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地球環境問題と協力ゲーム
藤田敏
地球環境問題の解決のためには国際協力が不可欠であり、現在多くの部題につい
て汚染物繋削減のための協力態勢をどう整えるかが訴し合われている。本論文では
ゲーム理論を逮用して、地球規諜の汚染問題と国家間の協力モデノレを解析する。プ
レイヤーは各留または地域とし、その戦略は汚染物質のおj減率とする。プレイ
ヤーは長践的な損失を最小化するように戦略を決定することを伎定する。実際の間
として地球掻暖化関題をとりあげ、 4つの地域からなる協力ゲームモデルを記述
し、解を求めた。その結果、盟際協力を実現するためには先進箆から途上国への}JIJ
払いが必要となること、民払いがない場合には、中E誌が協力態勢を抜けてただ乗り
する可能性が高いことが示された。最適な謀議芝効果yゲスの育IJ減率は約20%と{まいこ
とがわかった念さらに、これらの結果はパラメーターを少し変化させても大轄には
変イとしないことが感度分析によって示された。
1 .はじめに
さまざまな人為的;汚染物質に超国する地球環境問購は、現ft社会における最も重
を要する需懇の lつであると認識され、 1980年代以持その対策が国密会搬
などの場で熱心に話し合われている。これらの問題は人聞の経諸活動と捜雑に結び‘
ついており、原盤、対策、被害なども多i設にわたっているので安易に単純化して
えることには能検がともなうが、以下で辻入院の排出する特定の汚染物鷲がヲiき程
こす環境劣化が社会に影響を与える事実めみはj主目し、それを分軒の対象とする o
この問題のもつ護主要な性震としては、汚染物震の発生源および汚染による
企業、市民といったミクロレベルiまもとより国家という枠をも超えて地球規模に広
がる点、そして被害が長期的かっ不確実で、ある点があげられる。これらの点で地球
環境問題は、能来の公害問題と辻まったく質の異なるものであるといえる。
汚染の発生謙、被害がl国の需鰹にとどまらないことから、問題の解決に国際協
8ヌド経済研究 N0.32 , 1996.7 149
カが不可欠となることは明ら る。しかし地球環境保全に顎する
体的な協定は、未だ していない。多くの発諜途上国では、持来の潜在的
な経諸成長力があり、汚染物質割譲のための資本も整請されていなし、したがって
地球環境対策を行うとすると、それら的弱には過大なコストがかかることになる。
環境保全と経探成長とのトレ…ドオフが存在するわけである c それでも深製
が闘にみえる形で宜ち ことが確実であれば法上国も対策を行うであろうが、
は述べたように地球環境問題の被害は最期的であり、実際に影響を受けるの辻次
堂代以降の人々となることが予恕されている。また被害の組度も不確実である。以
上の点はより、途上冨では汚染物績の議出を削減するためのインセンティブが働き
にくし環境対策を先進欝に鐙せる傾向がある。しかし先進国は、環境対策を先進
ても効果は少なし途上国を含めた全世界での対震が必楽であると主
している。 tま界規模での汚染物禁制減を制度的iこ実現するのが器難になっている
のは、このような高北の政治的対立があるからだと考えられる O しかし現状を
していては不可逆的な環境破棋が生じる可読性も議定できないので、世界約な協力
に整えることが必要で、ある。
これまで環境問問への対策を経済学的に分続する研究では、環境汚染という外部
性を内部fとするために、汚染物巌排出とその割減の費用便議分軒がなされ、
震の最適管理方法が理論的に求められてきた。 研究では Falkand Men-
delsohn{1993}, Nordhaus{1991, 1994)がこうした斡組で地球温域住関鵠を扱い、
COzの削減率を求めている。また盟内外において、ある水準に COz排出量
を安定化させるのに必要な炭素税率が、エネルギー需給に襲するさまざまな仮定に
もとづいた大規模な計量詮議モ
(1992)を参頼人
