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岡山市へ人を呼び込む魅力調査特別委員会調査状況報告書 平成29年5月1日 岡山市議会議長 宮 武 岡山市へ人を呼び込む魅力調査特別委員会 委員長 森 山 幸 治 本委員会に付託されました調査事件について、調査状況を下記のとおり報告します。 1 調査事件 (1)魅力づくりに向けた産官学連携・市民協働に関する調査 (2)企業誘致・就労拡大等に関する調査 (3)「地方創生」に関する調査 2 調査状況 別紙のとおり

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岡山市へ人を呼び込む魅力調査特別委員会調査状況報告書

平成29年5月1日

岡山市議会議長 宮 武 博 様

岡山市へ人を呼び込む魅力調査特別委員会

委員長 森 山 幸 治

本委員会に付託されました調査事件について、調査状況を下記のとおり報告します。

1 調査事件

(1)魅力づくりに向けた産官学連携・市民協働に関する調査

(2)企業誘致・就労拡大等に関する調査

(3)「地方創生」に関する調査

2 調査状況

別紙のとおり

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3 岡山市へ人を呼び込む魅力調査特別委員会

目次

1.構成 .............................................. 1

2.調査概要 .......................................... 1

○平成 27年5月 15日(第1回) ........................................ 1

○平成 27年7月 27日(第2回) ........................................ 1

○平成 27年 10月 23日(第3回) ....................................... 2

○平成 27年 11月 10日~11月 12日(行政視察) .......................... 4

○平成 28年7月 19日(第4回) ....................................... 17

○平成 28年 10月 17日(第5回) ...................................... 18

○平成 28年 11月 15日~11月 17日(行政視察) ......................... 19

○平成 29年2月 15日(第6回) ....................................... 43

3.まとめ ........................................... 45

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岡山市へ人を呼び込む魅力調査特別委員会調査状況

1 構 成

委 員 長 森 山 幸 治

副委員長 林 敏 宏

委 員 和 氣 健

〃 松 島 重 綱

〃 小 川 信 幸

〃 東 原 透

〃 岡 崎 隆

〃 竹之内 則 夫

〃 林 潤

〃 鬼 木 のぞみ

〃 楠 木 忠 司

2 調 査 概 要

○平成27年5月15日(第1回)

平成27年5月臨時市議会において本特別委員会が設置され,正・副委員長の互選を行っ

た。

○平成27年7月27日(第2回)

1 岡山市へ人を呼び込む魅力調査特別委員会の調査方針及びテーマについて

2 岡山市における移住・定住支援の取り組みについて

○会議の内容

1 岡山市へ人を呼び込む魅力調査特別委員会の調査方針及びテーマについて,委員間で

協議し,正副委員長に一任した。

2 市民協働企画総務課長から,岡山市における移住・定住支援の取り組みについて,資

料により説明があった。

それによると,転入超過者数が平成23年以降大幅に増加しており,平成24年には全国

14位になっている。移住相談件数も年々増加しており,平成24年度は年間34件だったも

のが,平成26年度は429件となった。相談内容としては住まい・仕事が大部分を占めてお

り,相談者の居住地は1位が関東で,全体の約60%を占めている。平成27年1月31日に

東京で実施された移住相談会では,基礎自治体単独で開催された移住相談会の中で過去

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最高の来場者を記録したとのこと。また,関東圏で行われた移住相談会は関西圏とは傾

向が異なり,関東圏では30~40代が中心で,子どもや自身の健康・安全を守ることを目

的としており,主に利便性や子育て環境の充実を求めているが,関西圏では60代以上が

中心で,充実したセカンドライフが目的のため,豊かな自然環境・充実した医療環境を

主に求めている。平成27年をピークに岡山市の将来推計人口は減少の一途をたどると予

測されるため,移住・定住を促進する必要がある,とのこと。

委員から,資料によると転入超過の状態が続いているが,それは転勤や結婚などの通

例の外形的な要因によるところが大きく,恒常的な増加を目指すためにはやはり仕事場

を増やすことが必要で,そのためには企業誘致など横断的な連携が必要なのではないか,

との意見があり,当局から,仕事場の充足が進めば移住・定住も進むだろうが,地方創

生が叫ばれているなか,他の自治体との差別化をしていくのであれば,岡山市の魅力を

インパクトあるものにする必要があると考えている,との答弁があった。

また,別の委員から,岡山市は魅力ポテンシャル高いと思うが,市域が広いため,中

山地域と,準過疎地に指定されている地域と都市部で戦略を変えるべきで,働く場所の

整備,保育の充実,高齢者の方のついのすみかとして求めてもらう等それぞれ力を入れ

るべきと思うが今後の考えは,との質問があり,当局から,先方のニーズを踏まえて,

できるだけストライクの情報を返していく状況であるため,今後は離島等人口が流出し

ていく地域に関しての呼び込み方など,戦略的に進化させていきたい,との答弁があっ

た。

一方,別の委員から,調査事項として「若者子育て世代の転入・定住増に関する取り

組み」を加えるよう要望があった。

○平成27年10月23日(第3回)

1 岡山市における観光客の誘致について

2 岡山市における移住・定住の取り組みについて

○会議の内容

1 観光コンベンション推進課長から,岡山市における観光客の誘致について,資料に

より説明があった。

それによると,インターネット,ホームページなどを使って岡山市の情報発信をし

ており,今年度はSNSやスマホのアプリを活用して,市内の観光地を回り,映画「進

撃の巨人」とタイアップした企画を平成27年7月1日から10月31日まで実施した。

また,平成28年4月から6月までの3カ月間,JR各グループを中心として,県内

の自治体や観光関連団体が一丸となって,岡山県への誘致を目指す晴れの国おかやま

デスティネーションキャンペーンを行う予定で,それに向けて,観光展や商談会への

参加PRを行う。

さらに,岡山の魅力アップとして,岡山後楽園・岡山城の連携ということで協議会

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を立ち上げ,後楽園の幻想庭園,岡山城の烏城灯源郷との同時開催や,倉敷・総社市

との連携で「イイこと発見!ハレルヤ旅」と題して岡山・倉敷市の各観光地を周遊す

る取り組みを関西圏や九州圏を中心に誘客している。

次に,訪日外国人観光客誘致,受け入れについては,海外プロモーションとして観

光課職員,中国地方あるいは岡山県や観光関連団体の職員と海外に出向いて観光展や

商談会に参加し,旅行会社を対象にインバウンドの旅行商品など誘客に努めている。

また,海外の旅行社,雑誌社,ブロガーなどを中国地方で招致して現地での旅行説

明などをしている。

外国人観光客の受け入れ環境については,観光案内所や岡山城天守閣内でもWi-

Fiのフリー環境整備,岡山後楽園・岡山城への多言語化による案内誘導看板の設置

や観光パンフレットの多言語化に取り組んでおり,岡山城天守閣外国人入場者数の推

移については東日本大震災があった平成23年を除き,おおむね順調に増加している,

とのこと。

委員から,インターネット,スマホは若い人がターゲットだが,年齢の高い人への

広報の取り組みはどのようにしていくのか,との質問があり,当局から,広報紙等従

来の紙ベースで,できるだけ目に触れるようにしている,との答弁があった。

また,別の委員から,岡山市の魅力は日本有数の古墳にあり,国内第4位の規模を

誇る造山古墳をはじめ,古代吉備の国というのは,岡山が誇れる歴史文化の資源であ

る。そういうところに磨きをかけ,岡山城・後楽園と広域連携していく中で吉備の国

という大きなくくりで地域の歴史文化をもっと情報発信してはどうか,との意見があ

り,当局から,最長5年をかけて古代吉備の国の繁栄等ストーリーなどの拾い上げの

調査をし,広域連携も取り組んでいきたい,との答弁があった。

2 市民協働企画総務課長から,岡山市における移住・定住支援の取り組みについて,

資料により説明があった。

それによると,平成28年度に岡山市東京事務所内へサテライト移住相談窓口を開設

し,首都圏在住の方々に対して,移住相談機能等を強化し,本市への移住をさらに促

進し,地域社会の活性化を図りたい。サテライト移住相談窓口の開設に当たっては,

平成28年1月から3月にかけて移住アドバイザーの養成を行っていく,とのこと。

委員から,移住アドバイザーはどのような人が選ばれるのか,との質問があり,当

局から,当初3カ月は岡山市へ来て研修を受けてもらい,実際に現地へ出向き,岡山

市を勉強した上で,関東圏在住の方を募集したいと考えている,との答弁があった。

また,別の委員から,就職や就農についての具体的な支援について質問があり,当

局から,民間団体との連携で就職エージェントやハローワークの方に移住相談会に参

加してもらっており,就農相談には,経済局の相談員も入っている,との答弁があっ

た。

さらに別の委員から,東京での移住・定住のセミナーや説明会をもっと楽しくリア

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ルなものにするために,農業に触れたり,地産地消のものに触れたりなど,岡山の情

報を発信する取り組みも必要ではないか,との意見があり,当局から,岡山商工会議

所との連携でフルーツパフェのまち岡山をPRしてきたが,今後サテライト移住相談

窓口を東京事務所に置くことによって,人と人とのつながりを重視し,NPO法人ふ

るさと回帰支援センターや岡山県等と連携しながら岡山市の情報発信をしていきたい,

との答弁があった。

◎行政視察調査(平成27年11月10日~11月12日)

【静岡県静岡市】

○移住・定住の取り組みについて

1 静岡市の概要(平成27年9月1日現在)

人口 703,393人

面積 1,411.90㎢

静岡市は,平成17年4月1日,全国で14番目の政令指定都市になった。市域の大部分は

山間地であり,豊かな自然環境を有する一方,平野部に集中した市街地を形成している。

年平均気温は約16.5℃,年間日照時間は約2,215時間であり,年間を通して温暖な気候の

ため,雪がほとんど降らない。

産業では,商業やサービス業などの第3次産業や港湾関連産業が盛んであり,商業都市

としての性格と駿河湾臨海工業地帯の中心としての顔を持っている。

農業では,みかん,いちご,ワサビなどが特産品として生産されている。また全国一の

お茶の集散地になっている。

観光資源は,山間部に南アルプス国立公園や良質な温泉などを有しており,また,南部

には日本平,三保松原,久能山東照宮,登呂遺跡などがあり,風光明媚な自然景観や多く

の史跡に恵まれている。

2 静岡市の人口ビジョン・総合戦略について

今,日本全国人口減少があり,人口が減ることによって経済規模が縮小して国民所得の

低下が進んでいく恐れがあると考えられる。特に静岡市は東京に人口を持っていかれてい

るという状況である。ちょうど静岡市と清水市が合併して12年であるが,合併前から人口

減少は始まっていた。

階級別人口をみると生産年齢人口で,1990年をピークに減少を続けており,年少人口も

1975年をピークに減少を続けている。現在はピーク時の3分の2という状況である。老年

人口においては静岡市の場合は高齢化が早く進み,もう少しで高止まりすると言われてい

る。当然,若年層が減っていくと,高齢化率は高まってくる。

次に人口の自然増減は2005年を境にマイナスに転じており,社会増減については一貫し

てマイナス,転出者が多いという状況になっているが,転出の幅は狭まってきている。

合計特殊出生率については,東京都は1.1弱。静岡市が1.43であるが,地域によって出生

率に幅がある。このような状況の中,静岡市では昨年度から婚活活動にも取り組んでおり,

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お見合いパーティ等を年30回くらい行っている。中には東京婚活というのもあり,東京の

女性を静岡に連れてきて,カップルをつくる,というのを行っており,10月におこなった

婚活では,女性23人,男性22人のうち,8組のカップルが誕生した。

1歳階級別の転出入の状況についても18歳から22歳まで大学進学時点で流出している。

静岡市は大学の定員が少ない為,東京の大学に行って戻ってこない状況が続いている。地

域ブロック別の転出入の状況では静岡県内ほかの市町では転入超過になっている。他の市

町から静岡市に来て人口増をしているが,それ以上に東京・愛知へ人が流れている。特に

女性の東京圏への流出が大きくなっており,非常に問題意識をもっている。市内でも山の

方は人口減少が激しい。足久保という地域は一番下流に団地ができたことにより人口増と

なった。美帆半島はもともと工業地帯で工場が立地していたが,今は流出したため減少し

ている。それに加えて東日本大震災で津波の風評被害の影響で減っている状態である。

3 静岡市の将来展望について

平成27年に総合計画を策定し,2025年に70万人という目標を掲げた。今の展望の前提と

なる仮定であるが,2025年に1.7の出生率,2040年に2.07にしていこうという目標を立てて

いる。

次に社会移動で,若年層,中堅層の転入を増やして転出を減らしていこう,特に女性の

転出を減らす施策に取り組みたいと考えている。人口減少対策の方向性として未来市民を

増やしていくという看板を掲げて未来市民とは何か,これから生まれてくる子供を増やす,

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出生率を増やすということと,移住者を増やす,そして住み続けてもらう,市外への転出

