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星薬科大学広報委員会 〒142-8501 東京都品川区荏原2-4-41 TEL 03(3786)1011 ホームページアドレス(URL)http://www.hoshi.ac.jp/ Hoshi University 70平成21年7月31日 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 ・・・・・・・・・・・・・6 ・・・・・・・・・・・・・・・・8 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 ・・・・・・・・・・11 ・・・・・・・・・・11 ・・・・・・・・・12 ・・・・・・・・・・13 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 ・・・・・・・・16 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 平成21年度入学式 理事長式辞 平成21年度入学式 学長告辞 新任のご挨拶 定年退職にあたり 平成21年度大谷記念研究助成金を受領して 第3回ラクトフェリンフォーラム賞を受賞して 星薬科大学公開講座 CBTルームの完成について 空地整備について 創立100周年記念事業のための募金について 新学生ホール(仮称)の建設について(第2報) ドイツ研究振興協会・日本代表部の代表者来学 吉永小百合さん主演映画の撮影協力について 教室紹介 新任教職員紹介 第94回薬剤師国家試験大学別合格率ランキング 大学通信 最新サークルだより クラブ紹介 薬草園だより ◯新学生ホール(仮称)完成予想図

2009年7月発刊 第70号

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Page 1: 2009年7月発刊 第70号

星薬科大学広報委員会〒142-8501 東京都品川区荏原2-4-41 TEL 03(3786)1011ホームページアドレス(URL)http://www.hoshi.ac.jp/

H o s h i U n i v e r s i t y

第70号平成21年7月31日

目 

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平成21年度入学式 理事長式辞

平成21年度入学式 学長告辞

新任のご挨拶

定年退職にあたり

平成21年度大谷記念研究助成金を受領して

第3回ラクトフェリンフォーラム賞を受賞して

星薬科大学公開講座

CBTルームの完成について

空地整備について

創立100周年記念事業のための募金について

新学生ホール(仮称)の建設について(第2報)

ドイツ研究振興協会・日本代表部の代表者来学

吉永小百合さん主演映画の撮影協力について

教室紹介

新任教職員紹介

第94回薬剤師国家試験大学別合格率ランキング

大学通信

最新サークルだより

クラブ紹介

薬草園だより

◯新学生ホール(仮称)完成予想図

Page 2: 2009年7月発刊 第70号

星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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学校法人星薬科大学 理事長

大 谷 卓 男

 308名の新入生の皆様、入学おめでとうございます。また、大学院修士課程に進まれる95名の方、博士課程に行かれる13名の方、新たなステップを踏まれるということに、心よりお祝い申し上げます。また、ご父母の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。 きょうは大変お天気が良くて、そして桜も満開ということで、自然も皆さんを「本当に良かったね。」と祝福しているように思います。桜並木と言いますと、たぶん十数年前も、満開の中をお父さまお母さまに手を引かれて小学校の入学式へ行かれたと思います。きょうはぜひ新入生の皆さんはご両親に「ありがとう。」と、

「おかげで大学に入ったよ。」と、もう一度話して下さいね。 さて皆さん、星薬科大学に入学するのは本当に難しいです。よく頑張って勉強されたと思います。本当におめでとうございます。しかし、皆さんが入学したということは、残念ながら同じように志望しても入れなかったという人もいるわけですから、是非是非その方たちの分も頑張って、これからも勉強して下さいね。 明治44年に創設者星一先生が創ったのが、この星薬科大学です。星一先生というのは、今、学長の話にもありましたけれども製薬会社を経営しておりました。それからまた政治家も務めていました。そして教育家でもあったということで、社会に大変尽くされた方です。そして教育というのは、会社をやるにしても先ず教育ということで、「世界の、社会のお役に立てる人材をこの学校から出していくのだ!」ということで創られたのが、この星薬科大学でございます。 皆さんは、パンフレットその他でご覧になられたと

思いますが、本学の建学の精神は、「世界に奉仕する人材育成の揺籃(ようらん)である」ということです。必ず覚えておいて下さい。 星一先生が教育の場で学生に期待したことはたくさんありまして、その中に「志を持ちなさい」ということ、「志のあるところに道があり」ということを言われています。 学長の告辞にもありましたけれども、これから世の中を創っていくのは若い皆さんです。医療の現場で、皆さんの中から新しい薬を創るという方も出てくると思います。星薬科大学は大変歴史がありまして、現在、たくさんの先輩方が社会で活躍しています。ぜひ今日入学された皆さんも、必ず社会の役に立てる、役に立つのだという志を持って日々を過ごして頂きたいです。 大学における新たなステップとして、一日一日と色々なこと、新しいことに出会いがあります。その中で、こんなことも勉強するの、これは難しいな、これならできる、あるいは、新しい友人、新しい先生方と出会うわけですが、皆さんの人生にとって一つ一つが財産になります。ぜひそれを感謝の心で受け止めて日々を過ごして下さい。 私の好きな言葉に「時を活かす」という言葉があるのですが、一日一日あるいは一時一時、これは本当に刻まれるのです。誰にでも公平に刻まれるのです。その中で、何もしなくても進む時間、それから一生懸命頑張っている間に進む時間もあります。是非大切な人生を、時を活かして一日一日を頑張って下さいね。 重ねて申し上げますが、皆さんが頑張ってきたことは本当に素晴らしいことです。おめでとうございます。ただ皆さんはこれからも社会のお役に立たなければいけないのです。是非これからも頑張って勉強して下さい。そして人生を大切に!時を大切に!これからの時代を皆様方が創って行くこと、良い国を創って行くこと!を切に期待しております。是非頑張って下さい。おめでとうございます。 また、ご父兄の皆様、重ねてお祝い申し上げます。私どもは新入生の皆さんを心より歓迎致します。また、大学院に進学される方も一層の努力、頑張りを持って、星薬科大学に誇りを持って、次のステップに進んで頂きたく願います。 皆様に心よりお祝いを申し上げ、私からの式辞とさせて頂きます。ありがとうございます。

(平成21年4月6日に本館メインホールで行われた入学式に

おける理事長式辞をテープ起こししたものを元に掲載)

平成21年度入学式 理事長式辞

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星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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学長

中 嶋 暉 躬

 新しく星薬科大学に入学された皆さん、ならびに大学院に進学された皆さんを迎えるにあたり、こころからおめでとうと申しあげます。 本日ここに、ご来賓、ならびにご父兄ご参列のもとに、平成21年度入学式を挙行できますことは、慶びにたえないところでございます。教職員一同を代表してこころからのお祝いと歓迎の意を表する次第です。 皆さんはこれまでの永い努力が実を結んで、みごとに栄冠を勝ち取られ、これから始まろうとする新しい大学生活に向かって希望に胸をふくらませておられることとおもいます。私どもも、未来の薬学関連社会を担う人、あるいは、薬剤師として今後の日本の医療を担う人、更には、将来わが国発の医薬品創生に携わる人々の活躍を大いに期待しているところです。 薬科大学は医療、医薬を通じて社会のお役に立つ人々を世に送り出す指名を持った教育研究機関です。とくに本学は製薬企業から発した数少ない薬科大学で、創設者星一先生の社会奉仕の精神「疾病で悩む人々に健康を与え、幸福と平和をもたらす人材を養成したい」との理念のもとに、創設以来間もなく100年になる輝かしい歴史と伝統を持つ大学であります。本学のこのような土壌にはぐくまれた人材は、今日、薬学、薬業の多分野において幅広い活躍をしておられます。 さて、フレッシュマンの皆さんはこれからクスリについていろいろなことを学ばれ、この分野のプロになられるわけです。クスリというのはどんな薬をみても世に出るまで長いサイエンスの物語をもった物質であります。開発当初には「これはよい薬だ」と思われていても、市販されてから予期しない有害な副作用のため

消えていった物質は数え切れません。いま使われている医薬品にしても使い方を誤れば必ず有害な副作用がでます。薬剤師を目指して薬学科に入学された方はもちろん、新しいクスリを創る側の創薬科学科に入学された方も、クスリを学ぶ人はこのことを肝に銘じておいてください。 医薬に携わるものの使命はクスリの創製、開発、生産、管理にあるといいます。すなわち、まず、新規な薬理作用をもった医薬品のたまごを新しく、発明すること、これを医薬品の創製といいます。この医薬品のたまごは動物実験で作用が確かめられた段階ですので、ヒトに使えるかどうかわかりません。つぎに、人に使えるかどうか長い年月をかけて臨床の試験をします。これを医薬品の開発といいます。同時にこの医薬品を大勢の人にいつでも使ってもらえるように工業的に大量に生産できる方法をつくりだします。これらをすべてクリアーして厚労省に認可申請をして許可を受け、はじめて医薬品として認められます。それでも、このような新薬を含めて、すべてのクスリを適切に管理することは薬剤師にとって大事な職務です。繰り返しますが医薬品は使い方を間違えれば副作用がでます。 皆さん方は高校時代には、化学、物理、生物のように縦割りの授業を受けてきたと思います。大学でも勿論このような基礎科目はありますが、薬学のカリキュラムをご覧になれば一目瞭然ですが、例えば、「薬の作用と生体内運命」、「薬になる天然資源」、などのように、いままで習ってきた科目が相互に繋がった講義がたくさんでてきます。このように薬学の勉強は集約されたサイエンスを学ぶことになります。 皆さん方は今日から薬について人から頼られる立場に一歩踏み込んだことになります。「クスリとの関わりを終生持つことによって、人の健康、ひいては命を救う薬剤師になる」、あるいは、「将来すばらしい医薬品を世に出してやる」という決意を新たにして勉学に励んでいただきたいと願っております。 皆さん方の今後のご健闘を期待しつつ、学長からのお祝いのことばとさせていただきます。