によって されている〈たとえばAmano
地球環境問題を分析するとき、意思決定を行う主捧が冨家であるとすると、複数
の主体が存者匡し各3三井の決定が相互的立影響を及ぼすので、ケ、一ム理論を適用しで
それらを考惑に入れることが lつの有効なアフ。ローチとなる。各プレイヤーを讃と
し、その戦略を汚染物質の排出撃とすると、各爵の排出量決定iまその閣を
ての閣の科得また誌損失に彰響を与えることになる o ゲーム理論は、こうした条得
のもとでの各閣の合理的な意思決定を定盤的に分析するのに用いられる。ゲーム理
論の枠組で問贈を分析した例としては、ヨーロッパ全域での酸性雨問題を
Maler(1989)、それを官、現してフィンランド、 i日ソ漉聞の穀性雨に関する協力ゲー
ムのシミュレーションを符った Kaitalaet al. (1992)、簡単な モテ、ルを用い
150 8本経済研究ぬ32,1996.7
て?‘~ash 均衡解の性震を分析した Hoel (1991)、地球謹硬化についてわ協力ゲーム
を定式化し、コアが符在する条件などを求めたJIl島ら (1993)、認とく地球溢媛イ担ご
ついての非協力動的ゲームの Nash均禽を計算した Martinet al. (1993), Cesar
(1994)などがあり、分析の対象やモデルの構成法はさまざまである。しかしー較的
にいって、ゲ…ム理論を適用した地靖之環境問題の定最的分析辻今のところ数少なく、
これからの発援が期待される。
本稿で辻、地球環境対策についての協力ゲームモデルを記述し、その鮮をシミュ
レーションによって求める。ゲ…ムの解としては、仁という概念を患いる。モデル
では世界を 4地域に分審Ijし、各地域をブレイヤーとする。各地域の経済成長の規模
は外投的に与え、ぞれを制f却することはできないものとする。そして各地域が l
ごとにある汚染物質排出量の寄せ減率を決定すると L寸仮定をおき、その削減率を戦
略とする。各地域はそれぞれのこうむる将来の を価値基準として行動
る。この損失は、削減にかかるコストと汚染物賓の議積によるダメージを貨幣構
値で評繍したものの現衣樋イ誌の総和として される c 分析の手法i立川島ら(1993)
を参考にしているが、間論文での分析では各地識の戦略が 2ついロント合議での
を受It入れるか否か)であるのに対しそれを精密化し、無限戦略ゲームを解
しそして世界全体の損失を最小化する共同戦略および、各地壊の長認すべきコスト
などを求める o
環境対策についての取り決めが存荘しない場合、それぞれの地域は私的な損失を
最小化するように行動すると考えられる これは一般には世界全体の摘失
fとすることにlまつながらない。したがって世界全体の縞祉という置からみて最適な
状態を るためには、汚染物質削減についての拘束力のある協定をもう 全
地域がそれに従うようにしなけれぜならない。しかし協定を結ぶことによって
をこうむるお車壊があれば、その協定は不安定になるであろう。そこですべての地域
が合意に逮するためには、別払いというルールが必要になる。このような事壌をシ
ミュレーションによって明らかにするのが本稿の自約である。
以下2蔀では協力ゲームの窓式化と提携、仁などの概念について説明する。 3節
では地球環境需題についての協力ゲームモデルを る。 4節では地球温暖化問
地球縁者意書号霊童ともおカゲーム 151
をケーススタディーとしてとりあげたシミュレーション結果を示し、五節ではシ
ミュレ…ション結果の感度分析を行う。そして 6箆ではシミュレーション結果から
導かれる結論をまとめる。
2.協力ゲ…ムと提携
まず本節でi立以下の分析の理論的基礎となる協力
(1994)をもとに簡単に記す。
ムの定式化について、鈴木
ゲ‘ーム理論(gametheory)辻、社会問題を記述、解析するための道具として法
にわたり活用されている。ゲーム還論におけるゲームとは、ある開題を
るl組のルーノレのことを指す。ゲームにおいて:ま連数の意思決主主主体がlレ…/レにし
