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品質設計特論まとめ1
和歌山大学システム工学研究科
鈴木 新
火曜日 2限目 A204教室
講義内容
1. 品質の概念,ばらつき
2. データ解析
3. タグチメソッドの数理,機能性
4. ケーススタディ,輪講(プレゼン増やす?)
2
講義計画
1. 講義に関する注意点の連絡
2. タグチメソッド概要、ばらつき実験
3. 実験結果プレゼン、品質について
4. タグチメソッド鳥瞰
5. 統計の基礎
6. 技術の評価法
7. 機能性評価実験
8. ロバストパラメータ設計1
9. ロバストパラメータ設計2
10. パラメータ設計実験(機能性1)11. パラメータ設計実験(機能性2)12. パラメータ設計実験(ロバスト設計1)13. パラメータ設計実験(ロバスト設計2)14. まとめプレゼン115. まとめプレゼン2、試験
評価
• 総合評価–課題
–レポート
–プレゼン
–テスト
• 資料はHPに掲載
3
タグチメソッドとは?
• 統計学者の田口玄一博士が体系化
• 「実験計画法で用いられる直交表」と「通信工学で用いられるSN比」を設計問題に適用
• 品質工学(本講義)• タグチメソッド(ロバストデザイン):設計(計測,評価)の方法,本講義ではこれを扱う
• MTS(マハラノビス・タグチシステム):推定,予測の方法,近年注目度が高くなっている
タグチメソッドとは?具体的に
• 実験計画法+SN比+損失関数• 実験計画法(直交表)
– フィッシャーの農場試験
• SN比–通信工学におけるSN比と類似
• 損失関数–安全率とコスト
4
タグチメソッドは何故有効か?
• 目的と結果が明確 → 人工物ならでは
–次期モデルは燃費10%削減–生産数量を15%増やす「○○ができたら30年後には××や△△が・・かもしれない」という開発目標は企業では少ない(存在しない訳ではない)
• 手順が規定されているため使いやすい–計算方法も含めて手順が規定されているため,数学的背景が理解できなくても使える
現場は忙しいので,手っ取り早く答えが欲しい
難解なものは受け入れられない
企業では?• 品質工学会HPより賛助会員• (株) IHI,いすゞ自動車(株),カルソニックカンセイ(株),キャタピラージャパン(株),キヤノン(株),コニカミノルタオプティクス(株),コニカミノルタテクノロジーセンター(株),(株)小松製作所,サイバネットシステム(株),新電元工業(株),田辺三菱製薬(株),(株)ツムラ,デンソーテクノ(株),日東電工(株),日本規格協会,東日本旅客鉄道(株),(株)不二越,富士ゼロックス(株),富士ゼロックスアドバンストテクノロジー(株),富士ゼロックスマニュファクチュアリング(株),富士通(株),富士フイルム(株),古河電気工業(株),(株)松浦機械製作所,マツダ(株),三菱自動車工業(株),三菱重工業(株),YKK(株)
• ちなみに品質工学会の個人会員はほとんどが企業の人
• 上記以外の企業でも導入されている
• 企業では重要な技術とみなされている
5
大学では?
• 日本の大学で品質工学(タグチメソッドを含む)に関する講義はほとんど行われていない
• 海外の大学ではそれなりに教えられている
• 米国の高校や短大,大学の教養課程対象の教科書Cengage LearningのEngineering and Technology, 1st Edition(第5章Manufacturing)にて田口玄一およびタグチメソッドが大々的に紹介されている
• 先端的な研究分野では電磁系最適設計(モータ周辺技術),知能情報処理(遺伝的アルゴリズム),信頼性の分野で多く用いられている
• 日本では品質管理や応用統計などの分野が多い
実習内容1• 携帯電話(スマホ)数台を用意
• 同じものを数台のスマホで条件を変えて撮影
– 同じ機種があればGood– 照明環境(日光 or 蛍光灯)– 撮影角度(真上 or 斜め45℃)– 撮影距離(15cm or 30cm)・・・
• GetRGBなどのソフトを用いてRGB値を取得し、その結果を評価する
10
𝑥𝑥
𝑥
𝑥 =𝑥 + 𝑥 + 𝑥
3
RGB値は平均
6
実習内容2• 同じ種類のペン(ボールペンなど)を数本を用意
• 各部の太さ、長さをノギスによって計測– 同じ個所を何回か測定
– 同じ個所を違う測定者が測定
• その結果を評価する
11
𝑥 , 𝑥 ,⋯ , 𝑥
n:繰り返し、人による違い
ばらつきの確認
• ばらつきの存在の確認–繰り返し精度
• 機種による違い–意図的に変更の場合有り(商品の売り)
• 本講義の第一歩=ばらつきの認識–日本製だから大丈夫?
