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第16回 日本臨床腸内微生物学会 総会・学術集会 プログラム・抄録集 主催:日本臨床腸内微生物学会

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第16回

日本臨床腸内微生物学会

総会・学術集会

プログラム・抄録集

主催:日本臨床腸内微生物学会

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この度は第 16 回日本臨床腸内微生物学会総会・学術集会を担当させて頂き,誠にありが

とうございます.私の恩師である,横山 隆 広島大学名誉教授による第 4 回学術集会以来,

12 年ぶりの広島での開催であり,2010 年に新設された広島大学病院感染症科にとって,初

めての学術集会主催となることを大変光栄に存じております.開催まで御支援頂きました

本学会役員ならびに団体・企業の皆様に,心より感謝申し上げます.

本学会は,口腔から肛門に至る消化管に存在する微生物の,様々な側面を臨床的に研究

する場として設立されました.対象となる微生物が膨大であるがゆえに,研究が容易でな

いと同時に大きな可能性を秘めている分野であります.今後益々役割が大きくなる中で,

この領域の学問の発展の一助となる学術集会となるよう,準備をして参りました.

学術集会の魅力は知的刺激であります.特別講演として国立科学博物館の篠田謙一先生

に,ヒトの DNA 分析を元にした日本人の成り立ちをお話頂きます.腸内微生物の分化,成

り立ちを想起させるお話で,様々なアイデアにつながることと思います.また教育講演は,

日本経済新聞朝刊の「食あれば楽あり」という名物コラムを連載中で,発酵学者である小

泉武夫先生にお願いしました.「発酵」という神秘的な現象の奥深さに触れて頂くことで,

消化管内の理解が深まると期待しております.

シンポジウムは,腸内微生物を制御することで得られる臨床的な成果について,各分野

の第一人者の先生方に御講演をお願い致しました.そして学術集会として重要な一般演題

を広く募集しました.限られた時間ではございますが,活発なご討議をお願い致します.

御応募頂きました先生方に改めてお礼申し上げます.

無菌状態で生まれてきた私たちに,あっという間に入り込み,生涯共存する不思議な微

生物たちを論じる 1 日です.ご参加の皆様にとって刺激多い学術集会となることを祈念し

ております.

2013年8月

第16回日本臨床腸内微生物学会総会・学術集会 会長 大毛 宏喜

( 広島大学病院 感染症科 )

開催にあたって

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開催にあたって

目 次

1.開催概要 03

2.アクセスガイド 04

3.会場案内 06

4.タイムテーブル 07

5.学会参加者への案内 08

6.演者の先生方へのご案内 09

7.プログラム 10

8.講演抄録 13

1) 特別講演

2) 教育講演

3) シンポジウム

4) 一般演題

9.規約,理事・監事・評議員名簿 33

10. 協賛企業一覧 36

目 次

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第16回日本臨床腸内微生物学会総会・学術集会

会 長 : 大毛 宏喜(広島大学病院 感染症科)

会 期 : 2013年8月31日(土)

会 場 : 広島大学 広仁会館 大会議室

〒734-8551 広島県広島市南区霞1丁目2-3

TEL:082-257-1613

受 付 : 08:30 ~

本 会 : 09:00 ~ 17:00

理事・評議員会 : 11:30 ~ 11:50

総 会 : 13:00 ~ 13:20

事 務 局 : 第16回日本臨床腸内微生物学会総会・学術集会事務局

広島大学病院 感染症科

TEL:082-257-1613

FAX:082-257-1613

E-Mail: [email protected]

後 援 : 広島県歯科医師会

広島大学医学部 外科学第一教室 同門会

◆ ご参加の際には,本抄録集を忘れずにご持参くださいますようお願い致します.

開 催 概 要

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◆ 広島空港からJR広島駅まで

◆ 岩国空港からJR広島駅まで

◆ JR広島駅から広島大学病院まで

◆ 広島バスセンターから広島大学病院まで

アクセスガイド

JR広島駅

(広島市)

JR岩国駅

(岩国市)

JR広島駅

(広島市)

広島空港

リムジンバス (広島駅新幹線口行)

約 45 分

1,300 円

広島大学病院

(終点)下車

広電バス

(5 号線)

広電バス

(26-1 号(旭町)線)

線)

広島大学病院

入口下車

バス

大学病院行

バス

段原・旭町行

タクシー

広島大学病院

JR広島駅

(広島市)

広島大学病院

バス

大学病院行

広島大学病院

(終点)下車

紙屋町県庁前

バス停

約 20 分

220 円

約 20 分

220 円

約 10 分

約 1,200 円

約 20 分

210 円

徒歩

約 3 分

約 15 分

150 円

約 45 分

740 円

広島バス 23・23-1 号

(横県)線

広島バス

センター

(広島市)

岩国錦帯橋空港

(山口県岩国市)

岩国錦帯橋空港 連絡バス

(JR岩国駅行)

広島空港

(三原市)

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◆ 広域マップ

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■ 広島大学病院(広島大学 霞キャンパス)構内図

■ 広仁会館1階 ■ 広仁会館2階

会場のご案内

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大 会 議 室 小会議室 中会議室

受付開始

企業展示

コーヒー

ブレイク

開会挨拶

一般演題Ⅰ「基礎」

司 会 田口晴彦 菅井基行

休 憩

シンポジウム「腸内微生物制御の可能性」

司 会 砂川慶介 古川清憲

演 者 大原直也 大西徹郎

水野元夫 辨野義己

休 憩 理事・評議員会

ランチョンセミナー(共催:ファイザー株式会社)

司 会 神谷 茂

演 者 三鴨廣繁

休 憩

総 会

特別講演

司 会 大毛宏喜

演 者 篠田謙一

一般演題Ⅱ「口腔細菌」

司 会 坂本春生 中川良英

休 憩

教育講演

司 会 岩田 敏

演 者 小泉武夫

休 憩

一般演題Ⅲ「大腸」

司 会 渡邉邦友 中村明子

閉会挨拶

タイムテーブル

08:30

09:00

09:05

09:55

10:05

11:30

11:50

12:50

13:00

13:20

14:15

15:00

15:10

16:10

16:05

16:55

17:00

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1.参加受付

受付時間:2013年8月31日(土) 午前8時30分~

受付場所:広島大学 広仁会館 大会議室前

2.学会参加費

学会参加当日に受付にてお支払いください.

参加費:5,000円 研修医・学生:無料

3.抄録・プログラム

会員の方には事前に事務局よりお送りしておりますが,ご希望の方には当日受付にて

1部1,000円で販売致します.

4.コーヒーブレイク

同館1階の中会議室にて飲み物等をご用意しております.適宜お召し上がりください.

5.企業展示

同館1階の中会議室にて企業展示を行っております.

6.クローク

中会議室の1角に仮設クロークを特設致します.スペースに限りがございます為,大

きなお荷物のみのお預かりとさせていただきます.

7.事務局からのお知らせ

・構内すべて禁煙となっております.

・学会当日に入会受付も行っております.

ご希望の方は受付までお越しください.(年会費5,000円 入会金なし)

学会参加者へのご案内

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Ⅰ.演者の皆様へ

1.発表形式はすべて PC を用いた口頭発表です.

2.一 般 演 題 発表時間:07分 質疑応答:3分

シンポジウム 発表時間:20分 総合討論:なし

■ パソコン持ち込みの場合(Windows または Machintosh)

・ 大会議室前の PC 受付にてパソコンの出力チェック後,発表セッション開始

30分前までに,会場内演題付近のオペレーター席までパソコンをお持ち下

さい.パソコンは発表終了直後にオペレーター席にて返却致します.

・ ノートパソコン持込の場合でも,バックアップ用データを CD-R または USB

フラッシュメモリでご持参ください.また,パソコンの AC アダプターは必

ずご自身でご用意ください.

