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1 サイトトップ】>【化学物質管理】>【化学物質のリスクアセスメント2016 05 09 改訂:2016 06 07 改訂:2016 07 22 改訂:2016 10 23 最終改訂:2017 10 17 ECETOC TRA を用いたリスクアセスメント 元・厚労省化学物質対策課 化学物質国際動向分析官 柳川 行雄 内容 ECETOC TRA とは................................................................................ 2 2 まずはダウンロードしよう。...................................................................... 2 3 とりあえず試してみよう。 ......................................................................... 7 (1)リスクアセスメントを行う想定作業.................................................... 7 (2)リスクアセスメントを行うために必要な事項を調べよう.................. 11 ア 物質の特性 ......................................................................................... 11 イ 作業内容等の入力 .............................................................................. 14 ウ その他の注意すべき事項.................................................................... 21 (3)いよいよリスクアセスメントを実施します ....................................... 21 4 最後に ....................................................................................................... 29

1 ECETOCsr-yanagawa.sakura.ne.jp/document/pdf/20160509_yanagawa...2 1 ECETOC のTRA とは ECETOC のTRA(Targeted Risk Assessment (TRA))とは、ECETOC(欧 州化学物質生態毒性および毒性センター)が開発したリスクアセスメントツー

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【サイトトップ】>【化学物質管理】>【化学物質のリスクアセスメント】

2016 年 05 月 09 日 改訂:2016 年 06 月 07 日 改訂:2016 年 07 月 22 日 改訂:2016 年 10 月 23 日

最終改訂:2017 年 10 月 17 日

ECETOC の TRA を用いたリスクアセスメント

元・厚労省化学物質対策課 化学物質国際動向分析官

柳川 行雄

内容 1 ECETOC の TRA とは ................................................................................ 2 2 まずはダウンロードしよう。 ...................................................................... 2 3 とりあえず試してみよう。 ......................................................................... 7 (1)リスクアセスメントを行う想定作業 .................................................... 7 (2)リスクアセスメントを行うために必要な事項を調べよう .................. 11 ア 物質の特性 ......................................................................................... 11 イ 作業内容等の入力 .............................................................................. 14 ウ その他の注意すべき事項 .................................................................... 21

(3)いよいよリスクアセスメントを実施します ....................................... 21 4 最後に ....................................................................................................... 29

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1 ECETOC の TRA とは ECETOC の TRA(Targeted Risk Assessment (TRA))とは、ECETOC(欧

州化学物質生態毒性および毒性センター)が開発したリスクアセスメントツー

ルで、厚生労働省の平成 27 年9月 18 日基発 091 8 第3号「化学物質等による

危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」にも紹介されています。た

だ、ECETOC が最近 WEB サイトを大幅に改修したため、サイトの画面はこの

通達のものとはまったく異なったものとなっています。 なお、ECETOC は民間の企業が会員となって 1978 年に創設された非営利団

体ですが、公的な機関として位置づけられており、様々な化学物質に関する情報

を発信しています。 日本化学工業協会も ECETOC の TRA を基にした日本語で使用できるツール

を、ユーザー登録した方に対して公開しています。こちらを利用することも考え

てよいと思います。なお、日本化学工業協会のサイトでは、ECETOC の TRA を

用いる上で参考となる情報を一般向けに公開しています。 また、厚生労働省の WEB サイトに、一般財団法人化学物質評価研究機構が作

成した「ECETOC TRA を用いる(推定ばく露濃度の算出を含む)労働者リスク

アセスメントマニュアル」(2016 年 6 月)が掲載されています。 2 まずはダウンロードしよう。 ダウンロードするために、まず TRA のサイトを参照してください。直接入力

するなら(http://www.ecetoc.org/glossary/tra/)で、この URL は厚労省の通達

に出ているものと同じです。また、【ECETOC TRA】で YAHOO か Google で

検索すると、次の画面のように、かなり上位(この画面ではトップ)に TRA の

ダウンロードサイト(このファイルの4頁の上図)がヒットします。

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ちなみに上記画面の3番目の「ECETOC の TRA-サイトトップ」とあるペー

