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ISO9001 認証取得の手引き トラック運送事業者のための ISO9001 (品質マネジメントシステム) 認証取得の手引き ISOの導入に向けて 改訂版 平成21年10月

トラック運送事業者のための ISO9001ƒˆラック運送事業者のためのISO9001(品質マネジメントシステム) 認証取得の手引き - ISOの導入に向けて

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ISO9001

認証取得の手引き

トラック運送事業者のための

ISO9001(品質マネジメントシステム)

認証取得の手引きISOの導入に向けて

改訂版

平成21年10月

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まえがき トラック運送業界は、燃料価格の高騰、世界金融危機等に相次いで見舞われ、現在、未曾有の

経済危機に直面し、個々の事業者の経営は非常に厳しい状況に晒されています。トラック運送事

業は、国民生活にとって必要不可欠なものであり、輸送サービス維持のため、業界を挙げて広範

な環境づくりに真剣に努力してまいりましたが、規制緩和による競争原理の加速により、事業者

間の凌ぎ合いが激化しています。 しかし、こうした熾烈を極める企業間競争は、荷主企業にとっても例外ではなく、経済のグロ

ーバル化が急速に進展する中、生き残りをかけた戦いが繰り広げられています。そうした状況の

中で、アジア各国等との国際物流が重要性を増す一方で、工場からの出荷あるいは 終消費地へ

の配送などは、依然としてトラック運送事業者が担っており、その重要性はますます大きくなっ

ています。近ごろでは、トラック運送事業者に対しても、安全、環境等に配慮したコンプライア

ンス経営が求められており、様々な輸送ニーズに的確に対応する能力が求められています。その

代表的なものが、輸送品質の確保であり、荷主企業の多くが輸送品質を重視するようになってい

ます。 このような荷主企業の要求に対し、ISOの認証を取得することによって業務の平準化を図り、

一定の輸送品質を維持していこうとするトラック運送事業者が増えています。ISOの規格は、

もともと製造業を基に構築されたという経緯があることなどから、トラック運送事業者にとって

は、規格の解釈が若干困難であるという面もありますが、ISOの認証を取得することによって、

輸送品質の客観的評価を得ることが可能となります。 いずれにしても、このようなISOの認証取得に対する様々な取組みは、個々のトラック運送

事業者のレベルアップを図るばかりでなく、輸送の効率化を実現し、事故防止や経営の改善、環

境負荷の軽減に大きく貢献することが知られています。トラック運送業界の社会的地位向上のた

めに、また輸送品質の一層の向上のためにも、今後もISOの認証取得事業者の増加が期待され

るところです。 一方、ISOのシステムを構築・認証取得し、運用するには相応の手間と、費用が必要となり

ます。また、構築するシステムは、トラック運送事業者に対応した内容でなければなりません。

そこで全日本トラック協会として下記の4つのマニュアル類を整備しました。このマニュアル類

はシステム構築の手間を低減させ、かつトラック運送業として経営ツールとなり得るシステム構

築、運用を支援するためのものです。これからシステム構築、認証取得を目指す事業者にとって

経営に役立つ有用なツールとして活用されることが望まれます。

1. トラック運送事業者のための

ISO9001(品質マネジメントシステム)・ISO14001(環境マネジメントシステム)

ISO 及び ISO9001・ISO14001 の概要

2. トラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)

認証取得の手引き― ISO の導入に向けて ―

準備から認証取得までの具体的な内容を解説

3. トラック運送事業者のための ISO14001(環境マネジメントシステム)

認証取得の手引き― ISO の導入に向けて ―

準備から認証取得までの具体的な内容を解説

4. トラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)標準マニュアル

ISO9001 のサンプル文書とその解説

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トラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)

認証取得の手引き

- ISOの導入に向けて -

目次

第1章. 準備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

1.情報収集

2.推進体制の編成

3.導入時初期教育

4.構築計画の策定

5.キックオフ

第2章. 構築 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

1.規格の理解

2.適用範囲の決定

3.品質方針の決定

4.文書化教育

5.現状業務の調査

6.文書作成

7.QMS導入教育(全員)

第3章. 運用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84

1.システム運用の開始

2.OJT教育(全員)

3.内部監査員の育成

4.内部監査

5.不適合への対応

6.マネジメントレビュー

第4章. 審査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98

1.審査機関の選択

2.審査(第1段階審査、第2段階審査)

参考: 1.規格関連解説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101

(1) JIS Q 9001 要求事項の概要

(2) 品質マネジメントの八原則

(3) 用語解説

2.品質マネジメントシステム体系図

3.審査機関一覧表

4.別版「トラック運送事業者のための ISO9001 標準マニュアル」作成文書一覧

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本手引きの概要

この「トラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)認証取得の手引

き― ISO の導入に向けて ―」は、ISO9001 の認証取得を目指すトラック運送事業者の方を対

象に、準備から認証取得までの活動の流れを、順を追って解説した手引き書です。

ISO の認証取得に向けた活動は、大きく分けると品質マネジメントシステム(Quality

Management System:QMS)を構築する「仕組みづくり」と人材を育成する「人づくり」の

2つが考えられ、この両輪を確実に進めていくことが必要となります。本手引きでは、この

2つの視点を基軸に、「QMS構築の流れ図」で示す段階に従って、各々の活動内容を解説し

ます。

本手引きは、ISO 規格の解説を目的として構成されたものではありませんが、必要に応じて

ISO の規格から抜粋された表現や要求事項を引用しています。引用は、 の枠の中に

記述し、できるだけトラック運送事業者になじみやすい解釈に置き換えた説明をしています

ので、認証取得を目指す場合、必ず ISO9001:2008(JISQ9001:2008)等の規格原典を参照し

て進めて下さい。なお、 新の規格は、過去の規格が製造業や大企業を前提としている記述

であったという反省を踏まえて、サービス業や中小企業などあらゆる業態・規模の組織に適

用できるように考慮され、さらに改訂が進められたものとなっています。しかしながら、依

然として随所に“製品”という言葉が使われており、あわせて「この規格で、“製品”という

用語は、“サービス”も併せて意味する。」とも定義されています。このため、本手引きを活

用されるトラック運送事業者の方は、“製品”を“物流サービス”と、また、記述されている

内容によっては“物流サービスという活動の結果”と意識的に読み替える必要があります。

認証取得に向けた活動を効率良く進めるために

ISO では、Plan-Do-Check-Act(PDCA)として知られる方法論を積極的に紹介しています。

計画(Plan)で方針とそれを達成するためのやり方を決め、

実施(Do)で決めた内容を実施し、チェック(Check)ではそ

こから得られた結果をチェック・分析し、処置(Act)で Cの

結果から是正や改善につなげますが、これを繰り返すという

意味で「PDCA のサイクル」を回すと呼ばれています。この手

法は、ISO を維持していく上でも有効ですが、認証取得のた

め ISO を構築する際に活用することにより、効率の良い作業

D C

【PDCA のサイクル】

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が期待できます。

ISO の構築に於いては、思うように進まなかったり、労力のわりに損失ばかりがかさんだり

する場合もあります。 初は、少し面倒な感じがするかもしれませんが、構築のための活動

を、(P)計画的に、(D)実施し、(C)内容を確認しながら、(A)より良くするように心がけて進

めることが、結果的に近道になると考えて下さい。

「トラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)標準マニュア

ル」との関係

本手引きでは「標準マニュアル」という語句が随所に使われていますが、これは別版の「ト

ラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)標準マニュアル」を示す

ものです。同マニュアルには具体的な文書例や、その一部解説が記載されていますので、本

手引きをお読みいただく際に参考にして下さい。

なお、本手引きの巻末にも、マニュアルとして作成すべき文書の一覧を記載していますの

で、合わせて活用して下さい。

「組織」の表現ついて

トラック運送事業にたずさわる皆様にとって、「事業者」という呼び方はなじみ深いものか

もしれません。しかし、単に「事業者」と表現したとき、トラック運送一本に絞って事業を

営む会社と、トラック運送事業が会社の中の一部である場合では、ISO の規格が意図する内

容が正しく伝わらないことがあります。

ISO では、会社、法人、企業、団体、個人業者、協会、若しくはこれらの一部や組合せを「組

織」という呼び方をします。本手引きでは、正確な表現をしなければならない場合「組織」

という名称を使用し、必要に応じて「自らの組織」、「外部の組織」と表現します。

トラック運送事業

A会社 B会社

トラック

運送事業

その他の

事業

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【QMS構築の流れ図】

認 証 取 得

第4章

第3章

第2章

第1章

5.現状業務の調査

2.適用範囲の決定

4.内 部 監 査

2.審査(第1段階審査・第2段階審査)

5.不適合への対応

1.情 報 収 集

2.推進体制の編成

3.導入時初期教育 4.構築計画の策定

5.キ ッ ク オ フ

1.審査機関の選択

仕組みづくり 人づくり

7.QMS導入教育 (全員)

1.システム運用の開始

6.マネジメントレビュー

3.内部監査員の育成

6.文 書 作 成

3.品質方針の決定

4.文 書 化 教 育

2.OJT教育(全員)

1.規 格 の 理 解

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第1章 準備

構築や運用をスムーズに行うため、また予定した期間内での認証取得を確実なものとする

ために、実質的な作業に入る前段階として「準備」を行います。ISO は経営のための仕組み

の一つであることから、構築される仕組みについても既存の組織やシステムに大きく関わり

をもつことになります。このため、準備の段階から経営者の深い関与が必要とされます。

【準備の流れ図】

1.情 報 収 集

2.推進体制の編成

4.構築計画の策定

5.キ ッ ク オ フ

仕組みづくり 人づくり

構 築 へ

・・・ 5 ページ

・・・10 ページ

・・・15 ページ

・・・17 ページ

3.導入時初期教育

・・・19 ページ

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1. 情報収集

品質マネジメントシステムの構築という目標をできるだけ効率良く達成するために、 初

に行う作業が「情報収集」です。具体的な活動は、ISO に関する文書や情報を収集し、調査、

検証することですが、参考とすべき文書の代表的なものとしては次のようなものがあります。

<全日本トラック協会の発行物>

① トラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)・ISO14001

(環境マネジメントシステム)

ISO及びISO9001・ISO14001の概要と、導入を決める際の判断情報を簡潔に説明したもの。

② トラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)認証取得

の手引き-ISO の導入に向けて-

ISO9001 の導入を決定した事業者に対して、準備から認証取得までの具体的な内容を

解説したもの。(本手引き)

③ トラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)標準マニ

ュアル

トラック運送事業者の利用を考慮した ISO9001 のサンプル文書とその解説。

<ISO の規格>補足1

④ JIS Q 9001:2008 (ISO9001:2008)品質マネジメントシステム-要求事項

品質マネジメントシステムに関する要求事項を規定したもの。これらの要求事項は、

組織が内部で適用するため、審査登録のためや契約のためにも利用できる。

⑤ JIS Q 9000:2006 (ISO9000:2005)品質マネジメントシステム-基本及び用語

品質マネジメントシステムの基本を説明し、本シリーズで用いられる用語を規定した

もの。

⑥ JIS Q 9004:2000 (ISO9004:2000)品質マネジメントシステム-パフォーマンス

改善の指針

ISO9001 で規定する要求事項の範囲を超えて、組織の実施状況の継続的な改善を目指

そうとする場合の手引き。

⑦ JIS Q 19011:2003 (ISO19011:2002)品質及び/又は環境マネジメントシステム

監査の指針

監査の管理、内部または外部監査の実施、監査員の力量及び評価についての手引き。

補足1:

国際規格であるISOにおける公用語は、英語、仏語、ロシア語の3ヶ国語であるため、技

術的内容及び規格票の様式を変更することなく日本工業規格であるJISに翻訳されます。

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【ISO 規格番号と JIS 規格番号の関係】

ISO 規格番号 翻訳 JIS 規格番号 グループ名称

ISO9000:2005 → JIS Q 9000:2006

ISO9001:2008 → JIS Q 9001:2008

ISO9004:2000 → JIS Q 9004:2000

シリーズ

ISO19011:2002 → JIS Q 19011:2003

ファミリー

なお、ISO9000、ISO9001、ISO9004 をまとめて「ISO9000 規格シリーズ」や「ISO9000s」

と呼ぶことがあります。また、上記のシリーズに監査の指針である ISO19011 を加えて

「9000 ファミリー」と表されている場合もあります。

この他にも、インターネット上やその他の書物として、多くの参考にできる情報がありま

すので、必要に応じて活用して下さい。また、トラック運送業界の ISO に関連する資料や案

内等が必要な場合は、都道府県トラック協会及び全日本トラック協会にもお問い合わせ下さ

い。

ここで集められた情報は、この後の構築や運用の活動の中で効果的に利用していくことに

なりますが、準備の段階では、

「(1)取得目的の明確化」

「(2)自力で取得を目指すか、コンサルタントを活用するかの決定」

を充分に検討する必要があります。

次に、この2つの課題の簡単な説明を記述しますので、参考にして下さい。

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(1)取得目的の明確化

認証取得を決定した理由や ISO の仕組みを取入れることの目的を、収集された情報を基に

明確にして下さい。

ISO のマネジメントシステムは、組織全体に関わる大きな仕組みですから、特に、経営層

に取組みに対する曖昧さがあると、従業員やドライバーの皆さんが意義を見いだせず、結果

として構築も運用もうまくいかなくなります。ISO を「経営のための道具」ととらえ、自社

の弱点や経営課題といった問題に対して、これから作り上げる仕組みがどのように生かせる

かを検討し、ISO の必要性と時間や労力をかけて取組むねらいを明確にして下さい。

認証取得の目的や心構えについては、全日本トラック協会発行の「トラック運送事業者の

ための ISO9001(品質マネジメントシステム)・ISO14001(環境マネジメントシステム)」で

わかりやすく説明していますので、参考にして下さい。

【経営のための道具としての考え方の例】

利益の増加

売上げの増加 コストの削減

企業イメージの向上

仕事の標準化

企業体質の改善

従業員意識の向上

社員教育の充実

顧客満足の向上

事故防止・事故削減

コミュニケーションの向上

他社との差別化

ISO 導入の目的

継続的な

事業改善

コンプライアンスの徹底

後継者の育成

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(2)自力で取得を目指すか、コンサルタントを活用するかの決定

1)コンサルタントの活用について

ISO がまだ過渡期であったころとは異なり、 近では認証取得に関連する情報が比較的容易

に入手できるようになってきました。このため、コンサルタントを使わず自社だけで ISO に

取組むという選択もあります。

一方、コンサルタントを活用する場合には、以下のような効果が期待できます。

・ 活動期間の短縮

・ 推進チームの負担軽減

・ 規格要求事項の理解の促進

・ 効率の良い構築作業

・ 外部者の参加による緊張感の維持

・ ISO 関連の 新情報の入手

しかし、コンサルティングには相応の費用も発生しますので、構築にかけられる予算、人

員数、時間などを考慮して決定しなければなりません。加えて、コンサルティング会社やコ

ンサルタントは能力も質も千差万別ですから、目的にあったコンサルタントをいかに選定す

るかを考慮する必要があります。

その際のひとつの目安として、「トラック運送事業の実務や業界事情に詳しいコンサルタン

ト」という選び方があります。また、考え方によっては、コンサルティングの活用は仕組み

の骨組み部分の構築に留め、残りは自力で行い、費用の軽減を図るという判断もあるかもし

れません。

何れにしても、コンサルタントの選択ミスから「過大または過小なシステムになる」「文書

が過度に難解、複雑なものになる」「余分な手間、費用がかかる」ということがないように、

充分に検討して決定しましょう。

2)単独コンサルティングと合同コンサルティングについて

コンサルティングの活用を検討する際には、コンサルティングを単独で受けるか、合同で

受けるかという選択も考慮すると良いでしょう。

① 単独コンサルティング

コンサルティングを単独の事業者と契約することを「単独コンサルティング」とい

う呼び方をしますが、一般的には単に「コンサル」といった場合には単独を指してい

ることが多いようです。単独コンサルティングでは、1社でコンサル会社やコンサル

タントと契約しますので、料金的な負担が課題と考えられます。

一方、単独でコンサルティングを受けるメリットとしては、以下が考えられます。

・自社にあったきめ細かいコンサルティングを受けられる

・細部まで自社に適合した内容で構築できる

・構築初期から完成度の高いシステムにできる

・自社のペースで構築できる

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② 合同コンサルティング

同一地域の複数の事業者が同時に認証取得活動を実施する場合や、共通する内容を

合同の集合教育で実施する方法を通常「合同コンサルティング」と呼びます。

合同コンサルティングのメリットとしては、以下が考えられます。

・低料金でコンサルティングが受けられる

・他社と協力し合いながら進めることができる

・他社の取組み方が刺激になる

・サンプルの提供や共有情報を活用できる

合同コンサルティングといっても、経営者の考え方、ISO に取組む目的、会社の規模や営

業所の数、トラックの台数や従業員数、仕事の内容や方法など、ISO を構成する要素はそれ

ぞれ違いますので、当然でき上がる仕組みは自社独自のものとなります。

一般的には、規格解説、現状業務の調査方法の解説、文書化教育、内部監査員の育成など

の共通する内容を集合教育で受け、それ以外の支援は単独でコンサルティングを受けるとい

う手法が多いようです。

なお、都道府県トラック協会によっては、合同コンサルティング方式など ISO に関連する

取組みを積極的に進めています。特に低コストでの ISO の取組みを検討されているような場

合には、合同コンサルティングの実施の有無を、 寄りの都道府県トラック協会までお問い

合わせ下さい。

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2. 推進体制の編成

既存の業務とは別に、ISO の品質マネジメントシステムを構築するという新しい仕事を行う

ことになりますので、これらの作業を適切に実施するための「推進体制」をきちんと確立し

なければなりません。

また、この構築のために編成した推進体制は、多くの場合、構築後システムを正式に運用

する際、体制の維持にその機能が反映されることになります。加えて、構築の段階では、仕

組みを作ったり新たに文書を作成したりと、一般的には維持よりも労力が必要だということ

も考えておかなければなりません。

これらの要件を考慮し、適切なメンバーを選任して推進体制を作り、構築に取組むことが

肝要です。

【ISO 推進体制の例】

参照ページ

(1)トップマネジメント

(2)管理責任者

(3)事 務 局

(4)推進メンバー

社長

専務

総務部長

運行管理者 整備管理者 事業所課長 営業所課長 運輸部課長

推 進 体 制 図 選任の例

11 ページ

14 ページ

14 ページ

13 ページ

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(1)トップマネジメント(経営者)

<構築時>

ISO の規格では、トップマネジメントを「 高位で組織を指揮し、管理する個人又はグルー

プ」(JIS Q 9000:2006)と定義していますので、一般的には社長のことを指します。

規格では、多くの要求事項が記述されていますが、それらをどのように実施するか、どこ

までの深さや内容で取組むかまでは定められていません。そこで、これらの多くの要求事項

を、自社のレベルや導入の目的にあわせて適切に満たすために、どのように、どこまでの内

容で構築するかを決める必要があります。この決定の 高責任者が、「トップマネジメント」

です。

規格は、品質マネジメントシステムの構築に、トップマネジメントが積極的に関わること

を要求しています。推進チームに任せきりにするのではなく、構築の段階から進んで関与す

るようにして下さい。

<システム運用時>

トップマネジメントは、品質マネジメントシステムにおける組織の 高責任者であり、本

システムが確実に構築されること、実施されること、継続的に改善することに深く関与する

ことが要求されています。

規格では、トップマネジメントに関して多くの要求事項が記述されており、本手引きでも

追って解説をしますが、ここでは「経営者の責任」として 初に記述されている内容を見て

みましょう。

(注意:品質方針、品質目標は第2章 35 ページ、マネジメントレビューについては

第3章 95 ページで解説します。)

5. 経営者の責任

5.1 経営者のコミットメント

トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの構築及び実施、

並びにその有効性を継続的に改善することに対するコミットメントの

証拠を次の事項によって示さなければならない。

a)法令・規制要求事項を満たすことは当然のこととして、顧客要求事項を満たすことの

重要性を組織内に周知する。

b)品質方針を設定する。

c)品質目標が設定されることを確実にする。

d)マネジメントレビューを実施する。

e)資源が使用できることを確実にする。

( JIS Q 9001: 2008 )

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このように、記述の内容は“コミットメント”という言葉を使って経営者の責任を明確に