たがい行散を選択し、その結果として利得また辻コストを受ける。それぞれの意思
決定主体はプレイヤー(player)、その符動は戦略(strategy)と呼ばれる。ゲームに
辻、協力ゲームと非協力ゲームがある。協力ゲーム(cooperativegame)とは、
べてのプレイヤーの顎立とるべき戦轄についての合意が成り立っているゲームであ
り、非協力ゲーム (noncooperativegame)とは、そのようを京り決めが苓悲しな
いゲームである。
以下除ゲームは非対称な n人のプレイヤーによって行われる協力ゲ…ムであり、
戦略はそれぞれのプレイヤーによって l屈ずつ選択されるものとする o ここでブレ
イヤーがお草いに非対幹であると辻、それぞれのプレイヤーの間的関数(利得関数
またはコスト関数)が巽なる形をとっているという意味である。ゲームのプレイ
ヤーの集会を N口 {l,…,n} とおき、プレイヤ…j(εN)のとりうる戦略の集合を
U!とおしおブレイヤ…jE: Nが戦略 Uj巴 Ujをとったときに、あるプレイ
の受けるコストを fi(U)という関数によって表すc ここで Uニ (Ul,.",Un)であるc
プレイヤーiにとって、 fi(U)の穫が小さい方か望ましし、のは明らかである。
次に Nの任意の部分集合を提携(coalition)と時ぶ。 i高じ提撲に属するプレイ
ヤーの聞では十分なコミュニケーシ沼ンが行われ、提携としての共同戦略が決定さ
れる。提携としてプレイヤー全体の集会Nをとっても講わないし、ただ 1人のブレ
イヤーからなる集合、また空集合をとっても構わない。
協力ゲームで辻、任意の慌携SC)l"に対して、次のように
(S)を対定、させ、これを特性関数(characteristicfunction)と略ぷ。
v(S)コ=minmax uSεむSu:-l、-SEU
N-S
fi ( < us, UN-S > ).
される実数値v
(1)
ここで、 US,UN-Sはそ Sに属しているプレイヤ一、騰していないプレイ
ヤーの戦略を表すベクトルである(じsコエIIiEsUJo <US,UN-S>はそのときの全プレ
イヤーの戦略をプレイヤー 1のものから nのものまで嬬に並べたベクトルである。
152 日本救済研究ぬ32,1996‘7
(1)からわかる通り、 v(S) つまり S していないプレイヤーが 1
つめ提携を形成 Lて3にとって都合の悪い戦略をとる場合でも、提携sめ受ける
コストがそれ以上にはならないこと される僅である。 φについて誌
v(φ〉ニニOとおしこの特性関数によって協力ゲ…ムの詑述辻完了する O そして交渉
が行われ、 レイヤーのとるべき戦略が決定される。このとき必要に応じて、あ
るプレイヤーから億めプレイヤーに対する別払い (sidepayment)の譲渡がなされ
ることもある。このような手続を経てプレイヤーの戦略、コスト震設が決定される。
次に、このような協力ゲームの解として、どのようなものが遡当であるかについ
て述べる。いまある協定にもとづく として、フ。レイ けるコスト
のベクトノレがX=(Xl, ,., ,Xn)となったとするc ここでxは込山xi=v(N)をみたす
ものとする。このようなベクトル Xは配分(imputation)と呼ばれる。このとき
Sについて
ex (S) 2: Xi -V (S) (2)
とおくと、 ex(S') > 0となるような謹携stが存在するならばS'誌記分xを招苦する
であろう G したがってこの配分xを実現するような協定は不安定であることにな
る。仰のように定義される恥(S)を、配分 X ,こ対する提携 Sの超 (excess
demand)、または不溝(complaint)と呼ぶことにする。弘治)三五0,¥7Sこ Nとな
るような配分はコア(core)と呼ばれ、協力ゲームの重要な解の 1つとなっている。
2つ なる配分x,yが与えられているとして、すべて (2n通り) SI二対
るex(S),ey(訟を大きい]1麗 クトルをそれぞ札 ε(X), e (y)とおく。この
