴としています。その上でクリエーションに携わる道を選んだ学生に求めるのは、デザインが社会と関わるための視野を広く持つこと、心に響く新鮮な提案を行うこと、アイデアを具現化し現実の感覚に訴えること、そしてテクノロジーやマネジメントといった分野から得た知のリソースを積極的にクリエイティブワークに生かす、という事です。

「視点の独自性を尊重せよ」という言葉を受けて学生から投げ返されてくるアイデアは、変則的で粗削りながらも切実な心象を含んでおり、指導の現場は教員といえども常にクリエイティブな度量を試される、まるでフリージャズのセッションの様な緊張と充実を感じるものでした。その結果、社会の通念に NO をつきつけ代替案を模索するもの、自らの心や欲求の深い井戸を見つめるもの、新たな表現を求めてテクノロジーをねじ伏せようと格闘するもの、人間行動や文化の不思議な細道に分け入り調査を重ねるもの等、様々な切り口をもつ多様な研究制作へと発展しました。

デザインという枠を超え、クリエーション・テクノロジー・マネジメントといった領域の垣根さえ意識せずに泳ぎ回るクリエーターたち。大学生 10名、大学院生 4 名のセッション、その記録をご覧ください。

2020 年 2 月 28 日

法政大学 デザイン工学部 システムデザイン学科ヒューマニティデザイン研究室 教授 安積 伸

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ContentsIntroduction 01

Contents 03

Undergraduate Degree Works 04

Postgraduate Degree Works 26

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Undergraduate Degree Works

04

Pop-Up Matrix 阿見 俊輔 Shunsuke Ami 06

ISON 井上 敦史 Atsufumi Inoue 08

Psyche 牛田  凌 Ryo Ushida 10

Fidgeccato 小野 遼也 Ryoya Ono 12

Planter 関谷 直任 Naoto Sekiya 14

sakura 武井 花恵 Hanae Takei 16

am 平岡 美樹 Miki Hiraoka 18

Re:Lux 松尾 優志 Yushi Matsuo 20

61° 望月 悠生 Yuki Mochizuki 22

Minimal Cafe 栁田 拓子 Hiroko Yanada 24

05

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Pop-Up Matrix | Shunsuke Ami

06 07

Pop-Up Matrix 阿見 俊輔 Shunsuke Ami

新たな描画表現の模索

透過性のある描画装置

描画表現は壁画から始まり、絵画、白黒写真、カラー写真、動画へと進化を遂げ、我々はそれらをテレビやスマホなどのモニターを通して鑑賞するようになった。しかし現在、モニターはどの種類も機能の変化はほとんどなく、4K や 8K など解像度競争へと向かいつつある。しかし、近・現代の美術が写実以外の方法で新たな表現価値を見出したように、解像度以外の価値を表現として模索することには意味があると考え、デジタル制御のアナログ描写表現の模索を行う。

本作品は、 ポップアップ立体の開閉をドットマトリクスの 0/1 に用い、サイネージとしての情報伝達の役割と空間を仕切るパーテーションとしての役割を兼ね備えたものとなっている。アナログな立体をデジタルで制御する表現を用い、新たな体験や価値を生み出す装置となることを想定している。また、ディスプレイ型メディアアート作品やデジタルサイネージと比較し透光性が高いことや、場所や距離で見え方が異なることも特徴となっている。

ポップアップ立体を用いたサイネージシステム

|  ユポ紙,PET,テグス,輪ゴム,Arduino UNO,サーボモータ  他

|  H910 × W910 × D78 [mm]

Materials

Dimensions

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ISON | Atsufumi Inoue

08 09

ISON 井上 敦史 Atsufumi Inoue

少数部材による最軽量の構造システム

アームチェアによる新たなテンセグリティ

バックミンスター・フラーによって提唱されたテンセグリティ構造。不連続な圧縮材と連続的な引張材による構造体であり、強度・軽量性の面において優れているという特徴がある。そのため現在ではジオデジック・ドームなどの建築物に多く活用されているが、身の回りのプロダクトにはほとんど見られないというのが現状である。そこで、新たなテンセグリティ構造の活用方法として家具を提案することでその可能性を広げる。