平成21年度入学式 学長告辞

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星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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 本年4月1日より、薬動学教室の

講師として赴任いたしました。私

は明治薬科大学の薬学部を卒業し

て、静岡県立大学大学院研究科(薬

学修士)を取得した後、生体内での

細胞間のシグナル伝達に興味を引

かれました。興味を持ったシグナ

ル伝達の研究を行っているところ

を求めて、東京医科歯科大学の医

学系研究科(博士課程)に入学し、

サイトカインのシグナル伝達の研

究に参画させてもらいました。こ

れまでとは、まったく違った環境下での、自分の知らない

分野での研究は厳しいこともありましたが、とても新鮮で

したし、興味をもって研究生活を行っていたので、大変、

充実した大学院生生活を送っていました。その後、熊本大

学大学院医学系研究科(博士課程)へ転入学し、学位を取得

しました。学位取得後、熊本大学大学院医学系研究科(助

手)、名古屋大学大学院医学系研究科(助教)、理化学研究所

(研究員)として、いろいろな大学や研究機関に所属し、薬

学部に限らず、医学部、理学部など違った分野の学生、教

官、医師と接しながら、教育や研究の場に身を投じてきま

した。

 私の研究は、大学時代の培養微生物のからの酵素精製に

始まり、糖脂質の解析、動物細胞の培養、サイトカイン刺

激による神経幹細胞の分化、神経幹細胞の転写制御、ノッ

クアウトマウスを用いた遺伝子解析へと、研究をするにつ

れ自分の興味を移しながら、いろいろな環境下で研究を

行ってきました。私の主な研究テーマは分子発生生物学で

すが、近年の分子生物学のめざましい発展に伴い、研究を

するうえで、治療薬としての薬剤ではなく研究解析ツール

として、薬剤が応用されていることに気付かされました。

一部の抗がん剤は研究環境では抗がん剤としてではなく、

分子生物学的に非常に有用な研究ツールとして使われてい

ます。このように治療薬としての薬ではなく、研究ツール

としての薬物の様々な働き、活用法などを盛り込んで学生

に教えることができればと考えています。

 今後これらの経験を活かし、薬学とは共同研究すること

が少なかった領域とも積極的に連携して、社会や医療に少

しでも貢献できるような研究を展開していきたいと思いま

す。また、これらの研究を行う中で、科学的な思考のでき

る薬剤師や研究者の育成に努めたいと考えております。ま

だまだ若輩ものですが、ご指導、ご鞭撻の程を賜りますよ

う、心よりお願い申しあげます。

薬動学教室講師

落 合  和

 本年4月1日より、実務教育研究

部門の講師として就任致しまし

た。昭和62年本学卒業後、東京大

学医学部附属病院研修生を経て、

同病院に8年間勤務しました。主に

調剤 ・ 製剤業務を行い、毎年入部

する研修生の指導、全自動散剤秤

量分割包装機の開発、散剤調剤工

程におけるフェイルセーフシステ

ムの確立、坐薬途中排出時におけ

る血中薬物動態の変化などの研究

を行いました。研修生入部当初、

何故大学では、調剤に携わっていない先生が調剤学を教え

ているのかと、当時の薬剤部長に理不尽に怒られ、悔しい

思いをしました。しかし現在のようにマニュアルやテキス

トは殆どなく、人の技術を見て自分のものにせよという無

言の抑圧があり、必死になったものです。流れ作業のよう

に調剤薬をただ順番にお渡ししていた時代も終わり、受

動的ではなく、能動的な薬の説明が重要視されるようにな

り、新外来棟の建設と共に、お薬相談室が設置されました。

相談室での経験を積むに伴い、街の調剤薬局において患者

さんと接したいという思いが強まり、病院を退職し、中央

区日本橋の調剤薬局に8年間、埼玉県自宅近隣の調剤薬局

にて3年勤務致しました。病院と異なり、調剤薬局では、患

者さんがそこを選んで来局して頂き、処方せんを持参して

いただかないと何も始まりません。調剤方法などは病院時

代と何も変わりありませんが、多種多様な処方せんへの対

応、OTC医薬品 ・ サプリメントなどの知識、経営への関

心も必須です。1万種類以上もある薬価収載品を全て在庫

することは不可能であり、2000品目近くの在庫でも、週に

幾度も対応できないことがあります。患者さんの信頼を得

て、その後も継続して来局して頂くには、個々のニーズが

それぞれ異なるため、確実にそれに答えていくことが重要

です。その見極めの根底にあるものは、星一先生が掲げら

れた『親切第一』ではないかと思います。白衣を纏ってい

ても、結局は人と人とのつながりです。気持ちだけでは伝

わりませんし、実践していくためには、自己研鑽も必須で

す。思いやりの精神があり、かつ配慮がゆきとどいている

こと、言うのは簡単ですが、全ての患者さんに対し、着実

に実践していくことこそが重要であると考えています。教

育現場と医療現場とのパイプ役である実務教育部門におい

て、親切第一を現場において実践できる学生を育成できる

よう、全力をあげて取組んでいく所存です。どうぞ、ご指

導の程宜しくお願い申し上げます。

実務教育研究部門講師

田 中 嘉 一

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星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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 皆様のお蔭で、無事定年を迎えることができました。心から感謝申し上げます。最終講義と懇親会、退任記念パーティー、退任慰労会を企画主催頂いた皆様には格別お世話になりました。また、これらの退任事業に御協力していただいた皆様に御礼申し上げます。4月から日本薬科大学教授として、臨床検査

学を担当、前期は主に国試対策の講義、後期には4年生に講義する予定です。同時に熊谷市内の埼玉栄養専門学校非常勤講師として生理学と病理学を担当し、薬剤師と栄養士の育成のために、残りの人生を教育に尽くし意義あるものにしたいと思います。 振り返りますと、今迄は恵まれた、教育・研究生活でした。すなわち、学生時代には緒方指導グループや先生の主催された、他大学との共同の量子化学セミナーへの参加、石川先生と山下先生の指導の下、カルノシンなど生理活性ペプチドの研究、東京薬科大学大学院時代新延先生と森先生の指導の下、骨コラーゲン代謝異常とカルシトニンの作用の研究、東京大学薬学部鶴藤先生の指導の下、骨代謝の研究、東北大学医学部福地先生の指導の下、アンギオテンシンとアルドステロンのRIAの研究、企業との共同研究(ヨード卵の生理活性、ビタミンKの抗動脈硬化作用、宮古島産ビデンスピローサの抗アレルギー作用等)、さらに、エラスチン研究会で伊藤先生、岡本先生、多

 今年の桜の開花は早かった。桜が散る頃、定年退職の辞令を頂いたが、実感が湧かないまま、はや2 ヶ月経って、葉桜の茂る頃になっても、念願だった「サンデー毎日」の優雅な日々はまだ始まっていない。「平凡な日々を大切に過ごす」目標はどこへやら、あっという間に時間が過ぎてゆく。この調子で41年間も

あっという間に過ごしてしまったのかと焦る毎日である。65歳定年はシンドイことだろうと思っていたが、実際の感覚としては60歳ぐらい、もう一仕事やれるような気力と体力が残っていることは有難い。大学教員は毎年入れ替わる二十歳前後の人たちと時には時代の流れを感じながらも、自分の年を棚上げにして一緒になって過ごせる素晴らしい職業だったと今にして思う。先輩風を吹かせて話す幾ばくかの生きる知恵が後輩の役に立っていると勝手に思いながらも、実は溢れるような元気と明るさをもらっていたのである。卒業後2年間は放医研(科学技術庁・放射線医学総合研究所)の薬学部で「放射線障害防護薬」の開発研究に関わらせて頂いた。ここで留学経験の多い第一線の研究者や女性研究者達から研究と家庭のバランス、男女平等、自由、権利など前向きな生き方を教わった。縁あって直属上司で先輩の篠田雅人先生に突然、星

