18
9 2. 台湾の農林水産業を取り巻く環境 台湾の地勢・人口・都市 (1) 地勢 台湾は中国の東南海岸から 160 キロメートルの西太平洋上にあり、日本列島とフィリピン諸島と の間に位置する島である。台湾本島(付属島嶼 21)と澎湖列島(付属島嶼 63)の大小 86 の島嶼、 金門島、馬祖島から構成され、総面積約 36,000 平方キロ(九州よりやや小さい)である。台湾本 島は南北に長く、中央山脈が縦に貫き東西を二分している。東部海岸線は断崖絶壁の奇勝に富み、 西部は豊かな平野が続いており、都市部は主に西部に集中している。山地は全島面積の 3 分の 2 占め、3,000m 以上の山が 133 ある(最高峰は玉山:3,952m) 3 北回帰線を挟んで北部が亜熱帯、南部が熱帯に属する。夏は 5 月から 9 月まで続き温度と湿度が ともに高く、冬は温暖で 12 月から 2 月までと短く、高山のみで雪が降る。台北の平均気温は 7 が最高の 29.6 度、 1 月が最低の 16.1 度である。台湾島は偏西風と貿易風の境界域にあり、夏から秋 には台風が頻繁に通過する。年間の平均降雨量は 2,000 ミリメートル前後だが、降り方は地域によ って異なり、中南部では雨季と乾季が分かれ雨が夏に集中するのに対し、北部では一年を通じて雨 が降る(日本は年平均降 1,700 ミリメートルほど) 4 (2) 人口 総人口は約 2,346 万人で、最も人口が多い都市は台北市を取り巻く新北市で約 397 万人、次いで 高雄市の 278 万人、台中市の 273 万人となっている。人口密度は 648 /平方キロメートルである(人 1,000 万人以上の国では人口密度第一位はバングラデシュの 1,063 /平方キロメートル)。もっと も人口密度の高い都市は台北市で 9,956 /平方キロメートルである。漢民族が 98%を占め、14 原住民系民族が残りの 2%を構成している。人口の地理的な分布を見ると、台湾は北部(主要都市 は台北、新北、基隆)、中部(同台中)、南部(同高雄、台南)、そして東部と離島に分かれる 5 1 台湾の地図 中央果実協会「台湾における日本産食品の輸入規制強化にともなう日本産果実の流通への影響に係る調査」2 頁の図を許可により転 載。右 交流協会「台湾の経済 DATA BOOK201595 頁「8.その他 (1)地勢と主要都市」の図を許可により転載。 3 中央果実協会『台湾における日本産食品の輸入規制強化にともなう日本産果実の流通への影響に係る調査』2016 3 月、2 頁、http://www.kudamono200.or.jp/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-pdf/KKNJ_128.pdf2017 1 6 日アクセス。 4 赤松美和子、若松大祐編著『台湾を知るための 60 章』明石書店、2016 8 月、14-15 頁。 5 交流協会「台湾の経済 DATA BOOK20152015 12 月、96-97 頁、 https://www.koryu.or.jp/ez3_contents.nsf/15aef977a6d6761f49256de4002084ae/147d413a66547dff49257b160022d9c 3/$FILE/2015databook.pdf; 外務省中国・モンゴル第一課・第二課「最近の日台関係と台湾情勢」2014 4 月、 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taiwan/pdfs/kankei.pdf; 総務省統計局「人口密度(人口 1000 万人以上の上位 10 国)」2014 年、http://www.stat.go.jp/naruhodo/c1data/02_04_stt.htm、いずれも 2017 1 6 日アクセス。

2. 台湾の農林水産業を取り巻く環境 - maff.go.jp · 載。右 交流協会「台湾の経済data book2015」95 頁「8.その他 (1)地勢と主要都市」の図を許可により転載。

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Page 1: 2. 台湾の農林水産業を取り巻く環境 - maff.go.jp · 載。右 交流協会「台湾の経済data book2015」95 頁「8.その他 (1)地勢と主要都市」の図を許可により転載。

