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菅原和孝 京都大学大学院人間・環境学研究科 [email protected]. 身体化された経験としての言語交換の論理と秩序 −− 狩猟採集民グイにおける日常会話の分析 −−. 事象が直接的に現前 present するのではなく、脳の中に再 - 現前 re-present する. 人間性の本質は心であり、心の本体は表象 representation の流れである. 表象主義と心身二元論. 身体は心を収納する容器であり、心によって統御される精密機械である. 世界は、モノそれ自体(即自存在)と他者(謎だ!)とがひしめく「外界」と、 - PowerPoint PPT Presentation
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表象主義と心身二元論
事象が直接的に現前 present するのではなく、脳の中に再 - 現前 re-present する
人間性の本質は心であり、心の本体は表象 representation の流れである
身体は心を収納する容器であり、心によって統御される精密機械である
世界は、モノそれ自体(即自存在)と他者(謎だ!)とがひしめく「外界」と、ワタシにしか見えない「内界」とに分割される
客観主義現実界 Universe 観察者の共同体
観察装置/方法
対象カテゴリー
述語カテゴリー
連辞カテゴリー
命題言説界
*すべてのカテゴリーは一意的に定義される
観察は個々の観察者から独立しているので、現実界のある事象を言説界に写像する唯一の正しい命題が存在する。
言語行為論の創始 ジョン・オースティン発語行為 locutionary act 発語内行為 illocutionary act発語媒介行為 perlocutionary act言語行為論の展開 ジョン・サール
4つの適切性条件 felicity conditions e.g., 〈約束する〉 promise S:話者 speaker /H:聞き手 hearer
命題内容条件 propositional contend condition : Sの未来の行為A事前条件 preparatory condition : (a) SにはAをする能力がある (b) AはHにとって益がある、少なくとも有害ではない (c) AはSがいつもルーティンとしてしていることではない誠実性条件 sincerity condition :Sはそれを本当に行うことを意図している本質条件:Sは未来にAを実行することに拘束される
e.g., She said to him, “I cannot join you.”She declined his invitation. She disappointed him.
!Xu~
Zu/’hoãsi
≠Au//eisi!Xõ
Eastern≠Hoa
!Kung
Ta’a
/’Auni-≠Khomani
/XamMountainBushman
//Xegwi
Mostly extinct
Angola
Namibia
South Africa
BotswanaZimbabwe
Zambia Mozambique
TanzaniaCongoD.R.
Non-Khoe SpeakingGroups
(Modified from:Barnard, A. 1992Hunters and Herders ofSouthern Africa )
Kxoe
Qabekhoe
Khoe SpeakingGroups
ShuaN/haints’e
≠HabaTs’aokhoe
Naro G//anaG/wi
TshwaHietshware
Hai//om
Nama
Korana
Western
Northern
Eastern
Central
!Kung
グイ語の音韻構造 −− とくにクリック子音 吸入音 伴奏音
ǀ歯音 ǃ歯茎音 ǂ硬口蓋音 ǁ側音g : 軟口蓋有声音 ǀgaa 草 ǃgaa 錐 ǂgaa じっとしている ǁgaa 耐え過ごすk : 軟口蓋無声音 ǀkaa 大きな袋 ǃkaa 見あたらない ǂkaa 入る / 入れる ǁkaa 乗るkh : 軟口蓋有気音 ǀkhaa 刺して置く ǃkhaa 寝かす ǂkhaa パン(地形) ǁkhaa 耕すnh : 有気 / 無声鼻音 ǀnhaa 草から探し出す ǃnhaa 種を取る ǂnhaa 先に行く ǁnham 向こうにn : 鼻音 ǀnaa 胃、腹 ǃnaa 器 ǂnaa 罠を見に行く ǁnaa 角ʔ : 声門化音 ǀʔao 血 ǃʔaa 知る、わかる ǂʔaa 風 ǁʔaa やっつけるk’ : 軟口蓋放出音 ǀk’ao しならせる ǃk’aa 腿外側の肉 ǂk’aa 気を失う ǁk’aa 花q’ : 口蓋垂放出音 ǀq’aa つまんで運ぶ ǃq’aa ジャッカル臭い ǂq’ai ヤニ ǁq’au 大きな獣道qx’ :口蓋垂破擦放出音 ǀqx’aa 水っぽい ǃqx’ai 根っこ ǂqx’aa 草のかけら ǁqx’aa 洗うx : 口蓋垂摩擦音 ǀxaa 肉 ǃxaa 下痢する ǂxaa どかす ǁxaa 日が高いqh : 口蓋垂有気音 ǀqhaa 陰唇 ǃqhaa 吐き出す ǂqhai 載せ押さえる ǁqham 蜘蛛(の巣)q : 口蓋垂無声音 ǀqaa 谷 ǃqao 注意深い ǂqaa 透明である ǁqae おろす、けずるɢ : 口蓋垂有声音 ǀɢoi もてあそぶ ǃɢaa 羽化した白蟻 ǂɢaa 脾臓 ǁɢai 蛆
