18

Ñ ¢ Ôw ° R*-...3 2019 å 3 Dø; ½ HITO ø HITO REPORT vol.4 04 06 10 12 15 18 22 26 28 29 33 35 20 25 iw Æ w ݯ 2030 åz x 644 ª Æ b ® Ñ ¢ Ôw R *- *-¯ ALt|z ' ÞÃçt

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労働市場の未来推計2030

2019年3月

1日発

行 

発行

人/

渋谷

和久

 編

集長

/櫻

井 功

 発

行/

株式

会社

パー

ソル

総合

研究

所©

〒107-0062 東

京都

港区

南青

山1-15-5 パ

ーソ

ル南

青山

ビル

定価

1,000円

税込

3

2019年 3月号機関誌HITO特別号 HITO REPORT vol.4

04

06

10

12

15

18

22

26

28

29

33

35

20

25

足元の人手不足の状況

2030年、人手は644万人不足する

「労働市場の未来推計2030」推計結果及び、予測モデルに使用したデータ

3ブロックからなる予測モデルの全体像について

「人手不足644万人」の未来を回避するため我々が取り組むべきことは何か

働く女性を増やす

外国人の働き手を増やす

シニアの働き手を増やす

生産性向上で必要な働き手を減らす

プロローグ

推計結果

DATA

INFORMATION

統計方法解説

対談

国も企業も、子育てにも仕事にもチャレンジしたい女性を『レギュラー人材』として期待しない手はない

外国人の能力と多様性を企業と都市の発展に生かす

「生涯現役で社会に貢献し続けたい」そう考えるシニアは日本の宝だ

AI、IoTで労働者の総数はほとんど変わらないが雇用の二極化と経済格差が拡大する

武田 佳奈氏 野村総合研究所 未来創発センター 上級コンサルタント

鈴木 康友氏 浜松市 市長

秋山 弘子氏 東京大学 高齢社会総合研究機構 特任教授

岩本 晃一氏 経済産業研究所 上席研究員(特任)・日本生産性本部 上席研究員

中央大学 経済学部教授 阿部 正浩氏 × 本誌編集長 櫻井 功

人手不足に対する4つの解決策

対策1

対策2

対策3

対策4

2

人手不足。ここ2~3年、メディ

アにおいてこの言葉を目にしない

日はないほど、連日、人手不足に

関するニュースが報じられていま

す。2018年の有効求人倍率は

12月時点で1・63倍、年平均で

1・61倍と1973年以来45年ぶ

りの高水準となりました。非製造

業(サービスや医療・福祉、運輸、

建設など)を中心に、各産業分野

において人手不足への危機感が強

まっています。

政府は働き方改革をはじめ、女

性や高齢者の就業促進、外国人労

働者の受け入れ、賃上げなど次々

と政策を打ち出していますが、顕

著な成果が出ているとは言い難い

状況です。一方、人手不足による

倒産や営業時間の変更などが報じ

られており、対策は急務となって

います。

人手不足の対策を検討するに

あたり、まずは、「いつ、どの領

域において、どの程度の人数が不

足するのか」といった具体的な不

足数を把握しないことには議論を

始めることすらできません。そこ

で、パーソル総合研究所では、将

来における人手不足数を推計す

る「労働市場の未来推計」プロジェ

クトを立ち上げました。立ち上

げ当初の2016年には「労働

市場の未来推計2025」として、

2025年時点で583万人の人

手が不足するという推計結果を

発表しました。2018年に実施

した今回の「労働市場の未来推計

2030」では、推計精度を高め

るべく、中央大学経済学部の阿部

正浩教授にご参画いただき、賃金

や労働力率の変動も推計すること

ができる需給予測モデルを構築し、

2030年時点の労働需給を算出

しました。今回は2030年時点

で644万人の人手が不足すると

いう推計結果となっています。

人手不足を解消するには、女

性やシニア、外国人といった、今

後さらなる労働参加が期待され

る人々への就業促進によって「労

働供給を増やす打ち手」と、生産

性向上による「労働需要を減らす

打ち手」が考えられます。本推計

では、こうした方策による人手不

足解消の見込み数を予測している

ほか、本誌面では不足解消のため

の具体的対策についても提言して

います。未曾有の人手不足に立ち

向かうにあたり、この推計結果が

少しでも皆様のお役に立つことを

願っています。

パーソル総合研究所

代表取締役社長 渋谷和久

はじめに

5

0.0

2.0

3.0

1.0

6.0

4.0

5.0

(%)

※2018年6月末日時点

宿泊業・飲食サービス業

建設業

生活関連サービス業、

娯楽業

運輸業、郵便業

卸売業、小売業

その他サービス業

情報通信業

学術研究、

専門技術サービス業

医療、福祉

不動産業、物品賃貸業

製造業

複合サービス事業

教育、学習支援業

金融業、保険業

0.3 1.21.41.72.02.12.42.6

3.03.03.03.2

4.85.4

出所:【図2、3】厚生労働省「雇用動向調査(平成30年上半期 )」、【図4】厚生労働省「労働経済動向調査(平成30年11月)」※参考資料:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「人材(人手)不足の現状等に関する調査(2016)」

産業別の欠員率

景気と連動した

バブル期以上の人手不足

日本はバブル以来、前例を

見ないほどの人手不足に直

面している。有効求人倍率は、

2018年12月時点で1・63倍。

これは、バブル期を上回る数値

である(図1)。いざなぎ景気、

バブル、リーマンショック前の

好景気と、これまでも景気の変

動に伴い、好況時には人手不足

が叫ばれてきた。現在は、少子

高齢化による深刻な労働力人口

の減少に加え、アベノミクスや

オリンピック需要など複合的な

要因が重なり、長期的に好景気

が続いていることによって、人

手不足が加速している。

企業における欠員率も急速

に上昇している。欠員率は、常

用労働者に対する「未充足求人*」

の割合を示すが、2018年6

月末時点で、バブル期以降最高

の2・7%を記録し、欠員数は

136万人に上る(図2)。産業

別にみると、宿泊業・飲食サー

ビス業、建設業などで特に高

く、企業規模別にみると、中小・

零細企業になるにつれ、その深

刻さは色濃くなっている(図3、

4)人

手不足が原因となり、事

業計画や出店計画の見直しを迫

られる企業も増えている。従業

員の離職や採用難等により収益

が悪化したことを要因とする倒

産、いわゆる「人手不足倒産」も、

2018年の1年間で153件

発生。前年比44・3%の大幅増、

3年連続の増加で、2013年

の調査開始以降の最多を更新し

ている(図5)

企業は人手不足を打開する

ため、新卒採用と中途採用の強

化や業務効率化の促進、採用対

象の拡大、募集賃金の引き上げ

など、様々な施策を試みている。

しかし、それでも人手不足に歯

止めはかからない。この人手不

足はどこまで拡大していくのだ

ろうか。そこで今回、パーソル

総合研究所では、2030年時

点での人手不足の状況を推計し

た。次ページからは、その推計

結果を紹介していく。

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

106件

72件70件

34件

65件

153件

人手不足倒産の件数図5

1,000 人以上

100~299 人

30~99 人

300~999人

0.0

1.0

2.0

2.2

4.1

4.7

3.0

5.0

4.0

(%)

3.1

※2018年11月1日時点

企業規模別の欠員率図4

図3

2002年

2001年

2000年

0

20

60

40

80

100

120

140

2004年

2003年

2006年

2005年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2018年

※6月末日時点

2017年

(万人)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5(%)

万人136

2.7%

欠員率欠員数

欠員数・欠員率の推移図2

*事業所における欠員であり、仕事があるにもか

かわらずその仕事に従事する人がいない状態を補

充するために行う求人

4

3,000

求職者(千人) 有効求人

倍率(倍)

2,250

1,500

750

0

2.5

1.9

1.3

1.0

0.6

0.01970年

出所:厚生労働省「一般職業紹介状況」

1975年 1980年 1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2015年

いざなぎ景気

バブル景気

ITバブル

いざなみ景気

アベノミクス

列島改造ブーム求人数

(千件)

1.63倍

有効求人倍率有効求人数有効求職者数

足元の人手不足の状況

出所:厚生労働省「一般職業紹介状況」、数値は季節調整値。色つき部分は好況期

有効求職者数・有効求人数・有効求人倍率の推移

人手不足は、日本国内において、どの程度深刻な状況なのであろうか。ここでは、今回の推計結果へと話を進める前に、まず現時点における足元の人手不足の状況について、

有効求人倍率や欠員状況、人手不足による倒産件数といった各種公表データをもとに概観したい。

図 1

プロローグ

7

2002年-4.0

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.00.9

2.01.6

2.0

1.41.2

3.2

0.50.8

2.6

-0.3

1.4

1.2

1.9 1.8 2.1

1.3 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2

-3.4

-2.2

2.0

3.0

2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年 2016年 2018年 2020年 2022年 2024年 2026年

(%)

成長実現ケース

ベースラインケース

予測実績

老齢人口(65歳~)

生産年齢人口(15~64 歳)

7,596万人(60.0%) 6,656万人

(57.2%)

年少人口(0~14 歳)

1億1,638

▲940

万人

万人

1億2,769万人

8,877万人

1億2,671万人

1,559万人(12.3%)

1,293万人(11.1%)

919万人(10.4%)

4,505万人(50.7%)

3,453万人(38.9%)

3,689万人(30.3%)

3,616万人(27.7%)

2008 年2017 年

2030 年

2060 年

1955年 1960年 1965年 1970年 1975年 1980年 1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年 2045年 2050年 2060年2055年

目指した。

具体的には、「労働需要ブロッ

ク」では、2030年の産業計

の労働需要を算出。労働需要に

は未充足求人も含まれ、就業者

数のみを使用して推計する場合

よりも、企業が本来必要とする

人数に近いものとなっている。

また「労働供給ブロック」で

は、2030年の労働力人口を

算出。有配偶率・出生率・進学

率を用いて性・年齢階級別労働

力率を推計したのち、人口にそ

の労働力率を掛けることで、性・

年齢階級別の労働力人口を求

めている。

3つ目の「需給調整ブロック」

は、「市場が埋めようとする需

要と供給の差」を調整するモデ

ルである。前述の2つのブロッ

クで求めた労働需要量と労働

供給量を用いてマッチングを行

い、就業者数と失業者数を推計。

その失業者数から実質賃金を

推計し、その賃金レートにおけ

る需給量を再び推計する。こう

したシミュレーションを需給の

バランスが均衡するまで繰り返

すことで、最終的に得られた結

果が「644万人の不足」である。

〈労働需要推計の前提〉実質GDP成長率図 1

〈労働供給推計の前提〉将来推計人口図2

出所:内閣府「中長期の経済財政に関する試算(平成30年1月23日経済財政諮問会議提出)」

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2017)」

6

ここからはパーソル総合研究所と中央大学が行った推計の結果とともに、2030年の労働市場の状況と人手不足解消に向けた4つの対策を見ていく。

2030年の労働需給を予測

その推計方法と結果

今回の推計では、中央大学

経済学部の阿部正浩教授と

パーソル総合研究所が共同開

発した「予測モデル」を使用し、

2030年時点の労働市場の需

給状況を予測した。その結果、

2030年には、7073万人

の労働需要に対し、6429万

人の労働供給しか見込めず、

644万人の人手不足となるこ

とが分かった。

この推計結果には、大きく2

つの前提条件がある。ひとつは

2030年までの経済成長、も

うひとつが人口動態だ。

経済成長については、政府

が2018年1月に発表した

「中長期の経済財政に関する試

算」を基に検討した。この試算

では、「成長実現ケース」と「ベー

スラインケース」の2パターン

が提示された。「成長実現ケー

ス」は、アベノミクスで掲げた

デフレ脱却、経済再生という目

標に向けて、政策効果が過去

の実績もふまえた現実的なペー

スで発現した場合を試算してい

る。一方、「ベースラインケース」

は、経済が足元の潜在成長率並

みで将来にわたって推移する姿

を試算したものだ。今回の我々

の予測モデルでは、より着実な

推移の試算である「ベースライ

ンケース」における経済成長率

1・2%を前提とすることとし

た(図1)