9

2. 台湾の農林水産業を取り巻く環境

台湾の地勢・人口・都市

(1) 地勢

台湾は中国の東南海岸から 160 キロメートルの西太平洋上にあり、日本列島とフィリピン諸島と

の間に位置する島である。台湾本島(付属島嶼 21)と澎湖列島(付属島嶼 63)の大小 86 の島嶼、

金門島、馬祖島から構成され、総面積約 36,000 平方キロ(九州よりやや小さい)である。台湾本

島は南北に長く、中央山脈が縦に貫き東西を二分している。東部海岸線は断崖絶壁の奇勝に富み、

西部は豊かな平野が続いており、都市部は主に西部に集中している。山地は全島面積の 3 分の 2 を

占め、3,000m 以上の山が 133 ある(最高峰は玉山:3,952m)3。

北回帰線を挟んで北部が亜熱帯、南部が熱帯に属する。夏は 5 月から 9 月まで続き温度と湿度が

ともに高く、冬は温暖で 12 月から 2 月までと短く、高山のみで雪が降る。台北の平均気温は 7 月

が最高の 29.6 度、1 月が最低の 16.1 度である。台湾島は偏西風と貿易風の境界域にあり、夏から秋

には台風が頻繁に通過する。年間の平均降雨量は 2,000 ミリメートル前後だが、降り方は地域によ

って異なり、中南部では雨季と乾季が分かれ雨が夏に集中するのに対し、北部では一年を通じて雨

が降る(日本は年平均降 1,700 ミリメートルほど)4。

(2) 人口

総人口は約 2,346 万人で、最も人口が多い都市は台北市を取り巻く新北市で約 397 万人、次いで

高雄市の 278 万人、台中市の 273 万人となっている。人口密度は 648 人/平方キロメートルである(人

口 1,000 万人以上の国では人口密度第一位はバングラデシュの 1,063 人/平方キロメートル)。もっと

も人口密度の高い都市は台北市で 9,956 人/平方キロメートルである。漢民族が 98%を占め、14 の

原住民系民族が残りの 2%を構成している。人口の地理的な分布を見ると、台湾は北部(主要都市

は台北、新北、基隆)、中部(同台中)、南部(同高雄、台南)、そして東部と離島に分かれる5。

図 1 台湾の地図

左 中央果実協会「台湾における日本産食品の輸入規制強化にともなう日本産果実の流通への影響に係る調査」2 頁の図を許可により転

載。右 交流協会「台湾の経済 DATA BOOK2015」95 頁「8.その他 (1)地勢と主要都市」の図を許可により転載。

3 中央果実協会『台湾における日本産食品の輸入規制強化にともなう日本産果実の流通への影響に係る調査』2016 年 3

月、2 頁、http://www.kudamono200.or.jp/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-pdf/KKNJ_128.pdf、2017 年 1 月 6 日アクセス。 4 赤松美和子、若松大祐編著『台湾を知るための 60 章』明石書店、2016 年 8 月、14-15 頁。 5 交流協会「台湾の経済 DATA BOOK2015」2015 年 12 月、96-97 頁、

https://www.koryu.or.jp/ez3_contents.nsf/15aef977a6d6761f49256de4002084ae/147d413a66547dff49257b160022d9c

3/$FILE/2015databook.pdf; 外務省中国・モンゴル第一課・第二課「最近の日台関係と台湾情勢」2014 年 4 月、

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taiwan/pdfs/kankei.pdf; 総務省統計局「人口密度(人口 1000 万人以上の上位 10 か

国)」2014 年、http://www.stat.go.jp/naruhodo/c1data/02_04_stt.htm、いずれも 2017 年 1 月 6 日アクセス。

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10

(3) 都市

台湾では 1947 年に中国で制定された中華民国憲法が現在も施行されており、同憲法は地方制度

として省や直轄市と、省の下に県や省轄市の設置を規定している。また憲法に規定はないが、県の

下に郷・鎮・県轄市が設置される。今日台湾には台湾省と福建省の 2 省があるが、いずれも実質的

な機能を持たない中央の出先機関となっている6。行政院直轄市は現在 6 つあり(台北市、高雄市、

新北市、桃園市、台中市、台南市)、これらの市に人口の 7 割弱が集中している。

表 3 地域別・地形別面積(ha)7

面積計

平地 丘陵地 高山地

面積 % 面積 % 面積 %

台湾 3,619,418 981,656 27 981,335 27 1,656,427 46

直轄市

新北市 205,257 24,862 12 110,076 54 70,319 34

台北市 27,180 14,522 53 12,658 47 - -

桃園市 122,095 66,434 54 31,317 26 24,344 20

台中市 221,490 62,156 28 56,301 25 103,033 47

台南市 219,165 137,070 63 50,609 23 31,486 14

高雄市 295,185 76,889 26 62,775 21 155,521 53

県市

宜蘭県 214,363 39,196 18 33,291 16 141,876 66

新竹県 142,754 19,183 13 65,427 46 58,144 41

苗栗県 182,031 22,194 12 87,388 48 72,449 40

彰化県 107,440 94,240 88 10,020 9 3,180 3

南投県 410,644 20,458 5 127,822 31 262,364 64

雲林県 129,083 115,343 89 8,150 6 5,590 4

嘉義県 190,364 81,048 43 42,720 22 66,596 35

屏東県 277,560 94,021 34 91,966 33 91,573 33

台東県 351,525 22,235 6 97,540 28 231,750 66

花蓮県 462,857 48,767 11 78,384 17 335,706 73

澎湖県 12,686 12,686 100 - - - -

基隆市 13,276 768 6 10,400 78 2,108 16

新竹市 10,415 6,219 60 4,097 39 99 1

嘉義市 6,003 5,320 89 394 7 289 5

金門県 15,166 15,166 100 - - - -

連江県 2,880 2,880 100 - - - - 出所:Yearly Report of Taiwan's Agriculture 2015

6 竹内孝之「台湾における『五都』の成立」『アジ研ワールドトレンド』2011 年 3 月号、45-46 頁、

http://d-arch.ide.go.jp/idedp/ZWT/ZWT201103_019.pdf; 山形勝義「台湾における六大都市への変遷─戦後台湾における

地方自治制度と行政院直轄市を中心として─」『アジア文化研究所研究年報 50 号』2016 年 2 月、102-130 頁、

http://id.nii.ac.jp/1060/00008036、いずれも 2017 年 3 月 3 日アクセス。 7 竹内前掲書を参考に、憲法で省の下に設置が規定されている県と省轄市を合わせ「県市」とした。

