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コーポレートファイナンスと プロジェクトファイナンス

20140111 コーポレートファイナンスとプロジェクトファイナンス

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コーポレートファイナンスと  プロジェクトファイナンス

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下記3つの違いは何か?

•  企業価値?  

•  事業価値?  

•  株式時価総額?  

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価値とは何か?

3  

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Fundamental principles  of corporate finance

Companies create value by investing capital to generate future cash flow at rate of return that exceed their cost of capital. (P17)

4  

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Growth and ROIC:  Drives of Value

Return on investment capital

Revenue growth

Cash flow

Cost of of Capital

Value

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ガチョウクイズ

•  金の卵を確実に毎年1個生むガチョウがいます。  •  金の卵は1個1万円で売れます。  •  ガチョウは10年間生きます。  •  このガチョウをいくらで買いますか?  

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•  今10,000円をもらって一年間預金する。

仮に預金金利が5%とすると、

現在の10,000円は1年後10,500円になる。

    10,000×1.05=10,500

現在の1万円

1年後の1万円

金利5%(利息)

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8  

   では、一年後の1万円は今いくら? 

      金利は同じく5%ととする。

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         P(1年)×1.05=10,000                                       P(1年)=10,000÷1.05             P(1年)≒9523円      ということで、一年後の10,000円は         現在の9523円とほぼ等しくなる!!

1年後の1万円

金利5%

1年後の1万円を 今の価格に直すと??

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ということで、今の1万円と1年後の1万円は同じ1万円でも異なる価格となる。

もちろん、今の1万円と10年後の1万円も違う

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11  

同じように2年後の10,000円を計算してみる

P(2年)×1.05×1.05=10,000

2年後の1万円 2年間金利がつくので、 1.05を2回かける

2年後の1万円を 今の価格に直すと??

P(2年)≒9070円

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同じように3年後、4年後、5年後・・・10年後の1万円を計算すると

年後 将来貰うお金 現在の価値

1 10,000 9,524

2 10,000 9,070

3 10,000 8,638

4 10,000 8,227

5 10,000 7,835

6 10,000 7,462

7 10,000 7,107

8 10,000 6,768

9 10,000 6,446

10 10,000 6,139

合計 100,000 77,217

※金利は5%ととする。

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将来価値

(円)

現在価値

年後 割引率1% 5% 10% 20%

1年後 10,000 9,901 9,524 9,091 8,333

2年後 10,000 9,803 9,070 8,264 6,944

3年後 10,000 9,706 8,638 7,513 5,787

4年後 10,000 9,610 8,227 6,830 4,823

5年後 10,000 9,515 7,835 6,209 4,019

6年後 10,000 9,420 7,462 5,645 3,349

7年後 10,000 9,327 7,107 5,132 2,791

8年後 10,000 9,235 6,768 4,665 2,326

9年後 10,000 9,143 6,446 4,241 1,938

10年後 10,000 9,053 6,139 3,855 1,615

合計 100,000 94,713 77,217 61,446 41,925

将来価値と現在価値

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・金の卵を産むガチョウがいます。

・その卵を売れば、1万円で売ることが出来ます。

・ガチョウは無限に生き、卵を産み続けます。

このガチョウをいくらで買いますか??

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無限等比級数の応用

2005.01

05.11)

1.050.05(

1.051)

05.111(

1.051

1.051

1.05

11

1.0511

1.0511

1.051

1.051

11.05

111.05

111.05

11

)5%(05.0)(1

11)(1

11)(1

11)(1

11

432

432

432

==

=

=−

=×−

+×+×+×+=×

+×+×+×+×=

=

+×+×+×+×=

P

P

P

PP

P

P

rrr

xrr

P

①式-②式

  ②式 ・・・        

  ・・・  ①式       

と仮定するすなわちとするここで

・・・++++

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無限に卵を産むガチョウの値段を一般化すると・・・

rDP =

将来もらえる1年間の配当  (将来価値)

将来もらえるお金を 現在の価格に換算した金額 (現在価値)

金利(割引率)

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Cost  of  capital

Cash flow

Cost of of Capital

Value

Cashの時間価値、流動性、不確実性等を反映するもの

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以下のケースでは、  ガチョウをどのように計算しますか?

•  いつ死ぬかわからない場合は?  •  卵を定期的に生まない場合は?  •  途中でガチョウが盗まれるリスクは?  •  ガチョウがうむ卵の価値が、供給過剰により安くなっ

た場合は?  

