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時期が一致する貨物を集め、共同で 船をチャーターし、輸送している。 韓国とを結ぶ国際RORO航路を 開設しているパンスターでは、日本 総代理店であるサンスターラインが 12年に北陸営業所を開設している。 北陸営業所 の 吉田孝司所長 は「 コ ンテナによる輸送よりも貨物へのダ メージが少ないRORO船の特徴を 生かし、精密機械などをターゲットと した営業を行っている」と話す。北陸 営業所は吉田所長を含め4人。柔軟 性の高いRORO船サービスを武器 に金沢港利用を利用する貨物の集荷 を強化している。 コンテナ貨物を取り扱っている御 供田ふ頭の御供田国際コンテナター ミナル(CT )は水深マイナス12メー 来年で開港50周年 開港は70年で、来年には開港50 周年を迎える。国際コンテナ航路が 開設されたのは88年。以来、地域産 業を支える国際物流の拠点として発 展を続けてきた。当初、韓国航路週 1便から始まった国際定期コンテナ 航路は現在、韓国航路週6便、中国・ 韓国航路週1便、中国航路週1便、 さらに韓国RORO航路が週2便の 計 10 便にまで拡充している。 また、在来船では金沢港として合 い積み輸送の取り組みを行っている。 民間の複数企業が参加し、出荷予定 の方面・時期・種類別に集計。方面や 日本海沿岸、能登半島の西岸に位置する金沢港は 1954年、旧大野港、旧金石港の合併によって誕生し た。旧大野港は1000年以上前から大陸と往来する 船が来航していた歴史がある。旧金石港も、江戸時代 に北前船の発達で栄えたが、その後、航路が衰退する と同時にその役割は縮小していた。 金沢港の開発が本格化したのは64年。それまで金 沢市や周辺地域の産業は近隣の伏木富山港や七尾港 を利用していたが、これら地域では冬の積雪期間に陸 上輸送路が途絶すると物資の供給ができなくなるとい う問題を抱えていた。特に燃料確保が死活問題でも あったことから、大野川右岸を掘り込んだ港湾施設を 建設。北陸を支える主要港湾の1つとして地域の海上 物流を支えている。 コンテナヤード 機能強化で 地域産業を支える ヒト・モノの流れを効率化 金沢港特集 御供田ふ頭

16 金沢港特集 地域産業を支える16 金沢港特集 第3種郵便物認可 2019年9月12日(木) 時期が一致する貨物を集め、共同で 船をチャーターし、輸送している。

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Page 1: 16 金沢港特集 地域産業を支える16 金沢港特集 第3種郵便物認可 2019年9月12日(木) 時期が一致する貨物を集め、共同で 船をチャーターし、輸送している。

第3種郵便物認可 2019年9月12日(木)16 金沢港特集

時期が一致する貨物を集め、共同で船をチャーターし、輸送している。 韓国とを結ぶ国際RORO航路を開設しているパンスターでは、日本総代理店であるサンスターラインが12年に北陸営業所を開設している。北陸営業所の吉田孝司所長は「コンテナによる輸送よりも貨物へのダメージが少ないRORO船の特徴を生かし、精密機械などをターゲットとした営業を行っている」と話す。北陸営業所は吉田所長を含め4人。柔軟性の高いRORO船サービスを武器に金沢港利用を利用する貨物の集荷を強化している。 コンテナ貨物を取り扱っている御供田ふ頭の御供田国際コンテナターミナル(CT)は水深マイナス12メー

来年で開港50周年

 開港は70年で、来年には開港50周年を迎える。国際コンテナ航路が開設されたのは88年。以来、地域産業を支える国際物流の拠点として発展を続けてきた。当初、韓国航路週1便から始まった国際定期コンテナ

航路は現在、韓国航路週6便、中国・韓国航路週1便、中国航路週1便、さらに韓国RORO航路が週2便の計10便にまで拡充している。 また、在来船では金沢港として合い積み輸送の取り組みを行っている。民間の複数企業が参加し、出荷予定の方面・時期・種類別に集計。方面や