人口動態については、国立

社会保障・人口問題研究所が

発表した「日本の将来推計人

口(2017)」を基に検討した。

この推計によると2030年に

日本の総人口は1億1638万

人まで減少し、生産年齢人口

は総人口の6割を切る見込みと

なっている(図2)今回の推計結

果が生じる前提には、こうした

2030年までの経済成長と人

口減少・高齢化が進んだ日本の

状況がある。

なお、今回の「予測モデル」は、

「労働需要ブロック」「労働供給

ブロック」「需給調整ブロック」

の3ブロックからなり、相互に

作用するこの3つのブロックを

用いてシミュレーションを繰り

返すことで、より精緻な予測を

644万人6,429万人7,073万人供給需要 不足

2030年、人手は644万人不足する

推計結果

9

10万人未満

133万人不足

10万人以上 20万人未満

20万人以上 50万人未満

50万人以上

不足数(供給ー需要)

東京都

36万人不足

千葉県

28万人

19

1313

12

16

10

10

13 13

1012

10

12

15

9

4 6

6

4

56

6

7

36

2

217

3 20

37

9

78

7

4

8

不足

埼玉県

24万人不足

静岡県36万人不足

愛知県

22万人不足

兵庫県

54万人不足

神奈川県

(万人不足)

4)。不足が目立つのは、「専門

的・技術的職業従事者」や「事

務従事者」、「運搬・清掃・包

装等従事者」だ。「専門的・技

術的職業従事者」には、研究開

発職やIT系エンジニアのほか、

医師や会計士、裁判官、保育

士、教員などが含まれ、現状で

はこれらの職種に就くことがで

きる能力のある人材が少ない点

と、育成に時間がかかる点から、

212万人という大幅な不足が

予測される。次いで大きな不足

が予測されるのが「事務従事者」

で167万人の不足が予測され

る。「事務従事者」には、いわ

ゆるホワイトカラー(知的労働

者)の企画職などが主に含まれ

る。3番目に大幅な不足が予測

される「運輸・清掃・包装従事者」

では90万人が不足するという推

計結果となった。「運搬・清掃・

包装等従事者」には、郵便・配

達員が含まれるが、こちらも現

状既に人手が足りていない分野

であり、ECショップなど通販

ビジネスの拡大により、今後さ

らに人手不足が加速することが

見込まれる。

地域別に見た

人手不足の状況

最後に、地域別では、全国

で余剰になる都道府県はなかっ

た(図5)。特に関東の都市部は、

東京都で133万人不足、神奈

川県で54万人不足など、大幅

な不足が予測される。地方は都

市部に比べて人手不足数は少な

いが安心はできない。なぜなら、

そもそもの労働力人口が少な

い地方では、たとえ都市に比べ

て少ない人数の不足であっても、

その打撃は大きいことが予想さ

れるためだ。

こうした2030年の人手

不足を解決する方向性として

は、労働供給を増やすか労働需

要を減らすほかない。労働供給

を増やす場合は、女性、シニア、

外国人を増やす策が考えられ

る。また、労働需要を減らすに

は、生産性向上が不可欠だ。で

は、それぞれの方向性において、

どれくらいの人手不足解消が見

込めるのだろうか。次のページ

から、詳しく解説していきたい。

地域別に見た人手不足図5

※推計結果はすべて千人単位を四捨五入

8

農林水産業、鉱業建設 電力・ガス

・水道 卸売・小売運輸・郵便 通信・情報サービス

金融・保険、不動産 教育公務 医療・福祉 サービス製造業

275374

228115 117

185 181

392 372

203 176 206 175

810 771

1,1291,070

1,367

1,180

2,101

1,701

62 55

258

0

500

1,500

1,000

2,000

2,500(万人)

不足4万人 不足

余剰

7万人不足21万人 不足

28万人 不足31万人

不足38万人

不足60万人

不足187万人

不足400万人需要

供給

供給ー需要

2万人余剰30万人余剰

99万人

}

産業別に見た

人手不足の状況

ここからは、644万人の人

手不足について、様々な視点か

らもう少し詳しく見ていきたい。

まずは、産業別で見てみよ

う(図3)。特に不足が予測さ

れるのは、飲食や宿泊等を含

む「サービス」を筆頭に、「医療・

福祉」など、現在も人手不足に

苦しむ業種だ。「サービス」では

400万人、「医療・福祉」では

187万人と、この2業種だけ

で587万人もの不足が予測さ

れ、2030年に予測される全

不足数の9割を占める。これら

の業種は、高齢化やサービス産

業化の進展により今後も大きな

需要の伸びが予測される。にも

かかわらず、労働供給の伸びが

それに追いつかないために大幅

な人手不足になると考えられる。

職業別に見た

人手不足の状況

次に、職業別で見てみる(図

事務従事者

管理的職業従事者

サービス職業従事者

保安職業従事者

生産工程従事者

専門的・技術的職業従事者

農林漁業従事者 販売従事者 運搬・清掃・

包装等従事者輸送・機械運転従事者

186235

116148 138

266 244

881841

798738

1,014943

608

518

1,493

1,326

1,413

1,201

149 1261180

300

900

600

1,200

1,500(万人)

不足10万人

不足22万人 不足

23万人

不足40万人 不足

60万人 不足71万人

不足90万人

不足167万人

不足212万人

議会議員、管理的国家公務員、会社役員、

会社管理職員等

農業従事者、林業従事者、漁業従事者

商品販売従事者、不動産仲介・売買人、有価証券売買・仲立人、営業職業従事者等

生産設備制御・監視員、製造・加工処理従事者、機械検査従事者等

自衛官、警察官、看守、警備員等

介護職員、看護助手、理容師、調理人、飲食物給仕従事者等

郵便・電報外務員、配達員、

ビル・建物清掃員等

電車運転士、バス運転者、貨物自動車運転者等

研究者、製造技術者、情報処理・通信技術者、医師、保育士、裁判官、公認会計士、教員等

庶務事務員、人事事務員、企画事務員、総合事務員、秘書、会計事務従事者等

建設・採掘従事者

大工、とび職、土木従事者等

需要供給

供給ー需要}

余剰49万人

余剰2万人

産業別に見た人手不足

職業別に見た人手不足

図3

図4

11

055.0

60.0

65.0

70.0

75.0

80.0

0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35(人)

(%)

女性(15〜64歳)の労働参加率

潜在的保育所定員率:女性(20~44 歳)一人当たりの保育所等定員数

山形県 富山県福井県 島根県

高知県

奈良県

神奈川県大阪府

東京都

兵庫県

y=45.336x + 60.323R2=0.6282

女性一人当たりの保育所等定員が多い都道府県→女性の労働参加率高い

女性一人当たりの保育所等定員が少ない都道府県→女性の労働参加率低い

として考えられるものに、労働

時間の制約と保育所利用の選考

基準が挙げられそうだ。先の調

査結果で現在無職だが就業を希

望する女性のうち、87・5%が

短時間で柔軟な働き方ができる

「パート・派遣」を希望している。

育児や家事をしながら働くため、

週5で1日8時間勤務が多い正

社員はハードルが高いのかもし

れない。一方、保育所利用の現

状の選考基準は、長時間勤務を

選択している人の方が、配点が

高く入園が優先される。地域に

よっては、勤務時間の差だけで

10点以上も差が開いてしまう。

1点の差が合否を左右する現在

の保育所利用選考基準において

は、パートなどの勤務体系で働

くことは相当不利といえる。

なお、都道府県別に保育所定

員と女性の労働参加率の相関関

係を調べてみると、「女性一人

当たりの保育所定員が多い都道

府県の方が、女性の労働参加率

が高い」傾向にあることが分か

る(図3)。パートなど短時間で

柔軟な働き方を選択する人を含

め、幅広く必要な人が必要なと

きに保育所を利用できるように

なれば、もっと働く女性は増え

るのではないだろうか。

1985~89 年

1990~94 年

1995~99 年

2000~04 年

2005~09 年

2010~14 年

0

10

20

30

39.2 39.3 38.1 40.5 40.3

53.1%

40

50

60(%)

働く女性を増やす

出所:総務省「国勢調査(2015)」、厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(2017)」、総務省統計局 「人口推計(2016)」※参考資料 国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)(2015)」

出所:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)(2015)」

第一子出産前後の女性の就業継続率図2

都道府県別に見た潜在的保育所定員率と労働参加率図3

対策1

644万人の不足対策1

10

1985~89 年

1990~94 年

1995~99 年

2000~04 年

2005~09 年

2010~14 年

1985~89 年

就業継続

1990~94 年

1995~99 年

2000~04 年

2005~09 年

2010~14 年

0

50

100

50

100

0

(%) (%)

[ 妊娠前に正規の職員だった女性」 [妊娠前にパート・派遣だった女性」

離職

59.3 55.5 54.547.6 43.5

30.9

76.381.8 84.8 81.9 82.2

74.8

M字カーブ解消には

出産育児による離職防止が鍵

女性の労働力を増やすにはど

うすればよいのだろう。女性の

労働力率をグラフ化したときに

現れる日本固有の「M字カーブ」

をいかに解消するかが鍵となる

だろう。M字カーブを生じさせ

る主な要因としては、出産育児

による離職が挙げられる。

国立社会保障・人口問題研

究所の調査によると、第一子出

産後の女性の就業継続率は、出

産前に就業していた人に限ると

53・1%(図2)。徐々に伸びて

きてはいるものの、いまだに半

数の女性が出産を機に仕事を辞

めている。雇用形態別でパート

に限ると、74・8%もの女性が

離職している(図1)。しかし、

同調査では15歳未満の子どもが

いる女性のうち、現在無職の人

に就業意欲の有無をたずねたと

ころ、86・0%が就業を希望し

ていることが分かっている。

働きたいと考えている女性が

多いにもかかわらず、就業に繋

がっていないのはなぜか。理由

第一子妊娠前の雇用形態別に見た女性の就業状況図 1

Part.1を増やす働く女性対策1

出所:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)(2015)」

人手不足に対する4つの解決策

13

率1・8を実現した場合、2065年時

点の人口は1億45万人になります。1億

人の人口を維持することが日本の大きな

目標ですから「保育の受け皿が充足し、

希望の子どもの数を持つ子育て世帯が増

えると、2065年時点で人口1億人を

維持できる」という結果は、非常に希望

が持てるストーリーです。人口ピラミッ

ドのバランスが改善すれば、深刻化する

支え手不足が解消され、全世代が安心し

て暮らせる社会保障も実現可能です。

育児中の女性を『レギュラー人材』に

継続ではなく、活躍を目指して

国や自治体を中心に保育の受け皿を増

やすことの一方で、企業ができることは

何でしょう。ひとつは、育児中の女性を

『レギュラー人材』化することです。こ

れまで企業は、育児中の女性をイレギュ

ラーな存在として、仕事をセーブできる

ように働く環境を整備してきました。育

休制度や時間短縮制度、在宅勤務がそれ

に当たります。しかし、何らかの事情が

あって、フルに仕事に向き合えない人に

対して「無理せず仕事をセーブしながら

継続を目指してもらう」だけのスタンス

では、企業経営はやがて立ち行かなくな

ります。これは、子育てだけでなく、介

護中や闘病中の社員に関してもいえるこ

と。一部の企業ではすでに「育児中の女

性も、他の社員と同じく会社の主な担い

手として活躍を目指してもらう」という

スタンスに切り替え始めています。働き

方に制約がある社員であっても、会社と

いうチームの『レギュラー人材』として

チームへの貢献を最大化する方法を真剣

に考えるべきです。

バリキャリでも、ゆるキャリでもない

フルキャリの台頭

また育児中の女性を『レギュラー人材』

化する上で、女性自身の意識が変化して

いることも大きく影響しています。これ

まで働く女性は、キャリア重視の「バリ

キャリ」か、ライフ重視の「ゆるキャリ」か

に二分化されていました。組織で働き続

けるためには、どちらかにならざるを得

なかったのです。しかし最近では、両者

の価値観を持ち合わせた「フルキャリ」が

台頭し始めています。プライベートでは

結婚も出産もして、家事や子育てにも積

極的に取り組みながら、仕事でも、周囲

の期待に応える成果を出したいと考える

フルキャリ。働く環境整備など企業側の

努力もあって、フルキャリが企業内に増

加していることはとても良い傾向です。

「会社からの期待」が

女性の活躍を支える

最後に、企業の皆さんにぜひお伝えし

ておきたいことがあります。それは、育

児中の女性のキャリアと成長に期待して

ほしいということです。育児中の女性の

多くは、育休復帰後に経験する時間の制

約や、場合によっては仕事内容・役割の

変更により「もう自分は会社に期待され

ていない」と思い込んでいます。しかし、

もっと活躍したいと考えているフルキャ

リ社員は5割もいる。人手不足の今、企

業はそこに期待しない手はありません。

私も子を持つ母親として経験があるの

ですが、子育てとの両立に追われながら

働いていると「仕事上で私にできること

は、もうここまでかな……」と諦めてし

まいそうになる局面が幾度もあります。

そのようなときにモチベーションを支え

てくれるのは「自分が会社から期待され

ているかどうか」だと思うのです。女性

の活躍に、ぜひ期待してください。

保育の受け皿充足は母親の「もう一人」の希望を実現し、子どもを増やす

今よりもう一人子どもを持ちたい母親の割合

もう一人子どもを持ちたい人の割合

保育の受け皿充足による実現可能性

保育の受け皿充足により期待できる出生児数

保育施設を利用しやすくなることが「もう一人」の子どもを産み、育てることを考える上でプラスだと思うか

保育の受け皿が充足すれば、希望する子どもの数を持つことに前向きになれるとする母親が多い

保育の受け皿充足が実現した場合に期待できる出生率は1.8

保育の充足により期待できる合計特殊出生率= 1.78 ≒ 1.8=( 1ー 生涯未婚率)×夫婦完結出生児数×離死別等の影響=( 1ー 19.2% ) × × 0.98