島先生との共同研究と、どれも想い出深く印象に残ります。また、東京薬科大学時代からの縁で参加した、菅家先生主催の鉢山セミナーは研究や大学生活の指針になり、この集大成として、「食安全の科学」の出版ができましたことは、喜びにたえません。学生とのふれあいでは、指導グループ対抗運動会、GACの合宿、御殿場でのフレッシュマンカンファレンス及び卒論コンパ等、生涯の良き想い出となりました。 粕谷学長、南原学長時代には星薬大の教育 ・ 研究の飛躍の時代であった感があります。粕谷先生の指導で医療人としての薬剤師教育を目標にカリキュラムを改正したこと。南原先生の指導の下、星山荘に泊り込み、星薬の将来像を話し合い、都市型の大学像を描き、教育 ・ 研究の中心となる新星館の建設が完成した経過が懐かしく想い出されます。新たにフロンティア、ハイテクリサーチと大型研究費の下、共同研究が進められ、研究成果も上げることができました。中嶋学長は4年制と6年制を共有する、星薬の特徴を生かすように力説され、今後更に、母校は研究心のある卒業生の揺籃となると確信いたします。偏差値の高い、資質の豊かな星薬の学生に対し高度で適切な教育が、成されることにより、ますます個性溢れる有能な卒業生を輩出していくであろうと期待します。2011年には創立100周年を迎える伝統ある星薬科大学の更なる発展を祈願いたしますと共に、母校を去るに当たり、教職員各位、卒業生各位、在学生各位に改めて深く感謝申し上げます。有難うございました。(合掌) (臨床化学教室前教授)

名誉教授 瀬 山 義 幸

薬の大学院設立に伴い、教授就任の話があり、請われて一緒に大学に戻った。何もない実験室からのスタートで放医研の研究が継続できるとは夢にも思わなかったが、幸運にも後にライフワークとなるまで続けられた。 生化学教室に29年在籍する間には多くの助手さん、院生、卒論生と一緒に放医研でもできないような人海戦術の必要な大規模な実験を続けることができた。膨大な報文はお世話になった共同実験者の方々の功績である。生物学研究室を立ち上げてからは一人天下で多忙を極めたが、他教室の方々との交流が深まり、学外での活動も増えて他分野の他大学の先生、著名な弁護士さん達に助けられ、啓蒙され、セクハラ防止、現教職員の任期制導入反対など閉鎖的になりがちな大学に小さいながら風穴をあけることができたと思っている。 内気、シャイ、緊張型、お節介焼き、頑固な性格が研究、教育に向いていたかどうかはわからない。しかし、常に誠実に全力投球をしてきたつもりである。私の生涯の大部分を占めた大学の生活は「様々な角度からのものの見方」、

「ぶれない心」、「真心」を教えてくれた。これほど多くの人に交われる職業に出会わなかったら、今日の自分はいなかったと思う。ここまで育てて頂いたことに感謝したい。そして寛大な心で接し、見守ってくださった多くの皆様に心よりお礼を申し上げます。本学の発展を念じながら。

(生物学研究室前教授)

名誉教授 太 田 節 子

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 この度、大谷記念研究助成金を賜りましたこと、大

谷卓男理事長ならびに中嶋暉躬学長、東山公男運営委

員長を始めとする運営委員の先生方に厚く御礼申し上

げます。

  抗癌剤により治療効果を示さない難治性の癌に

対する新たな治療法として遺伝子治療が期待されてい

ます。癌遺伝子治療には、治療用遺伝子を癌細胞内に

送達するための遺伝子ベクターが必要不可欠でありま

す。これまで遺伝子ベクターとして導入効率の高いウ

イルスベクターが多く使用されてきましたが、免疫応

答の惹起や白血病の発症などの副作用から、現在、安

全性の高い非ウイルス性の遺伝子ベクターの開発が望

まれています。

創剤構築研究室 准教授

服部 喜之

「脂質ナノ粒子を用いた癌遺伝子治療法の開発」

 正電荷脂質から構成されるリポソームなどの脂質ナ

ノ粒子は、安全性は高いものの遺伝子導入効率が低い

という欠点があります。そこで本研究において、遺伝

子導入効率が高く安全な脂質ナノ粒子製剤の開発を試

みました。様々な正電荷脂質や脂質組成により調製し

たナノ粒子製剤を用いて癌遺伝子導入効率を調べたと

ころ、正電荷コレステロール誘導体から構成されるナ

ノ粒子製剤が癌細胞に高い遺伝子発現を誘導できるこ

とを見出しました。そして、このナノ粒子製剤を用い

て癌抑制遺伝子を担癌マウスの腫瘍内に投与すること

により高い治療効果を得ることに成功しております。

 近年、新しい遺伝子治療の手段として、短鎖2本鎖

RNAを細胞内に導入することにより配列特異的な

mRNAの分解を誘導するRNA干渉を利用した治療法

が提案されています。現在、高効率に治療用短鎖2本

鎖RNAの送達が可能な新規な脂質ナノ粒子製剤の開

発を試みております。また、非ウイルス性遺伝子ベク

ターによる多くの遺伝子治療は、前立腺癌やメラノー

マなど局所投与可能な腫瘍に対するものであることか

ら、今後は静脈内投与で腫瘍内に遺伝子を送達できる

脂質ナノ粒子製剤の開発を目指して研究を進めたいと

考えております。

 この度は大谷記念研究助成金を賜りまして誠にあり

がとうございました、大谷卓男理事長、中嶋暉躬学長、

運営委員長を務めておられます東山公男教授並びに運

営委員の各先生方に厚く御礼を申し上げます。

 皮膚の一番表面には「角層」とよばれる厚さ僅か10ミ

クロン程度の薄い膜が存在し、生体を脱水や異物侵入

薬剤学教室 助教

小幡 誉子

「経皮吸収型製剤の開発と製剤成分の作用機構解明」

から保護しています。角層は、ケラチンに富んだ死細

胞である角層細胞を角層細胞間脂質が取り囲んだ形を

していて、これはレンガ̶モルタル構造といわれてい

ます。モルタルに相当する部分は、その一部が構造化

して規則正しい配列、すなわちラメラ構造をつくって

いますが、これが皮膚のバリア能の物理的な本体と考

えられています。

 薬物を皮膚から体内へと送達する「経皮吸収型製剤」

は従来の注射や経口投与に比べて多くの利点がありま

す。しかしながら、角層細胞間脂質のバリア能によっ

て、通常の状態では治療上有効量の薬物を皮膚から体

内へと供給することは困難です。そこで、このバリア

能を一時的かつ可逆的に改変して薬物透過を容易にす

る物質を製剤成分とすることで、薬物皮膚透過性を改

善する手法が注目されています。たとえば -メントー

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 大谷記念研究助成金は、故大谷孝吉名誉理事長より本学に寄せられた奨学寄付金を基に、本学の研究振興に資する目的で1998(平成10)年に制定されました。助成金は、学内外の評価に耐えうる優秀な研究業績をあげた者又はあげる可能性のある者を対象として授与する研究奨励金と、若手研究者の学外との研究交流に対する助成から成ります。受領者は、三科長および教授の代表1名、准教授 ・ 講師の代表2名からなる研究助成金運営委員会において応募者より選考されます。平成10年度から平成21年度まで毎年2~4名に授与されています。

 このたび、大谷記念研究助成金を賜りまして誠にあ

りごとうございました。大谷卓男理事長ならびに中島

暉躬学長に深く感謝致します。また、東山公男運営委

員長をはじめとする運営委員の先生方に厚く御礼申し

上げます。

 バセドウ病(Graves’ disease: GD)は臓器特異的自己

免疫疾患であり、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)

に対する自己抗体の産生が病因となって発症します。

TSAbと呼ばれるこの自己抗体は、TSHRへの結合を

介して持続的な甲状腺ホルモンの産生を促してしま

う為、甲状腺機能亢進症が引き起こされます。GDの

代表的な症状はび慢性甲状腺腫、頻脈、眼球突出であ

り、多汗、振戦、全身倦怠感の他、続発性の骨粗鬆症

を伴うことも知られています。薬物療法を含めた治療

法は概ね確立されてはいますが、根源的な病因である

TSAbの産生機序については明らかではありません。

病態生理学教室 助教

金田 利夫

「モデルマウスを用いたバセドウ病発症機序と病態の解析」

このようなTSAbの産生機序を解析する場合、既に発

症しているGD患者のTSAbを解析するよりも、TSAb

の産生誘導が可能な動物モデルが有効であると考えら

れます。しかしながらGDモデルマウスの歴史は浅く、

“発症率が高く、病態が長期に持続し、なおかつ誘導方

法が簡便で安全”といった理想的なモデルは存在しま

せんでした。

 そこで、我々はin vivo electroporationという遺伝子

導入法によりTSHRの遺伝子免疫を試み、新しいGDモ

デルマウスを確立しました。同モデルマウスの発症率

は、現存するモデルの中で最も高発症率とされるアデ

ノウイルスベクターを用いた方法と同等以上(>80%)

