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11 回シャノン理論ワークショップ開催報告 開催場所:鳥取県西伯郡伯耆町 ロイヤルホテル大山 開催期間:令和元年 10 17 ()–10 19 () 11 回シャノン理論ワークショップ実行委員長 葛岡成晃(和歌山大学) 2019 10 17 日(木)から 19 日(土)にかけて, 鳥取県西伯郡伯耆町のロイヤルホテル大山において 11 回シャノン理論ワークショップ(STW2019が開催されました.実行委員会を代表して開催報告 をいたします. まず今回は,予稿集の表紙の話から.2003 年に 本ワークショップが始まった際,その予稿集の表 紙には,シャノン理論の名にふさわしい図柄をと いうことで,シャノンの論文 * 1 に最初に出てくる図 Figure 1」が採用されました(いわゆるシャノン の通信モデルの図として有名なあれですね).その 後も Figure 1 が本ワークショップ予稿集の表紙を 飾ることになったのですが,第 6 回の開催時に「同 じ図が 5 回続いたから,そろそろ変えよう」という ことで,Figure 1 の次の Figure 2 に表紙の絵が変 わり,前回の第 10 回までは Figure 2 が表紙を飾っ ていました.そのような経緯があったので,今回は 表紙の図の切り替え時期ということで, Figure 3 予稿集の表紙を飾りました(図 1 参照). 次に会場について.今回の会場であるロイヤルホ テル大山は,中国地方最高峰「大山」の麓にある高 原ホテルです.もちろん温泉もあります.本ワーク ショップは普段なかなか行けないような場所での 開催というのも一つの楽しみにしていますが, * 2 回も,米子駅からホテルの無料送迎バスに 30 分乗 るか,あるいはレンタカーやタクシーを利用するし かない所で,交通の便がよいとは言えない場所でし * 1 C. E. Shannon, “A mathematical theory of commu- nication,” Bell Syst. Tech. J., vol. 27, pp. 379–423, 623–656, July-Oct. 1948. * 2 本ワークショップを運営していると,いつも「会場にはど うやって行けばいいんですか?」というような交通に関 するお問い合わせを頂きます(笑) 1 予稿集の表紙を飾った Figure 3(シャノン の論文の図を元に葛岡が作図) た.ただ,少々隔離された場所で泊まり込みで開催 するワークショップならではの密度の濃い時間が過 ごせたと思っております.一方で,本来は「雄大な 大山を臨みながらのワークショップ」を楽しみにし ていたのに,あいにくの天候で大山の姿をほとんど 見ることができなかったのは残念でした. ワークショップの規模はほぼ前回までと同程度で した.前回より 2 名多い 17 名の方にご参加頂き, 発表も 1 件増えて 11 件の発表を頂きました.プロ グラムは下記の通りです. 招待講演 小林欣吾,“最長単調増加部分列解析の素 晴らしい数理一般講演 1(乱数・エントロピー) Tomohiko UYEMATSU and Tetsunao MATSUTA, “Joint Multiple-Access Coding and Channel Intrinsic Random- ness” 1

11 回シャノン理論ワークショップ開催報告...Tomohiko UYEMATSU and Tetsunao MATSUTA, \Joint Multiple-Access Coding and Channel Intrinsic Random-ness" 1 野村亮, 八木秀樹,

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Page 1: 11 回シャノン理論ワークショップ開催報告...Tomohiko UYEMATSU and Tetsunao MATSUTA, \Joint Multiple-Access Coding and Channel Intrinsic Random-ness" 1 野村亮, 八木秀樹,

第11回シャノン理論ワークショップ開催報告開催場所:鳥取県西伯郡伯耆町 ロイヤルホテル大山開催期間:令和元年 10月 17日 (木)–10月 19日 (土)

第 11回シャノン理論ワークショップ実行委員長

葛岡成晃(和歌山大学)

2019年 10月 17日(木)から 19日(土)にかけて,

鳥取県西伯郡伯耆町のロイヤルホテル大山において

第 11回シャノン理論ワークショップ(STW2019)

が開催されました.実行委員会を代表して開催報告

をいたします.

まず今回は,予稿集の表紙の話から.2003 年に

本ワークショップが始まった際,その予稿集の表

紙には,シャノン理論の名にふさわしい図柄をと

いうことで,シャノンの論文*1に最初に出てくる図

「Figure 1」が採用されました(いわゆるシャノン

の通信モデルの図として有名なあれですね).その

後も Figure 1 が本ワークショップ予稿集の表紙を

飾ることになったのですが,第 6回の開催時に「同

じ図が 5回続いたから,そろそろ変えよう」という

ことで,Figure 1の次の Figure 2に表紙の絵が変

わり,前回の第 10回までは Figure 2が表紙を飾っ

ていました.そのような経緯があったので,今回は

表紙の図の切り替え時期ということで,Figure 3が

予稿集の表紙を飾りました(図 1参照).