もう一人子どもを持ちたい母親は少なくない

(出所)NRI「保育サービスに関するアンケート調査」 (2018年4月)

注1)「子どもは持たない」とする人は、出生動向基本調査(2010年)の結果と同比率と仮定注2)日本創生会議「ストップ少子化・地方元気戦略」の中で用いられている算出式を使用

現在の子どもの数(1人以上)

1人

2人

3人4人以上

N=3,688(現在の子どもの数別)

N=3,688

そう思う

2.25人

そう思わない

(注1)(注2)

2.25人

78.7%66.6%

33.4%

35.9%20.4%

15.1%

第二子の希望がある母親は8割 非就労の母親のみでも6割超がプラスと回答。

保育の受け皿充足が経済的理由の解決にも繋がると評価

※野村総合研究所による「保育サービスに関するアンケー

ト調査」(2018年4月)

12

国も企業も、子育てにも仕事にもチャレンジしたい女性を『レギュラー人材』として期待しない手はない

日本の中長期的課題解決のための調査・提言を行う未来創発センターにて、上級

コンサルタントを務める。「共働き世帯の消費やキャリア女性の実態」や「働く女性

の家事負担軽減」などの研究・分析を得意とする。主な著書に『東京・首都圏はこ

う変わる! 未来計画2020(日経ムック)』(日本経済新聞出版社)など(共著)。

国は、国力を維持・成長させるため

保育の受け皿の充足にコミットすべき

安倍政権は(2017年の所信表明演

説で)子育て世代への大胆な投資を宣言

しました。子育てと仕事の両立が可能な

環境整備は日本経済の維持・成長に貢献

します。大胆な投資のひとつとして「保

育の受け皿を確実に増やす」ことが有効

だと考えます。これまで、女性が子育て

をしながら働くことは苦行のように考え

られてきました。両立は確かに大変で、

決して楽なことではありませんが、「苦

行を乗り越えたその先に楽がある」とい

うような苦行前提の考え方をまずは変え

なくてはなりません。女性が、子育てに

も仕事にも前向きにチャレンジできる環

境を整備するために、まずは保育の受け

皿を増やしていかなければならないと考

えます。現に、出産後も働き続けたいと

考えている女性がたくさんいるのです。

保育の環境整備が安定的な経済基盤を

生み、出生率の向上にも寄与する

保育の受け皿の整備による効果は、女

性の労働力確保だけに留まりません。私

たちの調査では、経済成長、出生率の向

上、そして人口維持に繋がるという結果

が出ています。当社アンケート※によれ

ば、1人のお子さんを持つお母さんのう

ち、8割が2人目の出産を希望していま

す。また、3人のお子さんを持つお母さ

んのうち、4人目がほしいと答えた方は

2割もいらっしゃいました。さらに「保

育施設を利用しやすい環境があれば、も

う1人持ちたいという希望を考える上で

プラスになるか」と聞くと、6割以上の

人が「YES」と回答しています(左ペー

ジ図参照)。保育の受け皿の充足が、直

接もう1人の出生に繋がるかというと、

そうとは限りませんが、親の就労の実現

は安定的な経済基盤の獲得に繋がるた

め、もう1人を希望する上での不安解消

に一定の効果があるといえます。

2065年時点で1億45万人

人口ピラミッドのバランスが改善する

同じく、先述のアンケート結果をもと

に2030年の合計特殊出生率を簡易計

算したところ、1・78という結果が得ら

れました。偶然にも、日本政府が実現を

目指す「希望出生率1・8」という数値と

ほぼ等しくなったわけです。もし、出生

武田 佳奈 氏野村総合研究所 未来創発センター 上級コンサルタント

現在の日本社会では、出産育児による離職がまだまだ多く、

保育の受け皿を確保することが、女性の労働参加推進に繋

がると推測される。では、保育の受け皿を増やすための環

境整備として、実際、どのような点に配慮して、どのような

施策を行うべきなのだろうか。また、国や自治体だけでなく、

女性の労働参加のために企業が担えることはないのだろう

か。働く女性の意識に詳しい野村総合研究所の武田佳奈氏

に、女性の労働力を確保するために、国、そして企業が行

うべきことについてお話をうかがった。

を増やす働く女性

I nter v ie w

対策1

644万人

の不足対

策2

15

1980年 1982年 1984年 1986年 1988年 1990年 1992年 1994年 1996年 1998年

15~59 歳

60~69 歳

70 歳以上

2000年 2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年 2016年0.0

20.0

40.0

60.0

80.0(%)

%55.3

%78.6

%14.6

60代の半数は働いている

うち8割は働き続けたい

将来の働き手として、シニア

にも大きな期待が寄せられてい

る。「労働力調査」のデータをも

とに年代別の労働力人口比率を

見てみると、2017年時点で

は60代の人口のうち約半数(55・

3%)の人が働いていることが

分かる(図1)。さらに、内閣

府が行った意識調査では、全国

の60歳以上の男女で現在仕事を

している人に対して「何歳くら

いまで収入を伴う仕事をしたい

か」をたずねたところ、79・7%

が「70歳を超えても働き続けた

い」と回答している(図2)。「働

けるうちはいつまでも」と答え

た人も42%を占めた。多くのシ

ニアが既に働いている上、これ

からも「働き続けたい」と考えて

いるのだ。

このようにシニアが働くこ

とに対して高い意欲を示す背景

には、老後の備えや生活費への

不安といった経済的側面のほか、

日本のシニアの「若返り」が挙げ

られるだろう。2017年1月

に、日本老年学会と日本老年医

年代別にみた労働力人口比率の推移図 1

出所:総務省「労働力調査」をもとにパーソル総合研究所にて算出※参考資料 日本老年学会・日本老年医学会「高齢者の定義と区分に関する提言(2017)」

Part.2を増やす

シニアの働き手対策2

人手不足に対する4つの解決策

働く女性を増やす

対策1

14

保育サービス充実により

102万人労働力増加の可能性

保育所問題が解消された場

合、どの程度働く女性が増える

のだろうか。我々は25歳~49歳

の間に現れるM字カーブの要因

を保育事情のみと仮定して、そ

の人数を試算した(図4)。も

ちろん働けない理由は、育児だ

けではなく介護や家庭の事情な

ど、様々な要因があるため「保

育サービスを充実させるだけ

で、女性の働き手が増える」と

は断定できないが、今回は議論

をシンプルにするために、前述

の仮定のみとした。この仮定下

では育児問題が解消され、25歳

~29歳時の労働力率(88・0%)

が49歳まで維持された場合、創

出される新たな労働力人口は

102万人となる。

次に、この102万人の労

働力創出のために、追加でどの

程度の保育の受け皿が必要かを

検討してみよう(図5)。まず、

2030年における小学校入学

前の未就学児童は486・7万

人の見込みであり、その児童

(ここでは兄弟姉妹は考慮しな

い)の母親である女性の就業率

を88・0%に引き上げるとなる

と、428・3万人分の保育が

必要となる。このうち、共働き

でも祖父母のサポートなどによ

り保育サービスが不要な人も若

干数存在するため、その人数を

減じた約390万人分の保育

サービスが必要という結果とな

る。2017年4月時点におけ

る保育の受け皿は約274万人

分であるため、2030年まで

に追加すべき保育の受け皿は

116万人分。この116万人

分を保育支援できるようにすれ

ば、少なくとも102万人の女

性が、出産後に子供を預けられ

ないことが理由で働き続けられ

ないという問題は解消される。

働きたいけれども働くことが

できなかった女性たちがひとり

でも多く労働市場で活躍できる

ように、一日も早い子育て環境

の整備に期待したい。

2030年の女性の労働力率と期待される働く女性の増加人数

保育所等定員数の実績と予測図5

図4

15~19歳

0

10

20

30

40

50

16.8

75.0

88.089.6

62.6

40.7

20.6

89.4

60

70

80

90

100

20~24歳

25~29歳

30~34歳

35~39歳

40~44歳

45~49歳

50~54歳

55~59歳

60~64歳

65~69歳

70歳以上

(%)

102万人102万人

2012年2011年2010年0.0

400

300

200

100

2014年2013年 2016年2015年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年

(万人)

万人

%万人

390

274

万人

万人

216

予測実績

58万人分増加

486.7 万人 88.0% 9.0%

2030年未就学児童数

2030 年子育てをしている女性の就業率

共働きでも保育サービスの利用を希望しない児童の割合 1-

116 万人分増やす必要がある116 万人分増やす必要がある

※1 ※2 ※3

※4

※1 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」より※2 図4の推計より。失業率が1%を切っているため、労働力率=就業率として扱っている※3 2017年1~ 2月に野村総合研究所が実施したアンケート結果より※4 「野村総合研究所 第253回NRIメディアフォーラム」資料中の計算式を用いてパーソル総合研

究所にて試算

出所:【図5の2017年までの数値】厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(2017)」

17

15~19 歳

20~24 歳

30~34 歳

40~44 歳

50~54 歳

60~64 歳

25~29 歳

35~39 歳

45~49 歳

55~59 歳

65~69 歳

70 歳以上

17.3

69.3

94.196.8 96.7

93.1

80.980.9

74.8

24.9

40

80

70

60

50

10

30

20

90

100(%) 22

万人

15~19 歳

20~24 歳

30~34 歳

40~44 歳

50~54 歳

60~64 歳

25~29 歳

35~39 歳

45~49 歳

55~59 歳

65~69 歳

70 歳以上

16.8

75.0

88.0

73.3

85.889.6

70.0

62.6

40.7

70.0

20.6

(%)

40

80

70

60

50

10

30

20

90

100 141万人

るシニアが多いのではないだろ

うか。シニアの労働参加を促す

ためには、希望する年齢まで働

けるように定年制を廃止するほ

か、働く時間や場所などの条件・

環境の整備も必要になるだろう。

条件や環境が整えば

163万人のシニアの活躍が

期待できる

では、このようなシニアの働

きやすい環境が整い、希望する

年齢まで長く働き続けられるよ

うになった場合、シニアの労働

力率にどのような変化が表れる

かを試算してみよう。

シニア層については男女に

よって労働参加の状況が大きく

異なるため、男女別で見ていく。

まず男性については、既に労働

市場で活躍している割合が高く、

2030年時点においても59歳

までは9割以上の人が働いてい

ると予測される。そのため、男

性については労働参加率が74・

8%まで減少する65~69歳に

注目し、64歳時点での労働力

率80・9%が変わらず69歳まで

2030年の男性の労働力率と、増加が期待される働く男性シニアの人数

2030年の女性の労働力率と、増加が期待される働く女性シニアの人数

続くと仮定した場合で試算した。

すると、2030年には、さら

に22万人が働き手として活躍で

きると予測される(図4)

一方、女性の場合は、そもそ

も現状60歳以上で働いている人

が少ない。2030年時点の労

働力率を推計しても、60~64歳

で62・6%、65~69歳では40・

7%と半分にも満たない状況で

ある。そこで、この60歳から

69歳までの女性のうち、せめて

7割までの人が働くようになる

と仮定して試算した。その結果、

新たに141万人の労働市場に

おける活躍が予測される(図5)。

女性のシニアについては現在ま

だ多くの人が働いていないため、

男性以上に新たな労働力創出の

余地が大きい。

このように、シニアの就労

促進により、男女合わせて

163万人が労働市場で活躍す

る可能性が見込まれる。高齢化

が進む中、年齢の制限なくシニ

アが活躍し続けられる社会の実

現は、活力ある未来実現への一

歩に繋がるのではないだろうか。

図4

図5

シニアの働き手を増やす

対策2

16

仕事をしたいと思いながら仕事に就けなかった主な理由

無回答その他起業・開業の準備中であった

請負や内職の仕事の注文がこなかった

家族の事情(家事など)