ジは、今、ご覧になっているこの PDF ファイルです。 さて、TRA の画面表示は次のようになっています。

メニューの「TOOLS」のところにマウスカーソルを合わせると、プルダウンメ

この PDF ファイル

ECETOC TRA のサイト

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ニューが表示されます。

ここで「TARGETED RISK ASSESSMENT(TRA)」のところをクリックし

て下さい。ここにカーソルを乗せるとサブメニューの「HISTORY」が表示され

ますが、気にしないで下さい。すると画面が遷移して次のような画面に切替わり

ます。(もしプルダウンメニューが表示されなければ「TOOLS」を直接クリック

し、遷移した画面の左側にある「Targeted Risk Assessment(TRA)」をクリッ

クしてください。)

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画面を下の方にスクロールすると、次のような表示が現れます。

この中央部分に次のような2つのボタンがありますね。

「Download Integrated tool」の方のボタンをクリックしてください。

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あなたの情報を入力する画面が出てきます。必要事項を入力して「SUBMIT」と記されているボタン(画面では下部)を押してください。 あなたの登録したメールアドレスに、ダウンロードするための必要事項が送

付されてきますので、指定された URL からダウンロードして、適当な解凍ソフ

トで解凍してください。あなたのパソコンが市販のものであれば、(たぶん)解

凍ソフトはプリインストールされていますから、ダウンロードしたファイルを

クリックするだけで解凍されます。 解凍して、次のような EXCEL ファイル構成になっていれば OK です。

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3 とりあえず試してみよう。 (1)リスクアセスメントを行う想定作業

さて、ここでとりあえず TRA を体験して頂くために、ある作業を想定してリ

スクアセスメントを行います。この想定した作業で使用する化学物質は、“フタ

ル酸ビス(2‐エチルヘキシル)”(DEHP)だとします。その特性は表1のよう

になっています。 また、リスクアセスメントを行う作業は表2のようなものであると、想定しま

す。 そして、TRA でリスクアセスメントを行うためには、この表1(沸点は必要

ありません)と表2(使用量は必要ありません)の「入力内容」の項目の情報が

必要になります。この2つの表の「入力内容」を埋めさえすれば、あとは機械的

に行うことができるのです1)。 あれ? と思いませんか。そうです。化学物質の使用量の入力は必要がないの

です。ECETOC の TRA は、作業内容から発散量を推定するという考え方を採

用しているからです。 実際にリスクアセスメントを行うときは、表1と表2の「入力項目」の欄を空

欄にしたもの(PDF 版 EXCEL 版)を私のサイトにアップしておきますので、

よろしければそちらをお使い頂ければと思います。プリントアウトしてその空

欄に、実際に対象とする化学物質と作業内容を調べて書き込めば、あとは簡単に

リスクアセスメントができます。 本稿では、これらの表を埋める手法を具体的に説明してゆきます。

1 実は、表1の備考欄に記してあるように、すべての項目を埋めなくてもなくても職業性

ばく露のリスク評価は可能である。

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表1:ECETOC TRA の物理化学的特性等に関する入力項目(DEHP を例として/モデル SDS 等による)

表示 日本語訳 入力内容 入力カラム 備考

SUBSTANCE 対象物質名 DEHP D30 製品名で可

CAS No. Cas 番号 117-81-7 D32 任意入力

Molecular Weight 分子量 390.57 D39

Vapour pressure(Pa or hPa) 蒸気圧 1 Pa (20℃) D40・E40 単位の入力に注意

Water solbility 水溶解度 0.003 mg/L (25℃) D41 未入力でも動作する

Partition coefficient octanol-water

オクタノール/水 分配係数

Log Kow = 7.60 D42・E42 未入力でも動作する

Biodegradability test result 好気的生分解性 良分解性 (readily biodegradable)

D43 プルダウン選択入力 未入力でも動作する

Reference value long-term inhalation - wokers

職業暴露限界 許容濃度(日本産業衛生学会) 5mg/m3

H76 許容濃度、TLV-TWA 等

でよい。

【参考】沸点 385℃ ※ 「好気的生分解性」以外の情報は、SDS に記載されていることが多い。SDS の「3.組成及び成分情報」及び「9.物

理的及び化学的性質」を参照するとかなりのデータが記載されている。 「好気的生分解性」は、環境影響に影響を与えるパラメタで化審法関連の資料に記載されていることがある。いずれに

せよ、職業暴露とは関連が低く、入力する必要性には乏しい。

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表2:ECETOC TRA による職業ばく露評価のための入力項目(DEHP の作業例) ※ 入力はすべてプルダウン選択方式

入力内容 入力カラム

(55~69) 備考 シナリオ① シナリオ② シナリオ③

シナリオ名 DEHP の投入 DEHP の混練、加熱 DEHP の成型 B 任意入力

プロセス カテゴリー /別表を参照し

て入力する

PROC8b (専用設備での容器/大型容器への/からの物質

または調剤の移送)