・ 会場でご用意する PC ケーブルコネクタの形状は D-Sub15 ピンです.この

形状にあったノートパソコンをご用意ください.また,この形状に変換する

コネクタを必要とする場合には必ずご自身でお持ちください.

・ OS,アプリケーションソフトはご自身で使用しているものをご利用いただ

けます.(Keynote 含む)

・ スクリーンセーバーならびに省電力設定は事前に解除してください.

■ データ持込の場合(Windows のみ)

・ データファイル名には演題番号・演者氏名(漢字)を必ずつけてください.

・ フォントは文字化け,レイアウトの崩れを防ぐ為,下記フォントに限定させ

ていただきます.

MS ゴシック,MS P ゴシック,MS 明朝,MS P 明朝,Arial,

Arial Black,Century,Century Gothic,Times New Roman

・ データは最新のウィルス駆除ソフトにてチェックをお済ませの上,ご持参く

ださい.

・ WindowsPC 上で問題なくスライドショーが再生されるかを確認してからご

持参頂くことをお薦めします.

・ 当日会場に設置される PC の OS は Windows7です.

使用可能アプリケーション:Windows Powerpoint 2003,2007,2010

3.動画,音声ファイルのご使用はパソコン持ち込みの場合に限らせていただきます.

Ⅱ.日本臨床腸内微生物学会雑誌(第16巻)投稿のお願い

本会での発表内容は,記録集として発行致します.

ご発表・御講演の先生方には,すべてのご講演内容につきまして,講演後抄録のご提出

をお願い致しております.後日,事務局から日本臨床腸内微生物学会誌(第16巻)へ

の投稿をご依頼させて頂きますので,ご多忙とは存じますがご高配の程よろしくお願い

申し上げます.

演者の先生方へのご案内

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09:00-09:05 開会挨拶

会 長 大毛 宏喜(広島大学病院 感染症科)

09:05-09:55 一般演題Ⅰ「基礎」

司 会 田口 晴彦(杏林大学保健学部 免疫学研究室)

菅井 基行(広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 細菌学教室)

1.「植物由来乳酸菌 Lactobacillus brevis 174A が産生する

二成分バクテリオシンの特性」

野田 正文 (広島大学大学院 医歯薬保健学研究院)

2.「本邦における Clostridium perfringens の毒素遺伝子保有状況の検討」

和田 薫子 (ミヤリサン製薬株式会社)

3.「多剤耐性緑膿菌に対する colistin の in vitro 併用効果の検討」

長岡 里枝 (広島大学病院 診療支援部 感染症検査部門)

4.「Bacillus cereusに対する二酸化塩素の抗芽胞作用に関する検討」

若狭 麻未 (川崎医療福祉大学大学院 医療技術学研究科 臨床栄養専攻)

5.「健常高齢者における腸内細菌と個人の特性・生活習慣」

當山むつみ (独立行政法人理化学研究所 イノベーション推進センター 辨野特別研究室)

09:55-10:05 休 憩

10:05-11:30 シンポジウム「腸内微生物制御の可能性」

司 会 砂川 慶介(北里大学 感染制御研究機構)

古川 清憲(医療法人社団埴原会 赤羽病院)

1.「異所性感染および全身疾患に対する歯周病原細菌の病原性の理解」

大原 直也 (岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 口腔微生物学分野)

2.「急性期病院における口腔管理から見た,口腔内細菌制御の重要性について」

大西 徹郎 (市立池田病院 歯科口腔外科 口腔ケアセンター)

3.「Helicobacter pylori 制御による胃癌撲滅の可能性」

水野 元夫 (広島市立広島市民病院 内科)

4.「腸脳相関を制御する腸内微生物」

辨野 義己 (独立行政法人理化学研究所 イノベーション推進センター 辨野特別研究室)

11:30-11:50 休 憩

※ 小会議室にて理事・評議員会を開催致します.

11:50-12:50 ランチョンセミナー 共催:ファイザー株式会社

司 会 神谷 茂(杏林大学医学部 感染症学教室)

「ミクロビオータ(腸内細菌叢)に関する最近の話題」

三鴨 廣繁 (愛知医科大学大学院医科研究科 臨床感染症学)

12:50-13:00 休 憩

13:00-13:20 総 会

プログラム

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13:20-14:15 特別講演

司 会 大毛 宏喜(広島大学病院 感染症科)

「DNAが語る日本人の成立」

篠田 謙一 (独立行政法人 国立科学博物館 人類研究部)

14:15-15:00 一般演題Ⅱ「口腔細菌」

司 会 坂本 春生(東海大学医学部附属八王子病院 口腔外科)

中川 良英(医療法人修英会 中川医院)

1.「胃癌患者における Helicobacter pylori と口腔内環境の相関性」

西 裕美 (広島大学病院 口腔総合診療科)

2.「東海大学八王子病院における口腔ケアの現状について」

関根 理予 (東海大学医学部附属八王子病院 口腔外科)

3.「重症口腔粘膜炎より Stenotrophomonas maltophilia が検出された 2 例」

梶谷 佳世 (広島大学病院 診療支援部 歯科衛生部門)

4.「化学療法中に発症する口腔粘膜炎における口腔管理の有用性について」

宗永 修一 (国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 歯科口腔外科)

15:00-15:10 休 憩

15:10-16:05 教育講演

司 会 岩田 敏(慶應義塾大学医学部 感染症学教室)

「発酵の歴史と臨床応用について」

小泉 武夫 (NPO法人 発酵文化推進機構)

16:05-16:10 休 憩

16:10-16:55 一般演題Ⅲ「大腸」

司 会 渡邉 邦友(社会医療法人厚生会 木沢記念病院 中央検査センター)

中村 明子(東京医科大学)

1.「ヒト腸管スピロヘータ症の病原性に関する臨床病理学的検討」

緒方 衝 (防衛医科大学校 臨床検査医学講座)

2.「C.DIFF QUIK CHEK COMPLETE を用いた

Clostridium difficile 抗原(GDH)検出の有用性」

原 稔典 (広島大学病院 診療支援部 感染症検査部門)

3.「乳児の市中 Clostridium difficile 感染症の 4例」

松原 啓太 (県立広島病院 小児科)

4.「ネスト化した培養法による,潰瘍性大腸炎患者における

糞便中のフソバクテリウム属の検出」

湯川 豊一 (東京慈恵会医科大学附属柏病院 消化器・肝臓内科)

16:55-17:00 閉会挨拶

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講演・発表要旨

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【特別講演】

DNAが語る日本人の成立

国立科学博物館 人類研究部

篠田 謙一

今世紀になって世界の各地でヒトDNAの解析が盛んに行われるようになった結果,地

域集団の遺伝的な特徴が明らかになっている.遺伝的な相違は,それぞれの集団の成立の

経緯の違いを反映している.従って地域集団間の遺伝的な関係は,人類の起源と拡散を知

る手掛かりとなる.

このような手法を用いて現在では,およそ20万年前にアフリカで誕生した現生人類(ホ

モ・サピエンス)がどのように世界に拡散したかというおおまかなシナリオが描かれてい

る.その中で日本人の起源も,アジアにおける集団の移動と融合という観点から語られる

ようになっている.

狩猟採集民としてスタートした人類はおよそ6万年前にアフリカを旅立ち,数万年をか

けて世界の各地に展開した.1万年より新しい時代になると世界の各地で農耕が発達し人

口が急増する.そのため農耕発祥の地から周辺への移動が始まり,世界の各地で在来の狩

猟採集文化との融合が引き起こされた.日本でも狩猟採集生活を送っていた縄文の社会に,

大陸から水田稲作農耕を持った渡来系弥生人がやってきて新たな社会が完成した.この両

者の関係が,現在に続く集団の遺伝的な構成を決定していると考えられている.