しています。“コミットメント”は、強い約束や誓約、または責務という意味で使われており、

ここに示されている内容に「徹底的に関わること」「進んで関与すること」と考えて下さい。

そして、 も具体的な“コミットメント”の表れが“品質方針”ということになります。

特に、“法令・規制要求事項を満たすことは当然のこと”とされていますので、これについ

ては当たり前の要求事項ととらえて下さい。その上で、顧客要求事項を満たすことの大切さ

を組織内の全員に知らせなければなりませんので、この周知の方法についても検討が必要で

す。

顧客要求事項については、以下の「顧客重視」でも経営者の責任とされています。

規格では、このように“確実にしなければならない”という表現が多く使われています。

求められている解釈は、運送事業で日常使う表現や意味と少し違いますが、この表現を理解

することは、ISO を進めるポイントにもなります。

規格の「確実にする」とは、「求められていることが間違いなく実施される状態であること」

を意味し、これに対して責任をもつことをいいます。少しわずらわしいですが、「決して野放

しにはしておかない」そして「常に管理された状態にすること」と理解して下さい。

さて、この要求事項では、“トップマネジメントは”“確実にしなければならない”とされ

ていますので、上記の解説を利用して、トップマネジメントの責任で何かを管理された状態

にすると考えます。その何かは、“顧客満足の向上を目指して”、“顧客要求事項が決定され、

満たされていること”になりますので、本当にお客様が求めていることをはっきりさせて、

それを満たしていこう、ということになります。

お客様が求めていることについては、「当然わかっている」「当たり前のことだ」と思うか

もしれませんが、ISO では、それが思いこみや根拠のない予想ではない仕組みを要求してい

ます。この仕組みが上記の規格末尾の括弧書きで参照となっている 7.2.1 や 8.2.1 につなが

ります。それぞれの内容は本手引きの以降の章で紹介しますが、“顧客満足の向上を目指して”

という目的に対して、“顧客要求事項が決定され、”という部分は 7.2.1 の「製品に関連する

要求事項の明確化」(58 ページ)を、“顧客要求事項が”“満たされていること”の方法の一

つとして 8.2.1 の「顧客満足」(72 ページ)を参照します。

少し長い説明になりましたが、規格の要求事項は上記のように読むという参考にして下さ

い。

5.2 顧客重視

顧客満足の向上を目指して、トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され、

満たされていることを確実にしなければならない ( 7.2.1 及び 8.2.1 参照 )。

( JIS Q 9001: 20008 )

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(2)管理責任者(品質管理責任者)

<構築時>

管理責任者は、トップマネジメントを補佐し構築の責任を負います。

構築の推進体制においては、実質上の統括リーダーの役割りを担うことになり、通常は、

ISO 教育の責任者でもあります。

<システム運用時>

管理責任者は、以下の規格要求事項のように社内の管理層の中から、品質マネジメントシ

ステムのまとめ役として任命されます。すなわち、経営的な視点を持ち、トップマネジメン

トに代わって要求事項を実現していく「要の人」といえます。

規格の要求では、「マネジメントシステムに必要なプロセスの確立、実施、維持を確実にし、

これらの状況を経営者に報告する責任と義務がある」とされています。加えて、「組織全体に

わたって、顧客要求事項に対する認識を高める」ことも「確実にする」とされていますので、

まずは、従業員やドライバーに、お客様の要求事項を満たすことが、自らの仕事にどのよう

に役だっているかを正しく理解してもらうことが必要になります。そして、「目標を達成させ

ていくなどの活動」を通じて、「この認識がさらに高まる状態にすること」が管理責任者の責

任と義務になっています。品質マネジメントシステムにおいて、これだけの内容が任される

役柄であることから、「要の人」という表現は決して過言ではありません。

(注意:文中の点線の下線を施した部分は原国際規格にはなく、理解のため JIS で追加されたものです)

なお、規格中の“プロセス”については、「第2章構築 5.現状業務の調査(49、50 ページ)」

の解説を参考にして下さい。

5.5.2 管理責任者

トップマネジメントは、組織の管理層の中から管理責任者を任命しなければならない。管理

責任者は、与えられている他の責任とかかわりなく、次に示す責任及び権限をもたなければ

ならない。

a)品質マネジメントシステムに必要なプロセスの確立、実施及び維持を確実にする。

b)品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況及び改善の必要性の有無について、

トップマネジメントに報告する。

c)組織全体にわたって、顧客要求事項に対する認識を高めることを確実にする。

注記 1 管理責任者の責任には、品質マネジメントシステムに関する

事項について外部と連絡をとることも含めることができる。

注記 2 管理責任者は、上記の責任及び権限を持つ限り、一人である必要はない。

( JIS Q 9001: 2008 )

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(3)事務局

<構築時>

事務局は、進捗状況、スケジュール、資料類の管理や阻害要因の排除など、構築を進める

上で、関係部署・関係者間の調整や支援の活動を管理責任者に代わって実施し、管理責任者

にその内容を報告します。

また、審査機関、コンサルタント、外部の専門家、支援団体等との対外的な窓口として、

さらには、議事録の作成、通知や連絡などの役割りが考えられます。

<システム運用時>

構築後は、システムの運用・維持管理に役割りを移行し、管理責任者を代行・補佐するこ

とになります。

管理責任者と違って、規格で要求されている機能ではありませんので、組織の規模や特徴

などの状況を考慮して進めて下さい。

(4)推進メンバー(ワーキンググループ)

<構築時>

推進メンバーは、構築における実作業部隊として、主に業務分析と文書作成に従事します。

実際の現場での仕事のやり方や活動を分析し、必要に応じてその手順を作成することにな

るため、本業や現場での業務をよく知っている人が必要となります。ただし、ISO の構築の

ために本業に支障が出ないよう、認証取得範囲の中の部門や業務のバランスも考慮してメン

バーを選定しましょう。

<システム運用時>

上記のように構築のための分析や文書化が目的であった場合、システムが確立したところ

で任を終えるという考え方もあり、その場合には解散することになります。ただし、構築後

のシステムの「運用」に役割りを移行し、継続して関わっていく方法もありますので、組織

の状況や目的を考慮して決定して下さい。

(5)兼任について

ここまで、推進体制の例を説明しましたが、構築のための体制を組んで進めるかどうかも

含めて、構築作業そのものについては、規格で推進体制や役割りが決められている訳ではあ

りません。

トラック運送業界では、本業ですら兼任を余儀なくされていることは少なくありませんの

で、上記のような役割りを専任する推進体制は組みにくいかもしれません。その場合には、

組織の実情にあわせて、推進の役割りを兼任することも視野に入れた体制を編成する必要が

あります。

特に、兼任体制をとる場合、役割りが曖昧にならないように、推進のための何を受け持つ

か、はっきりと決めておくことがポイントになります。

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3. 導入時初期教育

ISO の構築時の教育には、大きく2つの目的があります。

一つは、『仕組みを効率良く正しく構築するため』。もう一つは、『ISO の仕組みを組織内に

違和感なくスムーズに浸透させるため』です。

また、教育を効果的に進めていくために、以下のようなポイントがあります。

<ISO 教育の3つのポイント>

その1:段階を踏んで教育レベルを上げること

ISO にまつわる全ての事柄が難解ということはありません。しかし、ISO には、難しい解

釈や特別な知識を要するという一面もあります。これら高度な内容からいきなり教育を始

めたのでは、効果的ではありませんし、場合によっては ISO への取組みの意欲を失わせて

しまうかもしれません。教育内容は適切な段階を経て、徐々にレベルを上げるように心が

けると良いでしょう。

その2:役割り、管理レベルなどの差によって教育内容を考慮すること

従業員教育だからといって、全て一律とは限りません。チームリーダーや要となる役割

で ISO にたずさわる方、ドライバーや現場作業として ISO に関わる方と、その目的にあわ

せて教育時期、回数、内容を考慮しましょう。

その3:継続させること

多くの場合、時間と共に記憶は薄れてしまいます。

構築には半年、1年という期間が必要となりますので、その間にまったく ISO にふれる

機会がなければ、ほとんどの内容を忘れてしまうかもしれません。

ISO 教育は、一度やれば終わりとは考えず、継続的に実施することが重要です。

以上のことを踏まえて、準備の段階で行う初期教育を計画し、実施します。

(1)推進体制のメンバーを対象にした教育

仕組みを効率良く正しく構築するため、推進体制のメンバーに対する教育を実施します。

推進体制は、前記したような個別の役割りを担って構成されますので、目的にあった内容で

教育を進めて下さい。

特に、推進体制のメンバーは、この後 ISO の「規格の理解」というやや難しい課題に取組

まなければなりませんので、できるだけスムーズに次の段階に移れるように教育や情報提供

を行って下さい。

なお、トラック協会主催の「ISO 概要セミナー」や「ISO 実践セミナー」などの外部講習会

を活用することは有効な方法です。

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(2)組織全体を対象にした教育

ISO のシステムを組織内に違和感なくスムーズに浸透させるため、従業員に対する教育を

実施します。

通常この段階の教育レベルは、構築作業に直接関わりを持たない従業員が、経営者による

キックオフがされた時点で「ISO・・・何のこと?」とならない程度の初歩的な内容で問題ない

でしょう。

トラック協会主催の「ISO 概要セミナー」の資料や「トラック運送事業者のための ISO9001・

ISO14001」などが活用できます。また、ISO を知るための資料として、ISO9000 シリーズの考

え方の基となる「品質マネジメントの八原則」を添付(104 ページ)していますので、参考

にして下さい。

なお、教育対象は、認証を取得する範囲内の従業員というのが基本ですが、上記の目的に

有用と考えられるのであれば広げてみるという方法もあります。

(3)導入教育の際の注意点

1)教育記録について

まだ準備の段階ですから、教育や訓練についての明確な取決めがないのが一般的です。

しかし、ISO では、「教育、訓練、技能及び経験について該当する記録」を求められること

になります。今後行われる ISO に関連する教育は、誰が、いつ、どのような教育を受けた

のかを記録するように心がけて下さい。

そして、実際に教育・訓練に関する手順が確立したら、その手順に従った計画的な教育

を実施し、定められた正式な様式や書式で記録を残すようにします。

2)否定派とのコミュニケーション

組織の中には、偏った情報、誤解、一方的な意見の影響などにより、ISO に否定的な考

えの方もいるかもしれません。強引に説得する必要はありませんが、今後の推進のマイナ

ス要因とならないよう、この段階からよく意見交換をして下さい。

情報量の少なさが否定の原因である場合がありますので、注意して進めましょう。

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4. 構築計画の策定

日常業務との兼ね合いも考慮して効率良く作業を進め、目標とする期日までに認証を取得

するために、構築の全体スケジュールを策定します。 一般的には、構築の準備から認証の取得までの期間は 10 ヶ月前後が適切と考えられますが、

組織の規模や取得の範囲、また構築にかけられる人員数などを考慮して決定しましょう。

【ISO9001:2008 認証取得モデル日程例(期間を 10 ヶ月とした場合)】

12月 1月 2月 3月 4月

日   程 準備 構築

  活 動 内 容

1 情 報 収 集

2 推 進 体 制 の 編 成

3 導 入 時 初 期 計 画

4 構 築 計 画 の 策 定

5 キ ッ ク オ フ ☆

1 規 格 の 理 解

2 適 用 範 囲 の 決 定

3 品 質 方 針 の 決 定

4 文 書 化 教 育

5 現 状 業 務 の 調 査

6 文 書 作 成

7 Q M S 導 入 教 育

1 シ ス テ ム 運 用 の 開 始

2 O J T 教 育

3 内 部 監 査 員 の 育 成

5 不 適 合 へ の 対 応

6 マ ネ ジ メ ン ト レ ビ ュ ー

1 審 査 機 関 の 選 択

2 審査申請

☆審 査

(第1段階審査・第2段階審査)

準備

構築

運用

審査

4 内 部 監 査

教 育

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例えば、準備作業を初めてから認証取得までの期間を 10 ヶ月とした場合、これを基に各活

動に要する日程を割り当て、無理や無駄がないかを判断して個々の期間や目標の期日を調整

します。

なお、審査を受ける場合には、仕組みを完成させてからその内容で正式に運用させた期間

として通常3ヶ月以上必要とされますので、スケジュールを組む場合には考慮に入れて下さ

い。(審査の詳細は第4章 98 ページで)

次に 10 ヶ月で認証取得するとした場合の例を示します。

5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月

運 用 ☆ 認 証 取 得

準 備 実 施 報 告

第 1段 階 第 2段 階   判 定 委 員 会

☆ ☆ ☆

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5. キックオフ

トップマネジメント(経営者)が、ISO の導入を宣言することを「キックオフ」といいま

す。これはトップからの「試合開始」の号令ともいえるでしょう。

ISO の的確な構築と認証の取得は、一部の管理者や選ばれたメンバーのみでは実現できま

せんので、全体の取組みであることを周知すると同時に、ここから「ISO 認証取得のための

構築作業が開始される」ことを全社的に決意表明します。特にキックオフという決められた

様式はありませんので、宣言を行う趣旨を考慮して ISO 導入の目的、プロジェクトチームの

紹介、日程の明示などを盛り込んで、実態に見合った内容で実施して下さい。

なお、表明は内部に向けたものだけとは限りません。対外的に取組みを宣言することによ

って、企業イメージの向上や構築日程を守るための自らの励みにすることができます。

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第2章 構築

認証取得までの活動は、仕組みとそれに見合った人を育成する「構築」と、でき上がった

仕組みを定着させるための「運用」の2つに分けることができます。 第1章では、この2つが順調に進められるために「準備」を行いましたので、これらの結

果を効果的に利用して、次のステップである「構築」を実施します。

【構築の流れ図】

5.現状業務の調査

2.適用範囲の決定

3.品質方針の決定

6.文 書 作 成

4.文 書 化 教 育

7.QMS導入教育(全員)

運 用 へ

仕組みづくり 人づくり

1.規 格 の 理 解 ・・・21 ページ

・・・25 ページ

・・・35 ページ

・・・39 ページ

・・・49 ページ

・・・76 ページ

・・・82 ページ

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1. 規格の理解

規格の要求事項といった場合、『ISO9001:2008(JISQ9001:2008)品質マネジメントシステ

ム-要求事項』で規定しているものを指します。規格は他に、基本の説明や用語が規定され

ている ISO9000:2005(JISQ9000:2006)や、ISO9001 を超えて、組織の成果をより一層改善

するための手引きである ISO9004:2000(JISQ9004:2000)などがあり、必要に応じてこれら

も活用します。

ISO の認証取得を目指す以上、規格で要求されている内容から、洩れや抜けがないように

仕組みを作る必要があります。また、規格が要求している事柄を、いかに自社にあった内容

としてうまく仕組みに取入れるかも考えなければなりません。

そのためには、まず ISO の規格が何を要求しているかを知る必要があります。

しかし、トラック運送業界にとって、規格がもつ以下の特徴が解釈の妨げになっている場

合があります。

・ あらゆる産業、業種、レベルで使えるように書かれているため、運送業界にとっても

抽象的な表現が多いこと

・ 改訂されているとはいえ、まだまだ製造業種に向いた書き方であること補足2

・ JIS として和訳されたものを使用することになるため、原語が意図する内容が見えにく

い部分があること

補足2:

規格条項3.用語及び定義に以下の記述がありますので、読み替えて理解する必要

があります。「この規格で、“製品”という用語は、“サービス”も併せて意味する。」

これらの課題を克服しつつ、「規格の理解」を進めることになりますので、「第1章3.導入

時初期教育」(15 ページ)で記述した「ISO 教育の3つのポイント」を踏まえて考えてみましょ

う。

その1:段階を踏んで教育レベルを上げること

規格を理解するという作業は、構築作業を進める上で 初の大きな難関になるかもしれ

ません。できるだけわかりやすい内容から、段階を経て進めると良いでしょう。

以下に段階を踏む場合の例を記述しますので、参考にして下さい。

<初期段階>

まずは、あまり詳細にとらわれず、規格の全体像をつかむように心がけます。

それでも、いきなり規格を読み込むことには抵抗があるかもしれません。簡単な規格解

説として「JIS Q 9001 要求事項の概要」(101 ページ)を添付していますので、参考にし

て下さい。

そして、この段階では、少なくとも次からの活動である「2.適用範囲の決定」(25 ペー

ジ)「3.品質方針の決定」(35 ページ)という ISO を進める上で重要な2つの決定ができ

るレベルの理解を目標にしましょう。

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<中期段階>

「5.現状業務の調査」(49 ページ)を行う際、現在実施されている業務活動を、ISO の

規格で要求されている内容に照らし合わすことができるレベルの理解が必要です。

したがって、規格要求事項の「7.製品実現」(102 ページ)を「物流サービスの実現」と

置き換え、現状業務が規格のどこに関連するか、また、規格要求と自社の業務と照らし合

わせた場合、何が該当しないのかを見極められるようになることが必要です。

ただし、規格要求事項の満たし方に関する詳細な内容については、これより少し進んだ

課題になりますので次の段階で行います。

【物流サービスの実現に関する見極めの例】

(注意:括弧内の数字は規格条項)

※各規格の内容は、「5.現状業務の調査」(49 ページ)で解説します。

チェック (Check)

実施 (Do)

計画 (Plan)

物流サービス実現の計画(7.1)

顧客関連のプロセス(7.2)

設計・開発(7.3)

購買(7.4)

物流サービスの提供(7.5)

監視機器及び測定機器の管理(7.6)

物流サービスを実行するためにどのよう

に計画をたてているか

お客様が本当に求めているものは何か、

はっきりさせているか

お客様の求めを実現するために設計や開

発と考えられる活動をしているか

自分たちだけではやりきれない業務を、

どうこなしているか

運行記録計や庫内温度計などを、どのよ

うに管理しているか

サービス提供は管理された状態にあるか

すぐに良否がわからない業務があるか

サービスの全過程を適切に区別できるか

預かるものは管理されているか

貨物は適切な状態で取扱われているか

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<後期段階>

「4.文書化教育」(39 ページ)にも関連しますが、どの活動を、どのような内容で文

書化しなければならないかを学習します。

加えて、中期段階の内容をさらに進めて、規格要求事項をどのように満たしていくかを

理解する必要があります。「標準マニュアル」に添付の品質マニュアルは、規格を基に作

られていますので、規格の要求事項をトラック運送事業ではどのように理解すれば良いか

の参考にして下さい。

ISO の仕組みを構築する上で、規格は欠かすことができない重要なものですが、どのよ

うに実施すれば良いかまでは記述されていないことから、仕組みを設計し開発するための

指針にすぎません。例えるならば、規格という基礎にどのようなビルを建てるかは、取組

む事業者次第といえます。

規格の要求事項に対して、自社がどこまでのレベルや程度で満たしていくのかというバ

ランスを、この活動を通じて理解することが必要です。

【規格と仕組みの考え方】

ISO 規格

ISO 規格 ISO 規格

(a)バランスがとれている状態

ISO 規格

(b)レベルを超えて過剰な状態

(c)規格要求に対し過小な状態 (d)規格要求からずれている状態

構築した仕組み

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解説:

(a)は規格の要求事項に対して、過不足なく、自社のレベルに見合った内容で構築

されています。一方(b)では自社の水準を超えて大きな仕組みを構築しています。ど

ちらも認証取得はできますが、(b)の維持には大きな負担が予想されます。

(c)のように規格の要求に対して、作りあげた仕組みが小さすぎる場合や、(d)の

ように規格の要求から外れているときは、(c)と(d)ともに ISO の認証を受けること

はできません。

その2:役割り、管理レベルなどの差によって教育内容を考慮すること

ドライバーや現場作業員も含めた従業員全員が、規格を深く理解できれば理想的です。

しかし、限られた時間や費用の中でそれを達成することは、大変に難しいと考えられます。

そこで、それぞれの役割りや業務の内容によって、理解の程度や重点項目を考慮します。

例えば、

・経営管理層は、規格全体の理解も必要ですが、規格要求事項「4.品質マネジメントシ

ステム」「5.経営者の責任」「6.資源の運用管理」などを重点的に深く。

・推進メンバーや現業の要となる人は「4.2 文書化に関する要求事項」「7.製品実現」「8.