PROC5 (調剤、アーティクルへ

配合のためのバッチプ

ロセス(混合及び混和))

PROC14 (打錠、加圧、押し出し、

造粒による調剤または

アーティクルの生産)

D

別途作成され

た表を利用し

て選択する。

作業形態 Industrial Industrial Industrial E 専属か否か

固体か No(液体) No(液体) No(液体) F

発塵性又は作業

温度における蒸

気の揮発性(Pa)

常温の場合 入力不要

1.44(※) (150℃)

1.61(※) (200℃) G

作業時間 (時/日) 15 分未満 4 時間以上 4 時間以上 H

換気の状況 屋内 屋内で局所排気装置付 屋内で局所排気装置付 I

呼吸用保護具の

有無と、効率 No(マスクを使用せず) No(マスクを使用せず) No(マスクを使用せず) J

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製品中の対象物

質含有量 25%以上 5~25% 5~25% K

手袋の使用 No(手袋を使用せず) No(手袋を使用せず) No(手袋を使用せず) L

【参考】使用量 20 リットル 400 ミリリットル 10 リットル ※ 蒸気の揮発性を求める方法2)は以下による。作業温度が常温ではない場合、蒸気圧は、温度(絶対温度)と蒸気圧の比

例計算より求める。上記シナリオが 150℃で取り扱う場合の計算は、以下のとおり(モデル SDS より、DEHP の 20℃の

蒸気圧は 1 Pa と仮定)となる。 150℃の蒸気圧 =20℃の蒸気圧(Pa)×(150℃の絶対温度/20℃の絶対温度) =1 ×(150+273)/(20+273) =1.44 Pa

2 蒸気の揮発性を求める方法は、一般財団法人化学物質評価研究機構「ECETOC TRA を用いる(推定ばく露濃度の算出を含む)労働者リ

スクアセスメントマニュアル」(2016 年 6 月)を参考にしています。

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(2)リスクアセスメントを行うために必要な事項を調べよう

ア 物質の特性

あなたが実際に TRA でリスクアセスメントを行うには、SDS から、「物質名」

「CAS 番号」「分子量」「蒸気圧」「水溶解度」「オクタノール/水分配係数3)」「好

気的生分解性」「職業暴露限界」を調べなければなりません4)。「CAS 番号」は入

力しなくてもできるのですが、後で SDS を取り違えていないことを確認できる

ようにするため、入力しておくことをお勧めします。 このうち、「好気的生分解性」については、SDS に記載されていない可能性が

あります。これは環境影響に影響を与えるパラメタで化審法関連の資料に記載

されていることがあります。「好気的生分解性」という言葉と、その物質の CAS番号で検索すると、環境省や CERI のその物質の有害性評価書がヒットするこ

とがあるので、その文書内で「分解性」などの言葉で簡易検索をかけると分かる

ことがあります。ただ、入力しなくても職業ばく露に限ったリスクアセスメント

はとりあえず実施することは可能です。 さて、これらの項目を調べる方法について説明しましょう。次図は DEHP に

関して政府が作成したモデル SDS の中の「9.物理的及び化学的性質」の項目

です。 3 水と n-オクタノールをコップに入れてしばらくすると、これらは上下に2相に分かれ

て平衡状態になる。このコップにある化学物質を投入して混ぜ合わせ、しばらくしたと

きに再び2層に分かれたとしよう。このとき、n-オクタノールと水のそれぞれの中でこ

の物質が溶けている濃度の比が、その物質のオクタノール/水分配係数である。Pow又は Kow と表される。この比はかなり大きくなるので、対数で表すことがあり、その

場合は log Pow 又は log Kow と記す。 この値が大きいと生体内で蓄積されるおそれが大きいと、一応はいえる。しかし、分

子の大きさが大きいものだと細胞膜を通過しにくくなるので、Pow が大きくても蓄積さ

れにくい傾向があり、絶対的なものではない。なお、1-オクタノールと記されているこ

ともあるが、これは n-オクタノールの別称で、同じ物質である。 なお、この化学物質が界面活性剤などだと、水と n-オクタノールが2層に分かれない

ため、そのような物質ではこの数値を定めることはできない。また、生体内で化学反応

を起こしやすい物質の場合も、あまり意味のある数値ではない。 4 「物質名」と「CAS 番号」はリスク判定には用いられていないので、どのような値を

入力しても結論に変わりはない。また。職業ばく露のリスク判定をするだけなら、「水

溶解度」「オクタノール/水分配係数」、「好気的生分解性」の入力も不要である。

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この中に「蒸気圧」「水溶解度」「オクタノール/水分配係数」が書かれていま