7
ユーザーの立場では風呂で使用するなと書いていても使用するユーザーはいる!
ユーザーの使用方法は多岐
メーカーの立場では
温度一定!無風!条件を揃えるんだ!
実験の条件を絞って再現性を確認(保?)上司を説得するため?
8
市場はユーザーとメーカーどちらの立場か?
• スマートフォン–お風呂では使用しないでください OK–濡れた手では使用しないでください OK–気温20±2℃で使用してください ?
–カメラ撮影時は対象との距離を20cmにして・・・–画面に接触する指の面積は・・・
–指紋の凹凸深さは・・・
実験室で一生懸命整えた条件は市場において意味があるか?
ものづくりにおける前提条件
• ユーザーが無ければ市場は無い
• ユーザーの使用方法は千差万別–季節の変化
–高度の変化
–あらっぽい人,丁寧な人,力が強い人・・・
–ながら(寝ながら,食べながら・・・)使用
–風呂での使用禁止etc.はOK–その他ユーザー以外については後日解説
• ようは色々な使われ方をするということ
9
不確かさへの対策
• 品質の評価,管理 → 出荷前に全数検査
• 検査項目は
–気温5, 20, 35℃で動作確認–海抜0, 1000mで動作確認–社内で最も体重が重い人,軽い人による動作確認,老若男女,その他・・・
• 検査には莫大な費用(金,人,機械,時間)が必要
• 仮に検査が可能であったとして,品質を満足しなければ不良の山が・・・
• 設計の段階で対策 → タグチメソッド
不確かさへの対策方法の比較
1. 無視2. 不確かさを制御
– 目標から外れた際に,その原因を分析し,取り除く →管理図による工程管理
3. 影響を補正– 目標から外れた際に,その原因を監視,利用して目標値へと補正 → 温度や湿度を利用したエンジン制御
4. 影響の最小化– 何が起きても目標から外れないように設計
– タグチメソッド,ロバストデザイン
10
設計によって品質を獲得
• ばらつき(不確かさ)の存在–製品そのもの(部品他),使われ方(気温,人他)
• ばらつき対策–影響の最小化(設計の工夫) → 低コスト
• 良い製品は設計によって獲得する
• 良い製品は品質検査(管理,選別)では獲得できない
品質工学の考え方
• 同じように写真を撮ってもRGB値は異なる• これらのばらつきの原因はノイズ
デジカメ被写体 撮影画像
入力 出力
撮影方法環境など
ソフト紙など
ソフト部品など
11
誤差因子を考える
• ノイズ=誤差因子
• ばらつきの要因は何か?消費者の立場で
内部のばらつき 【内乱】
色の表現方法(ソフトウェア)、部品ばらつき(個体差)、部品品質(劣化)、他
外部のばらつき 【外乱】
撮影条件、環境(光など)、印刷紙、他
ばらつきを抑える(実例)
• キャラメルの硬さ(森永の事例)
改善前
改善後
目標値
温度
噛みやすさ
12
ばらつきを抑える(実例)
温度
• 無視• 不確かさを制御• 影響を補正• 影響の最小化
科学・技術の研究
1. 目的を決める
2. 手段を考える
3. 目的に対する手段の評価をする
13
タグチメソッドの流れ
1. システム選択(目的と手段)– 仕様(設計対象と機能)を決定
2. パラメータ設計(評価)– 適当なパラメータで実験– 直交表とSN比を利用
3. 許容差設計– 損失関数など経済的考え方
タグチメソッドとはこれ!
技術者の独創性は要求されない
発明とはこれ!技術者の独創性!
企業では重要(コスト),安全率
消費者が高品質と感じる商品は?
• 現場のQC活動が日本品質を作り上げた–当時の商品はJapan Madeの看板(オークション)
• 何が高品質なのか?
• あなたが高品質と思う商品–具体的な商品名
–具体的な理由
– さらに高品質の定義を
–数名で議論をしてください
14
生産者が高品質と感じる商品
• 不良が少ないこと–作った商品の不良率
–売った商品の不良率
–本当の不良率(消費者が気が付かないもの)
–低コスト
品質とは何か?