であり、従来のモデルにない特長として病態が最長で

一年以上持続します。

 現在、我々は、このGDモデルマウスおよびその発症

誘導法を利用して、TSAbの産生に関して抗原認識に

必要な配列や立体構造について解析を行っています。

また、これまで動物モデルによって検討されていな

かった抗甲状腺薬の薬理学的な解析や、GDに付随し

ておこる続発性の骨粗鬆症についても調べており、新

たな知見が得られています。

 今回のモデルマウスの確立と今後のさらなる検討に

より、GDの発症機序や治療法について有益な情報提

供ができるように努力してゆきたいと思います。

ルは食品や医薬品に繁用される化合物ですが、薬物

の経皮吸収を促進する物質として知られています。で

は、なぜ -メントールが薬物の経皮吸収を促進するの

でしょうか?この疑問を解決するために多くの研究が

行われてきましたが、決定的な解答は得られていませ

ん。この理由が明らかになれば、類似作用をもつ化合

物を製剤成分として配合することで、より効果的な経

皮吸収型製剤の開発が可能になります。そこで製剤開

発の基礎検討と併せて、角層細胞間脂質と -メントー

ルの相互作用を分子レベルで調べる実験に着手してい

ます。このような実験で得られる結果は、経皮吸収型

製剤に限らず皮膚表面に適用する化粧料の開発にも応

用できることから、間接的に医薬品業界以外からの注

目度も高い研究となっています。現在までのところ、

最新の知見として -メントールが角層細胞間脂質の特

定の構造に働きかけて液晶へと導く現象を見出しまし

た。世界最高性能の放射光施設での実験や科学の粋を

集めて開発された最新測定機器の利用を通じて新しい

製剤開発に挑戦し、大谷記念研究助成金の名に恥じな

い研究を展開していきたいと考えています。

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の処理で有意に促進しました。

③Lfによる細胞内情報伝達経路の

関与

 近年では、Lfに対する特異的な

受容体(LfR)の発現が新生児の小

腸、成人心臓、リンパ球、肝臓な

どで報告されています。その遺伝

子発現を検討したところ、表皮細

胞においてLfR mRNA発現が確

認されましたが、線維芽細胞においてその発現は確認され

ませんでした。細胞増殖には細胞分裂中、結果として有糸

分裂活性が生じ、細胞遊走には空間的分極、基質への付着、

遊走による直接的な細胞膜への重合が要求されるという事

実からも説明することはできますが、LfRの発現の違いか

らも細胞種によるLfの反応性の違いが生じた可能性が考え

られました。次に、Lfによる細胞増殖・遊走に関係する細

胞内情報伝達が、どのような経路を介しているのかを調べ

た結果、LfはPKCとERK1/2を介して、細胞種特異的に細

胞の増殖・遊走を促進することが明らかとなりました。

④LfによるMMP-9発現調節

 組織に異常が生じたとき、ECMのバランスが崩れMMP

や内在性阻害因子(TIMP)の発現に変化が生じます。創傷

治癒においてはMMP活性の上昇によって血管新生が促進

されることから、組織修復のためにMMPの活性上昇が必

要であると考えられています。Lfは細胞種特異的な細胞

増殖作用 ・ 遊走作用を示し、創傷治癒に効果をもたらす

可能性が示唆されました。そこで、基底膜の主要成分㈿型

コラーゲンを分解する作用をもつMMP-2とMMP-9に注目

し、Lf刺激によるMMPの発現変動を検討しました。その

結果、HKCではLfの処理により、濃度依存的なMMP-9の

発現上昇が認められました。

 これらのことから、Lfは抗菌作用、抗炎症作用に加え、

表皮細胞の細胞増殖 ・ 遊走およびMMP-9発現の亢進を介

した創傷治癒促進作用が認められました。糖尿病性皮膚潰

瘍に対してはb-FGF製剤であるフィブラストスプレーを用

いる事が有効な治療法であると考えられていますが、Lf

は、フィブラストスプレーとの併用も可能であり、より速

やかな治癒をもたらす薬物として糖尿病性皮膚潰瘍の治療

向上に期待されます。今回の受賞は、多くの先生方にご指

導頂き、共同研究として精力的に研究を推進して下さった

臨床化学教室のスタッフ、院生、卒論生の皆様のご支援に

よるものであり、心より厚く感謝申し上げます。

 この度、平成20年11月30日、学術総合センター(一橋記

念講堂)で開催された第3回ラクトフェリンフォーラムにて

ラクトフェリンフォーラム賞を受賞しました。「ラクトフェ

リンフォーラム賞」は、ラクトフェリン研究者の育成 ・ 研

究奨励を目的に設けられたものであり、ラクトフェリンの

基礎および臨床応用に寄与するとともに、将来の発展を期

待した賞であります。以下に、受賞対象発表となりました

「糖尿病誘発マウスにおけるlactoferrin(Lf)の創傷治癒促

進効果」に至った経緯についてご紹介させて頂きます。

①糖尿病誘発マウスにおけるLfの創傷面積縮小促進と

MMP-9発現亢進作用

 Streptozotocin (STZ; 250 mg/kg)を静脈内投与後3週間

飼育し、糖尿病を誘発したマウスの背部皮膚に皮下組織に

至る直径6mmの円形の開放創を作製しました。この背部

にLf (10w/w%)を塗布することで、対照群に比べ創傷面積

の縮小が有意に促進され

る事を確認しました。ま

た、創傷治癒に重要とさ

れる細胞外マトリック

スの代謝に関わる酵素

であるMMP-9の発現を

Gelatin zymographyお

よびRT-PCRによって検

討した結果、Lfの塗布に

よりMMP-9の有意な発

現亢進が認められまし

た。

②Lfの細胞増殖および細胞遊走作用

 皮膚組織は傷や感染など外界刺激からのバリアであり、

受傷時には迅速な回復が要求されます。受傷により、受傷

部位では血小板の凝集、血管収縮による止血がなされ、仮

のマトリックスにより傷が覆われる。続いて壊死組織の除

去、肉芽形成、血管新生が起こります。酵素などでマトリッ

クスが分解されるとともに、表皮細胞・繊維芽細胞の遊走

とそれに伴う細胞増殖、結合組織の増殖などにより新しい

皮膚へとおきかわり、この過程が絡み合い、また様々な増

殖因子・成長因子などのサイトカインが関与して創傷治癒

が起こります。そこで、正常ヒト表皮角化細胞(HKC)と正

常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF-Neo)を用い、細胞増殖・遊

走に対するLfの影響を検討しました。HKCにおいて、Lfの

添加により、細胞増殖作用が認められ、最大で約1.4倍まで

増加しましたが、NHDF-Neoにおいては、Lfによる細胞増

殖促進作用は認められませんでした。そこで、HKCにおけ

る細胞遊走促進作用を検討したところ、Lf (0.5 mg/mL)

第3回ラクトフェリンフォーラム賞を受賞して臨床化学教室 准教授 輪千 浩史

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星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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 平成21年5月15日(金)に東京大学大

学院医学系研究糖尿病 ・ 代謝内科の

教授である門脇孝先生に、星薬科大

学公開講座として「糖尿病・メタボの

仕組みとその予防 ・ 治療-健康な生

活と新しい薬の開発-」と題してご講

演をいただいた。100名の品川区民の

方々をはじめ、約900名の学部、大学

院学生、教職員、さらに同窓生が参加

し、盛大な講演会となりました。

 演者の門脇先生は昭和53年(1978

年)に東京大学医学部を卒業され、東

京大学第三内科糖尿病グループに所

属後、米国国立保健研究所(NIH)糖尿病部門客員研究

員などを経て、平成8年(1996年)に東京大学第三内科

講師、さらに平成13年(2001年)に東京大学大学院医

学系研究科糖尿病・代謝内科助教授、さらに平成15年

(2003年)より東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代

謝内科教授になられております。また、平成17年(2005

年)東京大学医学部附属病院副病院長を務められてい

るとともに、社団法人日本糖尿病学会理事長の要職に

就かれております。御専門は糖尿病・肥満の成因と治

療で、主な研究テーマは2型糖尿病、インスリン抵抗

性、脂肪細胞の分子生物学であり、糖尿病研究の世界

的な指導者の一人と言われており、生活習慣を原因と

する2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症の

専門医として有名です。また、主な著書として、『あな

たがメタボになる理由?「肥満遺伝子」が日本人を太ら

せる』(PHP、2008)や「驚異の脂肪細胞」(『科学』78 :

652-660、2008)など多数執筆されております。

 一般に、糖尿病やメタボリックシンドロームは、放

置をすると血管を障害し、心筋梗塞や脳卒中、腎不全

の原因になることが明らかにされています。本邦にお

いては、肥満、特に内臓脂肪が増加しており、その結

果、糖尿病患者の爆発的な増加が起こっています。こ

「先端科学創造シンポジウム」講演会シリーズ13

東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科教授 門脇 孝 先生

糖尿病・メタボの仕組みとその予防・治療 ~健康な生活習慣と新しい薬の開発~

の原因はエネルギーの過剰摂取によ

るものと考えられていますが、根底

には生活習慣の欧米化があり、食生

活のみならず、すべての生活様式が、

エネルギーを消費せずに過ごせるよ

うに変化したことにあります。また、

欧米人と日本人の間には、代謝性疾

患に対する罹患の危険度が異なって

おり、その原因として、遺伝的要因

が強く影響している可能性も示唆さ

れています。これは、欧米人がインス

リンを必要とする生活である狩猟を

中心とした生活様式を太古の昔より

行っているため、インスリンをより多く分泌する体質

を長い時をかけて獲得しているのに対し、アジア人は

農耕を中心としており、インスリンを必要とする生活

様式への変換が最近であり、インスリンの分泌が追い

つかず、肥満の程度が低い場合でも糖尿病になりやす

いためであることが示唆されています。また、摂食や

エネルギー調節を行う多くの因子も発見されており、

レプチンやアディポネクチンは今後肥満や糖尿病の治

療に大きく関与すると推察されています。さらに、本

講演では、健康的に生きるための多くの生活上留意す

る点の紹介もありました。また、門脇教授がリーダー

となり行われているグローバルCOEでは、医学系のみ

ならず薬学系の研究者も含めた生命科学の複合的な研

究が融合して展開されており、病態解明から画期的創

薬を一貫して包括できる新しいメディカルサイエンス

の道を切り開くことができるように思いました。糖尿

病・肥満の一般的な知識から研究の内容・方向性まで

の広範囲な内容を拝聴することができ、本学の学生や

教員、品川区民までの幅広い聴衆に対して非常に有意

義なものでした。

 [文責:大澤匡弘(薬物治療学教室)、亀井淳三(公開

講座等企画委員長)]