テンセグリティの強度・軽量性を活かしたアームチェアの制作を行った。まず、軽量なアームチェアの先例調査としてマルセル・ブロイヤーの名作「ワシリーチェア」の構造・寸法の研究を行い、快適なアームチェアを構成する要件の抽出を行った。その後テンセグリティ構造を用いてアームチェアを必要最少の要素で構成し、かつ椅子としての快適性をもった形状を追求した。圧縮材と引張材が互いに依存することで自立する形状により、快適性を生み出すことに成功している。

|  ステンレスパイプ,ステンレスワイヤー,ターンバックル  他

|  H721 × W1223 × D831 [mm]

テンセグリティ構造を活用したアームチェア

Materials

Dimensions

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Psyche | Ryo Ushida

10 11

Psyche 牛田 凌 Ryo Ushida

心臓を媒介としたコミュニケーション

心拍の可能性を示すアクセサリー

心臓の鼓動は人間の様々な要素と関わりを持ち、感情とも関わりを持っている。しかし現状では1分間あたりの「心拍数」という機械的な数値で利用されることが多い。実際には心拍は揺らぎを持ち、瞬間的に変化することも多く、心拍数では刻一刻と変化していく感情を表現するには不十分であると考える。本研究では心拍を計測・反映して「生の感情」を表現するツールを制作し、心臓を媒介とした新たなコミュニケーションや自己表現の可能性を提案する。

胸元の蝶が心拍の周期と連動して羽ばたく胸元用アクセサリー。羽ばたく速度の変化だけでなく、心拍が遅い時は小さく、速い時は大きく羽ばたき、心拍の変化を周囲に伝える。心拍により「生の感情」を表に出す本装置は新たな感情の表現や感情を偽らない生き方の可能性を示し、一方で心拍という情報の重要性やプライバシーを脅かす危険性をも示唆したと考える。本研究が新たな心拍の利用方法の誕生や心拍に関する技術の利用方法を見つめ直すきっかけとなることを期待する。

心拍と連動して羽ばたく蝶型アクセサリー

|  アクリル,PET,PLA

|  アクセサリー部:H105 × W180 × D35 本体:H60 × W80 × D26 [mm]

Materials

Dimensions

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Fidgeccato | Ryoya Ono

12 13

Fidgeccato 小野 遼也 Ryoya Ono

無意識の行動とフィジェット・トイ

フィジェット・トイと打楽器の融合

ハンドスピナーに代表される、「ただ回転させるだけ」といった単純な機構を持ち、手持ち無沙汰を解消し小さな快感を与える玩具を「フィジェット・トイ」と呼ぶ。人が手持ち無沙汰解消のために無意識に何かを触るという行為は古くから認知されているものの、それを目的とした玩具の歴史はまだ浅く、発展、進化の余地が大きく残されている。本研究では「無意識の行動」という視点から、フィジェット・トイの要素を分析し、更なる発展の可能性を考える。

フィジェット・トイと、無意識の行動が持つ「ついやりたくなる要素」を打楽器の分野へと転用した作品の制作を行う。「弾く」「擦る」「折る」「回す」といった誰もが日常の中で身に覚えのある感覚を、音を出すための操作方法として利用する。片手で簡単に扱うことが出来、音と体感による「操作する快感」を提供する事を達成目標とする。また複数で鳴らし合うことより誰に対しても簡単に「合奏」の楽しさ、非言語コミュニケーションの楽しさを提供する。

つい鳴らしたくなる楽器

|  ABS,バネ,金属製テープ

|  H170 × W26 × D26,H130 × W34 × D20,   H92 × W42 × D30,H65 × W35 × D22 [mm]

Materials

Dimensions

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Planter | Naoto Sekiya

14 15

関谷 直任 Naoto Sekiya

再生可能エネルギーと送電システム

電気をちょぴっと自家栽培

再生可能エネルギーは様々な要因から大規模な導入が難しい。近年では住居単位での導入も促進されているが、設置の困難さやその地域の送電網の容量が足りず、導入を断念する場合も多い。このような現状から、発電所と送電網に依存したシステムから脱却し、エネルギーを自給自足するシステムこそ未来のあるべき姿だと仮定する。その未来を起点に現在へ振り返ったとき、送電網から独立させることで、導入しやすいうえに発電・消費の実感ができる小型発電機が必要と考えた。