• 品質と品種
品質とは
あるものの,明示された又は暗黙のニーズを満たす能力に関する特性の全体 (ISO8402)
良い品質とは,永くよく売れる製品の品質 (石川馨)
品物が出荷後,社会に与える損失である。ただし,機能そのものによる損失は除く (タグチメソッド)
品質=機能のばらつきによる損失+使用コスト+公害
QCにおける品質の作りこみは生産現場での不良率低減タグチメソッドでは出荷後の不良率低減を目指す(これが設計品質)
優劣比較に意味があるかどうか
15
生産者が約束すべきことは高機能ではなく高品質
良品 良品
どちらが良い商品でしょうか?
良品
ばらつきは小さい→オフセットすれば良い商品に2段階設計!
二段階設計(動特性とは)
• システムの入力と出力の関係に動きがある場合
→ 動特性
(例)体重計、モーター(エネルギーの変換)
𝑀 𝑀 𝑀
𝑦
𝑀 𝑀 𝑀
𝑦
パラメータ設計
16
二段階設計(静特性とは)
• 入力:固定,出力を安定化 → 静特性
(例)お菓子、不要物
静特性:「望目特性」・「望大特性」・「望小特性」
目標値に揃うほど良い
寸法,出力電圧など
大きいほど良い
強度,寿命など
非負で小さいほど良い
騒音,振動など
𝑦
パラメータ設計
𝑦
二段階設計
①ばらつきを抑える ②目標へ近づける
傾き
17
タグチメソッド手順
• システム選択:設計対象は?目的は?–夏でも冬でも硬さの変わらないキャラメル
• パラメータ設計:設計対象のパラメータは?ノイズは?
–キャラメルの材料、配合、順序、混ぜ方、他
–温度
–上記を色々な組み合わせで実験
–ばらつきが少ない(温度に強い)組み合わせを見つける
–目標値へ調整
機能の測り方(データ)
• 人工物を開発,設計するためには機能が重要
• 機能とは何か?– 目的を達成するための物理的メカニズム
– 物理的メカニズムを考案する(商品のアピールポイント)
– 上手く機能するか? → 実験 → 何らかのデータ(数値化されたもの)が得られるはず
• 得られたデータから善し悪しを判断
–平均値の求め方は?
yn
yym n
1nyy ,,1
18
平均値が分かると何ができる?
• 情報出身者の身長,光メカ出身者の身長,デザイン出身者の身長,どのような場面で利用できる?
• その他,平均値を利用するものには何がある?
• そもそも平均値とは何か?
A B C ・・・
平均値の線これは何か?
平均値とは
A B C ・・・
19
平均値とは
A B C ・・・ この直線は?
平均値とは
得点
20
平均値からのずれ(誤差)
• 平均値からのずれを表す式 myy n ,,,1
?21 mymymy n
2乗すればどうなる?
222
21 )()()( mymymy n
どこかで見た形? 2)( myi
nyynm 1
分散(不偏分散)の前に復習
432 xxx
aaaaa
ix2i
4
1i
5
a
)(
)(
232221
131211
xxx
xxx
1i
2
ijx1j
3
21
分散(不偏分散)
• 平均
• 分散
n
ii
n ynn
yy
1
1 1
n
ii
n mynn
mymy
1
222
1 )(1)()(
n
ii my
n 1
2)(1
n
ii my
n 1
2)(1
1と 正解は?
自由度(平均と分散の違い)
• A君,B君,Cさん,D君,Eさん,5人のテスト結果– A:90,B:80,C:90,D:70,E:80
825
8070908090
■を求められるか?
平均
分散 7015
)8280()8290( 22
■を求められるか?