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  平 成21年 度 か ら

「薬学共用試験」が本

格実施されることに

なり、薬学6年制の4

年生が受験すること

になります。この試

験に合格しないと、

5年次の実務実習に

行くことはできません。「薬学共用試験」は、「知識及び問題

解決能力を評価する客観試験(CBT)」と「技能 ・ 態度を評

価する客観的臨床能力試験(OSCE)」の2種類に分けられま

す。CBTは、薬学共用試験センターから送られる問題をコ

ンピュータ(PC)のモニター上で、マウスの操作だけで解

答するものです。

 薬学共用試験センターの規定で、CBTは2日間以内に実

施しなければなりません。薬学科の学生260名が対象にな

るわけですが、現有の学生コンピュータ室の60台のPCだけ

では不足で、新しいPC室が必要となります。そこで、昨年

度、新星館3階の旧情報科学教室の第1~3研究室の壁を取

り除き、さらに旧サーバー室の半分を加えて、174m2(7.25

m×24m)の部屋が「CBTルーム」として新設されました。

「CBTルーム」には、学生用PCが86台、教員用PCが1台設置

され、その他の設備として、2台の液晶プロジェクターと

 近年、マスコミや学会等で学生の体力不足、運動不足及

び早期の生活習慣病予備軍化が指摘されていますように、

運動機会の不足、運動習慣の欠如や汗をかく活動を敬遠す

る等の傾向が本学においても見受けられるようになりまし

た。

 本学には、以前、新星館建設前にグランドがあり、体育

実技やクラブ活動を屋外で行うことができました。

 しかし、唯一フリースペースとして自由開放されていた

旧2号館跡地も新学生ホール(仮称)の建設工事が始まり、

この場所でのスポーツや休息等ができなくなり、屋外での

一般学生の運動機会が完全に失われることになりました。

 このような状況のため、体育実技受講生や一部の運動系

クラブより、簡単な練習が出来るスペースを設けてもらい

たいとの要望が出され、学生部としても、まずはハード面

の環境整備を整える必要性があるのではないかとの結論に

達しました。

 このような中、学生に若いうちに身体を動かす習慣を

つけてもらい、長い生涯に渡って運動に親しむ基礎習慣を

養ってもらいたいとの希望が高まってきました。そこで、

学生部と体育学研究室で、体育実技、クラブの練習、レク

リエーション利用ができるように空地を整備して欲しい旨

要望をして参りました。

 今回、整備されたグランドは、旧グランドの一部で、新

星館、体育館及び第二新館に囲まれた場所にあって、約800

m2程度の広さしかありませんが、都心の本学に残された貴

重な空地を球技やランニング等で身体を動かして汗を流す

には、十分なスペースと言えるでしょう。この場所で、ク

ラブの練習、スポーツやレクリエーションを行ない、クラ

ブ活動の基礎体力を養うことやリフレッシュした気分で講

義、実習及び研究等に望み、新鮮な発想力を養って、物事

に当たってもらうことが出来ればと思います。

 この度、財政事情が厳しい中このような要望を受け入れ

て整備して頂いた大学当局に感謝致しますとともに、施設

が数多く利用され、学生に対する福利厚生の一環になるこ

とを希望します。

空地整備について 学生部 課長補佐 市川眞純

CBTルームの完成について 薬剤師教育研究部門長 細川友和

映写スクリーン、マイク設備等が整えられています。

 「CBTルーム」の完成により、学生を2グループに分け、

「CBTルーム」と「学生コンピュータ室」の計146台のPCを用

いて、2日間でCBTを実施することが可能になりました。

 「CBTルーム」のPCには、CBT並びに薬剤師国家試験の

ために、学生が自習、演習をPCで行うことができる「薬学

教育PC支援システム」のソフトも導入されており、ハード

及びソフト両面での準備が整えられました。これにより、

「CBTルーム」は4年次のCBT対策のみでなく、2年次の基

礎薬学演習、5年次・6年次の薬剤師国家試験のための自習・

課題演習等に、年間を通して活用できることになります。

モデル薬局 学生コンピュータ室

CBTルーム

301講義室

302講義室

医療薬学第2実習室

医療薬学第1実習室

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 本学は、創立者星一によって1911年(明治44年)に創立さ

れ、2011年(平成23年)に創立100周年を迎えます。

 本学では、この記念すべき節目を迎えるに当たり、学内

に設置した創立100周年記念事業委員会で検討してまいり

ました次の3つの事業を中心とする計画が理事会において

承認され、実施することになりました。

(1)100周年記念新学生ホール(仮称)の建設

平成18年4月から始まった薬学教育(薬学科)6年制移行

による収容定員の増加(1,640名、従来の1.5倍)に伴う学

生の福利厚生施設の充実及び整備

(2)星薬科大学奨学金制度の充実

星薬科大学奨学基金を創設し、既に実施している「星薬

科大学奨学金制度」及び「学生表彰規程に基づく特待生

(特別奨学生)制度」等の充実

 平成20年9月30日発行の星薬

科大学報第68号に建設開始前

の経緯をお知らせしましたの

で、今回は工事開始から現在

(平成21年6月19日)までの工事

の進捗状況をお知らせします。

 昨年末に工事開始に必須な「確認済証」を予定通り受領す

ることができました。建築業界を揺るがした建築強度偽装

問題に端を発した建築確認の厳格化により、予定通りに建

築許可を受領出来るかが一つの関門でしたが、関係者のご

尽力により予定通り認可され、平成21年1月に建設が始ま

りました。

 現在、建物躯体の工事が進んでいます。2階の立ち上げ

部分と3階の床に相当する部分の型枠にコンクリート注入

が完了しました。工事の進捗は当初予定より若干遅れてい

ますが、全体工程から勘案すると問題はありません。

 工事はまず、基礎杭施工から始まり、続いて基礎部分の

型枠工事、それに続くコンクリート注入が行われました。

 その後の建物本体の工事は基本的にはこの繰り返しで、

基礎部分の上に1階の立ち上がり部分と2階の床に相当する

部分の型枠工事が行われ、続いてコンクリート注入が行わ

れました。

 今後、3階の立ち上がり部分と屋上部分の型枠工事が行

われ、続いてコンクリート注入が行われる予定です。

 今回、行われた2階の立ち上げ部分と3階の床に相当する

部分のコンクリート注入完了後に1階部分の型枠、支柱を

撤去し、1階の内装工事が始まります。

 まだ外部を安全シートが覆っているために外観等建設途

中の状況を外部からは窺い知れませんが、着々と建設が進

行していることをお知らせして、今回の報告とします。

 工事完了まで皆様のご協力をお願い致します。

新学生ホール(仮称)の建設について (第2報) 事務局長 小池康夫

(3)星薬科大学歴史資料館の整備

本学が所有する貴重な歴史的資料を整理充実し、本学

の学生、卒業生、ご父母、受験生、地域住民等本学へ来

訪される方々にもご覧いただける「星薬科大学歴史資料

館」として整備

 本学では、記念すべき本事業を実施するにあたり、広く

本学の関係各位のご理解ご支援を得て推進するため、寄附

金募集の事業を行うこととなりました。

○寄附金募集目標

3億円

○寄附金募集事業実施者

星薬科大学創立100周年記念事業募金委員会

○問合せ先

星薬科大学総務部 TEL.03-3786-1011(代表)

創立100周年記念事業のための募金について 総務部長 木戸達雄

平面図の詳細につきましては、本学HPをご覧下さい。(http://www.hoshi.ac.jp/home/100thAnniversary/souritu100.html)

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星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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フリードリヒ・エーベルト大統領は、ノーベル賞受賞者で

星一基金委員会委員長でもあったフリッツ・ハーバー博士

(空中窒素固定法を発明)を特使として本学に派遣し、星先

生の資金援助に対し深く感謝の意を表しています。

 第一次世界大戦後、90年を経た今でも、ドイツ科学界で

は感謝の念を持って星先生の名前が語り継がれており、星

先生の日独関係への貢献の大きさを改めて認識させられま

した。ヴィーツォレック代表は、「DFGは星先生に大変感謝

しています。星先生の寄付がなければ、援助を受けられな

かった研究分野がいくつもあったでしょうし、DFGが現

在のような組織に発展するのにも、もっと時間がかかった

であろうと思われます。」と語っていました。DFG日本代

表部の開設を機に、星先生も念願されていた日独の学術交

流が一層推進されるとともに、日独親善に尽くされた星先

生の貢献がドイツばかりでなく広く一般に再認識されるこ

とを願ってやみません。 (総務部 佐藤史朗)