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11

台湾経済と農林水産業

(1) 台湾経済発展の歴史

台湾経済は、日本と同様、戦後に経済の主軸を農業から工業へと移し発展を遂げてきた。台湾の

成長戦略は、1949~52 年、53~57 年、58~72 年、73~80 年、1981 年以降の 5 つに区分できる8。

1949~52 年は、農地改革と復興の期間であり、公有耕地の払い下げや国が買い取った小作地の小

作への転売など、一連の農地改革を通じて多くの自作農が創設された。これにより、農家に生産イ

ンセンティブが付与され、農業生産が飛躍的に伸び、農産品の輸出が可能となった。輸出で得た外

貨は、工業部門における原材料や中間財の輸入に充てられ、戦後の高度成長に大きく寄与した9。

1953~57 年には、経済の国内自給を図るため、輸入代替工業化が推進された10。輸入数量制限や

高関税率により国内の消費財産業を国外製品との競争から保護し、繊維、アパレル、木製品、皮革

製品、自転車といった産業が急速に成長した。また豊富な労働力を活用するため、政府は軽工業(特

に繊維)を補助金により支援した。こうした産業の成長に伴い国内の小さな市場は飽和に近づき、

経済成長は 1950 年代初頭の 9%から 1950 年代中ごろには 6.5%に鈍化した11。この時期には朝鮮戦

争をきっかけとして米国からの援助が台湾に重点的に配分された12。1951 年~59 年の米国援助額は

9 億 2,700 万米ドルに達しており、1950 年代の台湾経済は少なからず米国援助に支えられていた。

しかしながら 1950 年代後半になるとアメリカは台湾に自立を求めるようになり、援助額は減少に

向かっていった13。

国内市場の飽和や海外援助の減少が進む中、台湾政府は外貨獲得の必要性に直面し、1958~72 年

には輸出振興政策を実施した。いくつかに分かれた為替レートを単一なものにし、輸出製品の中間

財を主な対象として関税や輸入管理が徐々に削減された。さらに台湾銀行は、輸出企業を優遇する

ため低率の貸出を行った。低コストの労働力及び既存技術を競争優位として活用するという観点か

ら、成長及び輸出促進の有望部門として、プラスチック、合成繊維、電機部門などが選択され、こ

れらに次いでアパレル、家庭用電気製品、時計といった部門が対象となった。国内資本の形成では、

海外直接投資が活用された。海外直接投資は 1960年代における国内総資本形成の 6%に過ぎないが、

そのうち 80%程度が製造業に投資され、資本の蓄積ばかりでなく、海外技術の移転を通じて国内産

業の多様化及び製品品質の向上に寄与した14。

1970 年代に入ると、より賃金の低い国々の製品との競争に直面し、台湾の軽工業部門の優位性は

失われはじめた。またオイルショックは経済成長の低迷、高インフレ率、輸出の落ち込みといった

影響を台湾経済に与えた。こうした苦境にあって、1973 年以降台湾政府は産業の再編成と新たな輸

出の成長による自立的成長を目指す政策をとった。輸出産業に必要な原材料・中間財の生産を増や

すため資本集約的な重化学工業の育成に力を入れ、また総額 80 億ドルを投じる 10 大建設(高速道

路・鉄道・空港・原子力発電所などを含む)の計画を発表した15。

8 The World Bank, “The East Asian Miracle: Economic Growth and Public Policy”, September 26, 1993, p124,

131-134. 9 農林水産政策研究所『平成 22 年度世界の食料需給の中長期的な見通しに関する研究 研究報告書』2012 年 3 月、242

頁、http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seika/project/pdf/jukyu3-10s.pdf、2017 年 3 月 3 日アクセス。 10 The World Bank, op.cit., p131. 11 The World Bank, op.cit., p131.; 農林水産政策研究所 前掲書 242 頁。 12 鄭世松 「百年来の台湾経済発展の軌跡―2014 年 7 月 10 日東海ロータリークラブ講演資料より」『交流』2014 年 11

月号、5 頁、https://www.koryu.or.jp/ez3_contents.nsf/0/82849053eaa307ca49257d9c0008c367/$FILE/11_01.pdf、2017

年 3 月 3 日アクセス; 日本銀行「台湾、韓国の高度経済成長の現状と問題点」1969 年 10 月、6 頁、

https://www.boj.or.jp/research/past_release/chosa1969.htm、2017 年 3 月 3 日アクセス。 13 日本銀行 前掲書 6 頁; 財務省財務総合政策研究所「『経済の発展・衰退・再生に関する研究会』報告書」2001 年 6 月、

250 頁、https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk051/zk051k.pdf、2017 年 3 月 3 日アクセス; 朝元照雄「輸出

志向工業化と台湾の経験」『産業経営研究所報』2008 年 3 月、11 頁、

http://www.kyusan-u.ac.jp/J/imi/jimimivol.40_contents.pdf、2017 年 3 月 3 日アクセス。 14 The World Bank, op.cit., p131,132.; 農林水産政策研究所 前掲書 242 頁。 15 The World Bank, op.cit., p132.; 農林水産政策研究所 前掲書 242 頁。

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12

1981 年以降は、技術集約的なハイテク産業(情報・バイオ技術・光学技術・精密機器・環境技

術等)を中心とした経済に移行させる政策を行っている。R&D 投資を促進させる税制度の改革、

ベンチャーキャピタル企業の創設促進、科学・数学・工学・コンピュータといった教育を強化する

よう大学カリキュラムの改訂などを実施した16。

こうした政策を通じ、台湾は「東アジアの奇跡」とも称される飛躍的な経済発展を遂げ、東アジ

ア経済において重要な位置を占めるに至っている。他方、近年では世界経済の減速の影響を受け、

経済の失速が懸念されており、台湾経済研究院は 2016 年の成長予測を 1.17%、2017 年は 1.65%と

予測している17。台湾経済は下表 5「実質 GDP 内訳」が示すとおり、2015 年において輸出額が実質

GDP の 7 割を超える規模となっており、近年における台湾経済は輸出に牽引されている。特に中国

との貿易の重要性が高まっていることから、両岸関係の発展のあり方も含めて、2016 年 5 月 20

日に政権党となった民主進歩党の経済政策が注目される。

表 4 経済成長、人口、GDPの推移

経済

成長率

(%)

人口

(千人)

実質 GDP

(百万台湾ドル)

実質 GDP

米ドル換算

(百万米ドル)

実質 GDP

米ドル換算

÷人口

名目一人あたりGNI

(米ドル)

1951

7,758 145,603 154

1961 7.05 11,030 324,541 161

1971 13.43 14,914 914,190 451

1981 7.11 18,030 2,331,586 2,707

1991 8.36 20,504 5,193,843 9,382

2001 -1.26 22,341 9,054,580 13,703

2006 5.62 22,823 11,803,335 362,833 15,860 17,446

2007 6.52 22,917 12,572,550 382,819 16,675 18,256

2008 0.70 22,998 12,661,079 401,722 17,438 18,564

2009 -1.57 23,078 12,462,729 377,099 16,310 17,531

2010 10.63 23,141 13,787,642 435,739 18,813 19,864

2011 3.80 23,194 14,312,200 485,752 20,915 21,507

2012 2.06 23,270 14,607,569 493,266 21,156 21,967

2013 2.20 23,345 14,929,292 501,488 21,455 22,526

2014 4.02 23,404 15,529,606 510,908 21,802 23,330

2015 0.72 23,463 15,641,351 489,554 20,839 23,131

2016 1.50 23,540 15,876,398 491,256 20,869 23,325 出所:Statistical Yearbook of the Republic of China; National Accounts Yearbook 2015;

Statistical Abstract of National Income(以上 2015 年までの情報); 行政院主計総処「国民所得統計摘要」2017 年 2 月、

http://www.stat.gov.tw/public/data/dgbas03/bs4/nis93/ni.pdf、2017 年 3 月 13 日アクセス、Statistical Bureau, ” Social Indicators”, March 2017,

http://eng.stat.gov.tw/ct.asp?xItem=37674&ctNode=3480&mp=5, accessed March 13, 2017(以上 2016 年の情報)。2016 年の経済成長率・実

質 GDP・名目一人あたり GNI は予測値。

16 The World Bank, op.cit., p133.; 農林水産政策研究所 前掲書 242 頁。 17 Taiwan Institute of Economic Research, “Macroeconomic Outlook of Taiwan”, November 10, 2016,

http://english.tier.org.tw/eng_forecast/annual.asp, accessed January 11, 2017.

