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様相論理一般 村上祐子 東北大学

様相論理一般2013

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様相論理一般

村上祐子

東北大学

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Lesson:歴史的観点から

• 発想の動機とその後の理論的位置づけが一致しなくてもかまわない

– 現代的視点から発想の動機を見ると意味不明であるかも知れないが、歴史的にはそう思ってはいけない

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中心的課題:論理とは何か

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様相論理

• 様相演算子を持つ論理

• 様相演算子:真理値表では解釈できない(ことがある)命題演算子

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様相演算子を適用したくなる例

• そんなことはない。

• そんなことは不可能だ。

• 昨日雨が降った。

• 次の場面では佐藤がコーヒーを飲んでいる。

• 先手必勝の局面だ。

• 宿題が終わったらおやつにしよう。

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先手必勝の局面だ

• 後手がどんな手を打っても、先手には適切な応手があって、そこでも先手必勝である。

• 「先手勝ち」状態に必ず到達できる(必至)

• Cf.ゲーム意味論、記述集合論

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様相の文脈性

• 局面ごとに命題を評価する

• この局面では成り立っていることが、他の局面では成立しないかもしれない

• 次の(ありうる)局面を俯瞰する必要がある

– ある事態が成立する局面に到達するにはどの手を打ったらいいのか?

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クリプキ意味論

• がさつな考え方:局面間の到達可能性関係を考える

• ところで局面って何?

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局面

• 二つの要素からなっている

– 前の評価点と後ろの評価点との関係からなる構造

– その評価点での世界のあり方

• 個別の局面で文の真理値が割り当てられている

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様相文

• 手はじめに1項の様相演算子□を持つ言語を考え、その解釈をみる。

• 言語:– Prop: 命題記号

– ∧:2項命題演算子

– ¬、□:1項命題演算子

• 文– p| p ∧q| ¬p|□p

• 省略記号:→、∨、◇

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クリプキフレーム

• 評価点間の構造にだけ着目

– 評価点の(空でない)集合 W

– 評価点の2項関係 R

• <W,R>

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フレームだけではなにもいえない

• 個別の評価点における世界の有り様の記述

– 命題記号に真理値を割り当てる

• 付値関数

– クリプキフレームF=<W,R>上の付値関数とは、関数 Prop×W→TruthValue である。

– (TruthValueとして当面のところ2値{1,0}を考える)

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クリプキモデル

• F: クリプキフレーム<W,R>

• v: F上の付値関数

のとき<F,v>=<W,R,v>をF上のクリプキモデルという。

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クリプキモデルでの様相言語解釈

• w |= p iff v(p,w)=1

• w |= A∧B iff w |= A かつw |= B

• w |= ¬A iff w |= A でない

• w |= □A iff Rwxであるすべてのxで x |= A

お絵かきタイム

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モデル妥当性とフレーム妥当性

• クリプキモデルM=<W,R,v>で文Aが妥当であるとは、Wのすべての元wで w |= Aのときにいう。

• クリプキフレームFで文Aが妥当であるとは、F上のすべてのクリプキモデルで文Aが妥当であるときにいう。

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三重の妥当性

• 付値関数はまだローカルな文脈相当。

• 構造も文脈のうち。

• 「論理」は文脈に依存しない。

– (変換に対して不変)

– 評価点の間の構造が論理に相当する。

• フレームのあつまり(一般にクラスになる)を考える必要がある

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フレームのクラスでの妥当性

• C:フレームのクラス

• Cで妥当 iff Cのすべてのフレームで妥当

• Cで妥当な文のすべてからなる集合をこれから考える。

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論理体系

• (様相)論理体系:様相文の集合で、

– AとBが入っていたら、A∧Bが入っている(連言について閉じている)。

– 命題論理について閉じている

• 例:クリプキフレームのクラスCで妥当な文のすべてからなる集合は論理体系になっている。

• 矛盾した論理体系:Aと¬Aの両方が入っている体系。

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論理体系と公理系

• 公理系:論理式と推論規則のセット

• 論理体系が公理系を持つとは、その公理系で演繹可能な文と論理体系が一致すること。

• 論理体系が(有限)公理化可能とは、有限個の論理式スキームと推論規則からなる公理系を持つこと。

• 自明な公理系(論理体系そのまんま)はつねに存在する

• 公理系と論理体系を同一視することがある

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論理体系と意味論

• ある意味論で妥当な式の集合と与えられた論理体系を比べる

• 一致していれば「完全」という

• 完全性証明でやること

1. 証明可能な式の妥当性を示す

2. 証明できない式が妥当ではないことを示す=その否定である整合的な式がモデルを持つことを示す

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クリプキフレーム全体のクラスと完全な論理体系の公理系K

• 古典命題論理の公理と推論規則(MP)

• □(A→B) → (□A→ □B)

• [必然化規則]Aが定理ならば□Aも定理である。

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フレーム全体のクラスの部分クラスC

• 問題:C妥当な文の集合は公理化可能か。

• 言い換えると、

AがC妥当 iff AはLの定理

• となるような論理体系Lは公理化可能か。

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Negative answer

• フレームのクラスならどれでも公理化可能というわけではないし、公理系が対応するクラスを持たないこともある

• Cf.

– van Benthem

– Companion of modal logic

– Handbook of modal logic

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Page 24: 様相論理一般2013

不完全な様相論理システムの例

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Page 25: 様相論理一般2013

General frame(一般フレーム)

• 「受容可能世界」を導入

• F=<W,R>上のモデルM=<F,v>によって生成される一般フレームとは<F,N>のことである。

• ただしN={|A|M:Aは様相文}

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Page 26: 様相論理一般2013

脇道:近傍意味論(Segerberg)

• 到達可能性ではなく、近傍を考える

• wの近傍:Wの部分集合

• N(w):wの近傍からなる集合

• w |=A iff |A|∈N(w)

(|A|:Aが真であるWの元の集合)

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Page 27: 様相論理一般2013

近傍意味論

• クラシカルな様相論理体系の意味論を与える

– A↔Bが定理ならば□A ↔ □Bも定理

• 近傍に条件を追加することでより強い論理の意味論を作ることができる

– レギュラーな様相論理

• A → Bが定理ならば□A →□B

– Upward closed

• これが代数意味論における単調性に相当する

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Page 28: 様相論理一般2013

一般フレームの受容可能世界

• 矛盾式については∅

• 定理についてはW

• その間の構造は?

• 当然のように整合的な式Aのモデルを構築できる(|A|はある意味あらかじめ一般フ

レームに含まれているので必ず反例を構成できる)

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Page 29: 様相論理一般2013

受容可能世界の構造→(有界)束

• 受容可能世界だけ抜き出したような感じのものが代数意味論

• 代数意味論のメリット:

– (ちゃんとした構造を作れれば)必ず完全:自明すぎて誰もやらない

• どんな構造を作るかがポイント

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