本講演では主としてミトコンドリアDNAを用いた系統解析から明らかとなった日本人

の成立過程を考察する.古人骨由来のDNAを含めた分析の結果,日本列島集団は,従来

から主張されていたような,在来の縄文人と渡来系弥生人との単純な融合で成立したわけ

ではないことが指摘されており,DNA分析は更に複眼的な視点が必要であることを教え

ている.

より詳細な医療データを得ることが出来るようになった現在,集団内に見られる個体差

や地域差を理解することの重要性は増している.医療の世界でも私たちの成り立ちを知る

ことの今日的な意味は大きいと考えている.

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【教育講演】

発酵の歴史と臨床応用について

NPO法人 発酵文化推進機構

小泉 武夫

「発酵」の意味の一つに「目にも見ることのできない微細な生命体の微生物が,人類の

ために有益な物質をつくること」,があり,医学,薬学,栄養生理学などに於いても,この

分野は昔から大きな貢献を果してきた.例えば手術時に不可欠であったり,多くの伝染性

疾病を防ぐのに顕著な効能を持つ抗生物質も発酵によって生産され,また抗癌剤,ビタミ

ン,ホルモン,アミノ酸類,各種医薬用酵素類,乳酸菌製剤,医薬用特殊有機酸や核酸な

ど,医薬用特殊糖類関連物質なども今では発酵工業分野の一つとなっている.

さらに,さまざまな発酵食品には,多くの栄養成分が含まれているほか,免疫効果も数

多く報告されている.講演では人類の歴史上,薬や治療の分野に果してきた発酵の役割・

業績について述べると共に,その現状と将来の展望なども述べる.

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【シンポジウム:腸内微生物制御の可能性】

異所性感染および全身疾患に対する歯周病原細菌の病原性の理解

岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 口腔微生物学分野

大原 直也

口腔感染症,特に歯周疾患が心血管疾患,糖尿病など,慢性疾患を中心に全身性の疾患

の発症・病態の進行に関わっていることが,疫学的解析および実験的解析から明らかにな

ってきた.歯周疾患では Porphyromonas gingivalis が歯周病原細菌の主要な菌種のひとつ

であり,ジンジパインと呼ばれる強力なプロテアーゼ,線毛,莢膜が主要な病原性因子に

挙げられている.

P. gingivalis は口腔内では多くは緩慢な進行により歯周組織に限った破壊をもたらす.し

かし,口腔以外の臓器・組織では口腔内とは異なる炎症症状をもたらす可能性がある.マ

ウスの背部にコイルを埋め込むことで作製したチャンバーに細菌を接種,回収するチャン

バーモデルと,マウス背部皮下に細菌を接種し,その後腹部に形成される膿瘍・潰瘍の程

度によって病原性を判断するマウス膿瘍形成モデルを用いて P. gingivalis の新たな病原性

因子の探索を行なった.これらのモデルは歯周組織の病態という観点からは適当ではない.

しかし,異所性感染,全身への影響という観点からは許容できる実験モデルと考えられる.

その結果,二成分制御系応答調節因子 RprY,TPR ドメインタンパク質 TprA,ペリプラズ

ムおよび外膜に局在する TapA-TapB-TapC が本菌の病原性に関与することが明らかにな

った.

P. gingivalis の病原性について細胞レベルでも検討を行なった.PI3K-AKT シグナル伝

達系は細胞増殖,細胞周期,タンパク質合成,糖代謝など様々な細胞反応を制御し,その

制御機構の破綻は多くの疾病の原因となる.多くの微生物感染ではこの経路が活性化され

るが,P. gingivalis の感染では抑制されることが明らかになった.

以上のことを踏まえ,歯周病原細菌およびその病原性因子と全身疾患との関連性について

考察していきたい.

平成 02 年 03 月 長崎大学歯学部 歯学科 卒業

平成 02 年 04 月 長崎大学歯学部 助手 口腔細菌学講座

平成 08 年 02 月 長崎大学歯学部 助教授 口腔細菌学講座

平成 19 年 02 月 国立感染症研究所 免疫部 第四室長

平成 21 年 07 月 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 教授 口腔微生物学分野

略 歴

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【シンポジウム:腸内微生物制御の可能性】

急性期病院における口腔管理から見た,口腔内細菌制御の重要性について

市立池田病院 歯科口腔外科,口腔ケアセンター

大西 徹郎

一般に口腔内細菌と腸内細菌の濃度はほぼ同じであり,体内で最も多くの微生物が生息

する部位とされている.しかしこれらの細菌の相互関係などに関してはまだあまり明らか

にされていない.

平成 24 年 4 月の保険改訂にて,がんなどの周術期および抗がん剤治療時における口腔機

能管理について初めて保険算定が可能になった.これまでも周術期においては外科的な治

療のみならず,手術看護,栄養管理やメンタルケアなどの様々な Intensive care の重要性

が示されており,広く行われているが,今回の改訂によりこれらのケアと同様に,口腔の

機能管理の必要性が認識されたものと考えられる.

当院では約 10 年前より入院患者に対する口腔管理の取り組みを始め,平成 16 年に本邦

で初めて院内口腔ケアセンターを設置し,病院内の口腔ケアの統括管理,実践を行ってい

る.この取り組みのなかで周術期口腔管理を行うことにより在院日数を削減できることや

術後の熱発件数を減少させることを明らかにした.また口腔ケアが入院患者に対する投薬

などの医療資源の投入量を削減することを示し,病院経営においても口腔内の細菌のコン

トロールが非常に大きな意味を持つことを報告した.

一方,腸内微生物に関しては Colorectal cancer と Fusobacterium, Bacteroides,

Campylobacter などの関連性を指摘する報告があり,Fusobacterium は口腔内でも検出さ

れることから,その関連性に興味が持たれている.当院の臨床的な検討においても,

Colorectal cancer 患者では口腔内の衛生状態は不良であり,他の部位の悪性腫瘍に比較し

て口腔内細菌数が多いことなどがわかり,口腔と腸内微生物の関連性が示唆される結果と

なった.

今回のシンポジウムでは当院での取り組みをご紹介すると共に,消化管の入り口である

口腔ケア,口腔管理の意義などをご紹介したい.

昭和 59 年 広島大学歯学部 卒業

同年 大阪大学歯学部 第二口腔外科 入局

平成 06 年 市立池田病院 歯科 医長

平成 10 年 同歯科,歯科口腔外科 部長

平成 20 年 同歯科,歯科口腔外科 主任部長,口腔ケアセンター長兼任

略 歴

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【シンポジウム:腸内微生物制御の可能性】

Helicobacter pylori 制御による胃癌撲滅の可能性

広島市立広島市民病院 内科

水野 元夫

Helicobacter pylori は,胃に感染するグラム陰性桿菌である.感染により引き起こされ

る慢性胃炎を背景にして,胃癌,胃・十二指腸潰瘍,胃 MALT リンパ腫など,様々な H. pylori

関連疾患を引き起こす.平成 25 年 2 月,ついに慢性胃炎における H. pylori の診断および

除菌治療が保険適用になった.不定愁訴を有する慢性胃炎患者における除菌治療の症状改

善効果は明確でない.慢性胃炎における H. pylori 除菌の目的は,H. pylori 感染胃炎を背景

として引き起こされる疾患,特に胃癌の予防であり,今回の慢性胃炎への保険適用拡大の

本質的な意義は,このことを保険診療として行えるようになったことである.

我々の検討では,胃癌予防には萎縮が進展していない若年者での除菌がより有効である

ことが判明している.また,H. pylori の感染経路は乳幼児時期に,特に母親からの経口感

染とされている.若年 H. pylori 感染者の除菌は,感染源となる保菌者を減少させ,新たな

感染者を減少させる.H. pylori 非感染者では,胃癌のリスクはほとんどないため,新たな

H. pylori 感染者を減少させることで胃癌は加速度的に減少し,さらには撲滅できる.胃癌

撲滅へのスピードをさらに加速させるため,若年者 H. pylori 感染者の除菌に行政が介入し,

推進していくことが急務である.