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13

図 2 実質 GDP及び経済成長率の推移(十億台湾ドル・%)

出所:Statistical Yearbook of the Republic of China 2015

表 5 実質 GDP内訳(十億台湾ドル)18

国内需要 輸出入 参考

(輸出額/GDP) 民間消費 政府消費 資本形成 輸出 輸入

1982 1,481 626 778 841 1,105 34%

1991 3,331 1,337 1,819 2,353 3,372 45%

2001 6,140 1,925 2,707 4,591 5,980 51%

2006 7,239 1,964 3,494 7,823 8,670 66%

2011 7,799 2,168 3,383 10,420 9,457 73%

2015 8,631 2,272 3,579 11,423 10,270 73% 出所: National Accounts Yearbook 2015

18 季節調整などの統計誤差により、各部門の合計は他の統計の実質 GDP の合計に一致しないことがある。

11,803 12,573 12,661 12,463

13,788 14,312 14,608 14,929

15,515 15,616

5.6 6.5

0.7

-1.6

10.6

3.8

2.1 2.2

3.9

0.7

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

実質GDP(左軸) 経済成長率(右軸)

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14

(2) 産業全体における農林水産業の位置づけ

GDP を指標として産業全体における各産業の位置づけを見ると、2015 年における実質 GDP への

貢献度では、サービス業が約 63%、鉱工業・建設業・電気・ガス・水道業(工業)が約 35%を占

めており、1981 年には 7.4%であった農林水産業は 1.7%となっている。豊かな国ほど農業を中心と

した産業構造から工業・サービス業を中心とした産業構造になるという経験則として知られる「ペ

ティ・クラークの法則」が台湾にも当てはまっており、GDP に占める産業構成の推移から、経済発

展に伴ってサービス産業化が進んでいることが伺われるが、電子電機産業を含む工業部門も台湾経

済において一定の規模を維持していることが分かる。

農林水産業の構成比は 2001年以降 2%未満となっており、台湾経済に与える影響は限定的である。

このことは、下図 5「経済成長率及び各産業の成長率推移」が示すように、台湾経済全体の単年成

長率と工業・サービス業の成長率が類似の軌道で推移しているのに対し、農林水産業は経済全体と

の相関が相対的に弱いことからも確認できる。1990 年代まではサービス業が経済成長率を上回る年

が多く、2000 年代以降は工業が経済成長率を上回る年が多い傾向が見受けられる。

図 3 農林水産業が名目 GDPに占める割合

出所: National Accounts Yearbook 2015; National Accounts Statistical Tables

図 4 農林水産業の実質 GDP(十億台湾ドル/ %)19

出所:National Accounts Yearbook 2015

19 名目 GDP の実質化計算に連鎖方式を用いており、この方式の特徴として各産業の GDP 合計はその年度の GDP 総計と

一致しない。

32.4%28.2%

13.9%

7.4%3.6% 1.9% 1.6% 1.5% 1.6% 1.7% 1.6% 1.7% 1.7% 1.7% 1.8% 1.7%

20%25%

38%

44%39%

29%32% 33% 31% 32% 34% 33% 33% 33% 35% 35%

48% 46% 48% 49%

58%

69%66% 66% 67% 67% 65% 65% 66% 65% 63% 63%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

1951 1961 1971 1981 1991 2001 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

農林水産業 工業 サービス業

110 183 192 241 216 236 236 236 230 235 246 238 241 245 225

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

1961 1971 1981 1991 2001 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

農林水産業 工業 サービス業

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15

図 5 経済成長率及び各産業の成長率推移

出所:National Accounts Yearbook 2015

(3) 農林水産業の生産概況

GDP を指標とした産業間の比較では、農林水産業の相対的な規模の低下を見てとることができた。

次に生産額を指標として農林水産業の生産状況を見ると、年度による変動はあるものの、直近 20

年の推移は概ね上昇傾向にあることが分かる。1996 年と 2015 年の農林水産品の生産額を農産品、

畜産品、林産品、水産品に分類すると、生産額増加の大部分は農産品の増加によるものであり、畜

産品も部分的に増加に貢献している。林産品の影響は限定的であり、水産業は生産額を減らしてい

る。

図 6 農林水産品の生産額(百万台湾ドル)

出所:農業統計年報

図 7 農林水産品の生産額内訳(百万台湾ドル)

産業別金額は左軸・農林水産品全体金額は右軸

出所:農業統計年報

-10

-5

0

5

10

15

20

25

1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014

経済成長率 農林水産業 工業 サービス業

200,000

250,000

300,000

350,000

400,000

450,000

500,000

550,000

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

172,773

244,422

149,067 163,974

757 244

97,431 92,256

420,028

500,896

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

1996 2015

農産品 畜産品 林産品 水産品 農産品全体

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16

(4) 農林水産業の貿易概況

① 概況

金額ベースで見た農業生産は増加傾向にある一方、農林水産業の貿易収支は赤字額を拡大させて

いる。まず台湾の全産業の輸出入額・貿易収支の推移をみると、1986 年以降の統計では貿易黒字を

維持しており、特に 2010 年代に入ってからは貿易黒字額の伸長が見て取れる。他方、農林水産品

の輸出入額・貿易収支を見ると長期的に赤字額を拡大させている傾向があり、拡大する農産品の輸

入をその他の財・サービス貿易の黒字で賄っている状況にある。台湾は 2002 年に WTO に加盟して

おり、図 9「農林水産品の輸出入額・貿易収支」では、2002 年以降農産品輸入が増加基調にあるこ

とが指摘できる。WTO 加盟による輸入の急増が国内農業縮小の主因であるとする分析もある20。

図 8 全産業の輸出入額・貿易収支(百万米ドル)