とき ε(討が ε(X)よりも辞書式]1盟序の意味において大きいならほxはyより受容
豹(acceptable)であるという Q ある配分xが、 x以外のすべての実現可能な配分
よりも受饗約であるなら この配分xはゲームの仁(nuc1eolus)であるという。
仁辻最大超過要求の最小化にともなう あり、提携関士の不満をお互いに均筒さ
せていき謁整告仔い、交法を させた結果の解である o したがって仁はコアより
も議定的な概念である c 日入のゲームにおいて、コアの伴在 には保証
されて拾いないが、仁 に存夜することが知られている(鈴木,中村(1976)参
地球渓境問題と協力ゲーム 153
3.地球環境問轄のモヂル
l節でも述べた通り、
分であり、世界全部での協力
を狩うためには一部の菌の努力だけでは不十
ある。そこで地球環境問題に関する協力
ゲームを記述し、その解を求めることを試みる。
まず世界全体を n地域に分割する。ブレイヤーは各地域とし、その集合を N=
{1,…,n}と表す。時間 tを離散的にとる。各地域の生康活動によって生じる特定の
汚染物質に注目し、時刻 tでの第 i地械の;汚染物質粗排出量を Ei(t)とおし Ei(t)
は外生的に与えられているものとするo 各地域の戦略は汚染物質の謹排出量からの
削iftOC率であるとし、これを a;(t)をさ[0,1]と
出量;ま(1-ai (t) ) Ei (t)となる。このとき
C(ai(t))がかかる。汚染物質を院議するために
よって時刻tでの第 i地域の純排
iこは削減率にlilSじたコスト
を下げたり、省エネ
ノレギーや代替エネルギーの関発のための投資が必婆となる。したがって都議によっ
て議域のGDPは減少するが、この減少率を寄せ減コストと表現する o
C ( • ),主連誌、単棄場部、議密に凸関数であり、 Ci(0)エニ0をみだすことを仮定する。
次に時刻tでの汚染物章一の大気中蓄穣葦 をM(t)とおき、活(t)が
M(t十日二 (l-o)主主(t)ーグ:Z(1 ai (t))伐 (3)lEN
という方韓式をみだすことを夜定する。ここで δは大筑中の汚染物質が吸収され
フQ σiま排出された汚染物質の中で大気中に入る ある。 (3)はこのような
しばしば慎われる単純な関保式である。各地域の戦略化 (t)が決定されれば、
動的過聴によって M(t)は変化していく。次に汚染による第 i地域へのダメージは、
汚染物質の蓄積量 M(t)だけに依存していることを依定し、ぞれを Di(M(t))と表
Di(・)も Cd・)と同じく、連続・単調増加で厳密に凸であることを絞窓する。
削減コストとダメージ辻貨幣蝿値で算定され、各地域の GDPYi(t)と
されているものとする。
ここで第 i地域の目的関数(議失〉を
τ fl (al,
P唱しi"-<::ふ Jコ
とおく。よ式において ai士 (al(0λ…,a; (T))であり、 T 辻考議する期開の終端と
なる時鎖、 ρは翻写i安訴すパラメーターである。目的関数は、 tニニOから tご立すまで
の各待望wでの要!J誠コストと活染によるダメージの現在留値の総和ということになる。
154 日本経ち等研炎 治.32.19吉6.7
このとき 2蔀と間じく提携Sc主に対する
v(S) =min max 2: f(く鮎,aN叩 s>) (5) aS 31¥-5 iES
と される。ここで as,aN-S はそ S している地域、属していない
地棋の全期聞の戦略を表すベクトルであり、<恥伽…s>はすべての地域の戦略を
地域 1から nまで並べたベクトルである。
初期時点 t=Oにおいて地域開で話し合いがもたれ、これから各地披がとるべき
長期戦略(削減率)が決定される。そtU主上のゲームの解を求めることに相当する o
w れを今後「協定を結Jむということにする o 協定詰拘東カをもっており、一度結
;まれれ江変更されることはなく、各地域がそれに従わなければならない。どのよう
4.