一方,H. pylori 除菌により確実に胃癌のリスクは減少するものの,そのリスクは 10 年以

上の長期にわたり残存する.フォローアップが中断したため,進行癌で発見された症例も

経験している.また,わずかながら再感染も認められる.除菌後のフォローアップは欠か

せないということを,医療従事者が認識し,除菌治療時に患者に十分に説明することが不

可欠であることを強調したい.

昭和 53 年 岡山大学医学部 卒業

昭和 57 年 アメリカ合衆国コロラド大学医学部 内科消化器科 留学

平成 13 年 岡山大学大学院 医歯学総合研究科 消化器・肝臓・感染症内科学 助教授

平成 17 年 広島市立広島市民病院 内視鏡科 主任部長 岡山大学医学部 臨床教授

平成 23 年 広島市立広島市民病院 内科主任部長

平成 25 年 広島市立広島市民病院 内科特任主任部長

略 歴

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【シンポジウム:腸内微生物制御の可能性】

腸脳相関を制御する腸内微生物

独立行政法人理化学研究所 イノベーション推進センター 辨野特別研究室

辨野 義己

腸内微生物はヒトの健康に多大な影響を与えており,特に免疫系疾患や大腸ガンとの関与が知られ

ている.また,近年,肥満や寿命など大腸内環境と直接的に接していない全身系への影響も報告され

ている.脳も例外ではなく,腸と脳は,神経系やホルモン,サイトカインなどの共通の情報伝達物質

と受容体を介し,双方向的なネットワーク「腸脳相関」を形成している.さらに最近の研究で,腸脳

相関の腸管側刺激因子と腸内微生物が強く関わっていることが明らかとなり,神経発達障害や脳の発

達と行動にも腸内細菌叢が影響することが報告されてきた.しかしながら,神経伝達物質以外の脳内

代謝系への影響を調べた研究は少なく,未解明のままである.私どもは脳内代謝物の網羅的解析によ

り,腸内微生物が大脳に与える影響を調べたので報告する.

【方法】同じ両親から生まれた雄マウスを無菌マウスと通常微生物叢マウスの2グループに分けて飼

育し,7週齢で安楽死後,直ちに大脳皮質を取り出した.広範囲の成分を分離・分析することが可能

なCE-TOFMSを用い,脳内代謝物のメタボロミクスにて網羅的に解析した.

【結果および考察】大脳皮質から196の代謝産物が検出された.無菌マウスの方が通常微生物叢マウ

スより濃度が高かった成分は23成分検出され,この中には,行動と関連深い神経伝達物質ドーパミ

ン,統合失調症との関連性が示されているアミノ酸のセリン,多発硬化症やアルツハイマーとの関連

性が知られているN-アセチルアスパラギン酸が含まれていた.さらに,解糖系中間代謝産物や補酵

素NADHやNADP+とエネルギー代謝に関連する成分も含まれており,大脳のエネルギー消費にも腸

内微生物が影響していることが明らかになった.すなわち,腸内微生物が宿主の思考や行動にも影響

している可能性が示唆されたのである.無菌マウスの方が通常微生物叢マウスより濃度が低かった成

分は15成分検出され,この中には,神経伝達物質の前駆物質である芳香族アミノ酸(トリプトファ

ン,チロシン,フェニルアラニン)や,てんかんとの関連性が示唆されているピペコリン酸などが含

まれていた.本研究結果は,腸内微生物が大脳の代謝系に大きな影響を与えていることを示しており,

脳の健康,疾病,発達および衰弱,さらにヒトを含めたほ乳類の学習,記憶および行動の研究におい

て重要な基礎的知見となった.

(独)理化学研究所イノベーション推進センタ−辨野特別研究室 特別招聘研究員.

農学博士, 専門領域は腸内環境学,微生物分類学.日本臨床腸内微生物学会理事,(社)全国発

酵乳・乳酸菌飲料協会理事,(財)ヤクルトバイオサイエンス研究財団評議員,国際嫌気性グラム陰

性無芽胞桿菌分類命名小委員会委員, 日本獣医学会賞(1986年) ,日本微生物資源学会賞 (2003

年),文部科学大臣表彰•科学技術賞(2009年).

主な著書には「「大便通」(幻冬舎),「整腸力」(かんき出版)「大便力」(朝日新書)など.

略 歴

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【一般演題Ⅰ-1】

植物由来乳酸菌 Lactobacillus brevis 174A が産生する二成分バクテリオシンの特性

広島大学大学院 医歯薬保健学

野田正文,的場康幸,熊谷孝則,杉山政則

【目的】

乳酸菌の中には, バクテリオシンと総称される抗菌ペプチドを産生する株が存在する.文

部科学省・知的クラスター創成事業における研究成果として, 伊予柑より分離した乳酸菌

Lactobacillus brevis 174A が, Streptococcus mutans や Listeria monocytogenes に対して

抗菌活性を示す二成分バクテリオシンを産生することを見出した.本研究では, brevicin

174A-β 及び 174A-γ と命名した 174A 株の産生する 2 種類のバクテリオシンの抗菌スペク

トルの調査と, 生合成遺伝子クラスターの解析を行った.

【実験方法及び結果】

本株の保有するプラスミド上より brevicin 174A生合成遺伝子をクローニングし, その塩

基配列を決定したところ, 9 個の ORF (breA~breH) より構成されることがわかった.2 つ

のバクテリオシン生合成遺伝子 (breB, breC) が確認されたことから, それぞれのバクテリ

オシンの抗菌スペクトルと, 両者による相乗効果をバイオアッセイにて調査した結果,

brevicin 174A は class IIb バクテリオシンであることが推定された.また, 転写調節因子と

推測される breD 及び breG の両遺伝子産物の結合配列を決定した.その結果, breD は

immunity protein (自己耐性因子) をコードする breE のプロモーター領域に, そして breG

は breBC オペロンの上流にある共通プロモーター領域に結合することが判明した.

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【一般演題Ⅰ-2】

本邦における Clostridium perfringens の毒素遺伝子保有状況の検討

ミヤリサン製薬株式会社 1),杏林大学医学部 感染症学教室 2)

杏林大学保健学部 免疫学研究室 3),東京都健康長寿医療センター4)

和田薫子 1), 高橋志達 1), 2), 岡 健太郎 1),田口晴彦 3),稲松孝思 4),神谷 茂 2)

【目的】

Clostridium perfringens (CP)は腸内常在菌である一方,食中毒,抗菌薬誘導下痢症,ガ

ス壊疽及び壊死性腸炎(NE)等の原因菌として知られている.これらの疾患は CP が産生す

る種々の毒素により惹起されるが,特に NE では α,β 及び β2 毒素に加え,近年では,NetB

と呼ばれる毒素の関与が強く示唆されている.しかし,本邦における NetB 陽性 CP に関す

る報告はほとんどない.そこで我々は家畜およびヒト由来 CP 株または DNA をサンプルと

して NetB を含む CP の毒素遺伝子の検出を試みた.

【方法】

食肉鶏,産卵鶏及びブタの糞便 113 検体より,合計 68 株の CP を分離培養した.さらに,

産卵鶏の分離菌株,ブタの CP 陽性糞便から抽出した DNA,ブタ由来菌株の DNA,ヒト

由来菌株を加えた全 168 検体を用いた.既報のプライマーを用い,netB 及び cpa,cpb,cpb2

の各毒素遺伝子を PCR 法により検出し,その有無に基づいて検体を分類し,農場もしくは

病院ごとの比較を行った.