家族の健康上の理由(介護等)

自身の健康上の理由

適当な仕事が見つからなかった

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0(%)

%26.0

%36.2%32.7

%15.9

%9.5

%1.5 %0.6 %0.6%3.0

仕事をしたいと思っている人

%71.9

仕事をしたいと思わなかった人

無回答 2.1%

学会で構成されるワーキンググ

ループが行なった発表によると、

10~20年前に比べ、高齢者の身

体的機能が5~10歳若返ってい

るほか、65歳以上の人でも心身

の健康を保ち、活発な社会活動

ができる人が大多数を占めると

いう。さらに同発表では、これ

らの結果に基づき、それまで65

歳以上としてきた「高齢者」の定

義を75歳以上に見直すとしてい

る。定義見直しの意義として「従

来高齢者とされていた年齢層の

人々を、社会の支え手であり、

モチベーションを持った存在と

捉えなおすこと」が掲げられて

おり、ここでも働き手としての

シニアの活躍に対する期待がう

かがえる。

働きたいが働けない人も存在

条件・環境の整備が必要

このように、シニア自身の労

働参加や労働意欲が高まってい

と回答し、「普通勤務(フルタイ

ム勤務)で会社などに雇われた

い(19・3%)」を大きく上回る

結果となった。過去に比べ、現

代のシニアが若返っているとは

いえ、体力的にも、また働く目

的や価値観においても、若い頃

と同じようには働けない。健康

に配慮しながら、また家事や介

護などと両立させながら、もし

くは余暇を楽しみながらなど、

無理のない範囲で自身の事情に

合わせた働き方ができるのであ

れば、長く働き続けたいと考え

る一方で、働きたいが働くこと

ができないシニアが存在するの

も事実だ。労働政策研究・研修

機構が行った調査によると、60

代で仕事に就いていない人のう

ち、26・0%が就業を希望して

いる。彼らが働きたくても働く

ことができない最も多くの理由

は、「適当な仕事が見つからな

かった(36・2%)」ためである

(図3)。さらに「適当な仕事が

見つからなかった」と回答した

人を対象に理由を紐解くと、「条

件にこだわらないが、仕事がな

い」が

37・6%、「職種が希望と

合わなかった」が

30・1%と高

く、次いで「労働時間が希望と

合わなかった(16・1%)」となっ

ている。特に「労働時間が希望

に合わなかった」という回答は

女性に多い傾向も見られた。長

年の経験やスキルを活かせる職

種がない、家事や介護と両立で

きる勤務条件がないといった課

題を感じていることがうかがえ

る。な

お「適当な仕事がない」と回

答した人に希望する働き方を聞

くと、50・1%の人が「短時間

勤務で会社などに雇われたい」

図2

60~69歳の不就業者の内訳図3

あなたは何歳くらいまで収入を伴う仕事をしたいか

出所:内閣府「高齢者の日常生活に関する意識調査(2014)」

出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「60代の雇用・生活調査(2015)」

%21.9

70歳くらいまで

%13.5

65歳くらいまで

%11.4

%79.7

75歳くらいまで

%4.4

%1.8

80歳くらいまで

仕事をしたいとは思わない

その他

%42.0

働けるうちはいつまでも

シニアの働き手を増やす

対策2

19

主として地元の民間事業者がシニアを雇

用し、給料を支払うようにしました。

セカンドライフは、体力や自由になる

時間、ライフスタイル、経済状況などが

個人によってかなり異なります。そのた

め、住居に近い場所に仕事を作るほか、

業務内容や働く時間、働く場所を自由に

選べるように、ワークシェアリングやテ

レワーク、モザイク就労など、各人が自

分のセカンドライフに合った働き方がで

きるよう柔軟な働き方の開発も進めてい

ます。就労セミナーにて「人生100年

時代に突入しました。これまでまった

くやったことがないことに挑戦しません

か」と訴えかけ、セカンドライフの就労

を勧めました。

社会実験の結果、新たな就労を始めた

個人から、「体と頭の機能維持」「健康増

進」「生きがい・自己実現」といった分野

で効果が現れ始めています。地域社会に

おいては、「地域の労働力拡大」「消費拡

大」「社会的孤立問題の改善」といった効

果も得られました。

例えば、保育園の早朝保育に従事する、

ある無精髭のおじいさんは就労後、自分

に親しんでくれる子どもたちのために、

髭を剃り、鮮やかな色のシャツを着るな

ど身だしなみを整えるようになったこと

で見違えるほど若返りました。

また、特に就労経験のある男性の中

には、セカンドステップに進む方もいま

す。学習塾のニーズに応える形で、ロン

ドンやニューヨークで働いた経験を持つ

方が、子どもたちに英語を使ったビジネ

スについて教えたり、ロボットを作って

いた方がレゴを使ってロボット作りの教

室を開いたり、天文台で働いていた方が、

宇宙や地球の視点から環境に関する授業

をしたり、仲間とともに起業した方もい

らっしゃいます。まずは一歩、家の外へ

出ること。その一歩が非常に重要であり、

後押しをするきっかけが必要です。一歩

踏み出すことさえできれば、仕事仲間が

でき、まちの課題に気づき、自分の経験

やスキルを活かす道が見えてきます。

生涯現役で社会に貢献できると

心も体もハッピーでいられる

次世代のシニア(50〜64歳)が定年後に

やりたいことは何でしょうか。1位は「働

くこと」2位は「学ぶこと」です。また、

高齢者の就業率と医療費には、ゆるやか

な相関関係があるといわれています。働

くことと健康には、何かしらの関係があ

ります。我々の社会実験の結果からも「シ

ニアが外に出て働くと良いことがある」

と証明できたと思います。柏市のモデル

は、全国の自治体へ設置する法案として

国会で成立し、現在50の自治体で導入さ

れ、さらに全国で「生涯現役社会」の実現

を目指します。

「生涯現役でいる」ことは、健康寿命だ

けでなく、貢献寿命を延ばすことです。

健康に生きるだけではなく、社会の一員

として、社会と関わりながら、社会に貢

献し続ける。それが、心にも体にもハッ

ピーなことです。隣近所の助け合いや村・

自治体の取り組みに参加するなど、日本

人には「人の役に立ちたい」という考えが

深く根付いています。高齢になっても貢

献したいと思い続けること自体、日本の

宝です。それをうまく形に変えられるよ

うに、国や自治体、企業を含め社会全体

が努力すべきだと思います。

自立度の変化パターン ~全国高齢者の追跡調査~

男性

女性

63-65

12.1%

87.9%

66-68 69-71 72-74 75-77 78-80 81-83 84-86

自立

(年齢)

死亡63-65

レベル3

レベル2

レベル1

レベル0

レベル3

レベル2

レベル1

レベル0

19.0%70.1%

10.9%

66-68 69-71 72-74 75-77 78-80 81-83 84-86 87-89

(年齢)87-89

手段的日常生活動作に援助が必要

基本的&手段的日常生活動作に援助が必要

自立

死亡

手段的日常生活動作に援助が必要

基本的&手段的日常生活動作に援助が必要

出典:秋山弘子 長寿時代の科学と社会の構想『科学』岩波書店、2010

18

「生涯現役で社会に貢献し続けたい」そう考えるシニアは日本の宝だ

65歳を過ぎても働き続けたいと考えるシニアが増えてい

る。しかし一方で、シニアが意欲的に働き続けられる環境

整備は進んでいないのが現状だ。シニアにとっては、退職

後、新たな職に就くことは大きな壁であるという声も耳にす

る。国や自治体、そして企業は、働く意欲のあるシニアの

ためにどのような環境を提供すべきなのだろうか。加齢に

伴うあらゆる変化と、そこに生じる課題の解決に向けて学

際的に研究するジェロントロジー(老年学)の専門家である

東京大学の秋山弘子教授に、シニアが生き生きと働く社会

の実現についてお話をうかがった。

米・国立老化研究機構フェロー、ミシガン大学社会科学総合研究所研究教授、東

京大学大学院人文社会系研究科教授(社会心理学)などを経て、2006年から現職。

ジェロントロジー(老年学)を専門に、30年にわたる高齢者の追跡調査を行うほか、

生涯現役社会の実現に向けたまちづくりにも取り組む。

自立期間の延長に就労は有効か

30年にわたる追跡調査

言わずもがなですが、日本の高齢化

は突然始まったわけではありません。以

前から誰の目にも明らかでした。にも関

わらず、病気などにかかっていない、ご

く普通の生活者がどのように高齢化して

いくのかというデータはありませんでし

た。そこで、1987年から生活者の変

化に関する追跡調査を始めました。3年

ごとに、同じ人に、同じ質問を繰り返し、

2017年までに9回の調査を実施しま

した。質問は、①健康、②経済(資産、

収入)、③人間関係(家族、近隣、友人)

の3領域から構成されています。

30年にわたる調査を通して、生活者の

自立度の変化をまとめたものが左上図で

す。自立のレベルについて、死亡を指す

[0]から、トイレや食事などの基本的日

常生活および、電車やバスを使って移動

するなど手段的日常生活の両方において

援助が必要なレベルを[1]、手段的日

常生活においてのみ援助が必要なレベル

を[2]、そして援助が不要な自立状態を

[3]とし、変化のパターンを見ています。

分析の結果、男性は3種類、女性は2種

類の自立度変化パターンが見られ、大抵

の日本人は70代半ばまでは元気に自立し

た生活を送ることができていると分かり

ました。しかし、男性では70・1%が75

~77歳を境に、女性(87・9%)は少し早

くて72~74歳を境に自立度を失っていく

ことも明らかになりました。左上図でい

う赤い線です。できればあと5年、80歳

くらいまで自立期間を延長したい。その

ためには、弱っても住み慣れたまちで安

心して快適に日常生活を送ることができ

るように生活環境を整備すること、人と

人との繋がりを作ることが重要であると

考え、次のような社会実験を通した研究

を続けてきました。

セカンドライフの就労

その効果を社会実験で検証

社会実験では、住み慣れたまちで日常

生活を送ることができるよう、在宅医療

や訪問介護など医療面の体制を整えたほ

か、長寿社会のニーズに即した住居や移

動手段を開発しています。また、実験は

千葉県柏市と福井県福井市で開始しまし

たが、典型的なベッドタウンである柏市

では、退職したシニアは「行く場所がな

い、することがない、話す人がいない」

という「3ない状況」に陥っていました。

そこで、地域に就労の場を多数設置し、

秋山 弘子 氏東京大学 高齢社会総合研究機構 特任教授

シニアの働き手 を増やす

I nter v ie w

対策2

21

2017 年

予測実績

178

+50

万人

万人

+81万人

209万人

128万人

2025 年

2030 年

2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年

200

250

150

100

50

0

(万人)

2018年6月の経済財政運営の基本方針(2025年までに新たな在留資格の創設で50万人超の就業を目指す)をもとに、既存在留資格での外国人就労者は横ばいという前提で試算

2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年

中国

シンガポール

韓国香港

32.834.1 35.4

37.2

39.9 日本

フィリピン

ベトナム

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0(%)