測定、分析及び改善」を重点にする。

・ドライバーや作業員は、品質方針や品質目標の達成を切り口として、そこから規格に

馴染む。

というように、ポイントを明確にして行う方法があります。

このように、ISO の仕組みの中での役割りや、それぞれの段階で必要とされる知識等を考

慮して規格への理解を進めます。

その3:継続させること

ISO の規格は、なかなか一度では理解できませんし、長く間が開いてしまうと、せっかく

理解できた内容でも次第に忘れてしまいます。また、初期段階で覚えたことと、理解が進

んでからわかった内容が異なる場合もあります。

構築もある段階をこえてくると、規格そのものからはやや遠ざかってしまう期間があり、

内部監査や特に審査という曖昧にできない場面で、再び規格要求事項と向き合うことにな

ります。

構築や審査の要となる方々は、繰り返し、継続的に学習することを心がけて下さい。

規格の理解は、避けることができない活動である上、一般的にはややわずらわしい課題と

考えられますので、これまで記述したようにポイントを押さえて進めることが大切です。 その際、 近では、規格解説書が多く出版されており、インターネット上にも利用できる

情報がたくさんありますので、これらを有効に活用すれば、社内勉強会などによる独学は充

分可能です。さらに効率よく進めたい場合は、ISO研修機関のセミナーへの参加や、必要

に応じてコンサルタントや専門家を利用する方法もあります。 どのような方法で規格教育を進めることが 適かを考慮して、計画的に実施して下さい。

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2. 適用範囲の決定

ISO の認証は、漠然と会社や組織に与えられるものではありません。

認証取得を目指す業務は何か、そして組織の中のどこまでを ISO の取組みの対象とするか

を明確にし、この適用範囲に整合した内容で仕組みを構築する必要があります。

適用範囲は、大きく分けて(1)業種・業務による範囲、(2)場所による範囲、(3)組織内の職

務による範囲という3つの視点で考えることができます。

(1)業種・業務による範囲 まず、自社で行っているどの業種に ISO を適用するのかを明らかにします。本手引きを活

用される方の多くは、トラック運送事業が主な対象となると考えられますが、倉庫業や流通

加工などちがう業種をあわせて対象にすることもできます。

次に、その業種において ISO の適用範囲とする業務を特定します。この際に、通常運送業

では、『取扱い貨物』と『輸送手段』の2つを明確にし、その内容に基づいて業務を明示しま

す。そして、これらの明示は、できるだけ具体的であることに加えて、異なる輸送手段や、

複数の取扱い貨物を対象とする場合でも、それぞれの内容がわかるような表現であることが

求められています。

『取扱い貨物』

ISO では、貨物の特性により組織が必要とする施設、設備、知識、資格などが異なると

の判断から、「一般貨物」、「冷蔵・冷凍貨物」、「生鮮食品」、「活魚」、「引越荷物」、「生コ

ンクリート」「液体可燃物」、「液化ガス」、「バルク品」、「危険物・毒物」、「原子力燃料」

などのように、取扱う貨物を明確にすることが必要です。

『輸送手段』

「トラック輸送」「引越輸送」「小口宅配」「ローリー輸送」「トレーラー輸送」「モーダ

ルシフトによる複合一貫輸送」「陸上輸送」などの自社で ISO の認証範囲として表したい

『輸送手段』を決定して下さい。

上記により明確にされた『取扱い貨物』と『輸送手段』から、ISO の適用範囲とする業務

を「文字や言葉で」定めます。ただし、誤解を与えるような宣伝的なものが禁止されている

ことや、ISO の認定には専門分野の問題もありますので、審査をする機関(マネジメントシ

ステム認証機関)と充分に協議の上、適切な内容で決定して下さい。

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<トラック運送事業の例>

♦ 一般貨物の陸上輸送サービス

♦ 自動車部品のトラック輸送サービス

♦ 精密機器のトラック輸送サービス

♦ 冷蔵貨物の陸上輸送サービス

♦ 生鮮野菜の陸上運送サービス

♦ 郵便物のトラック輸送サービス

♦ 高圧ガス及び液化ガスの陸上輸送サービス

♦ 酒類・飲料の配送サービス

♦ 航空貨物輸送サービス

♦ 輸出入貨物の運送サービス

♦ 引越輸送サービス

適 合 証 明 証

品質マネジメントシステム

登録証明証 No.0000000

○○運送株式会社 規格:ISO9001:2008

JIS Q 9001:2008

範囲:

一般貨物の陸上輸送サービス

発行年月日:xx 年 xx 月 xx 日

有効期限:xx 年 xx 月 xx 日

△△審査会社

ここで決めた範囲は、

適合証明証に記述さ

れたり、インターネッ

ト上で公開されたり

しますので、ここでは

まず「文字」で表し

て下さい。

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<倉庫サービスの例>

♦ 一般貨物の倉庫、保管サービス

♦ 一般貨物の入出庫、一時保管サービス

♦ 食品の保管・輸送配送サービス

♦ 食料品冷凍・冷蔵貨物の倉庫サービス

♦ ドライ・冷凍・冷蔵食品の入出庫、保管、配送並びに流通加工サービス

♦ 通関サービス

♦ 精密機器の包装・梱包業務 ♦ 冷凍冷蔵・常温貨物の取扱い及び保管業務 ♦ 輸出入貨物・国内貨物の倉庫保管、梱包、通関、輸送管理サービス ♦ 入庫、保管及び出庫業務 ♦ 輸出入保税倉庫業務 ♦ トランクルームサービス ♦ 流通加工サービス

<複数を対象とする場合の例>

♦ 自動車部品・精密機器のトラック輸送サービス

♦ 一般貨物の陸上輸送サービス及び一般貨物の倉庫・保管サービス

♦ 冷蔵・冷凍貨物の陸上輸送サービス及び食料品冷凍・冷蔵貨物の倉庫サービス

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(2)場所による範囲

組織の中に複数の事業所や営業所がある場合、どこまでを ISO の認証範囲内とするかを決

め、それを明確にする必要があります。

これらを決定するためには、組織の ISO に対する考え方、荷主の要請、組織としての諸事

情、審査料金の問題などいろいろな要因を考慮しなければなりません。ISO を導入する目的

とあわせて、適切な範囲を決定して下さい。

【場所による範囲特定の一般例】

【場所による範囲特定の例・倉庫業務がある場合】

一部を入れる場合

本社

A営業所

B営業所

C営業所

D営業所

E営業所

適用範囲内 対象外

本社

A営業所

B営業所

本社倉庫

対象外

倉庫部 運輸部

地方倉庫

<倉庫の一部を入れる場合>

本社

A営業所

B営業所

本社倉庫

対象外

倉庫部 運輸部

地方倉庫

<倉庫を除く場合>

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(3)組織内の職務による範囲 組織内のどの職務(仕事の内容)を認証取得の範囲に入れるかを決めます。

職務の範囲は、前記の業種・業務や場所による適用範囲の決定と深く関係し、目的とする

輸送サービスの品質に影響を及ぼす部門や部署は、基本的には外すことはできません。(例え

ば教育・訓練を担当する総務、顧客関連のプロセスに係わる営業1部など)また、特定の荷

主を対象としている場合や、ISO の規格要求事項との関わりも判断基準となります。

【職務による範囲特定の例】

【職務による範囲特定の例・倉庫業務がある場合】 <倉庫の一部を入れる場合>

社長

営業1部

運輸部

総務部

営業2部

経理部

適用範囲内 対象外

<倉庫を除く場合>

社長

営業1部

運輸部

総務部

営業2部

経理部

適用範囲内 対象外

倉庫部

社長

営業1部

運輸部

総務部

営業2部

経理部

適用範囲内 対象外

倉庫部

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以上の3つの視点で適用範囲が決まりますと、ISO の仕組みの中での役割りもはっきりと

してきます。

これを、規格では以下のように要求しています。

ここで明確にされたことは、既存の会社の組織図とは別に『ISO の組織図』(品質マネジメ

ントシステム組織図)としてまとめ、それぞれの役割りが何であるかを明確に示します。「標

準マニュアル」に添付の品質マニュアルに、組織図のサンプルを記述していますので参考に

して下さい。

【品質マネジメントシステム組織図の例】

5.5 責任、権限及びコミュニケーション

5.5.1 責任及び権限

トップマネジメントは、責任及び権限が定められ、組織全体に周知されていることを

確実にしなければならない。

社長

営業1部長

運輸部長

総務部長

営業2部

経理部

認証取得の対象外

A営業所

B営業所

C営業所

D営業所

E営業所

品質管理責任者 内部監査チーム

ISO事務局

運行管理者

整備管理者

営業課長

総務課長

運輸課長

( JIS Q 9001: 2008 )

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このような品質マネジメントシステムにおける組織図により、ISO の仕組みの中での責任

と権限がだいぶはっきりとしてきました。しかし、“組織全体に周知されていることを確実に

する”ためには、主要業務の分析や規格要求の理解を進めた上で、さらに具体的な内容を加

え、周知の方法も検討する必要があります。

これらの決定と作成は、以降の「6.文書作成」(76 ページ)の品質マニュアル作成の時点

となりますが、組織図とのつながりの例として、以下に「主要な責任及び権限の例」と「日

常業務の責任管理表の例」を記述します。ただし、定めなければならないのは、自社の責任

と権限ですから、どこまでの深さで、どのような内容にするかは、自社の取組みとして決定

して下さい。また、例示にない職務は、決定しなくても良い、記述しなくても良いという意

味ではありませんので、品質マネジメントシステムを確実なものとする上で必要と判断され

た内容は、必ず明確にして下さい。 【主要な責任及び権限の例】

職 務 品質マネジメントシステムにおける責任と権限 経営者 ・本システムにおける 高責任者として、組織の物流サービスの品質

に関するすべての責任を持ち、運営管理に対する 高権限を持つ。 ・品質に影響を与える業務を遂行する要員の責任と権限を定め、適切 な経営資源が使用できること確実にする。

・品質管理責任者を任命し、品質マネジメントシステムの構築、維持、

運用の責任と権限を与える。 ・マネジメントレビューの実施。品質方針の設定。

品質管理責任者 品質マネジメントシステム実施における経営者の代行としての権限と、

システム全体の統括責任を有する。 ISO 事務局 品質管理責任者を補佐し、品質マネジメントシステム実施を確実なもの

とする責任と権限を有する。 営業1部長 営業プロセスにおける運営管理の統括的な責任と権限を有する。 運輸部長 運輸プロセスにおける運営管理の統括的な責任と権限を有する。 総務部長 処理業務プロセス、教育・訓練プロセス、購買管理プロセスにおける運

営管理の統括的な責任と権限を有する。 各課長 部長を補佐し、担当実務を指揮、監督する責任を有する。

運行管理者 法令に基づく運行管理の実施と管理について、責任と権限を有する。問

題が発生した場合は、直ちに定められた方法と経路で関係部署と調整の

上、担当者への適切な指示指導を行い、上位職務者と連携をとって、問

題の解決にあたる。 整備管理者 法令に基づく整備管理の実施と管理について、責任と権限を有する。問

題が発生した場合は、直ちに定められた方法と経路で関係部署と調整の

上、担当者への適切な指示指導を行い、上位職務者と連携をとって、問

題の解決にあたる。 ドライバー 使用する車両を適切に点検、整備し、安全な運行を実施する。取扱い貨

物や商品の丁寧な荷扱いと確実な運行により、所定の場所まで送り届け

る。問題が発生した場合は、すみやかに担当上司に報告し、指示に従っ

て解決にあたる。

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- 32 -

【日常業務の責任管理表の例】

プロセス(工程) 経営者

品質管理責任者

ISO事務局

営業1部長

運輸部長

総務部長

運行管理者

整備管理者

ドライバー

基本契約 ○ ◎

受注 ○ ◎

計画 ◎

配車 ◎ ○

運行管理 ◎ ○ ○ ○

積込み ◎ ○

運行 ◎ ○ ○

荷降し ◎ ○

処理業務 ◎

品質方針・目標管理 ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

マネジメントレビュー ◎ ○ ○ ○ ○ ○

車両管理 ○ ○ ◎ ○

教育・訓練 ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○

購買管理 ○ ○ ○ ◎ ○

不適合管理 ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○

クレーム・事故 ○ ○ ○ ◎ ○

是正・予防処置 ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

内部監査 ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

文書管理 ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○

記録管理 ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

◎統括責任 ○実行責任

上記のように、それぞれのプロセスについて、だれが、どのような関わりを持つかまでの

決定が明確になってくると ISO の枠組みが目に見える形になってきます。

ISO を効果的に活用するには、このような枠組みや仕組みを、単なる決定事項ではなく、

生きたもの、血の通ったものにすることです。そして、その一つの方法として組織内のコミ

ュニケーションが欠かせません。

5.5.3 内部コミュニケーション

トップマネジメントは、組織内にコミュニケーションのための適切なプロセスが確立される

ことを確実にしなければならない。また、品質マネジメントシステムの有効性に関しての情

報交換が行われることを確実にしなければならない。

( JIS Q 9001: 2008 )

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規格では、トップマネジメントの責務として、内部コミュニケーションのための仕組みの

確立と、情報交換がしっかりと実施されていることを求めています。仕組みのわかりやすい

例としては、経営会議、定例会議、職場会議などの会議体が考えられますので、これらをい

つ(時期、間隔、回数)、どのような内容で、だれの主催で、だれを対象として開催するのか

を明確にします。

ところで、会議をすれば組織の内部コミュニケーションがとれたことになるのでしょうか。

ISO が生きた仕組みとなるのか、形骸化したお荷物になるかの差はこのようなところにも現

れます。会議自体はコミュニケーションの節目でしかありませんが、それでも、規格の要求

は満たすとができるかもしれません。しかし、本来規格が求めていることは、「内部コミュニ

ケーション」であって、会議を開催することはそのひとつの手段に過ぎません。明るい職場、

良い雰囲気、話しやすい環境なども重要な内部コミュニケーションの要因です。規格を四角

四面にとらえ、淡々と要求事項を満たすことを目的とするか、生きた仕組みとするかは、考

え方次第といえます。

トラック運送事業では、品質を支えるドライバーや作業員は、大部分の活動を外部で行っ

ています。しかし、要員を外に出して活動させるということは、目が届かなくなることでは

なく、逆にアンテナを外に広げることとも考えられます。「情報」が「人」「もの」「金」に次

ぐ第4の経営資源といわれる昨今、内部コミュニケーションで得られる情報には、情報提供

者が気付いていなくても、経営戦略上有効なものが含まれている場合があるかもしれません。

(4)適用範囲を決定する際の参考例 適用範囲は当初より決めている、または選択の余地がないという場合には、これらの決定

が大きな課題にはならないかもしれません。しかし、企業によっては難しい問題となる場合

がありますので、ここでは、考え方についていくつかの参考例を記述します。

なお、範囲の境界が曖昧な場合や、決定した範囲に不安があるようなときは、事前に審査

機関の確認をとることができます。構築が進んでしまうと、その分範囲等の変更は困難にな

りますので、特に気がかりな事柄を抱えている場合には、できれば早い時期に審査機関を選

定し、確認しておくと良いでしょう。

また、各審査機関には認定された専門の分野が決められており、それ以外の審査は制限さ

れますので、トラック運送以外の事業を範囲に考えている場合には特に注意が必要です。(審

査の詳細は第4章で)

<範囲を決める考え方の例> ① 始めから大きな範囲で取得する場合。

経営の手法として、教育や社員のやる気の問題として、また営業上の戦略としてなど

の積極的な判断により、初回登録時から全社全部署等の大きな範囲を対象として認証を

取得します。

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② 初回認証登録審査では、ある程度範囲を限定し、その後拡大する場合。

始めて ISO に取組む場合には、不慣れなこともあり作業負担が大きく、なかなか効率

的に進めることがでません。そこで、まずは比較的狭い範囲で認証取得を目指し、そこ

で培った経験を生かして範囲を拡大します。

③ 認証範囲は小さく、ISO を生かす範囲は広くする場合。

取得の範囲を大きくすることは、構築や維持の負担を増し、また、審査料金にも影響

する場合があります。そこで認証取得の対象となる範囲を小さくし、ISO の仕組みや考

え方は広く他部門にも生かすという方法があります。特に自社にとって重要なビジネス

や、要となる事業所を中心に構成すると、費用に対する高い効果が望めます。

ただし、この場合には、取得範囲外の部門や部署までも審査機関の認定の対象ととれ

るような表現は禁止されていますので、パンフレットや名刺などの記載に注意が必要で

す。

④ 認証取得後、範囲を縮小する場合。

あまり一般的ではありませんが、ISO の社内への浸透状態や、マネジメントシステム

としての成熟を考慮して、必要とする目的の達成をもって、大きな範囲から縮小する場

合もあります。

適用範囲内 適用範囲内 適用範囲内

認証取得範囲 ISO を生かす範囲

認証取得時 2年後 3年後

本社

A営業所

B営業所

C営業所

D営業所

E営業所

本社

A営業所

B営業所

C営業所

D営業所

E営業所

本社

A営業所

B営業所

C営業所

D営業所

E営業所

本社

A営業所

B営業所

C営業所

D営業所

E営業所

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3. 品質方針の決定

規格には、何を行わなければならないかは示されていますが、どのように実施すれば良い

かは自らの組織が決めなければなりません。つまり、規格の要求事項を満たして、どのよう

な仕組みを構築するかを、事業者自らが明確にする必要があるということになります。そこ

で、まず、どのようなことを実現するために ISO を取入れた仕組みを作り、またどのような

方向性で構成するかという大きな指標を決めることになりますが、この際に決定するのが「品

質方針」です。

(1)品質方針の考え方 品質方針は、ISO では「トップマネジメントによって正式に表明された、品質に関する組

織の全体的な意図及び方向付け」(JIS Q 9000:2006)と定義されていますので、トップマネ

ジメント(経営者)が責任をもって設定する必要があります。

ISO9001 は、品質のマネジ

メントシステムですから、

企業としての展望やトップ

マネジメントの経営理念の

中で、「品質」に該当するも

のを考えます。本手引きを

利用される多くの方にとっ

て、品質の も中心になる

のは「輸送品質」となるは

ずですから、これを基にし

て「自社の品質方針」を決

定します。

ここで、品質方針に関す

る規格の要求事項を見てみ

ましょう。

品質方針

(1) 安全、丁寧、確実、迅速なサービスを提供し、

お客様の信頼と満足を確実にします。

(2) サービス品質の改善を継続的に行います。

(3) お客様に喜んでいただけるサービスを提供

します。

組織は、品質方針について以下の事項を確実にします。 ・効果的な品質マネジメントシステムを構築し、この品質方針を実

施するための経営資源を明確にします。 ・顧客の要求事項を満たすとともに、法令、規則、社会規範など順

守します。 ・提供するサービス及び品質マネジメントシステムの有効性の継続

的な改善に努めます。 ・この方針は、品質目標の設定と見直しの際の枠組みを与えます。 ・品質方針は、品質マニュアルに記述し、必要部署への掲示等によ

り組織全体へ伝達し、理解されることを確実にします。

・品質方針は、継続して適切であるように見直します。

20xx年 xx月 xx日

○○運送株式会社

社長 ○○ ○○ 社長印

【品質方針の掲示例】

正式なシステム運用開始日

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先にも述べましたように、a)で“組織の目的に対して適切である”こと、つまりトラック

運送事業に対して適切で、その目的を反映したものあることを規格は要求しています。

b)では品質方針の中に盛り込まなければならない約束として、いろいろな要求事項にきち

んと合わせていくことや、より良い仕組みであり続けるように継続的に改善することが求め

られています。加えて d)組織内への周知、e)持続のための見直しも“確実にすること”とさ

れていますので、これらをどのように実施していくかについても取決める必要があります。

品質方針については、「標準マニュアル」にも関連するサンプルを添付していますので、参考

にして下さい。

さて、上記の品質方針の規格要求事項には、c)に品質目標の設定に関する記述があります。

これは、品質方針を実現するために、その手段となる品質目標を設定できることと、さらに

は決めただけではなく見直しまでを行うことができる「枠組みを与えること」を求めていま

す。この「枠組みを与えること」は、実施できるような「仕組み」(内容そのものではなく)

をトップマネジメント自身の責任において構築することを言います。

それでは、この「品質目標」について以下で解説をしましょう。

(2)品質目標の考え方 マネジメントシステムは「方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム」(JIS

Q 9000:2006)と定義されています。つまり、品質のマネジメントシステムを構築するという

ことは、品質に関する方針を決定し、その方針と整合性がとれた品質目標を定めて、この目

標を達成するための仕組みを作ることです。

では、マネジメントシステムにおける品質目標とは、どのように考えれば良いのでしょう

か。規格は、品質目標を「品質に関して、追求し、目指すもの」(JIS Q 9000:2006)と定義

していますが、少し漠然としていますので、方針と目標の関係を次の図で考えてみましょう。

5.3 品質方針

トップマネジメントは、品質方針について、次の事項を確実にしなければならない。

a)組織の目的に対して適切である。

b)要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に

対するコミットメントを含む。

c)品質目標の設定及びレビューのための枠組みを与える。

d)組織全体に伝達され、理解される。

e)適切性の持続のためにレビューされる。

( JIS Q 9001: 2008 )