るかは、特性関数のf童;こま存している。 以上記述したゲームモデル
嬰題をもとに次箆で求めること iこする。
中でも、規模が最大で対策が屈難であるといわれるのが地球温暁
あるつ地球混域化問題は、大気中の温室効果ガス (greenhousegas:以下
GHGと略す)が地表からの赤外線放射を吸収することによって組こる
!京悶となっている。大気中の GHG濃度は産業革命以前に比べ約50%上昇している。
そしてそれにともない過去100年間に平均気温は0.3 0.6cC
ある(諜ヶ関地球議暖化問盟研究会(1991)などを参黒)。
カず
しく
し、
いる。
ここでは 3
る。つまり
〉〆
域を来語、
または湛面上昇を引き越こすという予測もなされて
について詳しいことは、まだ解明されていない部分が多い。
した協力ゲームのモデルを用いて、埼玉求湛礎化熊題を分続す
によって誹出される GHGであり、ダメー
るc そして堂雰を 4つの地域に分裂し、第1:1'滋
OECD諸国、第 3地域を中国、第 4地域をその
抱の臨々とおしさらは GHGの齢減コスト、軍暖化によるダメージがそれぞれ次
の式によっ されるとする O
C (a) cia3 (6)
地球環境問題と協力ゲーム 155
表 1 地域別各穂データ
コスト係数 ダメージ係数
1 1. 9, O. 9 I 1. 4, O. 6 0.04 3.0XlO-'
2 1. 6,む.8 I 0.5, O. 2 0.05 3. OX 10司?
3 4. 1, 2. 3 i 3. 4,上空 O. 20 3.0XIO-'
4 I 3.告, 2. 6 3. 4, 2. 1 0.11 3.0 X 10-7
Di(M) di(M-M(0))2 (7)
ここでM(O)はG豆G議度の初期{重である o (6)はNordhaus(1994)を、 (7)はFalk
and Mendelsohn (1993)を参考にし
1に各地域のコスト係数 ci.GDPYi粗排出量 El均増加率などの具体的な数{践
を記す。コストイ系数の憧iまBurniauxet al. (1992)と式(6)をもとに推算したもの
である。ここでダメージ係数についても地域ごとに推定すべきであるが、 GHG濃
度と平均気誌の上昇との関誌、また気誌上昇が社会に与える影響を定量的に評錯し
た研究は数少なく、特に途上器地域での影響について:ままったく来解暁であるとい
える。 議暖化による被害は、先進国地域よりも農業に絃存ずる割合の
域i二おいて深刻であると考えられるが、上ι述べた理由により、また塩暖化問題の
グローパルな性質を考獲して、ダメージ様、数には地域義をつけずに全霊界で共通の
f遣を用いた(Vidl= 3.0x10-7)。このf直は、以下の壊拠にもとづくものである。
GHG 譲渡が産業革命tJ、読のレベルの 2告iこなるとき、気i孟上昇は約 30
Cとなると
されている。このとき社会のこうなる被帯辻?‘~ordhaus(1994)によると GDPの
1.3%と推算される。この関保式を式的iこ代入して dの推定値3.0X10-7を得た。ま
たtコニOとなる時点を1990年とおき、 Tコ 60[年?とした。さらに式訟の中のパラメー
ターについても Nor設laus(1994)にならい δニヱO盈 004,グニ0.64とおいた。割引パラ
メーターρ泣0.96とした。
tJ、上の前提のもとで、各提携の特性関数値を求めた結果を表2に示す。表2の中
で、たとえば捷携{l}の特性関数の懐は0.64となっているが、これは第l地域以外
の地域の削減率がすべて Oのとき第 1地域のこうむる接矢の最小値が6400鐙ドルと
ることを意味する。ま 3には、表2の鑑から求められる仁と仁の配分を
156 日本経済研究 No.32,199ふ?