【結果及び考察】

CP 分離菌株または CP 陽性検体において,netB 検出率は食肉鶏 13% (2/15),産卵鶏 37%

(21/57) 及びブタ 30% (19/63) であったが,ヒト由来菌株は全て陰性(0/33)であった.各毒

素遺伝子の有無を比較した結果,合計 7 つの毒素型に分類され,施設間で優勢な毒素型が

異なっていた.以上の結果から,本邦においても,netB 陽性株が家畜を中心に広範に分布

しており,毒素パターンは畜種やヒト,または施設間で異なることが示唆された.今後は,

感染宿主の種類と毒素パターンの違いや,NE との関連性について更なる検討が必要である.

会員外共同研究者:大崎敬子, 花輪智子, 蔵田訓, 米澤英雄(杏林大学医学部 感染症学教室)

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【一般演題Ⅰ-3】

多剤耐性緑膿菌に対する colistin の in vitro 併用効果の検討

広島大学病院 診療支援部 1),広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 2)

広島大学病院 検査部 3),広島大学病院 感染症科 4)

長岡里枝 1),猪川和朗 2),小野寺 一 1),木場 由美子 1),原 稔典 1)

城市 由美子 1),横崎典哉 3),大毛宏喜 4),森川則文 2)

【目的】

多剤耐性緑膿菌に対する colistin(CL)治療は併用療法が望ましいとされる.今回,CL

の in vitro 併用効果を他系統抗菌薬の間で比較検討した.

【方法】

2004年から 2010年に広島大学病院の臨床検体から分離された多剤耐性緑膿菌 40株を対

象とした.CL に rifampicin(RFP),aztreonam(AZT),meropenem(MEPM)および

arbekacin(ABK)を組み合わせた,独自のチェッカーボードプレートを作成し,最小発育

阻止濃度(MIC)を測定した.

【結果】

各抗菌薬の平均 MIC 値は,RFP で単剤 17.2 μg/mL→CL 併用時 1.85 μg/mL,AZT で単

剤 28.3 μg/mL→CL併用時 17.4 μg/mL,MEPMで単剤 30.4 μg/mL→CL併用時 13.3 μg/mL,

ABK では単剤 8.87 μg/mL→CL 併用時 5.6 μg/mL であり,すべて CL の併用により低下し

た.一方,CL の平均 MIC 値も,単剤 1.38 μg/mL→抗菌薬併用時 0.26-0.64 μg/mL とすべ

て低下していた.Fractional inhibitory concentration(FIC)index を算出して併用効果(相

乗,相加,不関,拮抗)を判定した結果,「相乗」作用および「相加」作用が見られた株は,

CL+RFP でそれぞれ 32 株および 7 株,CL+AZT で 2 株および 25 株,CL+MEPM で 0

株および 30 株,CL+ABK では 0 株および 24 株であった.

【考察】

今回検討した 4 つの組み合わせのすべてで相乗作用または相加作用が認められ,最も大

きい in vitro 併用効果を示したのは CL+RFP であった.

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【一般演題Ⅰ-4】

Bacillus cereusに対する二酸化塩素の抗芽胞作用に関する検討

川崎医療福祉大学大学院 医療技術学研究科 臨床栄養専攻 1)

川崎医科大学付属病院 耳鼻咽喉科 2),川崎医科大学 微生物学 3)

広島大学病院 感染症科 4)

若狭麻未 1),福辻賢治 2),齊藤峰輝 3),大毛宏喜 4),山田作夫 1) 3)

【目的】

食中毒起因菌の一つであるBacillus cereusは,一般的な消毒薬に対して抵抗性を示す芽胞を形

成する.そこで本研究では,B. cereus を対象に最近臨床現場で消毒の目的で使用され始めてい

る二酸化塩素(ClO2)の抗芽胞効果について検討し,さらに ClO2 の作用メカニズムを明らか

にするために特に超微形態的に追究した.

【材料・方法】

ClO2 に加えて対象消毒薬として次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を実験に供した.B. cereus

(NBRC15305 株)を普通寒天培地にて 30℃で 10 日間培養して得られた芽胞菌液に,消毒薬を添

加後,経時的に残存生菌数を生菌数測定法により求めた.さらに,消毒薬で処理した芽胞を対象

に常法に従って走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した.

【結果・考察】

B. cereus芽胞を常用量(0.01%;w/v)のClO2で処理すると 1分で約 1/103に,5 分で約 1/106に,

15分では検出限界以下となり,0.02%で処理すると 5 分ですべての芽胞が死滅するのに比べ,

NaOClの常用量(0.02%)15分処理ではほとんど殺芽胞効果が認められず,ClO2はB. cereus

芽胞に対してNaOClの効果よりも有用であることが確認できた.そこで,0.01%のClO2処理

B. cereus芽胞をSEMならびにTEMにて観察したところ,顕著な形態変化は観察されず,ClO2

は芽胞構築には顕著な変化をもたらすことなく殺芽胞作用を惹起することが示唆された.一

方,致死効果が惹起される 0.2%NaOCl で処理した芽胞を SEM にて観察したところ,表面

のイレギュラー化が認められ,さらに TEM 観察では芽胞殻の一部が断裂するという超微形

態変化が観察されたことから,両消毒薬間で抗芽胞作用に相違のあることが考察できた.

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【一般演題Ⅰ-5】

健常高齢者における腸内細菌と個人の特性・生活習慣

独立行政法人 理化学研究所 イノベーション推進センター 辨野特別研究室 1)

一般財団法人 ライフ・プランニング・センター2)

當山 むつみ 1),道場信孝 2),日野原 重明 2),辨野義己 1)

【目的】

健常者の腸内細菌と個人の属性および生活習慣との関連性を明らかにすることを目的と

し,本研究では健康意識の高い 75 歳以上の健常高齢者 148 名(男性 71 名,女性 77 名)

を対象とし,ターミナル-RFLP(T-RFLP)法による腸内細菌解析と生活習慣アンケート調

査を実施した.

【方法】

制限酵素 Alu I,Msp I による T-RFLP 解析で得られた腸内細菌由来 DNA 断片を塩基長

により 80 の Operational taxonomic unit(OTU)に分類し,統計解析ソフト JMP 9 を用

いクラスタリング解析を行った.生活習慣アンケート項目については性別,BMI 等の属性,

食生活,生活習慣に関する項目を対象とし,データマイニングシステム「ICONS Miner ス

タンダード」を用いカイ二乗検定,オッズ比により OTU との関連性を検索した.

【結果】

健常高齢者における腸内細菌の構成は3群のクラスター(C1〜C3)に分けられた.C1

ではクラスターのOTU平均値の比較によりAlu I OTU244(A244),Msp I OTU211(M211)

が他のクラスターより高いことが明らかとなった.これらの OTU には代表的な菌として

Clostridium XIVa,Eubacterium A+B+C,Blautia, Actinomyces が含まれていた.C2 で

は M124,M273(Eubacterium B,Bifidobacterium,Coriobacteriaceae),そして C3 で

は A237,M489(Streptococcus, Clostridium I+XI, Bacteroides,Parabacteroides,

Escherichia,Enterobacter)が高い割合を占めていた.

このようなクラスターに特徴的な OTU が,各クラスターに属する個人の特性・生活習慣と

関連している可能性が考えられる.現在,個人の特性・生活習慣とこれらの OTU との関連

性について解析を進めている.

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【一般演題Ⅱ-1】

胃癌患者における Helicobacter pylori と口腔内環境の相関性

広島大学病院 口腔総合診療科1),広島大学病院 消化器外科2)

広島大学病院 口腔顎顔面再建外科3),広島大学病院 診療支援部 歯科衛生部門4)

広島大学病院 口腔検査センター5),広島大学病院 感染症科6)

広島大学医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 歯周病態学 7)

西 裕美1),徳本憲昭2),太田耕司3),梶谷佳世4),田中良治1)

新谷智章5),田邊和照2),大毛宏喜6),大段秀樹2),小川哲次1),栗原英見7)

【目的】

Helicobacter pylori(以下,H.pylori)は胃粘膜に感染する病原細菌であり,持続的な感

染により慢性胃炎等を経て胃癌の発生に関与するとされている.近年,H.pylori はだ液や

歯垢から検出したとの報告があるが,口腔内環境や歯性感染症との関連は不明である.今

回,われわれは口腔内環境と H.pylori との関係を明らかにするため,胃癌にて加療を行っ

た患者に対して口腔内感染症の一つである歯周病の罹患状況を確認した.さらに血清中の

H.pylori および歯周病菌関連マーカーを測定し,口腔内環境との関連性を分析した.