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【品質方針と品質目標の関係】

品質方針は、トップマネジメントの経営理念や企業としての展望や戦略から決定されます

から、組織内のそれぞれの部門や階層で、品質方針と矛盾がない内容の品質目標を定めます。 これらが確実に設定されることは、規格の要求事項になっています。

このように、品質目標は、どれくらい達成しているかがわかるような取決めであることが

求められています。達成度について判定可能とするやり方までは特定されていませんが、通

常は定量化した目標を定めることになります。トラック運送事業では「交通・貨物事故削減」

や「車両故障削減」などを品質目標とし、これらに対して数値化した目標を設定します。品

質目標を示す例には、年間部門目標や階層別年間目標などもありますので、「標準マニュアル」

の「品質方針・目標管理手順書」も参考にして下さい。

トップマネジメント

< 経 営 理 念 > 品 質

輸送品質

環境 労働安全 情報セキュリティ ・・・・

品質方針

部門・階層目標

個人目標 個人目標 個人目標 個人目標 個人目標 個人目標

部門・階層目標 部門・階層目標

規格の要求事項

5.4 計画

5.4.1 品質目標

トップマネジメントは、組織内のしかるべき部門及び階層で、製品要求事項を満たすために

必要なものを含む品質目標[ 7.1 a)参照]が設定されていることを確実にしなければならな

い。品質目標は、その達成度が判定可能で、品質方針との整合性がとれていなければならな

い。

( JIS Q 9001: 2008 )

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上記のように品質目標を定めますが、実際にそれを達成させていくのは、従業員やドライ

バーの方々です。そこで、定められた部門や階層の目標をどのように果たしていくかという

ことに対して、個人の目標や考え方が必要となりますので、ここに「人づくり」としての教

育が大きく関与します。

品 質 目 標 (平成 xx 年度)

経営者の重点目標

運送サービスの品質不良を改善して顧客の信用を高め、経営効率を上げる。

業務毎の品質目標

契約配車業務:サービスに関する顧客の評価情報を 低 2ヶ月に 1回入手し、

年間 2回取まとめ、サービス改善に役立たせる。

運行管理業務:貨物事故件数を昨年実績より 10%削減する。交通事故件数を

年間 3件以下にする。

整備管理業務:法令点検整備の 100%実施。

総務事務業務:請求書関連ミスを年間ゼロにする。

年間ミスゼロの維持。

20xx年 xx月 xx日

○○運送株式会社 品質管理責任者印

【品質目標の掲示例】

正式なシステム運用開始日

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4. 文書化教育

文書化に関する教育のねらいは、「5.現状業務の調査」(49 ページ)「6.文書作成」(76 ペー

ジ)という活動で、推進体制のメンバーが何をどのように文書にすれば良いかを理解するこ

とにあります。

加えて、ここでの基本的な考え方は、組織内に ISO を浸透させるためにも活用できますの

で、まずは、ISO の文書がどのような構成になっているか考えてみましょう。

(1)文書の構成 ISO の文書は、構成として一般的に下図の例のような階層構造が考えられます。

また、文書は、それぞれのレベルに独立して位置するものではなく、構成の中では以下の

ようなつながりがあります。 【ISO の文書構成のイメージ】

レベル1

レベル2

レベル5

レベル4

レベル3

品質マネジメントシステムにお

いて組織として『何を実施する

か』を記述した基本となる文書

レベル1を実現するために『ど

のように実施するか』を具体的

に規定した文書

レベル2や3を『実施する際に

必要となる文書』

これらの『活動の結果や実施し

た証拠』となる文書

どのように実施するかを『レベ

ル2より詳細』に表した文書

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1・・・

2時間通りに着車する

3・・・

4貨物取扱ルール

通りに丁寧に積込む

5・・・

7.物流サービスの実現 積込手順書に従って作業します

品質マニュアル

④関連文書

②手順書

①品質マニュアル

③作業指示書

⑤記録

目次 改訂履歴

1序文

2適用範囲

3定義

4品質マネジメントシステム

5経営者の責任

6資源の運用管理

7物流サービスの実現

8測定分析

添付資料

表紙

○○運送株式会社

品質マニュアル

○○運送 株式会社

1・・・

2安全輸送のための

積付け・固縛方法

に従い適切に固定

する

3・・・

4・・・

作業指示書

○○運送 株式会社

貨物取扱

ルール

<トラック協会発行>

安全輸送のための 積付け・固縛方法

ISO の「品質マニュアル」は法律でいえば憲法にあたります。世間一般で使われ

ている作業手順や、実施方法を細かく記述した「マニュアル」とは異なります。

運転日報

積込手順書

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①品質マニュアル(レベル1) 体系化された文書構造の も上に位置するものが品質マニュアル(システムマニュアル)

になります。この 上位の文書には、「品質方針」を実現するという目的を果たすために、自

社の品質マネジメントシステムのすべてが集約されて記述されます。

その際に、規格で要求されている事項を洩れや抜けがないように盛り込むため、多くの場

合 ISO の規格を基準に構成します。そして、要求事項に対して自らの組織の責任と権限を明

確にして、『何をするか』を宣言します。また、 上位の文書として、これより下位のレベル

の文書が、それぞれどのような関わりがあるのかもわかるように記述します。(文書の相互関係)

では、品質マニュアルについて、規格は何を要求しているか見てみましょう。

a) の品質マネジメントシステムの適用範囲については、本章の「2.適用範囲の決定」(25

ページ)で定めた認証取得の対象となる範囲を記述します。この際に、対象外とした場所や

職務があった場合には、それが何であるかが明確にわかるように表記し、除外が正しいと判

断できる理由も記述します。

b)では、文書化された手順を明確にします。

手順は、直接品質マニュアルに記述される場合や、下位の文書に書かれる場合があります

ので、いずれも品質マニュアルでこれら文書に関する情報が参照できるように表します。

ところで、文書類すべてに共通しますが、上位の文書に組織として必要な記述があれば、

必ずしも下位レベルの文書を作る必要はありません。例えば、表現が簡単なものであれば、

品質マニュアルにどのように行うかも記述できますので、この場合には手順書までは作成し

ないことも可能です。

c)は ISO の対象とした業務の流れと、それらの関わりを明確にして、自らの品質マネジメ

ントシステムが説明できること求めています。実際には、「5.現状業務の調査」(49 ページ)

の結果から得られる主要業務工程図や品質マネジメントシステム体系図によって、それぞれ

の階層や部門で実施されているプロセスの順序と関係を明らかにします。なお、“プロセス”

については 49 ページの説明を参照して下さい。

規格が品質マニュアルについて要求しているのは、上記の a)、b)、c)の3つを含む内容で

作成し、維持するということです。しかし、上記のような解説だけでは、イメージしにくい

部分があるかもしれません。「標準マニュアル」に品質マニュアルを添付していますので、具

体的な書き方はこれを参考にし、少し難しいかも知れませんが、できるだけ自らの言葉で表

現するように心がけて下さい。

4.2.2 品質マニュアル

組織は、次の事項を含む品質マニュアルを作成し、維持しなければならない。

a)品質マネジメントシステムの適用範囲。除外がある場合には、除外の詳細、及び

除外を正当とする理由(1.2 参照)。

b)品質マネジメントシステムについて確立された“文書化された手順”又はそれらを

参照できる情報

c)品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述

( JIS Q 9001: 2008 )

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②手順書(レベル2) 品質マニュアルに記述された事項について、具体的に『どのように実施するか』という方

法を以下の内容で検討し、規定します。 ・手順の目的は何か ・誰が、何を、いつ、どこで、どのように実施するか ・これらの責任や権限は誰にあるのか

実際に手順書補足3を作成する場合には、これらの内容を以下の例のような構成を決め、文

書としてまとめます。

1.目的

2.適用範囲

3.関連文書

4.定義

5.責任

6.手順

7.評価

8.記録

9.添付(流れ図、帳票など、)

補足3:

日常耳にする「取扱いマニュアル」「操作マニュアル」「接客マニュアル」「クレーム対応マ

ニュアル」など多くのマニュアル類は、この手順書や次で説明する作業指示書に該当します。

なお、既存の文書がマニュアルという名称で作成されていた場合、特別な理由がなければ変

更する必要はありませんが、「品質マニュアル」との区別は、はっきりさせておいて下さい。

③作業指示書(レベル3) 手順書で行われる活動をさらに詳細に表したもので、どのように作業を行うかを細かく記

述したものをいいます。

トラック運送事業の場合、以下のようなものが該当します。

・エコドライブ要領書

・安全運転作業基準

・貨物固縛要領書

②手順書と③作業指示書の区別は、難しいかもしれませんが、実際には、上記の例で示す

ような文書が作業指示書に該当しますので、ISO に取組む前から使用している可能性があり

ます。この場合、どの手順書とどのように関係するかを明確にすることで ISO の文書として

活用することができます。

そもそも、レベル2の手順書に比較的近い意味合いをもつ作業指示書を、レベル3として

表紙

○○手順書

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ISO の文書体系で分けて構成する目的は何でしょうか。そのねらいは、管理のしやすさと使

いやすさにあると考えて下さい。作業が頻繁に変わる、または状況や対象によって異なると

いうような場合、手順書のレベルでその都度改訂したり、追加したりすることは管理上も、

その手順を使う上でも煩雑です。そこで、大きなくくりであるレベル2の手順と、下位レベ

ルの作業指示書の関係を作ることで、下位の文書の訂正や差し替えにより、いちいち上位文

書まで変更する必要がなくなります。また、使用する際も、該当する仕事以外の不要な部分

まで書かれた手順書を使うよりも、必要とされる部分のみを活用できる作業指示書の方が、

利便性を期待できます。 ただし、作業指示書を作ることに、管理や使用における利点がないと考えられる場合には、

あえて作業指示書を作る必要はありません。

④関連文書(レベル4) 手順書や作業指示書に従って業務を行うときに必要となる文書、またはその際に使う文書

を関連文書といいます。関連文書には以下のようなものが考えられます。

・法令や規則、条例など国や地方自治体の法規

・顧客発行の仕様書、契約書、設計図

・ISO などの規格

・業界団体の指針(ガイドライン)やマニュアル、DVDなど

・参考書や文献

このように、品質マネジメントシステムに関わる文書で、外部の組織が作成、発行したも

のは、その大部分が関連文書に該当します。この外部で作成された文書については、特に「外

部文書」と呼ばれ、自らが作っていないこともあわせて、管理が曖昧になる危険性があるた

め注意が必要です。何が外部で作られた文書であるかを明確にして、配付や使用について確

実に管理することが規格の要求事項となっています。(次ページ「1)文書の管理」参照)

⑤記録(レベル5)

品質マニュアルや手順書などで示されたプロセスや活動が、実施された結果として生じる

文書が記録です。したがって、記録は、活動が実施されたことの証拠にもなります。

社内を見渡せば、配車表、配車依頼書、運転日報、チャート紙、点呼簿、点検表、点検記

録、車両管理台帳、車歴簿、運行証明書、伝票、受注書など、数多くの記録があるはずです。

これらの記録類は、ISO の仕組みの中の記録でもあります。

また、ISO を導入するために、新たに作成しなけばならない記録もあります。作成を求め

られている記録については、「(3)文書を作成する際の要件」(46 ページ)で解説しますの

で参考にして下さい。

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(2)文書と記録の管理 ISO の文書の構成が理解できたら、次はそれらの文書をどのように管理すれば良いかを考

えてみましょう。

なお、文書と記録の管理について、“文書化された手順を作ること”を規格で要求されてい

ますので、これらの管理を自社ではどのように実施するかは、各々の手順に基づいて行って

下さい。ここでは、規格要求事項のポイントだけを簡単に解説します。

1)文書の管理

品質マネジメントシステムで必要とされる文書については、管理されていることが求めら

れます。加えて、記録については“文書の一種である”としつつも、その管理は次項「4.2.4

記録の管理」に従うこととされています。

そして、以下の内容についての管理規定を文書化する必要があります。 a) 文書は、責任のある者が、書かれている内容の適切性を審査し、承認した上で発行し

て下さい。 b) 文書は、作ればそれで終わりではありません。適切な見直しをして下さい。そして、

必要な場合には更新をして、承認も受けて下さい。 c) 文書の変更がわかるようにし、 新版であることがきちんとわかるようにして下さい。 d) 必要とする文書の適切な版(現在有効な版、多くの場合は 新版)が、必要なときに、

必要なところで使えるような仕組みを作って、実行して下さい。 e) 文書は、できるだけ読みやすく、劣化や紛失がないように保管して下さい。また、簡

単に検索し、探し出せるよう工夫して下さい。 f) どれが仕事を実施する上で必要な外部文書か明らかにして、配付を管理して下さい。 g) 旧版文書の撤去は求めていませんので、必要があれば古い文書を残しておくことがで

きます。ただし、これらが誤って使われないような策が施されていることが前提にな

4.2.3 文書管理

品質マネジメントシステムで必要とされる文書は、管理しなければならない。ただし、記録

は文書の一種ではあるが、4.2.4 に規定する要求事項に従って管理しなければならない。

次の活動に必要な管理を規定するために“文書化された手順”を確立しなければならない。

a)発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。 b)文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承認する。 c)文書の変更の識別及び現在有効な版の識別を確実にする。 d)該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にある

ことを確実にする。 e)文書は、読みやすくかつ容易に識別可能な状態であることを確実にする。 f)品質マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部から

の文書を明確にし、その配付が管理されていることを確実にする。 g)廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する

場合には、適切な識別をする。

( JIS Q 9001: 2008 )

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りますので注意して下さい。

2)記録の管理

記録の管理は、大別して以下の3つの内容が要求事項として記述されています。 ① 仕事の結果として機械的に生じている記録について、規格の要求事項にあっているか

(要求事項への適合)、ISO の仕組みが目的を達成できるように運用されているか(品

質マネジメントシステムの効果的運用)の証拠を示すものです。活動や運用の証であ

るという観点から作成し、保管して下さい。

② 記録は、読みやすく、簡単に識別、検索ができるようにして下さい。

③ 記録の管理における識別、保管、保護、検索、保管期間、廃棄などの取決めを文書化

する必要があります。一昔前のように、記録はすべて紙ベースではありませんので、

デジタルデータや電子媒体については、識別や検索が容易である反面、保管期間や廃

棄について曖昧になる場合がありますので、注意してルールを決めて下さい。

4.2.4 記録の管理

要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠を示すために作成さ

れた記録を、管理しなければならない。

組織は、記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄に関して必要な管理を規定する

ために、“文書化された手順”を確立しなければならない。

記録は、読みやすく、容易に識別可能かつ検索可能でなければならない。

( JIS Q 9001: 2008 )

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(3)文書を作成する際の要件 ここまでは、文書の概略の説明でしたが、特に推進体制のメンバーは、何を文書にしなけ

ればならないかを知る必要があります。 では、規格ではどのような文書を求めているか見てみましょう。

a)「3.品質方針の決定」で定めた品質方針と品質目標は、文書の形で表明します。表示例

は、35 ページと 38 ページを参考にして下さい。

b)品質マニュアルの文書化については、「標準マニュアル」のサンプルを参照して下さい。

c)ISO9001(この規格)が要求する“文書化された手順”には、次の6種類があります。

なお、以下の手順について、必ずしも独立した手順書を求めている訳ではありませんので、

比較的簡単な手順であれば、品質マニュアルに記述してしまう方法もあります。

【ISO9001:2008 で求められている文書】

※は、「標準マニュアル」にサンプルを添付 記録については、次ページに規格が要求するものを列記しました。「標準マニュアル」の例

とあわせて、参考にして下さい。

d)では「組織が必要と決定した」という、解釈に幅がある表現が使われています。c)のよ

うに具体的に内容が示された場合と異なり、ここでは自社の判断が必要となります。

どこまでが文書や記録として必要かという決定は、ときに悩ましい場合もありますが、自

らの組織が目指す品質を確保する上で、文書となっていることが望ましいと判断できるもの

は文書化(記録を含む)する、と考えて下さい。そして、それらの判断は、組織の外から見

ても、適切と思われる水準であることを心がけましょう。お客様やその代表ともいえる審査

員から見て、文書化、マニュアル化、記録化がされていないことが、不自然ととられないよ

規格条項 条項 文書名

1 4.2.3 文書管理 文書管理手順書※

2 4.2.4 記録管理 記録管理手順書※

3 8.2.2 内部監査 内部監査手順書※

4 8.3 不適合製品の管理 不適合手順書※

5 8.5.2 是正処置 是正・予防手順書※

6 8.5.3 予防処置 是正・予防手順書※

4.2 文書化に関する要求事項

4.2.1 一般

品質マネジメントシステムの文書には、次の事項を含めなければならない。

a)文書化した、品質方針及び品質目標の表明

b)品質マニュアル

c)この規格が要求する“文書化された手順”及び記録

d)組織内のプロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実に実施するために、組織が

必要と決定した記録を含む文書

( JIS Q 9001: 2008 )

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うな決定をして下さい。

なお、文書化の程度については、次の「(4)文書化の程度と文書の様式及び媒体」を参照し

て下さい。

【ISO9001 規格で要求されている記録】

規格条項 求められている品質記録 記録名(例)

1 5.6.1 マネジメントレビューの結果 マネジメントレビュー議事録

2 6.2.2e) 教育、訓練、技能、経験 教育訓練計画書※

3 7.1d) サービス実現結果 配車表、運転日報

4 7.2.2 顧客要求事項の見直し 運送依頼書、見積書

5 7.3.2 設計・開発へのインプット 設計開発計画書

6 7.3.4 設計・開発のレビューの結果と必要な処置 設計開発計画書

7 7.3.5 設計・開発の検証の結果と必要な処置 設計開発計画書

8 7.3.6 設計・開発の妥当性確認の結果と必要な処置 設計開発計画書

9 7.3.7 設計・開発の変更レビューの結果と必要な処置 設計開発計画書

10 7.4.1 協力会社、購買先の評価結果 協力会社評価表※

11 7.5.2 プロセス(工程)の妥当性確認の結果 運行証明書

12 7.5.3 サービスの識別、トレーサビリティ(追跡性) 送り状、受領書

13 7.5.4 顧客の所有物の紛失、破損に関する記録 不適合連絡票※

14 7.6a) 校正又は検証に用いた基準 社内校正基準表

15 7.6 過去の測定結果の妥当性評価 測定機器管理台帳

16 7.6 校正又は検証の結果 校正証明書

17 8.2.2 内部監査の結果 (巻末一覧表参照)※

18 8.2.4 合否判定基準への適合の記録 送り状、受領書

19 8.3 不適合の性質・処置の記録 不適合連絡票※

20 8.5.2 是正処置の結果 是正・予防処置報告書※

21 8.5.3 予防処置の結果 是正・予防処置報告書※

※は、「標準マニュアル」にサンプルを添付

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(4)文書化の程度と文書の様式及び媒体 1)文書化の程度

「(3)文書を作成する際の要件」では、“組織が決定した記録を含む文書”について説明

をしましたが、基本的に文書は、あまり作り過ぎないことがポイントです。

規格の注記2のように、文書化の程度や範囲については、組織の規模や活動の種類、仕事

の複雑さ、仕事間の関連、従業員やドライバーの力量や教育・訓練の問題なども考慮して決

定して下さい。

2)文書の様式及び媒体

要求事項毎に一つずつ文書を作成する必要はなく、また文書の様式や媒体はどのようなも

のでも良いとされています。

「文書」ですが文字とは限りません。図、表、絵、イラスト、写真、ビデオ、DVD、P

DF、動画など視覚的な伝達手段の利用により、より目的とするものが正しく、わかりやす

く表現できる場合があります。いろいろな情報機器やソフトが急速に発展し普及しています

ので、積極的に活用することにより、作成の負担も軽減できる上、わかりやすい「文書」を

作ることが可能です。

また、文書を維持する方法は、紙でも電子データでもかまいません。ISO が求める正しい

管理が可能で、それらの管理が実施されていることを証明することができれば、文書媒体に

特別の決まりはありません。

サンプルや出回っている例示に縛られる必要はありませんので、推進体制のメンバーは、

これらのことを考慮して、自社にとって使いやすい文書の様式や媒体を決定しましょう。

4.2 文書化に関する要求事項

4.2.1 一般( 続 き )

注記 1 この規格で“文書化された手順”という用語を使う場合には、その手順が確立され、

文書化され、実施され、維持されていることを意味する。一つの文書で、一つ又は

それ以上の手順に対する要求事項を取り扱ってもよい。“文書化された手順”の要求

事項は、複数の文書で対応してもよい。

注記 2 品質マネジメントシステムの文書化の程度は、次の理由から組織によって異なる

ことがある。

a)組織の規模及び活動の種類

b)プロセス及びそれらの相互関係の複雑さ

c)要員の力量

注記 3 文書の様式及び媒体の種類は、どのようなものでもよい。

( JIS Q 9001: 2008 )

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5. 現状業務の調査

ISO の仕組みを作るということは、まったく何もないところに突然築き上げるものではあ

りません。企業には、これまで続けてきた仕事の『進め方』が既に確立しており、その『進

め方』で事業活動が成り立っていますので、ISO を導入するからといって、すべてを新しく

構築する必要はありません。

そこで、規格の要求事項と比較して、『何が行われているのか』、また『何を新たに作らな

ければならないのか』を判断するために「現状業務の調査」を実施します。

ここでの調査の結果を基に、漠然としていた『進め方』が「6.文書作成」(76 ページ)に

より、はっきりとした文書という形で表現されることになります。

(1)主要業務の整理

自社は何をなりわい....