を止める,これらのことを考えている。それが静岡市の総合戦略の内容となっており,

戦略①:「まち」の存在感を高め,交流人口を増やす

戦略②:「ひと」を育て,「まち」を活性化する

戦略③:「しごと」を生み出し,雇用を増やす

戦略④:移住者を呼び込み,定住者を促進する

戦略⑤:女性・若者の活躍を支え,子育ての希望をかなえる

ということを掲げている。その中でも戦略④の事業例として移住促進に向けた情報発信事

業を行い,ポータルサイトを主とした情報発信や移住セミナー(東京)などで潜在的移住

希望者へのPRを行っている。

4 静岡市移住支援センターについて

東京の情報発信として平成27年4月にオープンし,相談員2名を配置している。相談員

2名を確保するのも大変で,まず本市出身者であることかつ適任者を探すのが大変であっ

た。ブース型市単独でするのは静岡市が初めてである。場所は有楽町近くの交通会館で,

支援センターの相談者は30歳代,40歳代,50歳代が多く,60歳代になると減少する。

意外と20歳代も多いが,そういった若者は静岡市内の企業に就職が決まったがどういう

所に住んだらいいかわからない,といった内容が多く,あとはUターン就職したいという

相談である。

相談の中身は1番多いのが仕事の相談になっている。30歳代から50歳代が多いというの

は,仕事がないと生きていけないので当然であるが,今テレビでよく言われるような農業

系,第1産業以外の相談が多いのが特徴的である。2番目に多いのが住居である。また,

その他では「ご近所付き合いどうですか。」というのをよく聞かれる。また街中は,と聞か

れることも多いが,東京と変わらない,と説明している。就職先さえ決まれば親も連れて

いきたい等の多様な相談があるため,相談員が物を知らないと困るので2カ月に1度は静

岡市に来てもらい,1日目か半日は市内の見学,現地視察,もう半日は子育て部局や農業

部局の職員からレクチャーを受けている。

【主な質疑応答】

Q:本社移転の税優遇措置については具体的にどのようなことをしているのか。

A:企業立地,本社機能移転について,地域再生計画,地域再生法に基づく計画を策定し,

その中で地域再生計画を位置付けたところに外から新しく移転したり,すでにある企

業で雇用を拡大するような投資をしたときに税制優遇が適用される。投資額について

減価償却の段階で優遇される。また,新しく雇った人に対して何年間か控除されると

いう制度になっている。さらに,工場立地法の緑地等の面積率の緩和,企業立地の助

成金などがある。

Q:移住支援センターの相談員の所管は。

A:NPO法人ふるさと回帰支援センターに委託している。

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Q:岡山市は東京から人を連れてきて3カ月研修させるというやり方については。

A:静岡市ではいい人がみつかった。なかなかみつからない可能性もあるので,今の岡山

市の考え方はリスクが少ないと考える。

Q:農村部に移住したいと言う人と都市部に移住したいひとの割合は。

A:今,データはないが,農村と都市で3分の1ずつ,残りはその他であった。

Q:県内で人口の奪い合いをしても仕方ないが,静岡県内他の市町村も呼び込みしている

と思うが,その関係性は。

A:単純に行政区域の人口を増やそうと思ったら,隣と奪い合いをするのが手っ取り早い。

実際に隣の藤枝市にだいぶ人口を持っていかれている。市の職員の7%が藤枝市に住

んでいる。土地が安いし,電車で通えば十分通勤圏内である。しかしそこでは取り合

いをしないように考えている。静岡市内にはパルコ,伊勢丹,松坂屋,マルイ等があ

り,お客は藤枝市からもやってきている。そこで取り合いをしても住民税は増えるか

もしれないが意味がない。むしろ,その静岡市中部圏広域連携推進事業として5市2

町で協力しながら外にうってでようと考えている。

Q:小学校区別の人口増減を出された理由とそれがどのように活かされているのか。

A:津波の風評被害や山間部の状況を知るために出している。出した結果,津波の風評被

害は多少なくはないが,そんなに大きくはない。そもそも沿岸部の人口減少は激しい。

Q:移住セミナーはどのくらいのペースで。

A:年間10回開催できるが,今年度は5回である。

Q:移住セミナーはすべて東京でしているのか。

A:関西ではやっていない。その前にやるとしたら愛知県。拠点も地名度もないので。

Q:移住セミナー以外に他のことでアピールしようとしていることは。

A:セミナーというか,セミナーを前面に出しながら,色々な情報提供をしていきたいと

考える。

Q:相談員の方は相談以外に業務があるか。

A:東京の移住支援センターは市と県のブースがあり,境目がない。それぞれの相談員が

お互い助け合って,県の相談員が休みのときは市の相談員が対応するというような現

場レベルでは非常に良い関係を築いている。相談人の事務ですが,相談件数は1日1

件くらいだと思う。残りの時間はフェイスブックの更新やセミナー準備事務をしてい

る。

【所感】

静岡市の人ロ減少問題も深刻であり,平成27年10月29日に策定した総合戦略でも移住・

定住を戦略の一つに掲げている。東京へのアクセスも新幹線で1時間半程度であり,首都

圏からの移住者を受け入れるための施策に力をいれていることが伺えた。静岡市出身の東

京在住の相談員を雇用するという点については,人材確保が困難であるという問題点もあ

るが,静岡市の良さを十分に知った上で,相談者に移住のアドバイスができるというのは,

大きな利点である。移住・定住に関しては,県や他市町村との連携も進んでおり,今後,

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岡山市が東京事務所に移住相談センターを開設,運営するにあたり,参考にしていけたら

と考える。

【静岡ガス(森のほいくえん)】

○企業内保育の取り組みについて

1 森のほいくえんについて

「従業員が,子育てをしながら安心して働き続けることができる職場環境の整備」を目

的に静岡ガス株式会社,株式会社静岡銀行,静岡鉄道株式会社の3社共同で事業所内保育

施設を平成22年4月に開園。子ども達は「森」という自然の中で遊ぶことにより,様々な

経験をする。その体験を通して,子ども達が生まれながらに持っている「育つカ」を,自

然環境の中でのびのびと育てる,それが「森のほいくえん」のコンセプトであり,名称の

由来となった。

2 内容

森のほいくえんは,静岡ガス研修センター北側敷地に園舎及び園庭を設置し,株式会社

静岡銀行及び静岡鉄道株式会社との三社共同事業として運営しており,三社の負担金の額

に応じて保育園児の人数割り当てを行っている。運営は子育て支援事業に実績(全国200カ

所以上)のあるピジョンハーツ(株)に運営を委託。三社共同事業という形態は全国初で

あり,静岡地区でモデルを作り,他地区への展開も検討していく。

(1)森のほいくえんの設立について

静岡ガス,静岡銀行及び静岡鉄道の三社は業務形態は全く違うものの,働きながら子育

てする従業員というのは増えていた。世の中がワークライフバランスや女性の活躍推進と

いう時代になりつつあり,平成19年9月に担当者レベルの会議を行い,約3年後の平成22

年7月に開園した。

また静岡ガス株式会社の当時の社長が自然の中でのびのび子どもを育てたいという強い

意向があり,なんとか人の痛みがわかるような,自然の中を駆け回って,高いところに登

って落ちたら危ないというのを,身を持って感じられるように当初から遊具はあまり置い

ていなかった。敷地は,静岡ガス株式会社の資材センター跡地を利用しており,総面積987

坪で建物は77坪である。

(2)運営形態について

静岡ガス株式会社・株式会社静岡銀行・静岡鉄道株式会社の三社共同事業であり,全国

初の事例である。運営に関しては,三社とも保育に関するノウハウはまったくないことか

ら,ピジョンハーツ(株)に建物の構想,検討の段階から参加を依頼していた。ピジョン

ハーツは全国で200カ所以上の病院内の託児保育,事業所保育の実績があり,保育士の採用

等も行っている。三社の運営委員会というのを定期的に開催している。開園時間は8時か

ら19時で延長保育は前後1時間利用できる。休園日は,休みの少ない株式会社静岡銀行に

合わせて,土日祝日,年末年始である。保育料3歳児未満と3歳児以上に分けており,三

社で共働きしたと想定した税金を試算し,若干低めの保育料を設定している。(3歳児未

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満:51,OOO円 3歳以上:28,000円)国の補助金との関係もあるので,妥当な保育料と考え

る。保育料については,二人目は半額,三人目は無料となっている。一時保育も行ってい

る。

定員は30名で三社三等分というのではなく,事前に話し合い,アンケート,事業規模な

どを考慮して定員枠を決めている。静岡ガス株式会社の定員は12名である。

保育料は運営費を上回るものではなく,毎年各社が福利厚生費用として案分して充当し

ている。今現在,毎月人件費を含めて約400万の費用負担がでており,三社で負担している。

また,厚生労働省からも1O年間助成金が支給されているが,保育施設は1O年では終わらな

いので,今後なんらかの助成金支給の延長,増額をお願いしたいところである。

(3)保護者の声

今年度の見込み人数として22名を受け入れており,開園当初,年長になると地元の保育

園に転園させ,小学校の友達を作った方がいいのではないか,という保護者の声が多かっ

た。そのため,平成27年度に初めて3歳児クラスができた。学級が増えれば,カリキュラ

ムの充実が今後の課題となってくる。やはり保育園の入園理由として,近く,使いやすい

と言うことが一番なので,小規模で安心感があり,自園調理で温かいものが提供できる,

お盆,年末も開いているので助かる,との好意的な意見も多い一方,部屋を広くしてほし

い,プールがあればいい,という意見も出ている。

【主な質疑応答】

Q:三社の事業規模から考えて30人の定員というのは,ごく一部の社員の福利厚生施設で

はないか。

A:すべての社員に公平な福利厚生策とは言えないが,まずは最初の一歩ということで,

全く職種の違う三社が始めたことに意義があると考える。

Q:国の助成金のほかに保育園に提供している土地建物の固定資産税の免除などの制度は。

A:税金の減免制度はない。一般のお子さんも預かるようになれば,そのような制度も利

用できるかもしれない。

Q:ピジョンハーツ株式会社の静岡での実績は。

A:磐田市のヤマハ発動機,国立病院の院内保育所等を手掛けている。

Q:運動会などのイベントは。

A:当初,0歳児が多かったために大きいことはできないが,ミニ運動会というレクリエ

ーション会を行っている。

Q:保護者会はあるのか。

A:検討当時から,保護者の負担が少ないように保護者会の開催は考えていなかったが,

2年目以降,クリスマス時期に懇親会をしている。

Q:障害児の受け入れは。

A:保護者が入園を希望し,三社の承諾が得られれば可能である。

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【所感】

まったく業種の違う三社が連携しながら,社員の福利厚生事業を行うことは,全国初の

試みでもあり,企業イメージの向上にもつながっている。働きたいと思える会社があれば,

会社周辺の人口増加も期待できるが,このような取り組みを行う企業は決して多くなく,

保育園経営自体は赤字であり,定員数も限られているため,恩恵を受ける社員も限定的で

ある。今後,このような企業の取り組みにどう市が関わっていくかが課題となってくる。

【三重県津市(三重県庁)】

○外国人おもてなしプロジェクトについて

1 三重県の概要(平成27年8月1日現在)