41.3%

38.1%37.5%

36.9%

30.1%

22.8%

12.1%

れば、最長5年間の滞在が認め

られる。しかし家族帯同は認め

られない。2号は、1号よりも

さらに高度な試験に合格すれば、

新たな在留資格を与えられ、更

新も可能となる。配偶者と子の

帯同が許可される。

受け入れペースを維持すると

2030年までに81万人増加

政府は「経済財政運営と改

革の基本方針2018」におい

て、この新たな在留資格創設

により2025年までに*50万

人超の外国人の就業を目指す。

我々は、こうした政府の目指す

外国人労働者の増加ペースが

2030年まで維持された場合

の外国人労働者数を試算した

(図2)。その結果、2030年

には、2017年における外国

人労働者よりも81万人増加する

と予測される。

しかし、在留資格創設によっ

て受け入れを拡大しても、外国

の人々が働く先として日本を選

んでくれなければ目標通りには

増えない。懸念となるのが、ア

ジア圏内における労働力獲得競

争の激化だ。少子高齢化は、日

本だけでなくアジア各国でも進

み、労働力不足が叫ばれつつあ

る。韓国や香港、シンガポール、

中国は特に急速な高齢化が見込

まれている(図3)。また、こう

した高齢化の進む国々の多くで

は、経済成長も著しい。現在の

日本では、中国やベトナム、ネ

パールからの労働者が増加して

いるが、働く場として魅力的で

なければ、今後、日本を選ぶ外

国人は増えないだろう。労働環

境や労働条件、住環境を向上さ

せ、働く場としての魅力を磨く

継続的努力を惜しまないことが

重要である。

外国人労働者数の推移

アジアの60歳以上人口割合推移図3

図2

出所:国際連合(UN) World Population Prospects「Population by Age Groups - Both Sexes」

*推計後の2018年11月に政府が提示した外国人労働者受け入れ見込み数では、2019年度から5年間で最大約35万人を目指すとしている。

外国人の働き手を増やす

対策3

644万人の不足対

策3

20

過去5年間で60万人

増加した外国人労働者

外国人の労働者は年々増加し

ている。2012年から2017

年の5年間で増加した国内の雇

用者306万人のうち、その2

割は外国人労働者である。留学

生のアルバイトなどを指す「資格

外活動」や「技能実習生」の増加

が背景にある(図1)

2018年6月、政府は「経

済財政運営と改革の基本方針

2018」において、外国人材を

受け入れるための新たな仕組み

を構築する方針を発表。同年12

月には、出入国管理及び難民認

定法と法務省設置法の一部を改

正する法律案が成立した。

改正案では、相当程度の知識・

経験を要する業務に就く「特定

技能1号」と、熟練した技能が

必要な業務に就く「特定技能2

号」という2つの在留資格を新

設する。1号は、人手不足が顕

著である農業、建設、宿泊、介

護など14業種を対象に、最長5

年の技能実習を修了するか、技

能試験と日本語試験に合格す

技能移転を通じた開発途上国への国際協力が目的。

<外国人労働者の内訳>

①専門的・技術的分野

不明※①~⑤の千人未満切り捨て

⑤身分に基づき在留する者

11.4 万人 ②

1.9 万人

12.3 万人

18.8 万人

15.0 万人

身分に基づく在留資格

特定活動

技能実習

専門的・技術的分野の在留資格

資格外活動

37人

③技能実習

②特定活動

④資格外活動(留学生のアルバイト等)

過去5年間(2012 年→2017 年)における

雇用者全体の増加306万人

うち外国人労働者59.6万人

300

200

100

30

60

0

400(万人)

(万人)

外国人労働者

一部の在留資格については、上陸許可の基準を「我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情」を勘案して定めることとされている。

EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者、ワーキングホリデー、外国人建設就労者、外国人造船就労者等

「定住者」(主に日系人)、「日本人の配偶者等」、「永住者」(永住を認められた者)等これらの在留資格は在留中の活動に制限がないため、様々な分野で報酬を受ける活動が可能。

本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内(1週28時間以内等)で報酬を受ける活動が許可。

外国人労働者数の増加状況とその内訳

を増やす外国人の働き手対策3

図 1

出所:内閣府「平成30年第2回経済財政諮問会議 資料『外国人労働力について』」

Part.3人手不足に対する4つの解決策

23

辺の外国人在住者が多い都市に呼びかけ

「外国人集住都市会議」というものを設立

しました。「ニューカマー」と呼ばれる南

米日系人が数多く居住する自治体の関係

者が集まり、多文化共生の課題について

考える会議です。情報交換を通じて、制

度改革などを国に提言するところから着

手し始めたと聞いています。2007年

に私は市長に就任したのですが、それよ

りもずっと前から浜松市は30年かけて体

制を強化してきました。

最も注力したのは

日本語教育と不就学児ゼロ対策

外国人を受け入れる中で最も大きな問

題となったのは、言葉の壁でした。ゴミ

出し、社会保障制度、税金など、日本語が

分からないと生活全般に問題が生じるの

です。まずは日本語を勉強する環境を整

える必要があると考え、浜松市は独自に

支援を開始しました。バイリンガルの支援

員を公立学校へ派遣し、学習支援や就学

サポートを行うほか、「外国人学習支援セ

ンター」を設置。日本語教室や多文化体

験スクールなど、子どもから大人までを

対象に総合的な学びを支援しています。

また、外国人の子どもの不就学も大き

な問題でした。日本人の子どもは教育を

受ける義務がありますが、外国人の子ど

もたちには教育を受ける権利はあるもの

の義務はありません。そのため、不就学

に陥っている外国人の子どもが多く存在

したのです。放置しておけば、将来的に

就労が困難になったり、ひいては犯罪に

繋がりかねない重大な問題ですから「不

就学ゼロ作戦」を立ち上げ、支援を始め

ました。外国人を市民として受け入れ共

生を目指すためには、教育制度を充実さ

せることは不可欠です。不就学の理由は

親の金銭的な問題をはじめ様々ありまし

たが、理由の中に「単に制度を知らなかっ

た」というケースも多く見受けられまし

た。税金の滞納も同様の理由で生じるこ

とが多いのですが、そもそも育った国が

違えば当然、社会保障や教育の仕組みは

異なります。まずは、日本の制度や仕組

みをどの国籍の市民にも確実に伝わるよ

うに周知していくことが大事だと考えて

います。

やる気のある外国人に

どんどん仕事を任せるべき

外国人を受け入れる上で、企業に注力

していただきたいことは、外国人だから

といって待遇や処遇に差をつけたりしな

いことです。今回の「出入国管理及び難

民認定法及び法務省設置法の一部を改正

する法律」では、「特定技能1号」と「特定

技能2号」という2つの在留資格が創設

されますが、私は1号からより熟練した

技能を必要とする2号へスライドする人

が増えると見込んでいます。なぜなら、

企業で受け入れて育成をすれば、必ずや

る気があり優秀だと見込める人材が現わ

れます。人手不足の中、そのような人材

に、帰国せずに引き続き日本で活躍して

もらうことは重要なことです。そのため

にも企業には、日本人と変わらない待遇

で外国人労働者を受け入れていただきた

いのです。当初は、製造業における外国

人の受け入れが多かった浜松市ですが、

近年は、医療福祉の事業者が積極的に外

国人の受け入れを始めるなど、製造業以

外の産業へも活躍の機会が広がってきて

います。

外国人の能力と多様性を

都市の発展に生かす

今後は「外国人の能力や多様性を都市

の活力・発展・創造に生かしたい」と考

えています。浜松市では、外国人の受け

入れの基盤はある程度整いましたので、

次のフェーズとして、ポジティブな考え

のもと、その多様性をまちづくりに生か

していきたいのです。

ここに至るまでには、市民の意識と理

解に大きく支えられてきたところがあり

ます。外国人の方が孤立しないよう、地

域のお祭りに外国人の方をうまく巻き込

みながら一緒に開催するなど、市民の

方々が様々な努力を重ねています。自治

体の手が行き届かないところでは、ボラ

ンティアや市民団体のお力添えをいただ

いています。浜松市にはスズキ株式会社

やヤマハ株式会社といった世界的企業が

あり、海外駐在を経験された方の奥様な

ども海外経験を活かしてボランティアと

して活躍されています。

外国人の方を受け入れ始めて30年、浜

松市では、当初来日した日系人の第二世

代、第三世代が育ってきています。10歳で

ブラジルから移住してきた子どもが、日本

語、ポルトガル語、英語の語学力を武器に、

一流企業で貿易関係の仕事をして活躍し

ている。そんな話も耳にするようになり

ました。語学力が高い人材、多文化への

理解がある人材は、企業にとっても社会

にとっても、強力な人材です。これから

先も外国人の方の能力発揮に期待しつつ、

多様性を生かした都市として、さらなる

発展を目指していきたいと思います。

22

外国人の能力と多様性を企業と都市の発展に生かす

外国人労働者の受け入れにおいて、日本は今、大きな転換

期を迎えている。深刻な人手不足を背景に、政府は外国人

労働者の大幅な受け入れ拡大に舵を切ったのだ。国や自治

体、企業は外国人労働者をどのように受け入れていくべき

なのか。1990年改正入管法の施行を受けて外国人住民が

増加、現在2万人もの外国人が暮らす静岡県浜松市。国際

化が進む浜松市の自治体としての取り組みは、企業にとっ

ても参考になるのではないだろうか。そこで、浜松市の取

り組みについて市長の鈴木康友氏にうかがった。

慶應義塾大学法学部卒業後、企画会社、コンサルティング会社の経営者を経て、

2000年、衆議院議員に初当選。2期務める。2011年より現職。ブラジル国籍者

が数多く居住していることから、ブラジル大統領に直訴し、浜松市にブラジル総

領事館を誘致するなど手腕を振るう。

鈴木 康友氏浜松市 市長

労働者ではなく市民として

共生を目指す

浜松市の在留外国人数は、2018

年4月1日現在で2万3145人であり、

総人口80万4989人の2・88%を占

めます。ブラジル国籍者が日本全国の都

市の中で最も多いほか、近年では、フィ

リピンやベトナムといったアジアからの

外国人住民も多数居住し、多国籍化が進

んでいます。そして、浜松市の外国人の

80%超が長期で滞在する在留資格を所持

しており、定住が着実に進んでいます。

定住化が進展している大きな理由は、

「多文化共生」を全面に打ち出し、サポー

ト体制を整えているからでしょう。そも

そも日本では、既に短期滞在者ではない

多数の外国人労働者が働いています。し

かし、国は「デカセギ」という単なる無機

質な労働力としてしか認識してこなかっ

た。そこに、大きな誤りがあったと思い

ます。

私たちは、外国人をひとりの市民とし

て迎え、共生を目指しています。外国人

が増えるとなると「日本人の雇用を奪う」

とか「治安が悪化する」といった紋切り型

の批判が起こりますが、浜松市に暮らす

外国人の方々は一般の市民と何ら変わり

ません。浜松市の犯罪認知件数は、政令

都市の中で最も低いレベルです。共生が

うまくいけば何も特別な問題など生じま

せん。

なぜ浜松市に

外国人市民が増えたのか

浜松市に外国人市民が増えたひとつの

理由は、1990年の「出入国管理及び

難民認定法」の改正です。日系二世・三

世及び、その家族に対して就労可能な

在留資格が認められるようになったこと

で、ものづくりが盛んな都市を中心に日

系外国人の労働者が急増しました。自動

車産業をはじめ、東海地域屈指の工業都

市である浜松市にも、このとき日系ブ

ラジル人が大勢来日したのです。当時の

浜松市には、外国人を受け入れる体制は

まったくありませんでした。

そこで、2001年に、浜松市が周

38.9%ブラジル

15.9%フィリピン10.8%

中国

9.3%ベトナム

7.4%ペルー

韓国 5.1%

インドネシア4.0%

その他 8.5%

浜松市在住の国籍別

外国人割合平成30年4月1日現在

外国人の働き手 を増やす対策3

I nter v ie w

25

5%0% 10% 15%

韓国エストニア

フィンランドベルギー

日本ポーランド

スウェーデンアイルランドデンマークフランス

米国すべての国

カナダイタリアオランダチェコ

ノルウェー英国

スロバキアスペインドイツ

オーストリア

7%

で必要な働き手を減らす生産性向上によって

298万人分の需要を削減する

今回の推計では、2030年の

労働力需要は7073万人であっ

た。この需要のうち、298万人

分の需要を削減したい場合、単

純計算で最低でも4%、生産性を

向上させる必要がある。

生産性を向上させる策のひと

つに、AIやRPA(ロボット

による業務自動化)などを活用

した自動化が挙げられる。もち

ろん生産性を向上させるものは

自動化だけを指すわけではない

が、労働需要を下げる一因にな

ることは間違いない。

OECDが2016年に発表

した推計結果によれば、自動

化可能性がタスクの70%を超

える仕事に就く労働者の割合

は、日本において7%に上る

(図1)。自動化が2030年ま

で十分進めば最低でも4・9%

(70%×7%)の工数が削減で

き、298万人分の労働需要を

カバーできると予測される。自

動化は需要削減のための策とし

て、大いに進展が期待される。

自動化可能性が高い仕事に就く労働者の割合(OECD諸国)図 1

644万人

の不足対

策4

生産性向上対策4

出所:OECD 「The Risk of Automation for Jobs in OECD Countries (2016)」

Part.4人手不足に対する4つの解決策

24

人手不足数

万人644

万人102

万人163

万人298

万人81

対策 1働く女性を増やす

対策 2働くシニアを増やす

対策 3働く外国人を増やす

対策 4生産性を上げる

万人346

346万人の人手不足を解消できる

まだ298万人分の人手が足りない

ここまで労働供給を増やす策について見てきた。対策①で女性の働き手を102万人、対策②でシニアの働き手を163万人、対策③で外国人の働き手を81万人、計346万人の働き手の確保が見込めることが分かった。しかし、2030年に不足する人手は、644万人。まだ、298万人足りない。