【方法】

対象は当院消化器外科で胃癌により手術もしくは化学療法を行った患者のうち,本研究

の目的に同意した67名(男性41名,女性26名,平均年齢65.2歳)を対象とした.方法は,

歯科初診時に抗生剤の投与を受けていない対象患者に対して,残存歯数,プローピングデ

プス,プロービング時の出血歯数(Bleeding on probing; BOP)を測定した.また歯周病

原菌に対する血清IgG抗体価,H.pyloriに対する血清 IgG 抗体価をELISA法により測定し

た.

【結果と考察】

対象患者の口腔内状況は,平均残存歯数が男性 25.2 本,女性 26.7 本であった.対象患者

の 37.2%が重度の歯周炎と診断される 6 ㎜以上の歯周ポケットを有していた.これらの患

者のうち,H.pylori 抗体陽性患者は 62.3%であり,1~3 ㎜の歯周ポケットを有する患者,

および無歯顎患者と比較して有意に高かった.また 6 ㎜以上の歯周ポケット保有率と歯周

病血清抗体価には相関関係を認めたが,男女比は認めなかった.今回の結果から,H.pylori

の保有と口腔環境の増悪との関連が示された.H.pylori は経口感染であり,口腔環境不良

症例では除菌治療後に再感染するリスクも考えられる.今後,健常者との比較や,口腔衛

生管理を行った後の H.pylori 検出率,胃癌再発との関連等,症例数を増やしさらに検討す

る予定である.

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【一般演題Ⅱ-2】

東海大学八王子病院における口腔ケアの現状について

東海大学八王子病院 口腔外科 1),浅川歯科医院 2)

関根理予 1),浅川和也 2),坂本春生 1)

【目的】

周術期口腔機能管理料の保険導入に伴い,病院における口腔ケアの重要性が高まっている.

当院における口腔ケアの現状について報告する.

【方法】

口腔ケア導入時から現在までの口腔ケアの依頼件数,実際の処置内容などにつき検討を行

った.

【結果・考察】

2008 年から 2012 年 7 月までに東海大学八王子病院にて口腔ケアを行った患者数は 544 名

であった.主な口腔ケアの介入依頼は,心臓血管外科の術前管理依頼が 159 名,脳神経病

棟(脳神経外科,神経内科)における依頼が 343 名であった.心臓血管外科からの依頼は,

感染性心内膜炎予防のため口腔管理を中心に,術前に感染源の除去(抜歯などの外科処置)

および専門的口腔衛生管理(ブラッシング指導,歯石除去など)を行っている.2012 年 4

月からは周術期口腔機能管理料の算定に伴い,消化器外科,呼吸器外科,あるいは血液内

科から化学療法に伴う口腔管理の依頼が増加している.脳神経病棟における口腔ケアはほ

とんどが寝たきり状態の患者を対象としている.具体的には歯科医師,衛生士がベッドサ

イドで口腔ケアのアセスメントを行い,歯科医師,医師,看護師,言語聴覚士を交えて,

カンファレンスを月 2 回行い,検討を行っている.以上の経験を通じて考えられた口腔ケ

アの実際における問題点,さらに ICU における VAP 予防のための新しい試みについても報

告する.

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【一般演題Ⅱ-3】

重症口腔粘膜炎より Stenotrophomonas maltophilia が検出された 2 例

広島大学病院 診療支援部 歯科衛生部門1),広島大学病院 口腔総合診療科2)

尾道総合病院 歯科口腔外科3),広島大学病院 血液内科4)

広島大学医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 歯周病態学5)

梶谷佳世 1),西 裕美 2),木村直大 3),美濃達治 4),中岡 美由紀 2),栗原英見 5)

【諸言】

Stenotrophomonas maltophilia(以下,S. maltophilia)は,土壌や汚水に生息する多剤耐

性のグラム陰性の好気性菌である.悪性疾患や長期入院,広域抗菌薬投与などの危険因子

をもつ免疫抑制患者においては,菌血症や,肺炎を発症すると致死的となる日和見感染の

病原体とされている.今回,われわれは重症口腔粘膜炎患者の口腔内より S. maltophilia

が検出された 2 症例を経験したので報告する.

【症例と経過】

症例 1,61 歳女性.35 年前より慢性腎不全で血液透析導入されていたが,繰り返すシャン

ト閉塞により当院にて人工血管再建術を行った.術後 12 日目,呼吸状態悪化により ICU

での人工呼吸器管理となり,ICU 入室時喀痰培養から S. maltophilia が検出されていた.

術後 28 日目,誤嚥性肺炎予防目的での口腔管理依頼をうけ歯科介入した際には,著明な口

腔乾燥と口蓋部に多量の剥離上皮付着を認めた.術後 32 日目には舌や両側頬粘膜に径 3~5

㎜大の小膿瘍が多発し,膿瘍部浸出液や壊死性上皮除去を中心とした口腔ケアを継続した.

術後 45 日目,口腔粘膜炎は改善し,全身状態が改善したため ICU より基準階へと転棟と

なった.症例 2,36 歳男性.急性骨髄性白血病 (AML)および急性扁桃炎の診断下入院加療

を開始,入院翌日,口腔内疼痛管理・誤嚥性肺炎予防目的で口腔管理依頼をうけ歯科介入

となった.歯科初診時,上下顎歯槽部粘膜,舌,両側頬粘膜,口蓋部に Grade 2 (NCI-CTCAE)

の口腔粘膜炎を認め,同部よりミノマイシン感受性 S. maltophilia が検出された.ミノマ

イシン軟膏を併用した口腔ケアを開始したものの口腔粘膜炎は増悪し,広範囲に壊死性粘

膜上皮を認めた.39 度台の発熱と相まって経口摂取困難な状態が続いたが,入院 28 日目に

口腔内の S. maltophilia 陰性を確認,経口摂取も可能となったため,翌日 AML に対して導

入化学療法開始となった.

【結語】

全身疾患の治療支援を目的とした口腔管理の場では,口腔内の病原性菌種や菌数に応じた

口腔ケアが重要であると考えられた.

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【一般演題Ⅱ-4】

化学療法中に発症する口腔粘膜炎における口腔管理の有用性について

国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 歯科口腔外科

宗永修一,米田進吾,有田美恵,冨本麻美,西田 香奈子

森棟春菜,矢野下 真,新土井 宣晶,東森秀年

【目的】

化学療法中に生じる副作用の一つである口腔粘膜炎のために化学療法を中断あるいは延

期せざるを得ない場合がある.化学療法中の口腔粘膜炎の発症は防ぐことが困難であるが,

口腔管理を継続することで口腔内細菌による口腔粘膜炎の二次感染の予防や症状の緩和を

期待できる.今回われわれは,化学療法中に発症する口腔粘膜炎における口腔管理の有用

性について検討を行ったので報告する.

【対象・方法】

平成 21 年 4 月から平成 23 年 12 月までに当科に化学療法時の口腔管理の依頼があった

271 人の患者のうち,化学療法が終了した 153 人の患者を対象とした.そのうち,①化学

療法中に口腔管理を継続した患者群 86 人と,②化学療法中に何らかの理由で口腔管理が中

断された患者群 67 人の口腔粘膜炎の発生状況について検討を行った.

【結果】

①口腔管理を継続した患者群 86 人のうち,口腔粘膜炎を発症したのは 18 人であり,また

NCI-CTCAE 分類(Ver.3)における重度口腔粘膜炎(Grade3 以上)を発症した者は 1 人

であった.

