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Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved. 2014・15年度 内外経済見通し ~ 「トリプルメリット」が押し上げる日本経済 ~ 2014.11.18

2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

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Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved.

2014・15年度 内外経済見通し

~ 「トリプルメリット」が押し上げる日本経済 ~

2014.11.18

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見通しのポイント

1

○ 世界経済は先進国中心に緩やかな拡大が続くものの、需要不足の状況は続く

○ 世界は下振れリスクを抱えるが、2年前の世界的景気後退期と比べて米国経済の拡大という

点で大きく異なる

○ リスク要因は、中国や欧州経済の下振れ、地政学問題、バブル懸念など

○ 日本経済は消費税率の再引上げ延期によって2015年度の見通しは上方修正。①追加緩和、

②財政拡大、③原油価格下落での「トリプルメリット」が成長率を1%以上押上げ

○ みずほ総研は足元の日本の景気下振れ回避のため、3つの経済対策(低所得者対策、トラベ

ルポイント、現役世代サポート)を提言

○ 物価上昇率は日銀の目標には達せず、2015年に更なる追加緩和を予想

○ 金融市場では、株高・円安が進む一方、長期金利の変動リスクを内包すると展望。増税延期

に際しては景気弾力条項を撤廃するなど、財政規律へのコミットメントが不可欠

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市場へのインプリケーション

2

○ 世界の中央銀行の金融緩和継続で資産価格の上昇傾向とその変動を繰り返すなど、金融市

場のボラティリティが高まる傾向に

○ 世界経済のグローバル化のなか、地政学的な分断状況が市場の変動要因を加速

○ 米国の利上げ観測や新興国経済の不安定さのなか、今後も新興国通貨安懸念は継続

○ 需要不足を背景とした資源価格の下落は、インフレ率の引き下げ圧力となる一方、資源国の

減速と先進国の回復メリットとして寄与

○ 世界的な需要不足、先行き期待低下から長期金利上昇は抑制。欧州は依然、金利低下圧力

○ 日本経済は足元減速でも、「トリプルメリット」が加わることで景気は予想以上の拡大。その結

果、株価・不動産は上昇傾向に。一方、円安の進行が続く

○ 長期金利は日銀の国債購入によって変動が抑え込まれるが、回復に伴う「良い金利上昇」と

財政規律の不安に伴う「悪い金利上昇」のマグマを内包

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《 構 成 》

3

Ⅰ.全体概要 P 4

Ⅱ.海外経済 P 28

(1)米国経済 P 29

(2)ユーロ圏経済 P 37

(3)アジア経済 P 43

Ⅲ.日本経済 P 51

Ⅳ.金融市場 P 58

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Ⅰ.全体概要

4

~世界経済は緩やかに拡大、日本経済も回復へ~

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全体概要 ~ 下振れリスクが意識されるも、世界・日本とも景気回復シナリオは維持

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○ 2014年の世界経済成長率(みずほ総合研究所予測対象の国・地域加重平均ベース)は、

+3.2%と概ね2013年並みだが、先進国を中心に回復ペースが強まり、2015年の世界経済成

長率は+3.5%に高まる。米国は四半期ベースで年率+2%台後半から+3%台の成長、日

本も消費増税の影響が薄れ回復へ。新興国の成長率は、中国やロシアなどを中心に低下

○ メインシナリオは世界経済の緩やかな回復だが、中国を中心とした新興国のほか、ユーロ圏

でも景気下振れリスクが残存。地政学的リスクの燻りも含め、世界経済減速の可能性に留意

○ 日本の消費増税の延期を前提に2015年度を展望すれば、①追加緩和、②財政拡大、③原油

価格下落、のトリプルメリットで成長率は従来予想以上の上昇に。ただし、財政規律への不安

が与える潜在的な長期金利の変動懸念には留意

○ 原油価格下落と円安は日本の経常収支の黒字押し上げ要因に。日本の物価への影響は原

油価格下落による物価押し下げが円安による物価押し上げの影響を上回り、日銀の物価目

標達成は困難

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世界経済は緩やかに拡大

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【 世界経済見通し総括表 】

(注)予測対象地域計はIMFによる2012年GDPシェア(PPP)により計算。

(資料)IMF、各国統計より、みずほ総合研究所作成

○ 2015年にかけて先進国を中心に緩やかに景気が回復するとの見方を維持・ 2014年は、米国を小幅上方修正する一方、日本やアジアは下方修正・ 2015年は、日本を上方修正するものの、ユーロ圏やアジアの下方修正により、予測対象地域全体でも小幅下方修正

(前年比、%) (前年比、%) (%ポイント)

暦年 2012年 2013年 2014年 2015年 2014年 2015年 2014年 2015年

(実績) (実績) (予測) (予測)

予測対象地域計 3.2 3.1 3.2 3.5 3.2 3.6 - ▲ 0.1

日米ユーロ圏 1.1 1.2 1.5 2.1 1.5 2.1 - -

米国 2.3 2.2 2.2 2.9 2.1 2.9 0.1 -

ユーロ圏 ▲ 0.7 ▲ 0.5 0.8 1.0 0.8 1.2 - ▲ 0.2

日本 1.5 1.5 0.4 2.0 1.2 1.4 ▲ 0.8 0.6

アジア 6.1 6.1 6.0 5.9 6.1 6.1 ▲ 0.1 ▲ 0.2

中国 7.7 7.7 7.4 7.1 7.5 7.3 ▲ 0.1 ▲ 0.2

NIEs 2.0 2.8 3.3 3.1 3.4 3.4 ▲ 0.1 ▲ 0.3

ASEAN5 6.2 5.2 4.6 5.2 4.6 5.1 - 0.1

インド 4.8 4.7 5.0 5.1 5.0 5.1 - -

オーストラリア 3.6 2.4 3.1 2.6 3.1 2.6 - -

ブラジル 1.0 2.5 0.2 1.0 0.2 1.0 - -

ロシア 3.4 1.3 0.3 0.5 0.1 1.0 0.2 ▲ 0.5

日本(年度) 0.7 2.2 ▲ 0.4 2.5 0.5 1.5 ▲ 0.9 1.0

原油価格(WTI,$/bbl) 94 98 95 79 98 94 ▲ 3 ▲ 15

(修正幅)(9月予測)

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○ 日本は再度の消費増税が2017年4月に延期されると想定。経済の好循環が再び回り始め、景気は回復へ・ 在庫削減や天候不順の影響もあって、2014年7~9月期は2四半期連続のマイナス成長に。再度の消費増税は2017年4月に延期されると想定・ 2014年度は下期にかけて回復軌道に復する見通し。もっとも、上期のマイナスが響き、通年でも▲0.4%のマイナス成長・ 2015年度は、政府の経済対策や日銀の追加緩和による後押しもあり、景気は拡大へ。実質成長率は+2.5%と予測――― 2015年度の名目成長率は+3.3%と、1991年度(+4.9%)以来の伸び

日本:再度の消費増税を先送り。「トリプルメリット」の下、景気は今後回復へ

7

(注)網掛けは予測値。

(資料)内閣府「四半期別GDP速報」より、みずほ総合研究所作成

【 日本経済見通し総括表 】

2012 2013 2014 2015 2016

年度 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3

実質GDP 前期比、% 0.7 2.2 ▲ 0.4 2.5 ▲ 0.4 1.6 ▲ 1.9 ▲ 0.4 1.0 1.1 0.6 0.6 0.5 0.3

前期比年率、% -- -- -- -- ▲ 1.6 6.7 ▲ 7.3 ▲ 1.6 4.0 4.3 2.4 2.2 2.2 1.2

内需 前期比、% 1.4 2.7 ▲ 0.9 2.4 0.2 1.8 ▲ 2.8 ▲ 0.5 1.0 1.0 0.6 0.5 0.5 0.3

民需 前期比、% 1.4 2.2 ▲ 1.3 3.0 0.1 2.5 ▲ 3.7 ▲ 0.9 1.4 1.5 0.7 0.6 0.5 0.2

個人消費 前期比、% 1.5 2.5 ▲ 2.4 2.4 ▲ 0.0 2.2 ▲ 5.0 0.4 1.0 1.0 0.5 0.4 0.4 0.3

住宅投資 前期比、% 5.4 9.5 ▲ 11.3 3.3 2.2 2.3 ▲ 10.0 ▲ 6.7 ▲ 0.9 2.4 2.2 1.5 0.6 0.0

設備投資 前期比、% 0.7 2.6 2.7 4.5 0.8 7.5 ▲ 4.8 ▲ 0.2 2.8 2.6 0.5 0.5 0.6 0.5

在庫投資 前期比寄与度、%Pt ▲ 0.1 ▲ 0.5 0.5 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.5 1.2 ▲ 0.6 0.1 0.1 0.1 0.1 0.0 ▲ 0.1

公需 前期比、% 1.4 4.2 0.3 0.6 0.5 ▲ 0.6 0.1 0.7 ▲ 0.3 ▲ 0.3 0.2 0.3 0.5 0.4

政府消費 前期比、% 1.5 1.8 0.5 1.7 0.2 ▲ 0.2 ▲ 0.0 0.3 0.4 0.4 0.4 0.4 0.5 0.5

公共投資 前期比、% 1.3 15.0 ▲ 0.5 ▲ 3.9 1.7 ▲ 2.0 0.3 2.2 ▲ 3.3 ▲ 3.2 ▲ 0.9 0.2 0.2 0.1

外需 前期比寄与度、%Pt ▲ 0.8 ▲ 0.5 0.5 0.1 ▲ 0.6 ▲ 0.2 1.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

輸出 前期比、% ▲ 1.3 4.8 6.0 5.4 0.2 6.4 ▲ 0.5 1.3 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.5

輸入 前期比、% 3.6 7.0 2.4 4.2 3.7 6.2 ▲ 5.4 0.8 1.0 1.0 1.0 1.1 1.1 1.2

名目GDP 前期比、% ▲ 0.2 1.9 1.9 3.3 0.1 1.5 ▲ 0.1 ▲ 0.8 2.2 0.9 0.7 0.4 1.3 0.0

GDPデフレーター 前年比、% ▲ 0.9 ▲ 0.4 2.3 0.7 ▲ 0.4 ▲ 0.1 2.0 2.1 2.6 2.6 0.9 1.1 0.6 0.4

内需デフレーター 前年比、% ▲ 0.8 0.3 2.2 0.5 0.5 0.7 2.4 2.4 2.1 1.8 0.3 0.4 0.6 0.7

201520142013

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日本:インフレ率は2015年半ばまで1%割れ。基調的な物価上昇率は改善

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(注)1.網掛けは予測値。実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。2.経常利益は法人企業統計の全規模・全産業ベース(金融・保険、電気業を除く)。3.消費者物価は生鮮食品を除く総合。2015年10月の消費再増税は先送りされる想定。4.完全失業率、新設住宅着工戸数、経常収支の四半期は季節調整値。5.金融関連の指標について、無担保コール翌日物金利は期末値、新発10年国債利回りは月末値の期中平均値、その他は期中平均値。

(資料)内閣府「四半期別GDP速報」、経済産業省「鉱工業指数」、財務省「法人企業統計季報」、総務省「労働力調査」、「消費者物価指数」、国土交通省「建築着工統計調査報告」、日本銀行「国際収支」、「企業物価指数」、「金融経済統計月報」、「外国為替相場」、日本相互証券㈱「主要レート推移」、日本経済新聞、Bloomberg、より、みずほ総合研究所作成

【 日本経済見通し総括表(主要経済指標) 】

2012 2013 2014 2015 2016

年度 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3

鉱工業生産 前期比、% ▲ 2.9 3.2 ▲ 0.9 2.9 1.8 2.9 ▲ 3.8 ▲ 1.9 1.2 1.1 0.7 0.8 0.9 0.7

経常利益 前年比、% 8.1 20.9 6.1 8.9 25.1 17.2 2.8 2.7 10.1 7.8 12.4 12.8 6.3 5.7

名目雇用者報酬 前年比、% 0.1 1.0 1.6 1.7 1.6 0.5 1.6 2.6 1.3 1.1 1.3 1.7 2.1 1.5

完全失業率 % 4.3 3.9 3.6 3.5 3.9 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6 3.5 3.5 3.5 3.5

新設住宅着工戸数 年率換算、万戸 89.3 98.7 88.1 92.2 104.1 93.4 88.7 85.5 88.2 90.2 91.6 92.7 92.5 92.2

経常収支 年率換算、兆円 4.2 0.8 4.3 6.9 0.0 ▲ 5.5 2.8 2.6 8.3 4.6 7.3 7.6 9.6 4.2

国内企業物価 前年比、% ▲ 1.1 1.9 3.4 0.8 2.5 2.0 4.3 4.0 2.7 2.5 0.1 0.6 1.0 1.5

消費者物価 前年比、% ▲ 0.2 0.8 3.0 1.1 1.1 1.3 3.3 3.2 2.9 2.8 0.9 1.0 1.2 1.2

消費者物価(除く消費税) 前年比、% ▲ 0.2 0.8 1.1 1.1 1.1 1.3 1.4 1.2 0.9 0.8 0.9 1.0 1.2 1.2

無担保コール翌日物金利 % 0.06 0.04 0~0.10 0~0.10 0.07 0.04 0.06 0.03 0~0.10 0~0.10 0~0.10 0~0.10 0~0.10 0~0.10