人口 1,812,033人

面積 5,774.39km2

三重県庁のある津市は,明治22年に全国30市とともに,日本で初めて市制施行した都市

となった。明治・大正・昭和初期にかけて,産業の近代化が進み市内に多くの紡績工場が

進出し,全国有数の紡績業が盛んな地域となった。伊勢神宮など歴史的文化財も多くあり,

平成28年5月26,27日には伊勢志摩サミット開催を控え,外国人誘客にも力を入れている県

である。

2 三重県のインバウンドの概況

2014年には訪日外国人旅行者は1,341万人と過去最高を記録した。国籍別でみると,中国

の爆買いと言われるように,中国人が383万8千人,次に韓国,アメリカと続く。三重県は,

2014年の延べ宿泊者数は17万8,522人で32%増である。インバウンドの最近の動きとして,

三重の海女と忍者,名古屋泊の代わりに三重県まで来ている,大阪の途中に三重県に立ち

寄る,などが増えている。

三重県のインバウンドの取り組みとして,ターゲットを集中的に決めている。最重点国

は台湾,タイであり,重点国はマレーシア,フランスである。アジアの方々は食とか遊び

のような楽しいことを好み,ヨーロッパの方々は,文化的な体験を好む傾向がある。それ

らを踏まえ,三重県を代表する忍者と海女を二大コンテンツとしてプロモーションを行っ

ている。具体的には,海外の旅行博に官民共同で出展したり,旅行業者を呼んで商談会を

したり,個別に旅行会社をまわっている。

今年7月に経済ミッションがフランスであり,この中でも実物の忍具の展示や文化の紹

介をし,三重大学による忍者セミナーなども開催した。4月にはブラジルで開催されたフ

ェスティバルジャポンに忍者の専門家を連れて行き,忍者の宣伝をした。

民間の取り組みであるが,外国人向けに総額3億4千万の旅行事業で,オンラインで三

重県の宿泊の割引や近鉄レールパスワイドを購入した場合,5千円の宿泊券がついてきた

り,三重県の宿泊を伴う旅行商品を購入したら,1万円の商品券を提供するといった取り

組みを進めている。

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3 トリップアドバイザーとの連携について

三重県はもともとトリップアドバイザーの利用が少なく,ほとんど外国人旅行者のロコ

ミもなかった。たまたま,トリップアドバイザーを辞めた中国系の社長が鈴木知事と知り

合いでなにか連携できないか,行政サービスで何ができるか,トリップアドバイザー社を

訪問して実現した。一定の資金予算が必要であったが,国の交付金等の活用で,情報提供

ステッカー,またトリップアドバイザーと連携した形でミエトラベルガイドを製作した。

サイト情報についても,情報端末にダウンロードできる仕組みを作った。各施設,事業者

で,ロコミを流します,というカードを作成し,各施設で配布した。今まで,ハングル,

中国,英語,日本語の4種類を作成しているが,比較的好意的なロコミを書いてもらって

いる。

今年度単独の事業であるが,満足度スコアの44位を20位以内になるようやっていきたい。

ゴルフ場が県内47カ所あり,全国10位以内である。市内にインバウンドに熱心なゴルフ場

があり,ゴルフツーリズムを広めて,外国人旅行者を獲得していきたい。

個人で旅行する場合,受け入れ態勢の充実,Wi-Fi,免税店などの集約が課題になる。

外国語表記の改善に対する助成が人気で予算枠到達のため終了している。フリーWi-Fi

は現在,予定の半分程度である。今までは,ぜいたく品のみ消費税減税であったが,すべ

ての商品に対象が広がったので,外国人旅行者の消費拡大につながっている。本県の免税

店は48店から206店に急増した。数字上好調に見えるが,実態としてはアウトレット店や大

型店の分もあり,個人商店にどんどん入っているという状況ではない。

外国人を受け入れるのは難しいという考えもある。他県に比べ,外国人比率が低い為,

11月から人材育成を県内4カ所で3年連続実施を考えている。

4 今後の展望

外国人旅行者の個人旅行が増える中,個人個人に合わせた,体験型プログラムを提供し

ていけるよう,開発をしていきたい。平成28年の伊勢志摩サミット開催を生かして,どの

ようにおもてなしをしていくかということが,課題の一つである。今後,海外MICEの

誘致も視野にいれている。三重県のまわりには,大きな都市,大阪・名古屋がある。名古

屋の国際会議は2004年~2013年の問に1,172件あり,年平均117.2件である。一方三重県の

平均は,年間1.9件である。大きな施設もないため,隙間を狙うという格好で,名古屋で開

いた会議の分科会を開く,というような体制整理,プロモーションを図っていきたい。各

学会等との連携も大事だと考える。

【主な質疑応答】

Q:他県エリアとの連携のあり方は。

A:国の連携事業でビジットジャパンというのがあり,官民一体で利用した場合,補助金

がでる制度。それを利用し,和歌山県と連携したり,レンタカーの売り込みなど個別

にしている。

Q:最重点国を台湾,タイ,重点国をフランスに選んだ理由は。

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A:予算と人員が限られた中で費用対効果を考慮した結果である。特に台湾は日本と友好

関係にある。日台のサミットが三重県で開催されたこともあり,台湾の観光協会とは

強いパイプがある。フランスを選んだ理由は,ヨーロッパの中でフランスが他国に影

響を与えやすい,ということからである。歴史や文化,深いところを目指す旅行者が

多いため,伊勢神宮や忍者などの文化的側面をアピールしていきたい。

Q:三重県の姉妹都市や友好都市に影響は。

A:姉妹都市と提携していきたいが,すぐに効果として結びつかない。

Q:伊勢神宮などでの外国人のマナーは問題にならないのか。

A:伊勢神宮では宮司さんの意向を十分に尊重し,協力してもらっている。現状では問題

はない。

Q:旅行者がなぜ,ここを選択したかという動機の調査は難しいが,その計り方は。

A:どうして来たのか,どう過ごしたのかというのはわからないところが多く,個別に聞

き取り,情報を収集している。そういったことからもICTを活用した実験で分析で

きたらと考えている。

【所感】

伊勢志摩サミットをきっかけとした,外国人観光客への多角的な新しい手法は,最重点

国として台湾を夕一ゲットに誘客に力をいれており,免税店の拡大や,商品券付宿泊など,

台湾・新竹市と友好都市を結んでいる本市も参考になる点が多々あった。トリップアドバ

イザーとの連携は,三重県の外国人観光客のおもてなしの気持ちを表すツールであり,そ

れら大都市に負けない,観光県三重県を作ろうとしている様子に感銘を受けた。

【三重県四日市市】

○住み替え支援事業について

1 四日市市の概要(平成27年8月1日現在)

人口312,734人

面積206.44㎢

四日市市は,中部大都市圏の最西に位置し,古くは四日の市,商業の街として東海道と

伊勢をつなぐ交通の要所として栄えた。明治に入り,伊勢湾の最初の港を整備したことに

より,近代産業,紡績の近代化が進んだ。昭和30年代には,石油コンビナートが臨海部に

建設されたことにより,コンビナートの繁栄,一方で,四日市公害という負の問題も発生

した。現在は公害問題も克服し,近鉄四日市駅西側に環境未来館を設立し,四日市公害の

歴史と克服の流れを後世に伝えている。このように工業都市のイメージが強いが,農業も

盛んで,特に市西部ではかぶせ茶は日本一の生産量を誇り,あら茶の生産も全国3位であ

る。

2 事業概要について

四日市市では,平成25年に住生活に関する基本理念目標,具体的な施策を示した四日市

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市住生活基本計画を策定しており,その中で郊外住宅団地への子育て世帯への住み替え促

進を重点施策として,位置付けている。郊外部には多くの住宅団地があり,こうした住宅

団地においては,同世代が一斉に入居していることから,住民の世代に偏りがあり,子ど

もの独立とともに,高齢化や空き家の増加が進んでいる。一方でこうした住宅団地は,道

路・公園などの都市施設や公共交通に比較的恵まれている傾向にあり,良好な住環境を有

している。

このようなことから,今後一層の高齢化や空き家の増加が懸念されている郊外住宅団地

において,良好な移住関係を維持するとともに,空き家などの中古住宅の流動化を図り,

子育て世帯など若い世帯の入居を促すことで,多世代が住む住宅団地として再生を図るた

め,平成25年から郊外住宅団地の子育て世帯の住み替え支援事業リフォーム補助と家賃補

助を開始した。

さらに,親世帯と近くに住むことで子育ての親世帯の協力や,将来的には親の介護が期

待できることから親世帯と同じ団地内,同じ小学校区内に住む場合は補助額を加算してい

る。また,平成27年3月23日から地方創生先行型による交付金活用で,郊外住宅団地以外

に転入する子育て世帯についてもリフォーム補助を行うとともに,県からの補助金を活用

し,県外からの移住者に対してもリフォーム補助を行うなど,住み替え支援事業の充実を

図っている。

3 現状と予算について

郊外住宅団地住み替え支援事業において,平成25年開始の段階でおおむね20ヘクタール

以上の団地で65歳以上の割合市内平均の22.26%を超えたものをモデル団地として,支援事

業を行っている。

市内全域において,高齢者のみの世帯数は増加しているが,住宅団地30年以上経過した

ものについては,著しく増加している。

郊外住宅団地子育て世帯の住み替え事業は,平成25年4月1日から事業開始し,子育て

世帯の空き家リノベーション事業,移住促進のための空き家リノベーション事業は平成27

年3月23日から開始された。内容はほぼ同じだが,郊外住宅団地の対象が拡大されたため,

市内全域でリフォーム補助を子育て世帯でできるようになった。移住促進のための空き家

リノベーション事業についても,支援対象が県外から市内になる空き家建築物を購入した

方を対象としており,リフォーム事業の3分の1,上限100万円としている。

予算については,平成25年度予算として,郊外住宅団地子育て世帯住み替え支援事業に

ついては,家賃補助,リフォーム補助合わせて40件を想定し,合計1,448万円を計上した。

平成26年度は家賃補助,リフォーム補助合わせて46件,合計1,664万円を計上した。平成

27年度の予算としては,家賃補助,リフォーム補助合わせて28件,1,012万円を計上し,減

少したものの,新たに子育て世帯の住み替え等促進空き家リノベーション事業として,14

件,500万円を計上しており,移住促進のための空き家リノベーション事業については,3

件,300万円を計上している。

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地域別高齢者のみ世帯比率の推移 (資料:H12・H22年国勢調査)

地域別高齢者のみ世帯数の推移 (資料:H12・H22年国勢調査)

地域別子育て世帯比率の推移 (資料:H12・H22年国勢調査)

地域別子育て世帯比率の推移 (資料:H12・H22年国勢調査)

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地域別子育て世帯数の推移 (資料:H12・H22年国勢調査)

4 他部署・民間との連携について

関係部署との連携については,四日市市住生活基本計画を平成25年度に作成しており,

健康福祉部,こども未来部,商工農水部,政策推進部,環境部,市民文化部,経済,危機

管理室で計画策定を行い,大学教授や不動産関係者など有識者からの意見聴取も行ってい

る。空き家対策庁内検討会は,環境部や財政部といった9部署と連携し,空き家の利活用

や危険建物対策を行っている。

四日市市には,空き家バンク制度はないが,宅建業者とは現在,空き家バンクの検討を

おこなっているところであり,リフォーム補助の部署と連携を取り,住み替え支援事業の

PRをしている。

5 実績と課題

平成25年度では,郊外住宅団地子育て世帯住み替え支援事業において家賃補助1件であ

ったが,26年度には家賃補助3件(1件は,25年度継続世帯),リフォーム補助3件,平成

27年度は集計中であるが,予定件数は家賃補助5件,子育て世帯の住み替え等促進空き家

リノベーション事業1件となっている。平成25年から現在までに,市外から市内へ9世帯

35名(18歳未満19名)の転入があり,空き家の有効活用及び,若い世代が転入したことに

よる地域の活性化に一定の効果があったと考えられる。また,住み替え支援事業への問い

合わせをきっかけに,本市に興味を持ち,転入された方もおり,四日市市への誘引効果も

あった。

一方で,すでに転入者から「住み替え支援事業のことを知らなかった。」という苦情もあ

り,市外在住者への効果的PR方法を検討している。新聞折り込みチラシへの掲載,移住

相談センターや東京事務所との連携により,今後も事業についてアピールしていきたい。

次の課題として,非常に多くの物件が出ていないので転入希望者からの問い合わせがあ

っても,市からの提供が出来ずにいる場合がある。空き家バンク制度を検討しており,事

業の周知と空き家の解消ができるのではないかと考える。

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県の東京都有楽町にある移住相談センターで,パンフレット等の情報提供を行っている。

県は年に6回イベントを行っており,パンフレット配布や四日市市への移住相談があれば,

市に情報提供してもらっている。広報部局では,ホームページのトップページでの紹介や,

広報活動をしてもらっている。その他の周知活動として,新聞の折り込みチラシの配布,

人事異動の前を見計らって,主要企業を訪問し事業内容の説明を行っている。郊外住宅団

地llモデル団地の周知は,親世帯への周知事業をしている。

【主な質疑応答】

Q:既存の古い住宅団地に特化したというのはどういうわけか。

A:郊外の住宅団地の高齢化率が異常に高い30%以上ということ,極端にIO年単位で10~

20%とあがるので集中的に若い世帯を呼び込もうと重点施策として決定した。

Q:高齢化率を22.5%でモデル地区としているが,市の平均値ではないようだが。

A:制度を導入した時点の平均値が22.5%を選んでいる。今年度末で要綱の改正周期がく

るので,その時点で平均値を出して団地を選ぶことになる。

Q:移住促進のための空き家リノベーション事業の上限が100万というのは他の2つの事業

と比較して高いようだが。

A:移住促進の方は,県の事業であり,窓口が市になっているためである。空き家リノベ

ーション事業としては,市は30万円が上限である。

Q:今年度の予算が下がっているのは。

A:平成26年度は同じ予算がついたが,27年度は実績が悪いということで半額まで下がっ

ている。財政課とはある程度伸びたら補正するという前提で話を進めている。議会か

らは,実績が少なくても,当初なりに予算があっても良かったのではないかという意

見もいただいた。

Q:子育て支援は,一番重要なのは保育園だが,優先的に入ることはできるのか。

A:当初,保育の部署に入ってもらい,充実させようと考えているが,四日市市で保育園

不足の状態で優先的に入れるようにはなっていない。保育と教育,この2点が重要だ

とは考えている。

【所感】

四日市市も,近隣都市に人ロが流れており,三重県全体としても,特に南方面は過疎化

が進んでいる。南西部から移住する人も鈴鹿市で止まってしまい,鈴鹿を越えると名古屋

まで出てしまうという状況が続いていた。子育て世帯の移住定住には,保育や教育の新し

い施策を打ち出さなければ,人口流出は止まらない。このような状況の中で,四日市市は

関係部署と連携し,オール四日市市として住み替え支援事業を行っており,本市の移住定

住の施策にも他部局との連携が重要であると参考になった。

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○平成28年7月19日(第4回)