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バランスシートから見る企業価値

・会計上の総資産と企業価値は違う。  ・バランスシート上の資産は現時点で、貨幣化できる価値  (過去の取り組みの結果)  ・企業価値は、将来キャッシュフローをいくら生むかが重要(未来志向)。  ・自己資本と株式時価総額は違う。  ⇒会計上の自己資本と株式時価総額の比率を示す物がPBR  

Asset

debt

Equity

•  資産は将来キャッシュフローを生み出す源泉  

•  将来生み出すであろうキャッシュフローを現在価値に直し

たものが事業価値。  

•  事業価値に、非営業資産(本

業と関係ない土地等)を加えたものが、企業価値

企業価値のうち、有利子負債を控除し、株主に帰属する価値分を市場価値で把握した物が、株式時価総額。

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複数事業を営む企業の企業価値

Unit A Unit B Unit C Corporate center

事業価値 非営業資産 企業価値 Value

of debt

Equity Value

Value  of  operaDng  units

200

     30 560

     125

200

     225

520

     40

360

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コーポレートファイナンスの罠  デットオーバーハング

•  優良なプロジェクトを持っている企業があるとする。  

•  しかし、当該企業が過剰債務を抱えている場合、新たにプロジェクトに取りかかったとしても、当該プロジェクトから生み出されるキャッシュフローは、既存の負債の元利払いの返済に充てられることとなる。  

•  優良なプロジェクトが存在したとしても、ファイナンスを受けれない状態が発生する。  

⇒デットオーバーハング

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様々なファイナンス

デットファイナンス 買収ファイナンス

不動産ファイナンス

エクイティファイナンス

コーポレートファイナンス

プロジェクトファイナンス

DIPファイナンス

未公開株

買収先の企業が生み出すキャッシュフロー

不動産が生み出すキャッシュフロー

企業が生み出すキャッシュフロー

特定の事業が生み出すキャッシュフロー

再生企業が生み出すキャッシュフロー

第三者割当増資

ファイナンスの類型 ファイナンスの源泉

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プロジェクトファイナンスの定義

•  特定のプロジェクト・事業に対するファイナンス(融資)であって、  

•  その融資の返済原資が基本的にそのプロジェクト・事業から生み出されるキャッシュフロー・収益金に限定され、  

•  かつ融資銀行の取得する担保も原則としてそのプロジェクト・事業の保有する物的資産や関連契約書に限定されるファイナンス手法。

井上義明(2011)「実践プロジェクトファイナンス」日経BP社

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プロジェクトファイナンスの特徴

•  ノンリコース/リミテッドリコース  

•  借主は特別目的会社(SPC)  

•  キャッシュフローレンディング  

•  コントラクチャル・ストラクチャー  

•  対象事業が多種で、案件所在国も多岐に亘る  

•  資源開発事業、電力事業、プラント事業等に向いている。

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プロジェクトファイナンスが利用される理由

借主(スポンサー)  の理由  

事業主(スポンサ−)の信用格付維持・向上

多額・長期の借り入れ

貸主(銀行)の理由

債務負担の軽減/リスクの分散

銀行による事業性再検証

複数スポンサーによる共同事業

収益機会の拡大  

ブランドイメージ向上  

顧客サービスの高度化・専門化・差別化

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プロジェクトファイナンスとコーポレートファイナンス

項目 プロジェクトファイナンス コーポレートファイナンス

借入人 SPC 既存会社

返済原資 プロジェクトから生み出されるキャッシュフロー

既存会社の全資産

既存会社への遡及 不遡及または限定遡及 借入人自体なので全責任を負う

担保対象 SPCの有する全資産、権利及び契約上の地位

既存会社の信用補完のため必要に応じて一定の資産

表明・保証 必須 通常は行われない

誓約 必須 通常は行われない

資金管理口座 融資金融機関にプロジェクト専用口座を開設し、口座管理規程によって管理される

既存会社の自由

保険 必須 なし

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再生可能エネルギーの固定価格買取制度

経済産業省資源エネルギー庁ホームページ  hNp://www.enecho.meD.go.jp/saiene/kaitori/

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2013年の買取価格と買取期間

(出所)資源エネルギー庁

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プロジェクトファイナンスのストラクチャー  (太陽光発電)

借入人SPC

Debt  (借入金)  