新発10年国債利回り % 0.78 0.69 0.56 0.75 0.64 0.63 0.60 0.53 0.53 0.60 0.65 0.80 0.75 0.80

日経平均株価 円 9,650 14,424 16,300 18,900 14,972 14,964 14,650 15,562 16,900 18,200 18,400 18,600 19,100 19,400

対ドル為替相場 円/ドル 83.0 100.0 109.0 119.0 101.0 103.0 102.0 104.0 113.0 117.0 118.0 119.0 121.0 121.0

WTI原油先物最期近物 ドル/バレル 92.0 99.0 90.0 80.0 98.0 99.0 103.0 97.0 80.0 80.0 79.0 79.0 80.0 81.0

20152013 2014

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○ リーマン・ショック以降、先進国は需要不足に陥り、需給ギャップはマイナスに

・ 先進国の設備投資額(対GDP比)はリーマン・ショックを境に下方屈折しており、未だ戻りは限定的

・ 需要不足を解消するため、G20はブリスベン・サミット(11/15・16)で、GDPを2%以上引き上げるための行動計画を発表

――― ただし、財政支出には慎重な国も多く、結果的に金融政策に負担が掛る構図は変わらない見込み

【 先進国の需給ギャップ試算 】 【 設備投資額(対GDP比) 】

(注) 先進国は、米国、ユーロ圏、日本、英国、韓国、カナダ、オーストラリア、台湾の各国実質GDPを2010年基準で指数化し、PPPベースGDPの2010年シェアで合成。2014年以降の日米欧はみずほ総研の予測、その他はIMFの予測を使用。潜在GDPはHPフィルターで算出。

(資料) IMF、各国統計より、みずほ総合研究所作成

①世界経済の下振れリスク : 先進国は設備投資中心の需要不足状態が継続

9

(資料)IMFより、みずほ総合研究所作成

16

18

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24

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30

32

34

1995 2000 05 10

世界 先進国 新興国

(%)

(年)

先進国はリーマンショック以降、下方屈折▲ 4

▲ 3

▲ 2

▲ 1

0

1

2

3

4

5

80

85

90

95

100

105

110

115

2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

需給ギャップ(右目盛)

実質GDP(左目盛)

潜在GDP(左目盛)

(2010年=100)

(年)

(%)試算値

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○ IMFが世界経済見通しを下方修正したことなどを受けて、世界的な景気下振れリスクが意識される状況

・ 2014年7~9月期の成長率は米国に底堅さが見える一方、中国が減速、ユーロ圏は戻り鈍く、日本はマイナスに

・ 景気先行指標は、米国が引き続き上昇する一方、消費増税の影響を受けた日本やユーロ圏は低下

――― 中国は下げ止まりつつあるも、戻りは鈍い

足元、市場は世界経済の減速リスクを警戒

10

【 OECD景気先行指数 】

(資料) OECD

98

99

100

101

102

2010 11 12 13 14

米国 ユーロ圏

日本 中国

(年)

(長期平均=100)(前期比年率、%)

4~6月 7~9月 10~12月 1~3月 4~6月 7~9月

米国 1.8 4.5 3.5 ▲ 2.1 4.6 3.5

ユーロ圏 1.3 0.6 1.0 1.2 0.3 0.6

日本 3.2 2.4 ▲ 1.6 6.7 ▲ 7.3 ▲ 1.6

韓国 4.1 4.4 3.6 3.8 2.0 3.5

台湾 3.8 0.1 7.6 2.5 3.9 2.0

香港 2.1 3.1 3.7 1.1 ▲ 0.6 6.9

シンガポール 10.2 0.7 6.9 1.8 0.1 1.2

タイ 1.1 3.7 2.7 ▲ 8.6 4.3 4.4

マレーシア 6.8 7.1 7.6 3.5 7.8 3.6

フィリピン 5.4 5.0 6.4 5.9 7.7 N.A.

オーストラリア 3.0 2.8 3.4 4.3 2.0 N.A.

ブラジル 8.5 ▲ 2.3 2.0 ▲ 0.6 ▲ 2.3 N.A.

(前年比、%)

中国 7.5 7.8 7.7 7.4 7.5 7.3

インドネシア 5.8 5.6 5.7 5.2 5.1 5.0

ベトナム 5.0 5.5 6.0 5.1 5.4 6.2

インド 4.7 5.2 4.6 4.6 5.7 N.A.

ロシア 1.0 1.3 2.0 0.9 0.8 0.7

2014年2013年

【 主要国の成長率 】

(資料) Datastream、CEIC、各国統計

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○ 軟調色を強める国際商品市況

・ 新興国の成長鈍化を受けて、2011年半ばから商品市況に下押し圧力

・ 地政学的リスクによって押し上げられてきた原油相場も、世界経済の減速懸念を背景に足元で急落

――― 足元では投機マネーの流出もみられ、原油相場は2015年も軟調な展開が見込まれる

世界経済の先行き懸念で原油価格も下押し

11

【 原油・鉄鉱石価格と中国の鉱工業生産 】 【 原油価格の予測 】

(資料) Bloomberg(注) 予測はみずほ総合研究所(資料) IEA、Bloombergより、みずほ総合研究所作成

6

8

10

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18

20

60

80

100

120

140

160

180

200

10 11 12 13 14 15

原油価格(ブレント、 左目盛)銅価格(LME3カ月先物、 左目盛)鉄鉱石価格(中国の輸入価格、 左目盛)中国の鉱工業生産 (右目盛)

(2010年初=100)

(年)

(前年比、%)

2010▲ 3

▲ 2

▲ 1

0

1

2

3

4

5

6

(40)

(20)

0

20

40

60

80

100

120

140

1995 2000 05 10 15

在庫変動(需要比、右目盛)

WTI(年平均、左目盛)

ブレント(年平均、左目盛)

(ドル/バレル)予測

(%)

(年)

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中国経済は足元の投資の弱さを受けて下方修正。今後も減速が続く見通し

12

○ 2014年7~9月期の実質GDP成長率は前年比+7.3%と4~6月期から減速。投資の減速が成長を下押し。成長率見通しを2014年は+7.4%、2015年は+7.1%(それぞれ▲0.1%Pt、▲0.2%Pt下方修正)

・ 生産能力過剰問題や不動産市場の調整が投資を下押し

・ 政府は「新常態(ニューノーマル)」へ移行中と強調。成長率は合理的な範囲内で、大幅なてこ入れは不要との認識

○ 生産能力過剰問題は未解消で、資本ストックも成長率見合いで高水準。2015年も投資の下押し圧力となる見込み

【 中国の主要指標 】

(注)1. 社会消費品小売総額は小売物価指数、固定資産投資は 固定資産価格指数で実質化(みずほ総合研究所推計値)。輸出は名目ドルベース。

2. 2013年1~3月期の輸出は虚偽報告による水増しの可能性大。(資料) 中国国家統計局、海関総署

(注)1995年を基点としてベンチマークイヤー法により推計。(資料) 中国国家統計局「第3回工業センサス(1995年実施)」、中国国家統計局

【 中国製造業の設備資本ストック循環図 】

0

5

10

15

20

25

30

35

40

28 29 30 31 32 33 34 35

(前年の資本ストックに対する設備投資額の比率、%)

期待成長率ライン

〔20%〕

〔15%〕

〔10%〕

2013

2005

2009

2010

〔7%〕

(設備投資額の対前年比伸び、%)

▲ 2

0

2

4

6

8

10

▲ 5

0

5

10

15

20

25

2012 13 14

実質GDP(右目盛)

社会消費品小売総額(左目盛)

固定資産投資(左目盛)

輸出(左目盛)

(前年比、%)

(年)

(前年比、%)

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中国の住宅投資の底打ちは2015年後半に。その後も力強い回復は期待できず

13

【 住宅販売・住宅価格・住宅投資 】

○ 住宅投資の底打ちも2015年後半まで待つ必要あり。その後も自律的回復力を欠く展開に

・ 住宅販売面積の前年比伸びは、年末にかけて底打ち見込み

・ 販売価格や住宅開発投資の前年比伸びは、来年後半の底打ちを見込む

――― 販売価格や住宅開発投資の動向は、販売面積の変化に3四半期ほど遅行する傾向がある

・ ただ、底打ち後も、生産年齢人口の減少や都市化のペース鈍化により、これまでの勢いでの回復は期待薄

(注)新築商品住宅の指標。販売価格は70都市平均値、販売面積は全国の値(後方3カ月移動平均)。

(資料) 中国国家統計局

(注)1.住宅在庫水準は、当月末の在庫面積÷直近3カ月の月平均取引面積。2.1級都市は、北京、上海、広州、深圳の4都市。2級都市は、杭州、南京、青島、蘇州、寧波、厦門の6都市。

(資料)WIND

【 住宅在庫 】

0

5

10

15

20

25

2010 11 12 13 14

(カ月分)

(年)

10都市

1級都市

2級都市

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

25

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

50

2012 13 14 (年)

(前年比、%) (前年比、%)

住宅販売面積(左目盛)

住宅販売価格(右目盛)

住宅開発投資(右目盛)

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▲ 0.6

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

2012 13 14

その他

ドイツ

ユーロ圏

(前期比、%)

(年)▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8

2010 11 12 13 14 15 16

うち実質実効ユーロ相場

うち海外需要

実質輸出(実績)

実質輸出の推計値と見通し

(前期比、%)

(年)

ユーロ圏経済は、設備投資の減速を受けて失速。国別にはドイツの影響大

14

○ ユーロ圏の7~9月期実質GDP成長率は、前期比+0.2%(4~6月期同+0.1%)と緩慢な成長が続く

・ ウクライナ問題などの不確実性増大による企業活動の抑制により、設備投資が減速。けん引役とみられてきたドイツ経済が変調

○ ドイツ経済は、不確実性増大の一方で、輸出拡大やそれに伴う設備投資増が影響を緩和

・ ドイツの輸出は、主要輸出先である米英経済の回復や、ユーロ安効果により底堅く推移すると予想

【 ユーロ圏の実質GDP成長率 】 【 ドイツの輸出推計 】

(資料)Eurostatより、みずほ総合研究所作成(注)推計期間は2010年Q1~2014年Q2 R2=0.63、()内はt値。

実質輸出(前期比)=0.42*主要国向け輸出(前期比)-0.33*REER(前期比)(4.17) (-2.3)

(資料)みずほ総合研究所

ユーロ安が押し上げ

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日本経済は天候不順もあって個人消費を中心に足元下振れ

15

○ 天候不順の影響もあり、7~9月期の日本経済は個人消費を中心に停滞

・ 消費総合指数をみると、悪天候の影響で7・8月の回復が足踏み。低所得者層の消費停滞も下押しに働いた模様

――― なお、家計調査のサンプルバイアスも消費総合指数やGDP統計の下振れ要因となった可能性(P54を参照)

○ 鉱工業生産は自動車を中心に生産調整。2014年1月から8月までの減産幅は2012年の景気後退時並みに。もっとも、9月の生産は高めの伸びとなるなど、底入れの兆し

【 消費総合指数の推移(前回増税時との比較) 】 【 鉱工業生産の推移 】

(資料) 内閣府「消費総合指数」より、みずほ総合研究所作成 (資料) 経済産業省「鉱工業指数」より、みずほ総合研究所作成

94

96

98

100

102

104

106

108

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

1996/2013 1997/2014

(1996年・2013年=100)

今回増税時(2013年~2014年)

前回増税時(1996年~1997年)

夏場の天候不順が

消費回復の重石に

(月)

(年) 75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

2007 08 09 10 11 12 13 14

(2010年=100)

▲8.0%

(12年1月⇒12年11月)

▲8.4%

(14年1月⇒14年8月)

【参考】▲34.7%

(08年2月⇒09年2月)

(年)

直近実績(9月) 98.0

(14年1月比▲5.7%)

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消費再増税を延期しても、2015年度の財政再建目標は達成可能な範囲に

○ 7~9月期は2四半期連続のマイナス成長。消費再増税は2017年4月に延期されると想定

○ 消費再増税の先送りだけなら、税収の上振れにより2015年度の基礎的財政収支赤字の半減目標(GDP比で2010年度

対比半減)は達成可能。ただし、経済対策や法人減税も実行すれば、半減目標の達成は不確実に

――― 2020年の黒字化目標は達成がより困難に。2017年4月の再増税を着実に実施することが重要

16

【 実質GDPの水準 】【 基礎的財政収支の見通し(国・地方ベース) 】

(増税先送りと税収上振れの影響試算)

(資料) 内閣府「国民経済計算」などより、みずほ総合研究所作成

(注)内閣府の試算(経済再生ケース)をもとに試算。(資料)内閣府「国民経済計算」「中長期の経済財政に関する試算」(平成26年7

月25日経済財政諮問会議提出資料)より、みずほ総合研究所作成

480

490

500

510

520

530

540

2006 07 08 09 10 11 12 13 14

(兆円)