(本業)としているのでしょうか。また、ISO は、何の業務を対象と

して構築するのでしょうか。

ここでは、「2.適用範囲の決定(1)業種・業務による範囲」(25 ページ)で明確にした

トラック運送等の業務を思い出して下さい。例えば「一般貨物の陸上輸送サービス」をなり..

わい..

とし、これを ISO の範囲と考えている場合には、この業務が自社の ISO における「主要

業務」となります。もちろん、複数の業務を選択することもできますので、決定している適

用範囲を考慮して対象とする業務を明確にします。

次に、主要業務を、機能別にできるだけ大まかな分割で流れ図にしてみましょう。ここで、

四角の枠の中に書かれている配車や積込といった活動のことを、ISO では「プロセス」補足4

という呼び方をします。流れ図を作る際には、このプロセスにおいて責任がだれにあるのか、

概略でどのような活動があるかを整理しましょう。

【一般貨物の陸上輸送サービスの流れ図(例)】

注意:説明資料のため簡略化しています

営業課長 運輸課長 主任 主任 主任

1 依頼の受付 受注内容の確認 指示内容の確認 運転 到着 1

2 可否の判断 配車計画の立案 着車 異常確認 確認 2

3 契約 配車指示 積込 報告 荷降 3

4 内容の指示 施錠 帰庫 4

5 出発 5

概 略

概 略

顧客 顧客プロセス

責任者 責任者

配車 積込 運行 荷降受注荷主

届け先

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補足 4:プロセスとは

規格では、プロセスを「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又

は相互に作用する一連の活動」と定義しています。上記のような積込、運行、荷降と

いうそれぞれの仕事の塊が「プロセス」にあたります。プロセスの大きさには取決め

がありませんので、使う側で決めることができます。さらに規格には以下のような記

述で、プロセスアプローチという考え方を採用することが奨励されていますので参考

にして下さい。

(2)現状業務の分析 主要業務のそれぞれのプロセスを、もう少し細かい活動に分けて、流れ図にして調べてみ

ましょう。この際のポイントは、以下の通りです。

① 現在行っている仕事のやり方をそのまま表してみること ISO に取組む意気込みは必要ですが、この時点から、あるべき論や理想像を加えてしま

いますと、正しい現状分析ができなくなります。できるだけ正確に、プロセスの目的、ど

のような人たちと関わりがあるか、どのような文書を使い、どのような記録が作られてい

るか、ありのままの姿を明確にします。

② 要点を押さえて、活動を書き出すこと 実業をそのまま羅列するのではなく、活動を分類して、重要な要素が洩れないように、

ポイントがわかるように表します。この後の作業で流れ図は、さらに細かく文書として展

開しますので、この時点であまり些細なことに引きずられないように注意します。

③ プロセス責任者が確認すること 実務者と管理者では、作成の視点が異なる場合があります。分析された内容については、

必ずそのプロセスの責任者が確認をして下さい。

このように、できるだけ正確な現状業務の調査を行い、次にその内容を規格要求事項と比

較し、今までのやり方の問題点や改善点を分析するように進めます。

では、次のページで「積込」というプロセスを調べた例を見てみましょう。

0.2 序文 ( 抜 粋 )

組織内において、望まれる成果を生み出すために、プロセスを明確にし、その相互関係を把握

し、運営管理することと併せて、一連のプロセスをシステムとして適用することを、“プロセ

スアプローチ”と呼ぶ。

( JIS Q 9001: 2008 )

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【積込プロセスを活動の流れ図に展開した例】

【流れ図で用いた記号の説明】

「活動又はプロセス」

「入り口/出口」 「文書類」 「判断記号・選択肢」

注意:説明資料のため簡略化していますので、実作業とは異なります。

【活動の流れ図】

No

Yes

ドライバー

積込先担当者(顧客) 積地に出発

積み込み場所に着

車し伝票を入手 顧客

ドライバー

貨物の品名、数量、

異常等の確認

出発

積込伝票

ドライバー

顧客

ドライバー

積み込み

ドライバー

確認し施錠

ドライバー

積込先担当

者に報告

積込伝票積地に出発

積み込み場所に着

車し伝票を入手 顧客

ドライバー活動内容 責任者・実行者

対象者、相手

貨物取扱ルール

積込伝票

終了を報告し、納

品伝票をもらう 顧客

ドライバー納品伝票

正しいか?

正しいか?

配車 積込 運行 荷降 届け先

(顧客) 荷主

(顧客) 受注 積 込

1’

3

4

2

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<分析の手順> 終的には対象となる主要業務のプロセスは、すべて分析しますが、まず、どのプロセスの

分析を行うかを決めます。 この例では、「積込」のプロセスを対象としています。

まず、このプロセスの入り口と出口を明確にします。例では楕円形の記号で表現しており、

この入り口をプロセスのインプット、出口をアウトプットといいます。このように、プロセ

スの範囲をはっきりさせてから、分析を行うとまとめやすくなります。 特にトラック運送業では、生産ラインのように流れの方向や初めと終わりが明確になってお

らず、活動が連続して繰り返されたり、曖昧に次のプロセスに移ったりすることがあります。

意識的に入り口と出口を認識するのがポイントです。

このプロセスで登場する人を書き出します。今回はドライバーとお客さん側の積込先担当者

の2人ですが、実際にはもっと多くの人と関わりがあるかもしれません。 登場人物は、活動の細かさの程度によって変わりますので、ここでは、責任者や要となる人

が抜けないくらいの荒さで分析します。

活動の内容とその責任者を図のように記述します。 この際に使用する文書があれば、下の例のように活動枠の左側に記述します。 そして、そのプロセスの活動の結果として記録や文書が発生する場合には、活動枠の右に記

述します。

なお、例では【流れ図で用いた記号の説明】のように4つの記号で表現しました。特に制約

はありませんので、自社でなじみのある表現があればそれを利用しますが、でき上がった図

は、多くの方が見たり、利用したりすることになりますので、あまり複雑な表現にならない

ように注意します。

流れ図は、常に一定方向で、一本とは限りません。活動や作業の結果が Yes・No などの是非

による分岐が必要になる場合は、判断記号を記述し活動を分けます。

このような流れ図(フローチャート)を用いたプロセスの分析は、規格で求められているこ

とではありませんが、この後手順書を作成する際に、大変有効に活用できます。また、流れ

図そのものを手順書とすることもできますので、現状業務の分析には、流れ図のように視覚

化して、活動の筋道がひと目で理解できるような分析方法が有用です。

参考文献 情報

活動、作業 相手

責任者 記録 結果の証

1’

活動枠

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(3)規格要求事項との比較 現在実施されている主要業務の分析ができたら、ISO の規格の要求事項と、実際の活動を

比較して、何が実施されていて、何が行われていないのかを明らかにします。この際に比較

の基準になるのが規格の「7.製品実現」「8.2 監視及び測定」です。

1)適用の除外について

規格の要求事項は、第 4 章から第 8 章までありますが、第7章についてのみ、以下のよ

うに「適用除外」を考慮して良いという特別な取決めがあります。

基本的には、適用除外ができるものを探すのではなく、できるだけ規格に当てはめて、

除外がないように考えて下さい。その上で、どう考えても自社の業務において当てはまら

ない、まったくやっていない、該当するものがないなどの結論に至った場合は、その理由

を明確にして、適用除外とします。(除外理由は、例えば以下のように品質マニュアルに

記述します。)

【7.3 設計・開発を適用除外とした際の品質マニュアルの記述例】

①当社が提供する物流サービスは、設計・開発が既に確立したものであり、新たな

設計・開発の必要性はない。

②当社は、確立されたプロセス及びシステムにより、前にご利用いただいたお客様

に対して、引き続き同様の物流サービスを提供しており、お客様からの新たな物

流サービスに関する設計・開発の要望もない。

③当社には、設計・開発と判断できる業務はなく、したがって、それらを職務とす

る部門や部署もない。

④当社の物流サービスに関わる輸送方法、輸送手段、保管方法、保管形態等は既に

確立されたもので、この条項の除外が、お客様の要求事項及び法令・規制要求事

項を満たす物流サービスを提供するという当社の能力、又は責任に何ら影響を及

ぼさない。

以上①から④により、本条項を適用除外とします。

1.2 適用( 抜 粋 )

組織及びその製品の性質によって、この規格の要求事項のいずれかが適用不可能な場合には、

その要求事項の除外を考慮することができる。

このような除外を行う場合には、除外できる要求事項は箇条7に規定する要求事項に限定さ

れる。除外を行うことが、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たす製品を

提供するという組織の能力又は責任に何らかの影響を及ぼすものであるならば、この規格へ

の適合の宣言は受け入れられない。

( JIS Q 9001: 2008 )

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2)トラック運送事業者が規格を読む際の留意点

規格では、“製品”は“サービス”のことをあわせて意味するとなっていますが、状況

によっては、「貨物」をイメージした方がわかりやすい場合があります。例えば、「貨物」

の引き渡し時点は、そのままサービスが引き渡される時点であり、サービスの善し悪し

が結果として「貨物」に反映される場合もあります。

基本的には、“製品”は“物流サービス”と読み替えますが、必要に応じて「貨物」や

「荷物」を想定して解釈を進めた方が理解しやすいことがあります。

<ポイント>

① 製品という記述は、物流サービスそのもの、または物流サービスの提供

② 必要に応じて製品は、貨物や荷物などの輸送対象物

③ 製品実現は、物流サービスの提供を現実のものとすること

④ でき上がった製品を連想する記述は、物流サービスという活動の結果

3)現状業務の調査に関連する規格の解説

「現状業務の調査」において、関連すると考えられる規格の「7.製品実現」と「8.2 監

視及び測定」の一部の簡単なポイントを解説しますので、下図の物流サービスの実務と規

格との関連とあわせて参考にして下さい。

これらの要求事項を、トラック運送事業者としてどのように解釈して、満たしていくか

という具体的な内容は、「標準マニュアル」に記述していますので、詳しい内容について

は、こちらを活用して下さい。

【物流サービス実務と規格との関係の例】

物流サービスの提供

<主要業務>

<支援業務>

配車

積込

運行

荷降

受注

輸送委託

監視機器の管理

物流サービスのチェックと監視

購買品の管理

届け先

(顧客)

荷主

(顧客)

処理業務

計画

運行管理

7.1製品実現の計画(p55)

7.4購買(p64)

7.5製造及びサービス提供(p66)

7.1製品実現の計画(p55)

7.3設計・開発(p60)

基本契約

7.2顧客関連のプロセス(p58)

顧客満足の監視

7.6監視機器及び測定機器の管理(p70) 8.2監視及び測定(p72)

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7.製品実現

7.1 製品実現の計画

<ポイント>

ポイントは、①自社の物流サービスとは何かをはっきりさせ、②品質マネジメントシステ

ム全体としてとらえる、という2つです。

① 自社の物流サービス

物流サービスの提供そのものを現実のものとするために必要とされるプロセスは、本章

の「5.現状業務の調査」(49 ページ)で主要業務として整理、分析を進めています。

本手引きで例示・検討している、以下の流れ図がこれに該当します。

「7.1 製品実現の計画」において、直接物流サービスの提供に関わるプロセスを、主要

業務工程とする旨を宣言し、例えば下のように図示等によりこれを明確にします。

【主要業務工程の表示例】

7.1 製品実現の計画

組織は、製品実現のために必要なプロセスを計画し、構築しなければならない。製品実現の

計画は、品質マネジメントシステムのその他のプロセスの要求事項と整合がとれていなけれ

ばならない( 4.1 参照 )。

( JIS Q 9001: 2008 )

配車 積込 運行 荷降荷主(顧客)

受注 届け先(顧客)

基本契約

配車

積込

運行

荷降

受注

輸送委託

荷主

(顧客)

処理業務

計画

運行管理

届け先

(顧客)

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② 品質マネジメントシステム全体として 必要なプロセスの計画として、さらには、その他のプロセスとの要求事項と整合性も考

慮して、主要業務工程を取巻く、全体像を考えてみましょう。

整合性を考える際に、品質マネジメントシステムのその他のプロセスすべてを列挙し、

整合がとれていることを示すという方法は、あまり現実的ではありません。そこで、まず

は上記のように品質マネジメントシステムの全体像をイメージします。図は、規格で示さ

れているモデルに従い全体を概略で表していますが、これをさらに発展させます。そして、

プロセスのつながり、顧客と組織の品質マネジメントシステムとの関係、組織内の役割り、

関連する手順書等を明確にして、「品質マネジメントシステムの体系図」を策定します。

巻末の参考資料に「2.品質マネジメントシステム体系図」(110 ページ)として、また、「標

準マニュアル」にも体系図の例を添付していますので、こちらも参考にして下さい。

【概略の品質マネジメントシステム全体像】

物流サービスの実現

経営者の責任

資源の運用管理

測定、分析

及び改善

経営者のコミットメント

顧客重視 品質方針

計画

マネジメントレビュー

責任、権限及び

コミュニケーション

資源の提供

人的資源

インフラスト

ラクチャー

作業環境

監視及び測定

不適合サービス

の管理

データの分析

改善

品質マネジメントシステムの継続的改善

顧 客

顧 客

満足

物流サー

ビスの提供

一般要求事項・文書化に関する要求事項

基本契約

配車

積込

運行

荷降

受注

輸送委託

処理業務

計画

運行管理

要求事項

価値を付加する活動

情報の流れ

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<ポイント>

計画にあたって以下を明確にすることとなっていますが、この 7.1 節で個別に書き出すの

ではなく、計画の中で明らかになるような仕組みであることを求めています。したがって、

品質マニュアル、品質マネジメントシステム体系図、各種手順書によりこれらを明らかにし

ます。

このように、物流サービス実現の計画を表すものは、主要業務工程図や品質マネジメント

システム体系図だけではなく、品質マニュアルやそれぞれの手順書も該当しますので、本節

は大きな視点でとらえて理解して下さい。

7.1 製品実現の計画 ( 続 き )

組織は、製品実現の計画に当たって、次の各事項について適切に明確化しなければならない。

a)製品に対する品質目標及び要求事項

b)製品に特有な、プロセス及び文書の確立の必要性、並びに資源の提供の必要性

c)その製品のための検証、妥当性確認、監視、測定、検査及び試験活動、並びに製品合否

判定基準

d)製品実現のプロセス及びその結果としての製品が、要求事項を満たしていることを実証

するために必要な記録( 4.2.4 参照 )

この計画のアウトプットは、組織の運営方法に適した様式でなければならない。

注記 1 特定の製品、プロジェクト又は契約に適用される品質マネジメントシステムの

プロセス(製品実現のプロセスを含む。)及び資源を規定する文書を、品質計画書

と呼ぶことがある。

注記 2 組織は、製品実現のプロセスの構築に当たって、 7.3 に規定する要求事項を

適用してもよい。

物流サービスに対する品質目標・要求事項

物流サービスのためのプロセス(仕事)と手順書の必要性

物流サービスのための人、設備、作業環境の必要性

検証、チェック、監視等とその判定基準

要求事項を満たしていることの実証に必要な記録

( JIS Q 9001: 2008 )

【物流サービス実現のPDCA】

P計画

Cチェック

A改善 D実施

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7.2 顧客関連のプロセス

「7.2 顧客関連のプロセス」には、大別すると以下で解説する①7.2.1 製品に関する要求事

項の明確化、②7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー、③7.2.3 顧客とのコミュニケーシ

ョンという3つの要求事項がありますが、これらは一般的には営業が行う活動が該当します。

<ポイント>

この項では、物流サービスを提供するにあたって、何が求められているのかをはっきりさ

せることを求めています。記述の内容は、基本的には当然のことですが、これらを漠然とで

はなく、a)から d)の4つの視点から明確にする必要があります。当たり前の要求事項である

がゆえに、読み流してしまうかもしれませんが、ここでの内容が曖昧であることが、その後

問題の原因となることは少なくありません。特に法令や規制に関わる要求も含まれますので、

重要な事項と判断して下さい。

7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化

組織は、次の事項を明確にしなければならない。

a)顧客が規定した要求事項。これには引渡し及び引渡し後の活動に関する要求事項を含む。

b)顧客が明示してはいないが、指定された用途又は意図された用途が既知である場合、

それらの用途に応じた要求事項

c)製品に適用される法令・規制要求事項

d)組織が必要と判断する追加要求事項すべて

注記 引渡し後の活動には、例えば、保証に関する取決め、メンテナンスサービスのよ

うな契約義務、及びリサイクル又は 終廃棄のような補助的サービスのもとでの

活動を含む。

7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー

組織は、製品に関連する要求事項をレビューしなければならない。このレビューは、組織が顧客

に製品を提供することに対するコミットメント ( 例 提案書の提出、契約又は注文の受諾、契約

又は注文への変更の受諾 ) をする前に実施しなければならない。レビューでは、次の事項を確実

にしなければならない。

a)製品要求事項が定められている。

b)契約又は注文の要求事項が以前に提示されたものと異なる場合には、それについて解決

されている。

c)組織が、定められた要求事項を満たす能力をもっている。

このレビューの結果の記録、及びそのレビューを受けてとられた処置の記録を維持しなければな

らない(4.2.4 参照)。

顧客がその要求事項を書面で示さない場合には、組織は顧客要求事項を受諾する前に確認しなけ

ればならない。

製品要求事項が変更された場合には、組織は、関連する文書を修正しなければならない。また、

変更後の要求事項が、関連する要員に理解されていることを確実にしなければならない。

注記 インターネット販売などでは、個別の注文に対する正式なレビューの実施は

非現実的である。このような場合のレビューでは、カタログ又は宣伝広告資料

のような関連する製品情報をその対象とすることもできる。

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

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<ポイント> 前項により要求事項は明確化されましたが、ISO では、明確にすることで終わりではなく、

確認、見直し、検討などによって、より確かな情報であることを求めています。そして、物

流サービスの提供について、見積書の提出や取引契約をする前に、これらの要求事項を a)か

ら c)の3点について見直しすることとされています。

a)については、前項 7.2.1 の4つの視点が明確であること。b)では、価格、納期、仕様、

数量などの変更について、以前に示されていたものとの相違が互いに納得できていること。

そして c)では、この仕事を実施するにあたって、トラックの台数があるか、適した機能のト

ラックが調達できるかなど、要求を満たすだけの能力があるかを、契約の前に確認するよう

に求めています。

そして、これらの結果や処置は、記録する必要がありますので注意して下さい。

特に運送業界では、お客様からの情報が口頭や電話など、結果が残らない方法で行われる

ことが多くありますので、契約または受注の受諾前の確認は規格でも要求されている大切な

活動になります。

<ポイント>

正確にお客様の要求事項を把握できたとしても、明示されている要求、明示されていない

が必ず実施しなけばならない要求、趣味、趣向、ねらい、目的など多くの「お客様の思い」

は、ときには社会状況や会社がおかれている環境にも影響され、変化する可能性があります。

そこで、特に物流サービスの品質に関わる a)から c)の情報を、どのように連絡しあい、伝達・

交換するかをはっきりさせて、それを実行するように求めています。

この項は、自社とお客様との関係をどれだけ密接にしていくかという、戦略的な取決めで

あり、お客様とのコミュニケーションは、ISO の導入に関わらず極めて重要な要因でもあり

ますから、他社のやり方やサンプルに流される必要はありません。

7.2.3 顧客とのコミュニケーション

組織は、次の事項に関して顧客とのコミュニケーションを図るための効果的な方法を明確に

し、実施しなければならない。 a)製品情報 b)引合い、契約若しくは注文、又はそれらの変更 c)苦情を含む顧客からのフィードバック

( JIS Q 9001: 2008 )