住居のベランダに手軽に設置し、再生可能エネルギーで発電しバッテリーに蓄電することのできる小型風力発電機。サボニウス型を基本に、機能的でいて風見としても美しいブレードは、低速の風でもしなやか且つ力強く回転する。バッテリーを本体から取り出すことで、スマートフォンの充電や照明器具の電源といった、生活の身近な場面で再生可能エネルギーを消費することが可能となる。使い終えたバッテリーは、本体に戻すことで再び「電気を育てる」ことができる。

家庭向け小型発電・蓄電装置

|  UEW,SUS,PLA,アクリル,ネオジウム磁石,電子部品  他

|  H435 × W250 × D250 [mm]

Materials

Dimensions

Planter

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sakura | Hanae Takei

16 17

武井 花恵 Hanae Takei

灰の降るまち、桜島

「黒さ」を魅力とする素材を植木鉢へ

鹿児島県の桜島は世界でも珍しく、火山の近くで人々が生活している。桜島からは年間で少なくとも 200 万トンもの火山灰が噴出され、火山灰により人々の生活が制限されることもしばしば起きている。またこれらの処分費用は市内だけでも年間約 4 億 6500 万円に上っている。本研究では、この厄介ものとして扱われていた桜島の火山灰を資源として扱い、新たな素材・プロダクトへと転用することで新しい価値を見出すことを目的とする。

桜島火山灰は「黒さ」が魅力であり、工業用の砂と比較しても機能的に劣らないことから、本研究では黒さを生かしたコンクリートの原料として採用する。また、鹿児島県で盛んな花卉産業と関連させた植木鉢の素材として選定し、ブランド「sakura」を提案する。鉢はコンクリートの重量により耐風性を持ち、側面には通気性を高めるスリットを施す。黒さによる重厚感は花卉をしっかりと保持する印象を与え、植物の色彩を映えさせる。

桜島の火山灰を原料とする植木鉢ブランドの提案

|  桜島火山灰,白色ポルトランドセメント  他

|  H170 × W120 × D120,H85 × W100 × D100,   H110 × W120 × D120,H120 × W120 × D120 [mm]

Materials

Dimensions

sakura

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am | Miki Hiraoka

18 19

平岡 美樹 Miki Hiraoka

片麻痺を患った高齢者の生きがい創出

片手使用可能かつ汎用性の高い編み器の開発

「自分は世の中から必要とされていない。」と高齢者が感じるのは悲しい事だ。私には片麻痺を患う祖母がおり、そんな祖母に生きがいを感じて欲しいという思いからこの研究が始まった。片麻痺患者は全国 27 万人に登り、同じ悩みを抱える高齢者は少なくない。体を大きく動かす必要のない編み物であれば趣味として取り入れ易いと考え、片手で使用可能な編み器の開発に焦点を当てた。さらに、制作物を譲渡する事でコミュニティーや雇用の創出に繋がる事も期待する。

従来の編み道具が長い棒状であるのに対し、新たに制作する編み器ではリリアンを参考に複数本の歯を垂直に並べ、机に固定する事で片手での使用を可能にした。また従来の編み道具のように、様々な編み方を可能とし表現の幅を広げることで、創造力を刺激し長く使用してもらえる編み器を目指した。この機能を実現するためバインダーの機構を参考に制作を行った。編み途中に歯を閉じ表と裏を切り替える事で複数の模様や様々な編み方を実現する事が可能となった。

片麻痺患者が片手で使用可能な編み器

|  真鍮,エゾマツ,帆布,シリコンゴム

|  H28 × W285 × D32 [mm]