(年)

2四半期連続の

マイナス成長

▲ 7

▲ 6

▲ 5

▲ 4

▲ 3

▲ 2

▲ 1

0

2010 12 14 16 18 20

増税先送り+税収上振れ+17年度再増税

増税先送りのみ

(年度)

(対GDP比、%)

15年度:▲3.2%(目標:▲3.3%)

15年度:▲3.4%

20年度:▲1.6%(目標:黒字化)

9~10兆円の収支改善が必要

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雇用・所得環境の改善が続く中、トリプルメリットが実質GDPを累計1.1%Pt押し上げ

17

○ 今後は、天候不順の影響が薄れる中で、雇用・所得環境の改善が支えとなり個人消費は持ち直しが続く見通し。日銀の

追加金融緩和や政府の経済対策も景気回復を後押し

・ 労働需給のひっ迫を背景とした雇用・所得環境の改善が、消費回復の支えとなる見通し

――― 2014年冬季ボーナスは高めの伸び(前年比+2.2%)となる見込み。2015年春闘では、賃上げ率が一段と高まる

と予測(2014年2.19%⇒2015年2.50%)

・ 追加緩和や経済対策、原油安は、実質GDPを累計1.1%Pt押し上げると試算

【 春季賃上げ率(主要企業)の見通し 】 【 追加緩和・経済対策・原油安の実質GDP押し上げ効果(試算) 】

(注)1.追加金融緩和による個人消費への効果については株高による資産効果のみを含めており、マインド改善を通じた効果は除いている。また、経済対策の効果については2014年度補正予算に盛り込まれると想定されるもののみを反映(詳細はP21参照)。

2.円安や株高の影響は、追加金融緩和等に伴い為替や株価の見通しが前回見通し(9月)から変化した影響を計算している(為替は約5%の円安、株価は約10%の上昇)。

3.原油価格下落の影響は、前回見通し(9月)からの原油価格の想定の変化による影響をみずほ総研マクロモデルにより試算している(約20%の原油安)。

(資料) 各種資料より、みずほ総合研究所作成

(注)2015年の値はみずほ総合研究所による予測値。(資料)厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況について」

2.19

2.50

1.5

1.7

1.9

2.1

2.3

2.5

2.7

2.9

3.1

1995 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15

(%)

(年)

実質GDPの押し上げ効果(累計、%Pt)

追加金融緩和(QQE2) 0.3

円安を通じた輸出数量の押し上げ 0.2

株高を通じた個人消費の押し上げ(資産効果) 0.1

経済対策 0.3

個人消費支援策(低所得者層対策など) 0.2

公共事業(土砂対策など) 0.1

原油価格の下落 0.51.1合計

Page 19: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

○ 2014年7~9月期実質GDPは良好な伸び。減速した個人消費と住宅投資も今後持ち直し、拡大へ

・ 7~9月期実質GDPは前期比年率+3.5%と良好な伸び

――― 個人消費の減速は寒波後の急速な回復の一服によるもの。今後は雇用・所得環境の着実な改善が下支え

――― 住宅投資の伸びは緩慢だが、住宅市場では空室率が低下し、需給逼迫が顕著。10~12月には持ち直しへ

米国経済は拡大基調が続く見込みで、2015年成長率は前年比+2.9%に

18

(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

【 賃貸・持ち家空室率 】

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

6

7

8

9

10

11

2000 02 04 06 08 10 12 14

持ち家 空室率

(右目盛)

賃貸 空室率

(左目盛)

賃貸、持ち家とも空室率が低下。

特に賃貸空室率は1995年以来の低水準で、需給ひっ迫を示す。

(%) (%)

(年)

1.62.5

0.12.7

1.8

4.5 3.5

▲2.1

4.63.5

▲4

▲2

0

2

4

6

8

4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9

2012 2013 2014

個人消費 住宅投資 設備投資

在庫調整 純輸出 政府支出

実質GDP

(前期比年率、%)

【 実質GDP成長率 】

(注)図中の数字は実質GDP成長率の値を示す。(資料)米国商務省

政府支出

純輸出

寄与度が大きく拡大

(期)(年)

Page 20: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

○ 世界的な金融緩和継続での市場の不安定化に留意

・ スキュー指数(※)が高めの水準で推移するなど、一部のリスク警告指標は相場調整リスクの高まりを示唆

・ 中国や欧州経済の一段の下振れやバブル懸念が意識される金融・資産市場の不安定化、地政学問題の深刻化など、世界経済を下振れさせる要因は多く、一定の警戒が必要

※「テール・リスク」や「ブラック・スワン・イベント」と言われるような極端な事象(突発的に発生する大幅な相場下落)が発生するリスクを示す指標

【 2015年にかけての主なリスク 】

世界経済の下振れリスクには警戒が必要

19

(資料) みずほ総合研究所作成

100

105

110

115

120

125

130

135

140

145

150

90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14

(年)

(注) スキュー指数はS&P500指数のオプション市場の歪みが大きいほど上昇する。(資料) CBOEより、みずほ総合研究所作成

【 スキュー指数 】

世界経済に関する主なリスク

中国の不動産市場を起点とした景気急減速

ユーロ圏経済の下振れとデフレ化・債務問題

金余りの長期化によるバブル発生リスク

ウクライナ問題や中東地域などにおける地政学的リスク

米国の出口戦略に伴う新興国からの資金流出

日本経済に関する主なリスク

消費の下振れと在庫調整の長期化による景気低迷

日本の消費増税先送りを受けた長期金利の上昇

Page 21: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

○ 中国は減速するも、日欧は持ち直し、米国が拡大を維持することから、世界的な景気減速は回避される見込み

・ 2012年の世界的な景気減速局面では、主要国がそろって減速していたのに対し、今次局面では米国の底堅さが下支え

【 米中独の景況感指数 】

(資料) 米サプライマネジメント協会、独IFO経済研究所、中国国家統計局

2012年のような世界的な景気減速には至らない見込み

20

95

100

105

110

115

45

50

55

60

65

2010 11 12 13 14

米国:製造業ISM指数(左目盛)

中国:製造業PMI(左目盛)

ドイツ:IFO景況感指数(右目盛)

(年)

(Pt) (2005年=100)

米国も含め世界的

に景気下振れ

中国・ドイツは弱い

も米国は回復

Page 22: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

○ 真水ベースで4兆円(名目GDP比0.8%)の経済対策が策定されると想定

・ 低所得者層・子育て世帯の支援策や女性の活躍支援、住宅取得支援などに総額2兆円を想定(次頁の提言も参照)

・ その他には、中小企業等の支援(燃油高騰対策など)や防災対策の公共事業等を想定

――― 政府原案では真水2兆円程度が想定されている模様だが、2014年7~9月期が2四半期連続のマイナス成長

だったことを踏まえ積み増されると想定

【 経済対策に利用可能な財源 】 【 経済対策の想定 】

21

(注)1.財政法第6条の純剰余金。2.2014年度の税収上ぶれ分。2014年度の税収が2014年4~9月のペースで進捗すれば、税収は当初予算を1.5兆円程度上回る計算。

3.過去5年(2009年度~2013年度)平均の国債費の減額分。当期間における決算ベースの国債費は、当初予算に比べて0.9~1.9兆円下回っている。

(資料)財務省などより、みずほ総合研究所作成

(注)予算の内訳はみずほ総合研究所による想定。(資料)内閣府、各種報道資料などより、みずほ総合研究所作成

②日本の景気対策について:真水4兆円(名目GDP比0.8%)の経済対策を想定

 2013年度の決算剰余金(一般会計)注1 1.4

 税収注2 1.5

 NTT株売却益 0.3

1.5

 公債費 -

 合計 4.7

項目

 規定経費の減額注3

(兆円) 予算規模(兆円)

家計向け支援(低所得者層・子育て世帯支援策、女性活躍支援等)

給付金支給やバウチャー配布など

中小企業等向け支援

資金繰り支援、燃油高騰に備えたセーフティネット構築、米価下落対策など

公共事業

土砂対策、火山対策など緊急性の高い事業

その他 0.5

4.0(0.8%)

合計(名目GDP比)

2.0

1.0

0.5

Page 23: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

趣旨 内容 効果事業規模(予算額)

低所得者対策

消費増税に伴う負担が大きい低所得者に対する即効性を重視した重点的支援

現行の「臨時福祉給付金」・「子育て世帯臨時福祉給付金」の支給対象者に対し、2015年1~3月期に追加支給実施(予算総額約5,000億円)

1,438億円(名目値)の消費増加効果。年間収入300万円未満世帯の場合、10,000円の支給により、半年ベースの消費支出を0.9%Pt程度押し上げ

0.5兆円(0.5兆円)

トラベルポイント

旅行需要喚起(サービス消費押し上げ)、働き方改革(平日有給取得促進)

国内宿泊旅行者に対し、次回の平日国内宿泊旅行に使用可能なポイント(1人1回あたり10,000円)を公費負担で付与(予算総額5,000億円)

ポイント活用率70%で、旅行消費支出額を約7,900億円押し上げ。波及効果を含めると約8,350億円の付加価値創出(乗数約1.7)

0.8兆円(0.5兆円)

現役世代サポート 育児・家事支援バウチャー女性活躍支援、サービス供給者拡大

杉並区子育て応援券などを参考に、子育て世代向けバウチャー(使用期限あり)を発行

5,000億円の発行で約4万人の雇用創出効果

0.7兆円(0.5兆円)

贈与税減税の対象拡充・柔軟化資産の世代間移転促進により、現役世代の負担を軽減

結婚費用などへの対象拡充、教育目的の対象柔軟化(塾など学校外費用への贈与上限撤廃)、事務手続きの簡素化など

子育て世代の教育費負担が軽減することで、他の消費の拡大効果が見込まれる

1.0兆円(0.2兆円)

合計3.0兆円(1.7兆円)

経済対策

① 早期に低所得者対策を拡充し、景気腰折れ懸念へ迅速に対応

② 「ローカル・アベノミクス」の一環として、「トラベルポイント」を開始

・ ポイント付与によるインセンティブで、地方経済への波及効果が高い旅行消費を促進。働き方改革も合わせて実行

③ 現役世代のサポートを拡充。女性の活躍や現役世代への所得・資産移転を促進するとともに、家事・育児支援ビジネス、

NPOなどサービス提供者の育成も図る

【 みずほ総合研究所の提言(3つの経済対策) 】

22

みずほ総研の提言 ~「3兆円」規模の「3つの対策」で、「3本の矢」の死角に対応

(注)前頁の家計向け支援の内容に関する提言。

(資料)各種資料より、みずほ総合研究所作成

Page 24: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

③原油安・円安の影響 : 原油価格下落と円安が経常収支の黒字押し上げ要因に

23

【 原油輸入金額の見通し 】 【 経常収支見通し 】

(注)グラフ中の数値は経常収支黒字額。(資料)日本銀行「国際収支統計」等より、みずほ総合研究所作成

○ 原油価格下落による貿易赤字縮小に加えて、円安が第一次所得収支の押し上げに寄与

・ 円安による輸入金額押し上げを考慮しても、2014年度後半から2015年度前半にかけて原油輸入金額は下落

(前年比▲1.7兆円)する見込み

・ 第一次所得収支は円安による受取増が支払増を上回り、黒字幅の拡大。第一次所得収支の黒字拡大と貿易赤字縮小が続き、経常収支は2014年度4.3兆円から2015年度6.9兆円に拡大すると予測

(注)2014年度下期以降はみずほ総研見通し。単価(ドル)はドバイ原油予測値、数量は国内需要連動として試算。

(資料)財務省「貿易統計」

▲ 2.5

▲ 2.0

▲ 1.5

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

2011 12 13 14 15

為替

単価(ドル)

数量

(前年差、兆円)

原油・粗油

輸入金額

(見通し)

(年度/半期)

9月見通し 24.3

10.7

16.7 18.0

7.94.2

0.84.3

6.9

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

2007 08 09 10 11 12 13 14 15

貿易収支 サービス収支

第一次所得収支 第二次所得収支

経常収支

(兆円)

予測

(年度)

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円安は製造業・非製造業ともにメリット。原油安が加わることで中小企業の収益も改善

24

○ 円安のメリットは加工業種に集中するが、生産波及効果まで含めれば素材業種や非製造業においてもプラス

○ 20%を超える原油安の進行は、経常利益を2兆円強押し上げ(長期的には約5兆円まで拡大、みずほ総研マクロモデルに

よるシミュレーション結果)。原油安は中小企業にも大きなメリットがあり、今後の賃上げ余力につながる見通し(P55参照)

【 5%の円安による企業収益への影響(業種別) 】 【 円安・原油安による中小企業の仕入コスト変化(試算) 】

(5%円安・20%原油安の想定)

(注)円安・原油安に伴う中小企業の仕入れコストの変化を規模別産業連関表より試算。(資料)中小企業庁「規模別産業連関表」などより、みずほ総合研究所作成

(注)1.2013年の貿易収支をベースに、円・ドルレートが5%円安になった場合の企業収益への影響を試算。グラフ中の数値の括弧内は2010年の営業余剰に対する企業収益の変化率。