交渉という相互行為:参与者の利害が問われる
〈応諾する〉 accept /〈拒否する〉 refuse
基本的な発語内行為:
〈要求する〉 require
ムーヴ move ⓒ Goffman, E.交渉のその後の展開を新しく方向づけるいっさいの言語行為 - 発話は聞き手を「動かす」 - ゲームの「手」:適切なタイミングで戦略的に繰り出す
【事例】「ボオツィを貸せ」訪問者Q→ 居住者S / P(脇役)おれにボオツィを貸せ おれは持っていないおれは厚い鉄の板を叩きたい 彼〔別の居住者〕のボオツィは小さい
小さいボオツィならある
Sの発話 「おれたち」 = 「おれたち男二人」α の系:「おれはボオツィを持っていない」β の系:「彼〔別の居住者〕のボオツィは小さい」
05 アッ、おれにはボオツィはない 07 彼のボオツィは小さい 14 うん、おれたちには、アエ、ボオツィはない 16 おれたちにはボオツィはない 彼の所にボオツィの小さいやつがある 18 おれにはボオツィはない 24 おれにはない、おれにはまったくない 28 ここにある小さいやつは軽い
同一命題の反復Qの発話γ の系:「おれは太い鉄を叩きたい」δ の系:「おれは小さなボオツィなら持っている」
21 おれは太い鉄を叩きたい
29 おれは太い鉄を叩く32 鏃を叩くやつならある34 だが、金槌ならある40 小さなボオツィならある
「ボオツィを貸せ」の基本構造01-03 Q:要求05-19 S: α1 β1 α2 α3 α4 β221 Q: γ124 S: α525 Q:質問「エッ! おれはどこへ行けばいい?」
26 S:返答「あんたは遠くに行くだろうな」27 (約1秒の沈黙)
28 S: β329-40 Q: γ-2 δ1 γ3 δ2 δ341-43 S:《ムーヴ》「ワイー、ボオツィはあるかもしれん」 「ケナーマシの所に人の耳をふさぐやつが」44 P:アー、ギュベ〔ガナの男の名〕やつが。でかいやつそのものが
50 S:あそこには石といっしょにそいつは[ある]
「ボオツィを貸せ」の基本構造01-03 Q:要求05-19 S: α1 β1 α2 α3 α4 β221 Q: γ124 S: α525 Q:質問「エッ! おれはどこへ行けばいい?」
26 S:返答「あんたは遠くに行くだろうな」27 (約1秒の沈黙)
28 S: β329-40 Q: γ-2 δ1 γ3 δ2 δ341-43 S:《ムーヴ》「ワイー、ボオツィはあるかもしれん」 「ケナーマシの所に人の耳をふさぐやつが」44 P:アー、ギュベ〔ガナの男の名〕やつが。でかいやつそのものが
50 S:あそこには石といっしょにそいつは[ある]
S( a ) : 年長者であるおれが、未熟なおまえに技術を教えた - おまえは自分で勝手に鏃を作った - だから、おれはおまえに金を払う必要はないK( b ) : おれは、自分で技術を覚えた - あんたがおれに命令したから、おれは鏃を作った - だから、おれはあんたに8プラの貸しがある。K( c ) : おれは、新しい鏃の作り方を始めた - また、おれたち若者が新しい狩猟袋の作りかたも始めた -今ではあんたたち年長者もそれをまねているS( d ) : おまえたちの作りかたは手間ひまがかかる - 小さくて弱い袋しかできない - おれたちがそれを採用したのは、単に民芸品として売るためだS( e ) : おれは、おまえがおれに返す金で砂糖や紅茶を買うだろう - おまえが返さないなら、おまえの妻からそれを取り立てよう - それもかなわなければ、おまえを裁判にかけよう。S( f ) : おれは以前、おれの義理の息子がしとめた獲物の肉をおまえにあげた - その見返りとして町で20プラぶんの食料を買ってくるよう言いつけた - おまえは10プラぶんしか買ってこなかったK( g ) : おれは、あんたの妻に2プラぶんだけ借りがある -町でその2プラをとっておいたが、空腹だったのでパンを買ったのだ
交渉の事例:「払え、いや払わぬ」
間接的な発語内行為としての「関係や事態の叙述」が全体として発語内的な力を発揮する
S( a )主張K( c )主張K( b )反駁
S( d )反駁 S( e )威嚇
K( g )弁明
直接的発語内行為としてのREQUIRE
直接的発語内行為としてのREFUSE+OBJECT
S( f )批判
ムーブ
ムーブ
ムーブ
順番どりシステム( Turn-taking System ) [H. Sacks et al.]
発話者は至近の未来に完結性を投射する(単語、句、文、物語など)聞き手はその完結性が実現する瞬間を「移行適切場」として認識する三つの選択肢に優先順位がついている:a )次話者が指名される(質問など)b )次話者の自己選択c) 現話者が話し続ける(物語がオチに達するまで、聞き手は b を抑制する)
移行適切場
K
Ph
N
Q
Extra-marital sexual relationships (zaaku) are prevalent among the |Gui.