2 特性機数の値〔単位1012れレ〕
V(S) I s I V(s)
1. 23 I {1, 2,41 2.03
1. 37
{21 I 1. 14 I {1, 3} 3,4) 1. 73
(3) I O. 14 I (1, 4) N 1. 99
表 3 1=、別払いなどの計算結果〔単位1012ドル〕
531)宇ムい |納湖町i (対GDP比[0/0])
1 0.45 0.01 20.3 12.0 0.03(0.013)
G‘1吉 12.6 7. 8 0.04(0.009)
3 0.05 -0.08 l告.5 2. 6 O. 05 (0. 183)
4 ! 0.60 い O.12 20.3 11. 6 0.08(0.036)
何千J1. 99 G 18.9 ゑ 7 む.20(0.021)
するための鰐払いの金額およびそ5地域の共掲載籍、私的戦略、 り利益を
共再戦略(jointstrategy)とは、設雰全体の損失が最小値(ここでは 1兆9900億ド
ル)をとるときの各地域の戦略である。つまり協力態勢のもとでは、世界全母が共
開戦略をとるという協定を結ぶことになる。しかし共同戦略をとるとき、各地域の
損失辻仁の配分と る値をとる。したがって表3 ような尉払いが必要と
なる。ある地墳の別払いの震が立であることは、その地域がさら を行うこ
とを意味し、ぞれが負であることは、イ也から支払い奇受けることを意味する。地域
iの払的戦略(privatestrate師T)とは、地域iが怖の地域と議カしない{提携{i}とし
て行動する〉ときの最適戦略を指す。今後、設界全体が共同戦略、私的戦略をとる
状況をそれぞれ協力 非協力解と呼ぶことにする c もちろん戦略は持鴎ごと
なる畿をとる。表 3に宗す共同戦略、私的戦略のf臨ま60年誌の平均院議率である。
また地域 iのた り利主主(benefitof free-riding)とは、 i];1外の地域 民戦
時をとっているとして、地械 iだけが協定を抜けたときに、協定を守るときに比べ
てどれだけ自分の損失を減少させられるかを
地球環境問緩と漆カゲーム 157
3より、まずすべての地域において会開戦略が私的戦略よりも大きい鏡をとる
ことがわかるの非協力解における界全体の損失は2.39(X1012ドル)であり、協力
解よりもお先大きくなってしまう。協調関認のやで、各地域が勝手に行動をとると
きよりもよい状態が生じていることが示されるかしかし世界全体の平均割減率は、
協力謡勢においても18.9%であり、それほどきびしい能減は要求きれない。こ
をNordhaus (1994)わ計算結巣 と比較したところ、壊力解、非協力解にお汁る
GHG排出畿の比率(協力解での排出量が10%認ど低い)と自的関数の比率(協力懇
では非協力解に比べて0.004%法ど草生関数の畿が高い)という 2つの指標において
ることカ斗コかった。
3'ままた、 t伎界全体の損失を最小にする状態を実現するためには、主ι第2地
域から第 3、第 4地域への別払いが必要であることを示している。相対的にみて、
受ける別払いの額は、第 3地主設の方が大きくなっている。これはコスト係数の大き
い務 3地域は、相応の援助を受けることなしには GHGの削減率を共同戦略のレベ
ルまで上昇させないであろうということを示している。薮 2をみると提携{1,2,4}
の特性関数のf肢は、全提場Nのそれよりも大きくなっている。つまり欝 3地域の
協力がない場合、他の地域は必ずかなりの損失をこうむることになる。またただ乗
り利溢の対GDP誌をみると、別払いがない場合、この協力態勢を抜ける可龍,[笠の
高い地域が第 3地域であることも示される。以上により、第 3地竣{中盟)の今後の
GHG寄せ減が地球境礎化防止において議婆になることがいえるであろう o
5.感慶分析
爵箆ではパラメーターが標準値をとるときの計算結泉を示した。しかしパラメー
ターの鑓には不確実'詮があり、そのf症を変化させた場合に結果が大幅に変化すると
いう可能性がある。そこで本籍では実験計麗諒(designof experirnent討を罷いて
を宥い、パラメ…ターの変化が計算結果にどのような野響を与えるかを検