2.輸出入金額の変化はみずほ総研マクロモデルによって試算。産業間のコスト転嫁は、投入コスト増加分の50%を転嫁すると仮定。生産波及効果は、輸出金額の増加による生産誘発額から輸入増加額と国内品の中間投入額を控除した付加価値額。

(資料)財務省「貿易統計」、経済産業省「平成22年簡易延長産業連関表」より、みずほ総合研究所作成

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

円安効果のみ 円安+原油安

原油安による効果

円安による効果

約0.9兆円の

改善要因

(兆円)

1,273億円

(2.8%)

6,026億円

(8.3%)

508億円

(0.1%)

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

素材業種 加工業種

製造業 非製造業

生産波及効果

輸入コストの産業間の転嫁(純)

輸入金額の増加(直接分)

輸出金額の増加

業績

(兆円)

Page 26: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

○ コアCPIは2015年度半ばまで1%割れ(2015年1~3月期には0.8%まで低下)が続く見通し

・ 今後のコアCPIは、自動車保険料の値上げ(10月)、北海道電力の値上げ(11月)、円安進行が物価の押し上げに寄与する一方、原油価格の下落が押し下げ要因。原油価格下落によるマイナスの影響は、円安による物価押し上げ効果を上回る見込み

○ 消費再増税の先送りは、需給ギャップの改善期待(⇒インフレ期待も改善)に働きかけることで、インフレ目標の達成を後押し。2015年度中の2%目標達成は困難だが、基調的な物価上昇率は着実に改善する見通し

25

(注) 内訳は消費税を除くベースの寄与度。(資料)総務省「消費者物価指数」などより、みずほ総合研究所作成

原油価格下落がインフレ率を下押し。もっとも、基調的な物価上昇率は着実に改善

【 コアCPIの見通し】

▲ 2

▲ 1

0

1

2

3

4

2010 11 12 13 14 15 16

消費税

食料(酒類・生鮮食品除く)

エネルギー

米国基準コアCPI

コアCPI

(前年比、%)

(消費税を除く)

消費税を含むベース

予測

(年/四半期)

【 需給ギャップとコアCPI 】

(注)GDPギャップは1年ラグ。(資料)内閣府「国民経済計算」、総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成

▲ 2.0

▲ 1.5

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

▲ 6 ▲ 4 ▲ 2 0 2 4

(GDPギャップ、潜在GDP比、%)

2013年度

(コアCPI前年比、%)

1980年代のフィリップスカーブ

1990・2000年代のフィリップスカーブ

2012年度

2014年度

2015年度

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日銀は強気の見通しを維持。2015年に追加緩和を行うと予想

26

○ 日銀は強気の経済・物価見通しを維持。2015年度を中心とする期間での物価目標2%達成見通しを変更せず

○ 黒田総裁は更なる追加緩和の可能性を示唆。2015年度を中心とする期間での物価目標達成へのリスクが高まる

局面で追加緩和が行われると予想

・ 追加緩和に際しては、2013年1月のような政府との政策連携強化によって、財政規律の配慮することも重要

・ 2015年には政策委員2人の任期が満了。後任人事の動向如何で量的・質的金融緩和の枠組みが変わる可能性も

(対前年度比:%)

2014年度 +0.2~+0.7 +3.1~+3.4 +1.1~+1.4

(+0.5) (+3.2) (+1.2)

7月時点の見通し +0.6~+1.3 +3.2~+3.5 +1.2~+1.5

  (+1.0) (+3.3) (+1.3)

2015年度 +1.2~+1.7 +1.8~+2.6 +1.1~+1.9

(+1.5) (+2.4) (+1.7)

7月時点の見通し +1.2~+1.6 +1.9~+2.8 +1.2~+2.1

(+1.5) (+2.6) (+1.9)

2016年度 +1.0~+1.4 +1.9~+3.0 +1.2~+2.3

(+1.2) (+2.8) (+2.1)

7月時点の見通し +1.0~+1.5 +2.0~+3.0 +1.3~+2.3

(+1.3) (+2.8) (+2.1)

実質GDP消費者物価指数(除く生鮮食品)

消費税率引き上げの

影響を除くケース

追加緩和への賛否

出身任期満了(任期5年)

総裁 黒田東彦氏 ○ アジア開発銀行総裁 2018年4月

岩田規久男氏 ○ 学習院大学教授 2018年3月

中曽宏氏 ○ 日銀理事 2018年3月

宮尾龍蔵氏 ○ 神戸大教授 2015年3月

森本宣久氏 × 東京電力 2015年6月

白井さゆり氏 ○ 慶応大教授 2016年3月

石田浩二氏 × 三井住友FG 2016年6月

木内登英氏 × 野村證券 2017年7月

佐藤健裕氏 × モルガン・スタンレーMUFG証券 2017年7月

副総裁

審議委員

【 展望レポート(2014年10月) 】 【 日銀政策委員 】

(注)追加緩和への賛否:2014年10月31日の追加緩和への賛成・反対のスタンス。(資料)日本銀行等よりみずほ総合研究所作成

(注)( )内は政策委員見通しの中央値。(資料)日本銀行等よりみずほ総合研究所作成

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消費税引上げ延期に伴い長期金利変動不安を内包

27

○ 日本の10年国債利回りは、株高や消費増税先送り観測から一時0.5%台に上昇

・ 追加緩和後の国債買入れオペでは超長期ゾーンの国債買入れ額が大幅に増額。超長期債利回りが低下

・ 消費増税先送り観測からCDSスプレッドは上昇に転じる

○ 消費増税判断に対する思惑から、目先ボラティリティが高まる局面も

・ 財政規律への配慮という観点から、延長決定に際しては景気弾力条項を廃止すべき

【 CDSスプレッド 】

(資料) Bloomberg

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

08 09 10 11 12 13 14

(bp)

日本 米国 ドイツ

2008 (年)

小沢ショック

東日本大震災

消費増税判断

への不安

消費再増

税延期

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Ⅱ.海外経済

28

~米国は拡大、ユーロ圏・アジアは回復の勢い欠く~

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○ 米国の2014年7~9月期実質GDP成長率は良好な伸び。減速した個人消費や住宅投資も、

10~12月には持ち直す見込み。2014年成長率は前年比+2.2%と予測

○ 10月の金融市場変動(原油価格下落・ドル高)の実体経済への影響は総じて軽微。2015年も

米国経済の拡大基調は続き、2015年成長率は前年比+2.9%になると予測。経済のリスク要

因は海外経済の減速や地政学リスクの高まり

○ 2014年11月の米国中間選挙では、共和党が上下両院で過半数獲得。米国政治は、2016年

の大統領選挙を見据えて歩み寄りへ。対立に伴う不透明感は後退

○ 米国の金融政策はいよいよ出口へ。最初の利上げは2015年央と予測。利上げペースは

緩慢なものとなる見込み

(1)米国経済 ~ 拡大基調が続く見通し。金融政策は出口へ

29

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【 短期見通し総括表 】

(注)網掛けは予測値。(資料)米国商務省、米国労働省より、みずほ総合研究所作成

米国: 拡大基調が続く見込みで、2015年成長率は前年比+2.9%に

30

○ 2014年の成長率を前年比+2.1%から+2.2%に上方修正。2015年の成長率は同+2.9%で変わらず

・ 上方修正の主因は9月見通し以降発表となった2014年4~6月期(確報)、7~9月期(速報)によるもの

・ 経済のリスク要因は海外経済の減速や地政学リスクの高まり

2012 2013 2014 2015

暦年 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12

実質GDP 前期比年率、% 2.3 2.2 2.2 2.9 ▲ 2.1 4.6 3.5 2.0 2.6 2.8 3.2 3.2

個人消費 前期比年率、% 1.8 2.4 2.2 2.6 1.2 2.5 1.8 2.8 2.5 2.8 2.7 2.6

住宅投資 前期比年率、% 13.5 11.9 1.7 9.3 ▲ 5.3 8.8 1.8 8.0 10.0 12.0 12.0 12.0

設備投資 前期比年率、% 7.2 3.0 5.9 6.7 1.6 9.7 5.5 5.5 7.0 7.0 7.0 7.0

在庫投資 前期比年率寄与度、%Pt 0.2 0.1 ▲ 0.0 ▲ 0.1 ▲ 1.2 1.4 ▲ 0.6 ▲ 0.3 ▲ 0.2 ▲ 0.2 ▲ 0.1 0.0

政府支出 前期比年率、% ▲ 1.4 ▲ 2.0 ▲ 0.3 1.3 ▲ 0.8 1.7 4.6 ▲ 4.0 2.3 2.3 2.3 1.6

純輸出 前期比年率寄与度、%Pt 0.2 0.8 ▲ 0.2 ▲ 0.4 ▲ 1.6 ▲ 0.3 1.3 0.4 ▲ 0.6 ▲ 0.6 ▲ 0.3 ▲ 0.2

輸出 前期比年率、% 3.3 3.0 3.7 3.8 ▲ 9.2 11.1 7.8 6.0 1.0 1.0 3.0 4.0

輸入 前期比年率、% 2.3 1.1 3.4 3.8 2.2 11.3 ▲ 1.7 2.4 4.6 4.6 4.6 4.6

失業率 % 8.1 7.4 6.3 6.0 6.7 6.2 6.1 6.0 6.1 6.1 6.0 5.9

非農業部門雇用者数 1か月当たり、千人 187 189 207 210 169 252 239 219 197 198 199 199

個人消費支出デフレーター 前年比、% 1.8 1.2 1.4 0.7 1.1 1.6 1.5 1.2 1.0 0.6 0.5 0.8

食品・エネルギーを除くコア 前年比、% 1.8 1.3 1.4 1.6 1.2 1.5 1.5 1.5 1.6 1.5 1.6 1.6

2014 2015

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○ 7~9月期実質GDPは前期比年率+3.5%(4~6月期同+4.6%)と良好な伸び

・ 内訳では、純輸出と政府支出の寄与度が大きく拡大(左図)

・ 国内民間需要は前期から減速。設備投資は底堅い一方、個人消費は緩やかな拡大に。住宅投資の伸びも鈍化

――― 個人消費の減速は寒波後の急速な回復の一服によるもの。今後は雇用・所得環境の着実な改善が下支え

――― 住宅投資の伸びは緩慢だが、住宅市場では空室率が低下し、需給逼迫が顕著(右図)。10~12月には持ち直しへ

米国: 7~9月期の実質GDP成長率は良好な伸び

31

(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

【 賃貸・持ち家空室率 】

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

6

7

8

9

10

11

2000 02 04 06 08 10 12 14

持ち家 空室率

(右目盛)

賃貸 空室率

(左目盛)

賃貸、持ち家とも空室率が低下。

特に賃貸空室率は1995年以来の低水準で、需給ひっ迫を示す。

(%) (%)

(年)

【 実質GDP成長率 】

1.62.5

0.12.7

1.8

4.5 3.5

▲2.1

4.63.5

▲4

▲2

0

2

4

6

8

4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9

2012 2013 2014

個人消費 住宅投資 設備投資

在庫調整 純輸出 政府支出

実質GDP

(前期比年率、%)

(注)図中の数字は実質GDP成長率の値を示す。(資料)米国商務省

政府支出

純輸出

寄与度が大きく拡大

(期)(年)

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○ 2014年10月に国際金融市場が不安定化。しかし、株価はその後復調

・ 7~9月平均に比べ、原油は▲20%強下落。実質実効ドルレートは10月実績値が7~9月平均対比+2.4%の上昇

・ 株価は一時同▲6%弱下落したものの、その後下落前の水準まで回復。実際の影響は顕在化しないと考えられる

【 金融市場変動の実体経済への影響 】

個人消費にどのような影響があるか?

(注)原油価格はWTI原油価格、株価はS&P500株価指数。最大変動幅は10月1日~11月10日までの期間を対象としたもの。原油価格が11月4日、株価が10月15日、実質実効ドルが10月実績値の7~9月平均比。

(資料)Bloomberg、FRBより、みずほ総合研究所作成

ショック最大変動幅(7~9月比)

原油価格 ▲20.7% 下落基調

実質実効ドル

+2.4% 上昇基調

株価 ▲5.8%下落前の水準を超えて回復

実質輸出にどのような影響があるか?

物価にどのような影響があるか?