Three types of simultaneous discourses, cooperative, antagonistic, and, parallel, observed in everyday conversations concerning a zaaku relationship (1987)
Male
Female
Marriage
Zaaku
Type C
Type A
Type P
P:自分はよそのキャンプに恋人をつくって子どもをほったらかしにするような人間じゃ ない。だからそばを通りかかっても、「この子はPの子だ」などとおれの名前が 呼ばれるのを聞いたことなどない
K: まったくその通り
KP
Type C : 協調的同時発話
協調的同時発話の一例
P Kおれはけっしてこんなことはしない、で、
おれは「エヘー」[と言う]けれどこんなふうに喋る
注意ぶかく子どもを生む男の人だ
おれがここにいるとき ふしだらで
人に対して恐れはしない、人、 彼が注意ぶかくなければ
おれが今いる所で 神霊の子たち[父なし子]をつくる
人、人、{おれは着く、人、人[の所へ]} おれはそんなことはできない。おれは人間だ
今、われわれ(皆)が {いるときに} そして注意ぶかくできる
今おれたちは住んでいるけれど
けっしてあんたたちは{聞くことはできない、現在は}
{いや、おれはできない}
おれたちの人が
おれの名前を{そこで}呼ぶ[ことなど] {いや}
K: おまえは能なしで、婚資も払えんようなやつだから「娘」をやるわけにはいかん。N: Pだって年老いて、おれと同様、働きがない。あんただって妻をめとるとき 大した婚資を払ったわけじゃあるまい。
Type A :対立的同時発話
K N
Nつまりおれは今に(……)おれは悲しくあきらめる
アエ、おれの所でおまえはうるさく話すから
おれは悲しくあきらめるのさ、アエ おれはおまえが好きじゃないぞ
おれたち二人自身が語るときに、おれたち二人は
向こうへ行け。おまえは出て行け、そして
アエ、何をおれたち二人はしゃべるのか 言うな、{(……)出ろ、おれの所から
正しいこのようなことについて、おれたち二人は語る
ことを語る、つまり{おれの所にある物あんたは
おれはおまえを無視するとおれはおまえに言う
食べるだろう。この女の子たちが大きくなったら、
おれはおまえを無視する
おれはこの子たちを養うことができる。 おれはおまえを無視する
ともかく、あんたは年寄りだ なんたることだ、なんてことを、アエ
おれの—おれの物をあんたは食べ、歳をとるのさ
ネローハよ! [娘を呼ぶ]
対立的同時発話の一例、その終結部分のみを示す
並行的同時発話の一例Pの小屋にhの過去の愛人Qが来て、夫の前でhと脚を絡ませてすわっている。Q:昔、踊りがうまかった。踊らなくなっても巧みな男を見ると贈り物をしたh:治療ダンスを無理やり受けさせられる悪夢を見た [hは膝の痛みに悩まされていたので、治療ダンスの話が持ち上がっていた]Q h
おれは、アエ、昔、踊りを、おれは昔踊りが
死んだ所でこのようにおれは昔やめた、踊りを。
{おれは昔}踊りがうまかったが、それは死んだ
そしてそれから
コバシ[踊りの名]{をおれは昔うまかった、そうして
彼ら二人はすると私の脛で私をつかんだ
で、食べる。おれの金は前に集まっていた 私の脛で私をつかみけれどこれはとっくに死んだ 私の脛を踏んづけたおれの金はとっくに食べられていた[が]
おれは賞賛させられた、それを で、[歌が]あんなふうに止まったまさにそのとき
おれたちは呼び、彼を来させた 彼ら二人は私を座らせたあれらはとっくに食べられた アエ、彼ら二人は私を殺すそれから、再び、{おれはそれを}おれのを払う
なんてことを彼ら二人はおまえ(f)にするのだろう
それらをおれは出す そう私の心でまさに思うときそのようにあれらの事どもは}見えるのだ 私は戻り逃げるおれは{昔よくしゃべったものだ で逃げ{で、それから}
同時発話論のまとめ
グイでは長い同時発話(オーバーラップ)が頻繁にみられる
1)協調的同時発話:類似した内容を発話し相手への賛意を示す2)対立的同時発話:相手の「声」を打ち消す⇒聞く耳もたぬ3)並行的同時発話:トピックの「ゆるやかな共有」 発話内容自体はバラバラ⇒連関性の分岐
「聞き手であること」 hearership :相手が話し終えるまで「待つ」同時発話を持続させる2つの行動選択肢a) 相手が話し終えるのを待たないb) 相手が話しはじめても話しやめない
日本人のルール:認知的な必要性がなくても、待たなければならない : must のルールグイのルール:認知的な必要性がなければ、待たなくてもよい : may のルール⇒多様なふるまいの可能性:冗談〜礼儀