 日本海沿岸、能登半島の西岸に位置する金沢港は1954年、旧大野港、旧金石港の合併によって誕生した。旧大野港は1000年以上前から大陸と往来する船が来航していた歴史がある。旧金石港も、江戸時代に北前船の発達で栄えたが、その後、航路が衰退すると同時にその役割は縮小していた。 金沢港の開発が本格化したのは64年。それまで金

沢市や周辺地域の産業は近隣の伏木富山港や七尾港を利用していたが、これら地域では冬の積雪期間に陸上輸送路が途絶すると物資の供給ができなくなるという問題を抱えていた。特に燃料確保が死活問題でもあったことから、大野川右岸を掘り込んだ港湾施設を建設。北陸を支える主要港湾の1つとして地域の海上物流を支えている。

コンテナヤード

機能強化で地域産業を支えるヒト・モノの流れを効率化

金沢港特集

御供田ふ頭

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2019年9月12日(木) 第3種郵便物認可 17金沢港特集

でセミナーを開催。釜山港を経由した金沢港発着サービスを活用することで、海上輸送コストや国内在庫コストの低減が可能なことなどをPRした。 このセミナーには石川県の谷本正憲知事も登壇。冒頭、あいさつで「金沢港はコマツをはじめ、多くの県内企業の皆さま方にご利用いただいている」と紹介。さらに「県内企業の金沢港利用率は、国の最新調査によると輸出で53%。5年前から8ポイント増加している。見方を変えれば、残り半分は太平洋側の港を利用しているということ。まだまだ金沢港は伸びしろがあるとも言える。荷主の皆さまには地元の貨物は地元の港からというマイポート意識を持っていただき、金沢港の利用拡大に取り組んでもらいたい」と金沢港利用を呼び掛けている。 金沢港では集荷・利用促進を目的としたインセンティブだけでなく、入港船舶の安全を確保するためのイン

アをトンベースでみると、輸出は産業機械が26.7%で最も多く、次いで、その他輸送用車両が25.2%、非金属鉱物が16.5%、再利用資材が9.5%、輸送用容器が5.3%となっている。また、輸入は糸および紡績工業品が24.8%で最も多く、その他輸送用車両が11.9%、その他日用品が7.9%、衣服・見廻品・はきものが7.6%、測量・光学・医療用機械が6.4%、産業機械が4.7%、その他繊維工業品が4.1%などと、多岐にわたっている。

太平洋側港湾からの利用転換を促す

 金沢港では「地元の貨物は地元の港から」(石川県の谷本正憲知事)として、太平洋側港湾を利用している県内貨物の、金沢港への利用転換を促進している。今年7月には、金沢港と多くの航路を持つ釜山港を管理する釜山港湾公社(BPA)が金沢市内

トルの岸壁、2基のガントリークレーンを備えており、2隻同時着岸が可能となっている。昨年4月に供用を開始したガントリークレーンの吊能力は45トン。日本海側最大の能力を持つという。 また、大浜ふ頭は多目的国際ターミナルとして御供田国際CT同様、08年に供用を開始している。タイヤマウント式クレーンを備えており、16年4月からは岸壁延伸によって大型貨物船の2隻同時着岸を可能としている。

コンテナ取り扱いが過去最高

 金沢港の昨年のコンテナ取扱量(空コンテナ含む)は前年比8.7%増の6万9881TEUとなった。3年連続過去最高を更新している。内訳は、輸出の実入りが7.6%増の1万9677TEU、輸入の実入りが11.0%増の3万1134TEU。実入りの品目別シェ

県営東部上屋 金沢港運東部上屋

010,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

0500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

2009 2010 2011

金沢港のコンテナ取扱量推移 金沢港の貨物取扱量推移

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018(年) 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018(年)