す。「オクタノール/水分配係数」は「n-オクタノール/水分配係数」又は「1-

オクタノール/水分配係数」と記されていることもありますが、すべて同じ意味

です。 蒸気圧の単位が Pa 表示でないとき mmHg など、Pa 表示に換算しなければ

なりません。これは、ネットで「Pa 換算」で検索すると換算するツールのサイ

トが見つかりますので、そちらを利用してください。 また、8の「ばく露防止及び保護措置」のところに次のような記述があります。

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「職業暴露限界」は、ここで調べます。この中の管理濃度、許容濃度などが職

業暴露限界にあたるものです。このほか、MAK 値・WEL 値・SCOEL 値などが

記載されている場合もあると思いますが、それらも職業暴露限界です。 いくつか数値があって、どの数値を用いるべきか迷いますね。まあ、安全のた

めには一番小さな数値を用いるべきではありますが、我が国では日本産業衛生

学会の許容濃度か、ACGIH の TLV-TWA が使用されることが多いようです。ま

た、一番新しい数値を優先するという考え方もあると思います。ただし、「TLV-STEL」は使ってはいけません。 なお、単位が「ppm」で表されている場合は「mg/m3」に換算しなければなり

ません。 そこで、EXCEL ファイルを用いて許容濃度等を ppm から mg/m3に換算する

ためのソフト「【ppm】と【mg/m3】の換算のためのツール(解説書/ツール/

Vector から DL する)」を私の WEB サイトにアップしておきます。よろしけれ

ばそちらをお使いください。

【ppm から mg/m3に換算するためのソフト】 私の WEB サイトにある「換算するためのソフト」が換算をしている考え方

について簡単に説明しておきます。ちょっと難しいと思われるかもしれません

が、そのときは飛ばしてください。理想気体の状態方程式は、PV=mRT/M と

なっています。P は圧力【Pa】で、標準大気圧のときは、101,325【Pa】とな

ります。V は気体の容積【m3】、m は質量【kg】、R はモル気体定数で、

8.3144598・・・の値になります。T は絶対温度【K】で、気温に 273.15 を加えれ

ば算出できます。M は分子量で単位はありません。 従って、作業空間の気体中のある化学物質の濃度が X【ppm】だったとしま

しょう。X は単位のないただの数値だと思ってください。ppm は百万分率です

から1【m3】の気体中には X×10-6【m3】の気体があるはずです。従って、そ

の重量は“m【kg】=P(X×10-6)M/RT”となります。従ってその重量を mgで表そうとすると、これを 1000 倍すればよいことになります。 従って、X【ppm】を W【mg/m3】に換算するには、ちょっと T の定義は変

えましたが、次のようになります。 【1気圧のもとで ppm を mg/m3 に換算する方法】 W【mg/m3】←〔(101,325×M×10-3)÷(8.314×(T+273.15))〕×X【ppm】

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この式の X に ppm で表された職業暴露限界の数値を入れると、ppm に換算

される。なお、ここに M は分子量、T は気温【℃】である。

「CAS 番号」と「分子量」は3の「3.組成及び成分情報」のところを探し

てください。「CAS 番号」は SDS によっては別なところに書いてあるかもしれ

ません。 イ 作業内容等の入力

次が表2です。この情報は実際の作業内容に関するものです。TRA を行うと

きに、TRA の EXCEL ファイル(ecetocTRAM.xls)の 55 行から 69 行目まで

に入力するためのものです。TRA の EXCEL ファイルではプロセスは 15 個ま

で入力できるようになっています。なお、TRA の EXCEL ファイルでは、F 列

に「no」を入力した場合、常温で取り扱うときは G 列には入力する必要はあり

ません。 TRA の EXCEL ファイルでは、ほとんどはプルダウンメニューから選択入力

する形になっているので、入力そのものは楽です。入力するべき項目は表3に示

してある通りで、10 個の項目があります。 表3:労働者ばく露評価のための入力項目

表示 内容 入力方法 Scenario Name シナリオ名 自由入力(漢字も入力可能) Process Category

プロセスカテゴ

リ PROC1 ~25c の中から選択(別表参照)

Type of Setting 作業形態 工業的使用は Industrial 専門業者使用は Professional を選択

Is substance a solid?