VARで分析

実際には影響は顕在化しないと想定

32

米国: 10月に株価下落・原油安・ドル高が発生。米国実体経済への影響が注目点に

Page 34: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

▲4.0

▲3.0

▲2.0

▲1.0

0.0

1.0

2.0

2015Q1 2015Q2 2015Q3 2015Q4

株価 実質実効ドル

原油価格 合計(株価要因除く)

合計(株価要因含む)

(前期比年率、影響度、%Pt)

▲0.6

▲0.4

▲0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

2015Q1 2015Q2 2015Q3 2015Q4

株価 実質実効ドル

原油価格 合計(株価要因除く)

合計(株価要因含む)

(前期比年率、影響度、%Pt)

米国:個人消費では原油価格下落がプラス。一方、輸出は2015年前半に下押しの影響

○株価は下落前の水準を回復していることから、個人消費、輸出への影響は原油価格要因と為替要因に

・ 個人消費に対し、原油価格下落はプラスの影響

・ 輸出では、ドル高、原油価格下落が、2015年前半を前期比年率▲2%Pt程度押し下げ。年後半には影響一服

【 実質個人消費への影響試算 】 【 実質輸出への影響試算 】

原油価格下落は個人消費にプラスの影響 金融市場の変動が輸出を下押し(▲2%Pt程度)

2015年後半に影響は一服

33

(注)PCEデフレーター、実質個人消費、実質輸出、WTI原油価格、S&P500株価指数、実質実効ドルレート(全て対数前期差)の6変数からなるVARモデルを推計。得られたインパルス応答を用い、金融市場の変動の影響を試算。試算にあたっては、WTI原油価格とS&P500株価指数は10月以降の最低値、実質実効ドルレートは10月実績をそれぞれ10~12月平均として試算。推計期間は1983年Q1~2014年Q3。コレスキー分解、VARモデルのラグ次数は赤池情報基準に基づき2四半期と設定。各変数は1階差で定常(ADF検定)。

(資料)Bloomberg、FRB、米国商務省より、みずほ総合研究所作成

Page 35: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

▲0.3

▲0.2

▲0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

2015Q1 2015Q2 2015Q3 2015Q4

株価 実質実効ドル

原油価格 合計(株価要因除く)

合計(株価要因含む)

(前期比年率、影響度、%Pt)

▲ 0.4

▲ 0.3

▲ 0.2

▲ 0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

2015Q1 2015Q2 2015Q3 2015Q4

個人消費 輸出 合計

(前期比年率、影響度、%Pt)

米国: 10月の金融市場の変動による影響は概ね軽微で、経済は拡大基調が続く

○ GDPは2015年初に下押しされるが、その後はプラスに寄与。インフレ率への影響は小幅にとどまる

・ GDPへの影響は個人消費と輸出が概ね相殺。2015年初に▲0.3%Pt程度影響が出るが、その後はプラス寄与

・ インフレ率は、原油価格下落とドル高がインフレ率下押し要因となるものの、影響は小幅との試算結果

【 実質GDPへの影響試算(株価要因を除く) 】 【 インフレ率への影響試算 】

輸出が2015年初のGDPを下押し

2015年初は原油価格要因、その後は為替要因がインフレ率の下押しとなるものの、影響は軽微

(注)PCEデフレーター、実質個人消費、実質輸出、WTI原油価格、S&P500株価指数、実質実効ドルレート(全て対数前期差)の6変数からなるVARモデルを推計。得られたインパルス応答を用い、金融市場の変動の影響を試算。試算にあたっては、WTI原油価格とS&P500株価指数は10月以降の最低値、実質実効ドルレートは10月実績をそれぞれ10~12月平均として試算。推計期間は1983年Q1~2014年Q3。コレスキー分解、VARモデルのラグ次数は赤池情報基準に基づき2四半期と設定。各変数は1階差で定常(ADF検定)。実質GDPへの寄与は2013年名目シェアを用いて算出。

(資料)Bloomberg、FRB、米国商務省より、みずほ総合研究所作成

個人消費が輸出のマイナスを相殺し、GDPへの影響は軽微に

34

Page 36: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

【 2014年11月中間選挙結果 】 【 主要政策課題 】

(注) CNNによる集計(2014/11/6 11:22JST時点)。(資料) 各種資料より、みずほ総合研究所作成

米国: 政治は2016年を見据えて歩み寄りへ。対立に伴う不透明感は後退

35

(資料) 各種資料より、みずほ総合研究所作成

2014年内

※選挙前の議会が継続

・2015年度予算審議~現在の暫定予算は12/11まで

2015年

※選挙結果を受けた新議会が始動

・債務上限の取り扱い~現在は2015/3/15まで適用停止

・TPP・移民制度改革・法人税制改革・GSE改革 etc

2016年 ※11月大統領選挙

○ 中間選挙では共和党が上下両院で過半数獲得。関心は2016年大統領選へ

・ 米国景気にとって重要な政策課題は2015年度予算審議と債務上限の取り扱い。「次」を見据えれば混乱回避の公算

――― 他の政策課題はオバマ政権と共和党議会の歩み寄り次第

32

44

21 15 30

52

0 100

選挙前

選挙後

民主党 共和党

↑ 改選対象↑

184

199 233

244

0 435

選挙前

選挙後

民主党 共和党

上 院

下 院

Page 37: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

【 FRBのインフレ見通しと実績 】 【 米金融政策の課題 】

(注) 食料・エネルギーを除く個人消費支出デフレーター上昇率。(資料) 米国商務省、FRBより、みずほ総合研究所作成

米国: 金融政策は出口へ。最初の利上げは2015年央、利上げペースは緩慢に

36

(資料) みずほ総合研究所作成

●フォワード・ガイダンスの修正現状:QE3終了後《相当の間》ゼロ金利を継続代替案:2004年の利上げ開始時と同じ工程を辿る可能性

《相当の間》緩和を継続→緩和解除を《辛抱強く待つ》→緩和解除は《ゆっくり進める》⇒利上げへ

●政策金利見通し(いわゆるドット・チャート)の取り扱い課題:FOMC参加者らの見通しを集計しただけ政策金利見通しにバラつきが大きい市場参加者よりも高め(ショックが大きい)

●利上げの判断材料・ルール課題:どの経済指標をみればいいのか、FRBも学習過程長期停滞論が正しければ均衡利子率は低いことに

●バブルへの対処現状:強化された金融規制・監督で対応する姿勢課題:すでに社債やローン市場でバブルの萌芽

○ QE3終了により、米金融政策の焦点は雇用から物価へ。利上げに向けてコミュニケーション政策等の見直しも急務

・ QE3の雇用改善という目的が達成され、今後は物価が米金融政策を左右。低インフレの持続により、利上げは緩慢に

・ 利上げが迫る中、フォワード・ガイダンスや政策金利見通し等の見直しが不可避に

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

2.0

2.2

2011 12 13 14 15 16

(前年比%)

QE3決定当時のFRB見通し(2012/9)

実績

直近見通し(2014/9)

(年)

Page 38: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

○ ユーロ圏の2014年実質GDP成長率は+0.8%と前回から据え置き。2015年は+1.0%へと下

方修正(前回見通しは+1.2%)。地政学的リスクの高まりに伴う不確実性の上昇により、域内

の設備投資が減速したことが主因。けん引役となってきたドイツで、2014年の年央はほぼゼ

ロ成長まで減速

○ 2015年は、緩やかな成長を辿る見込みだが、従来の想定よりも回復テンポは緩慢に。不確実

性が残存する中、域内企業は新規設備投資には引き続き慎重。個人消費は、域内で二極化

が続き、ドイツ、スペインでは増加基調が続く一方、フランス、イタリアでは停滞、ユーロ圏全

体では緩やかな回復に留まろう。総じて回復の勢いは弱く、リスクは引き続きダウンサイド

○ 景気回復ペースが想定よりも緩やかであったことから、2015年の物価見通しを小幅下方修正

(前年比+0.8%→同+0.7%)。しかし、2015年後半以降は、エネルギー価格の下げ止まりと

景気回復ペースの加速を受けて、物価は緩やかに上昇する見込み

○ ECBは、これまでの緩和策では目標とするバランスシート拡大とディスインフレ脱却には不十

分との思惑から、社債購入を含めた追加緩和策を2015年1~3月期に実施すると予想

(2)ユーロ圏経済 ~ 緩やかな成長路線に復するが、回復の勢いは弱い

37

Page 39: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

【 短期見通し総括表 】

(注) 網掛けは予測値。(資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成

ユーロ圏: 2014年の成長率は+0.8%と据え置き、2015年は+1.0%へと下方修正

38

○ 2014年の成長率は前年比+0.8%に据え置き。2015年の成長率は、同+1.2%から+1.0%へと下方修正

・ 下方修正の主因は、不確実性の上昇に伴う設備投資の減速

・ 緩やかな回復を見込むが、企業は引き続き新規投資には慎重でリスクはダウンサイド

2012 2013 2014 2015

暦年 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12

実質GDP 前期比、% ▲ 0.7 ▲ 0.5 0.8 1.0 ▲ 0.3 0.3 0.1 0.3 0.3 0.1 0.2 0.2 0.3 0.3 0.3 0.4

内需 前期比、% ▲ 2.2 ▲ 0.9 0.8 0.8 ▲ 0.3 0.1 0.4 ▲ 0.1 0.4 0.0 0.0 0.2 0.2 0.3 0.3 0.3

個人消費 前期比、% ▲ 1.3 ▲ 0.7 0.7 0.7 ▲ 0.3 0.1 0.3 ▲ 0.1 0.2 0.3 0.1 0.2 0.1 0.2 0.2 0.2

総固定資本形成 前期比、% ▲ 3.4 ▲ 2.4 1.1 1.7 ▲ 2.0 0.5 0.5 0.6 0.3 ▲ 0.9 0.3 0.1 0.3 0.6 1.1 1.0

政府消費 前期比、% ▲ 0.2 0.2 0.8 0.4 0.3 0.0 0.2 ▲ 0.2 0.7 0.2 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1

在庫投資/誤差前期比寄与度、%Pt 1.1 ▲ 0.1 ▲ 0.0 ▲ 0.0 0.2 ▲ 0.4 ▲ 0.7 0.0 ▲ 0.2 ▲ 0.4 ▲ 0.1 0.0 0.1 0.0 ▲ 0.1 ▲ 0.0

外需 前期比寄与度、%Pt 1.4 0.4 ▲ 0.0 0.2 ▲ 0.0 0.2 ▲ 0.3 0.3 ▲ 0.1 0.1 0.1 0.1 0.0 0.0 0.1 0.0

輸出 前期比、% 2.4 2.0 3.5 5.2 ▲ 0.1 1.9 0.6 1.1 0.3 1.3 1.7 2.2 1.5 0.5 0.8 0.9

輸入 前期比、% ▲ 1.0 1.2 3.8 5.1 ▲ 0.1 1.5 1.4 0.4 0.6 1.3 1.6 2.2 1.5 0.5 0.7 0.9

消費者物価指数 前年比、% 2.5 1.4 0.5 0.7 1.9 1.4 1.3 0.8 0.6 0.6 0.3 0.3 0.3 0.6 0.8 1.0

食品・エネルギーを除くコア 前年比、% 1.5 1.1 0.8 0.8 1.4 1.1 1.1 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.7 0.7 0.9 1.0

20152013 2014

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▲ 5

▲ 4

▲ 3

▲ 2

▲ 1

0

1

2

3

2007 08 09 10 11 12 13 14

スペイン イタリア

フランス ドイツ

(前期比、%)

(年)

○ ユーロ圏の7~9月期実質GDP成長率は、前期比+0.2%(4~6月期同+0.1%)と緩慢な成長が続く

・ ドイツ(同+0.1%)では、個人消費と純輸出が全体を押し上げた一方、設備投資が押し下げ要因となった模様。予

想を上回ったフランス(同+0.3%)では、在庫投資や政府消費が増加に寄与

・ ロシア情勢を含む地政学的リスクの高まりが域内の企業活動を抑制し、先行指標である製造業受注はスペインを除き、

低下傾向が続く

【 ユーロ圏の実質GDP成長率(国別) 】

ユーロ圏: 7~9月期の実質GDP成長率は小幅な成長に留まる

39

【 ユーロ圏の新規受注判断DI(国別) 】

(資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成(注) 最近数カ月の受注動向について、「増加」と答えた比率から「減少」と答えた

比率を差し引いたもの。調査は各四半期の初月に実施。(資料) 欧州経済総局より、みずほ総合研究所作成

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

2011 12 13 14

スペイン イタリア

フランス ドイツ

(%Pt)

(年)

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▲ 2.0

▲ 1.5

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

2013 14

ユーロ圏

ドイツ

フランス

スペイン

イタリア

(%Pt)

(年)

○ 生産は、輸出回復に伴う設備投資需要の高まりや在庫調整の進展により、緩やかな回復ペースに復する見込み

・ しかし、地政学的リスクの早期緩和の難しさを考えると、引き続き企業は新規投資には慎重で、回復ペースは緩慢

○ 消費環境は二極化が続く。失業率は、フランス、イタリアでは改善がみられない一方、ドイツ、スペインでは低下。ユーロ圏全体の消費回復は緩やかなものに留まる見込み

40

ユーロ圏: 輸出を起点とした回復路線に戻るが、ペースは更に鈍化

【 ユーロ圏の輸出期待・生産・在庫DI 】 【 ユーロ圏の失業率の変化幅(2013年1月差) 】

(資料) 欧州経済総局より、みずほ総合研究所作成 (資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14

在庫判断DI

生産期待DI

輸出期待DI

(%Pt)

(年)

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0

5

10

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20

25

30

35

1997 2000 02 04 06 08 10 12 14

(%)