輸出入は左軸・貿易収支は右軸

出所:農産貿易統計要覧

図 9 農林水産品の輸出入額・貿易収支(百万米ドル)

輸出入は左軸・貿易収支は右軸

出所:農産貿易統計要覧

農林水産品貿易収支の内訳を見ると、農産品が赤字額の大半を占めている。なお、水産品は 2 億

20 農林水産政策研究所 前掲書、247 頁。

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

198619871988198919901991199219931994199519961997199819992000200120022003200420052006200720082009201020112012201320142015

輸出 輸入 貿易収支

-12,000

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014

農林水産品輸出 農林水産品輸入 農産品貿易収支

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17

5,300 万米ドルの黒字となっているが、この額を上回る 3 億 1,800 万米ドルの黒字を対日水産品貿易

で記録しており、日本を除いた各国との水産品貿易は赤字である。

図 10 農林水産品輸出入額・貿易収支内訳(2015年)(百万米ドル)

輸出入は左軸・貿易収支は右軸

出所:農産貿易統計要覧

農産品・農産加工品・工業製品という切り口で輸出額を分類した統計によると、農産品・農産加

工品が輸出に占める割合は工業品に比べ小さいが、農産品・農産加工品に限ってみた場合、農産加

工品の輸出額が伸びている。農産品そのものの輸出よりも、付加価値商品化した農産加工品の輸出

が伸長している傾向が見て取れる。

表 6 輸出入額の内訳(百万米ドル)

農産品 農産加工品 工業製品 輸出合計 資本財 消費財

農業・工業製品

原材料

その

他 輸入合計

2011 906 2,611 309,406 312,923 37,498 25,750 222,402 2,413 288,062

2012 883 3,046 302,481 306,409 34,975 27,018 213,170 2,161 277,324

2013 876 3,147 307,405 311,428 36,851 28,393 209,606 3,160 278,010

2014 906 3,287 315,899 320,092 38,549 30,794 208,402 4,104 281,850

2015 857 3,039 281,448 285,344 38,123 31,648 162,899 4,549 237,219 出所:Statsitical Yearbook of the Repbulic of China 2015

図 11 農産品・農産加工品輸出額の推移(百万米ドル)

出所:Statsitical Yearbook of the Repbulic of China 2015

2,081

1,0471,655

92

8,717

2,937

1,402 1,458

-6,636

-1,889

253

-1,365

-7,000

-6,000

-5,000

-4,000

-3,000

-2,000

-1,000

0

1,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

農産品 畜産品 水産品 林産品

輸出 輸入 貿易収支

311 361 388 392 379 349 410 502 495

746 906 883 876 906 857

1,612 1,627 1,697

2,005 2,042

1,798 1,819

2,158

1,779

2,101

2,611

3,046 3,147

3,287

3,039

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015

農産品 農産加工品

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18

② 国別の農林水産品貿の状況

1) 国別貿易額・貿易収支

農林水産品の輸出入を国別で見ると、最大の輸出先は中国、次いで日本、米国、香港となってい

る。輸入では米国が約 24%を占める一大輸入元となっており、ブラジル、日本、中国と続くが、割

合はいずれも 10%以下である。これを反映して国別農産品貿易収支では対米国が最大の赤字となっ

ている。相手別の貿易収支では、香港・中国・ベトナムを除き全て赤字となっている。

図 12 農産品輸出先(左)・輸入元(右)(2015年)(百万米ドル)

出所:農産貿易統計要覧

図 13 相手別農産品貿易収支(2015年)(百万米ドル)

出所:農産貿易統計要覧

456 90 59

-0 -8 -212 -279 -311

-490 -598 -658 -730 -1,106

-3,029 -2,821

-3,500

-3,000

-2,500

-2,000

-1,500

-1,000

-500

0

500

1,000

香港

中国

ベトナム

シンガポール

韓国

日本

カナダ

インドネシア

タイ

マレーシア

オーストラリア

ニュージーランド

ブラジル

米国

その他

米国, 3,526, 24%

ブラジル, 1,118, 8%

日本, 989,

7%中国,

910, 6%

オーストラリア,

752, 5%

ニュージーランド,

738, 5%

タイ, 712, 5%

マレーシア, 697, 5%

インドネシア, 434, 3%

ベトナム, 385, 3%

カナダ, 347, 2%

韓国, 234, 2%

シンガポール, 89, 1%

香港, 21, 0% その他, 3,559, 24%

中国, 1,001, 20%

日本, 777, 16%

米国, 497,

10%香港, 477,

10%

ベトナム,

443, 9%

韓国, 226, 5%

タイ, 222, 5%インドネシア, 123, 3%

マレーシア, 100, 2%

オーストラリア, 95,

2%

シンガポール, 88, 2%

カナダ, 69, 1%

ブラジル, 12, 0% ニュージーラ

ンド, 8, 0%

その他, 738, 15%

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19

2) 主要貿易相手との収支(農林水産品合計及び産業別)

日本、中国、香港、米国それぞれとの貿易収支を見ると、対日貿易では 2012 年まで黒字であっ

たが、2013 年以降は赤字となり、その額を拡大させている。逆に対中国では 2008 年以降赤字額の

削減を続け、2013 年以降は黒字を記録している。このように対日と対中国では黒字と赤字の逆転が

起きた一方、対香港では継続的に黒字、対米国では継続的に赤字を計上している。

図 14 農林水産品の貿易収支(対日本)(百万米ドル)

輸出入は左軸・貿易収支は右軸(以降図 17 まで同じ)

出所:農産貿易統計要覧

図 15 農林水産品の貿易収支(対中国)(百万米ドル)