1 「おかやまの魅力を発見するPRイベント」について

2 移住相談東京窓口の実績について

○会議の内容

1 観光コンベンション推進課長から,「おかやまの魅力を発見するPRイベント」につ

いて,資料により説明があった。

それによると,イベントの一番の概要・目的は,岡山市に関心を抱いている方々に対

して,岡山市の魅力,住みやすさ,観光面,フルーツ等の農産品を感じてもらうことで,

観光,移住などの交流を促進させることである。イベントの日時は8月20日土曜日の11

時から16時までを予定しており,地域おこし協力隊員等が出席するトークセッションや,

岡山芸術交流岡山アートサミット2016の事前PR,移住支援者団体である岡山盛り上げ

よう会による説明などがある。イベント以外にも,アンケートの実施やシャインマスカ

ットの試食会,観光パンフレット等を配置,抽せん会等も実施する。事前告知としては,

イベントチラシの配布,東京メトロでの車内広告,メールマガジンの登録者に対しての

メール配信等を行っている,とのこと。

委員から,住みたいまちというところの売りが少し見えにくいと思うが,今回説明

する岡山盛り上げよう会が何をしようとしているのか,木工やガラスづくりなどのわざ

を身につけている移住者の情報発信,また創業支援などがもう少し見えたらいいのでは

ないか,との意見があり,当局から,岡山盛り上げよう会との詳細はこれから詰めたい

と思っており,移住者がどういったことをしているかを取材等した上で情報発信できれ

ばと思っている。また,就農相談も行っている,との答弁があった。

2 市民協働企画総務課長から,移住相談東京窓口の実績について,資料により説明があ

った。

それによると,東京窓口は,平成28年4月1日に岡山市東京事務所内に開設したもの

で,相談件数は東京窓口と岡山窓口の合計が,4月は65件,5月は76件で,昨年と比べ

てそれぞれ25%,81%増加している。6月が,昨年同月比16%減となっているのは,5

月29日に東京で開催した移住相談会に,150名を超える来場者があり,潜在的な移住希望

者がこの日に相談を完了したことによる影響と思われる。東京窓口を開設した利点とし

て,顔の見える形で話し合えることがある。相談方法の内訳件数のうち,来庁に関して

はいずれの月も昨年を上回っており,今後も岡山の魅力を移住希望者へしっかり伝えて

いきたいと考えている,とのこと。

委員から,顔が見えるのがいい,という説明を聞いたが,岡山市の担当職員が実際に

行ったことはあるのか,状況等を確認するべきではないか,との質問があり,当局から,

4月12日の開所式および5月29日の移住相談会には,審議監が行って確認している。東

京の移住コンシェルジェとの意思疎通は大事なので,電子メール等も活用しながら,相

談していきたいと思っている,との答弁があった。

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○平成28年10月17日(第5回)

1 「地方創生」に関する調査

(1) 地域おこし協力隊について

2 魅力づくりに向けた産官学連携・市民協働に関する調査

(1) 「おかやまの魅力を発見PRイベント」の開催結果について

(2) 「岡山市観光客動向調査の結果」及び「岡山市観光振興アクションプラン骨子

(案)」について

○会議の内容

1 政策企画課地域政策担当課長から,「地方創生」に関する調査(1) 地域おこし協力

隊について,資料により説明があった。

それによると,地域おこし協力隊とは,都市地域から過疎地域等の条件不利地域

に生活の拠点を移した者を地方公共団体が地域おこし協力隊員として委嘱し,その

者が地域ブランドや地場産品の開発・PR等の地域おこしの支援や,農林水産業へ

の従事・住民の生活支援などの地域協力活動を行いながら地域への定住を図る取り

組みであり,岡山市では御津支所,建部支所で2名ずつ計4名が活動している,と

のこと。また,その活動内容について,地域おこし協力隊員から説明があった。

2 観光コンベンション推進課長から,魅力づくりに向けた産官学連携・市民協働に関る

調査(1) 「おかやまの魅力を発見PRイベント」の開催結果について (2)「岡山市

観光客動向調査の結果」及び「岡山市観光振興アクションプラン骨子(案)」について,

資料により説明があった。

それによると,岡山市第六次総合計画の前期中期計画の策定に合わせ岡山市が目

指すべき観光戦略を明らかにし,実効性のある具体的施策の方向及びその実施行程

を定める観光振興アクションプランを策定する,とのこと。

また,「岡山市観光振興アクションプラン骨子(案)」に基づき11月の常任委員

会で素案を示し意見をいただいた上で2月の常任委員会で最終案を示す予定,との

こと。

委員から,観光コンテンツとして瀬戸内海の記述が非常に少ないような気がする。

岡山市として世界一級の観光資源である瀬戸内海をどう評価しているのか,との質

問があり,当局から,まだ知名度が低いと考えており,今後PRしていかなければ

ならない,との答弁があった。

また,同じ委員から,特にインバウンドについては,瀬戸内海というコンテンツ

は外せない。骨子だからこそ書かないといけない,との意見があり,当局から,骨

子に掲げられている戦略の中身はまだ作成中なので,その中で瀬戸内海には触れた

い,との答弁があった。

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さらに,同じ委員から,次の素案に向けてしっかりと位置づけを持って検討し,

瀬戸内海にフォーカスしたプランにしてもらいたい,との意見があり,当局から,

素案に向けて,しっかり瀬戸内海を盛り込んでいきたい,との答弁があった。

◎行政視察調査(平成27年11月15日~11月17日)

【新潟県長岡市】

○ながおか・若者・しごと機構について

長岡市は戊辰戦争,長岡空襲による2度の戦禍,平成16年の中越地震など相次ぐ災いに

遭いながらも,その都度,目先のことだけを考えるのではなく,長岡の未来のことを考え

て人材を育てていこうという「米百俵の精神」で復興を成し遂げてきており,この精神は

今も長岡の人びとに受け継がれている。

昭和60年には,市民参加により「新長岡発展計画」が策定され,基本理念「個性豊かな

国際文化都市・長岡」の実現をめざした新しいまちづくりがスタートした。平成17年に5

町村,平成18年に4市町村,平成22年に1町と合併し,現在に至っている。平成24年4月

には,長岡駅前にシティホールプラザ「アオーレ長岡」がオープンし,アリーナ,ナカド

マ,市役所から成る,市民協働・交流の場として長岡の新しい顔となっている。

1 特徴

長岡版総合戦略「長岡リジュベネーション」の推進役として平成27年12月1日に設立され

た組織。将来を担う若者たち自らが長岡で「暮らしたくなる」「働きたくなる」取り組み

を議論し,それらが実践出来るよう,オール長岡の29機関(3大学1高専15専門学校,金融

機関,産業,行政)が支えていく。また,若者に寄り添った活動を行うとともに,若者の

実態調査・分析・研究やインターンシップなどの業務を強化するため,参画機関の職員が

機構の職員として業務に加わっている。

2 3つの役割

若者のアイディアを実現

若者同士の交流創出

若者が生き生きと働く場づくり

3 5つの取り組み

①若者と企業の情報収集・発信事業

若者の意向や実態を把握し,関係機関と一緒に必要な施策を検討し,反映していく。

■若者・企業向け意向調査の実施

■若者向けの情報発信

②若者提案プロジェクト支援事業

「ながおか若者会議」の開催等により,アイデアの育成環境を整え,若者自らが考え

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たアイデアの実現を支援する。

■若者会議,留学生会議等発案プロジェクトの実施

■ながおか仕事創造アイデア・コンテストの実施

③若者の出会い・居場所づくり支援事業

自然な出会いの場の提供や若者の居場所づくりを行い,若者が望む暮らしを支援する。

■婚活等の支援

■空き家等を利用した居場所づくり

④長岡で学ぶ魅力づくり事業

学校の垣根を越えた学生同士の交流や,多様な学び方を支援し,長岡で学ぶことの魅

力を発信する。

■学生の交流活動の支援

■起業家への気運の醸成

⑤長岡で働く魅力づくり事業

魅力ある地域企業の情報発信を行い,長岡で働くことの誇りを醸成する。

■小学生向け仕事体験教室等の実施

■インターンシップの強化

4 組織

事務局は,長岡市ながおか若者しごと

機構推進課が行い,北越銀行・

長岡造形大学・長岡商工会議所

からもスタッフを派遣

5 機構の概要

特 徴:①元気な学生と若者を中心とした理事会による組織運営(任期2年)

②機構の活動に若者なら誰でも参加でき,事業提案も可能

③提案された事業は,若者同士が必要性を熟議し,取り組み方法を判断

④参画機関,アドバイザーが若者の意見を尊重しながら活動を下支え

構 成:理事会…代表理事,副代表理事のほか若者会議メンバー等15人

参画機関:3大学1高等専門学校15専門学校,金融・産業機関,行政機関

【主な質疑応答】

Q:30代の若者17人に予算を委ねる時,トップダウンだったということだが,議会での議

論は。

A:地方創生の補正予算ということもあったので,予算に関しては「まずはやってみよう」

ということで異論は出なかった。2年前から議会で人口減少対策や少子化対策の委員会が

理事会

若者会議 参画機関

(産官学金が連携)

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設置されていたこともあって,議員からも若者の活動の場を広げよう,若者に地場企業を

知ってもらう取り組みをしっかりやろうという声が上がっていたことが背景の一つとして

ある。

Q:どういう効果が出たのか。

A:正直,地方創生でいうところの効果はまだそんなに出ていない。

Q:それでも引き続き各部局へ予算を配分していくのか。

A:そうだ。今までは商工会やJC,公民館や消防団などからの声は聞いていたが,第三

の勢力として若者の声を聞こうと少し行政の意識,聞く姿勢が変わってきたところが一番

大きい。

Q:若者の出会い交流の場事業は婚活事業とみればいいのか。カップルになった実績は。

A:今フィーリング・プロジェクトというものをやっている。これまで婚活パーティーを

していた新潟市の会社に情報発信の協力をしてもらいつつ,長岡市のNPOに事業を委託

して,そこが情報を持てるようにネットワークをつくるということで婚活イベントを月1

回実施し,情報を蓄積している。30人対30人もしくは15人対15人でカップルが率3割。行

政がどこまでやるかという問題もあるが,長岡市では,婚活パーティーを若い子たちが集

まるような居酒屋だけでなく,老舗の料亭でもしてくださいと言っている。老舗で行うと

参加者も本気で来るし,料亭の人もこういう使い方があるなという感じで意識が変わる。

もちろん老舗にはプライドというか店の格があるので,常連からのクレームがあるが,今

は長岡で3番目の老舗にお願いしている。若い人は老舗の料亭で食事や結婚式をしなくな

っているし,企業の接待も減ってきている。ある意味,一番経営が圧迫されているのは老

舗ではないか,かといって一番歴史がつながっている場でもあるので,そこが倒れても困

る,そういう意味もある。

【所感】

長岡市は人口減少の影響が目に見えてくる10年,20年先に,企業においても行政におい

てもあらゆる部門で中核を担うのは,今の20代,30代の若者たちであり,彼らがまちの将

来を考える上で重要な世代になるだろうという考えのもと,平成27年に策定した長岡版総

合戦略で,若者を地方創生の中心に据え,その推進役として,ながおか・若者・しごと機

構を設立した。行政がこういった組織を立ち上げると,どうしても行政の色が強くなると

ころがあるが,事業内容や予算の執行など,運営自体を30代の若者に全て委ね,学生も含

めた17人の若者たち自らが長岡市で「暮らしたくなる」「働きたくなる」取り組みを議論

し,産官学金が人的体制を含めた支援を行うという先進的な取り組みで,若者に地方創生

に向けて覚悟を持ってもらわないといけないという強い思いと,めんめんと続く米百俵の

精神が受け継がれていると感じた。

また,若者を中心に事業を進めていくから,若者の声を聞こうという声が市役所内の関

係部局から上がり,若者・しごと機構と連携した33もの事業が各部局で動き始め,行政の

意識が一番変わったということであったが,岡山市でも,若者のやる気,アイデアを引き

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出し,行政に生かしていけるような仕組みづくりが必要であり,今回の視察も参考にしな

がらさらに調査を進めていきたい。

○移住,定住支援について

1未来の企業家応援事業補助金について

(1)

(2)

(3)

(4)