対象物質の状態

固体であれば(ダストで発生、つまり蒸気圧を

考慮しないという意味で) Yes を選択する、 液体であれば(蒸気圧を考慮して Fugacity を決定するという意味で) No を選択する。 ※ なお、厳密には、固体の場合は、ダスト

と蒸気の両方の可能性があるため、Yes

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と No の両方で計算(リスク評価)を行

い、安全側(結論として得られる RCR の

値の高い方)を採用するべきである。特

に、取扱い温度で蒸気になるような個体は

そのようにしなければならない。

Dustiness of solid or VP of volatiles(Pa) at process temp.

発塵性 又は 作業温度におけ

る蒸気の揮発性

(蒸気圧/Pa)

固体の場合: Dustiness(発塵性)を高、中、低から選

択 液体の場合: 作業温度における蒸気圧を Pa 単位で入力 (常温作業は入力不要)

Duration of activity (hours/day)

作業時間(時/

日)

1日当たりの作業時間を下記より選択 15 分未満 15 分~1 時間 1 時間~4 時間 4 時間以上

Use of ventilation ? 換気の状況

下記7つの選択肢より選択 屋外 屋内 屋内で局所排気装置(LEV)付き 屋内で自然換気 屋内で強制換気 屋内で自然換気+LEV 屋内で強制換気+LEV

Use of respiratory protection and if so, minimum efficiency ?

呼吸用保護具の

有無と、効率

下記の 3 つの選択肢より選択 No (マスクを使用せず) 90%(捕集率) 95%(捕集率)

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Substance in preparation ?

製品中の対象物

質の含有量

下記の 5 つの選択肢より選択 No(純品の場合) 25%以上 5~25% 1 ~5% 1 %未満

Dermal PPE/Gloves

手袋の使用

下記の4つの選択肢より選択 No(手袋を使用せず) APF5)15 APF 10 APF 20

※ 本表は、一般財団法人化学物質評価研究機構「ECETOC TRAを用いる(推

定ばく露濃度の算出を含む)労働者リスクアセスメントマニュアル」(2016年6月)を、筆者が一部修正したものである。

それでは、入力する項目を上から順にみてゆきましょう。 まずは、「シナリオ名」です。作業名だと思っていただいてかまいません。お

好きな言葉を入力してください。日本語でかまいませんし、ここに何を入力して

も結果には影響はありません。 次が、「プロセスカテゴリ」です。ECETOC の TRA を実施しようとするとき

の最大の難所です。ただ、ここをクリアできればあとはそれほど難しいものはあ

りませんので安心してください。 プルダウンメニューの中から、対象となる作業が、どれに一番近いかを選ぶこ

とになります。ここを間違えると正しい結果が出ません。 プルダウンメニューの各プロセスの意味は、表4の通りです。日本語訳が書い

てないところがありますが、すぐ上の欄の日本語訳が書かれているところの英

文と比べてみてください。取扱い温度が異なるだけです。英文の欄をみると、「pt」と「mp」関係で「a」、「b」、「c」と分けてあるだけですね。ちなみに「pt」とは

取扱い温度のことで、「mp」は溶解温度のことです。

5 APF(Assigned Protection Factor=指定防護係数)なお、この項目の入力について

は、当サイトの「保護具の基本(ECETOC TRA の入力項目 APF を含めて)を解説す

る」の4に解説してある。

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表4:プリセスカテゴリーの意義 プロセスカテゴリ(ECETOC TRA) 仮訳

PROC 1 Use in closed process, no likelihood of exposure ばく露のおそれがない閉鎖プロセスでの使用

PROC 2 Use in closed, continuous process with occasional controlled exposure

一時的で管理されたばく露を伴う、閉鎖式の連続プロセスで

の使用

PROC 3 Use in closed batch process (synthesis or formulation) 閉鎖式のバッチプロセスでの使用(合成又は調合)

PROC 4 Use in batch and other process (synthesis) where opportunity for exposure arises

ばく露の恐れがある、バッチその他のプロセス(合成)にお

ける使用

PROC 5 Mixing or blending in batch processes (multistage and/or significant contact)

バッチプロセスにおける混合又は混和(多段階の かつ/又は 深刻な接触)

PROC 6 Calendering operations カレンダ作業(訳注 ロール機による延伸) PROC 7 Industrial spraying 工業的な吹き付け作業