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7.3 設計・開発

この 7.3 設計・開発に関わる大きなポイントは、自社の設計・開発は何であるかをはっき

りさせることにあります。これが「何か」によって、進め方、検証方法、残すべき記録など

が定まってきますので、設計・開発を適用する場合には、該当する活動が「何であるか」を

明確にしてから進めましょう。ただし、運送業という特性により、設計・開発が何に該当す

るかという判断が難しいという状況が考えられます。その際は、設計や開発のような計画に

分類される活動を「7.1 製品実現の計画」で実施できる場合もありますので、しっかりと検

討した上で取組まなければならない要求事項と理解して下さい。

<ポイント>

7.3.1 設計・開発の計画では、a)から c)をはっきりさせて計画を策定し、実施することを

求めていますが、この項のポイントは a)に記述の「段階」です。

多くの場合、設計や開発は、情報の入手からはじめて、大枠から次第に詳細な部分へと移

行しますので、この流れの「ふし」がステージとも呼ばれる「設計・開発の段階」です。こ

の区切りを基本にして、レビュー、検証、妥当性確認を定め、責任と権限を明確にします。

<ポイント>

設計・開発が目的にあった内容で達成されるために、物流サービスに関する要求事項など

の必要な情報をはっきりさせ、記録も残すよう求めています。

7.3.1 設計・開発の計画

組織は、製品の設計・開発の計画を策定し、管理しなければならない。

設計・開発の計画において、組織は、次の事項を明確にしなければならない。

a)設計・開発の段階

b)設計・開発の各段階に適したレビュー、検証及び妥当性確認

c)設計・開発に関する責任及び権限

組織は、効果的なコミュニケーション及び責任の明確な割当てを確実にするために、設計・

開発に関与するグループ間のインタフェースを運営管理しなければならない。

設計・開発の進行に応じて、策定した計画を適切に更新しなければならない。

注記 設計・開発のレビュー、検証及び妥当性確認は、異なった目的をもっている。それ

らは、製品及び組織に適するように、個々に又はどのような組合せでも、実施し、

記録することができる。

7.3.2 設計・開発へのインプット

製品要求事項に関連するインプットを明確にし、記録を維持しなければならない(4.2.4 参

照)。インプットには、次の事項を含めなければならない。

a)機能及び性能に関する要求事項

b)適用される法令・規制要求事項

c)適用可能な場合には、以前の類似した設計から得られた情報

d)設計・開発に不可欠なその他の要求事項

製品要求事項に関連するインプットについては、その適切性をレビューしなければならない。

要求事項は、漏れがなく、あいまい( 曖昧 )でなく、かつ、 相反することがあってはなら

ない。

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

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お客様が求めている要望と、それに対して自社はどこまでの対応をし、その際に配慮すべ

き条件は何かなどを、適用される法令などもあわせて明確にします。

<ポイント> 設計・開発の結果がどのようなものであったかということだけではなく、前項のインプッ

トがどのような関連性をもってアウトプットへと価値が付加されたかがわかるような様式で

提示しなければならないことがポイントです。 何を設計・開発と定義したかによって違いますが、アウトプット情報からインプット情報

が素直に連想できないものもありますので、その場合には意識的に対比を考慮しましょう。

<ポイント>

この項の“レビュー”、以降の“検証”“妥当性確認”は、少しわかりにくい要求事項のた

め、次の図【設計開発におけるレビューと検証、及び妥当性確認】を参照して下さい。

このようにレビューは、プロセスのいろいろな段階を対象として、適切性、妥当性、有効

性を判定する、いわゆるそれぞれのプロセスを審査するような活動です。ただし、すべてを

対象とする要求ではなく、“適切な段階において”a)と b)を実施し、記録します。

7.3.3 設計・開発からのアウトプット

設計・開発からのアウトプットは、設計・開発へのインプットと対比した検証を行うのに適

した形式でなければならない。また、リリース前に、承認を受けなければならない。

設計・開発からのアウトプットは、次の状態でなければならない。

a)設計・開発へのインプットで与えられた要求事項を満たす。

b)購買、製造及びサービス提供に対して適切な情報を提供する。

c)製品の合否判定基準を含むか、又はそれを参照している。

d)安全な使用及び適正な使用に不可欠な製品の特性を明確にする。

注記 製造及びサービス提供に対する情報には、製品の保存に関する詳細を含めることが

できる。

7.3.4 設計・開発のレビュー

設計・開発の適切な段階において、次の事項を目的として、計画されたとおりに( 7.3.1 参

照 )体系的なレビューを行わなければならない。

a)設計・開発の結果が、要求事項を満たせるかどうかを評価する。

b)問題を明確にし、必要な処置を提案する。

レビューへの参加者には、レビューの対象となっている設計・開発段階に関連する部門の代

表が含まれていなければならない。このレビューの結果の記録、及び必要な処置があればそ

の記録を維持しなければならない(4.2.4 参照 )。

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

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<ポイント> “検証”は、上記の図を参照して下さい。ここでのポイントは、プロセスそのものではな

く、そのプロセスに入った情報(インプット)とその結果(アウトプット)に着目して、そ

れらを対比して整合性やインプット通りに実現しているかを調べることです。 この項でも、結果と必要な処置についての記録が必要です。

<ポイント> “妥当性確認”は、上記の図を参照して下さい。設計・開発された物流サービス等を、試

験、リハーサル、シミュレーション、検査などによって確認します。仕様書や設計書による

サービスが現実のものとなった際には、設計段階では予想できなかった課題が見つかる場合

もあります。

7.3.5 設計・開発の検証

設計・開発からのアウトプットが、設計・開発へのインプットで与えられている要求事項を

満たしていることを確実にするために、計画されたとおりに( 7.3.1 参照 )検証を実施し

なければならない。この検証の結果の記録、及び必要な処置があれば、その記録を維持しな

ければならない。(4.2.4 参照)

7.3.6 設計・開発の妥当性確認

結果として得られる製品が、指定された用途又は意図された用途に応じた要求事項を満たし

得ることを確実にするために、計画した方法( 7.3.1 参照 )に従って、設計・開発の妥当

性確認を実施しなければならない。実行可能な場合にはいつでも、製品の引渡し又は提供の

前に、妥当性確認を完了しなければならない。妥当性確認の結果の記録、及び必要な処置が

あればその記録を維持しなければならない(4.2.4 参照 )。

【設計開発におけるレビューと検証、及び妥当性確認】

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

インプット アウトプット

設計・開発(各段階を含む)

仕様書・設計書(規定された特性)

設計・開発された物流サービス妥当性確認

検 証

レビュー

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<ポイント> 途中の詳細な変更のたびの実施ではなく、1つの設計が終了した後、設計・開発された物

流サービス等に変更があった場合に行います。 レビュー、検証、妥当性確認の適宜の実行と、変更実施前の承認が要求ですが、特にレビ

ューについては、以下の2つの評価を含めることが求められています。 ① その変更が、既存の物流サービスへ影響がないか ② その変更によって既に実施された物流サービスとの関係で問題が生じないか

7.3.7 設計・開発の変更管理

設計・開発の変更を明確にし、記録を維持しなければならない。変更に対して、レビュー、

検証及び妥当性確認を適切に行い、その変更を実施する前に承認しなければならない。設計・

開発の変更のレビューには、その変更が、製品を構成する要素及び既に引き渡されている製

品に及ぼす影響の評価を含めなければならない。変更のレビューの結果の記録、及び必要な

処置があればその記録を維持しなければならない(4.2.4 参照)。

注記 “変更のレビュー”とは、変更に対して適切に行われたレビユー、検証及び妥当性確

認のことである。

( JIS Q 9001: 2008 )

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7.4 購買

<ポイント>

まずは、購買製品が何かをはっきりさせないと、この 7.4 節全体が曖昧なものになってし

まいます。運送業では、一般的には①車両及び資材を含め購入される物品そのものと、②傭

車・外注などにより業務の提供を受けるサービスが該当します。①②ともに、コスト、技術、

時間などの要因から、自社で製作できない物を購入により利用するか、自社でできないサー

ビスを委託によりこなすか、ということになります。この際に、自らの組織の活動ではない

から品質に関わることでも適当で良いという訳にはいきません。ISO では我が社の責任でお

客様に提供する物流サービスにおいて、「購買製品」がどの程度の影響を及ぼすかを考慮して、

それに応じた管理をするように求めています。

そして、その管理方法は、物品の購入先、サービスの委託先、協力会社など“供給者”と

呼ばれる外部の組織を、基準を定めて評価し、選定し、再評価することとされています。

この際に、何が購買に対する要求事項であるかが明確であることが必要です。そして、そ

の要求事項を、どれだけ満たす能力があるかを判断の根拠とします。

<ポイント>

漠然とものを買わない、曖昧に作業を頼まないことと考えて下さい。トラック運送事業に

おいては、協力会社や傭車の管理やそのあり方についてもポイントになります。

自社は、このような物が欲しい、こういう内容のサービスを提供して欲しいという情報を

はっきりさせて、それが妥当であることを確認した上で、供給してくれる組織に依頼します。

その際に、必要な場合には、a)から c)の事項を盛り込みます。

具体的な記述例は、発注書、注文書、依頼書、仕様書などですが、“情報”という解釈は幅

が広いので、場合によっては見積書等の相手側からでる情報も該当します。情報の様式にこ

7.4 購買

7.4.1 購買プロセス

組織は、規定された購買要求事項に、購買製品が適合することを確実にしなければならない。

供給者及び購買した製品に対する管理の方式及び程度は、購買製品が、その後の製品実現の

プロセス又は 終製品に及ぼす影響に応じて定めなければならない。

組織は、供給者が組織の要求事項に従って製品を供給する能力を判断の根拠として、供給者

を評価し、選定しなければならない。選定、評価及び再評価の基準を定めなければならない。

評価の結果の記録、及び評価によって必要とされた処置があればその記録を維持しなければ

ならない(4.2.4 参照)。

7.4.2 購買情報

購買情報では購買製品に関する情報を明確にし、次の事項のうち該当するものを含めなけれ

ばならない。

a)製品、手順、プロセス及び設備の承認に関する要求事項

b)要員の適格性確認に関する要求事項

c)品質マネジメントシステムに関する要求事項

組織は、供給者に伝達する前に、規定した購買要求事項が妥当であることを確実にしなけれ

ばならない。

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

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だわることではなく、依頼側と提供側が、共通の正しい認識がもてるようにすることを目的

と考えて下さい。

<ポイント>

購買製品の受入検査や検収と考えて下さい。そして、必要な検査又はそれに類するその他

の活動を定めて、実施することが求められています。

このように判断すれば、形がある購入物品についての検証は、それほどイメージしにくい

ものではないでしょう。

問題は、サービスなどの無形の活動が購買製品であった場合で、当然この際にも協力会社

や傭車先により適正に輸送が行われたかをきちんと見極める必要があります。

ポイントは、前項の 7.4.2 購買情報にあります。ここで、購買に関する情報がはっきりさ

れず、曖昧な慣習や風習のままでは、なにがどの程度達成されているかをつかむことができ

なくなります。購買情報を明確にする際は、それらをいかに検査・検収・試験等により検証

するかも考慮にいれておくと良いでしょう。

なお、協力会社などの供給先での検証の要望や必要性がある場合も、その処置の仕方や引

き渡し許可などの方法を購買情報に盛り込むことが求められています。

7.4.3 購買製品の検証

組織は、購買製品が、規定した購買要求事項を満たしていることを確実にするために、必要

な検査又はその他の活動を定めて、実施しなければならない。

組織又はその顧客が、供給者先で検証を実施することにした場合には、組織は、その検証の

要領及び購買製品のリリースの方法を購買情報の中で明確にしなければならない。

( JIS Q 9001: 2008 )

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7.5 製造及びサービス提供

<ポイント>

この項は、製造及びサービス提供の基本となる要求事項で、ポイントは“管理された状態”

であることです。その状態を示すものとして、a)から f)までの切り口が要求事項として記述

されています。つまり、自社の物流サービスの各項目内容を示し、それが“管理された状態”

であることを立証する、ということになります。

a)から f)は“含めなければならない”という要求で、「必要な場合には」という表現では

ありませんから、求められている内容にもれがあってはいけません。ただし、それぞれの内

容は、それほどわかりにくいものではありませんので、「標準マニュアル」の記述内容を参考

にして下さい。

7.5.1 製造及びサービス提供の管理

組織は、製造及びサービス提供を計画し、管理された状態で実行しなければならない。管理

された状態には、次の事項のうち該当するものを含めなければならない。

a)製品の特性を述べた情報が利用できる。

b)必要に応じて、作業手順が利用できる。

c)適切な設備を使用している。

d)監視機器及び測定機器が利用でき、使用している。

e)監視及び測定が実施されている。

f)製品のリリース、顧客への引渡し及び引渡し後の活動が実施されている。

7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認

製造及びサービス提供の過程で結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視又は測定

で検証することが不可能で、その結果、製品が使用され、又はサービスが提供された後でし

か不具合が顕在化しない場合には、組織は、その製造及びサービス提供の該当するプロセス

の妥当性確認を行わなければならない。

妥当性確認によって、これらのプロセスが計画どおりの結果を出せることを実証しなければ

ならない。

組織は、これらのプロセスについて、次の事項のうち該当するものを含んだ手続きを確立し

なければならない。

a)プロセスのレビュー及び承認のための明確な基準

b)設備の承認及び要員の適格性確認

c)所定の方法及び手順の適用

d)記録に関する要求事項( 4.2.4 参照 )

e)妥当性の再確認

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

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<ポイント>

物流サービスを提供している段階ではその良否の判断ができず、サービスが提供された後

かサービスが引き渡された後でしか不備な点がはっきりしないようなプロセスがある“場合

には”がポイントになります。 引き渡す前に確認できないものは、できないのだからという理由で何もしないのではなく、

そのやり方が適切かどうかという見方で確認をしようという趣旨です。ただし、この確認で

きないものがあるか、ないかの判断は、運送業では難しい課題になることがあります。 冷蔵、冷凍、チルド品を取扱っている場合にはこれに該当しますので、規格に記述の妥当

性確認を実施し、きちんと計画通りの結果が出せる能力を維持していることの証明として、

記録も残さなければなりません。 また、一般貨物等が対象である場合には、自社でどのように判断するかを決定しなければ

なりません。一つの考え方として、積み込みや荷降し作業までを含めて、運送行為そのもの

が、サービス提供後にしか検証ができないプロセスであるという解釈があります。この場合

には、運行記録計やドライバーの資格基準や教育に注視し、妥当性確認を実施します。 一方、物流サービスには、そもそも妥当性確認を必要とするプロセスはないという考え方

もあります。ただし、この場合には、該当しないという理由を明確にする必要があります。 製造業のように溶接、メッキ、はんだ付けなど非破壊検査を用いなければ確認できないよ

うなプロセスがあれば、比較的理解しやすいのですが、物流サービスでは判断が難しい要求

事項と考えて下さい。

<ポイント>

規格に記述の“製品”をそのまま“サービス”に置き換えると、混乱する場合があります。

例えば、「物流サービス実現の全ての過程において、物流サービスを識別すること」となりま

すが、理解できると感じた場合はそのまま進めて下さい。 物流サービスという活動は、お預かりした「貨物」という素材に、「位置の移動」という価

値が付加した商品を生み出すための一つの工場で、その中に受入、保管、運搬などの作業が

あると考えることができます。

7.5.3 識別及びトレーサビリティ

必要な場合には、組織は、製品実現の全過程において適切な手段で製品を識別しなければな

らない。

組織は、製品実現の全過程において、監視及び測定の要求事項に関連して、製品の状態を識

別しなければならない。

トレーサビリティが要求事項となっている場合には、組織は、製品について一意の識別を管

理し、記録を維持しなければならない( 4.2.4 参照 )。

注記 ある産業分野では、構成管理(configuration management)が識別及びトレーサビリ

ティを維持する手段である。

( JIS Q 9001: 2008 )

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【識別及びトレーサビリティの考え方の例】

図のように、物流サービスを提供していく中で、積み込み間違いや、配送ミス、違った荷

物を降すなど問題が起きる可能性のある過程で、荷札、受付番号、置き場所、車番などによ

り貨物を“識別”します。運送業では、これらの“識別”は品質に直接関わる重要な活動に

なりますので、実作業においては注意深さや厳密さが必要になります。 さらに、確認やチェックの結果、良かったもの悪かったもの(合格品/不合格品の区別)、

まだ確認していないもの(確認済み/確認前の区別)がわかるようにその状態を“識別”す

ることが要求されています。(例:濡れ損品の別区画への積み替えや積み分けなど) なお、いつ貨物を積み込んだかなどの過去の情報が後追いできようにする(トレーサビリ

ティ)ことが求められている場合には、記録を取るなどにより、必要とされる時点での貨物

情報がわかるようにしておきます。

<ポイント> 「顧客の所有物」には、何が該当するのでしょうか。 前図「識別及びトレーサビリティの考え方の例」を見ると、物流サービスの場合「顧客の

所有物」は、「貨物」と「貨物情報」(伝票類を含む)が考えられます。また、実作業では、

顧客提供のパレットや梱包資材なども該当しますので、この定義をはっきりさせれば、記述

の内容は理解しやすくなります。

7.5.4 顧客の所有物

組織は、顧客の所有物について、それが組織の管理下にある間、又は組織がそれを使用して

いる間は、注意を払わなければならない。組織は、使用するため又は製品に組み込むために

提供された顧客の所有物の識別、検証及び保護・防護を実施しなければならない。顧客の所

有物を紛失若しくは損傷した場合又は使用に適さないとわかった場合には、組織は、顧客に

報告し、記録を維持しなければならない( 4.2.4 参照 )。

注記 顧客の所有物には、知的財産及び個人情報を含めることができる。

( JIS Q 9001: 2008 )

配車 積込 運行 荷降受注荷主

(顧客)届け先(顧客)

貨物 貨物 貨物貨物貨物

貨物情報

貨物情報

貨物情報

貨物情報

貨物情報

貨物情報

貨物情報

<識別> <識別> <識別>

トレーサビリティ

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<ポイント>

この項も、“製品”をそのまま“サービス”に置き換えると混乱しますので、お預かりした

貨物を“製品”と考えれば、記述通りに読めます。 “製品を構成する要素”については、製造品を組み上げていく際の部品や仕掛品を指して

いますので、物流サービスでは、貨物や伝票など、的確な保存が必要なものが視野に入って

いれば、特に意識する必要はないでしょう。

7.5.5 製品の保存

組織は、内部処理から指定納入先への引渡しまでの間、要求事項への適合を維持するように

製品を保存しなければならない。この保存には、該当する場合、識別、取扱い、包装、保管

及び保護を含めなければならない。保存は、製品を構成する要素にも適用すしなければなら

ない。

注記 内部処理とは、組織が運営管理している製品実現のプロセスにおける活動をいう。

( JIS Q 9001: 2008 )

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7.6 監視機器及び測定機器の管理

<ポイント> この項のポイントは、①規格で求められている監視機器や測定機器が、自社の何に該当す

るのかということと、②ISO では、監視機器と測定機器では管理の方法が違うということで

す。

例えば冷凍車を保有している場合には、庫内温度計等の温度を監視する装置やシステムが

“監視機器”に該当します。

重量計測等が業務上欠かせず、これらの測定結果が取引上の精度を保証しなければならな

いような場合は、はかりや計量器を“測定機器”として対象とします。

上記のような、監視機器や測定機器を必要としない業務の場合は、運行記録計やタイヤ内

圧測定ゲージ、ドライブレコーダーなどが“監視機器”と考えられます。

<ポイント>

物流サービスの品質を管理するために、自社の責任として測定値の正当性を保証しなけれ

ばならない測定機器を使用している場合は、a)から e)の事項を満たします。

運行記録計のように、サービスそのものが適切であるどうかを監視する機器しか使用しな

い場合は、その旨を記述し、正当性を保証しなければならないような測定機器がないことを

表明します。

7.6 監視機器及び測定機器の管理

定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために、組織は、実施すべき監視及び

測定を明確にしなければならない。また、そのために必要な監視機器及び測定機器を明確に

しなければならない。

組織は、監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測定が実施できる

ことを確実にするプロセスを確立しなければならない。

7.6 監視機器及び測定機器の管理( 続 き )