Materials

Dimensions

am

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Re:Lux | Yushi Matsuo

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松尾 優志 Yushi Matsuo

求められる多様な光と機能の切り替え

リラックス・集中の 2 シーンに対応する光

今日の生活では、目的やシーンによって光の種類を使い分けることを求められるが、光の効果や機能に合わせて複数の器具を設置するには空間に限りがある。この研究では、1 つの器物で複数の照明効果の使い分けが可能な照明器具を制作する。また現在多くの照明器具の ON/OFF にはスイッチやボタンが用いられているが、これもまだ改善余地のある領域だと考える。日常のさりげない身振りや動作に注目し、直感的操作で効果を切り替えるインターフェースを提案する。

リビングやダイニングにおける、リラックスと集中という対極的な2つの利用シーンに着目し、テーブル据え置き型照明器具を提案する。LED光源を使用し、コンパクトさを生かした機能と造形を目指す。フォルムはルームフレグランスから着想を得つつ、2つの照明効果の切り替えには「ペン立てからペンを取り出す」という身近な所作を取り入れる。リラックス時は柔らかい拡散光で空間を演出し、集中作業をする際はタスク照明として利用することが可能となる。

直感的な動作で照明効果を切り替える照明器具

|  ポリカーボネート,アクリル,テープ LED

|  H600 × W100 × D100 [mm]

Materials

Dimensions

Re:Lux

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61° | Yuki Mochizuki

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望月 悠生 Yuki Mochizuki

働き方の多様化に合わせたマウスを

外出先でも使いやすいペン型マウス

現代では、ノートパソコンの軽量化、タブレット端末、スマートフォンの普及によって、カフェなどのオフィス以外で働くノマドワーカーが増加している。それに伴いコンパクトマウスが市場に現れたが、手や手首への負担に対する配慮を欠いたものも多く、腱鞘炎になりやすいという短所があげられている。本研究では、既存のコンパクトマウスに不具合を感じるユーザーにも快適な使用感を提供するペン型コンパクトマウスを制作する。

ペン型マウスの問題点として「手を放すたびに本体が倒れる」「外出先で倒れる音に気を使う」等があげられる。そこで本研究では「手を放しても自立するペン型マウス」の制作を行う。ペン型マウスを自立させるために支えを設けるが、支えは保持角度を固定するため「誰にとっても快適な使用感を提供する角度」の調査を行う。その際「ペン持ち」に加え「中指を含めた 3 本持ち」も想定する。感性評価実験の結果、最適な角度を「61度」と定義し、最終物の制作を行う。

手首や親指への負荷を軽減したペン型マウス

|  ABS,LED,光学センサ,AAAA 電池  他

|  H84 × W29 × D52 [mm]

Materials

Dimensions

61°

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Minimal Cafe | Hiroko Yanada

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栁田 拓子 Hiroko Yanada

喫茶店営業に必要となる許可取得の現状

最小限を備える移動式仮設店舗

今日の日本ではコーヒーブームにより、趣味や副業として喫茶店営業を行いたいと考える人が増加している。しかし、飲食の営業を行うにあたり必要となる保健所の許可取得方法は煩雑であり、許可を取得しないまま喫茶店営業を行っている個人・団体は多い。上記の現状を問題と捉え、喫茶店営業初心者にとって適切かつ開業しやすい業態、最も簡単に保健所の承諾を得て活動する方法を模索する必要があると考えた。

趣味や副業として喫茶店営業を行う為の最小店舗設備。出店する場所や環境によっては、簡易的な設備で営業を行うことができる「臨時営業許可」の取得が可能となる設備を備えている。必要となる器具を全て収納し移動可能であり、展開することで店舗として必要十分な大きさとなる。実際に簡易的な設備で営業する個人・団体にフィールドワーク調査を行い、必要となる器具の選定や基準となる寸法の検討を行った。

副業として喫茶店営業を行う為の最小店舗設備

|  シナ合板,ヒンジ,ネオジウム磁石  他

|  展開前:H890 × W605 × D330 展開後:H870 × W1105 × D330 [mm]

Materials

Dimensions

Minimal Cafe

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Postgraduate Degree Works AFTER BOTTLE 阿部 俊介 Shunsuke Abe 28