出所:農産貿易統計要覧

図 16 農林水産品の貿易収支(対香港)(百万米ドル)

出所:農産貿易統計要覧

-300

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

700

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

輸出 輸入 貿易収支

-350

-300

-250

-200

-150

-100

-50

0

50

100

150

0

200

400

600

800

1,000

1,200

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

輸出 輸入 貿易収支

0

100

200

300

400

500

600

0

100

200

300

400

500

600

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

輸出 輸入 貿易収支

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20

図 17 農林水産品の貿易収支(対米国)(百万米ドル)

出所:農産貿易統計要覧

上記の 4 か国について農産品・畜産品・林産品・水産品に分けて貿易の傾向を見ると、日本との

貿易では農産品で大きな赤字がある一方、水産品については貿易収支が黒字となっている特徴が指

摘できる。貿易黒字となっている対香港・対中国では、中国の林産品を除く全部門で黒字となって

いる。対米国では、水産品で 8,700 万ドル程度の黒字があるが、それより大きな規模の赤字を農産

品・畜産品で計上している。

図 18 日本との農林水産品貿易収支(2015年)(百万米ドル)

出所:農産貿易統計要覧

図 19 中国との農林水産品貿易収支(2015年)(百万米ドル)

出所:農産貿易統計要覧

-4,000

-3,500

-3,000

-2,500

-2,000

-1,500

-1,000

-500

0

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

輸出 輸入 貿易収支

226.0

86.1

443.2

21.5

786.1

59.7 125.6

17.6 -560.1

26.4

317.6

3.8

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

100

200

300

400

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

農産品 畜産品 水産品 林産品

輸出額 輸入額 貿易収支

535.0

195.2 236.1

34.2

398.8

152.5 196.8

162.4

136.3

42.7 39.3

-128.1 -150

-100

-50

0

50

100

150

0

100

200

300

400

500

600

農産品 畜産品 水産品 林産品

輸出額 輸入額 貿易収支

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21

図 20 香港との農林水産品貿易収支(2015年)(百万米ドル)

出所:農産貿易統計要覧

図 21 米国との農林水産品貿易収支(2015年)(百万米ドル)

出所:農産貿易統計要覧

204.9

184.9

85.9

1.2 12

1 80

193184

78

1 0

50

100

150

200

250

0

50

100

150

200

250

農産品 畜産品 水産品 林産品

輸出額 輸入額 貿易収支

311.3

35.1 140.3

10.7

2602.2

806.7

52.9 64.2 -2291.0

-771.6

87.4 -53.5

-2500

-2000

-1500

-1000

-500

0

500

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

農産品 畜産品 水産品 林産品

輸出額 輸入額 貿易収支

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22

3) 主要貿易品目と貿易相手

品目別に貿易相手・貿易金額が集計された統計を輸出入別に見ると、対日本ではまぐろ、うなぎ、

まかじきといった魚類の輸出が多くなっており、中国への輸出は菓子類・酒類・茶など嗜好品が多

くなっている。ベトナムは豚皮革・牛皮革両方で最大の輸出先となっている。輸入では、たばこ製

品、りんご(生鮮または冷凍)、焼き菓子といった品目で日本が上位に入っている。日本からの輸

出が盛んなりんごでは、日本は米国に次ぐ二位の額となっている。輸入額では大豆が一位、とうも

ろこしが三位と穀類が上位を占め、それらの輸入元の上位二か国はいずれも米国・ブラジルである。

表 7 輸出額上位 30品目と主要輸出先(2015年)(千米ドル)21

TPP参加

RCEP参加

両方参加

下線・・・台湾と二国間貿易・投資関連協定締結済

順位 品目 輸出額 % 主要輸出先

国名 % 国名 % 国名 %

1 まぐろ(冷凍) 461,922 9.5 日本 65.4 タイ 8.6 モーリシャ

ス 8.0

2 牛皮革 366,671 7.5 ベトナム 31.8 香港 28.8 中国 18.6

3 羽毛 199,628 4.1 日本 28.8 韓国 21.3 ベトナム 18.9

4 焼き菓子 161,972 3.3 中国 51.7 米国 13.9 香港 13.0

5 鰹(冷凍) 160,015 3.3 タイ 79.3 フィリピン 6.2 中国 5.9

6 ハタ(活魚) 155,008 3.2 中国 78.9 香港 21.0 韓国 0.1

7 まぐろ(生鮮もしくは冷

蔵) 128,486 2.6

インドネシ

ア 38.3

モーリシャ

ス 29.2 フィリピン 16.2

8 豚皮革 118,049 2.4 ベトナム 28.3 中国 13.8 香港 13.3

9 胡蝶蘭(生花) 103,221 2.1 米国 46.9 日本 22.0 オランダ 5.2

10 いか(冷凍) 85,630 1.8 中国 44.6 ベトナム 22.4 米国 8.5

11 さんま(冷凍) 81,325 1.7 韓国 33.1 中国 30.3 ロシア 10.4

12 大豆(冷凍) 74,759 1.5 日本 87.3 米国 8.1 カナダ 1.0

13 麺類 73,940 1.5 中国 42.0 米国 18.3 香港 12.2

14 酒類 64,250 1.3 中国 42.1 米国 17.6 日本 6.2

15 ティラピア(冷凍) 63,516 1.3 米国 61.8 韓国 9.5 サウジアラ

ビア 5.8

21 輸出額に付された%は農産品輸出額に占めるその品目の割合。国名に付された%はその品目の輸出額に占めるその国

の割合。台湾との二国間貿易・投資関連協定締結済みの国についてはジェトロ HP を参照した(ジェトロ「台湾 WTO・

他協定加盟状況」2017年 3月 29日、https://www.jetro.go.jp/world/asia/tw/trade_01.html、2017年 6月 13日アクセス)。