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○実績

■平成27年度

・地元産の米や野菜を使ったパン製造の製造販売事業1件を採択

・設備の稼働率が上がり売り上げも増加したことで従業員を新たに雇用できた。

■平成28年度

・7月下旬に補助金審査会を開催し,スタートアップ支援枠の5件を採択。実績報

告を待って効果を検証する予定

【主な質疑応答】

Q:3年で1件の補助は条件が厳しいからということだが,緩和するならどの点か。

A:大学の先生,税理士といった専門家を入れて審査している。1,000万の公的資金を投入

するために少し厳しい審査としているが,3年たって厳しすぎたというのが今の反省だ。

起業者のニーズと市の狙いが少しずれているのではないかというところがあるので,緩和

するよりも,市の政策の狙いを少し下げて起業者のニーズに合わせようと考えているが,

やはり税金なので一定のルールは必要だと思っている。

Q:1,000万円は使える項目が決まっているのか。

A:補助対象の項目は定めている。人件費を補助対象にする事業は少ないが,人件費,設

備購入費,設備の借り上げ料,外注費,委託費,広告料,店舗の借入などできるだけ対象

を広げている。店舗を開業するための費用なので,財産形成とかは難しい。

Q:国庫補助の採択者がなぜこの補助金では不採択になるのか。

A:基本的には国の採択を受けた人が同じ案件を持ってきて内容を説明する。いろいろな

起業の補助金が国にあって,非常に厳しいものもあるが,金額も多くないので国の起業の

補助金は意外と緩いと感じている。

Q:商工会議所などにもこういう制度があると思うが,リンクやタイアップは。

A:長岡商工会議所に10万円が上限の補助事業があって私も審査員で毎年20件ほど採択す

る。国にも小規模事業者の持続化補助金というのがあっていろいろな地域で商工会を通じ

て活用されている。先ほどの商工会の補助金も会員はいつでも申請できるが,起業そのも

のの補助金は商工会議所も商工会も持ってなくて行政だけだ。

【所感】

長岡市未来の企業家応援事業補助金は高額で非常にインパクトのあるものだが,1,000万

円もの公的資金を投入するということで条件は厳しいものになっており,税理士など専門

家を含め,地元にとって本当にいいものなのか,雇用が生まれるのかなどをきちんと審査

されている。補助対象の項目も,人件費,設備購入費,設備の借り上げ料,広告料など店

舗を開業するための費用としており,対象をかなり広げてあるが,採択が少ないというこ

とで,起業するときの支援に重点を置くような見直しを考えているということであった。

最大1,000万円という補助額は,起業を考える若者にとっては非常に魅力があるもので,特

に成長発展枠は,市内だけでなく全国ベースで情報発信,PRをしていることから,首都

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圏や九州からも問い合わせがあったということで,若者の移住・定住支援という面からも

有効な事業であり,参考になった。

2 空き家利用者応援事業について

(1) 空き家の家財片づけ事業補助金

①空き家所有者への支援

平成28年度予算額:200万円(予定件数10件)

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(2)空き家利用者への支援

平成28年度予算額:100万円(予定件数10件)

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【主な質疑応答】

Q:空き家バンクの制度と宅建取引業者との関係は。

A:最後の手続きや仲介業に関しては不動産屋を通してもらい,市としては関与しない。

市はあくまでも所有者と利用者を会わせるところまでにしているので,宅建業法などには

全く抵触する部分はないと認識している。

Q:手数料は発生するのか。

A:不動産屋の仲介が入ると仲介手数料がかかる。空き家バンクで成立した時は応援事業

で補助金が出るので使ってくださいという形にしている。

Q:農家が空き家になると,同時に所有している田畑も作り手がいなくなるが,農地など

には特別な扱いがあるのか。

A:農地は農地法の関係があるので農業委員会を通さないと勝手に売買ができない。家庭

菜園みたいな小さいもので宅地とみなされるもの,農地法にかからないようなものであれ

ば一緒にということもあるが,基本的に家のない土地とか農地は扱っていない。

Q:空き家の家財片づけ補助金事業が平成28年度から始まったが,既に登録していた空き

家は除くということは,早く登録していたら補助金に該当しないのか。

A:今,家財があって登録できない方を対象にする趣旨で作られた補助金なので,空き家

バンクに登録しているところは片付けられていたり,現状渡しという了解をもらって載せ

ているので,あくまでも登録促進のためだ。

Q:持っている借家は該当しないのか。

A:賃貸業用住宅は不動産屋などが専門で扱うものと考えている。

Q:県の補助金との関係は。

A:県は市の補助制度に対して,半分補助する。市が20万円の補助をした実績を報告する

と,そこに県から10万円が市に入ってくる。

Q:補助金の認定金額の決定は業者からの見積書か,領収書か。

A:まず見積書をもらう。見積書で補助申請時にその額を書いてもらう。その金額によっ

て補助決定するが,見積書通りにいかない場合もあるので,途中で額が変われば変更手続

きで,領収書で確認して確定させる。

Q:空き家バンクの登録件数と,ニーズは。

A:登録してある物件数は商談中のものを除き25件で,平成23年から売れずに残っている

ものもあるが,半分以上が去年,今年から登録したもので,特に今年のものが多い。所在

は,まちなか,支所地域が半々といったところだ。

ニーズは,登録者数が129人で,登録理由は資料が今手元にないが,過去5,6年の全成

約数70件のうちIターン,Uターンが25件で定住・移住,住換えが23件,そのほか倉庫に

使うとかギャラリーに使うなどが少しある。場所は合併した支所地域より,昔の長岡市の

ほうが多い。

Q:空き家実態調査等との関係は。

A:平成25年の住宅土地統計調査で空き家の総数が1万4,000戸ぐらいある中で,二次的住

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宅とか売買用,賃貸用などが8,000件ぐらいで,その他の住宅が6,120件。この6,120件の中

にはアパートなどの貸室などもあり,1戸建てだと半分以下ぐらいと認識している。空き

家実態調査で今集計を出しているところだが,1戸建ての空き家と思われるのは2,000軒く

らいで率としては全国の13.5%とほとんど変わらない。長岡市は12%強くらい。

【所感】

空き家はあるが,家の中を整理しないと貸し出すことはできないという話をよく耳にす

る。長岡市空き家バンク登録促進モデル事業の一つである,空き家利用者応援事業は,空

き家バンク制度の利用を促進,活性化し,良好な空き家の流通促進や,空き家を活用した

移住・定住を促進するために設けられているが,空き家バンクの利活用の促進は,移住・

定住を促進する上でも有効なツールになる。特に空き家の家財片づけ事業補助金は,空き

家に残存する家財道具等の処分のための費用を補助するという,明確なコンセプトを持ち,

本当にわかりやすい補助金で,ニーズも高いと感じた。岡山市には同様の補助金はないこ

とから,今後,議論する上で参考にしたい制度であった。

【埼玉県さいたま市】

○さいたまトリエンナーレ2016について

さいたま市は,平成13年5月1日に浦和市・大宮市・与野市の3市が合併して誕生した。

平成15年4月1日に全国で13番目の政令指定都市となり,平成17年4には岩槻市を編入し

て,現在に至っている。市内主要駅周辺では,商業・業務機能,行政機能,文化機能など

が集積しており,市街地再開発事業などの推進により,情報機能,コンベンション機能な

ど,地域の個性を生かしたより高度な都市機能の整備が進められている。また,「さいたま

新都心」には,国の機関が置かれているほか,さいたまスーパーアリーナなど中核施設が

整備され,これらを契機に関東甲信越圏域の行政・経済・文化芸術を牽引する中枢都市と

して,「多彩な都市活動が展開される東日本の交流拠点都市」「見沼の緑と荒川の水に象徴

される環境共生都市」「若い力の育つゆとりある生活文化都市」の3つの将来都市像を,市

の総合振興計画である「さいたま希望ゆめのまちプラン」に掲げ,まちづくりを進めてい

る。

1 概 要

テ ー マ:未来の発見!

会 期:2016年9月24日(土)~12月11日(日)[79日間]

主 催:さいたまトリエンナーレ実行委員会

総合アドバイザー:加藤種男(公益社団法人企業メセナ協議会専務理事)

ディレクター:芹沢高志(P3 art and environment 統括ディレクター)

見どころ

① 「生活都市」が舞台

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127万人を超える「生活都市」をアートの舞台とすることが特徴。アートを特別な

ものではなく,まちに関わるすべての人に開かれたものにするために,人が暮らし,

他者と交流し,創造する現場においてアーティストと共に未来を発見していく。

② 新作が見られる

参加する全34組のアーティストの48のプロジェクトは,それぞれさいたまの自然や

歴史に触発されたオリジナルの新作になり,さいたま市ならではの場所性にこだわっ

た作品を始め,市民との協働による作品も多く展開

③ 鑑賞無料

すべての会場は無料で作品鑑賞できる。(一部の舞台公演やパフォーマンス,映画

上映を除く)

主な開催エリア: ①与野本町駅~大宮駅周辺

②武蔵浦和駅~中浦和駅周辺

③岩槻駅周辺

※会期中は,主要エリアのほか,市内各地で各種アートイベントを実施

① 与野本町駅〜大宮駅周辺

作品を観るだけではなく,参加したり,体験したり,作品の登場人物・主人公にな

る,エンターテイメントな仕掛けを用意しているエリア

② 武蔵浦和駅周辺〜中浦和周辺

武蔵浦和駅を降りて,別所沼公園までの道を歩く途中,坂をあがって作品の集まる

「旧部長公舎」へ向かい,戻ってきたあとも,別所沼公園に続く散歩道から公園内ま

でずっと作品を楽しめるアート散歩のコース

各エリアの紹介

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③ 岩槻駅周辺

メイン会場のひとつである旧埼玉県立民俗文化センターには,今回最多の14アート

プロジェクトが集まり,瀟洒な印象の旧民俗文化センターの建築を楽しみながら過ご

すことができる。また,K邸,東玉社員寮など,まちなかにひっそりと佇んでいる歴

史のある建物が展示会場になっている。

2 開催決定の経緯・スケジュール

平成24年3月に制定した「さいたま市文化芸術都市創造条例」で文化芸術都市創造の

シンボル事業として,平成25年に「さいたま帯文化芸術都市創造審議会」において,さ

いたまトリエンナーレの基本構想を取りまとめ,目的,基本方針等を整理し,具現化す

るために平成26年3月に「さいたま市文化芸術都市創造計画」をつくり,重点プロジェ

クトとして位置づけた。

平成26年3月 「さいたま市文化芸術都市創造計画」策定

平成26年3月 「(仮称)さいたまトリエンナーレ基本構想」策定

平成26年6月 「さいたまトリエンナーレ準備委員会設立」

平成26年7月 ディレクター選任

平成27年3月 「開催計画」策定,「さいたまトリエンナーレ実行委員会改組」

平成27年8月~ プレイベント開催

平成28年3月 「開催概要」公表

平成28年9月 開幕

3 目 的

○「さいたま文化」の創造・発信

○さいたま文化を支える「人材」の育成

○さいたま文化を活かした「まち」の活性化

4 コンセプト

○さいたま市の場所性にこだわる。

アーティストが市内に滞在し,この場所でしか構想しえないプロジェクトを生み出

す。

○「共につくる,参加する芸術祭」を目指す。

市民が創造のプロセスそのものに参加できるプロジェクトを生み出す。

○開催後の継続的な活動の芽を生み出す。

参加型のアートプロジェクトの実施などを通じて,市民が自発的,継続的に展開し

うる活動の芽を多く生み出す。

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5 開催エリア決定の経緯と地元調整

○ディレクターに市内各地をくまなく歩いてもらい,開催テーマ,コンセプト等に合

致した3エリアをディレクターが選定

○市内の全10区と会場近隣の自治会に対して説明会を開催

6 運営体制

7 地域自治組織,ボランティア,企業等との連携

○地域のアートフェスティバル実施団体との連携によるアートプロジェクトの開催

(補助金事業)

○トリエンナーレ運営や来場者へのおもてなしを支えるサポーター(ボランティア)

の募集(11月13日現在946名登録)

○協賛や協力企業の募集(東武鉄道など)

8 関連事業(市実施事業)