この不足分を補うには、生産性の向上によって労働需要自体を下げるしか方法は考えられない。今回の推計では、現在のテクノロジー進化のトレンドが続いた場合の生産性向上は考慮しているが、そのような成り行きの進化にとどまらず、4つ目の対策として非連続的な生産性向上が必要とされるのではないだろうか。

外国人の働き手 を増やす

シニアの働き手 を増やす

働く女性 を増やす

しかし

3つの対策で

対策1

対策2

対策3

27

い産業が生まれて減少分がカバーされる

ので雇用の総数は大きく変わらない、と

いうのがおおよその結論です。ただし雇

用の構造は大きく変わっていきそうです。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の

デイビッド・オーターは米国で10年おき

に職業をスキルの高低順に並べ、それぞ

れのスキル水準で雇用がどのくらい増減

したかプロットしました(右ページ下図

参照)。この図を見ると中スキルの職業

が40年にわたって減少する一方、低スキ

ルと高スキルの雇用者が増加しています。

しかも低スキルの雇用者数の増加が加速

していますが、高スキルの雇用者数の増

加は減速しています。

また、雇用が失われる境界は年々高ス

キル側に移っています。要するに、技術

革新の進展につれて情報化投資が行われ、

失われる雇用が中スキルから高スキル側

へとシフトしているのです。

減少した中スキルの人々の一部は高

スキルに移行したかもしれませんが、大

部分は低スキルに移行したと考えられま

す。米国で起こっている経済格差の原因

は、この現象によるものであると、経済

学ではほぼ断定されています。トランプ

政権が、米国での経済格差は、移民の流

入と中国からの安価な輸入にあると主張

していますが、あれは政治的なプロパガ

ンダでしょう。

なぜ米国では情報化投資が進み

日本では進まないのか

機械に置き換えられる仕事はルーティ

ン業務です。どんなに難しい仕事でもロ

ジックに基づいているので、プログラム

化できるからです。例えば昔、経理の仕

事ではそろばんが用いられていましたが、

電卓が登場するとそろばん時代には10人

必要だった仕事が8~9人で済むように

なり、さらに経理ソフトが出てくると、

もっと少ない人数で業務ができるように

なりました。さらに最近、RPA(R

obotic Process A

utomation

)が登場して入力業

務さえも機械に置き換わるようになり、必

要な人数はますます減っていくでしょう。

一方、AIやIoTを活用した自動化

が進んでいくのに合わせ、IT高スキル

人材の必要性は高まっていきます。この

ため、米国ではルーティン業務に従事す

る人が減るのと並行して高スキル人材

の採用や養成に力を入れていますが、対

照的に日本ではあまり大きな変化がなく、

特に高スキル人材の養成は行われていま

せん。

この違いはなぜ生まれるのか。様々な

アンケートから明らかですが、米国と比

べ、日本の経営者は情報化投資に対し非

常に消極的です。日本の情報化投資はコ

スト削減が主で、守りの投資ゆえにあま

り利益が出ないからです。逆に米国の情

報化投資は新しいビジネスモデルをつく

り、売上・利益を増やす攻めの投資が多

い点が日本と大きく異なります。

また、日本の経営者は日本型雇用の

枠組みの中で出世した調整に長けたタイ

プが多く、AIやIoTなどに対しては

さほど感度の高くない人が多い。さらに、

他国と比べ、日本の労働市場には正規雇

用者よりもかなり安価な賃金で働いてく

れる非正規雇用者が大勢います。米国と

比べ日本は情報化投資の費用が高いの

で、ルーティン業務を機械化するよりも

非正規雇用者にやってもらったほうが安

く済むと考えられているのかもしれませ

ん。しかし、情報化投資のコストがさら

に安くなると、米国と同様にそうした雇

用はいずれ機械に代替されて非正規雇用

が減り、経済格差が拡大する恐れがある

といえます。

企業は高スキル人材の育成に投資し

生産性を高めよ

機械化により雇用の構造が大きく変貌

する時代を迎え、働く人が生き残るには

雇用が増える領域に移行しなければなり

ません。

また、これから必要とされるスキルは

機械にはできない、人間にしかできない

ことです。組織のリーダーや対人コミュ

ニケーション、前例踏襲ではない新しい

仕事を生み出す能力やデータ分析といっ

た機械を使いこなす能力、それからAI

をバージョンアップさせていく、AIよ

り優秀な頭脳です。

こうした人材の育成には個人の努力は

もちろん、企業や国の積極的な取り組み

が不可欠ですが、この点で日本は米国や

ドイツに比べ非常に遅れています。特に

企業においては、米国では研修費をかけ

て高スキル人材を養成し生産性を向上さ

せたのに対し、日本では賃金の安い非正

規雇用者を大量に雇い社員にかける投資

を減らしてきました。巨額の利益余剰を

溜め込むばかりで情報化投資や人材投資

を怠り、生産性を落としてしまっては何

のための経営者か、と言われても仕方が

ありません。

かつて、「ジャパン・アズ・ナンバー

ワン」と言われた時代、日本の経営者は

「人を大切にするのが日本型経営だ」と米

国の経営者に主張し、留学や研修など社

員の教育に力を注いでいました。第4次

産業革命の今、企業は人材育成に投資す

べき時がきているのではないでしょうか。

※1 "The Future of Employment : How Susceptible are jobs to computerization?" Carl Benedict Frey and Michael A. Osborne, Oxford University (2013年9月)

26

AI、IoTで労働者の総数はほとんど変わらないが雇用の二極化と経済格差が拡大する

AIやIoTにあなたの仕事は奪われるかもしれない。そんな

「10年後になくなる仕事」というテーマがメディアを騒がせ

るようになって久しい。世界中で研究が進んだ現在、議論

に火をつけた論文は過大推計であると評される一方で、AI

やIoTの発展は雇用構造に大きな変化を引き起こし、雇用

の二極化と経済格差を拡大させる可能性が指摘されている。

労働の機械化をめぐる最先端の研究動向について、経済産

業研究所 上席研究員(特任)/日本生産性本部上席研究員

の岩本晃一氏にお話をうかがった。

1981年京都大学卒、1983年京都大学大学院(電子)修了後、通商産業省入省(行

政Ⅰ種)。在上海日本国総領事館領事、産業技術総合研究所つくばセンター次長、

内閣官房参事官、経済産業研究所上席研究員等を経て、2018年4月から現職。著

書に『AIと日本の雇用』(日本経済新聞出版社)などがある。

機械に置き換わる雇用者数は1割程度

ただし、雇用構造は大きく変化

2013年にフレイ&オズボーンが

「米国において10~20年内に労働人口の

47%が機械に代替されるリスクは70%以

上」との推計結果※1を発表して以来、世

界中で「雇用の未来」に関する研究がブー

ムになり、多くの研究成果が発表される

ようになりました。

研究が進んだ結果、この推計は雇用の

未来に関する研究ブームの火付け役と

なった点は高く評価されるものの、推計

自体は過大推計であり、研究者の世界

的なコンセンサスとしては「機械に置き

換わるのは1割程度」に落ち着きました。

機械で置き換わる仕事がある反面、新し

岩本 晃一 氏経済産業研究所 上席研究員(特任)日本生産性本部 上席研究員

米国:スキル度別職業に見た10年ごとの雇用割合の変化

低レベル増加

高レベル増加

中レベル減少

雇用が失われる境界→より高スキル者へ移動

0

–.1

.1

0

20 40 60 80 100

Skill percentile (ranked by occupation s 1979 mean log wage) Autor (2015) ※2

100

C

hang

e in

Empl

oym

ent S

hare

1979-1989年 1989-1999年 1999-2007年 2007-2012年

出典:1980, 1990, and 2000 Census Integrated Public Use Microdata Series (IPUMS)よりAutor(2015)が作成※2  Why Are There Still So Many Jobs? The History and Future of Workplace Automation;David H. Autor

生産性向上 で必要な働き手を減らす

I nter v ie w

対策4

29

推計を出す意味は

未来を正確に当てることではない

櫻井 

今回、阿部先生と我々パーソ

ル総合研究所で「労働市場の未来推計

2030」を発表しましたが、世の中に

は「予測は当てにならない」という意見も

あります。こうした予測の意義はどこに

あるのでしょうか。

阿部 

私たちの推計が当たっているかど

うかは、2030年にならなければ分か

りません。しかし、どれだけ正確かは別

にして「このような状況になりそうだ」と

いう推計を示すことで、早い段階から対

策を検討することが可能となり、状況の

悪化を予防する具体的な手立ても見えて

きます。644万人の人手不足に直面し

てから動き出すのでは遅すぎます。つま

り、将来を予測する目的は、より良い未

来をつくるためにあるのです。

櫻井 

今回の推計では先生のご専門であ

る労働経済学のアプローチを用いていま

す。推計方法の特徴はどのようなところ

にあるのでしょうか。

阿部 

労働需要と労働供給を別々に推計

し、その均衡条件の分析をしている点が

2030年の労働市場はいったいどのような姿になっているのだろうか。今回、パーソル総合研究所と中央大学の阿部正浩教授が行った共同研究では、644万人の人手不足に陥るとの推計を導き出した。この推計方法にはどのような特徴があるのか。そして人手不足対策を考えるにはどのようなポイントが重要になるのか。阿部教授と本誌編集長・櫻井功が語り合った。

〔対談〕

「人手不足644万人」の未来を回避するため

我々が取り組むべきことは何か

中央大学 経済学部

阿部 正浩 教授

本誌編集長

櫻井 功

28

3ブロックからなる予測モデルの全体像について

今回開発した予測モデルは『労働需要ブロック』、『労働供給ブロック』、『需給調整

ブロック』の3つのブロックで構成されている。この3つのブロックは相互に作用し、

検分を繰り返すことでより精度の高い数値を導き出すことが可能となった。

『労働需要ブロック』では、産業計の労働需要を推計している。今回開発したモデ

ルの大きな特徴として、労働需要に未充足求人※1 を含めていることが挙げられる。

従来の研究では就業者数のみが用いられることが主流であるが、未充足求人を含

めることにより、本来企業が必要としている需要数を求められると考える。

なお、労働需要の将来推計値を求める際に想定した経済成長率は1.2%である。こ

れは、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(平成30年1月23日経済財政諮問

会議提出)のベースラインにおける経済成長率を前提とした。

『労働供給ブロック』では、性別および年齢別の労働力率を推計し、外生変数※2 で

ある将来推計人口を掛けることで労働力人口を推計している。今回のモデルにお

いて、経済や社会の変動を予測することは射程外となっているため、有配偶率や

出生率、進学率などは外生変数となっている。

『労働需給調整ブロック』では、コブ-ダグラス型生産関数※3 のマッチング関数を想

定し、労働需要ブロックで推定された労働需要量と労働供給ブロックで推定され

た労働供給量を用いて就業者数と失業者数を推計している。マッチング関数を想

定して就業者数と失業者数を推計している点は、今回の予測モデルのもうひとつ

の特徴である。さらにこのブロックではフィリップスカーブ※4 の考え方をベースに

して賃金上昇率を求め、推計された失業者数から実質賃金を推計している。

『労働需給調整ブロック』で推計された実質賃金は『労働需要ブロック』と『労働供

給ブロック』に還元されて、労働需要量と労働供給量の推計に利用される。そし

て、再度推計された労働需要量と労働供給量は『労働需給調整ブロック』のマッチ

ング関数に戻されて、就業者数と失業者数が推計され、実質賃金も再度推計される。

こうしたループ※5 をシステム上で幾度となく繰り返し、モデル全体が収束したと

ころで労働市場が均衡したとみなし、最終的な労働需要量、労働供給量、就業者数、

失業者数、実質賃金の予測値となっている。

※1 未充足求人

企業が生産活動をするために本来必要な人員と実際の就業者数との差異。欠員数とも言い換えられる。

※2 外生変数

予測モデルの外部から値が与えられる変数。内閣府発表の経済成長率1.2%などがこれに当たる。⇔内生変数。予測モデルの内部から導き出される変数。

※3 コブ‐ダグラス型生産関数

生産活動を数式化する上で用いられる、経済学において最も代表的な生産関数。

※4 フィリップスカーブ

経済学者フィリップスが、インフレーションと失業率の間に見出した負の相関関係。

賃金上昇率

失業率自然失業率

LS

L S

0

※5 ループ右図参照

労働供給ブロック

労働需要ブロック

需給調整ブロック

マッチング

賃金上昇率 33

11

2

統計方法解説

解説者(プロジェクトメンバー)