貿易相手国の色分けは三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングが行った。

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23

16 飼料用副産物 63,479 1.3 ベトナム 53.1 タイ 7.7 韓国 6.8

17 たばこ製品 59,150 1.2 ベトナム 61.6 香港 20.9 日本 8.7

18 うなぎ(活魚) 57,142 1.2 日本 99.6 中国 0.4 韓国 0.0

19 スズキ(冷凍) 46,761 1.0 豪州 66.5 米国 14.1 日本 6.0

20 米 38,789 0.8 パプアニュ

ーギニア 84.9 香港 6.7 中国 2.3

21 砂糖菓子 37,348 0.8 中国 42.1 米国 32.2 香港 13.3

22 発酵茶 36,795 0.8 中国 45.7 米国 12.0 日本 8.0

23 まかじき(冷凍) 34,554 0.7 日本 32.9 韓国 30.7 スリランカ 11.5

24 粉・固形ミルク 32,500 0.7 香港 58.6 中国 23.7 マカオ 4.9

25 たばこ加工品 30,626 0.6 カンボジア 97.4 ニュージー

ランド 1.3 タイ 0.9

26 羊皮革 29,321 0.6 中国 60.5 ベトナム 22.5 香港 8.0

27 さば(冷凍) 28,770 0.6 アラブ首長

国連邦 18.0 タイ 14.3 韓国 12.8

28 バンレイシ(釈迦頭)

(生鮮もしくは冷蔵) 28,014 0.6 中国 98.9 香港 0.8

インドネシ

ア 0.1

29 植物油・植物油製品 27,413 0.6 米国 50.0 マレーシア 10.2 中国 9.8

30 マンゴー(生鮮もしくは

冷蔵) 27,179 0.6 韓国 36.7 中国 30.3 日本 20.8

出所:農産貿易統計要覧をもとに作成

表 8 輸入額上位 30品目と主要輸入元(2015年)(千米ドル)22

順位 品目 輸入額 % 主要輸入元

国名 % 国名 % 国名 %

1 大豆(油糧種子) 1,156,228 8.0 米国 57.4 ブラジル 39.0 カナダ 1.9

2 ワイン 990,130 6.8 英国 37.0 フランス 22.3 オランダ 10.5

3 とうもろこし 872,960 6.0 ブラジル 54.9 米国 44.2 ウクライナ 0.5

4 たばこ製品 502,967 3.5 日本 72.9 マレーシア 13.9 韓国 4.6

5 牛肉(冷凍) 453,802 3.1 米国 33.3 豪州 31.8 ニュージー

ランド 26.6

6 小麦 399,683 2.8 米国 77.0 豪州 18.0 カナダ 2.1

22 輸入額に付された%は農産品輸入額に占めるその品目の割合。国名に付された%はその品目の輸入額に占めるその国

の割合。色・下線の意味は輸出額の表と同じ。貿易相手国の色分けは三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングが行った。

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24

7 綿花 307,203 2.1 米国 46.6 ブラジル 18.8 インド 11.2

8 粉・固形ミルク 301,110 2.1 ニュージー

ランド 59.0 オランダ 7.3 豪州 7.3

9 牛肉(生鮮または冷

蔵) 242,540 1.7 米国 73.7 豪州 18.1

ニュージー

ランド 7.9

10 りんご(生鮮または冷

蔵) 238,957 1.7 米国 30.9 日本 30.2 チリ 19.5

11 製材(針葉樹) 222,869 1.5 カナダ 39.3 米国 15.3 ニュージー

ランド 12.8

12 粗糖・精製糖 214,574 1.5 タイ 57.4 グアテマラ 18.9 エルサル

バドル 10.7

13 製材(非針葉樹) 210,980 1.5 インドネシ

ア 41.0 マレーシア 25.7 米国 7.0

14 飼料用魚粉 207,478 1.4 ペルー 18.8 ベトナム 12.9 インド 12.0

15 豚肉(冷凍) 175,754 1.2 カナダ 31.6 デンマーク 22.9 スペイン 13.1

16 鶏肉(冷凍) 173,863 1.2 米国 90.6 カナダ 9.4 フランス 0.0

17 パーム油 153,048 1.1 マレーシア 94.6 インドネシ

ア 5.1

シンガポー

ル 0.1

18 犬肉・猫肉 140,539 1.0 米国 30.3 タイ 27.1 フランス 13.6

19 羽毛 138,325 1.0 中国 38.0 韓国 23.0 ドイツ 9.3

20 チーズ・カード 131,306 0.9 米国 27.4 ニュージー

ランド 26.5 豪州 11.7

21 焼き菓子 130,992 0.9 日本 29.8 米国 14.6 マレーシア 10.7

22 キャッサバ粉(でんぷ

ん) 123,790 0.9 タイ 84.5 ベトナム 14.8 ラオス 0.5

23 キウイフルーツ(生鮮も

しくは冷蔵) 120,346 0.8

ニュージー

ランド 84.6 イタリア 8.3 フランス 4.2

24 木材パルプ(非針葉

樹) 120,066 0.8 豪州 51.9 タイ 22.5 ベトナム 9.3

25 鮭(生鮮もしくは冷蔵) 115,430 0.8 ノルウェー 87.6 英国 3.6 豪州 2.7

26 じゃかいも調製品 109,576 0.8 米国 44.5 オランダ 17.6 カナダ 8.9

27 植物油・植物油製品 107,465 0.7 イタリア 28.0 カナダ 11.9 スペイン 11.4

28 原木(非針葉樹) 102,496 0.7 マレーシア 54.4 パプアニュ

ーギニア 9.0 米国 8.8

29 コーヒー生豆 99,242 0.7 インドネシ

ア 22.8 ブラジル 18.9 コロンビア 11.5

30 バター 91,859 0.6 ニュージー

ランド 59.3 フランス 13.0 豪州 9.2

出所:農産貿易統計要覧をもとに作成

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25

③ 食料自給率及び需給表

農業生産・貿易の結果が反映される食料自給率(熱量換算によるカロリーベース)を見ると、台

湾の食料自給率は概ね 3 割程度で推移しているが、緩やかな低下傾向にある。2015 年は 31.4%であ

り、1992 年と比べて 8%ポイントほど低下している。砂糖・はちみつは 1994 年には 100%近い自給

率であったが 2005 年には 2 割を切り 14.3%、2015 年は 10.2%となっている。油糧種子はほぼ輸入

依存となっており、米国からの大豆輸入が多くなっている。この点は輸入額上位 30 品目を示した

表 8 にも表れている。野菜は 1993 年までは 100%を超えていたが、低下傾向を示し 2015 年は 89.5%

である。水産品は 100%超を維持し上昇傾向、卵は 100%近傍で推移している。肉類は口蹄疫が発生

した 1997 年を機に 100%を割り込んでおり、97 年が 100.2%、98 年が 90.2%であった。以降も緩や

かな低下傾向にある。

主要作物の需給表では、砂糖や大豆の輸入依存度の高さや、水産品の輸出超過といった傾向が確

認できる。

図 22 食料自給率(熱量換算)