(年)

ユーロ圏: インフレ率の持ち直し時期は後ずれ

○ 7~9月期の消費者物価指数は前年比+0.4%、コアは同+0.8%へ低下

・ 物価下落品目の割合は2009年以来の水準に上昇

○ 景気回復の遅れを勘案すれば、インフレ率の上昇は2015年央以降に後ずれする 見通し

・ 雇用、設備の両面で潜在的な供給力とのギャップは縮小しているがなおマイナス。物価上昇のペースは緩やかなものに

【 物価下落品目の割合 】 【 雇用と設備の供給能力との緩み(スラック) 】

41

(資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成

(注) 雇用のスラックは、NAIRU(インフレを加速させない失業率)と実際の失業率の差、設備投資のスラックは設備稼働率の長期平均と実績との差。

(資料) OECD、Eurostat、欧州経済総局より、みずほ総合研究所作成

▲ 7

▲ 6

▲ 5

▲ 4

▲ 3

▲ 2

▲ 1

0

1

2

3

▲ 6 ▲ 5 ▲ 4 ▲ 3 ▲ 2 ▲ 1 0 1 2

設備のスラック

雇用のスラック

(%Pt)

(%Pt)

スペイン

イタリア

フランス

ユーロ圏'14

'12

'12

'12

'14

'14

'14

'14

'12

ドイツ

'12

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ユーロ圏: ECBは、社債購入を含めた追加金融緩和策を導入する公算

○ ECBは2015年1~3月期に社債購入を開始すると予想

・ インフレスワップ金利から見る長期期待インフレ率は、ECBのバランスシート残高の減少に合わせて低下

・ ターゲット付長期リファイナンスオペ(TLTRO)の動向次第ながら、現在のカバードボンドと資産担保証券購入プログラム

(CBPP3、ABSPP)では、ECBの目指す1兆ユーロのバランスシート上積みの達成は困難な模様

・ 社債購入も含めた金融政策でもインフレ期待が改善しない場合、国債購入も視野に

42

【 ECBによるバランスシート拡大のイメージ 】【 長期期待インフレとECBのリファイナンス・オペ 】

(注) CBPP3は、12月以降は100億ユーロずつ増加すると仮定。ABSPPは、ABS市場の規模がカバードボンド市場の3分の2程度と思われることから、ABSCPの購入額はCBPP購入額の3分の2と仮定。TLTROは毎回800億ユーロの応札があるものと仮定。

(資料) ECB資料を基にみずほ総合研究所作成

(注) リファイナンスオペ残高は主要オペと長期オペの合算(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成

(単位:億ユーロ)

2014年 2016年

10月末(実績) 6月末(想定)

9月以降の金融政策

ターゲット付長期リファイナンスオペ(TLTRO) 826 6 ,400

カバードボンド購入プログラム(CBPP3) 5 2 ,000

資産担保証券購入プログラム(ABSPP) 0 1 ,400

合計額 831 9 ,800

0 ▲ 3,259

20,521 27,062

29,644 29,644

▲ 9,124 ▲ 2,582

実施済みの長期リファイナンスオペ(LTRO)の返却額

ECBのバランスシート総額

ECBのバランスシートのターゲット

(2012年3月30日時点残高)

ターゲット比不足額250

450

650

850

1,050

1,250

1,450

1.8

1.9

2.0

2.1

2.2

2.3

2.4

2.5

2.6

2.7

2.8

2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14

(%) (10億ユーロ)

(年)

インフレスワップ・フォワードレート(5Y5Y)(左目盛)

リファイナンスオペ残高(右目盛)

Page 44: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

○ 中国経済は生産能力過剰問題と不動産市場の調整を背景に減速が続く

・ 投資減速から2014年7~9月期の中国経済は前年比+7.3%(4~6月期:同+7.5%)と鈍化

・ 2015年の成長率目標は今年の+7.5%前後から+7.0%前後に引き下げられる可能性あり。

投資の自律的な回復力は弱く、それを補うほどの個人消費や輸出の強い伸びが期待できな

い中、成長率目標達成のために、積極的財政政策や選択的金融緩和で下支えする見通し

○ 中国を除くアジア経済は、景気拡大基調が続くものの、テンポは緩やか

・ 先行きは、米国向けの増加により、輸出は拡大傾向を維持するものの、欧州向けの回復の

弱さなどからテンポは緩やかに留まる

・ 民間投資は、金融引締めモード継続や資源価格下落などから、大幅な加速は期待できず

・ 金融政策は、多くの国で当面は現状維持が続く見込みだが、原油価格下落によるインフレ

圧力緩和などにより、一部の国では政策が緩和的になることが見込まれる

(3)アジア経済 ~輸出主導で景気拡大傾向を維持する一方、内需は勢いに欠ける

43

Page 45: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

○ アジア経済は、+6%程度の緩やかな経済成長を維持すると予想

・ 中国は、生産能力過剰問題や不動産市場の調整が続き、成長率は減速へ

・ 輸出依存度の高いNIEsは、主要輸出先の欧州経済の回復の弱さや中国経済の減速に伴い、景気拡大テンポは緩やかに

・ ASEAN5は加速するものの、輸出拡大テンポは緩やかで、緊縮的な政策運営が続く国もあり、景気の実勢は力強さを欠く

・ インドは、緊縮的な政策運営継続による成長下押しから、+5%前後の成長に留まる見込み

アジア: 緩やかな成長を維持

44

【 アジア経済見通し総括表 】

(注) 実質GDP成長率(前年比)。平均値はIMFによる2012年GDPシェア(購買力平価ベース)により計算。(資料)各国統計より、みずほ総合研究所作成

(単位:%) (単位:%)

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2014年 2015年

(実績) (実績) (実績) (実績) (予測) (予測)

9.4 7.5 6.1 6.1 6.0 5.9 6.1 6.1

中国 10.4 9.3 7.7 7.7 7.4 7.1 7.5 7.3

NIEs 8.7 4.2 2.0 2.8 3.3 3.1 3.4 3.4

韓 国 6.5 3.7 2.3 3.0 3.4 3.4 3.6 3.7

台 湾 10.8 4.2 1.5 2.1 3.6 3.3 3.5 3.2

香 港 6.8 4.8 1.5 2.9 2.0 1.9 2.0 1.9

シンガポール 15.2 6.1 2.5 3.9 3.0 2.8 3.5 3.8

ASEAN5 6.9 4.7 6.2 5.2 4.6 5.2 4.6 5.1

インドネシア 6.2 6.5 6.3 5.8 5.1 5.1 5.1 5.2

タ イ 7.8 0.1 6.5 2.9 0.9 4.5 1.0 4.1

マレーシア 7.4 5.2 5.6 4.7 5.8 4.6 5.8 4.7

フィリピン 7.6 3.7 6.8 7.2 6.2 6.3 6.2 6.3

ベトナム 6.4 6.2 5.3 5.4 5.8 5.8 5.6 5.7

インド 9.3 7.7 4.8 4.7 5.0 5.1 5.0 5.1

(前回:9月予測)

アジア

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中国: 2015年の成長率目標は+7.0%前後にまで引き下げられる可能性あり

45

○ 2015年の中国の経済成長率目標は、今年の+7.5%前後から、+7.0%前後にまで引き下げられる可能性あり

・ 資本ストック調整のためには経済の減速が必要だが、他方で雇用確保も政権の最重要課題

・ 中国政府は、2015年も都市部新規就業者数の目標を今年同様1,000万人に据え置くと予測

・ 厳しめに見積もっても、+6.8%程度の実質GDP成長率を実現できれば、上記雇用目標は達成可能

【 都市部新規就業者数と実質GDP成長率の関係 】

(注)農村余剰労働力は、当該年の第一次産業、非第一次産業の財・サービスの価格、賃金を前提に利潤が最大化される第一次産業の就業者数を算出し、実際の第一次産業の就業者数からこれを引いたもの。算出方法は、丸川知雄『労働市場の地殻変動』名古屋大学出版会、2004年を参照。

(資料)中国国家統計局

(注)「都市部新規就業者数①」は、政府目標として採用されている指標で、当該年の都市部における雇用機会新規創出数から定年や病気・死亡により離職した自然減分を引いた数値。「都市部就業者純増額②」は、さらにリストラ等、自然減以外の理由による減員分も引いた数値とされ、当該年末の都市部就業者数から前年末の同就業者数を引いた数値。「目標達成に必要な成長率」は、①、②ともに1,000万人の増加に必要な実質GDP成長率。具体的には、2001~2013年の非第1次産業の実質GDP成長率と①、②の関係について回帰分析を行い、同目標の達成に必要な非第1次産業の実質GDP成長率の水準を推計し、さらに、第1次産業については2014年以降も2001~2013年の年平均実質GDP成長率で成長すると仮定することで、全産業の実質GDP成長率を試算した。

(資料)中国国家統計局

【 農村余剰労働力と農民工対前年差 】

0

1

2

3

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5

6

7

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0

50

100

150

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250

2003 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

(百万人)(百万人)

(年)

農村余剰労働力(左目盛)

農民工対前年差(都市部移住者、

右目盛)

5.9 5.8 5.7

7.0 6.8 6.7

0

1

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4

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14

15

2008 09 10 11 12 13 14 15 16

(前年比、%)(百万人)

(年)

都市部新規従業者数①(左目盛)

都市部就業者純増数②(左目盛)実際のGDP成長率(右目盛)

目標達成に必要な成長率②

(右目盛)

目標達成に必要な成長率①

(右目盛)

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中国: 成長率目標達成のため、2015年も積極的財政政策が継続される見通し

46

○ 投資の自律的な回復力は弱く、それを補うほどの個人消費や輸出の強い伸びが期待できない中、成長率目標達成のためには財政出動によるインフラ投資で下支えする必要あり

・ 2014年7~9月期のインフラ投資は、不動産投資と製造業投資の減速を十分に補うには至らず

○ 足元、すでに政府は相次いで投資プロジェクトを認可。2015年も積極的財政政策は継続される見通し

・ 10月以降、国家発展改革委員会が中西部の鉄道等の投資計画を承認。2015年の投資を下支えする見込み

・ 投資の資金源として財政資金以外に民間資金を活用する方針。財政赤字の大幅な拡大は抑制する姿勢

【 固定資産投資(業種別寄与度) 】

(注)固定資産価格指数により実質化。(資料)中国国家統計局

(資料)中国国家発展改革委員会ホームページ、各種報道より、みずほ総合研究所作成

【 最近承認された主要なインフラ投資計画 】

▲ 2

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

22

2011 12 13 14

(前年比%)

(年)

その他

その他サービス

鉱業

不動産

製造業

水利・環境・インフラ管理

交通・倉庫・郵便

電気・ガス・水道

全体

発表日 対象 金額

10月16日 鉄道建設3件 959億元

10月22日 空港建設5件 鉄道建設3件

1,500億元

10月30日 鉄道建設3件 2,476億元

11月5日 鉄道建設7件 1,999億元

計 鉄道建設16件 空港建設5件

6,934億元

Page 48: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

▲ 4

▲ 2

0

2

4

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8

2011 12 13 14

CPI

実質金利(預金基準金利1年物-CPI)

預金基準金利(1年物)

(%)

(年)

中国: 対象を絞った選択的金融緩和が継続される見通し

47

○ 2014年4月以降、対象を絞った選択的な金融緩和を実施

・ 小規模・零細企業や農業セクター、バラック地区の改造への資金供給を拡大。部分的な預金準備率引き下げや住宅ローンの要件緩和なども実施

○ 2015年は選択的金融緩和の対象の拡大などで緩和度合いをやや強め、内需を下支えすると予測

・ 構造改革に資する分野への資金供給を優先。利下げなど全面的金融緩和の可能性は低い。原材料価格の下落を受けCPI上昇率の低下が見込まれ、利下げ余地はやや拡大したものの、実質金利はすでに低水準

【 2014年に実施された主要な選択的金融政策 】

(資料)中国人民銀行ホームページ、中国政府ホームページ、各種報道より、みずほ総合研究所作成

【 中国のCPI・実質金利・預金基準金利 】

(資料) 中国国家統計局、中国人民銀行

発表日 金融政策ツール 政策の内容

4月25日 預金準備率引き下げ 県域農村商業銀行と県域農村合作銀行の預金準備率を

それぞれ2%Pt、0.5%Pt引き下げ

6月16日 預金準備率引き下げ 「三農」(農業、農村、農民)や小規模・零細企業向け貸出比率が

一定の水準に達している商業銀行の預金準備率を0.5%Pt

引き下げ

7月21日 担保補完貸出 2014年4月に人民銀行が国家開発銀行に対してバラック地区の

再開発向けの資金1兆元(期間3年)を供給したとの報道

8月8日 手形再割引枠の拡大 一部の人民銀行の支店に対して、手形の再割引の枠を120億元

拡大。拡大分をすべて三農や小規模・零細企業向けの資金供給

に充てることを指示

9月30日 その他 (住宅金融の緩和)

住宅ローンの要件緩和など住宅関連金融の緩和を発表。

1軒目のローンを完済していれば、2軒目購入についても

1軒目と同じ貸出条件が適用される

10月15日 その他 (住宅金融の緩和)