測定値の正当性が保証されなければならない場合には、測定機器に関し、次の事項を満たさ

なければならない。

a)定められた間隔又は使用前に、国際又は国家計量標準にトレーサブルな計量

標準に照らして校正若しくは検証、又はその両方を行う。そのような標準が存在し

ない場合には、校正又は検証に用いた基準を記録する(4.2.4 参照)。

b)機器の調整をする、又は必要に応じて再調整する。

c)校正の状態を明確にするために識別を行う。

d)測定した結果が無効になるような操作ができないようにする。

e)取扱い、保守及び保管において、損傷及び劣化しないように保護する。

さらに、測定機器が要求事項に適合していないことが判明した場合には、組織は、その測定

機器でそれまでに測定した結果の妥当性を評価し、記録しなければならない。組織は、その

機器、及び影響を受けた製品すべてに対して、適切な処置をとらなければならない。

校正及び検証の結果の記録を維持しなければならない(4.2.4 参照)。

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

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<ポイント>

「コンピュータソフトウェア」と言うとパソコンなどで使用するソフトウェアを想像する

かもしれませんが、デジタル式運行記録計、ドライブレコーダー、GPSによる運行管理シ

ステムや庫内温度管理システムなど、監視や測定に関連する多くのソフトウェアが活用され

ていることと思います。

規格は、これらのコンピュータソフトウェアが正しく、安定した状態で働いていて、考え

ていたとおりに監視や測定ができることを適切に確認するように求めています。

7.6 監視機器及び測定機器の管理(続き)

規定要求事項にかかわる監視及び測定にコンピュータソフトウェアを使う場合には、そのコ

ンピュータソフトウェアによって意図した監視及び測定ができることを確認しなければなら

ない。この確認は、 初に使用するのに先立って実施しなければならない。また、必要に応

じて,再確認しなければならない。

注記 意図した用途を満たすコンピュータソフトウェアの能力の確認には、通常、その使

用の適切性を維持するための検証及び構成管理も含まれる。

( JIS Q 9001: 2008 )

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8.2 監視及び測定

8.2.1 顧客満足

<ポイント>

「7.2 顧客関連のプロセス」(58 ページ)で、

お客様が求めている事柄について、はっきり

させ、それを見誤らないような対応が求めら

れています。しかし、それが物流サービスと

して実現された場合、その結果をお客様はど

のように感じているのでしょうか。顧客要求

事項をどの程度満たしているかについて、お

客様がどのように認識しているかを監視する

ことがこの項で求められています。

この「顧客満足」で誤解されていることが

多いようですが、ISO では、やみくもに 大満

足を目指すことを求めていません。どの程度

満足しているか、どのように受けとめている

かをしっかりと把握すること。そして、その

結果を基に、自らの組織の経営資源を有効に

活用し、どのように対応していくかを決定す

ることが要求事項の主旨です。

しかし、顧客満足の監視や測定は、実際には大変に難しい活動である上、企業にとっての

競争力に関わる戦略的な活動にもなります。

そこで、監視や測定が難しいといわれる理由を考えてみましょう。

<簡単に入手できる情報だけでは本意までわからないこと>

クレームや苦情があれば、不満足であることは予想がつきます。しかし、クレームがな

いことが満足とはいえません。文句は言わないが、次回からは使わない。苦情は直接言わ

ず噂や話題にする。クレームをつけるほどではないが、満足度は低く、何かのきっかけが

あれば別の会社を利用する。このように、同じクレームがないことでも、顧客は潜在的な

不満を持っているということも想定しなければいけません。

クレーム・苦情などの待っていても入手できる情報には限界がありますので、「顧客満足」

を監視、測定するための何らかの積極的な手段を講じる必要があります。

8.2.1 顧客満足

組織は、品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の測定の一つとして、顧客要求事

項を満たしているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているかについての情報を監

視しなければならない。この情報の入手及び使用方法を定めなければならない。

注記 顧客がどのように受けとめているかの監視には、顧客満足調査、提供された製品の

品質に関する顧客からのデータ、ユーザ意見調査、失注分析、顧客からの賛辞、補

償請求及びディーラ報告のような情報源から得たインプットを含めることができ

る。

満足

不満足

隔たり

不可

顧客の認識

【顧客要求事項の達成度】

( JIS Q 9001: 2008 )

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<顧客が一様でないこと>

運送業の特色として、荷主などの一次顧客だけが顧客ではないことがあります。通常は

荷主という一次顧客と届け先の二次顧客の2つを考える必要があります。

【自社と顧客との関係】

二次顧客は、クレームを直接運送業者に伝えず、荷主に報告する場合があります。これ

は、クレームや苦情などの負の情報だけとは限りません。加えて、荷主は、入手した情報

の全てを公開するわけではありませんし、状況によっては加工されて伝えられる場合もあ

ります。

したがって「自社」としては、より正確な情報を入手するために、両方の顧客に対して、

それぞれに適切な方法で対応する必要があります。自社の組織では、社長、営業、ドライ

バーなどいろいろな立場やレベルで、それぞれの顧客との接点があります。これらの関係

を考慮して、目的にあった内容で、顧客満足の程度を把握する必要があります。

具体的な方法には、通常のクレームや苦情などの入手に加え、①顧客との定例会議や安全

会議への参加、②訪問、面談などの対話式の調査、③積込み場などの作業現場調査、④電話

やメールなども利用したアンケート調査などが考えられます。(規格の注記も参照のこと)

ただし、満足度の測定に絶対の方法はありませんので、目的や状況を考慮して、実行可能

で適切なやり方を検討して下さい。なお、対象とする顧客が品質の ISO の認証を取得してい

る場合、相手会社の購買管理として、自社が評価されている場合があります。これらの評価

結果が、有用な情報になることがあります。

自社

荷主(一次顧客)

届け先(二次顧客)

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- 74 -

8.2.3 プロセスの監視及び測定

<ポイント>

積込みや運行などに加え文書管理などの支援工程もあわせて、品質マネジメントシステム

のそれぞれのプロセスが、計画した通りの結果を出せる能力があるか、また目的を達成する

ための経営資源は適切なのかどうかを、プロセスという単位で監視し、可能であれば測定し

ます。

また、ISO に取組む前から、このような考えで責任者が仕事を監視していた場合は、それ

を継続して下さい。ただし、このような活動自体の監視やチェックについては、一般的に明

確な取決めがなく漠然と行われていることが多いので、ここでははっきりとした方法を定め

て実施する必要があります。

一つの例として、プロセスのいくつかは手順書が作成されていますので、どのようにプロ

セスを監視・測定するかを決めて、「評価」として各手順書に記述し、取決め通りに実施する

というやり方があります。また、プロセスを適切に分類し、監視対象プロセス、責任者、監

視方法を「プロセス監視の手順」として定めてしまうという方法もあります。どのようなや

り方をするにしても、プロセスが適切に維持されていることは、そのプロセスに責任をもつ

者が、果たさなければならない仕事ですから、適切と判断できる何らかの方法で監視と測定

について定める必要があります。

その上で、内部監査でプロセスの評価をすることもできます。その際は、監査の目的を明

確にして、『そのプロセスの責任者ではない監査員』が評価を実施することになります。

8.2.3 プロセスの監視及び測定

組織は、品質マネジメントシステムのプロセスの監視、及び適用可能な場合に行う測定には、

適切な方法を適用しなければならない。これらの方法は、プロセスが計画どおりの結果を達

成する能力があることを実証するものでなければならない。計画どおりの結果が達成できな

い場合には、適切に、修正及び是正処置をとらなければならない。

注記 適切な方法を決定するとき、組織は、製品要求事項への適合及び品質マネジメント

システムの有効性への影響に応じて、個々のプロセスに対する適切な監視又は測定

の方式及び程度を考慮することを推奨する。

( JIS Q 9001: 2008 )

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- 75 -

8.2.4 製品の監視及び測定

<ポイント>

仕事はやりっ放しにしないで、適切に確認やチェックをしましょう、ということになりま

すが、実際には特別に意識せず一連の活動として実施されているかもしれません。

そこで、現在行われていることが適切な段階

であるか、規格を満たす内容であるかを検討し

て「物流サービスの監視及び測定」を決定しま

す。

これらの決め事は、規格の「7.1 製品実現の

計画」の全体を考慮して、特に 7.1c)で定めら

れた検証等の内容として、積込みや運行などの

手順書に記述されます。

なお、“製品”は基本的には“物流サービス”

で、監視や測定の対象も“物流サービス”です

が、手順書に記述される内容は、「貨物」の状

態により、サービスを表す場合があります。

8.2.4 製品の監視及び測定

組織は、製品要求事項が満たされていることを検証するために、製品の特性を監視し、測定

しなければならない。監視及び測定は、個別製品の実現の計画( 7.1 参照 )に従って、製

品実現の適切な段階で実施しなければならない。合否判定基準への適合の証拠を維持しなけ

ればならない。

顧客への引渡しのための製品のリリースを正式に許可した人を、明記しておかなければなら

ない( 4.2.4 参照 )。

個別製品の実現の計画( 7.1 参照 )で決めたことが問題なく完了するまでは、製品のリリ

ース及びサービスの提供は行ってはならない。ただし、当該の権限をもつ者が承認したとき、

及び該当する場合に顧客が承認したときは、この限りではない。

( JIS Q 9001: 2008 )

【物流サービス実現のPDCA】

P計画

Cチェック

A改善 D実施

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- 76 -

6. 文書作成

ISO の仕組みは、漠然と組織の中に構成されるものではありません。見える形として文書

で表す必要があり、これが「文書作成」という活動となります。ともすると文書を作ること

が目的と思われがちですが、あくまで仕組みを表現する一つの手段として文書化があると考

えて作業を進めて下さい。

前記したように ISO の文書には、体系化された構成

があり、すべてがその中に収まります。つまり、ある

手順を文書化するということは、この文書構成のもの

を作るか、そこに当てはめることになりますので、通

常は以下の3つの方法が考えられます。

①品質マニュアルに記述する

②手順書・作業指示書を作る

③記録である一覧表、管理リスト、台帳類に書く

(記録用紙の構成を工夫すれば、そこで手順を示す

ことも可能です)

文書化される対象には、いろいろな種類のものがあり

ますので、これらのどれを選択することが 適かを判断

して、文書化を進めます。

そして、文書は、できるだけわかりやすく作ることを心がけて下さい。読みやすく、また

理解しやすく作るには、工夫や負担を伴いますが、その結果、文書の維持や修正が容易にな

ることに加えて、使われる、読まれる、生きた手順とすることが可能になります。

(1)品質マニュアルの作成 「標準マニュアル」に添付の「品質マニュアル」を参考にして下さい。添付のサンプルは、

ISO の規格の構成を基準として作成されていますが、特に様式や書き方が定められている訳

ではありませんので、どのような構成を用いてもかまいません。

ただし、認証取得審査の際に、でき上がった品質マニュアルを示して、これが規格の要求

事項をもれ無く、適切に満たしていることを証明しなければなりませんので、それらの事情

も考慮して作成にあたって下さい。その意味では、規格の記述をそのまま使うのではなく、

できるだけ自社の言葉で表現するように心がけると良いでしょう。

(2)主要業務の手順書の作成 品質マネジメントシステムとして構築される仕組みは、対象とするサービス(製品)の品

質に直接関与する主要業務と、それらを支える支援業務に分けて考えることができます。こ

の区分けは、文書化を進める上でも効果的に利用することができます。

組織の本業は何で、どのような業務で利益を得ているか、品質の対象となる物流サービス

が何かを考えて下さい。これが、品質マネジメントシステムにおける主要業務となります。 この主要業務は、「5.現状業務の調査」において、整理と分析が実施されていますので、

ここではそれらの結果を活用して次のように手順書を作成します。

品質マニュアル

手順書

関連文書

作業指示書

記録

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【手順書】

【流れ図】

6.6

6.5

6.4

6.3

6.2

6.1

No

Yes

ドライバー

積込先担当者(顧客) 積地に出発

積み込み場所に着

車し伝票を入手 顧客

ドライバー

貨物の品名、数量、

異常等の確認

出発

積込伝票

ドライバー

顧客

ドライバー

積み込み

確認し施錠

ドライバー

積込先担当

者に報告

積込伝票

終了を報告し、納品

伝票をもらう 顧客

ドライバー納品伝票

正しいか?

表紙

○○運送 株式会社

積込手順書

目次

1 目的

2 適用範囲

3 関連文書

4 定義

5 責任

6 手順

7 評価

8 記録

9 添付(流れ図)

-1-

1 目的

・・・・・・・ ・・・・・・・

2 適用範囲

・・・・・・・ ・・・・・・・

3 関連文書

・・・・・・・ ・・・・・・・

-2-

ドライバー 貨物取扱 ルール

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【手順】

6.1 積み込み場所に着車し伝票を入手

ア)ドライバーは、安全運転をして、積込場所に着車する。

イ)顧客(積込先担当者)に会社名、車番を伝え、積込伝票を入手する。

ウ)配送先、到着時間などを確認し、配車担当者の指示と差異がないか確認する。

エ)指示と差がある場合は、配車担当者に連絡する。

6.2 貨物の品名、数量、異常等の確認

ア)ドライバーは、積込伝票に基づき貨物の品名、数量、荷姿の確認をする。

イ)貨物の外装にぬれ、やぶれ、穴、傷等の異常がないか、注意深く調べる。

6 手順

6.1 ・・・・・・・

6.2 ・・・・・・・

6.3 ・・・・・・・

-4-

7 評価

・・・・・・・ ・・・・・・・

8 記録

・・・・・・・ ・・・・・・・

-5-

9 添付 流れ図

-6-

上記は、流れ図を文字の文書に展開して手順書としていますが、流れ図その

ものを手順書とする方法もあります。手順書をどこまでの細かさで記述する

かは、自社の判断により決定します。

4 定義

・・・・・・・ ・・・・・・・

5 責任

・・・・・・・ ・・・・・・・

-3-

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- 79 -

(2)支援業務の手順書の作成 前述した主要業務を支える活動は「支援業務」といういい方ができます。文書化に関する

要求事項で説明した「この規格が要求する“文書化された手順”」(46 ページ)の6種類の

手順も、この支援業務に該当します。 ただし、規格で要求されている手順には、“組織が必要と判断した文書”もありますので、

支援と考えられる業務で、必要と考えられる手順については文書化をします。

以下は、その一般的な例です。

【必要と判断した文書の例】

規格条項 条項内容 文書名 参照 1 5.4.1 品質目標 品質方針・目標管理手順書、記録

は品質目標達成計画書※

38 ページ

2 5.6 マネジメントレビュー (品質マニュアルに記述)※ 95 ページ

3 6.2 人的資源 教育・訓練手順書、記録は教育訓

練計画書※

80 ページ

4 6.3 インフラストラクチャー 車両管理手順書※ 81 ページ

5 7.4 購買 購買管理手順書、記録は協力会社

評価表※

64 ページ

※は、「標準マニュアル」にサンプルを添付 1)人的資源やインフラストラクチャーについて

組織が必要と判断する手順書の中で、ISO を進める上で欠かすことのできない教育・訓

練に関するものと、特にトラック運送事業にとって重要なインフラストラクチャーや作業

環境について、規格の「6.資源の運用管理」について解説します。

<ポイント>

資源の運用管理に関する一般的な考えをまとめています。ここでいう資源とは、具体的に

は以降の節に「人的資源」「インフラストラクチャー」「作業環境」として記述されており、

これらの資源を上記の a)と b)にあてることとしています。

6 . 資源の運用管理

6.1 資源の提供

組織は、次の事項に必要な資源を明確にし、提供しなければならない。

a)品質マネジメントシステムを実施し、維持する。また、その有効性を継続的に改善

する。

b)顧客満足を、顧客要求事項を満たすことによって向上する。

( JIS Q 9001: 2008 )

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<ポイント>

次項も含めて、物流サービスの品質に影響がある仕事に従事する要員がだれで、そこで必

要とされる力量が何であるかをはっきりさせる必要があります。 職務に対する責任や権限を混同する場合がありますが、責務も含めて与えられた業務を適

切に遂行するための知識、技能、能力、経験、適格性、資格などがあることを求めています。

<ポイント>

a)と b)で要求している通り、まずは物流サービスの品質に影響がある従業員にとって必要

な力量をはっきりさせて、その上で、もし必要な力量が不足していると判断した場合には、

考えている力量に到達できるように教育・訓練をします。そして、c)で教育・訓練を行った

ら、それらの結果をしっかりと評価し、実施したこととわせて e)で記録として残します。

d)については、第2章構築の「3.品質方針の決定(2)品質目標の考え方」(36 ページ)

を参考にして下さい。

なお、b)や c)に記述の“他の処置”がイメージしにくいかもしれませんが、自社で教育・

訓練ができない場合に、外部のセミナーに参加させたり、外部の講師を招いたりという活動

が該当します。また、人事異動等により、力量がある人材を必要とされる部門に配置するよ

うなことも、ここでいう処置と考えられます。

6.2 人的資源

6.2.1 一般

製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員は、適切な教育、訓練、

技能及び経験を判断の根拠として力量がなければならない。

注記 製品要求事項への適合は、品質マネジメントシステム内の作業に従事する要員によ

って、直接的に又は間接的に影響を受ける可能性がある。

6.2 人的資源 6.2.2 力量、教育・訓練及び認識

組織は、次の事項を実施しなければならない。

a)製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。

b)該当する場合には(必要な力量が不足している場合には)、その必要な力量に到達する

ことができるように教育・訓練を行うか、又は他の処置をとる。

c)教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する。

d)組織の要員が、自らの活動のもつ意味及び重要性を認識し、品質目標の達成に向けて

自らがどのように貢献できるかを認識することを確実にする。

e)教育、訓練、技術及び経験について該当する記録を維持する(4.2.4 参照)

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

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<ポイント>

インフラストラクチャーが何であるかがポイントになります。この項で紛らわしいのは、

支援体制に輸送が入っていることですが、この手引きを利用される方にとっては、これは本

業になります。

a)は、駐車場、車庫、事務所、作業場、倉庫、資材置き場やこれらに関連する電気、ガス、

水道などのユーティリティなど。

b)は、トラック、営業用車両、フォークリフト、エレベーター、ベルトコンベアやそれら

に関わるソフトウェア、など。

c)は、データ処理や情報交換のためのコンピュータなどの情報処理機器や、ネットワーク

システムなどの支援業務用のソフトウェアや緊急時の連絡機器などが考えられます。

<ポイント>

規格(JIS Q 9000:2006)では、作業環境を「作業が行われる場の条件の集まり」とし「条

件には、物理的、社会的、心理的及び環境的要因を含む」と定義して、注記に具体的な内容

を例示し引用しています。

まず、「作業」とそれに関わる「環境」と「品質」が何かを考えてみましょう。例えば作業

が積み込みなどの荷役であった場合に、それらが実施される環境について、確保したい品質

を例示にあるような騒音や気温などの切り口で考えてみます。おそらく、荷役作業場の舗装、

照明、雨対策などの要因が考えられますので、これらを明確にして適切に管理します。

このように、基本的には物流サービスを提供する際に直接品質に影響がある環境を考えま

す。しかし、製造業などとは異なり、トラック運送事業においては、作業者の安全が物流サ

ービスの品質に直結する場合がほとんどであることから、直接的な作業環境を明確にした上

で、品質の確保の観点から広い視野で考慮することでより良い取組みになるでしょう。

6.3 インフラストラクチャー

組織は、製品要求事項への適合を達成するうえで必要とされるインフラストラクチャーを明

確にし、提供し、維持しなければならない。インフラストラクチャーとしては、次のような

ものが該当する場合がある。

a)建物、作業場所及び関連するユーティリティー( 例えば、電気、ガス又は水 )

b)設備( ハードウェア及びソフトウェア )

c)支援体制( 例えば、輸送、通信又は情報システム )

6.4 作業環境

組織は、製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境を明確にし、運営管理しな

ければならない。

注記 “作業環境”という用語は、物理的、環境的及びその他の要因を含む(例えば、騒

音、気温、湿度、照明又は天候)、作業が行われる状態と関連している。

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

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7. QMS導入教育(全員)

品質マネジメントシステム(Quality Management System:QMS)の正式な運用を開始す

るために、関係する全社員に実施する教育が「QMS 導入教育」です。

教育は「ISO 教育の3つのポイント」を考慮し、全体としては以下のような内容を盛り込

むようにします。なお、ドライバーなど外部に出て業務を行う従業員が多くいますので、教

育は、推進体制のメンバー、部門の責任者や要となる人を活用し効果的に進めましょう。

① 顧客満足を重視すること

② それぞれの役割りを適切に果たすこと

③ ISO の仕組みに積極的に参画すること

④ 手順を守って仕事をすること

⑤ ISO を実践していると認識すること

⑥ 改善を継続させること

⑦ 根拠を持って行動すること

⑧ 運送業界の社会的な地位向上を目指すこと

上記の内容を導入教育する際、これまでに作成した文書類を効果的に活用します。

(1)品質方針、品質目標 品質方針や品質目標は、組織全体に周知するために、事務所や休憩室に掲示することが一

般的です。また、ドライバーや作業員にはカードに記入して配るという方法もあります。そ

して、導入教育では品質方針並びに部門や階層別に定められた品質目標について、各個人が

どのように考えて、実施していくかに重点を置きます。

(2)品質マニュアル 品質マニュアルには、品質マネジメントシステムにおけるすべての要素が含まれています

ので、教育の対象となる役割り、職務、管理レベルなどを考慮し教育資料として活用します。 なお、品質管理責任者など要となる方は、品質マニュアルが説明できることはもちろんで