中嶋学長とヴィーツォレック代表

ドイツ研究振興協会・日本代表部の代表者来学について

星一先生とフリッツ・ハーバー博士(右端)(1924年来校)

 ドイツ研究振興協会(Deutsche Forschungsgemein-

schaft;DFG)・日本代表部のイリス・ヴィーツォレック代

表が本学創立者星一先生のドイツ化学界に対する援助へ感

謝の意を表するため、本年2009年5月12日(火)に来学され

ました。また、来訪に先立ち、DFG日本代表部の開設記念

式典が4月15日(水)にドイツ文化会館(港区赤坂)で開催さ

れ、中嶋暉躬学長の代理として河村太郎理事が出席しまし

た。記念式典の冒頭で、DFGのマティアス・クライナー会

長は、星先生の貢献について心を込めて紹介されました。

 DFGは、星先生が活躍されていた時代にはドイツ学術相

扶会と呼称されており、日本でいえば「日本学術振興会」に

相当しています。現在、ドイツ連邦政府・州政府からの公

的資金(約13億ユーロ/年)により運営され、学術研究の振

興・助成を担うドイツ最大の公的機関です。今年4月に、日

独両国の学術共同研究推進を目的として、上述したように

あらたに日本代表部が開設されました。

 ヴィーツォレック代表は、中嶋学長を訪問した後、本

館にある星一記念室を見学されました。記念室では、星先

生の実業家、政治家、教育者など多方面にわたる活躍を背

景とした数多くのゆかりの品を展示しています。その中

には、ドイツとの交流に関する品も多数あり、ヴィーツォ

レック代表は、興味深くご覧になっていました。

 星先生は、第一次世界大戦(1914 ~ 1918)の敗戦で困窮

していたドイツ化学界に対して、日本がドイツ化学界から

多くのことを学んだことへの恩返しのため、巨額の資金援

助を行いました。自宅を抵当に入れてまで送金を続け、そ

の総額は200万マルク(現在の邦貨に換算して約20億円に相

当)以上にも及びました。その資金により、星一基金が創設

され、基金による援助を受けた研究者から3人のノーベル

賞受賞者が輩出されるなど、多くの研究者の活路を開きま

した。本学の大講堂(現在の本館)が完成した際、ドイツの1924年にドイツ学術相扶会(Notgemeinschaft der Deutschen Wissenschaft)より贈られた「栄光のトロフィー」(星一記念室展示)

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 吉永小百合さん主演、山田洋次監督の映画「おとうと」

(制作・松竹株式会社)の撮影が、平成21年1月22日(木)と2

月8日(日)の二度にわたって本学で行われました。銀杏並

木の美しいキャンパスであることが、本学が撮影場所に選

ばれた理由の一つだそうで、昨年秋には、その黄葉した銀

杏並木の撮影も行われています。

 映画は、作家・幸田文の同名小説を基にした山田監督の

10年ぶりの現代劇で、東京の郊外で薬剤師として堅実に生

きてきた姉と、大阪で芸人に憧れ、いつしか年齢を重ねて

しまった傍若無人の弟の再会と別れを涙と笑いで描いた作

品です。姉の役を演じるのが吉永さん、弟役が笑福亭鶴瓶

さんです。

 日本の医療の根幹を支える重要な役割を持つにもかか

わらず、一般には縁の下の力持ち的で地味と見なされがち

な職能ゆえ、テレビや映画の表舞台には登場することのな

かった薬剤師が、このような大作に主人公として登場する

ことは日本の薬学にとっても無意味なことではないという

観点から、本学としては全面的に撮影に協力することにし

ました。

 撮影に先立ち、昨年12月には、吉永さんと松竹のスタッ

フ等数名が来学しました。当日は4つの薬学専門講義を各

10分程見学の後、現在の薬学教育や薬剤師の現状につい

て、実務教育研究部門長・杉山清教授、同部門・櫻井正太

郎教授から約1時間にわたって説明を受けました。専門外

にもかかわらず、役作りのため熱心に講義を見学する吉永

さんの真剣な表情は特に印象的でした。

 1月の撮影は本館2階第1ホールで卒後教育講演会の受講

シーン、2月は新星館アトリウムで大学病院の喫茶室にお

ける会話シーンという設定で行われました。いずれもワン

シーンの撮影でしたが、スタッフは約50名、早朝から準備

が始まり撮影は10時から16時までと長時間に及びました。

卒後教育講演会のシーンでは松竹からエキストラの協力

依頼があり、吉永さん以外の聴講生の役は本学の先生方と

同窓生約40名、講師の役は辻勉教授が務めました。辻教授

の役はセリフを伴うもので、一応台本はありましたが、「講

師のジョークで受講生がドッと笑う」という大まかなもの

だったため、講演内容は辻先生が助監督と打ち合わせを

しながら考えました。演技は小学校の学芸会以来という辻

先生には相当大変な撮影だったようで、何度もの撮り直し

に、吉永さんから「大丈夫、出来ますよ」と励まされるほほ

えましい場面も見受けられました。撮影された膨大なフィ

ルムから多くの編集段階を経て映画は完成するので、ここ

でのシーンが実際にどの程度使われるのかは不明ですが、

このようなエピソードを念頭に置いて映画をご覧下さい。

 長い拘束時間でしたが、参加者にとっては、本格的な映

画撮影の裏側が見られる貴重な機会でもあり、特に、山田

監督の数少ない指示で、その意図を的確に把握してしまう

熟達スタッフの統制のとれた役割分担のもと、無駄なく鮮

やかに次々と仕事が進行していく様子は新鮮な驚きであっ

たようです。先生の1人は冗談交じりに「研究もこういう風

に進行してくれれば・・・」と漏らしていました。

 なお、薬剤師の役ではありませんが、吉永さんが10代の

頃に主演した映画の撮影にも本学が使われたそうです。昭

和39年公開の「こんにちは、20歳」(日活)で、本館前、メイ

ンホール、また今回の撮影でも使用された第1ホール等が

映っています。吉永さん自身も撮影のことは記憶になく、

それを聞いて驚かれたそうです。

 映画の公開は、来年(2010年)1月が予定されています。

本学関係者のみならず、多くの方に見ていただければと思

います。

(文責:総務部 佐藤史朗、広報委員長 福井哲也)

吉永小百合さん主演映画の撮影協力について

(C)2010「おとうと」製作委員会2010年1月全国ロードショー

左、下:本館第1ホールにおける撮影風景

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 星薬科大学薬理学教室は戦後まもない昭和22年

に開講し、数多い日本の薬科大学でも2番目に伝統

のある薬理学教室です。平成21年度現在の薬理学教

室は、三澤美和教授、千葉義彦准教授、酒井寛泰助

教の3名の教員と大学院生9名(博士課程2名、修士課

程7名)、客員教授1名、客員講師1名、大学院専攻生1

名、卒論生17名の計32名で構成されています。中国

からの留学生も含まれます。

 当教室の主たる研究は、気道における薬理学的研

究です。現在、アレルギー性気管支喘息の特徴であ

る気道過敏性およびアレルギー性鼻炎患者に発症

する鼻粘膜過敏性について研究しております。抗原

を用いて実験動物に感作、吸入チャレンジすること

によりこれらの疾患のモデル動物を作製しました。

また慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関する研究も軌道

に乗り、タバコ主流煙を用いたモデル動物において

気道過敏性が発症していることも見いだしました。

こうした呼吸器疾患モデルにおいて薬理学、生化学

的アプローチに加え、分子生物学的アプローチでの

タンパク質、mRNAおよびDNAレベルでの分子薬

理学的知見を通じてその病態解明をめざし、病気に

悩む患者を強く意識しつつ臨床現場に還元できる

ような新薬開発に向けての研究に取り組んでいま

す。研究成果の学会発表数は約900報に及んでいま

す。

教…室…紹…介…

 研究以外での当教室の特徴として、教室員全員が

参加できる行事が多いことが挙げられます。お花見

(4月上旬)、卒論生セミナー(5月)、卒論旅行(8月)、

薬理学実習(10・11月)、餅つき大会(12月)、星一先

生墓前祭(1月)、スキー旅行(2月)、教室セミナー後

のバレーボール(毎週)、国際学会での発表等、こん

なに多彩な行事を行う研究室も少ないのではない

でしょうか。こうして教室員は日々愉しみながら自

分の任務をたゆまず遂行しています。また、当教室

では同窓会活動も活発で、毎年教室同窓会主催の講

演会や和やかな懇親会が行われています。広い世代

の卒業生の参加が多数あり、その会にあわせて『薬

理同窓』誌を発刊し、卒業した先輩達に一年間を通

した教室、星薬大、卒業生の活動やニュース等を報

告し記録しております。今年度で第32号の発刊にな

ります。

 三澤教授は就任以来、薬理学教室の理念に「社会

と患者に奉仕する人格、実力、情熱の3Jに満ちあふ

れた魅力ある薬剤師を育成する」を掲げて、研究と

教育に情熱をささげています。先生の学生教育はど

の大学にも例を見ない厳しくもすぐれた展開がな

されているといわれています。本学創立者星一先生

の精神が色濃く漂っている教室ということができ

ます。

前列、左から6人目 千葉准教授、三澤教授、酒井助教

Page 15: 2009年7月発刊 第70号

星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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星薬科大学報第70号(平成21年7月)