RACK RACK 井上 拓也 Takuya Inoue 30

Chaplin Stool & Table 上田 雄翔 Yuto Ueda 32

PORTABLE PLAY 守屋 輝一 Kiichi Moriya 34

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AFTER BOTTLE | Shunsuke Abe

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阿部 俊介 Shunsuke Abe

エネルギーや資源を巡る地球規模の環境問題

沸騰水への浸漬で変形し、付加価値を高める

化石燃料の枯渇やゴミ問題など、資源やエネルギーを巡る問題は、地球規模の環境問題として捉えられ、対策方法について世界中で議論がなされている。その中で、2015 年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」のように、世界各国の取り組みとして、循環型社会を目指す機運が高まっている。本研究は、廃棄 PET ボトルをアップサイクルし製品としての価値を高めることで、サステイナブルなデザインの新たな方法論を研究することを目的とした。

飲料の容器としての役割を果たした PET ボトルに、沸騰水を用いて造形的な付加価値を与えることで、ランプシェードとしての新たな役割を与えた作品群を制作する。本展示に使用されているランプシェードは全て、PET ボトルに切れ込みを入れ、沸騰水に浸す加工を施している。特別な機材を必要としないため、誰でも簡単に PET ボトルを加工することが可能である。ユーザーに対して、「身近なサステイナブルデザイン」の認知を広める効果を期待する。

廃棄 PET ボトルのアップサイクリング

|  耐圧用 PET ボトル,アクリルパイプ,アルミブロック,PLA,テープ LED

|  H450 × W350 × D350 [mm]

Materials

Dimensions

AFTER BOTTLE

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RACK RACK | Takuya Inoue

30 31

井上 拓也 Takuya Inoue

都心部における室内干しの主流化と弊害

送風機能と除湿機能による衣服の乾燥

今日、都心部で暮らすアパート・マンションの生活者にとって、洗濯物を干す場所は屋外から屋内へと変化しつつある。一方室内干しには、衣服から不快な臭いが発生しがちなことや、室内に湿気が滞ってしまうなどの問題を感じている者も多い。浴室乾燥機は存在するが設置が難しく、誰もが容易に設置可能な室内干しに特化したプロダクトは少ない。以上の理由から、洗濯された衣服を効率的に乾燥し、生活空間を快適にするためのプロダクトのあり方を提案する。

洗濯ラックに搭載された送風機能・除湿機能によって衣服の乾燥を促す。円形状のラックは限られたスペースでも十分な量の衣服を干すことを可能にする。また洗濯ラックと乾燥機能を一体化させることで、都心部の狭小住居にも設置可能なコンパクトな設計にする。さらに洗濯ラックの上下部分に設置された 2 つの湿度センサが洗濯物の水分と室内の湿度変化を感知することで、自動的にスイッチの ON/OFF を行ってくれる。

乾燥機能を搭載した室内干し専用洗濯ラック

|  アルミパイプ,MDF,ABS,  他

|  H1890 × W600 × D600 [mm]

Materials

Dimensions

RACK RACK

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Chaplin Stool & Table | Yuto Ueda

32 33

上田 雄翔 Yuto Ueda

管弦楽部における練習時間圧迫の要因

提案する音楽室家具の 2 つの機能的特徴

中学校・高等学校の音楽室において一般的なメモ台付椅子は、バイオリンやチェロなどの擦弦楽器を演奏する際に弓を持つ右手と干渉する。従って管弦楽部などで教室を使用する際は演奏用に別途パイプ椅子等を用意しなければならず、使用の度に設置時間を要する。また譜面台も収納効率の高いものは折り畳式しかなく、組み立てに時間を要し、華奢で破損しやすい欠点があげられる。管弦楽や吹奏楽部の生徒は演奏環境構築のために練習時間が圧迫されているのが現状である。

楽器演奏に配慮した、音楽室用机と椅子セットの開発を行う。第 1 の機能として、机の天板が譜面台へと変化する機構の開発を行う。大がかりな家具移動を伴わず演奏・合奏環境を短時間で構築する事を可能にする。第 2 の機能として、椅子と机の同時収納を可能にするネスティング機構を開発し、非使用時に省スペースとなる設計を行う。これにより、放課後の部活動や文化祭における教室の開放など、音楽教室が学校行事の様々な用途に対応する事を可能にする。