○市民プロジエクト

・市内文化施設等を会場として,開催テーマに沿った演劇,音楽公演,展示を行う参

加者公募型のプロジェクト(約40)の実施

・市内の文化芸術団体などとの相互協力による事業の展開

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○連携プロジェクト

・市内の文化施設等との連携を図り,共催事業などを実施

○その他関連事業

・市内の福祉施設での通所者とアーティストの協働による作品制作・ダンスパフオー

マンス公演のほか市内小・中・特別支援学校児童生徒によるアート展等を開催

9 特色,独自色づくり

○「さいたまの場所性」というコンセプトのもとで,アーティストによる作品は基本

的に全て新作としたほか,「共につくる,参加する芸術祭」のコンセプトのもと,作品

の鑑賞だけでなく,作品創造のプロセスに市民が参加できるアートプロジェクトを多

く設けるとの視点をもって,ディレクターによるアーティストの選定を行ったほか,

市民プロジェクトとして,事業の企画運営から公演まで広く市民が参加できる公募型

のプロジェクトを実施

○アーティストの作品制作から運営まで,幅広くトリエンナーレ開催をサポートする

サポーター(ボランティア)を募集

10 リピーター確保に関する工夫

○入場料を基本的に無料とした

○イベント型のアートプロジェクトも展開することで,何度も足を運びたくなるよう

な仕掛けを展開

11 今後の展望と課題

○市民に今回トリエンナーレのレガシーとして,夢や感動を記憶としてとどめてもら

う。

○まちじゅうに文化芸術があふれる文化芸術都市としてのブランドカの向上につなげ

ていくことが求められる。

○アートとしてのトリエンナーレと,自治体による文化芸術事業としてのトリエンナ

ーレという両面から,アーティストの要望と事務局側の要望,制約を適切に調整して

いく必要がある。

○第1回の開催を踏まえて,検討経緯や課題を整理し,今後の在り方等を検討してい

く必要がある。

○初めての開催であったことと,アートプロジェクトを全て新作にしたことにより,

展開作品のイメージを正確に広報PRすることが困難であったため,次回以降,今回

の実績を活かしていくことが求められる。

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【主な質疑応答】

Q:現代アートについてはわからないという人が多いと思うが,来場者の反応やどの作品

の評判がいいかつかめているのか。

A:どのように鑑賞したらいいのか,住民説明会でも質問が多く出た。行政側からディレ

クターに,作家がどういう思い,意図でその作品を展開しているかキャプションで細かく

書いてほしいとお願いしたが,あまり説明を加えてしまうと,べたなものになってしまう

と嫌がられ,必要最低限のものしか入っていない。作品をまず見て感じたものをそのまま

受けとめ,キャプションで作家の考えを見て,もう一度その作品を見る。説明の補足とし

てガイドブックを見るような感じで鑑賞してもらえたらと思っている。

Q:さいたま市文化芸術都市創造条例をつくったきっかけは。

A:横浜市の黄金町というところに歓楽街があり,芸術祭の要素を盛り込んで町が変わっ

たのを市長が見て,さいたま市でも現代アートの持つ力によって町を活性化できないか,

文化芸術都市としての顔を作れないかということで,もともとはマニフェストだ。

Q:ディレクターに芹沢高志氏を選任しているが,ディレクターのサポートや関係者など

とのコーディネーターの役割は誰が担うのか。

A:もともと芹沢ディレクターのもとに何人かディレクターがいたが,普段は小規模で国

際芸術祭を受ける能力はないので,その下にプロジェクトディレクターなどを雇用,委託

し,総勢30名近いチームを作っている。

Q:予算総額とさいたま市の負担は。

A:平成26年から28年の3年間で市単独事業として8億円,文化庁から5,000万円だ。

Q:単市で8億円というのはすごいが,市民が負担することになる。市民の反応は。

A:作品の制作に携わった方々が本当に楽しんでいる。有名な作家のワークショップの参

加者などは,自分の作品がアート作品として陳列されているということで,非常に好評を

得ている。

Q:来場者数と,どこから来られているか把握しているのか。

A:来場者は11月10日現在で実測として6万1,000人となっている。どういったところから

来られているかはまだ統計がとれていない。

Q:福祉施設での通所者とアーティストの交流は,どういったことをしているのか。

A:トリエンナーレの事業ラインナップを考える過程で,市内の事業所,教育施設などと

連携した事業を考えていた。検討,調整する中で具体的にまとまったのが福祉施設との連

携で,2施設で実施することになった。プロジェクトディレクターに経験者がいたので,

福祉施設で活動するのに,内容・活動の経歴的にもふさわしいアーティストを推薦しても

らって,プロジェクトディレクターと施設の方と行政でマッチングをするようなかたちで,

市は仲介をした。一つは毎年秋に音楽祭を開催している,重度の四肢の障害を持っておら

れる方の施設で,その音楽祭にあわせて舞台芸術を通所者とアーティストと一緒に作ろう

ということで,舞台装飾品を一緒に作って飾って楽しんだ。もう一つは比較的軽度な,自

閉症とか四肢の障害を持たれている方々の通所施設だが,こちらも日ごろから,ダンスと

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かいろいろ作品を作られていたので,ダンスパフォーマンスをするアーティストを派遣し

て,一緒にこの施設で今週の金曜日にダンスの公演をする。

Q:県から予算的な補助はないのか。

A:金銭的にはないが,主会場となっている博物館や部長公舎を無償で提供してもらって

いる。貸与の条件として,入館料を取らないという条件があったので,逆に鑑賞無料をセ

ールスポイントとしている。

Q:事業費は8億円ということたが,広告料,入場料などの収入が入ってくる総事業費の

中で,8億円の使われ方を見るためには,入場料,広告料,ガイドブックの売り上げなど

も公開する必要があるのでは。

A:総事業費が8億円だ。その中で7億9,000万円が市の負担金で94%近くを占めている。

45の企業から協力を得たが,金額としてはそんなに大きなものではないし,物販などもそ

れほど売れるものではない。

Q:ディレクターや芸術家とはどういう契約で,いくら払ったか明らかにしているのか。

A:している。競争性を持たせようと,アート制作の関係でも契約をかなり細分化した。

芹沢プロデューサーのチームに制作まで見てもらおうと思ったができなくて,アート制作

の監督指導という音頭取りの部分だけをお願いし,実際に材料などを購入するのは下請け

の会社をかませて制作するという少し複雑な構造になった。

Q:現代アートといわれる作品で一番高額だったのはどの作品でいくらだったのか。

A:ほかのトリエンナーレでも基本的に一つの作品が500万円ぐらいとなっている。さいた

ま市は大体300万円から400万円ぐらいで,その中で一部小さいもの,大きいものがある。

総額は48プロジェクト掛けるだいたい400万円で,その中でちらばりがある。

Q:今の入場者数は当初の予定や計画と比べると予想どおりなのか。

A:来場者はアートプロジェクトだけで20万人,そのほかの市民プロジェクトや連携プロ

ジェクトの10万人を合わせて30万人と考えている。現在の6万1,000人はアートプロジェク

トの20万人に対する人数で,ほかの芸術祭を見るとこれから伸びていくと思われ,まだ精

査していない数字もあるので,それを足すとだいたい想定どおりだ。

Q:終われば総括することになるが,何を持って成功とするのか。

A:記者会見でもその点はよく聞かれる。特に芸術関係では何万人来たから成功なのか難

しいところがあるが,やはり来場者や参加者の数と経済波及効果が一つの目安になると思

う。今,来場者30万人,参加者10万人を一つの目標値として出している。来場者30万人か

らはじき出した経済波及効果を22億円としているので,これに肉薄するような数字が成功

という見方は持っているが,そこに達しないから不成功というような言い方も慎重になら

ないといけないと考えている。

Q:継続展示は。

A:著作権が作家にあるので,OKをもらえそうな作家のもので,あまりインパクトのあ

る作品は避けて,予定しているものはいくつかある。

Q:子どもたちの参加を促す取り組みは。

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A:市内の学校からの来場を当初は予定していたが,学校のカリキュラムが1年前から決

まるような中で,授業の中に組み込むことが難しかった。放課後等で参加してもらいたい

という周知をするのがぎりぎりで,実行委員会の動きが少し遅かった。小・中・特別支援

学校のアート展ということで,子どもたちに絵を描いて出品してもらって期間内に見ても

らう取り組みをしている。

Q:市外の学校からの問い合わせ状況は。

A:小・中学校というより大学のゼミなどから問い合わせがある。

【所感】

“アートでまちおこし”という名のもとに,全国で地方自治体が関わるビエンナーレ,

トリエンナーレ形式の芸術祭が数多く開催されている。岡山市でも,芸術を通じて国境や

文化,世代を超えた様々な交流が生まれることなどを目指し,岡山芸術交流 OKAYA

MA ART SUMMIT 2016を初めて開催している。本調査特別委員会の調査

項目である,交流人口の増加に関する取り組みの観点からすると,岡山市の魅力を発信す

る場として,国内外から多くの方の来場者を期待するところであるが,そのためには岡山

市ならではの魅力ある芸術祭を開催することが求められている。こうした中,同時期に市

が主体となり初めてトリエンナーレを開催するさいたま市での視察は,手法などに違いは

あるが非常に参考になるものであった。

さいたま市では,ディレクターに別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」などを

手掛ける芹沢高志氏を選任し,127万人を超える「生活都市」をアートの舞台とし,さいた

ま市ならではの場所にこだわった作品の展開や,ともに作る,参加する芸術祭をコンセプ

トとして,創造のプロセスに市民などが参加できるものを得意とするアーティストを選び,

34組のアーティストが約48ものプロジェクトを手掛け,さいたまの自然や歴史に触発され

たオリジナルの新作を展開している。さらに,60代から90代の一般市民が参加する演劇プ

ログラムや障害者施設・支援学校の子どもたち,障害を持った方々が参加するプログラム

など,市民を巻き込む形でトリエンナーレが開催されている。さらに,一過性のものでは

なく,継続する活動の芽を多く生み出すために,サポーターの育成に力を入れ,それぞれ

の活動をつなげるような仕組みを作り,開催前には全10区と会場近隣の自治会に対して説

明会を開催するなど,非常に丁寧に進められている。岡山芸術交流も多くのボランティア

スタッフに支えられたが,市民を巻き込む形で開催されているさいたま市の取り組みは,

岡山市が次の課題とするところだと感じた。

芸術祭などは,行政としては上手にやるために何が必要なのかよくわからない部分があ

り非常に苦手な分野で,とんがったことをする芸術家と常にフラットなことを考える行政

が一緒になって事業を行う難しさもなどもあるが,多くが集い,楽しみ,交流できるよう,

実行委員会の作り方なども含め,行政として担うべき役割の整理の必要性などを感じた視

察であった。

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【千葉県千葉市】

○海外集客プロモーション(インバウンド)について

千葉市は千葉県のほぼ中央部に位置し,県内幹線道路及びJR・私鉄などの鉄道の起点

として,さらに情報通信網の起終点として要衝の地にあり,温暖な気候と肥沃な土地,豊

かな緑と水辺など自然環境に大変恵まれている。また,海外からの玄関口である成田空港

と東京の中間に位置し,高速道路や鉄道など東京への抜群のアクセスを誇っている。2020

年東京オリンピック・パラリンピックでは,フェンシングなどの競技会場都市として,開

催に向けて都市の国際性の向上を図り,国内のみならず海外からもビジネスや生活の場と

して選ばれる都市を目指している。

1 千葉市の現状

平成27年度宿泊者数

外国人宿泊者が急増しており,4人に

1人が外国人宿泊者。日本人宿泊者数の

伸びが鈍化する中,今後の成長のために

は,外国人の集客が不可欠

平成26年対比平成27年伸び率

2 千葉市内延べ宿泊者数と観光消費額推計グラフ(H26→H32)

日本人延べ宿泊者数 1,627,922人

外国人延べ宿泊者数 606,845人

合 計 2,234,767人

全 国 千 葉 市

延 べ 宿 泊 者 数 107% 121%

日本人延べ宿泊者数 102% 107%

外国人延べ宿泊者数 148% 186%

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3 千葉市の観光プロモーション戦略

4 インバウンド対応の現状

■訪日外国人観光客への対応状況

千葉市観光プロモーション課・観光MICE企画課の海外担当 6人

ちば国際コンベンションビューロー(千葉市出向者) 2人

千葉駅・海浜幕張駅観光案内所スタッフ数(英語対応) 9人

■インバウンド対応に関する千葉市の現状分析

強 み 弱 み

・好立地(成田空港,TDL,幕張メッセ)

・宿泊施設の充実

・外国人宿泊客が急増

・ムスリム対応事業者が増加

・現時点で,世界的な観光名所が無い

・市内事業者のインバウンドに対する姿

勢,体制が弱い(受け入れ機運が乏しい)

機 会 脅 威

・2020年オリンピック・パラリンピック

開催

・訪日客数の増加(日本全体)

・千葉県の東南アジアへのPR強化

・民間との競争が少ない

・自治体間競争の激化

・成田空港~都心部のアクセス改善,鉄道

会社などのキャンペーン

ムスリム

全訪日客

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5 千葉市インバウンド戦略(主要事業)

①体験観光コンテンツンの創出

■千葉あそび

季刊の現地発着型体験観光

プラン集。毎月 15~ 20本の新し

いプラン(またはリニューアル

プラン)を誕生させている。

■いちご

インバウンドを含めたいち

ごプロモーション。

■ゴルマジ

3市(千葉市,市原市,四街道市)連携によるゴルマジとタイアップした若年世

代のゴルフ集客事業

■ダイヤモンド富士

人工海浜の長さが日本一の千葉市では,毎日少しずつ移動すればダイヤモンド富

士を鑑賞するチャンスが多いことに注目し,平成25年から撮影会や鑑賞クルーズ,

周辺グルメの割引などを実施

■夜間観光

川崎市と連携市した東京湾ツーリズム,工場夜景サミットの開催など,夜の海辺

の貴重なアトラクション

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②体験観光コンテンツの発信

■メディアやWeb,SNS等を活用

■千葉シティ5BEACHエンジェルス〔千葉市の5つのビーチエリア(幕張の浜,

検見川の浜,いなげの浜,千葉みなと,蘇我)それぞれの魅力を市内外に発信する

観光PR大使〕が市内外でのイベント参加や各種メディアへ出演し,ビーチの魅力

を発信するとともに千葉市観光ガイド「エンジェルスブログ」で情報発信

6 千葉市「おもてなしダイバーシティ」戦略

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて,訪日外国人客の集客のため,

多様な国籍や習慣をもつ方がくつろいで滞在できるよう,滞在環境の整備に取り組んで

いる。外国の多様な文化や風習,宗教上の戒律から生じる滞在中の不自由さを解消する

ために,外国人観光客が安心して快適に,市内に滞在できるおもてなし体制を官民が連

携して整え,集客機会及び消費機会の拡大を図るための魅力発掘及び情報発信を行う。

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7 千葉市海外インバウンドツーリズム推進協議会

今後増加が見込まれる外国人観光客を市内へ集客し,市の経済効果を上げるために千

葉市海外インバウンドツーリズム推進協議会を平成25年11月に設立し,活動している。

(趣旨)

増加の見込まれる 外

国人観光客,とりわけ経済

成長著しい東南アジアから

の観光客に対し,協議会の

活動を通じて,観光ニーズ

の調査,観光ルートの検討,

効果的な情報発信等に取り

組むことで,官民が連携し

た「おもてなし」体制を構 築

し,市をPRしていく。

8 観光インフラの整備と充実

①千葉市おもてなしSHOPガイド

市内外国人宿泊者の消費喚起と市

内事業者のインバウンド対応体制を

支援するために開設。平成28年11月

の登録事業者数は270店舗,Webサ

イト訪問者数は市内の外国人宿泊者

の15人に1人

②おもてなしICT

ICT協議会等との連携により外

事業の流れ

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国語対応のインフラを充実(ICT技術の活用)させるため,平成28年11月から実験開

③免税化促進

LAOX進出を契機にしたインバウンドの取り組みに向け情報取集中

④外国人客向け体験プランのプロモーション

千葉市に宿泊している訪日外国人旅行者の滞在機会を創出する。

9 今後の取り組み(2020年に向けた課題)

戦略① 体験コンテンツの創出→やってみたい!