る。以下のシミュレーションでは関子数は 4とし、ぞれらを 2水準に変化さFせ
る。結果としては、協力解における世界全体の損失の郭付(N)のf齢、世界全体の
平均郎裁率、それに協力議勢を実現するために必要となる先進国から法上盟への別
払いの額をとる。因子の水準と計算結果の藷に織形の関係、が成り立つことを仮定し、
y=A8十e (8)
158 おヰ主総主等研究 No.32 .1996.7
4 罷子とその水準
水準
~子 パラメータ 託手ま| 擦主要{底
-1 1
F, ダメージ係数 d 3. OX 10-γ 2.4X10-7 3.6X10-'
F2 苦手~51パラメータ O.世6 0.952 O. 968
GHG吸収率 ; 6 0.004 0.0032 0.0048
F. ! GHG残存率 U G る毛 0.512 O. 768
一 一
表5 直交表と因子の割付け
告を号 μ F, F, F3 F. 結果
1 l ミ 1 1 1 l 1
2) 工 1 1 1 -1 1 -1 -1
3) I -1 1 1 工 l
4) 1 1 1 l -1 1 1 1
5) 1 -1 ミ -1 1 -1 l l
6) 1 1 1 l 1 1 1 1
7) 1 1 1 1 1 1 -1 l
8) ! 1 1 -1 I -1 l 1 1
〈 /、 ハ
μ e 1 e 2 e 3 e 4 i
とおしここで yは結果を並べたベクトル{上述の結果をそれぞれれぷ2,Y3とお
り、 A詰問予の水準を示す計画符列、。は因子の効果を示す変数からなる来知の
ベクトル、そして e辻 を訴すベクトルである。許i現行ヲIJAを定めると、シ
ミュレーションによって yが持られ、最小 2 により θの推定ベクトル Oが得
られる。これむよりそを龍子の変往が結果に及ぼす効果を誰定できる。この効果は、
1霞子の主効果、 2因子以上の交互作用じ区別される。実際詰 Aとして直交行到
をとり、…部実施を行う。各悶子;二番号づけを行い、 Fl,…,F4とおき(表 4参照)、
結果の平均織を μ、昭子 FIの主効果を供、因子 FIFjの交互作滋を}Cijとおしそし
て盟子の水準を…1,1と正規化しておしたとえば部子 d(ダメージ捺数)の標準値
泌総環境問綴と協力ゲーム 159
は3陶 OX10-7であるが、 2*準2.4X10…¥3.6X 10-7をとって
d'ニ (d-3.0X10…7)/ (0.6 X 10-7)とおき、 d'を新しい因子 Flとしてとる。このとき、
2つの水準はそれぞれ器準備の 2警Ij巻、 2割減とおいたものであり、この定め方に
統計的な担拠があるというわけではない。能の因子の水準についても、間援の定め
かたをした。実際に期いた重交表をき受5に訴す。
シミュレーシ双ンは 8回行いな/2実施)、各シミュレーション立1),2) ,…と番号
をつける。様 5のJ:tの 8次方行列は直交行列であり、式(8)のA に相当するo
居予は行列の中の一つの多1]に対応しており、行予1]の成分は若手シミュレーションでの
その臨予の水準を悲している。たとえ
で、は水準lをとり、 5)からむまで
子Flは、シミュレーション甘から心ま
1をとる。これを醤子 FlをAの第 291J
iこ説付けるという c これらの言語{れずにより、各交互昨用も割付けられることになる
が、ここでは FsF4の交乍用だけを考棄することにした。 3悶子以上の交互作用
については考えない。
6は8屈の ュレーション を示している。世界全体の損失の最大鐘ほ
表 6 シミュレーション純泉 (1012ドル〕
番号 y 1 yz y3 護主号 yl I y 2 [%ー y 3
4.22 24.5 O. 70 5) 12.6 。“ 10
2) 2.49 17.8 G‘27 6) 4.30 23.0 O. 50
3) I O. 65 12. 7 0.21 7) I 1. 39 18. 0 0.17
長〉 2.64 24.9 0.33 8) O. 76 13. 8 0.07
7 θの推定値
効果 yl y 2 y3
〈
μ 2. 19 18.4 O. 29
。1 む.31 1. 56 O. 08
D 2 0.83 1. 06 O. 10 /、
D 3 -0. 36 0.00 -1. 46
