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211 21021 ブリッジモデルの研究と製造 要旨 この研究では、つまようじで橋の模型を製作することで、より強度の高い橋を製作するための方法を 発見することを目的とした。私たちは、強度の高い橋を設計するために、ブリッジシミュレーター(パ ソコンで橋の設計をすることができるソフトウェア)で様々な形状の橋を設計し、それぞれの橋の強度 をシミュレーターのテストによって研究した。その結果を受け、実際につまようじを使って橋を作った。 その橋におもりを吊るすことで耐久実験をしたところ、橋において最も重要な要素は構造であり、その 構造の中でもなるべく外側に力を拡散させるような構造が強いことが分かった。 1.目的 強度の高い橋の構造がどのようであるか考え、最終的に高強度の橋にはどのような構造が必要なのか を研究する。まず橋の構造について調べ、自分たちがブリッジシミュレーターで設計した、最も強度が 高いと考えられる橋のブリッジモデルをつまようじで製作する。そのモデルにおもりを吊るすことで強 度を調べ、壊れたとき、または耐えたときの様子を観察、記録する。それを繰り返し行うことによって、 橋における最も強い構造を発見することを目的とする。 2.使用した器具・装置など (1)ブリッジシミュレーター(West Point Bridge Designer 2010(2)つまようじ 約 800 本ほど (橋を製造するための部品) (3)カッターナイフ・はさみ(つまようじを切断するための道具) (4)木工用ボンド(つまようじを接着するための道具) 補足:West Point Bridge Designer 2010 について 本ソフトウェアは橋の構造をシミュレーションできるソフトウェアで、自分たちが製作する橋 の構造を計画するために使用した。 3.研究・実験の手順 . ブリッジシミュレーターを使って、どのような橋を製作するか考える。 . カッターナイフ等を使って、つまようじの両端を切断する。 . 木工用ボンドを使ってつまようじを接着し、実際にブリッジモデルを組み立てる。 . あらかじめ重さを量っておいたおもりをモデルの中央に吊るし、そのモデルが耐えられる重さを 試験する。 . 実験結果から橋の崩壊箇所、崩壊の様子を調べ、それをもとに理由を考察する。 . 考察結果から崩壊の原因を解消する方法を考えて、手順1からやり直す。 ※ 私たちは役割を分担し、1 と3を並行して行った。 この際ブリッジシミュレーターは、つまようじで製作するブリッジモデルの基本構造の学 習のため使用した。

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ブリッジモデルの研究と製造

要旨

この研究では、つまようじで橋の模型を製作することで、より強度の高い橋を製作するための方法を

発見することを目的とした。私たちは、強度の高い橋を設計するために、ブリッジシミュレーター(パ

ソコンで橋の設計をすることができるソフトウェア)で様々な形状の橋を設計し、それぞれの橋の強度

をシミュレーターのテストによって研究した。その結果を受け、実際につまようじを使って橋を作った。

その橋におもりを吊るすことで耐久実験をしたところ、橋において最も重要な要素は構造であり、その

構造の中でもなるべく外側に力を拡散させるような構造が強いことが分かった。

1.目的

強度の高い橋の構造がどのようであるか考え、最終的に高強度の橋にはどのような構造が必要なのか

を研究する。まず橋の構造について調べ、自分たちがブリッジシミュレーターで設計した、最も強度が

高いと考えられる橋のブリッジモデルをつまようじで製作する。そのモデルにおもりを吊るすことで強

度を調べ、壊れたとき、または耐えたときの様子を観察、記録する。それを繰り返し行うことによって、

橋における最も強い構造を発見することを目的とする。

2.使用した器具・装置など

(1)ブリッジシミュレーター(West Point Bridge Designer 2010)

(2)つまようじ 約 800 本ほど (橋を製造するための部品)

(3)カッターナイフ・はさみ(つまようじを切断するための道具)

(4)木工用ボンド(つまようじを接着するための道具)

補足:West Point Bridge Designer 2010 について

本ソフトウェアは橋の構造をシミュレーションできるソフトウェアで、自分たちが製作する橋

の構造を計画するために使用した。

3.研究・実験の手順

1. ブリッジシミュレーターを使って、どのような橋を製作するか考える。

2. カッターナイフ等を使って、つまようじの両端を切断する。

3. 木工用ボンドを使ってつまようじを接着し、実際にブリッジモデルを組み立てる。

4. あらかじめ重さを量っておいたおもりをモデルの中央に吊るし、そのモデルが耐えられる重さを

試験する。

5. 実験結果から橋の崩壊箇所、崩壊の様子を調べ、それをもとに理由を考察する。

6. 考察結果から崩壊の原因を解消する方法を考えて、手順1からやり直す。

※ 私たちは役割を分担し、1 と3を並行して行った。

この際ブリッジシミュレーターは、つまようじで製作するブリッジモデルの基本構造の学

習のため使用した。

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4.結果

(1)ブリッジシミュレーターを使用して4つの橋を作り、

強度を調べた。このソフトでは同一条件の谷(右図)