PROC 8a Transfer of chemicals from/to vessels/ large containers at non dedicated facilities

化学物質の非専用設備での容器/大型容器 からの/への 移送

PROC 8b Transfer of chemicals from/to vessels/ large containers at dedicated facilities

化学物質の専用設備での容器/大型容器 からの/への 移し替

PROC 9 Transfer of chemicals into small containers (dedicated filling line)

小型容器への化学物質の移し替え(専用の充填ライン)

PROC 10 Roller application or brushing ローラー塗布又はブラッシング PROC 11 Non industrial spraying 非工業的な吹き付け作業 PROC 12 Use of blow agents for foam production 発泡体製造のための発泡剤の使用

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PROC 13 Treatment of articles by dipping and pouring 浸漬又は注入による成形品処理

PROC 14 Production of preparations or articles by tabletting, compression, extrusion, pelletisation

打錠、加圧、押出、造粒による、製材又は成形品の製造

PROC 15 Use of laboratory reagents in small scale laboratories 小規模な研究所における研究用試薬の使用

PROC 16 Using material as fuel sources, limited exposure to unburned product to be expected

燃料としての物質の使用及び燃え残った残渣による限定的な

ばく露

PROC 17 Lubrication at high energy conditions and in partly open process

部分的に解放されたプロセスにおける、高エネルギー状態で

の注油 PROC 18 Greasing at high energy conditions 高エネルギ状態でのグリースの塗布

PROC 19 Hand-mixing with intimate contact (only PPE available 密接に接触する状態での、手作業による混合(個人用保護具

のみ利用可能)

PROC 20 Heat and pressure transfer fluids (closed systems) in dispersive use

分散的に使用する、熱及び圧力を伝える液体(閉鎖系)

PROC 21 Low energy manipulation of substances in materials and/or articles

材料 及び/又は 成形品の、低いエネルギー状態での操作

PROC 22a Potentially closed operations with minerals at elevated temperature - pt<mp - Low Fugacity

温度が上昇する状態の鉱物(金属)の閉鎖系プロセスにおけ

る操作

PROC 22b Potentially closed operations with minerals at elevated temperature - pt ≈ mp - Med Fugacity

PROC 22c Potentially closed operations with minerals at elevated temperature - pt > mp - High Fugacity

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PROC 23a Open processing and transfer of minerals at elevated temperature - pt<mp - Low Fugacity

温度が上昇する状態の鉱物(金属)の開放系による操作又は

移送の操作

PROC 23b 23b - Open processing and transfer of minerals at elevated temperature - pt ≈ mp - Med Fugacity

PROC 23c 23c - Open processing and transfer of minerals at elevated temperature - pt > mp - High Fugacity

PROC 24a High (mechanical) energy work-up of substances bound in materials and/or articles - pt<mp - Low Fugacity

物質 及び/又は 成形品の高い(機械的)エネルギーを伴う仕

上げ作業

PROC 24b High (mechanical) energy work-up of substances bound in materials and/or articles - pt ≈ mp - Med Fugacity

PROC 24c High (mechanical) energy work-up of substances bound in materials and/or articles - pt > mp - High Fugacity

PROC 25a Hot work operations with metals - pt<mp - Low Fugacity 金属を用いた高温作業

PROC 25b Hot work operations with metals - pt ≈ mp - Med Fugacity

PROC 25c Hot work operations with metals - pt > mp - High Fugacity

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初めての方には分かりにくいかもしれませんね。横浜国立大学の日本語訳と