22
自由度cont’d
7015
)8280()8290( 22
の分子を考える
)8280()8270()8290()8280()8290(
2乗する前の形で足し合わせると
答えは「0」,分散は平均を利用するため最後のひとつの情報が無くても推定できる
平均に比べてひとつ少ない「n-1」で割る理由
自由度(目標値のある場合)
• 目標値80gのチョコレート5個の分散は?– A:90,B:80,C:90,D:70,E:80
分散 ?)8080()80()8090( 222
答:60自由度は5
目標値からの差に注意
5
23
不偏推定量バイアスについて1
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
n
ii
mxnV
xmxmmxmx
xmxmmxmx
xmmxxx
mxn
V
1
2
1
2
1
2
1
22
1
2
1
2
1
2
)(
)())((2)(
)())((2)(
)()(
)(1
母平均をm,標本平均を x
不偏推定量バイアスについて2
2
1
2
2
1
22
1
22
1
2
1
2
)()(1
)(
)(222
)())((2)(
mxVxxn
mxnnV
xxmnmxnnVxmxxmxnV
xmxmmxnVxx
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
• 母分散よりも小さくなっている
• 後述の動特性SN比のSのバイアスと同じ
両辺をnで割る
24
共分散
• 2つの変量(例:身長と体重)があるとき,2変量の平均値からの差の積の平均値
• 2変量の平均値からの差の積
))(())(( yixiyixi mymxmymx
この平均は?何で割る
))((1
1yixi mymx
n
相関の例
相関の有無を確認•そのままプロット(変量間の大きさが異なると確認が困難)•標準化してプロット(変量間の大きさの違いが揃い確認容易)
正の相関 負の相関 無相関 独立
標準化,規格化(平均を引き、標準偏差で割る)平均 0、分散 1になる
s
myY ii
25
相関関係と回帰関係
これは相関 これは回帰直線では?
相関関係と回帰関係の違いは?
•相関は独立した2つの特性の関係•回帰は原因と結果の関係
それぞれ何に利用できるか?
相関と回帰の違い相関
2特性(変量)の関係回帰
原因と結果
誤差はyにのみ存在する。原因(働きかけx)に誤差はない。イメージは秤の評価。正確な重さが分かっているおもりを用いて評価する。この時,おもりには誤差は無いとする。誤差は秤(表示他)に存在する。この誤差を最小化する方法がタグチメソッド。
x
y
26
タグチメソッドにおけるデータ解析
• データ解析=ばらつきの評価 → 2乗和の分解
A B C ・・・
1y 2y ny
n
iiT yS
1
2どのような成分に分解できるか?
m
2乗和の分解
A B C ・・・
1y 2y ny
誤差を含んで2乗されている
m
n
iiT yS
1
2
誤差変動を とすればeS eT SnmS 2
27
誤差と信号
を信号の大きさとして と表す
emT SSS
2nm mS
これをもとに信号を2/ mnSm
ノイズを ee VnS )1/(
SN比は )/log(10:/ 22ee VmVm
分子の計算法は多数存在=複数のSN比有
m
VCV e
変動係数
自由度
2乗和の分解まとめ
全2乗和
n
iinT yyyyS
1
2222
21
平均変動2nmSm
誤差変動 mTe SSS
A B C ・・・
1y 2y nym
ばらつきを減らすとはSeを減らすこと
28
原点を通る比例式(1次式)
一次式(原点比例式)の関係
→ 入力が増えると出力も増える(動的)
y
M
My
比例式における2乗和の分解
y
M
My
1y2y
ny
n
iinT yyyyS
1
2222
21
1M 2M 3M
221 nMMS
SSS Te
全2乗和
比例項の変動
誤差変動
平均値が1次式(回帰直線)に変わった
29
誤差と信号(比例式の場合)
(傾き)が信号
eT SSS
2ノイズは平均値の場合と同じく より
ee VnS )1/(
SN比は )/log(10:/ 22ee VV
自由度
ユーザーの立場では
使用方法の違い、紙の違い、etc.
30
条件の違い
45° 90°
再生紙 上質紙
2乗和の分解(多層:複数条件)
A B C ・・・
11y 21y
全2乗和
2m
n
ii
n
iiT yyS
1
22
1
21
1m
ny2ny1
a b c ・・・
平均変動22nmSm
31
2乗和の分解(多層:複数条件)
A B C ・・・
11y 21y
誤差変動:A, ・・における誤差変動、a, ・・における誤差変動、条件による誤差変動(平均値からの変動)
2m
n
ii
n
iie ymymS
1
222
1
211
1m
ny2ny1
a b c ・・・
m
2乗和の分解(多層:複数条件)
A B C ・・・
11y 21y
誤差変動:A, ・・における誤差変動、a, ・・における誤差変動、条件による誤差変動(平均値からの変動)
2m
n
i
n
iaA mmmmS
1
22
1
21
1m
ny2ny1
a b c ・・・
m
32
多層の2乗和の分解まとめ
全2乗和
平均変動
誤差変動
ばらつきを減らすとはSeおよびSA×aを減らすこと
n
ii
n
iiT yyS
1
22
1
21
22nmSm
n
ii
n
iie ymymS
1
222
1
211
n
i
n
iaA mmmmS
1
22
1
21条件変動