Equity

資産

銀行

電力会社

EPC事業者

スポンサー

O&M事業者

保険会社

出資

ローン

太陽光パネル会社

EPC契約

O&M契約

保険契約

電力需給契約  (FIT)

太陽光パネル購入

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  主要リスク 精査項目 主要リスク・コントロール表

1 プロジェクトスポンサー プロジェクト遂行能力 ・実績かつ信用力あるプロジェクト・スポンサーの参画・銀行等による信用補完や出資金の融資前払い込み・出資割合の維持やプロジェクト放棄禁止等の約定

2 完工 期日・予算内及び求められる能力でのプロジェクト完成

・実績かつ信用力あるEPCコントラクターの一括責任に基づく請負・lump sum、fixed price、full turn-keyのEPC契約と十分な機器保証や損害賠償・損害保険の付保

3 技術 長期安定操業が可能なプラント技術 ・商業運転実績のある実証済み技術の採用。

4 操業・保守 長期安定的な操業体制 ・実績かつ信用力あるオペレーターと長期運転保守契約・十分な保守点検を可能とする内部留保金・損害保険の付保

5 生産物・サービスの購入・引き取り 生産物・サービスの長期安定的な購入・取引先

・実績かつ信用力のあるオフテイカーとの長期販売・引取契約。・再生可能エネルギーの場合は、固定買取制度があるので、この点のリスクはほとんどないといえる

6 環境 自然・社会環境に対する影響 ・環境影響評価の実績及び環境許認可の取得等を通じた現地環境基準の遵守。・現地住民等ステークホルダーとの調整枠組構築

7 関連インフラストラクチャー/ユーティリティー

長期安定操業に必要な関連インフラストラクチャー/ユーティリティー

・関連インフラの政府・政府機関による整備義務の確保

8 ポリティカルリスク プロジェクトにかかる外国為替規制、法制・許認可変更、収用・接収・国有化、ストライキ、戦争等

・公的金融機関によるリスクカバー・ポリティカル・リスク保険等の損害保険

9 事故・災害 プロジェクトでの事故や火災・地震・台風等の災害

・実績かつ信用力のある国際的損害保険会社による付保

10 キャッシュフロー変動 借入金返済や配当を可能とする長期安定的なキャッシュフローの創出

・キャッシュフローと借入金の建値同一化・デリバティブによるヘッジ・cash sweep,clawback,deferal等によるキャッシュフローの安定化

リスク分散について

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契約書 例

契約書 契約者

優先貸付契約 銀行、SPC

契約上の地位譲渡予約契約 銀行、SPC

質権(譲渡担保)設定契約 銀行、SPC、スポンサー等

劣後貸付契約 スポンサー、SPC

債権者間合意書 銀行、SPC、スポンサー

スポンサー・サポート契約 銀行、SPC、スポンサー

プロジェクト関連契約 SPC、業務受託者

金利スワップ契約 銀行、SPC

株主間合意書 スポンサー間

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参考文献 【コーポレートファイナンス関連】 •  Brealey,Myers,Allen(2010)「Principles of Corporate Finance」MaGrawHill •  鈴木一功(2004)「企業価値評価 実践編」ダイヤモンド社 •  伊藤邦雄(2007)「ゼミナール企業価値評価」日本経済新聞社  •  保田隆明(2008)「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座―ビジネスの意思決定に役立つ財務戦略の基本」

ダイヤモンド社 •  森生明(2001)「MBAバリュエーション」日経BP社 •  森生明(2006)「会社の値段」ちくま新書 •  石野雄一(2005)「道具としてのファイナンス」日本実業出版社 •  石野雄一(2007)「ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 」光文社 •  砂川伸幸(2004)「コーポレートファイナンス入門」日経文庫 •  中沢恵・池田和明(1998)「キャッシュフロー経営入門」日経文庫  【プロジェクトファイナンス関連】 •  井上善明(2011)「実践プロジェクトファイナンス」日経BP •  加賀隆一編著(2007)「プロジェクトファイナンスの実務」きんざい •  杉本幸孝(2012)「PFIの法務と実務第2版」きんざい   【その他応用編】 •  笹山 幸嗣 ・ 村岡 香奈子(2008) 「M&Aファイナンス 」金融財政事情研究会 •  齊藤誠「金融技術の考え方・使い方―リスクと流動性の経済分析」有斐閣 •  内藤伸浩(2003)「アセット・ファイナンス-資産金融の理論と実践」ダイヤモンド社 •  磯崎哲也(2010)「起業のファイナンス」日本実業出版社