次に会場について.今回の会場であるロイヤルホ

テル大山は,中国地方最高峰「大山」の麓にある高

原ホテルです.もちろん温泉もあります.本ワーク

ショップは普段なかなか行けないような場所での

開催というのも一つの楽しみにしていますが,*2今

回も,米子駅からホテルの無料送迎バスに 30分乗

るか,あるいはレンタカーやタクシーを利用するし

かない所で,交通の便がよいとは言えない場所でし

*1 C. E. Shannon, “A mathematical theory of commu-

nication,” Bell Syst. Tech. J., vol. 27, pp. 379–423,

623–656, July-Oct. 1948.*2 本ワークショップを運営していると,いつも「会場にはどうやって行けばいいんですか?」というような交通に関するお問い合わせを頂きます(笑)

図 1 予稿集の表紙を飾った Figure 3(シャノン

の論文の図を元に葛岡が作図)

た.ただ,少々隔離された場所で泊まり込みで開催

するワークショップならではの密度の濃い時間が過

ごせたと思っております.一方で,本来は「雄大な

大山を臨みながらのワークショップ」を楽しみにし

ていたのに,あいにくの天候で大山の姿をほとんど

見ることができなかったのは残念でした.

ワークショップの規模はほぼ前回までと同程度で

した.前回より 2 名多い 17 名の方にご参加頂き,

発表も 1件増えて 11件の発表を頂きました.プロ

グラムは下記の通りです.

招待講演

• 小林欣吾, “最長単調増加部分列解析の素

晴らしい数理”

一般講演 1(乱数・エントロピー)

• Tomohiko UYEMATSU and Tetsunao

MATSUTA, “Joint Multiple-Access

Coding and Channel Intrinsic Random-

ness”

1

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• 野村亮, 八木秀樹, “f-ダイバージェンス

に基づく情報源 Resolvability レートの

Smooth Renyiエントロピーによる表現”

• 葛岡成晃, “パロンドのパラドックスとエ

ントロピーレート”

一般講演 2(統計的決定理論・検定)

• 村松純, “独立同分布系列を用いた確率的

決定則の誤り確率について”

• Yasutada Oohama, “New Strong Con-

verse for Distributed Hypothesis Testing

Problem”

一般講演 3(通信路符号化・量子通信)

• 三村和史, 竹内純一, “スパース重ね合わせ

符号の距離分布”

• 廣田修, 相馬正宜, “量子 Shannon 理論に

おける信頼性関数とカットオフレート”

一般講演 4(データ圧縮・セキュリティ)

• 山本博資, 橋本健吾, 今枝弘貴, 岩田賢一,

“AIVF 符号化テクニックに基づくユニ

バーサルデータ圧縮符号”

• 古賀弘樹, “電子指紋符号の同時ユニバー

サル容量の下界の導出”

• 松田哲直, 柴田衛, 植松友彦, “二段階の情

報消去にかかるコストの領域に対する内界

と外界”

招待講演は,前回に引き続き,電通大名誉教授の

小林欣吾先生にお願いしました.前回 2017年のと

きには,その前年に Berlekampらの著書『Winning

Ways for Your Mathematical Plays』の翻訳を終

えられて第 1巻と 2巻*3が発売されたタイミングで

の,記念講演的なお話をして頂きました.そのとき

のお話では第 3巻と 4巻も近々発売されるというこ

とだったのですが,著者校正に思いのほか時間がか

かったということで,図らずも,今回は前月 9月 30

日付で第 3巻と 4巻*4が出版された記念講演となり

*3 E. R. Berlekamp,J. H. Conway,R. K. Guy (著),小林欣吾,佐藤創 (監訳),数学ゲーム必勝法1・2,共立出版,2016年 12月.

*4 ——,数学ゲーム必勝法3・4,共立出版,2019年 9月.

図 2 小林欣吾先生お手製のゲーム・パズルの数々

と新刊『数学ゲーム必勝法』の第4巻

ました.また,今回は特別ゲストとして韓太舜先生

(NICT,電通大名誉教授)にもご参加・聴講して頂

いて,有益なコメントを頂くことができました.

二日目(18日 (金))の夜にはワークショップとし

て,小林先生お手製のゲーム・パズルを囲んでディ

スカッションを行いました(図 2 参照).個人的に

は,「じらし上手(The Great Tantalizer)」というパ

ズルが全くのお手上げでした(前回から少しは勉強

した効果があったのか,ニムの変種のようなゲーム

についてはだいたい必勝法の見当を付けられるよう

になってきたのですが…).『数学ゲーム必勝法』の

第 4巻に解説があるらしいので勉強しておきます.

さて,冒頭にも記した通り 2003年に始まった本

ワークショップですが,途中休憩もあって,2013年

からは隔年実施で継続していくことを目指していま

す.今回も無事開催できましたのは,前回から引き

続き運営にご尽力頂いた三村和史先生(広島市大)

と松田哲直先生(東工大)のお二人のお陰です.こ

の場を借りて厚くお礼申し上げます.本当にありが

とうございました.そして最後になりましたが,ご

参加・ご講演頂いた皆様にお礼申し上げて,開催報

告とさせていただきます.

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