鈴木 祐太 氏

中央大学理工学部卒業後、国内大手メーカーにてエンジニアとして従事。スマートフォンやテレビの技術開発に携わる中で、日本製品の世界的シェアが縮小しているのを肌で感じ、日本の技術革新が経済や労働市場に及ぼす影響について注目、経済学研究に舵を切る。離職後、中央大学大学院経済学研究科に入学。阿部正浩教授に師事。2019年3月同博士前期課程修了。4月から外資系メーカーにてデータ分析に携わる予定。今回の推計の予測モデル作成を担当した。

31

になるには何が必要でしょうか。

阿部 

働く環境はもちろんですが、生活

環境まで整備しなければならないでしょ

う。また外国の方と共に働き、生活して

いくにあたり、我々の中の無意識的な差

別意識の有無についても、丁寧に見直し

ていく必要が出てくると思います。そし

て、家族の帯同をどうするのかも重要な

問題です。家族が一緒に日本に来ること

になれば、子どもたちの教育の問題も生

じてきます。

櫻井 

現在、政府が提示している概要で

は、特定技能2号を取得すれば在留期間

を制限なく更新できるほか、家族帯同も

可能としています。10年も住めば一時居

住者ではなく完全に生活者になり、あら

ゆる産業に組み込まれ、その方たちなし

では回らない社会になっていくでしょう。

そうなった時の社会までしっかりイメー

ジしながら、受け入れ方を十分に検討す

る必要がありそうです。

阿部 

安易に安い労働力の供給を求めて

外国人に期待を寄せるのは間違いといえ

ます。自助努力によるイノベーションで

人手不足を乗り越えなければ、持続可能

な企業経営はできないのではないでしょ

うか。

生産性の向上に極めて重要な

「意識の切り替え」とは

阿部 

また、AIやロボットを導入する

には手間や工夫、初期投資などが必要に

なります。もし単にそうした投資をやり

たくないから、一番簡単な人手で乗り切

ろうとしているのであればそれは大き

な問題です。少子高齢化の傾向は少なく

とも2100年くらいまで続きますから、

機械でできることは機械に置き換え、人

にしかできないことは人でやる、という

発想をしていかなければいけません。ま

た、ITの世界ではよく語られることで

すが、システムは100%のものをつく

ろうとしても不可能であり、7割程度で

きればOK。完全なものではなくても導

入を進め、不完全な部分は人の手で補う

という割り切りがスピーディに生産性高

く開発を進めていくにあたって重要なの

だそうです。日本人の働き方全般におい

ても、こうした考え方や意識の切り替え

が必要でしょう。

櫻井 

私は国内の銀行と外資系企業の双

方で働いたことがありますが、昔の国内

銀行では「こういうことをやりたい」と

上司に相談しても、大きな投融資だと10

個くらいハンコをもらわないと決裁でき

ず、勝機を逃してしまうこともありまし

た。一方、外資系は直属の上司が決裁権

を持っているので、上司の承諾さえあれ

ばすぐ決裁できます。もちろん結果的に

判断が誤っていることもありますが、失

敗も許容される。完全を求める日本企業

と「だいたいこのくらいでよい」という外

資系企業の違いが生産性に影響を与えて

いる気がします。

阿部 

日本人から欧州人を見るとあまり

働いていないように感じることがありま

すが、生産性が高いのは欧州です。日本

では真面目であることが高く評価されま

すが、そこまで真面目でなくてもよいと

考えなければ、これ以上、生産性は高ま

らないのではないでしょうか。

「何も考えない経営」からの脱却が

人手不足を切り抜ける鍵になる

櫻井 

世の中ではダイバーシティが重要

との認識が定着した感がありますが、属

性のダイバーシティだけではなく仕事の

やり方といった意味でのダイバーシティ

を増やしていかなければ生産性は上がり

ませんね。

阿部 

AIやロボティクスの導入のほか

にも、例えば人事制度を働く人のニーズ

にフィットさせることで従業員満足度を

高め、従業員一人ひとりが仕事にやりが

いを持って取り組むことで生産性が向上

することもあるわけです。上司や部下の

〔対談〕

30

特徴のひとつといえます。具体的には、

労働需要と実際の就業者数の差が人手不

足になり、労働供給と就業者数の差が失

業になり、それらを同時に推計していま

す。さらに労働需要と労働供給のマッチ

ングが起こるときの賃金がいくらになる

のかを推計している点も特徴といえます。

(推計方法の詳細は28頁を参照)

櫻井 

この推計結果をご覧いただく際、

読者の方にご注意いただきたいのは、実

際に644万人足りない状況が起こるわ

けではないということです。現実には他

の要素の裁定が働いて均衡しますから。

表現を変えると、もし1・2%の成長率

を達成しようとすれば、1人で1・5人

分働かなければいけないような状況が起

こり得るということですね。

阿部 

おっしゃる通りです。より残業し

なければいけなくなることなども含まれ

ます。

テクノロジーの発展で

人余りは生じるのか

櫻井 

様々な推計の中には、私たちの推

計とは反対に、AIやロボティクスなど

テクノロジーの発展で人の仕事が機械に

代替され、労働力が余るという予測があ

ります。この彼我の違いはどこにあるの

でしょうか。

阿部 

テクノロジーの進展により人が余

るという予測は現在の仕事のうち何割く

らいがAIやロボティクスで代替できる

かという、技術面での可能性の試算です。

それに対し、経済学者は本当に代替する

かどうかはコストとベネフィットの大小

関係で決まると考えます。つまり、この

仕事を人手で行う場合と、AIで行う場

合を比較してコストが安い方が選好され

ると考えるのです。

櫻井 

技術的に可能かどうかだけでなく、

経済合理性も検討するということですね。

阿部 

テクノロジーの進展に伴い、新し

い仕事が生まれる可能性もあります。労

働力が余るとする推計では、こうした点

は加味されていないことが多いです。一

方で、私たちの推計は現在の世界が続い

ていったらどれだけ人手が不足するかを

予測したものであり、テクノロジーの進

展の効果を必ずしも織り込めていない面

はあります。

櫻井 

今回の推計では644万人の人手

不足を埋めるために、働く女性、シニア、

外国人を増やすことと生産性の向上とい

う4つの対策を提起しました。これら

を実現するには何がポイントになるので

しょうか。

阿部 

注意すべきことは4つの対策のう

ち、どれかひとつだけを進めていければ

よいという話ではなく、4つをトータル

でうまくやらなければ意味がないという

ことです。

櫻井 

4つの対策は、下手をすると互い

に相反する可能性がありますね。例えば、

外国人の単純労働者が安価な労働者とし

て増えれば賃金の上昇は見込めないかも

しれません。

阿部 

そうなれば生産性の低い仕事が温

存されて、社会全体の生産性が上がらな

いかもしれません。その結果賃金が上が

らなければ、女性や高齢者など現在働い

ていない人々の就業意欲が高まらず、新

たな労働力とはならないかもしれない。

人口減少と高齢化が同時に進行する日本

では、4つの対策を総動員しなければう

まくいきません。

櫻井 

では、各対策についてうかが

います。まず外国人労働者について、

2018年11月に政府から提示された最

新の受け入れ見込み数では、今後5年間

で最大約35万人を目指すとされています。

しかし、経済成長と少子高齢化が進むア

ジア諸国において、外国人労働者は今後

取り合いになるでしょう。高齢化が進む

日本が若い外国人の労働者に選ばれる国

33

DATA 01 「労働市場の未来推計2030」推計結果及び、予測モデルに使用したデータ

オープンデータ 提供元 項目 備考

労働力調査  総務省 就業者数、労働力率、完全失業率 長期時系列表2,3 就業状態別15歳以上人口 - 全国(昭和28年〜平成28年)

国勢調査  総務省 有配偶率 第4表 配偶関係 年齢(5歳階級) 男女別15歳以上人口 - 全国(大正9年〜平成27年)

賃金構造基本統計調査  厚生労働省 所定内労働時間、所定内給与額 一般労働者

雇用動向調査 厚生労働省 未充足求人 (1983年〜 2016年)

毎月勤労統計調査  厚生労働省 賃金指数(一般労働者、パート・アルバイト) 長期時系列表32,33 就業形態別総実労働時間(5人以上)(2018年3月)

日本の将来推計人口  国立社会保険・人口問題研究所 男女別・年齢層別の将来人口 出生・死亡中位推計 平成29年推計

日本の将来推計人口  国立社会保険・人口問題研究所 女性年齢別出生率(将来予測値) 全国推計 平成29年推計 女性の年齢各歳別出生率および合計特殊出生率

日本の世帯数の将来推計 国立社会保険・人口問題研究所 有配偶率(将来予測値) 全国推計 平成30年推計

学校基本調査  文部科学省 高校進学率、大学・短大進学率 進学率(昭和23年〜平成29年)

国民経済計算  内閣府 国内総生産(実質)、就業者数、労働時間 2016年度国民経済計算(2011年基準・2008SNA)

中長期の経済財政に関する試算 内閣府 GDP成長率、物価指数上昇率 平成30年1月23日経済財政諮問会議提出

第44回 中期経済予測 日本経済研究センター 輸入物価指数(将来予測値)、輸出物価指数(将来予測値) 標準シナリオ

■使用したオープンデータ

2020年 2025年 2030年

労働需要(万人) 6,802 6,940 7,073

就業者(万人) 6,418 6,435 6,429

労働供給(万人) 6,553 6,537 6,490

実質時給(円) 1,910 2,000 2,096

完全失業率(%) 2.04 1.53 0.92

欠員(万人) -384 -504 -644

需要 供給 供給–需要

農林水産業 112 115 3

鉱業 3 2 -1

製造業 810 771 -38

電力・ガス・熱供給・水道・廃棄物処理 62 55 -7

建設 275 374 99

卸売・小売 1,129 1,070 -60

運輸・郵便 392 372 -21

通信・情報サービス 206 175 -31

金融・保険 124 148 23

不動産 103 110 7

教育 203 176 -28

公務 185 181 -4

医療・福祉 1,367 1,180 -187

対事業所サービス 1,454 1,054 -400

対個人サービス 647 647 0

合計 7,073 6,429 -644

需要 供給 差 職業説明

管理的職業従事者 148 138 -10 議会議員、管理的国家公務員、会社役員、会社管理職員等

専門的・技術的職業従事者 1,413 1,201 -212 研究者、製造技術者、情報処理・通信技術者、医師、保育士、裁判官、公認会計士、教員等

事務従事者 1,493 1,326 -167 庶務事務員、人事事務員、企画事務員、総合事務員、秘書、会計事務従事者等

販売従事者 881 841 -40 商品販売従事者、不動産仲介・売買人、有価証券売買・仲立人、営業職業従事者等

サービス職業従事者 1,014 943 -71 介護職員、看護助手、理容師、調理人、飲食物給仕従事者等

保安職業従事者 149 126 -23 自衛官、警察官、看守、警備員等

農林漁業従事者 116 118 2 農業従事者、林業従事者、漁業従事者

生産工程従事者 798 738 -60 生産設備制御・監視員、製造・加工処理従事者、機械検査従事者等

輸送・機械運転従事者 266 244 -22 電車運転士、バス運転者、貨物自動車運転者等

建設・採掘従事者 186 235 49 大工、とび職、土木従事者等

運搬・清掃・包装等 従事者 608 518 -90 郵便・電報外務員、配達員、ビル・建物清掃員等

合計 7,073 6,429 -644

■推計結果(要約) ■2030年の産業別労働需給

■2030年の職業別労働需給

■2030年の都道府県別労働需給 単位(万人)単位(万人)

単位(万人)