住宅積立金の利用条件を緩和

11月6日 中期貸借ファシリティー による資金供給

人民銀行が、2014年9月に「中期貸借ファシリティー(MLF)」という

資金供給手段を創設し、9月に5,000億元、10月に2,695億元の

資金(期間3カ月物)を供給したと発表。対象は、国有銀行、

株式制商業銀行など

Page 49: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

○ 2014年7~9月期の中国を除くアジアの景気は、総じてみれば拡大基調が継続

・ 実質GDP成長率をみると、韓国、香港、シンガポール、タイ、ベトナムが加速の一方、台湾、インドネシア、マレーシアが減速

――― 台湾の減速は航空機輸入による成長率のマイナス寄与が大きく、景気の実態は堅調

○ 輸出を起点とする景気拡大が続いたものの、内需に勢いがないため、景気拡大のモメンタムは強くない

・ 輸出は米国向けを中心に緩やかな拡大傾向の一方、一部の国では機械設備など民間投資の加速感に乏しい状況

中国を除くアジア: 景気は拡大基調継続も勢いに欠ける展開

48

【 実質GDP成長率 】

(資料)各国統計

【 中国を除くアジアの輸出、資本財輸入 】

(注)1. 米ドル建て。2. みずほ総合研究所による季節調整値の3カ月後方移動平均値。

(資料)各国統計、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

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13/01 13/04 13/07 13/10 14/01 14/04 14/07

(2013/01=100)

(年/月)

資本財輸入(韓国・台湾・ASEAN4)

輸出(中国を除くアジア)

(前期比年率%)

4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9

韓国 4.1 4.4 3.6 3.8 2.0 3.5

台湾 3.8 0.1 7.6 2.5 3.9 2.0

香港 2.1 3.1 3.7 1.1 ▲ 0.6 6.9

シンガポール 10.2 0.7 6.9 1.8 0.1 1.2

タイ 1.1 3.7 2.7 ▲ 8.6 4.3 4.4

マレーシア 6.8 7.1 7.6 3.5 7.8 3.6

フィリピン 5.4 5.0 6.4 5.9 7.7 N.A.

(前年比%)

中国 7.5 7.8 7.7 7.4 7.5 7.3

インドネシア 5.8 5.6 5.7 5.2 5.1 5.0

ベトナム 5.0 5.5 6.0 5.1 5.4 6.2

インド 4.7 5.2 4.6 4.6 5.7 N.A.

2013 2014

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13/01 13/04 13/07 13/10 14/01 14/04 14/07 (年/月)

(2013/01=100)

米国向け

欧州向け

新興国向け

○ 先行きは、景気拡大傾向が続くものの、そのテンポは緩やかに留まる見込み

・ 輸出は、米国向けの増加により、拡大基調を維持するものの、欧州向けの回復の弱さが見込まれ、拡大テンポは鈍い

――― 付加価値貿易でみた場合、欧州向けは米国以上のシェア、欧州経済が大きく下振れすれば輸出は腰折れのリスク

・ 投資は、世界経済の不透明性の高まりによる企業マインドの冷え込みに加え、金融引き締めモードの継続(P50参照)などにより、総じて大きく加速する期待はしづらい

――― 新政権による経済改革期待が高まっている国もあるが、投資増加に結び付くまでにはまだ時間を要する

中国を除くアジア: 輸出拡大テンポは弱まる見込み、投資加速の期待も小さい

49

【 中国を除くアジアの国・地域別輸出 】

(注)1. 輸出は米ドル建て。2. みずほ総合研究所による季節調整値の3カ月後方移動平均値。3. 欧州向けはEU諸国。新興国向けはBRICS、ASEAN4、トルコの合計値。

(資料)各国統計、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

【 付加価値貿易でみた国・地域別のシェア(2008年) 】

(注)主要新興国はBRICS、ASEAN4、トルコの合計値。(資料)OECD

米国

18%

EU

21%

日本

8%

主要新興国

24%

その他

29%

Page 51: 2014・15年度内外経済見通し...2014・15年度内外経済見通し ~「トリプルメリット」が押し上げる日本経済~ 2014.11.18 見通しのポイント 1

0

2

4

6

8

10

12

2013 14

インドネシア インド ベトナム

タイ マレーシア 韓国

(前年比、%)

(年)

○ 原油価格下落もあって金融緩和余地は拡大しているが、総じて現状のスタンスを維持する国が多いと予想

・ インフレ圧力の緩和や貿易収支改善により、その他アジア諸国の多くで原油価格下落による恩恵

・ しかし、①燃料補助金削減などによるインフレ圧力の高まり、②米国の金融緩和終了に伴う資金流出リスクなどを懸念して、インドネシア、マレーシアなどで金融引き締めモードが当面、継続見込み

○ 一方、景気減速懸念が高まっている韓国、タイ、成長率目標達成を掲げるベトナムは金融緩和策を実施する可能性

・既に韓国は8、10月に利下げ、ベトナムは10月に預金金利上限を引き下げ(1~6カ月未満のドン建て預金を6%から5.5%に)

中国を除くアジア: 金融政策は総じて現状維持が続く見込みだが、一部の国では緩和も

50

【 中国を除くアジアの消費者物価上昇率 】

(資料)各国統計、CEIC Data

【 中国を除くアジアの政策金利 】

(資料)各国統計、CEIC Data

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

13/01 13/04 13/07 13/10 14/01 14/04 14/07 14/10

フィリピン

マレーシア

韓国

(%)

(年/月末)

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Ⅲ.日本経済

51

~消費再増税を延期、景気は拡大へ~

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52

日本経済 ~ 消費再増税を延期。経済対策による消費支援もあり、景気は回復へ

○2014年7~9月期が2四半期連続のマイナス成長だったことを踏まえ、2015年10月の消費再増税

は2017年4月に延期されると想定。同時に、低所得者層や子育て世帯の支援策を盛り込んだ経

済対策が打たれると想定

○ 2014年10~12月期以降は、駆け込み需要の反動が一巡する中で、景気は緩やかな回復軌道

に戻る。雇用・所得環境の改善や資産効果の顕在化、低所得者層などへの財政支援を背景に、

個人消費の回復が続く。消費再増税の先送り決定も、低所得者層などのマインドを下支え。輸

出や設備投資の回復も続く。ただし、年度前半のマイナス成長が響き、2014年度成長率は

▲0.4%のマイナス成長になると予測

○2015年度は、春闘での更なる賃上げも追い風となり、個人消費が堅調に推移。輸出の回復や設

備投資の増加も続き、景気は拡大。2015年度の成長率は+2.5%と予測

○輸入物価ピークアウトの影響で、コアCPI前年比(消費税率引き上げの影響を除く)は2015年度

半ばまで1%割れ。2年で2%のインフレ目標は達成できない見込み。もっとも、2015年度はベア

が更に高まり、エネルギー価格等の影響を除く基調的なインフレ率は着実に改善

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53

○ 個人消費は低所得者層ほど停滞

・ 7~9月期の消費は前回増税時の97年に比べて全体的に回復の動きが鈍いが、特に低所得者層に弱さ

○ 夏場の消費下振れの背景には天候不順の影響も

・ 品目別の消費をみると、7・8月を中心に天候不順の影響を受けやすい品目の下押し寄与が拡大

(注)1.冷夏の影響を受けると考えられる品目の前年比寄与度分解。2.非耐久財以外は、耐久財、半耐久財、サービスの合計値。

(資料)日本銀行福岡支店「九州・沖縄の個人消費動向」、総務省「家計調査」より、みずほ総合研究所作成

【 年収階層別消費支出(二人以上世帯) 】 【 天候不順による消費落ち込み 】

(注)1.1996年Q4からの値は二人以上の世帯(農林漁業除く)ベース、1996年=100とした。2.2013年Q4からの値は二人以上の世帯(農林漁業含む)ベース、2013年=100とした。3.みずほ総合研究所による実質季節調整値。

(資料)総務省「家計調査」より、みずほ総合研究所作成

90

92

94

96

98

100

102

104

106

108

4Q1Q2Q3Q 4Q1Q2Q3Q 4Q1Q2Q3Q 4Q1Q2Q3Q 4Q1Q2Q3Q

第1分位 第2分位 第3分位 第4分位 第5分位

2013年Q4~2014年Q3

1996年Q4~1997年Q3

(基準年=100)

日本:低所得者層の消費回復が遅れ気味。天候不順も夏場の消費を下押し

▲ 10

▲ 8

▲ 6

▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8

1997/01 1997/05 1997/09

冷夏以外の影響

非耐久財以外

非耐久財

(前年比、%)

(年/月)

▲ 10

▲ 8

▲ 6

▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8

2014/01 2014/05 2014/09

(前年比、%)

(年/月)

7・8月を中心に

天候不順による

消費の落ち込み

がみられる

天候不順

の影響

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日本:消費関連指標の低迷は家計調査のサンプル要因も

○家計調査では3月からサンプル要因による下方バイアスが大きく働いている模様。家計調査は消費総合指数やGDP

ベースの個人消費を推計する基礎統計であるため、これらの統計が実態よりも押下げられている可能性

・ 家計調査ベースのデータは、所得、消費ともに他の統計から下方に乖離

・ 今後はサンプルの入れ替えが順次進むことで、下方の乖離は徐々に解消される見通し

54

94

95

96

97

98

99

100

101

102

103

2010 11 12 13 14

家計調査ベース(世帯主の勤め先収入)

毎月勤労統計ベース(名目賃金)

(2013年=100)

(年)

【 名目賃金の推移(家計調査と毎月勤労統計の比較) 】 【 実質消費の推移(家計調査と消費総合指数の比較)】

(注)みずほ総合研究所にて季節調整。

(資料)総務省などより、みずほ総合研究所作成

(注)家計調査ベースの消費はみずほ総合研究所にて世帯数要因を調整した

上で実質化・季節調整を行ったもの。

(資料)総務省、内閣府などより、みずほ総合研究所作成

80

85

90

95

100

105

110

115

2013 14

家計調査ベース(家計消費指数)

消費総合指数

(2013年=100)

(年)

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日本:賃金上昇が消費回復の支えに。弱さがみられる中小企業も今後は改善の見通し

○所定内給与は全体として増加傾向。個人消費の回復の支えとなる見込み

・ 30人規模以上の事業所では全体として所定内給与が増加。5~29人規模の事業所でもパートの時給は上昇

○ 中小企業の一般労働者は所定内給与が減少。パート時給の上昇や円安等に伴う燃料コスト増加が一般労働者の給与を圧迫。もっとも、今後は原油安による収益改善効果もあり、賃金は徐々に上昇

・ 中小企業では、1%の人件費増加は経常利益を4.8%Pt押し下げる試算結果

【 名目賃金(所定内給与) 】 【 人件費増加による企業収益への影響 】

55

(注)2014年6~8月平均。(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」より、みずほ総合研究所作成

(注)人件費が1%、2%、3%増加した場合の経常利益押し下げ幅と、経常利益のマイナス分を相殺できる売上高の増加幅を試算。ベースとなる売上高、変動費、固定費などは2013年度から変わらない前提。

(資料)財務省「法人企業統計」より、みずほ総合研究所作成

(単位:%Pt)

1% 2% 3%

▲ 1.4 ▲ 2.8 ▲ 4.2

経常利益のマイナスを

カバーできる売上増加幅0.5 1.1 1.6

1% 2% 3%

▲ 4.8 ▲ 9.7 ▲ 14.5

経常利益のマイナスを

カバーできる売上増加幅0.8 1.6 2.4

経常利益への影響

大企業人件費増加幅

中小企業人件費増加幅

経常利益への影響

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

平均 一般 パート

時給

平均 一般 パート

時給

5~29人 30人以上

(前年比、%)

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○ 鉱工業全体でみると在庫調整圧力は高くはないが、自動車などの耐久消費財では引き続き大きな調整圧力

○ 軽乗用車の在庫が高水準、調整に時間がかかる。他方、普通乗用車や小型乗用車の調整圧力は軽乗用車に比べ低い

・ 軽自動車では2015年4月の増税(軽自動車税)を前にした駆け込みで、在庫削減につながる見込み

56

日本:冬頃まで在庫調整の後、緩やかに回復へ

0

50

100

150

200

250

300

350

400

2012 13 14

軽乗用車

小型乗用車

普通乗用車

(2000年=100)

(年/月)

【 出荷・在庫バランス(鉱工業・耐久消費財) 】

(注)1.出荷在庫バランス=出荷前年比-在庫前年比。2.図中のシャドーは景気後退局面。

(資料)経済産業省「鉱工業指数」より、みずほ総合研究所作成

【 乗用車の在庫水準 】

(資料)経済産業省「鉱工業指数」より、みずほ総合研究所作成

▲ 60

▲ 50

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

50

2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14

鉱工業全体

耐久消費財

(出荷前年比-在庫前年比、%Pt)

改善

悪化

(年/四半期)