楽器の演奏と移動の容易な音楽室用家具

Materials

Dimensions

Chaplin Stool &Table

|  スチールパイプ,シナランバーコア合板,鉄板  他

|  Stool:W506 × D362 × H486   Table:W606 × D449 × H811( 譜面台時 H1101) [mm]

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PORTABLE PLAY | Kiichi Moriya

34

Materials

Dimensions

※ 協力:一般社団法人 TOKYO PLAY35

守屋 輝一 Kiichi Moriya

未来の遊び場は、「路 ( みち )」に有り。

多様な遊びを誘発するペーパーハニカム遊具

子供の遊び環境が著しく減少しつつある問題の解決策として「みちあそび」という取り組みがある。これは、道路を遊戯場として開放し「一時的に遊び場を形成する」民間主導の取り組みの名称である。欧州発で日本にも拡がりを見せつつある本活動は、遊び場を確保することに加え、地域活性や社会課題の啓蒙という一面ももつ。本製品はこの「みちあそび」が将来、社会の普遍的な制度となることを期待し、実際の現場で親子に試用してもらいながら、研究開発を行った。

デジタル全盛の現代、子供が自らの身体を使って遊びを創造する機会が排除される傾向にある。本作品は、ペーパーハニカム構造の利用により優れた展開性を持ち、多様な遊びを誘発する遊具を目指したものである。この構造は、様々な場所で開催される「みちあそび」での使用に適した高い可搬性収納性を実現している。本作は調達の容易な素材と道具で製作できるよう設計されており、製作過程を親子や子供同士で共有し、交流の機会を創出することを目的としている。

多様な遊びを誘発する携帯型遊具

|  クラフト紙,ボール紙,マジックテープ

|  A3 サイズ H420 × W594 × D594 [mm]

PORTABLE PLAY

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IndexUndergraduate Students

S h u n s u k e A m i

阿 見 俊 輔

Pop-Up Matrix

p . 6 - 7

H a n a e T a k e i

武 井 花 恵

sakura

p . 1 6 - 1 7

M i k i H i r a o k a

平 岡 美 樹

am

p . 1 8 - 1 9

Yuki Mochizuki

望 月 悠 生

61°

p . 2 2 - 2 3

Y u s h i M a t s u o

松 尾 優 志

Re:Lux

p . 2 0 - 2 1

Atsufumi Inoue

井 上 敦 史

ISON

p . 8 - 9

R y o y a O n o

小 野 遼 也

Fidgeccato

p . 1 2 - 1 3

R y o U s h i d a

牛 田   凌

Psyche

p . 1 0 - 1 1

36

Postgraduate Students

N a o t o S e k i y a

関 谷 直 任

Planter

p . 1 4 - 1 5

H i r o k o Ya n a d a

栁 田 拓 子

Minimal Cafe

p . 2 4 - 2 5

Y u t o U e d a

上 田 雄 翔

Chaplin Stool & Table

p . 3 2 - 3 3

K i i c h i M o r i y a

守 屋 輝 一

PORTABLE PLAY

p . 3 4 - 3 5

S h u n s u k e A b e

阿 部 俊 介

AFTER BOTTLE

p . 2 8 - 2 9

Ta k u y a I n o u e

井 上 拓 也

RACK RACK

p . 3 0 - 3 1

37

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THE SESSION法政大学 デザイン工学部 システムデザイン学科安積伸ゼミナール ヒューマニティデザイン研究室2019 年度 卒業制作 / 修了制作 作品集

発行 2020 年 2 月 28 日

企画 法政大学 デザイン工学部 システムデザイン学科

安積伸ゼミナール | ヒューマニティデザイン研究室

http://azumilab.ws.hosei.ac.jp/

〒 162-0843 東京都新宿区市谷田町 2-33

編集 関谷 直任

本書の無断転写・複製・転載を禁じます。

© Hosei University 2020

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法政大学 デザイン工学部システムデザイン学科安積伸ゼミナール ヒューマニティデザイン研究室2019 年度 卒業制作 / 修了制作

Degree WorksHosei University Department of Engineering and DesignShin Azumi / Humanity Design Laboratory