②口腔管理が中断された患者群 67人のうち,口腔粘膜炎のために 11人が当科を再受診し,

このうち 5 人は重度口腔粘膜炎であった.また,歯周炎の悪化(排膿,腫脹,疼痛)のた

めに再受診した患者も 4 人いた.

【まとめ】

化学療法時に口腔管理を十分に行えなかった場合は,重度口腔粘膜炎の発症や歯周炎の

悪化など口腔内のトラブルが重症化する傾向があった.一方,口腔管理を継続することで,

これらの口腔内有害事象の重症化を予防できることが示唆された.

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【一般演題Ⅲ-1】

ヒト腸管スピロヘータ症の病原性に関する臨床病理学的検討

防衛医科大学校 臨床検査医学講座

緒方 衝

【目的】

ヒト腸管スピロヘータ症(Human Intestinal Spirochetosis: HIS)は人獣共通感染症の

範疇に含まれる,Brachyspira 属細菌による大腸感染症であり,ヒトにおいては無症状に近

い状態が多いとされている.我が国では,1996 年中村らの症例報告以来,徐々に報告が増

えている.自衛隊病院での HIS 症例の内視鏡像について解析するとともに,一般病院の3

年間の大腸内視鏡検査標本を臨床病理学的に評価した.

【方法】

自衛隊横須賀病院(神奈川県横須賀市)において 2007 年から 2008 年にかけ HIS と診断

された 55 例の内視鏡像の特徴について解析した.また,埼玉社会保険病院(埼玉県さいた

ま市)において 2001 年,2006 年及び 2011 年の,院内及び埼玉県内の医療機関からの大腸

内視鏡検査下採取標本につき再鏡検し,解析した.いずれも組織学的にいわゆる fringe 形

成を示したものを HIS とした.

【成績】

自衛隊病院の内視鏡像では「粘膜の発赤や充血」・「血管透過性の低下した粗ぞうな粘膜」・

「鋸歯状ポリープの形成」が中核所見として得られた.この検討では,「粘膜の発赤や充血」

や「血管透過性の低下した粗ぞうな粘膜」が右側大腸に出現することが多かった.また組織

学的に検討したところ,埼玉社会保険病院の 2001年では 1,459例中 7例,2006年では 1,702

例中 29 例,2011 年では 1,769 例中 49 例が HIS と診断され,男性例が多かった.臨床症

状及び内視鏡所見ではポリープが多く,全 85 例での病理診断として,炎症が 13 例,過形

成性結節 14 例,鋸歯状ポリープ 20 例,通常型腺腫 65 例,腺癌 5 例であった.その全標本

個数における HIS 陽性率は右側大腸に高く,病変につき左右の大腸に分けると,通常型腺

腫が左右とも同程度に出現していた.

【結論】

首都圏における HIS 陽性率は増加し現時点では3%程度と考えられた.また右側大腸で

の病変形成傾向が窺われた.

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【一般演題Ⅲ-2】

C.DIFF QUIK CHEK COMPLETE を用いた

Clostridium difficile 抗原(GDH)検出の有用性

広島大学病院 診療支援部 感染症検査部門 1),広島大学病院 検査部 2)

広島大学病院 感染症科 3)

原 稔典 1),古霜麻紀 1),原田昌子 1),木場 由美子 1)

長岡里枝 1),城市 由美子 1),小野寺 一 1),横崎典哉 2),大毛宏喜 3)

【はじめに】

C.difficile 関連下痢症の診断は院内感染対策上重要であり迅速な検査が求められている.

近年, C.difficile Toxin(CDT) 検査キットに C.DIFF QUIK CHEK COMPLETE

(COMPLETE)が使用されている.COMPLETE は, CDT と同時に C.difficile 抗原(GDH)

も検出可能である.今回,COMPLETE における GDH 検出の有用性について検討を行っ

たので報告する.

【対象および方法】

2012年7月から12月末までにCDT検査の依頼があった229件の糞便検体を対象とした.

CDT検査は添付文書に従い行った. また,CDT検査依頼があった 229件についてはCCMA

培地を用いて嫌気培養を行い C.difficile を検出した.培養陽性となったコロニーから再度

CDT 検査と遺伝子検査を行い,糞便からの CDT 検査と比較した.

【結果】

糞便検体 229 件中 CDT 陽性は 3.9%(9/229 件),GDH 陽性は 15.7%(36/229 件),

培養陽性は 15.7%(36/229 件)であった. GDH 陽性・培養陰性が 2 件,GDH 陰性・培養

陽性が 2 件存在した.そのため GDH と培養の一致率は 98.3%(225/229 件)となった.

培養陽性であった 36 件について COMPLETE を用いて培養コロニーより再検査した結

果, CDT 陽性が 26 件に増加した.遺伝子型は,A(+)B(+)=20 件,A(-)B(+)=6 件,

A(-)B(-)=10 件であり,培養コロニーより COMPLETE を用いて CDT 陽性となった 26

件と遺伝子検査の結果は一致していた.

【結語】

COMPLETE の GDH は,培養の結果とよく一致しており,C.difficile 関連下痢症の迅速

検査に有用であると考えられた.また,糞便検体から行う CDT の検出率は低いため,培養

コロニーから CDT を検出する方法も有効であると思われる.

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【一般演題Ⅲ-3】

乳児の市中 Clostridium difficile 感染症の 4 例

県立広島病院 小児科

松原 啓太

近年,Clostridium difficile (C. difficile) 感染症は特に高齢者の医療施設内感染として留

意すべき感染症と認識されている.一方で小児科領域では今のところ院内感染対策上でも

それほど重要視されていない.しかし,以前より小児の抗菌薬投与後の下痢症を我々小児

科医は当然のことと受け止めて対応してきた.最近ではこの中の少なくない割合に C.

difficile が関与しているといわれている.また有用な迅速診断法が開発されたこともあり,

C. difficile は小児の市中消化管感染症の原因微生物とも認識され始めている.

我々の施設でもこの 1 年間に 4 例の小児の市中 C. difficile 感染症を経験した,重症度も

様々であり,症例を紹介しながら市中 C. difficile 感染症について考えていきたい.

症例1:5か月の男児.先天性小腸閉鎖にて日齢1に当院で小腸切除術施行(残小腸150cm).

入院 7 日前より下痢が出現.症状改善なく当科入院.VCM 内服を行ったが蛋白漏出性胃腸

症,低 Mg 血症による痙攣重積あり,中心静脈栄養管理を要した.

症例 2:9 か月の女児,1 か月前に RS ウイルス感染で他院入院.3 日前から鼻汁過多あ

り,突然の大量の下血を認め,腸重積を疑われ当院を受診.整腸剤の投与のみで改善.

症例 3:2 歳の女児,発症 2 週前に気管支炎で TFLX,ABPC,CLDM の投与歴あり.腹

痛,下痢にて発症し,その後少量の鮮血便も出現したが,整腸剤の投与のみで改善.

症例 4:7 か月の女児,1 か月前から下痢,近医の便培養で腸管出血性大腸菌 O-6(Vero 陰

性)検出され TFLX を内服.その後も下痢を認めるため当院を受診.VCM 内服を繰り返し

たが症状の反復あり.全身状態良好であったため整腸剤のみに変更,6 か月後に C. difficile

陰性となり症状も下痢も消失した.

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【一般演題Ⅲ-4】

ネスト化した培養法による,潰瘍性大腸炎患者における

糞便中のフソバクテリウム属の検出

東京慈恵会医科大学附属柏病院 消化器・肝臓内科

湯川豊一,大草敏史,内山 幹,小井戸 薫雄

我々は,活動性潰瘍性大腸炎(UC)患者の大腸粘膜中の Fusobacterium varium と血清

中の F. varium の特異的な抗体の検出率が有意に高いこと,更に,マウスに F. varium の産

生する酪酸を注腸すると,結腸上皮にアポトーシスを誘導し,陰窩膿瘍形成といった UC

様病変ができることを証明し,F. varium が UC の有力な原因菌の1つではないかと報告し

た.これより,F. varium に高い感受性を有していた ABPC,TC,MNZ を組合わせた ATM

療法を確立し,活動性 UC に非常に効果的であったことを示した.しかし,F. varium は優

勢種ではないためか,従来の糞便培養法では検出が難しかった.