25,115

40,29947,568

47,84652,998

60,304

58,150

60,95664,306

69,881

(TEU) (千トン)

2,569

3,0763,357

3,1933,202

3,196

3,3943,328

3,4133,528

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第3種郵便物認可 2019年9月12日(木)18 金沢港特集

寺ふ頭では岸壁を耐震・水深マイナス10メートルとする改修工事と、上屋として金沢港クルーズターミナルの建設も実施。来年3月の完成を予定している。クルーズターミナルには展望デッキのほか、待合施設やレストラン、セミナールームを併設することで人のにぎわい創出を狙う。 さらにクルーズターミナル内にはガントリークレーンを操作しての荷役および金沢港の入港・接岸の操船をシミュレーションできる学習・体験ルームを設置する予定だ。操船シミュレータは金沢港や周辺の町並みも再現され、昼間、夕方、晴れ、嵐など選択可能な臨場感あるものになるという。子供たちがコンテナ物流を学ぶ貴重な機会になりそうだ。 県では昨年、クルーズの普及・集客促進のため金沢市内や東京・大阪・名古屋でのセミナーを実施した。さらに15年に釜山港とクルーズ振興に関する合意書を締結したほか、昨年11月には国内屈指のクルーズ船寄港数を誇る横浜港ともクルーズ船誘致に向けた連携協定を締結。両港はそれぞれの強みを活かし、共同でクルーズ市場への売り込みを強化している。 このほか、谷本知事は、年頭1月4日の会見で金沢港のにぎわい創出の観点から、岸壁や停泊船舶、ガントリークレーンをライトアップするという計画を明らかにしている。建設が進むクルーズターミナルから、ライトアップされた港湾を見ることができるようにするという。「夜の金沢港は真っ暗で何も見えない。それでは面白くない」(谷本知事)として、金沢港の夜間景観を創出することで、夜の港湾に人を呼び込みたい考えだ。ガントリークレーンもライトアップされる。実現すればヒト・モノの流れが昼夜途切れることのない、にぎわいのある金沢港が誕生することになる。

完成した。既存の県営御共田上屋(延べ床面積2320平方メートル)と合わせ、金沢港西側の戸水ふ頭や無量寺ふ頭に点在していた上屋の物流機能を金沢港東側に集約させている。 金沢港運東部上屋を運用している金沢港運は「上屋を集約することで活用できていなかったデッドスペースが減り、効率も上がる」と話す。また「これをきっかけに効率的に施設を使用する意識改革にもつながる」と期待する。また既存倉庫についても当面スポット案件での対応で活用していきたい考えだ。

クルーズ上屋、来年3月に完成

 金沢港へのクルーズ船寄港は年々増加傾向だ。2012年6本だった寄港数は17年に55本となり、今年も外国船社・日本船社合わせ50本以上の寄港が予定されている。増加するクルーズ船寄港に対応するため、ハード整備も行っている。 ヒトの流れの集約を目指し、無量

センティブを設けている。冬季(11~2月)の風浪時(強風・波浪に関する注意報・警報が発令されている場合)の入出港の安全性を高めるため、金沢港に寄港する国際定期コンテナ船、国際定期RORO船、合い積み船を対象に、引船(タグボート)の使用料や岸壁使用料を助成。引船使用料が実質負担なしになるほか、岸壁使用料も荷役作業を行っている時間を除き免除される。

物流機能強化、上屋倉庫を集約

 金沢港では昨年から今年にかけ、新たな大型上屋を設置することでモノの流れを効率化している。新たな上屋は金沢港運東部上屋と県営東部上屋の2棟。御共田国際CTに隣接し た東部工業用地をふ頭用地として整備した。金沢港運東部上屋(延べ床面 積4500平方メートル、ほか、大型ひさし1769平方メートル)が昨年12月、県営東部上屋(延べ床面積2997平方メートル)が今年1月に

岸壁工事とクルーズ上屋の建設が進む無量寺ふ頭