に架橋する。この場所に橋を架けることを前提とし、

ソフト上で必要なコストや材料の数をそろえた。

シミュレーターで作成した橋を下図①~④にて示す。

試験の結果、全ての橋が崩壊した。

原因は、下図の濃い黒の部分に耐久力の限界以上の力が加わったことである。

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(2)(1)を受けて、つまようじと木工用ボンドを使って5つの橋を作り、それぞれの橋の強度を調

べた。手順及び結果は以下の①~④のようであった。

① 実験方法

おもりを入れた箱を右図のように糸でつるす。

100g のおもりを一つずつ増やしていき、部品の破損が認められた時点

でかかっていた重さを記録した。

今回の実験では橋の両端を固定しなかった。

② 橋のデータ

5つの橋の大まかな構造と、それぞれの重さ・長さ・幅・高さは以下の表のようであった。

重さ(g) 長さ(cm) 幅(cm) 高さ(cm)

(Ⅰ) 17.29 36.2 3.5 3.8

(Ⅱ) 20.64 32.3 3.4 3.5

(Ⅲ) 19.86 31.0 3.5 3.6

(Ⅳ) 23.60 30.3 3.6 3.5

(Ⅴ) 20.11 34.6 3.7 3.8

※(Ⅲ)の橋のみ、橋の下の部分に右図のような補強を施した。

③ 橋の写真(実験後のもの)

④ 自分たちの予想

それぞれの橋について、接着の様子・つまようじの本数・構造 などの要素を考慮して、支えら

れる限界の重さはどの橋がもっとも大きいのか(どの橋が最も強いのか)を予想した。強いほうか

ら順に、 (Ⅲ) > (Ⅴ) > (Ⅳ) > (Ⅱ) > (Ⅰ) であると予想した。

(Ⅰ)

(Ⅱ)

(Ⅲ)

(Ⅳ)

(Ⅴ)

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⑤ 実験結果

以下の表のようになった。ただし、

(項目1):橋の変形が認められた時点のおもりの重さ

(項目2):橋に破損箇所が見られたときのおもりの重さ とする。

(Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ) (Ⅳ) (Ⅴ)

(項目1) 500g 800g 3200g 500g 1000g

(項目2) 800g 1200g 3700g 1700g 1300g

強い順に (Ⅲ) > (Ⅳ) > (Ⅴ) > (Ⅱ) > (Ⅰ) であった。

5.結果に対する考察・わかったこと

(1)①、④の橋は、崩壊の原因となる部分が多くなった。②、③と比較したところ、外側に力が拡散

する構造のほうが、強度も強くなるのだと分かった。

(2)実験前に私たちがした予測は、接着不良が見られた(Ⅰ)の橋がもっとも弱く、部品一つ一つを構

成するつまようじの数が多くて、土台となる部分に補強が施されている(Ⅲ)の橋が最も強い、とい

うものだった。それに大きく反する結果ではなかったものの、(Ⅲ)を除いた全ての橋が 1kg~2kg

ほどしか耐えることができなかった。

橋が落ちるときには、つまようじが折れるという大きな破損が起こるだろうとも予想していたが、

その原因のほとんどはつまようじ同士の接着が弱く、その部分が取れてしまうことだった。

どの橋も、高さと幅はほぼ揃っているのに対し、長さと重さが揃っていなかったが、重い橋・長

い橋が強いということはなく、軽い橋・短い橋が強いということもなかった。このことから、橋の

構造がもっとも大切な要素であるとわかった。

また、(1)で分かった通り、中心に力をかけたときに外側へと力が拡散する構造である(Ⅲ)と(Ⅳ)

が強く、そのことを実験によって確かめることができた。(Ⅳ)は土台部分のつまようじの本数が多

く、(Ⅲ)は全ての部分のつまようじの本数が多い構造であるため、力をかける部分のみ強ければよ

いという訳ではなく、全体の強度が強い構造である必要があると分かった。

今回はこのような結果が出たが、木工用ボンドの乾き具合まで考慮に入れること(十分に乾いて

いないと思われる橋もあり、その橋は比較的弱かったため)や、橋の両端を固定すること(両端に

接着したつまようじが取れる橋もあったため)をすれば、また違う結果が出るのではないかと思う。

6.参考文献、引用文献

・West Point Bridge Design Contest のページ

http://bridgecontest.usma.edu/index.htm