データラベルは食料自給率(食料全体)に付した。

出所:糧食供需年報

図 23 食料自給率(熱量換算)続き

出所:糧食供需年報

39 40 39 37 37 37 37 36 36 35 36 34 32 30 32 30 32 32 31 34 33 33 34

31

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

120.0

1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014

食料自給率 穀類 いも類 砂糖・はちみつ 豆類・油糧種子 野菜

50.0

100.0

150.0

200.0

250.0

1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014

果物 肉類 卵 水産品 乳品類

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26

表 9 主要作物の需給表(2015年)(千トン)

出所:糧食供需年報

輸入 輸出 飼料用 種用 加工用 損失量供給

粗食糧

食用率

(%)

供給

純食料

1. 穀類 1,380 6,162 217 -465 7,593 4,841 12 199 41 2,499 81 2,031

1 米 1,260 153 93 -175 1,298 4 12 50 14 1,218 88 1,072

2 小麦 1 1,420 75 26 1,320 50 0 65 24 1,181 74 868

3 とうもろこし 117 4,255 1 -315 4,687 4,586 0 15 3 83 - 83

4 ソルガム 0 69 - … 69 43 0 26 - - 85 -

5 その他 1 266 47 … 220 158 0 43 1 18 50 9

2. いも類 307 1,462 76 13 1,695 127 3 35 95 1,436 37 538

1 甘藷 230 1 0 - 231 127 0 35 6 63 - 63

2 キャッサバ 1 1,162 43 -33 1,153 0 - 0 58 1,095 18 197

3 馬鈴薯 64 294 1 46 311 - 2 - 31 278 - 278

4 その他 12 5 33 - - - - - - - 25 -

3. 砂糖・はちみつ 68 714 22 … … … - 3 - 651 - 651

1 砂糖 57 709 15 … … … - 3 - 642 - 642

2 はちみつ 12 5 7 - 10 - - - - 10 - 10

4. 豆類・油糧種子 80 2,864 24 99 2,821 - 5 2,138 20 658 98 648

1 大豆 3 2,696 18 99 2,582 - 1 2,078 15 487 - 487

2 落花生 62 10 1 - 71 - 3 27 1 39 75 30

3 胡麻 2 39 0 - 41 - 0 33 0 8 - 8

4 その他 13 119 5 - 127 - 0 0 4 123 - 123

5. 野菜 2,371 430 122 - 2,679 - 5 - 267 2,407 - 2,407

1 葉菜 879 107 14 - 972 - - - 97 875 - 875

2 根菜 215 48 13 - 250 - - - 25 225 - 225

3 塊茎菜 643 99 5 - 738 - 5 - 73 660 - 660

4 果菜 590 154 87 - 657 - - - 66 591 - 591

5 きのこ類 43 21 3 - 62 - - - 6 56 - 56

6. 果物 2,801 562 190 - 3,173 - - 2 317 2,854 - 2,854

1 バナナ 274 0 3 - 271 - - - 27 244 - 244

2 パイナップル 494 31 25 - 499 - - - 50 450 - 450

3 柑橘類 470 47 23 - 494 - - - 49 444 - 444

4 メロン 289 4 0 - 293 - - - 29 264 - 264

5 その他 1,275 479 138 - 1,616 - - 2 161 1,452 - 1,452

7. 肉類 1,493 474 8 6 1,954 - - 83 39 1,831 - 1,831

1 豚肉 863 129 3 6 984 - - 83 20 881 - 881

2 牛肉 7 115 0 - 121 - - - 2 119 - 119

3 羊・山羊肉 2 25 0 - 27 - - - 1 26 - 26

4 鶏肉 621 204 5 - 820 - - - 16 804 - 804

5 その他 … 1 - - 1 - - - 0 1 - 1

8. 卵 413 2 2 - 413 - - - 8 405 - 405

9. 水産品 1,310 376 936 - 750 6 - 40 35 669 - 669

1 魚類 893 185 699 - 379 6 - 21 18 335 - 335

2 えび・かに 34 60 3 - 91 - - 3 4 83 - 83

3 頭足類 271 47 144 - 174 - - 10 8 156 - 156

4 貝類 94 59 87 - 66 - - 0 3 63 - 63

5 その他 4 15 1 - 18 - - 7 1 10 - 10

6 乾物 14 10 2 - 22 - - - 1 21 - 21

10.乳品類 391 179 11 -0 559 - - - 4 555 - 555

1 生乳 391 26 0 - 417 - - - 4 413 - 413

2 粉乳 … 82 5 -0 77 - - - - 77 - 77

3 その他 … 70 6 - 65 - - - - 65 - 65

11. 油脂類 414 389 29 3 771 24 - 175 2 571 - 571

1 植物油脂 377 299 25 3 647 - - 167 1 479 - 479

a. 大豆 353 5 16 3 339 - - - 1 338 - 338

b. 落花生 8 0 0 - 7 - - - 0 7 - 7

c. 胡麻 13 2 4 - 11 - - - 0 11 - 11

d. その他 3 291 4 - 290 - - 167 0 123 - 123

2 動物油脂 37 90 4 - 124 24 - 7 0 92 - 92

a. ラード 37 6 0 - 43 11 - 7 0 24 - 24

b. バター … 27 0 - 27 - - - 0 27 - 27

c. その他 … 57 4 - 53 13 - - 0 41 - 41

国内消費国内生産

在庫

増減

貿易国内

供給