そこで,今回,我々は,Fusobacterium 属に対するネスト化した培養法を開発し,F.

varium が UC 患者から単離できるか否かを ATM 療法施行群及び ATM 療法非施行群と健

常者群にわけて比較検討した.サンプルの糞便は嫌気的条件下で変法 GAM ブイヨンで培

養後,Fusobacterium 選択的寒天培地に接種し,更に嫌気的条件下で培養した.単離され

たコロニーは Vitek automated system 等を用いて同定した.24 人の ATM 療法非施行群患

者 7 人(29.2%)から F. varium が検出されたが,ATM 療法施行群患者 26 人からは検出

されなかった(p= 0.0035).また,健常者 10 人の糞便からも検出されなかった.この結果

は,これまでの粘膜培養,免疫染色,リアルタイム PCR 及び血清学的研究から得られた結

果に加え,F. varium と UC の関連を支持するものである.この新しい培養法は,ネスト化

された PCR 法にヒントを得て開発したもので,世界的にみて最初のものである.将来的に

は,今後,このネスト化培養法は,糞便細菌叢において優勢種ではない腸内細菌の培養に

応用することができると考えられる.

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第1条 本会は日本臨床腸内微生物学会 Japanese Society of Clinical Studies on

Intestinal Microflora と称する.

第2条 本会の事務局を 〒351-0198 埼玉県和光市広沢2-1

(独)理化学研究所知的財産戦略センター 辨野特別研究室内に置く.

第3条 本会は腸内微生物に関する諸研究を推進することにより人類の健康増進に寄与する

ことを目的とする.

第4条 本会は第3条の目的を遂行するために,次ぎの事業を行う.

1)学会集会の開催

2)学会誌の発行

3)その他,本会の目的に資する事業

第5条 本会は本会の目的に賛同し,所定の手続きを経た者を会員とする.会員の構成は正

会員と賛助会員とする.

第6条 正会員および賛助会員は所定の会費を年度内に納入するものとする.原則として特

別の理由のないかぎり,届出なく会費を3年間滞納した者は退会とみなす.退会時

には滞納分の会費を請求する事とする.

第7条 本会は名誉会員をおくことができる.名誉会員は理事会の推薦により選ばれ,評議

員会および総会の承認を得て決定される.

第8条 本会は理事長1名,理事10名以上,評議員20名以上,監事1名の役員をおく.

第9条 理事長は理事会の推薦により選ばれ,評議員会の承認により決定される.

第10条 理事は理事会協議により評議員の中から選ばれ,原則として評議員会にはかり,総

会の承認を経て,理事長がこれを委嘱する.

第11条 評議員は理事長又は理事会の推薦により会員の中から選ばれ,評議員にはかり,総

会の承認を経て,理事長がこれを委嘱する.

第12条 監事は理事会の推薦により選ばれ,総会の承認を得る.

第13条 理事長は本会を代表し,会務を掌理する.

第14条 理事は理事会を構成し,以下の職責を分担し,会の運営に当たる.職責分担は理事

会で協議し決定する.

①庶務,②会計,③広報,④渉外,⑤会誌,⑥企画,⑦将来計画

第15条 評議員会は本会の重要事項を審議する.

第16条 監事は会務及び財産状況を監査する.

第17条 理事長,理事,監事の任期は2年とする.但し再任はさまたげない.

第18条 学術集会の会長は理事会の推薦により,評議員会を経て決定し,総会の承認を得る.

第19条 総会,理事会および評議員会は毎年1回以上,これを開く.

第20条 本会の事業年度は毎年4月1日より,翌年3月31日までとする.理事会は年1回

会計報告を評議員会および総会に報告し,承認を得なければならない.

第21条 本会の経費は会費および寄附金をもってあてる.

付 則 1) 本会は理事会の決定により,評議員会の承認を得て,各種の委員会をおくことができる.

2)本会の会費は理事会で決定し,評議員会,総会の承認を経て変更することができる.

3)本会の会則は総会の承認を経て変更することができる.

4)年会費は正会員 5,000 円,理事・評議員 7,000 円,賛助会費は1口 50,000 円 1口以上

とする.

規 約

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理 事 長 岩井 重富 うしお病院

将来計画担当 青木 重久 愛知医科大学

渉 外 担 当 伊藤 武 財団法人東京顕微鏡院

渉 外 担 当 沖永 功太 帝京大学医学部 外科

会 誌 担 当 神谷 茂 杏林大学医学部 感染症学教室

渉 外 担 当 品川 長夫 医療法人良斉会 介護老人保健施設 ヴィラとびしま

会 計 担 当 中川 良英 医療法人修英会 中川医院

企 画 担 当 砂川 慶介 北里大学 感染制御研究機構

会 誌 担 当 高橋 信一 杏林大学医学部 第3内科

企 画 担 当 辻 明良 東邦大学医療センター 佐倉病院

庶務・会誌担当 辨野 義己 独立行政法人理化学研究所 イノベーション推進センター

辨野特別研究室

渉 外 担 当 中村 明子 東京医科大学

広 報 担 当 馬場 錬成 東京理科大学 知財専門職大学院

会 誌 担 当 渡邉 邦友 社会医療法人厚生会 木沢記念病院 中央検査センター

将来計画担当 岩田 敏 慶應義塾大学医学部 感染症学教室

広 報 担 当 坂本 春生 東海大学医学部付属八王子病院 口腔外科

企 画 担 当 田口 晴彦 杏林大学保健学部 免疫学研究室

企 画 担 当 秋田 博伸 秋田医院

将来計画・渉外担当 大毛 宏喜 広島大学病院 感染症科

監 事 横山 隆 広島市医師会運営 安芸市民病院

有馬 陽一 大草 敏史 岡本 達三 高橋 志達 二木 芳人

古川 清憲 宮崎 修一 森 秀明 山口 嘉和 山本 俊信

理事・監事 名簿

評議員 名簿

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第16回日本臨床腸内微生物学会総会・学術集会

プログラム・抄録集

発行日 平成25年8月

会 長 大毛 宏喜(広島大学病院 感染症科)

事務局 〒734-8551 広島県広島市南区霞1丁目2-3

広島大学病院 感染症科内

第16回日本臨床腸内微生物学会総会・学術集会事務局

TEL&FAX :082-257-1613

E-Mail :kansen@hiroshima-u.ac.jp

印刷所 〒733-0833 広島県広島市西区商工センター7丁目5-33(本社)

株式会社 ニシキプリント

TEL:082-277-6954(代)

FAX:082-278-6954

E-Mail:[email protected]

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アステラス製薬株式会社

MSD株式会社

株式会社大塚製薬工場

杏林製薬株式会社

塩野義製薬株式会社

株式会社ジェー・シー・ティー

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社

ゼリア新薬工業株式会社

第一三共株式会社

大正富山医薬品株式会社

大日本住友製薬株式会社

大鵬薬品工業株式会社

武田薬品工業株式会社

株式会社ツムラ

ティーアンドケー株式会社

東亜新薬株式会社

丸石製薬株式会社

ミヤリサン製薬株式会社

Meiji Seikaファルマ株式会社

株式会社ヤクルト本社

(50音順)

本会の開催,運営にあたり,多くの企業より多大なご支援をいただきました.

ここに感謝の意を表します.

第 16回日本臨床腸内微生物学会総会・学術集会 会長 大毛 宏喜

協賛企業一覧