需要 供給 供給-需要

北海道 265 250 -15

青森県 64 55 -9

岩手県 62 56 -6

宮城県 126 114 -12

秋田県 44 40 -4

山形県 56 49 -8

福島県 96 84 -12

茨城県 154 140 -13

栃木県 108 97 -10

群馬県 102 96 -6

埼玉県 418 390 -28

千葉県 365 329 -36

東京都 948 815 -133

神奈川県 553 500 -54

新潟県 115 105 -10

山梨県 56 51 -5

長野県 63 57 -6

富山県 43 37 -6

石川県 42 37 -4

福井県 110 97 -13

岐阜県 115 96 -19

静岡県 203 179 -24

愛知県 445 409 -36

三重県 100 87 -13

滋賀県 81 73 -7

京都府 142 131 -12

大阪府 468 456 -13

兵庫県 295 274 -22

奈良県 65 62 -3

和歌山県 48 43 -6

鳥取県 28 26 -2

島根県 32 31 -1

岡山県 97 95 -2

広島県 150 143 -7

山口県 66 63 -3

徳島県 34 34 0

香川県 49 47 -2

愛媛県 66 62 -4

高知県 34 31 -3

福岡県 278 262 -16

佐賀県 46 38 -7

長崎県 67 60 -8

熊本県 92 82 -10

大分県 60 53 -7

宮崎県 57 48 -9

鹿児島県 81 70 -10

沖縄県 84 77 -7

合計 7,073 6,429 -644

※人数の推計に関しては、千人単位を四捨五入

32

組み合わせ、組織のありようでも生産性

を向上できます。今回の推計では触れて

いませんが、こうした側面での生産性向

上も大きいと私は考えています。

櫻井 

厚生労働省の調査では、定年制を

定めている企業が98%、定年年齢を60歳

としている企業が78%でした。また定年

制のある企業の9割が雇用延長や再雇用

制度を運用しています。こうした制度を

運用している企業の多くでは、年を取るた

びにガクンガクンと給与が減り、モチベー

ションも下がる仕組みになっています。

阿部 

中高齢者にどうやって活躍しても

らうのかも重要ですし、同時に女性のモ

チベーションをどう上げるのかも大切で

す。女性やシニアの活躍推進といっても

人数さえ揃えばよいという話ではなく、

これらの女性やシニアといった人たちに

フィットする人事制度や労務環境を提供

してモチベーションを高め、一人ひとり

の生産性を上げることがこれからはます

ます大切になっていきます。

櫻井 

従来のように同じ時間に同じ職場

で働いて、「同じ釜の飯を食った仲」の連

帯感でお互い頑張るような環境ではなく、

一人ひとりの都合と能力と、投入できる

労働量に合ったアウトプットの求め方を

柔軟にできるようにする必要があります。

阿部 「高齢者雇用」といえば、念頭に置

かれるのはまず男性ですが、シニア男性

は既に労働市場に出ているため、これ以

上新たに増える余地はあまりありません。

そこでシニア女性に期待がかかりますが、

この人たちの多くは介護を担っています。

いま育児で取り組んでいるように、介護

でも男性の参画を促していく取り組みが

必要になるでしょう。また、10年後の

65歳の女性は今の55歳です。この人たち

に65歳になっても働いてもらうには、今

から労働意欲が高まるような働き方をし

てもらっておく必要があります。50代で

ロースキルの低賃金労働をさせられてい

る人が、10年後にも同じように働きたい

とは前向きに思えないですよね。これは

男性も同様で、今から60歳を超えたとき

に働けるように、会社も労働者自身も考

えておかなければいけません。

櫻井 

不都合な真実から目を背けたいの

が人間の性なのです。当社で行なった「ミ

ドルからの躍進を探求するプロジェク

ト」における調査でも、定年直前まで何

も準備をしていないという人が圧倒的で

した。定年を迎えるとなってから「専門

性をもって働いてください」と言われて

も準備が間に合いません。しかも平均寿

命が延び、人生60年ではなく100年と

いう時代になっています。国としてどう

サポートするかも重要な課題です。シニ

ア個人には、より長く働きたいという方

がたくさんいます。しかし実際に働いて

いない人はまだまだ多く、個人によって

様々な要因があると思いますが、企業側

にも努力の余地があると思います。何よ

り今、人が欲しいのは企業ですから、企

業が努力するのは当たり前です。

阿部 

日本は、長らく人余りの状況が続

いてきましたから、実は経営者はあまり

考えなくても企業経営ができたのかもし

れません。中小企業をはじめ、法務や財

務といった経営に必要な知識を十分に有

していないと感じる経営者の方も少なく

ありません。

櫻井 

経営の勉強をせずとも経験値だけ

で、今まではうまく回っていたのでしょ

う。

阿部 

それでは今後は乗り切れません。

現在のように景気が良くても、畳んでい

る会社や、後継者がいないことで事業承

継できない会社があります。後継者を確

保できないのは、継ぎたいと思えるほど

の魅力が自社にないことに経営者が気づ

けなかったからで、結局はしっかり先

を読んで経営できていなかったことの

証左だと思います。人手不足といって

も、企業には自ら努力できることがまだ

まだあるはずです。この推計から見える

2030年を想定し、各企業にとって日

本にとって良い未来が来るよう、今から

準備していただきたいと思います。

〔対談〕

1966年福島県いわき市生まれ。1995年、

慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単

位取得退学。2003年、慶應義塾大学博士

(商学)。(財)電力中央研究所、一橋大学経済

研究所、獨協大学経済学部を経て2013年

から現職。著書に『日本経済の環境変化と

労働市場』(東洋経済新報社)がある。

阿部 正浩氏

中央大学経済学部教授

「ミドルからの躍進を探究するプロジェクト」

「希望の残業学」「労働市場の未来推計 2030」

I N F O R M A T I O N

発行人 渋谷 和久編集長 櫻井 功研究調査 田井千晶、青山茜編集 井上史実子、川畑夕子、高橋美鈴、団遊執筆 宮内健、内田直樹、外山夏央、秋村容子写真 加藤タケトシ図版作成 川岸歩デザイン イグアルグラフィックス制作 アソブロック株式会社印刷 株式会社エイエヌオフセット発行日 2019 年 3 月1日

発行 株式会社パーソル総合研究所      〒107-0062 東京都港区南青山 1丁目15 - 5      パーソル南青山ビル

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パーソル総合研究所

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2019年 3月号

vol.4

パーソル総合研究所 研究活動のご紹介

パーソル総合研究所では、人事の現場において、次なる行動を促す意思

決定の役に立つ情報を発信するため『人と組織の成長創造インフラへ』と

いうパーソルグループのグループビジョンのもと、様々な調査・研究活動

を続けています。ミドルからの躍進を探求するプロジェクト「日本で働くミド

ル・シニアを科学する」、長時間労働の実態とその解消について調査した「希

望の残業学」、サテライトオフィスの可能性について調査した「サテライトオ

フィス2.0」、アジア・パシフィックの13の国と地域を対象に労働に関する

情報をまとめた「PERSOL HR DATA BANK in APAC」など、調査・研究

の成果を特設サイトや冊子、書籍において公表しておりますので、今号「労

働市場の未来推計 2030」とともにぜひご活用ください。

機関誌「HITO」バックナンバーのご案内

2018.6.1HITO REPORT vol.3

ピープルアナリティクスが人事を変える

2017.8.31HITO REPORT vol.2

“サテライトオフィス2.0”の提言136万人が働き手に変わる

2019.2.15HITO vol.13

変革か衰退か待ったなし! 日本の雇用改革

2018.3.1HITO vol.12

ミドル・シニア社員の新時代躍進のために個人と 会社がすべきこと

2017.10.1HITO vol.11

「両立」支援は誰のため?~事業vs.育児 キャリアvs.育児?~

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[email protected]本誌の内容に関するお問い合わせ 株式会社パーソル総合研究所34

総数 0〜4歳 5〜9歳 10〜14歳

15〜19歳

20〜24歳

25〜29歳

30〜34歳

35〜39歳

40〜44歳

45〜49歳

50〜54歳

55〜59歳

60〜64歳

65〜69歳

70〜74歳

75〜79歳

80〜84歳

85〜89歳

90〜94歳

95〜99歳

100歳以上

総数 116,379 4,042 4,225 4,667 4,944 5,246 5,529 5,913 5,839 6,239 7,106 8,093 9,411 8,241 7,373 6,745 7,147 7,347 4,651 2,487 943 192

男性 56,398 2,072 2,166 2,392 2,529 2,688 2,832 3,038 2,987 3,174 3,596 4,089 4,733 4,106 3,611 3,211 3,267 3,152 1,744 766 215 29

女性 59,981 1,970 2,059 2,274 2,415 2,557 2,697 2,875 2,852 3,065 3,510 4,004 4,677 4,136 3,762 3,533 3,880 4,195 2,908 1,720 729 163

年齢 15〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 35〜39歳 40〜44歳 45〜49歳 50〜54歳 55〜59歳 60〜64歳 65〜69歳 70歳以上

男性 17.3 69.3 94.1 96.4 96.8 96.9 96.7 95.6 93.1 80.9 74.8 24.9

女性 16.8 75.0 88.0 78.4 73.3 80.0 85.8 89.4 89.6 62.6 40.7 20.6

年齢 15〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 35〜39歳 40〜44歳 45〜49歳 50〜54歳 55〜59歳 60〜64歳 65〜69歳 70歳以上

女性 16.8 75.0 88.0 88.0 88.0 88.0 88.0 89.4 89.6 62.6 40.7 20.6

年度 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

実質GDP成長率(%) 0.9 2.0 1.6 2.0 1.4 1.2 -3.4 -2.2 3.2 0.5 0.8 2.6 -0.3

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年 2027年

1.4 1.2 1.9 1.8 1.3 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2

■実質GDP成長率

■実質GDP

■有配偶率

対策前

シニア対策後

女性対策後

■2030年の労働力率

■生産性向上率

■ 2030年の将来推計人口

出所:内閣府 中長期の経済財政に関する試算(ベースラインケース)

実質GDP(兆円) 成長率(%)

2020年 548.9 1.2

2021年 555.5 1.2

2022年 562.2 1.2

2023年 568.9 1.2

2024年 575.8 1.2

2025年 582.7 1.2

2026年 589.7 1.2

2027年 596.7 1.2

2028年 603.9 1.2

2029年 611.1 1.2

2030年 618.5 1.2

合計 15〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 35〜39歳 40〜44歳 45〜49歳 50〜54歳 55〜59歳 60〜64歳 65歳以上

2020年 53.8 0.6 8.5 33.3 58.6 66.9 69.5 68.9 70.4 72.5 73.9 50.1

2021年 53.5 0.6 8.6 33.3 58.4 66.8 69.3 68.7 69.9 71.8 73.3 49.8

2022年 53.3 0.6 8.6 33.3 58.2 66.7 69.1 68.6 69.4 71.2 72.6 49.5

2023年 53.0 0.6 8.6 33.3 58.0 66.6 68.9 68.6 69.0 70.6 71.9 49.2

2024年 52.8 0.6 8.6 33.3 57.8 66.5 68.6 68.5 68.7 70.0 71.2 48.9

2025年 52.5 0.6 8.6 33.4 57.7 66.5 68.5 68.5 68.4 69.5 70.5 48.5

2026年 52.3 0.6 8.6 33.4 57.7 66.4 68.3 68.5 68.2 68.9 69.8 48.1

2027年 52.0 0.6 8.6 33.4 57.7 66.2 68.1 68.4 68.0 68.5 69.1 47.7

2028年 51.7 0.6 8.6 33.4 57.6 66.1 68.0 68.3 67.9 68.0 68.5 47.3

2029年 51.5 0.6 8.6 33.4 57.6 65.9 67.9 68.1 67.9 67.6 68.0 46.8

2030年 51.2 0.6 8.6 33.4 57.6 65.7 67.9 67.8 67.9 67.3 67.5 46.3

年齢 15〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 35〜39歳 40〜44歳 45〜49歳 50〜54歳 55〜59歳 60〜64歳 65〜69歳 70歳以上

男性 17.3 69.3 94.1 96.4 96.8 96.9 96.7 95.6 93.1 80.9 80.9 24.9

女性 16.8 75.0 88.0 78.4 73.3 80.0 85.8 89.4 89.6 70.0 70.0 20.6

実質GDP(兆円) 就業者(万人) 生産性(就業者一人当たり実質GDP)(万円) 生産性向上率(前年比)(%)

2020年 548.9 6,418 855.3 1.17

2025年 582.7 6,435 906.8 1.20

2030年 618.5 6,429 961.8 1.25

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(男女年齢5歳階級別人口,年齢構造係数および性比(日本人人口):出生中位(死亡中位)推計)」 単位(千人)

単位(%)

単位(%)

※人数の推計に関しては、千人単位を四捨五入

DATA 02 「労働市場の未来推計2030」推計結果及び、予測モデルに使用したデータ