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教…室…紹…介…

前から2列目、右から6人目 鈴木教授、葛巻助教、成田准教授

 薬品毒性学教室は、鈴木勉教授、成田年准教授、

私(葛巻直子:助教)、客員講師2名、大学院生20名、

卒論生15名、研究生・研修生・専攻生19名を含んだ

総勢61名で構成された活気あふれる教室です。教室

員には大学病院の医局より派遣された医師(大学院

生)をはじめ各病院の薬剤師ら、医療現場の先生方

も多く含まれています。

 当教室での研究は、基礎研究と医療の架け橋とな

る研究(トランスレーショナルリサーチ)に重点が

置かれています。研究テーマは、脳内報酬機構や不

安・ストレスなどの情動発現機構の機能解剖学的

解析、fMRIをはじめとする画像解析システムを用

いた痛みの可視化と緩和医療を見据えた包括的基

礎研究、ゲノム異常やエピジェネティック異常によ

る精神疾患発現機構の解析、神経発達・老化機構の

解析、さらには再生医療を見据えた幹細胞(iPS, ES,

NSC)研究などをはじめ、種々の疾患における脳内

ネットワークの変化の解明に主眼を置いています。

本教室では、年間平均論文(原著および総説)は52.4

報、年間平均学会発表109回を数え、多くの実績を

残しています(平成13年から17年までの星薬科大学

実績集計より)。特に国際原著論文(年平均19報)に

関しては年間平均トータルインパクトファクター

が62.6(平成15年から19年)と非常に高い値を示し、

各論文の引用回数も高く、国際的に高い評価を得

ています。教室員は各学会の学術奨励賞、優秀発表

賞、優秀論文賞ならびにトラベルアワードをこれま

でに数多く受賞しています。こうした本教室の成果

は、各種新聞をはじめNHK教育テレビのサイエン

スZEROや米国紙ニューヨークタイムズにも取り上

げられました。

 また、当教室の共同研究は強固なネットワーク

を持っており、エピジェネティクス(晩発的遺伝子

修飾)研究の日本のリーダー的存在である国立がん

センター発がん研究部、緩和医療の中心である同

センターがん患者病態生理研究部、iPS/ES細胞研

究の拠点である京都大学再生医科学研究所附属幹

細胞医学研究センターや慶応義塾大学医学部生理

学教室などと共に研究を進めています。海外におい

ては、米国ロックフェラー大学(ニューヨーク)、マ

ウントサイナイ大学(ニューヨーク)、コモンウエ

ルス大学(バージニア)、ウイスコンシン医科大学、

NIDA(米国国立薬物乱用研究所、メリーランド)

などとも共同研究を行っています。

 研究室は朝から夜中まで活気あふれており、ま

た、イベントも多く、スポーツなども積極的に行っ

ています。研究ばかりではなく、個々の思考力、英

語力をはじめ体力、芸術性などの向上にも重点を

置く、「都会的センス」を身に付けることにも力を注

ぐユニークでエレガントな教育が特徴です。昨年で

当教室も10周年を迎え、充実して参りました。今後

も、教室員一同、科学の進歩に挑戦し、最先端のエ

ビデンスを提供できるよう邁進して参ります。

(文責 薬品毒性学教室 葛巻直子)

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新任教職員紹介 新任教職員紹介

朝あ さ と

戸めぐみ薬物治療学教室 助手

 4月より薬物治療学教室の助手に着任致しました。一つ一つのことを着実に、何事に対しても全力で取り組んでいきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

第94回薬剤師国家試験 大学別合格率ランキング(新卒者) 薬剤師を養成する4年制課程における最後の薬剤師国家試験となる第94回薬剤師国家試験において、本学の合格率(新卒者)が『全国61大学中第2位』、『関東20大学中第1位』になりました。

平成21年4月3日厚生労働省医薬食品局 発表

順位 大学名 合格率 受験者数(名) 合格者数(名)

1 (私)九州保健福祉大学 97.06% 102 99

2 (私)星薬科大学 96.97% 264 256

3 (私)愛知学院大学 96.21% 132 127

4 (私)崇城大学 94.96% 119 113

5 (私)大阪薬科大学 94.83% 290 275

6 (私)広島国際大学 94.17% 120 113

7 (私)就実大学 93.70% 127 119

8 (私)同志社女子大学 92.97% 128 119

9 (私)北海道医療大学 92.68% 123 114

10 (私)昭和大学 92.49% 173 160

11 (私)武蔵野大学 92.39% 92 85

12 (私)神戸薬科大学 92.19% 256 236

13 (私)名城大学 91.80% 305 280

14 (私)金城学院大学 91.41% 163 149

15 (私)明治薬科大学 91.20% 375 342

16 (私)日本大学 91.19% 227 207

17 (私)東京薬科大学 90.68% 397 360

18 (私)摂南大学 90.28% 216 195

19 (国)千葉大学 89.87% 79 71

20 (私)東北薬科大学 89.72% 360 323

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●水泳部 我々水泳部はテスト期間を除く5月から8月のおよそ3ヶ

月間活動をしています。練習日は火曜日と金曜日の週2回

です。部員は以前からやってきている経験者、大学から始

めた初心者と様々であり、その人に合わせたメニューをこ

なしています。今年度は、医療分野を学ぶ学生のための東

日本医歯薬看護学生水泳大会にて、男子リレーにおいて上

位入賞という結果を出しました。8月には薬学生のための

大会もあり、昨年は女子準優勝、男子優勝という結果を残

しており、我々もそれを目標に日々努力をしています。

●弓道部 今年度の弓道部は新入生が14名入り、1~4年合わせて50

名となりました。3月に行われた春の関東医歯薬系学生弓

道大会では、あと一歩という所で決勝には進めませんでし

た。しかし、この悔しさをバネに秋に行われる大会では、

男女共に決勝まで進めるよう努力したいと思います。これ

からの行事には、6月例会や夏合宿、秋の昭和戦、北里戦

が控えています。特に3年生は最後の行事になります。良い

思い出ができるように残りの部活動を楽しみたいと思いま

す。また、段位の取得も積極的に行っていきたいと思いま

す。部員の半数は二段以上を持っています。きちんとした

指導者がいない中で、最上級学年を筆頭に技術を磨いてい

きたいと思います。

●バドミントン部 私達バドミントン部は、毎週火水土の3回練習を行って

います。現在は3年生5人、2年生14人、1年生12人の31人で

楽しく活動しています。春には新歓合宿、夏には合宿があ

り、楽しく技術を身に付けることができます。また、他校

との練習試合も定期的に行っています。大会は春と秋の年

2回、関東薬学連盟バドミントン大会があります。昨年の春

は女子団体戦優勝、女子シングルス準優勝・3位、秋は女子

団体戦3位、男子新人戦3位、女子新人戦準優勝など成績も

よく着実に実力をつけている部活です。こらからも、部員

皆で力を合わせ、技術を向上させ、良い成績を残せるよう

に頑張っていきたいと思います。

●野球部 私たち野球部は主に昼休みの時間を使って練習していま

す。野外グランドや飛び地でティーバッティングやキャッ

チボール、ノックなどをやっています。昨年新関東リーグ

を春、秋と連覇し1部リーグへの昇格を果たしました。夏

には合宿、長期休暇の時はグランドをとって練習試合をし

ています。とにかくみんな仲が良く毎日楽しく活動してい

ます。今後は1部リーグ優勝を目指して楽しさを追求して

日々頑張っていきたいと思っています。

●空手道部 空手道部は毎週火・木・土曜日に体育館1階奥の道場に

て活動しています。練習内容は、基本練習、形、組手です。

平日は形を中心に稽古に励んでいます。土曜日は師範を招

いての稽古になります。大会は年2~3回、全国泊親会大会

や、薬学生だけが集まる薬連大会などに出場しています。

部員は3年生2人、2年生5人、1年生3人の10人で活動してい

ます。練習後にはみんなでごはんを食べに行ったり、部室

でおしゃべりをしたり、とてもアットホームな部活です。

気になる方は、ぜひ遊びに来て下さい。

●スキー&ボード部 私達の部活の主な活動は年3回の合宿です。夏合宿は自

由参加ですが、冬、春の合宿は強制参加です。夏は1年生と

の交流を深めるための合宿で今年は海に行きます。冬と春

は2泊3日のボード合宿。午前中はグループに分かれ、経験

者が丁寧に教えます。経験者はもちろん、未経験者も入り

やすい部活です。私自身、一度も経験がなくて入りました

が未経験者も多いので楽しみながら覚えていけました。今

年の1年生はスキーをしたいという人も多く、両方を楽し

める部活になりそうです。先輩達とも仲良くなれるのでテ

スト前にアドバイスをもらったりもでき、強制参加が合宿

だけなので兼部がしやすいというところがおすすめの部活

です。

最 最 新 新

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●柔道部 今年、私たちは5月24日に行われた第50回港区民春季柔