日本化学工業協会の説明も併せて参考にされてください。とくに後者は役に立

つと思います。 次は「作業形態」です。労働者がその作業を専門的に行っているのであれば

「Professional」を選択してください。ただし、プロセスカテゴリで PROC7と

PROC22 を選んだ場合は常に「industrial」を、PROC11 と PROC20 を選んだ

場合は常に「Professional」を選んでください。 「対象物質の状態」は、英文では「それは固体ですか」と書かれていますね。

通常は固体であれば「yes」、液体であれば「no」を選べば OK です。 表3の赤文字の記述は、取扱温度で蒸気になるような物質の場合には留意が

必要です。そのときは、「yes」と「no」のそれぞれについてリスク評価を行って、

RCR の高いほうを採用してください。 次が「発塵性又は作業温度における蒸気の揮発性」です。迷うのは「発塵性」

のところだと思います。ここは、中災防の「化学物質リスクアセスメントのすす

め方」の6ページにある「b 揮発性・飛散性ポイント(B)」の「粉体」の項目を

参照して頂ければよいです。 液体の場合は作業温度における蒸気圧を Pa 単位で入力します。表2の括弧の中

の温度は入力する必要はありません。また、常温で液体の場合は入力そのものをし

なくてもかまいません。 「作業時間」と「換気の状態」は分かりますね。LEV とは局所排気装置のこ

とで、Local Exhaust Ventilation の略です。 「呼吸用保護具の有無と、効率」ですが、効率は保護具の取説の「捕集効率」

を参照してください。 防じんマスクの場合は、RS2、DS2、RS3 及び DS3 を使用しているときは、

選択肢の“95%”を選びましょう。捕集効率 80%の RS1 及び DS1 の場合はど

うするのかが疑問になるかもしれませんが、そのときは迷わず保護具の方を捕

集効率 95%以上のものに変更しましょう。価格的にもそれほど変わるわけでは

ありません。 問題は防毒マスクと給気式マスクの場合です。防毒マスクについては捕集効

率は表示されていませんし、給気式マスクの場合はそもそも捕集効率という概

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念がありません。この場合は、防護係数から判定する方法が考えられます。防護

係数が 10 未満のときは“No”、10 以上 20 未満のときは“90%”、20 以上のと

きは“95%”で入力することで対応可能だろうと思います。そのようにしても安

全側にはなります。 保護手袋の APF も保護手袋の説明書には記載されていません。これは、

ECETOCの独自の考え方でAPFを選ぶようになっています。これについては、

当サイトの「資料」のページの「保護具の基本(ECETOC TRA の入力項目 APFを含めて)を解説する」の4に解説してありますので、そちらを参照してくださ

い。 ウ その他の注意すべき事項

問題は、現実の職場では単一の化学物質を使用することはほとんどなく、たい

ていは混合物だということです。では、その場合の職業暴露限界はどの数値を入

力すればよいのでしょうか? これには、いろいろな考え方があるようです。最も低い数値を用いるという考

え方もあれば、濃度加重平均をとるという考え方もあると思います。また、すべ

ての成分についてリスクアセスメントを実施し、得られる RCR をすべて合計し

て、合計した数値で判断するという考え方もあると思います。 しかし、私が数人の専門家に確認したところでは、全員が、成分の中で最も低

い数値を用いるべきだと考えていました。私も、そのようにすればよいと思いま

す。 その他の注意事項として、発散源のすぐ近くに作業者が顔を近づけるような

作業では、TRA の結果でリスクは低いとされた場合でも、適切な保護具を着用

するようにしてください。 また、日本化学工業協会から ECETOC の QandA の日本語訳が公開されてい

ます。こちらも参考にされてください。 (3)いよいよリスクアセスメントを実施します

さて、それではいよいよ始めましょう。さきほどダウンロードした EXCEL フ

ァイルのうち、「ecetocTRAM.xls」を立ち上げて下さい。他のファイルは気にし

なくてかまいません。

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次のように表示されたら、「続行」を押してください。とくに問題があるわけ

ではありません。

そうすると、パソコンの方で自動的に他の EXCEL ファイルを立ち上げます

が、あなたが気にするべきは最初に立ち上げた「ecetocTRAM.xls」だけです。 記入済みの表1と表2を準備しましょう。 まずは、表1から入力します。入力するべきところは、表の「入力カラム」に

書いてあるので、そこに間違えないように入力していってください。職業暴露限

界以外を入力すると、次のようになります。

こちらは入力したセルの拡大図です。青文字の所が入力した部分です。背景が

黄色のセルは必須入力項目で、ブルーのセルは任意入力です。しかし、職業暴露

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についてのみリスクアセスメントをしたい場合は、必ずしもすべての必須入力

項目に入力しなければならないというわけではありません。

次に H76 のセルに職業暴露限界を入力しましょう。職業暴露限界が ppm に

なっているときは mg/m3 に換算して入力する必要があります。換算の方法は前

述しました。

これで表1の入力は終わりです。 次に表 2 の入力をします。プロセスを入力した結果(一部のみ表示されてい

る)は、次のようになっています。

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これはシナリオ名の入力部分の拡大図です。

プロセスカテゴリの入力部分の拡大図です。

作業形態は、今回の想定ではすべて「industrial」となっています。

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固体かどうかは、今回はすべて液体ですから「no」となります。

