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(21)21 日本 サルコペニア・フ イル 学会誌  Vol.3 No.1 2019 (21)21 日本 サルコペニア・フ イル 学会誌  Vol.3 No.1 2019 はじめに 2010年に発表されたサルコペニアの定義および 診 断 基 準 European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP) 1) から8年経った昨年, EWGSOP グループに新たなメンバーを加えて改訂版 (EWGSOP2) が 発 表 さ れ た 2) 。2010 年 に EWGSOP 基準が発表されたこと,特に診断のためのフロー チャートが示されたことでサルコペニアは概念として だけでなく診断ができるようになり,その結果 ICD- 10 で骨格筋疾患として登録されるに至った。今回 8 年経って新たな診断基準,診断過程が示された。ここ では 2018 年に発表された EWGSOP2 の内容に沿っ て,新たな基準について概説する。 サルコペニアの操作的定義 EWGSOP2 では EWGSOP と同様,サルコペニアを 「進行性かつ全身性に生じる骨格筋の障害であり,転 倒,骨折,身体障害および死亡率などの有害な転帰の 可能性の増加と関連する」と定義した。EWGSOP2 が 1  Koichi Kozaki 〒181-8611 東京都三鷹市新川 6-20-2 E-mail:[email protected] [COI]報告すべき COI はなし。 特集 1 サルコペニア・フレイルのコントロバーシー 神﨑 恒一 1 杏林大学医学部高齢医学主任教授 KEY WORDS 2010 年の European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)によるサルコペニアの定 義および診断基準の発表から 8 年経って,改訂版で ある EWGSOP2 が発表された。EWGSOP2 においてサ ルコペニアの診断は,① SARC-F を用いてスクリーニ ングを行う,②筋力(握力もしくは 5 回椅子立ち座 り時間)を測定しサルコペニアの一次評価を行う、③ 筋量(DXA もしくは BIA 法)を測定し,サルコペニ アの確定診断を行う,④重症度判定を身体機能測定 (通常歩行速度,SPPB,TUG,または 400m 歩行時間) によって行う,という流れに沿って行われる。なお, 今回の改定では診断のためのカットオフ値が明示され ている。今後,EWGSOP2 をもとにアジア地域でも, AWGS の改訂作業に入るものと思われる。 抄 録 EWGSOP2 基準 サルコペニアの診断: 現時点でどの診断基準を用いるべきか SAMPLE Copyright(c) Medical Review Co.,Ltd.

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(21)21日本サルコペニア・フレイル学会誌 Vol.3 No.1 2019 (21)21日本サルコペニア・フレイル学会誌 Vol.3 No.1 2019

Ⅰはじめに

 2010 年に発表されたサルコペニアの定義および

診 断 基 準 European Working Group on Sarcopenia

in Older People(EWGSOP)1)か ら 8 年 経 っ た 昨 年,

EWGSOP グループに新たなメンバーを加えて改訂版

(EWGSOP2) が 発 表 さ れ た2)。2010 年 に EWGSOP

基準が発表されたこと,特に診断のためのフロー

チャートが示されたことでサルコペニアは概念として

だけでなく診断ができるようになり,その結果 ICD-

10 で骨格筋疾患として登録されるに至った。今回 8

年経って新たな診断基準,診断過程が示された。ここ

では 2018 年に発表された EWGSOP2 の内容に沿っ

て,新たな基準について概説する。

Ⅱサルコペニアの操作的定義

 EWGSOP2 では EWGSOP と同様,サルコペニアを

「進行性かつ全身性に生じる骨格筋の障害であり,転

倒,骨折,身体障害および死亡率などの有害な転帰の

可能性の増加と関連する」と定義した。EWGSOP2 が

1 Koichi Kozaki〒181-8611 東京都三鷹市新川 6-20-2E-mail:[email protected]

[COI]報告すべき COI はなし。

特集1 サルコペニア・フレイルのコントロバーシー

神﨑 恒一 1 杏林大学医学部高齢医学主任教授

KEY WORDS

 2010 年の European Working Group on Sarcopenia

in Older People(EWGSOP)によるサルコペニアの定

義および診断基準の発表から 8 年経って,改訂版で

ある EWGSOP2 が発表された。EWGSOP2 においてサ

ルコペニアの診断は,① SARC-F を用いてスクリーニ

ングを行う,②筋力(握力もしくは 5 回椅子立ち座

り時間)を測定しサルコペニアの一次評価を行う、③

筋量(DXA もしくは BIA 法)を測定し,サルコペニ

アの確定診断を行う,④重症度判定を身体機能測定

(通常歩行速度,SPPB,TUG,または 400m 歩行時間)

によって行う,という流れに沿って行われる。なお,

今回の改定では診断のためのカットオフ値が明示され

ている。今後,EWGSOP2 をもとにアジア地域でも,

AWGS の改訂作業に入るものと思われる。

抄 録

EWGSOP2 基準

サルコペニアの診断:現時点でどの診断基準を用いるべきか

SAMPLECopyright(c) Medical Review Co.,Ltd.