戦略② おもてなしダイバーシティ(for Muslim)

→過ごしやすそう

戦略③ 観光インフラ整備と充実→食べたい!

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【主な質疑応答】

Q:観光プロモーション課のスタッフには旅行業界などそれぞれ核になる業界の民間経験

者が入っている。市としてそこまでしっかりやろうと決断した経緯は。

A:職員を採用する際に,前職でスキルを持っている人を経験者採用として中途採用する

など採用の門戸を広げており,特に旅行業界等に絞ってはいないが,市長も日ごろから民

間活力を使うことに非常に重点を置いている。当課の課長とムスリム担当の職員は民間で

の経験を生かし勤務する特定任期という任期が2年から3年の契約になっている。

Q:ムスリム対応には準備が必要だが,それだけのニーズがあると経済界なども考えてい

るのか。

A:例えば美容室ではデットスペースのようなところを生かすので,本業を圧迫するとか,

一般のお客さんを取れないことはないという認識で千葉県美容事業協同組合といろいろ話

をして,少しずつ知見や体験をつんでいこうといったニュアンスで,あくまで早めに手を

付けておいて2020年までにもっと充実させようという気持で実施している。市内にムスリ

ムの留学生などが結構いるので,そういう方々に最初は喜んでいただいていて,その姿を

見て業者もやってよかったという感じだ。

Q:宿泊のキャパシティは足りているのか。

A:正確な数字は言いにくいが,中心市街地と海浜幕張駅を中心に8,000室弱ぐらいある。

去年の宿泊者が223万4,767人で稼働率が大体8割強ぐらいなので,単純計算すると300万人

までは無理だが,その手前まではいけるぐらいのキャパシティがある。

Q:最近,一部のあまりマナーの良くない外国人観光客に対して地域から否定的な声がだ

んだん増えているような状況があるが,千葉市の考えは。

A:むしろ困ったのは世界的に流行ったゲームで,あるところにすごく人が来てしまって,

ごみの問題とかいろいろ叫ばれた。マナーなどの問題に国籍は関係ないと思っている。

Q:欧米に対する働きかけはあまりしないのか。

A:そうだ。もちろん英語のパンフレット作成やインフォメーションは出しているが,欧

米に向けてPRをするには,もっと予算を獲得しないとできない。

Q:マレーシアとかインドネシアの現地での集客にはどんな戦略を持っているのか。

A:予算がないので,現地での営業は県にイニシアチブを任せている。対ムスリム戦略に

ついては,インバウンド推進会議にも必ず県から来てもらって,歩調をそろえている。観

光のセクションは割と人脈が強かったりするので,現地に行ってきちんとリレーションを

取ってくるのが基本だと思っている。1回行くと旅行会社などを20社ぐらい回るが,話し

た感じで5社ぐらいに絞って,残りの15社は捨てるぐらいの気持ちで活動している。

Q:国内に居住している外国人との連携は。

A:千葉市には大学が多く立地しているので,ムスリムに関しては千葉大学と神田外国語

大学に出向いて留学生と意見交換などを行っている。また,国内に限らないが,ムスリム

に特化しているウェブサイトから情報を流してもらっている。特に東南アジアはSNSの

使用度が高いので,うまく使っていきたい。

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Q:インバウンド戦略をまとめた経過は。

A:戦略をまとめるまでは,海外戦略や観光上の戦略を市民や事業者と共有してやってい

こうということがなかった。2013年7月のマレーシアのビザ解禁やホテルスプリングスの

ハラル対応などの契機をうまくとらえて一気に盛り上げた感じなので,最初からこれから

はムスリムだとみなさんに伝えて,一緒にやって行こうという機運をまず作った。メンバ

ーは商工会や観光協会,大学,企業,ホテル,交通・バス協会,国際交流協会といった方々

だ。

Q:ハラル料理の提供や新しい商品を開発したいという企業に対する市として支援は。

A:一つは知識ということで昨年からセミナーを開催し,まず情報を流して,ファムトリ

ップでムスリム目線の意見を聞く。二つ目は,ムスリムの担当者が市にいるので,意欲の

ある事業者へ出向いて,対応などを細やかにアドバイスしている。資金面では,同じ経済

部の産業支援課で助成金を設けている。例えば,ハラル認証は1件15万円が上限で,今年

度は10件に対応している。

Q:成田空港を中心とした電車,バス,モノレールなど移動手段を運営する企業とのタイ

アップなどは。

A:企業は,わざわざ千葉市にというよりは成田,東京間をいかに充実させるかを考えて

いて,むしろ逆風になっている感じがある。唯一,市内に千葉都市モノレールという,上

からつりさげる結構珍しいモノレールがあり,営業距離が世界で一番長く,ギネスブック

に載っているということで,ムスリムだけでなく海外の方に割と人気になっている。会社

もそこに目をつけて,有名なアニメとコラボレーションしてPRするなど,モノレールが

観光名所みたいな感じになっている。

Q:全国的に民泊の動きがあるが,進めるのか。集客,インバウンドとの関係で考えてい

ることは。

A:千葉市は経済戦略特区に指定されて,その中で民泊を検討するとしているので,割と

意識を持っている。今,民泊は日進月歩でいろいろルールが変わっているので,まずはル

ールをきちんと把握して,そのルールに乗っ取って,いろいろある問題などを,きちんと

クリアにしていくことが大事だと認識している。推進する,規制する以前にまず考え方の

インフラみたいなことを整理していこうというのが今のフェーズで,それが終われば,千

葉市らしい民泊のスタイルを考えていきたいと思っている。世界ではホームステイ型が主

流だが日本は全く逆で貸家,マンションの空室を使うという発想で世界標準と違う。千葉

市は,マレーシアの方々をホームステイで迎え入れるといったところに価値を見出してい

るので,民泊を推進するにしてもコミュニケーションというキーワードが欠かせないとい

う共通認識はあるが,これからだと思う。

Q:ICT協議会はどんな組織なのか。

A:行政主導というよりは民間主導で行っている。イオンリテール(株)などが中心とな

って内閣府から補助金を受け,外国人の動向とか,それに対するビジネスなどの実験を試

みている。例えば成田空港に入ってきた方にシムカードなどのセットを渡して,外国人が

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どういう動きをするかとか,外国人向けのアプリを使って観光中にどういう動きをするか

といったことをこの12月から3月までと来年1年間かけて実験し,各事業者のビジネスに

結び付けるというもので,千葉市もモデルエリアに選ばれている。

【所感】

千葉市は,38歳で2期目の革新市長として全国的に有名な熊谷市長のもと,さまざまな

事業を推進している。観光の分野でも,観光プロモーションを推進するセクションの課長

に,民間でプロモーション事業にかかわった経験のある人材を特定任期という採用期間が

2,3年の職員として採用し,千葉市の魅力発掘プロデューサーとしてインバウンド戦略

を任せて,課のスタッフにも旅行業界等で勤務経験のある職員を配置するとともに,専門

的なスキルを持った人材を2年の任期で採用するなど,民間のノウハウを生かしながら事

業を推進している。

千葉市には歴史はあるが,わかりやすい歴史がなく,千葉県と混同されることも多く,

千葉市としてのアイデンティティーがないことがネックになっているという説明があった

が,岡山市も市の名前が県名と同じであることや,世界的にも知名度が高い神戸市,広島

市という二つの政令指定都市に挟まれ,隣には観光のまちとして有名な倉敷市があるなど,

交通の要衝ではあるものの通過されがちな点など千葉市と共通する課題があり,何でもな

いけど何かあるんじゃないかという発想で体験観光コンテンツの掘り起こしなどに取り組

まなければならないという千葉市の考え方は非常に参考になるものであった。また,千葉

遊びという冊子は,多分どこの都市にもある風景を実直にとらまえて,リアリティを発掘

していくという,今までの行政スタイルではそこまでつぶさに情報を集約するのは難しい

と思えるものであり,まさに民間登用の方々が成せる技だと感じた。さらに,千葉市のイ

ンバウンド戦略は3年前にできたばかりということであったが,我々の質問にもしっかり

とメモを取りながら的確な説明をされるスタッフの姿勢,熱意には感銘を受け,身の引き

締まる思いであった。今,岡山市でもムスリム観光客の誘致を積極的に進める動きなどが

あるが,ハラル対応や魅力的な観光コンテンツを掘り起こす取り組みなどを議会としても

しっかり調査していく必要があると感じた。

○平成29年2月15日(第6回)

1 平成28年度 移住定住支援に関する主な取り組みについて(報告)

2 平成28年度 インバウンドに関する主な取り組みについて(報告)

3 歴史・文化資源を生かした取り組みについて

○会議の内容

1 市民協働企画総務課長から,平成28年度 移住定住支援に関する主な取り組みについ

て(報告),資料により,説明があった。

委員から,子育て世代がメーンターゲットという話が出たが,移住・定住の支援,サ

ポートなどを行っている中で,相談に来られる方の期待に応えられていないとか,もっ

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と強化改善が必要だと感じられる項目,支援メニューとして足りないもの,まちとして

