法 然 上 人 に お け る 佛 教 的 課 題 の 受 容 と 展 開 生 死 輪 廻 を 中 心 に 齋 藤 蒙 光 〔 抄 録 〕 法 然 遺 文 よ り 、 生 死 輪 廻 を 中 心 と す る 、 佛 教 的 課 題 に 関 す る 説 示 を 抜 き 出 し て 整 理 し た 。 そ こ に は 法 然 自 身 の 捨 聖 帰 浄 の 体 験 に 則 っ た 、 三 つ の 段 階 が 見 出 せ る 。 即 ち 、 ① 聖 道 門 ・ 浄 土 門 に 共 通 す る 、 佛 道 の 出 発 点 と し て の 課 題 。 出 世 間 ・ 出 離 生 死 を 求 め る 志 で あ り 、 浄 土 門 に お い て は 「 厭 離 穢 土 」 へ と 突 き 詰 め ら れ る 。 ② 聖 道 門 の 実 践 に 伴 い 、 具 体 化 ・ 主 体 化 し た 課 題 的 自 覚 。 出 離 生 死 が 果 た さ れ な い 原 因 と し て 、 「 三 学 非 器 」 が 自 覚 さ れ 、 よ り 具 体 的 に は 、 凡 夫 の 心 の 移 ろ い 易 さ や 悪 業 ・ 煩 悩 の 根 深 さ と し て 実 感 さ れ る 。 ③ 浄 土 門 に 帰 入 の 後 、 善 導 ・ 道 綽 の 思 想 に 基 づ い て 深 化 ・ 展 開 を 果 た し た 課 題 的 説 示 。 煩 悩 具 足 ・ 罪 悪 生 死 の 自 覚 が 「 出 離 生 死 の 縁 有 る こ と 無 し 」 と い う と こ ろ ま で 徹 底 さ れ る が 、 そ れ は 念 佛 往 生 へ の 信 と 表 裏 一 体 の も の で あ る 。 キ ー ワ ー ド 法 然 、 生 死 、 輪 廻 、 三 学 非 器 、 名 利 は じ め に 私 は こ れ ま で も 、 生 死 輪 廻 を 中 心 と す る 仏 教 課 題 に つ い て 、 法 然 が ど の よ う に 語 っ て い る の か に つ い て 考 察 し 、 論 文 と し て 発 表 し て き た が １ ） 、 そ れ ら の 論 文 で は 、 法 然 遺 文 よ り 課 題 的 説 示 を 切 り 取 っ て 平 板 に 並 べ る の み で 終 わ っ て し ま っ た 。 だ が 法 然 に お け る 課 題 的 説 示 と 一 言 で い っ て も 、 そ こ に は 段 階 的 な 深 化 や 展 開 が 垣 間 見 え 、 平 板 的 な 比 較 の み で は 捉 え き れ な い 、 立 体 的 な 構 造 が 想 定 さ れ る 。 ま た 法 然 は 、 時 に は 自 身 の 抱 え る 課 題 を 吐 露 し て 歎 き 悲 し む が 、 多 く の 場 合 そ れ よ り も 、 念 仏 往 生 と い う 、 課 題 か ら 救 わ れ て い く 道 を 説 き 示 す こ と の 方 に 主 眼 を 置 い て い る 。 救 い と 切 り 離 し て 、 法 然 の 課 題 的 説 示 の 意 義 の み を 論 じ 得 る の か と い う 疑 問 も 残 る 。 そ こ で 今 回 、 こ れ ま で の 研 究 の 成 果 を 踏 ま え つ つ 、 法 然 自 身 の 体 験 に 則 り 、 も う 一 度 そ れ ら の 課 題 的 説 示 の 分 類 お よ び 整 理 を 試 み た い 。 一 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 文 学 研 究 科 篇 第 四 十 号 （ 二 〇 一 二 年 三 月 ）
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