道大会と6月21日に行われた東日本薬科大学柔道連盟春季

柔道大会に出場し、後者では男子団体戦(人数の関係上、明

治薬科大学との合同出場)3位、男子個人戦ベスト8という

成績を残すことができました。

 今後は東日本薬科大学柔道連盟秋季大会優勝を目指し

て、男女ともに練習に励んでいきます。

●FUTSALISTA FUTSALISTAは今年で設立7年目を迎えたフットサル

サークルです。今年度より同好会から部活へと転向し、ま

た学内に多目的コートが建設されたことで、以前よりとて

も活発に活動しています。活動は自由参加なので忙しい薬

学部でも無理なく参加でき、初心者・経験者・男女を問わ

ず楽しんでいます。活動日は偶数週の火曜日、毎週木曜日、

奇数週の土曜日です。

 メンバーは男子46名、女子18名の計64名で全員プレイ

ヤーです。練習では主に試合形式の練習を行い、空き時間

などに経験者が初心者に、男子が女子にテクニックや動き

方、ルールを教えたりしていて、とても良い雰囲気でフッ

トサルをしています。また、フットサリスタには引退がな

いのでいろいろな世代の人と関わることができるのでと

ても刺激的で勉強になります。引退がない理由は、医療者

になるものとして健康的な身体づくりを目指してのことで

す。

 また、20年度より明治薬科大学のフットサル部と連携し

ており、21年度は共同で薬学フットサルリーグを設立しま

した。今後は他薬学部のフットサルサークルとも連携して

試合をしていきたいと考えています。ちなみに、5月23日

の明薬との試合結果は男子が4-6で敗戦、女子が3-2で勝

利という結果でした。

 フットサルに興味がある人は是非一度練習にきてみてく

ださい。やりたくなる事、間違いなしですよ。

●コーラス部 こんにちは! コーラス部です。私達は週に1日本館の

ホールを使って活動しています。入学式、文化祭、卒業式

など学校行事にも積極的に取り組んでいます。

 主なイベントは東京都市大学の混成合唱団との合同コン

サートです。毎年秋に開催していて今年で第5回目となり

ます。他校との交流で自分達も更にレベルアップを目指す

ようになりお互いに良い効果を発揮しています。

 現在部員は10人で皆仲良く活動に取り組むアットホーム

な部活です。指導して下さっている外部の先生ともとても

仲良しなのです♪

 このようにほのぼのと活動している私達ですが、イベン

トで皆さんにお会いできる事を楽しみにしています!

●ギターフルート部 私達の部活は現在3年生4人、2年生22人、1年生16人の合

計42人で活動しています。楽器の種類も豊富で、ギターや

フルートの他にもヴァイオリンやヴィオラ、チェロ、クラ

リネット、サックス、ホルン、ピアノ、ハーモニカなど様々

な楽器があり、演奏の幅も広がってきています。普段の活

動では年に数回行う部活内での発表会や文化祭での演奏に

向けて練習しています。今年の文化祭でも様々な楽器によ

る二重奏や三重奏、アンサンブルやギター合奏、さらには

部員全員による40人以上での合奏などいろいろな演奏を考

えていますので、もしお時間がありましたらぜひギターフ

ルート部の演奏を聴きに来てください。

●漢方研究部 私達漢方研究部は、今年50人近くもの1年生を迎え、100

人近くの部員で現在活動をしています。

 活動内容としては、漢方に関する勉強会や漢方薬づくり

を行っています。今年は更に作る漢方薬を増やし、よりバ

リエーションに富み、充実した活動を行っています。

 また、夏休みの合宿では、秋に行われる全薬連(全日本漢

方研究会連盟総会)の準備を行います。もちろんその後は、

部員どうしの親交を深めるための懇親会も行います。

 とてもアットホームな部活ですので、皆さんぜひ遊びに

来て下さい。7号館3階の部室でお待ちしています。

●薬理研究部 私達薬理研究部は今年で創部35周年となる非常に伝統の

ある部です。現在は41名の部員が、顧問の三澤教授の指導

のもと自分達で立てた実験計画に従って土曜日や夏休みに

実験を行っています。今年度の実験テーマは「 -メントー

ルとd -カンフルの併用による鎮痒作用について」です。こ

の実験は昨年度の続きでして、ほとんどの痒み止めに含ま

れている成分についての研究なため、どなたにも親しみや

すい内容となっています。実験結果は星薬祭や東日本薬理

学連合、さらに昨年度は研究レベルが高かったことから、

3月に京都で行われた日本薬学会年会でも発表を行い注目

を浴びました。また、今年は創部35周年を記念したイベン

トも行う予定です。

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●有機化学研究部 有機化学研究部は、現在1年生22名、2年生10名、3年生

23名の計55名で活動しています。

 主な活動内容は、春、夏の長期休暇の1~2週間を利用し

て行う化学系実験です。2週間の内、自分の都合の良い日

に来て実験を行うので、部活としての拘束はあまりなく、

他の部活との兼部も可能です。1年生は器具の使い方など

基本的なことが学べるので、2年生からの実習に備えるこ

とができます。また、高校生に実験を体験してもらうSPP

や薬祭への参加もしています。

 部員同士は学年関係なく仲が良く、今年はより仲が深ま

るような活動を企画しています。興味のある方は是非7号

館の4階にお越し下さい。

 私たち剣道部は、現在3年生5名、2年生6名、1年生5名の

計16名の部員で毎週月曜日と金曜日の週2回活動していま

す。剣道部というとやはり敬遠されぎみなのか、毎年あま

り部員は多くありませんが、その分同級生同士だけでな

く、先輩後輩の仲も非常にいい、アットホームな雰囲気の

部です。

 普段はアットホームな雰囲気ながら、練習は皆がきっち

りと行っているため、毎年品川区大会、春期・秋期医歯薬

獣医大会、台東区大会、全国薬学生大会、関東薬学生大会

などの様々な大会に出場して、個人戦・団体戦ともに良い

結果を残しています。東京薬科大学、明治薬科大学の剣道

部とも毎年親善試合を行っており、交流を深めています。

 また、年に一度卒業された先輩方をお招きしてOB会を

行っています。高段者の先輩方に稽古をつけていただき、

剣道部

剣道の上達を図るだけでなく、星薬生・薬剤師の先輩とし

てのアドバイスもいただいています。

 ところで、昨年度は、私たち星薬大剣道部が主幹となっ

て関東薬学生剣道大会を開催しました。星薬祭の後まもな

くの開催という慌ただしい準備期間ではありましたが、部

長以下各部員たちが協力し合い準備をすすめ、無事に大会

を開くことができました。さらにこの大会において、女子

団体優勝という結果を残すことができ、顧問の輪千先生や

お世話になりました諸先輩方には深く感謝いたします。

 本年度は、昨年度関東薬学生大会優勝という結果に満

足することなく、他の大会においてもより上位に入れるよ

う、男子女子ともにより一層の練習に励んでいきたいとと

思っています。

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薬草園だより26

ヤマユリ

ヤマユリ

 ユリは風にゆられながら大きな花を咲かせる

ところから、その語源を“揺り”とする説がある。

日本には15種ほどの野生種がみられるが、その

多くが日本の特産種であり、しかもそれぞれが

野生のままでも十分観賞価値のあるみごとな

花をつける。わが国がユリの宝庫といわれるゆ

えんであろう。関東に多いヤマユリは、かなり

少なくなってきたとはいえ、強い香りを放ちな

がら夏空の下で大きな花をつける姿は、我々に

とっては見慣れた里山の光景である。このヤマ

ユリも箱根を越えて西に向かうと少なくなり、

代って清楚さが漂うササユリが目立つようにな

る。

 こうした色彩豊な日本の植物に目を奪われ

たのが、江戸時代後期(1823年)に来日し、日本

の医学や自然科学に大きな影響を与えたシーボ

ルトであった。彼は日本の多様な植物を知るに

つれ、色彩の乏しい幾何学的なヨーロッパ庭園

にこうした植物を植えたいという衝動に駆られ

た。そこで帰国時には標本だけでなく、たくさ

んの生きた植物を持ち帰りヨーロッパに紹介し

た。彼の予想は的中し、日本の植物を見たヨー

ロッパの人々には大センセーションが起き、ま

さに園芸界は変革の嵐に見舞われた。その先駆

けとなったのが日本の個性豊かなユリ達であ

る。最初に紹介されたテッポウユリは、その純

白さで人々を魅了し、いつの間にかキリスト経

の祭礼で使うユリとして定着してしまった。ヤ

マユリやカノコユリは遅れて登場したのだが、

これを見たヨーロッパの人々はこんな豪華な

花が野に自生するということ自体、想像もつか

ない驚きとして迎えられた。当然のように園芸

ブームが巻き起こり、日本からユリが盛んに輸

出されるようになる。その機をみて創立された

のが現在でも横浜の石川町にある横浜植木(株)

である。ベーマー商会を継承した日本初の植物

商社であった。

 横浜はことし開港150周年として賑わってい

る。輸出額では生糸などに及ぶべくもないが、

横浜から欧米に輸出されたユリ根はピーク時に

は年間4千万球に及んだという。横浜はまさにユ

リの独占輸出港であった。そのユリもヨーロッ

パで品種改良され、日本では逆輸入されたカサ

ブランカなどの園芸種が目立つようになってき

た。

薬用植物園園長補佐 南雲清二