ウイークポイントになっているものなどがあればあげてもらいたい,との質問があり,

当局から,岡山市の売りとしては災害が少ない,温暖な気候,豊かな自然ということで,

むしろ今後強化したい面を言わせてもらうと,今,相談する場所は東京事務所だけだが,

試験的にナイター相談会をとっとり・おかやま新橋館で月に1度開いている。フェース・

ツー・フェースで話をするのは非常に大事なことだが,東京事務所では土日は相談でき

ないので,来年度に向けてもっと定期的に開いていければと思っている,との答弁があ

った。

また,同じ委員から,強化したいことをあげてもらったが,移住・定住の相談や支援

から見える岡山市の足りないところ,例えば豊かなまちで今までも若い世代に来ていた

だいているが,そこからさらに教育の問題があるとか,市の政策につなげていくのも移

住・定住支援の役割の一つだと思う。メーンターゲットもはっきりしているので,今後,

もう少し全体の洗い出しをしながら,必要なことを移住定住支援室から逆に政策を返し

ていくような取り組みもあわせてやってもらいたい,との要望があった。

2 観光コンベンション推進課長から,平成28年度 インバウンドに関する主な取り組み

について(報告),資料により説明があった。

委員から,岡山は東京や大阪のような大都市ではないし,アジアの中でもほとんど知

られていないと思うが,これだけの方が海外から来てくださっているのは,目的を持っ

ていると思う。その声をどう集約していくのかが勝負になるかと思うが,どのように集

約するのか,との質問があり,当局から,平成27年度に観光客の動向調査の中で国内と

海外に分けて調査を行った。海外からの観光客については,後楽園の正門前で約500人を

対象に対面でアンケートを行ったので,そういったものを参考にしながら今年度観光振

興アクションプランを作成中で,2月には最終案を示そうとしている,との答弁があっ

た。

3 歴史・文化資源を生かした取り組みについて

観光コンベンション推進課長から,歴史・文化資源を生かした取り組みについて,資

料により説明があった。

それによると,日本遺産は地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語

るストーリーを文化庁が認定するもので,平成27年度から始まり現在37件が認定されて

いる。2020年までに100件程度が認定される予定で,今回は,巨大前方後円墳を初めとし

た古墳,それにさかのぼる弥生時代の古墳の先駆ともなる墳丘墓,あるいは鬼ノ城を初

めとする山城が岡山市,倉敷市,総社市,赤磐市に残っていることから,海上交通路と

して古代から栄えた瀬戸内海,それとともに製鉄,製塩などの技術も流通し瀬戸内海を

通して国内だけではなくて大陸からも文化が伝わってきているということで,「瀬戸内

海の海上交通とともに繁栄した古代吉備国の王の遺産」として瀬戸内海をキーワード,

背景として4市で協議してストーリーをつくり申請した,との答弁があった。

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3 ま と め

はじめに

日本は,2008年をピークに人口減少社会に突入し,急激に進む少子高齢化や人口減少へ

の対応が,我が国全体の大きな政策テーマとなっている。これまで順調に人口が増加して

きた岡山市においても,東区では既に人口減少期に突入するなど,2020年をピークに,人

口減少に転じると予想されている。加えて,地方と東京圏の経済格差の拡大等が,若い世

代の地方からの流出と東京一極集中を招き,人口減少が地域経済の縮小を呼び,地域経済

の縮小が人口減少を加速させるという負のスパイラルに地方都市が苦しむ中,中四国の交

通結節点に位置し,岡山都市圏の中心都市である岡山市には,産業の振興や雇用の創出な

ど,圏域全体の成長と発展をけん引する役割を担うことも求められている。

岡山市では,国のまち・ひと・しごと創生総合戦略を踏まえ,平成27年10月に「岡山市

人口ビジョン」及び「岡山市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し,人口減少問題

の克服と地方創生に向けた具体的な取り組みを推進するとともに,長期的な視点に立ち,

まちづくりの基本理念・将来像や市政運営の基本方針等を示すため,平成28年度から平成

37年度までの10年間の新たな総合計画となる「岡山市第六次総合計画 長期構想」や,長

期構想に掲げる「都市づくりの基本目標」の実現に向けて,平成32年度までの政策・施策

の体系を明らかにし,具体的な施策展開の方向性を示す「岡山市第六次総合計画 前期中

期計画」を策定するなど取り組みを進めている。

こうした状況を踏まえ,本調査特別委員会では,1.魅力づくりに向けた産官学連携・

市民協働に関する調査,2.企業誘致・就労拡大等に関する調査,3.「地方創生」に関す

る調査の3つの付議事件について,①交流人口の増加に関する取り組み,②移住・定住人

口の増加に関する取り組み,③若者・子育て世代の転入,定住促進に関する取り組みの3

項目をテーマに選び,調査・研究を行ってきた。

以下,各項目の調査結果の概要を報告する。

1 交流人口の増加に関する取り組みについて

今,日本は空前の観光ブームを迎えている。観光は,今後人口減少や少子高齢化が予測

される日本において,極めて重要な経済分野であり,地域経済の活性化につながる可能性

を多分に秘めている。国土交通省が中心となり,2003年に始まった訪日外国人旅行者の増

加を目的とした「ビジット・ジャパン事業」は10年以上経過し,訪日外国人旅行者数は2003

年には521万2,000人であったが,2013年には史上初めて1,000万人を達成し,その後も増加

の一途を辿り,2016年には前年比21.8%増の2,403万9,000人となり,日本政府観光局が統

計を始めた1964年以降,最多となった。今後,2020年には東京オリンピック・パラリンピ

ックの開催を控え,さらなる訪日外国人旅行者の増加が見込まれている。日本の観光がこ

のような状況にある中,本調査特別委員会は,岡山市における観光客誘致においての様々

な取り組み状況等について調査を行った。

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岡山市は,国内外を問わず,インターネットを活用した情報発信,各種プロモーション,

岡山後楽園・岡山城連携の幻想庭園・烏城桃源郷の同時期開催等のイベント,他自治体と

の連携による広域観光の推進,パンフレットの多言語化等,多岐にわたって観光客の誘致

を行っている。

そもそも岡山市は,中四国における広域交通の結節点であり,豊富な歴史・文化資源,

高品質の果物や瀬戸内海の海産物等を用いた食文化など,多彩な観光資源に恵まれている。

にもかかわらず,人口に対する実宿泊者数は政令指定都市の中で10位と決して高くはなく,

観光入込客数はここ数年伸びをみせているものの,交通利便性の高さや地域資源を観光客

の宿泊・滞在に十分生かしきれていない。そのため,宿泊客の増加や滞在時間延長につな

げるため,岡山市固有の観光資源に磨きをかけるとともに,近隣自治体との連携による魅

力的な観光ルートの創出や情報発信力の強化が課題となっている。また,医療・福祉関連

産業や学術研究機関の集積,岡山県総合グラウンドや岡山駅に直結した岡山コンベンショ

ンセンターの立地の良さ等により,国際会議やスポーツ大会を含めたコンベンション開催

件数は増加していることから,岡山市の都市イメージを国内外に発信できる「コンベンシ

ョンの誘致・開催における連携・協力協定」を締結した岡山大学や岡山商工会議所等の産

官学が連携を強化し,積極的に取り組んでいく必要があると考える。全国1,000市区町村を

対象とした「地域ブランド調査2015」では,岡山市の認知度は72位,魅力度は178位にとど

まっている。このため,都市イメージとして広く浸透している「桃太郎」を積極的に活用

することにより,岡山市の認知度や好感度の向上を図り,観光客誘客につなげていくため

のプロモーションをさらに戦略的かつ積極的に展開していく取り組みに期待する。

また,視察で訪れた三重県では,世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」

と連携し,日本初の大規模なプロジェクトを実施していた。ハングル・中国語・英語・日

本語の4種類のトラベルガイドを作成し,好評を博している。岡山市の観光地に対する要

望では無料公衆無線LANに続き,言語対応を求める声があるため,三重県を参考にさら

なる充実を期待したい。

観光戦略は一つの課のみで行う事業ではなく,各取り組みでは,部局を超えた協力が必

要である。縦割り行政と揶揄される役所であるが,今まで誰もが経験したことのない新し

い時代に突入しつつある現在,既成の概念・枠組みにとらわれない取り組みを行うことで,

さらなる岡山市の発展を期待したい。

2 移住・定住人口の増加に関する取り組みについて

少子高齢化の進行により,我が国の生産年齢人口は1995年をピークに減少に転じており,

総人口も2008年をピークに減少に転じている。総務省「国勢調査」によると,14歳以下の

推計人口は1982年から連続して減少が続いており,少子化に歯止めがかからない実態が改

めて浮き彫りになっている。

本市では,県内,中四国地方からの転入超過等により,これまで順調に人口が増加して

きたが,今後,人口減少期に突入することが見込まれ,中長期的な生産年齢人口の減少へ

の対応が大きな課題となっている。

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このような状況の中,東日本大震災の発生により,首都圏在住の30~40歳代の子育て世

代を中心に,地震などの自然災害が少ない,気候が温暖で過ごしやすい,交通のアクセス

が良いなどの理由から,本市への移住・定住が注目されるようになった。

こうした動きを受け,本市では移住・定住を希望される方に,よりスムーズに移住して

もらえるよう,ワンストップで移住・定住をサポートすることを目的に,本庁舎内に移住・

定住支援室を設置したほか,各種移住・定住支援施策の検討および実施,全庁的な対応の

ための調整などに取り組んできた。

そして,移住相談会の開催や東京事務所内に移住相談窓口を新設し移住コンシェルジュ

を配置するとともに,メーンターゲットを首都圏在住の30~40歳代の子育て世帯とし,本

市での生活や街の様子などを具体的にイメージしてもらうための移住先下見ツアーを開催

するなど,県外に向けた情報発信を行ってきた。

さらに,移住・定住者を受け入れる全国初の取り組みとして,県内自治体と岡山県宅地

建物取引業協会,岡山県不動産協会が連携してワンストップで物件情報を提供する,住ま

い探しの支援サービスや,仕事や住まいなど,各種移住相談に連携してワンストップで対

応・サポートする岡山市移住・定住支援協議会を移住支援団体をはじめとして民間との協

働で設立するなど体制を整えてきた。

本調査特別委員会としても,首都圏において本市の魅力を複合的に発信するため,市役

所内の複数の局が連携した移住相談会を開催することを提案するなど意義の大きい調査と

なった。

現在,本市の移住・定住支援は,他都市からも多くの視察者が訪れるなど,全国的にも

高いレベルにあると考えるが,移住者に対して入り口部分でのサポートを行う移住支援が

メーンとなっており,将来の人口減少・流出抑制につながる定住促進の施策をさらに検討・

実施していく必要があると考える。

今後も,本市の持つ都市機能,子育てや医療などの生活環境,観光資源等に魅力を感じ

移住に興味を持つ人を増やす取り組みをさらに進めるとともに,移住者支援についても,

中心市街地や中山間地域など,地域に応じたメニューを増やすなど,官民協働によるさら

なる取り組みを期待する。

3 若者・子育て世代の転入,定住促進に関する取り組み

人口減少時代を迎え,地方創生への取り組みが求められる中,地方では,地域おこしの

動きが広がっており,若者・子育て世代の転入,定住促進に関する取り組みが非常に重要

なテーマとなっている。若者・子育て世代への支援としては働く場所の確保や,子育て環

境の整備などがあり,岡山市が行った移住相談者へのアンケートでも,移住を検討するに

当たり一番必要な支援は「住まい」「就職・転職」「教育・子育て」という結果が出ている。

このような状況を踏まえ,仕事,子育てに関するニーズ等についても調査した。

移住相談者のアンケート結果からも分かるように,働く場所の確保は移住を促進する上

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で,重要な課題となっている。また,地方の人口減少抑制に向けた課題としては,就職時

期の年齢層における定住促進がある。このような課題を解決するためには,若者・子育て

世代にとって魅力的な雇用機会を創出することが不可欠であり,その方法として地域外企

業の誘致,地域内企業の育成などがある。岡山市は交通の要衝に位置するなど,広域拠点

としての優位性を生かし,補助制度を設けるなど企業の本社機能などの誘致や岡山県と連

携した空港南団地の開発など企業誘致を進めるとともに,UIJターン希望者の就職・転

職活動支援事業など,多面的な施策を推進しているが,今後とも,働く場所の確保や岡山

市で働く誇りを醸成するなど,さらなる取り組みが求められる。

次に,子育てについてである。岡山市の待機児童が政令指定都市の中で最も多い状況が

続く中,平成28年4月の729人の待機児童に対し,平成29年4月には800人の新たな受け皿

の確保を政策目標にするなど,子育て環境の充実,特に保育の受け皿の確保を最重要課題

の一つとして捉え,取り組みを進めている。私立保育園の新増設による定員増や公立幼稚

園の余裕教室を活用した一時預かり事業,地域型保育事業の促進などにより,平成29年4

月には,新たに900人を超える受け入れ枠を確保しだが,入園を希望する児童が過去最高と

なり,待機児童・未入園児童の解消は難しい状況となっている。

そこで,安心して子育てをしながら働き続けられる環境の整備の一つとして,企業が専

用の保育園を用意することで産後のお母さんも比較的早く職場に復帰できる事業所内保育

施設に注目し,調査を行った。子どもが比較的小さいうちから育児と仕事の両立を図るこ

とができる事業所内保育施設は,ワークライフバランスの点からも注目されているが,設

置・運営には,保護者や企業の経済的負担や利用者の安定確保など課題も多い。静岡市に

ある「森のほいくえん」は,静岡ガス株式会社,株式会社静岡銀行,静岡鉄道株式会社の

異業種の3社が共同で運営し,コストの軽減等を図るなど全国的にもめずらしい取り組み

であるが,保育料は運営経費を上回るものではなく,厚生労働省からも10年間は助成金が

あるが,毎年各社が福利厚生費用として按分して充当している。このような取り組みを行

う企業は決して多くなく,恩恵を受ける社員も限定的であり,今後,市などがどのように

関わっていくか課題も多いが,保育環境を整備する上では有効な取り組みである。

仕事・保育環境の充実は子育て世代の転入,定住促進策として期待されるとともに,人

口減少を抑制するためにも非常に重要な施策であり,さらなる取り組みを期待する。

おわりに

2008年に始まった人口減少は,今後,加速的に地方から都市部へ広がり,進んでいくこ

とが予想され,岡山市も例外ではない。本調査特別委員会で調査を進めてきた交流人口の

増加に関する取り組み,移住・定住人口の増加に関する取り組み,若者・子育て世代の転

入,定住促進に関する取り組みの3項目は,いずれもこれから進んでいく人口減少を食い

止め,岡山市へ人を呼び込むために,今後も継続的に調査・研究を進めていかなければな

らない重要なテーマである。

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これらのテーマに関する政策・施策をさらに推進できれば,多くの人が岡山市を訪れ,

人と人の交流が生まれ,まちに活気が生まれ,ひいては人口の増加も見込まれるものであ

るが,このような政策・施策をより効果的なものにするためには,市全体の横断的な取り

組みが不可欠となる。縦割りと言われる行政にとっては苦手な分野であるが,本調査特別

委員会での議論が,市民協働局,経済局などの連携を促し,平成28年8月に東京のとっと

り・おかやま新橋館で観光・移住交流の促進などを目的とした「おかやまの魅力を発見P

Rイベント」の開催につながったことは,大きな収穫であり,本調査特別委員会の成果の

一つであった。

今後も本調査特別委員会で行った調査や出された意見を踏まえ,災害が少ない,交通の

要衝といった岡山市が持つ強みを生かしながら,新たなまちの魅力を創り出し,活力と魅

力のあるまちづくりに取り組み,観光客や移住希望者から選ばれる都市となるよう取り組

みを進められることを要望し,調査報告書とする。