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57

日本:在庫調整に伴う雇用への悪影響の波及懸念は小さい

○製造業ではパート労働者の調整がみられるが、全体としては人手不足感が強まる中で雇用は堅調に増加

・ 生産調整に伴って、製造業のパート労働者数は弱含み

――― 2014年1月ピークの減産に伴い、製造業のパート労働者数も減少。足元では生産回復に伴い回復の兆し

・ サービス業では人手不足感の高まりが継続。2013年入り後は、パートに加えて一般労働者数も増加傾向に

【 製造業の生産と雇用者数 】 【 サービス業での人手不足感と雇用者数 】

(資料)経済産業省「鉱工業指数」、厚生労働省「毎月勤労統計」より、みずほ総合研究所作成

(注)雇用者数はみずほ総合研究所による季節調整値。(資料)日本銀行「企業短期経済観測調査」、厚生労働省「毎月勤労統計」

より、みずほ総合研究所作成

85

90

95

100

105

90

92

94

96

98

100

102

104

106

2012 13 14

生産

一般(右目盛)

パートタイム(右目盛)

(2010年=100) (2010年=100)

(年/月)90

95

100

105

110

115

120▲ 20

▲ 15

▲ 10

▲ 5

0

5

10

152010 11 12 13 14

雇用人員判断DI

一般(右目盛)

パート(右目盛)

(DI、過剰-不足) (2012年=100)

(年/四半期)

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Ⅳ.金融市場

58

~円安・株高が進む。長期金利の動きに注目~

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金融市場 ~緩やかな円安・株高・長期金利上昇がメインシナリオ

59

○ 金融市場では世界経済の下振れや地政学的リスクへの警戒感は残存するも、良好な需給

環境を背景に株式相場は底堅い地合いが続く見込み。2014年末から2015年にかけては、

先進国を中心とした景気回復と米国の利上げに対する警戒感が徐々に高まり、米国市場

を中心とした株高・債券安の展開を予想

○ 米国では2015年央の利上げ開始を予想。一方、日銀は物価目標達成のため2015年後半

に追加緩和を実施すると予想、ドル円相場は引き続き金融政策格差から円安が進展する

見込み。日本株は、内外経済の回復期待や為替の円安進行などを背景に上昇地合いを

見込む

○ 国内長期金利は、日銀の大量国債購入が金利変動を抑え、当面は上昇が抑制された展開。

その後は、株高・米金利上昇が進展していく中、徐々に国内金利にも上昇圧力がかかり、

緩やかな上昇基調を辿る見通し。ただし、財政規律への不安によって、良い金利上昇に悪

い金利上昇が加わるリスクも

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60

金融市場: 2015年度後半に、ドル円は120円台、日経平均は19,000円台を見込む

【 金融市場の予測(2014年11月) 】

(注) 網掛けは予測値。予測値は期中平均。但し、無担保コールO/N、FFレート、ECB主要政策金利は期末値。ユーロ円TIBORは360日ベース。スワップ5年は6カ月LIBORに対する固定金利払。為替相場はニューヨーク終値ベース。

(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成

2013 2014 2015 2016

年度 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3

日本

無担保コールO/N (末値、%) 0~0.1 0~0.1 0~0.1 0~0.1 0~0.1 0~0.1 0~0.1 0~0.1 0~0.1 0~0.1 0~0.1 0~0.1

ユーロ円TIBOR (3か月、%) 0.22 0.20 0.18 0.22 0.21 0.21 0.19 0.18 0.18 0.18 0.18 0.18

金利スワップ (5年、%) 0.40 0.30 0.46 0.33 0.31 0.26 0.28 0.35 0.40 0.50 0.45 0.50

新発国債 (10年、%) 0.69 0.56 0.75 0.63 0.60 0.53 0.53 0.60 0.65 0.80 0.75 0.80

日経平均株価 (円) 14,424 16,300 18,900 14,964 14,650 15,562 16,900 18,200 18,400 18,600 19,100 19,400

米国

FFレート (末値、%) 0~0.25 0~0.25 0.75~1.00 0~0.25 0~0.25 0~0.25 0~0.25 0~0.25 0~0.25 0.25~0.50 0.50~0.75 0.75~1.00

新発国債 (10年、%) 2.54 2.49 2.88 2.75 2.61 2.49 2.35 2.50 2.60 2.80 3.00 3.10

ダウ平均株価 (ドル) 15,542 17,100 18,100 16,170 16,604 16,954 17,100 17,700 17,900 18,000 18,100 18,300

ユーロ圏

ECB主要政策金利 (末値、%) 0.25 0.05 0.05 0.25 0.16 0.06 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05

ドイツ国債 (10年、%) 1.67 1.10 1.21 1.68 1.43 1.07 0.90 1.00 1.10 1.20 1.25 1.30

為替

ドル・円 (円/ドル) 100 109 119 103 102 104 113 117 118 119 121 121

ユーロ・ドル (ドル/ユーロ) 1.34 1.29 1.21 1.37 1.37 1.32 1.25 1.23 1.23 1.21 1.21 1.21

WTI原油先物価格 (ドル/バレル) 99 90 80 99 103 97 80 80 79 79 80 81

2014 2015

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61

金融市場:金余り状況が続く中、株式・債券相場とも底堅く推移

○日米欧の緩和的な金融政策を背景とした潤沢な投資資金を背景として、米国を中心に株式・債券相場とも底堅い展開

・ 世界経済の下振れ懸念からVIX指数は10月中旬に一時20を上回るも、上昇幅は限定的

・ 米国の利上げペースが緩やかとの見方や、日本、ユーロ圏の金融緩和強化が金融市場への資金流入を後押し

――― 基調としては、株高、債券高が継続

【 VIX指数の推移 】 【 グローバルな株・債券インデックスのパフォーマンス 】

▲8%

▲6%

▲4%

▲2%

0%

2%

4%

6%

8%

▲50%

▲40%

▲30%

▲20%

▲10%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

2008 09 10 11 12 13 14

世界株価指数(MSCI World Free、左目盛)

世界債券価格指数

(Citigroup WBGI、右目盛)

↑株高

株安

↑債券高

債券安↓

(6カ月前比) (6カ月前比)

(年)

(注)データは月中平均の6カ月前比。(資料)Morgan Stanley Capital International、Citigroup

(注) VIX指数:S&P500指数先物オプションのインプライド・ボラティリティ。投資家の不安心理を示すといわれる。

(資料) Bloomberg

0

10

20

30

40

50

60

70

80

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年)

(index)

2001

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62

金融市場:リスク資産への投資が抑制される動きも

○世界経済の減速懸念などを背景に、一部のリスク資産からは資金引揚げの動きも

・ 米国のハイイールド債スプレッドが拡大傾向にあるなど、ハイイールド債に向かう資金の流れに変化の兆し

・ 新興国市場やコモディティー市場にも弱含みの動き

――― 新興国通貨は総じて軟調地合い。足元で反発している新興国株も持ち直しは限定的

――― 6月に1バレル=107ドルだった原油先物(WTI)は、足元で70ドル台半ばの値動き

(資料)バークレーズ・キャピタル (注)直近週の名目実効ドルレートは、みずほ総研の推計値。それ以前はFRBの公表値。(資料)Datastream

【 新興国の株価と通貨(2014年) 】【 米国のハイイールド債スプレッド 】

( 米ハイイールド債インデックス利回り ‒ 米10年債利回り )96

97

98

99

100

101

102

103

10490

95

100

105

110

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

(2014/1/1=100) (2014/1/1=100)

(月)

新興国株(MSCIエマージング株価指数、左目盛)

名目実効ドルレート(対新興国通貨、右逆目盛)

新興国通貨高

(ドル安)←

新興国通貨安(ドル高)

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

5.5

6.0

6.5

7.0

12 13 14

(%pt)

(年)2012

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長期金利:低インフレと安全資産需要から、世界的に長期金利の上昇は抑制

63

○ 低インフレや、金融規制強化などに伴う安全資産需要などから、日米欧長期金利の上昇は限定的になる見込み

・ 欧米のインフレ期待(BEI)は、2%を下回る水準に低下

○ 日本国債は、日銀の国債買入れの拡大が金利上昇を抑え込むが、財政不安からの変動を内包

・ 国債買入れでは1年超5年以下、10年超が増額。全てのゾーンで最大買入れ額が市中発行額を上回る可能性

(兆円)

残存期間 市中発行額 追加緩和後 追加緩和前

1年超5年以下 5.4 3.0~7.2 3.0~4.2

5年超10年以下 2.4 2.4~3.6 2.4~3.6

10年超 1.9 0.65~2.0 0.65~1.75

合計 9.7 8~12 6~8

【 米欧のインフレ期待 】 【 日銀の国債買入れ計画 】

1.5

2.0

2.5

3.0

(%)

(年)

米国

欧州

(注)米国:10年BEI 欧州:インフレスワップ5年先5年。(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

(注)流動性供給入札、変動利付債、物価連動債を除く。(資料)日本銀行、財務省より、みずほ総合研究所作成

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64

為替:米為替政策の転換を受けて、ドル高局面が続くドル円相場

○円安ドル高の背景には、逆向きとなった日米の金融政策

・ ドル円相場は、インフレターゲットを掲げた大胆な金融緩和を公言していた安倍政権の誕生を控えた2012年秋から円安ドル高地合いに

・ 2013年からのQE3縮小が視野に入ると、円安ドル高に対する期待はさらに強固に

【 米国の為替政策とドル円相場 】

(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

0

50

100

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200

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350

400

49 53 57 61 65 69 73 77 81 85 89 93 97 01 05 09 13

(円/ドル)

(年)

①1949年~

GHQ、ドル円交換レートを

1ドル=360円に決定

②1971年8月

ニクソン・ショック

③1978年~

カーター政権ドル防衛策、

ボルカー・FRB議長による

インフレ対応高金利政策

④1985年9月

プラザ合意

⑤1995年~

ルービン財務長官による

ドル高政策

⑥2007年~

サブプライム問題顕現化、

ドル安転換

⑦2013年~

米国金融緩和縮小に

ドル安

ドル高

ドル安

ドル高 ドル安

ドル高

1949

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為替: 2015年も円安トレンドが継続

○日銀の追加緩和で一段と円安が進んだドル円相場は、2015年も米金利の上昇を見据えた円安ドル高地合い

・ 2015年後半に米国の利上げが実施される見通しであり、為替相場は世界的なドル高地合い

・ ドル円相場については、2015年に日銀の追加緩和を見込んでおり、更なる円安圧力に

○ 円高に転じるとすれば、ボラティリティが高まる中で、米景気の腰折れや日本のインフレ目標達成などといったケース

【 ドル円予測と日経平均 】

(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

【 ドル円相場の予測シナリオ 】

(資料)みずほ総合研究所作成

円高圧力

円安圧力

ドル安圧力 ドル高圧力

低下 米金利 上昇

景気腰折れ 米国経済 景気拡大

急速・大幅 欧州・新興国の減速 緩慢・小幅

上昇

円金利

低下

QQE終了

日銀

再・追加緩和

2%達成

インフレ率

2%未達成

円高ドル安 円安ドル高

QQE終了シナリオ円高ドル安

米腰折れシナリオ円高ドル安

メインシナリオ円安ドル高

米利上げ

QQE

ドル

QQE終了

ドル

QE4

ドル

2.5

2.0

1.5

1.0

0.5 70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

125

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

11 12 13 14 15 16

日経平均(左目盛)

日米金利差(10年債利回り、右目盛①)ドル円相場(右目盛②)

(円)

(年)

(円/ドル)①

(%pt)

実績 予測

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(ご参考)主要国の政治日程

66

11月 APEC首脳会議 4月 IMF・世銀春季総会 4月 IMF・世銀春季総会11月 G20首脳会合 5月 アジア開発銀行年次総会 8月 ブラジル夏季オリンピック開催12月 COP20 6月 G7首脳会議 9月中旬頃 国連総会

9月中旬頃 国連総会 10月 IMF・世銀総会10月 IMF・世銀総会 12月 COP2212月 COP21

米国 11月 中間選挙 3月 債務上限引上げ処置期限切れ 11月 大統領選挙

2月 ギリシャ大統領選挙 年内 アイルランド総選挙5月頃 英国総選挙 年内 ギリシャ総選挙10月頃 ポルトガル総選挙12月頃 スペイン総選挙

11月 2015年10月消費税率引き上げ延期確定? 4月 統一地方選挙 夏 参議院選挙12月 衆議院議員総選挙? 9月 自民党総裁選 12月 衆議院任期満了?

10月 消費税率引き上げ(8→10%)?

秋 中国5中全会 1月頃 台湾総統選挙年末 ASEAN経済共同体(AEC)発足 3月頃 中国全人代(第14次五カ年計画採択予定)

4月頃 韓国議会選挙5月頃 シンガポール議会選挙5月 フィリピン総選挙秋 オーストラリア上院下院選挙秋 中国6中全会年内 ベトナム共産党大会年内 インド上院選挙年内 タイ上院下院選挙

日本

アジア

2016年

国際

2014年(11月・12月) 2015年

欧州

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みずほ総合研究所 調査本部 武内

TEL :03-3591-1244