発塵性と蒸気圧は、液体の場合はプルダウンメニューから選ぶのではなく、取

扱温度における蒸気圧を数値で入力しますが、常温の場合は必要ありません。な

お、このセルは入力を受け付けないように感じられることがありますが、セルを

選択して数字を打ち込むと入力できますので留意してください。

作業時間はプルダウンメニューから選択します。

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換気の状況もプルダウンメニューから選択します。

呼吸用保護具の有無と、効率も選択入力です。この想定では呼吸用保護具は使

用しません。

物質の含有量も選択入力です。

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最後の入力項目は保護手袋の使用状況です。

すべて入力したら 22 行 E 列の「Run」ボタンを押しましょう。

そうすると、画面がいくつか切替わりますが、最後に最初のファイルがもう一

度表示されたらリスクアセスメントは完成です。 結果は、ばく露の程度などについては O 列から T 列までの 55 行以降に出力

されます。Inhalative Exposure とは吸入ばく露のことで、Dermal Exposure と

は経皮ばく露のことです。ここで、セルが緑色になっていれば、リスクは低いと

判断されているわけです。

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リスクのレベルは、V 列と X 列に出力されます。

中央の W 列に出力がありません。これは「DNEL」を入力しなかったためで

すが、職業ばく露のリスクアセスメントでは必要ないと思ってかまいません。 Risk Characterization Ratio(RCR)が出力されていますが、RCR>1の場

合リスクがあると判断されます。今回の場合はリスクは低いと判断されていま

す。

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4 最後に 最後に、ECETOCのTRAの精度についてみてみましょう。Martie van Tongeren et alの作成したパワーポイントデータ「eteam Project; Results of external validation exercise.」には、欧州で開発されたいくつかの簡易なリス

クアセスメントの実証の結果が記載されています。 これは、その中の ECETOC TRA のものです。左側がバージョン 2 のもので

右側がバージョン 3 のものです。この PDF の図が見にくいようなら、ハイパー

リンクから原典をご覧になって下さい。原典の方は、これよりもかなりみやすい

ようです。

資料出所:Martie van Tongeren et al「eteam Project; Results of external validation

exercise.」 この図の横軸は TRA による推測値で、縦軸は実際の個人ばく露の測定値で、

対数目盛となっています。図の中の 45 度の線上にプロットがあれば、その作業

者については TRA による推測値と測定値が一致していることになります。この

線よりも上にプロットされていれば、TRA によるリスクアセスメント結果より

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も、実際のリスクが高いということを意味します。逆に、下にプロットされてい

れば、実際のリスクの方が低いのですが、過剰な対策が求められたということに

なります。 これらの図は対数グラフなので、実際のバラつきは、一見して得られる印象よ

りもかなり大きくなる傾向があることには注意すべきです。しかし、この種の簡

易なリスクアセスメントとしては、かなり正確な推測ができているのではない

かと思います。なお、図中の CorrCoef とは相関係数のことです。このグラフを

みた印象だけですが、プロットのうち2割程度は 10 倍から 10 分の1の誤差の

範囲に収まっており、8割程度は 100 倍から 100 分の1の範囲に入っているよ

うに見えます。 また、リスクアセスメントの結果よりも実際のリスクの方が高いケースはバ

ージョン2で 29%、バージョン3では 32%となっています。 これでは使い物にならないと思われるかもしれませんが、そのように思うべ

きではないと思います。簡易なリスクアセスメントである以上、多少の過剰な対

策は求められるにしても、7割程度は実際のリスクの方が低く出る=従って安

全な対策が可能なのです。 そして、TRA によるリスクアセスメントの結果よりも実際のリスクの方が高

いケースというのは、顔を発散源に近づけるような作業や、とくに発散する量が

多い作業、発散源の風下での作業など、ある程度は定型的に判るだろうと思いま

す。つまり、そのような作業については、リスクアセスメントの結果を過信しす

ぎないようにするなどの注意をすればよいわけです。 もちろんだからといって、化学物質管理についてまったくの知識がないまま、

機械的に TRA でリスクアセスメントを行って、その結果を過信しすぎるような

ことをすれば危険な結果をもたらすかもしれないということは忘れてはなりま

せん。 要は、どのようなメリットとデメリットがあるのかをきちんと捉えた上で使

用するべきだということなのです。

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この資料は「実務家のための産業保健のサイト」に掲示されています。よろしけ

ればサイトの方にもご訪問ください。