D 4 0.95 ゑ iヨ八
瓦 H O.合2 0.11 O. 01
160 お本総務研究 N0.32,19号6.7
4.30、最小程辻0.65であり、 6法以上の差がみられるc そして協力解における部減
塁手は10-25%の範躍に入っており、どのケースでもきび、しい削減が求められること
はない。必要となるJitl払いの額は、世界全体の損失の額にほぼ比俄している。
表 7は表 5、表 6をもとに推定されるベクトノレ吉の成分を記したものである c
すべての結巣において、 E九(GHG残事率)の影響が大きいことがわかる。特に削減
との相関が大きし今後の最適な GHG削減率を るためには、 GHGの大
気中のふるまいについての研究が重要になることが示された。交瓦作用については、
設立って大きなものはみられなかった。
6. 結論
本論文の分析によって薄られた知見を以下にまとめる。
地球這暖化陪懇の協力ゲームの解を求めた結果、 2050年までの長期的な全世界の
(自的関数)の最小値は約 2兆ド/しとなり、そのときの共開戦略(GHG前減率)
はおよそ15-20%となっ またこの状態を実現するための、 GHG蹴減に関する
国際協定が成立するためには、 ら途上罷へのJjlj払いが必要で、あり、潜在的
或長率が高く、コスト係数も大きい中国に:ま相対的に多額のJjtl払いが必要となるこ
とがわか eった。中国はただ乗り利益の対GDP も高く、中閣の今後の致策が地
球環境保全誌とって犠めて重要になることが示された。
不確実d控をもっパラメーターをいく で実験計酷誌による惑度分軒を行っ
たところ、 に最も影響を与えるパラメ…ターは GHG残存率である
ことが不された。シミュレーションは 85通りのケ…スについて行ったが、いずれの
場合も許算結果の定性的な性質i玄関様であった。注目されるのは、 GHG前
々25%程変であったことである。これ辻 どで提案されている自
標よりも;まるかに愈い龍である。地域分離の粗さ、諸関数の形状 る問題点も
あり、今回の結果が全部的 きるものであると できない。シミュレー
ション賠需の延長や、地域ごとのおj引パラメーターの相違を考癒するといったさら
なる分析、再投討も必要であろう。しかし GHG排出(絶対)景的削減や GHG濃
度の安定化といった実現不可能に近い目標を、現段階で議論するのはあまり合理的
でないと思われる。むしろ GHGの大筑中での挙委主など、自然科学的な基礎研究が
重要であろう。
出際協力を るためのノレールづくり、具体的立は協定 した地域iこ対す
ま患球環境問長選と主主力ゲーム 161
る をどうするのか、)JiJ払いをどのような るのかといったことが今
となる o
注釈
して有益なコメントを下さったレブ広 1) を表したい。
に残iされたあり得べき誤りは、すべて筆者の責任にJ帰する。
1 )こ 先進国地域は1990年レベルより そ削減、 ることと、途
上国地域は1990年レベルよりl.5倍の排出量の伸びが認められるというスキーム (Toronto
scheme) 怒れている。
2 ) 成分の倒数が閉じであるベクトル x,yの成分を大きいものから
異なる成分がx',ずで、あり、 x'>y'のとき、 x,立 yよりも
3) Nordhaus礼的4)はf伎界を 1つの地域として扱ってB1),
したとき、最初に
きいという o
用いているわけでは
ないので、 といった用語は現れない。ここでは我々のそ 簿、
非協力解がNor必1註協のそデノレでの「最適化ケース」、 「規制なしケースJ (J)終にそれぞれ
対応すると考え、ぞれらを比較した。我々のモデルでは、 GDPから GHG ストと塩
暖化によるダメージをと号|いたものの現在樋値総和を厚生関数として、計算を行った。
垂) 正規方程式ココ令解けばよい。
5 ) 因子 Fi,Fjが叡Hれすられる事IJの各成分の積を成分とする列は、 Aのやのいずれかの手IHこな
るが、それがFIF;の炎作用が審1]1寸けられる列となる。
6 ) この l文はレフェリーのブ子の御指摘による。
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