すが、その基となった規格からのつながりをよく理解する必要があります。

(3)主要業務の手順書 本業を、調査し分析した結果として手順書になったものですが、初期段階の文書の場合、

実際の業務とわずかにずれたり、活動が不足していたりすることがあります。 特に、いままで文書化されたものがなかった現場では、基本的には手順書がなくても作業

ができてしまいますので、意識的に文書内容が実態にあっているかどうかの確認を現場に依

頼しなければなりません。そのためには、でき上がっている主要業務の手順書について、事

前にしっかりと説明し、どのような主旨で作成され、どのような内容が記述されているのか

をよく理解してもらう必要があります。「読んでおいて」と渡しておくだけでは、なかなか目

的を達成できません。

安全 優先

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(4)文書管理、記録管理の手順書 文書や記録の管理の基本的な考え方は、文書化教育で解説しましたが、組織としてどのよ

うな取組みをするか、自分が所属する部署や部門では何が該当するのかを、手順書を使用し

て説明して下さい。

(5)不適合サービス、是正、予防に関する手順書 品質マネジメントシステムにおける不適合サービスとは何か。 それらが発生したときにどのような処置をするのか。 そして、再度このようなことが起こらないようにするにはどうすれば良いのか。 さらには、新たな不適合サービスが発生しないようにするにはどうするか。 上記の内容を、作成された手順で指導します。 なお、不適合に対する処置を進める上で、「修正」と「是正」の差が曖昧になることがあり

ますので、「予防」とあわせて以下に簡単に補足説明します。 ・修正、手直し

あやまる、運び直す、弁償するなど不適合そのものへの対処。 ・是正

不適合サービスが発生した原因を調べて、それを取り除き再発することを防止する処置。 ・予防

これから起こるかもしれない不適合サービスについて、事前に原因を除去し発生しない

ようにする処置。

詳細は、第3章 運用の「5.不適合への対応」(92 ページ)を参考にして下さい。

(6)教育訓練の手順書 教育訓練の手順書は、教育を実施する側の責任者やリーダーがしっかりと理解しておく必

要があります。教育全般に関わることであり、記録の維持も規格の要求事項となっています

ので、内容、間隔、教育、対象、記録の残し方など、曖昧な状態で進めないように注意して

下さい。

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第3章 運用

仕組みづくりと人づくりの「構築」が完了したら、でき上がった仕組みを組織に定着させ

るための「運用」を行います。 仕組みは、作っている時点では予測できない、実際に運用してみなければわからないこと

があります。運用していく中で、効果的な導入方法を検証し、問題点や改善案が出た場合に

は、適切に対処しながら進めて下さい。

【運用の流れ図】

審 査 へ

4.内 部 監 査

5.不適合への対応

2.OJT教育(全員)

1.システム運用の開始

6.マネジメントレビュー

3.内部監査員の育成

仕組みづくり 人づくり

・・・85 ページ

・・・88 ページ

・・・89 ページ

・・・90 ページ

・・・92 ページ

・・・95 ページ

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1. システム運用の開始

トップマネジメントは、システム運用開始日を定め、この日より ISO が正式に実施される

ということを宣言します。そして、開始日以降は、構築された品質マネジメントシステムを

組織の全員が実施します。

ISO の導入により、従来業務から変更した活動、もともと従来業務にはなく追加された活

動に注意して、構築した仕組みに従った仕事を行い、必要な記録を作成して下さい。

この運用開始日以降が基本的には審査の対象となりますので、仕組みが正式に実施された

証拠としても、記録を確実に残すことが必要です。

(1)運用を始めるにあたっての確認

ここまで、時間と労力をかけて、ISO の仕組み構築し、人材を育成して、正式にシステム

をスタートすることになります。

そこで、トップマネジメントと品質管理責任者は、この規格の一番始めの要求事項である

「4.1 一般要求事項」を思い出して下さい。

4.品質マネジメントシステム

4.1 一般要求事項

組織は、この規格の要求事項に従って、品質マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、

維持しなければならない。また、その品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善しなけ

ればならない。

組織は、次の事項を実施しなければならない。

a)品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織への適用を明確にする

(1.2 参照)。

b)これらのプロセスの順序及び相互関係を明確にする。

c)これらのプロセスの運用及び管理のいずれもが効果的であることを確実にするために

必要な判断基準及び方法を明確にする。

d)これらのプロセスの運用及び監視の支援をするために必要な資源及び情報を利用でき

ることを確実にする。

e)これらのプロセスを監視し、適用可能な場合には測定し、分析する。

f)これらのプロセスについて、計画どおりの結果を得るため、かつ、継続的改善

を達成するために必要な処置をとる。

組織は、これらのプロセスを、この規格の要求事項に従って運営管理しなければならない。

要求事項に対する製品の適合性に影響を与えるプロセスをアウトソースすることを組織が決めた

場合には、組織はアウトソースしたプロセスに関して管理を確実にしなければならない。これら

のアウトソースしたプロセスに適用される管理の方式及び程度は、組織の品質マネジメントシス

テムの中で定めなければならない。

注記 1 品質マネジメントシステムに必要となるプロセスには、運営管理活動、資源の

提供、製品実現、測定、分析及び改善にかかわるプロセスが含まれる。

注記 2 “アウトソースしたプロセス”とは、組織の品質マネジメントシステムにとって

必要であり、その組織が外部に実施させることにしたプロセスである。

( JIS Q 9001: 2008 )

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この項だけで、規格の全般のことを表していますので、長く漠然とした文章となっていま

すが、構築を始める前に初めて 4.1 節を読んだときとは違って、記述されている内容がおお

よそでもイメージできるかと思います。ここまで構築してきた自社の品質マネジメントシス

テムを、規格全体を表す 4.1 節を使って再確認してみましょう。

そこで、 後の砦になりそうな用語と表現が“品質マネジメントシステムの有効性を継続

的に改善”ではないでしょうか。

規格では、“有効性”を「計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度」(JIS

Q 9000:2006)と定義しています。計画については、規格の「5.1 経営者の責任」でも、「5.4.2

品質マネジメントシステムの計画」としてこの 4.1 と関連付けて要求されています。

“完全に整っている状態”は、品質マネジメントシステムとして保ち続けなければならな

い働きが、変更によって機能しなくなったり、損なわれたりしないようにすることを求めて

います。少しわかりづらいですが、例えば、組織変更、システム変更、人事異動などのもろ

もろの変更があっても、品質マネジメントシステムが適切に働く仕組みであることと考えて

下さい。

組織は計画を立てて、実際に物流サービスを提供することにより、計画が達成するように

努めます。その結果として、計画していた内容をどの程度まで達成できたのでしょうか。こ

れが品質マネジメントシステムの有効性ということになります。

さらにこの“有効性”を“継続的に改善”することのヒントは、「8.5.1 継続的改善」にあ

ります。

5.4.2 品質マネジメントシステムの計画

トップマネジメントは、次の事項を確実にしなければならない。

a)品質目標に加えて 4.1 に規定する要求事項を満たすために、品質マネジメントシステ

ムの計画を策定する。

b)品質マネジメントシステムの変更を計画し、実施する場合には、品質マネジメン

トシステムを “ 完全に整っている状態 ” ( integrity ) に維持する。

8.5 改善

8.5.1 継続的改善

組織は、品質方針、品質目標、監査結果、データの分析、是正処置、予防処置及びマネジメ

ントレビューを通じて、品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善しなければなら

ない。

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

注記 3 アウトソースしたプロセスに対する管理を確実にしたとしても、すべての顧客要求事

項及び法令・規制要求事項への適合に対する組織の責任が免除されるものではない。

アウトソースしたプロセスに適用される管理の方式及び程度は、次のような要因によ

って影響され得る。

a) 要求事項に適合する製品を提供するために必要な組織の能力に対する、アウトソー

スしたプロセスの影響の可能性

b) そのプロセスの管理への関与の度合い

c) 7.4 の適用において必要な管理を遂行する能力

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有効性の継続的な改善は、品質方針、品質目標、監査結果、データ分析、是正処置、予防

処置、マネジメントレビューを通じてと要求されていますので、次の図のように、PDCA のサ

イクルをイメージしてみましょう。

【品質マネジメントシステムの継続的改善の概念図】

このように、品質マネジメントシステムについて、計画した結果を満たす程度を良くする

活動を、繰り返し実施していくことが“品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善”

することと考えられます。

規格では、“継続的改善”を「要求事項を満たす能力を高めるために繰り返し行われる活動」

(JIS Q 9000:2006)と定義しています。社会、環境、お客様の考え、企業の置かれている状

況、会社、人などは刻々と変化しますので、そこから発する要求事項も不変ではありません。

このような中で、継続的改善は、組織としてこれらの要求事項を満たしていく能力を高める

ことを目的としています。

監視・測定結果のデータ分析

P計画

D実施A改善

Cチェック

方針に基づく目標の作成

マネジメントレビュー

品質方針の確立

実行状況の監査

是正処置、予防処置 計画に基づく実行

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2. OJT教育(全員)

正式な運用が開始されたとはいえ、まだ仕組みはできたばかりですし、組織への浸透もこ

れからといえます。また、構築段階におけるQMS導入教育では足りなかった指導や実際に

運用が始まらなければ行えない訓練などがありますので、これらを「OJT教育」(On the Job

Training:職場内訓練)として実施し、必要とされる知識や技能を実務経験や業務を通じて

習得します。

QMS導入教育と同じですが、輸送品質の重要な担い手であるドライバーや作業員は、多

くの業務を目の届かない外部でこなしていますので、教育は計画的に効率良く進めて下さい。

また、基本的には仕組みや手順は守らなければならないのですが、運用してみないとわか

らない不備や問題点もあります。ISO に関する取決めは、作りっぱなしにするのではなく、

この時期にできるだけ問題点を収集して、積極的に改善するように心がけましょう。

(1)OJT教育の注意点

規格の「7.製品実現」に該当する物流サービスの提供については、基本は現状の実務です

から、ISO の導入にあまり違和感はないかもしれません。

しかし、8 節からの要求事項については、新規に活動が追加されている場合があります。

加えて、以下の「8.1 一般」補足6のように a)から c)が目的になっていることや、統計的な手

法を活用するか否か、適用する方法は何で、どの程度まで実施するかまで考慮する必要があ

ります。よって、特に監視、測定、分析、改善などに該当する取決めについては、少し注意

して教育と訓練を実施して下さい。

補足 6:

8.1 節は、8.測定、分析及び改善の全体の目的を示していますので、具体的な要素は

8.2 節以降に記述されています。

8. 測定、分析及び改善

8.1 一般

組織は、次の事項のために必要となる監視、測定、分析及び改善のプロセスを計画し、実施

しなければならない。

a)製品要求事項への適合を実証する。

b)品質マネジメントシステムの適合性を確実にする。

c)品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。

これには、統計的手法を含め、適用可能な方法、及びその使用の程度を決定することを含め

なければならない。

( JIS Q 9001: 2008 )

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3. 内部監査員の育成

ISO の仕組みが、成熟して役立つものになるか、形骸化して組織のお荷物になるかを左右

する大きな要因が内部監査及び監査員です。監査員は、品質マネジメントシステムという経

営の仕組みを、トップマネジメントに成り代わって検査し、調べなければなりません。した

がって、単純に仕事のあらを探しに行くとか、ミスを詮索しにいくということではなく、経

営的な視点で状況をとらえることができる人材が望まれます。内部監査員の選任や育成もこ

れらのことを考慮して進めると良いでしょう。

とはいえ、ISO を始めたばかりの監査では、足りない部分や未熟なところを補修すること

に重点を置くことになります。したがって、初期の内部監査の場合、監査そのものに教育的

な意味合いを含めて考えても問題ありません。監査員は、自らの監査に対する実践教育の場

であると同時に、場合によっては被監査者(監査を受ける人や部署)に対する ISO の実施の

指導やアドバイスも必要かもしれません。

内部監査員を育成・指導する場合には、規格の以下の部分に注目して下さい。

a)の要求事項のように、監査員は、自社の品質マネジメントシステムが物流サービスの実

現計画に合っているか、ISO9001 の規格に合っているか、そして自らの組織が決めた品質マ

ネジメントシステムの要求事項に合っているかを監査する必要があります。同時に b)の要求

事項にあるように、品質マネジメントシステムが着実に実施され結果を出しており、それが

良い状態で続いているかも監査しなければなりませんので、全体も見渡すことができるよう

に指導して下さい。

なお、監査については、JIS Q 19011:2003 を指針として活用することができますので、

ISO9001 の規格だけではなく、こちらも参考にして下さい。

(1)外部研修の利用について

ISO を進める上で難しいと感じるのは、従来の業務では行っていなかった活動を実施しなけ

ればならないことです。本業に関わる取決めは、基本的には今までやってきた実務の延長線

上にありますが、支援業務の中にはあまりなじみのない活動が含まれます。その も代表的

な業務に「内部監査」があります。

よって、組織の内部に経験者がまったくいない場合には、自力で内部監査員を育成する必

要があり、それなりの労力と時間を費やすと考えて下さい。

効率の良い育成をはかる場合は、専門機関の研修を利用します。これらの研修や講習は、

受講者の力量により認定書を発行しますので、社内の資格として用いることもできます。

8.2.2 内部監査

組織は、品質マネジメントシステムの次の事項が満たされているか否かを明確にするために、

あらかじめ定められた間隔で内部監査を実施しなければならない。

a)品質マネジメントシステムが、

個別製品の実現の計画( 7.1 参照 )に適合しているか、

この規格の要求事項に適合しているか、及び

組織が決めた品質マネジメントシステム要求事項に適合しているか。

b)品質マネジメントシステムが効果的に実施され、維持されているか。

( JIS Q 9001: 2008 )

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4. 内部監査

内部監査は、品質管理責任者の管理のもとに、以下の規格の要求事項を満たして計画的に

実施します。

初の内部監査は、運用がある程度進んで記録が出てきた頃合いに行います。これらの記

録類を調べ、ISO の仕組みを実践することになった従業員やドライバーへのインタビューを

することにより、決められたことを守って、仕組みがしっかりと運用されているかを監査で

確認します。

また、監査の中で問題点が発見されれば、そのプロセスの責任者に監査結果として是正す

ることを要求します。この問題点を、要求事項を満たしていないという意味で「不適合」と

いいます。

指摘を受けた責任者は、発見された不適合に対して、責任を持って対処しなければなりま

せん。

この“監査された領域に責任を持つ管理者”のとった処置が、ねらい通りの結果になった

のかどうかを、再び内部監査によって確認することができます。(一般的にはフォローアップ

監査といいます。)それが監査という手法をとらなかったとしても、上記のように規格では検

証し結果を報告するように求めていますので、実務では自社の取決め(内部監査の手順書)

に従ってこれを満たして下さい。

内部監査の実施は、規格の要求事項ですが、実施そのものが目的ではありません。仕組み

が規格と照らし合わせて適切か、手順が守られているか、仕組みが効果的に実施されている

かを監査するなど目的を定めて、監査を計画し実施しましょう。

次に、内部監査の流れを簡単に紹介します。

8.2.2 内部監査( 続 き )

組織は、監査の対象となるプロセス及び領域の状態及び重要性、並びにこれまでの監査結果

を考慮して、監査プログラムを策定しなければならない。監査の基準、範囲、頻度及び方法

を規定しなければならない。監査員の選定及び監査の実施においては、監査プロセスの客観

性及び公平性を確保しなければならない。監査員は、自らの仕事は監査してはならない。

監査の計画及び実施、記録の作成及び結果の報告に関する責任、並びに要求事項を規定する

ために、“文書化された手順”を確立しなければならない。 監査及びその結果の記録は、維持しなければならない(4.2.4 参照)

8.2.2 内部監査( 続 き )

監査された領域に責任を持つ管理者は、検出された不適合及びその原因を除去するために遅

滞なく、必要な修正及び是正処置すべてがとられることを確実にしなければならない。フォ

ローアップには、とられた処置の検証及び検証結果の報告を含めなければならない(8.5.2 参

照)。

( JIS Q 9001: 2008 )

( JIS Q 9001: 2008 )

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【内部監査の流れ】

品質管理責任者は、監査全体を管理するための PDCA のサイクルを回します。そして、あら

かじめ計画した、定められた間隔で監査を実施します。

① 何を目的とした監査であるかはっきりさせ、そのための監査チームを編成します。

② 監査チームは、リーダーを中心にして監査の準備をします。

③ 手順に従って監査を実施します。

④ 監査結果を取まとめて報告します。

⑤ 不適合や改善の提案に対して処置をします。

⑥ 監査全体を取まとめて、マネジメントレビューで審議します。

内部監査は、その詳細において難しいと考えられることもありますが、上記のように全体

の管理があること、そして監査そのものについての準備し、実施し、報告することが基本で

す。この中で品質管理責任者と監査チームがどのような役割りを分担して進めていくのかに

ポイントを置いて実施して下さい。

(*)「6. マネジメントレビュー」(95 ページ)を参照

品質管理責任者 監査チーム 被監査者

<監査全体のPDCA>

①監査目的の明確化と監査チームの編成

②監査の準備

③監査の実施

④監査の報告

全体計画の策定

計画の実施

監視と見直し

監査の改善

⑥監査のまとめ

⑤監査結果への対応

マネジメントレビュー (*)

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5. 不適合への対応

仕組みの完成度を高めるために、顕在化した問題点を修正、手直し、是正し、問題が発生

しないように予防する「不適合への対応」を行います。

この時点で考えられる不適合には、大きく分けて2つあります。

一つは、前記の内部監査や OJT 教育の際に発見された、仕組みや実行状況に関する不適合

です。これらについては、必要な手順に従って、適切に対処して下さい。

もう一つは、本業や日常の実務において不適合サービスが発生した場合に、ISO の仕組み

として決めた対応を行うことです。正式な運用が始まってから、例えば延着や誤配などの不

適合サービス又は不適合な事態が発生した場合、定められた手順に従って処理を行い、必要

な記録を作成します。

これは PDCA の「A 改善」が実施できること、さらには PDCA のサイクルを回すことができ

ることの証明でもあります。自社業務における不適合とは何かをよく理解し、積極的に再発

防止(是正処置)や未然防止(予防処置)に取組んで下さい。

(1)該当する規格のポイント

不適合の対応に関連する規格の要求事項を簡単に解説しますので、参考にして下さい。

<ポイント>

運送業にとってこの要求事項がやっかいなのは、“不適合製品”という言葉に「不適合なサ

ービス」と「不適合な状態になってしまった貨物」の両方で考えなければならないことです。

このポイントさえおさえれば、特に難しい内容ではありませんが、“特別採用”は、なじみに

8.3 不適合製品の管理

組織は、製品要求事項に適合しない製品が誤って使用されたり、又は引き渡されることを防

ぐために、それらを識別し、管理することを確実にしなければならない。不適合製品の処理

に関する管理及びそれに関連する責任及び権限を規定するために、“文書化された手順”を

確立しなければならない。

該当する場合には、組織は、次の一つ又はそれ以上の方法で、不適合製品を処理しなければ

ならない。

a)検出された不適合を除去するための処置をとる。

b)当該の権限を持つ者、及び該当する場合に顧客が、特別採用によって、その使用、

リリース、又は合格と判定することを正式に許可する。

c)本来の意図された使用又は適用ができないような処置をとる。

d)引渡し後又は使用開始後に不適合製品が検出された場合には、その不適合による

影響又は起こり得る影響に対して適切な処置をとる。

注記 “c)本来の意図された使用又は適用ができないような処置をとる”とは“廃棄

すること”を含む。

不適合製品に修正を施した場合には、要求事項への適合を実証するための再検証を行わなけ

ればならない。

不適合の性質の記録、及び不適合に対してとられた特別採用を含む処置の記録を維持しなけ

ればならない(4.2.4 参照)。

( JIS Q 9001: 2008 )

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くい表現かもしれません。

“特別採用”は、サービスや貨物の状態が、必要とされる要求事項に適合していなくても、

使用したり次のプロセスへ引き渡したりすることを特別に認めることをいいます。例えば、

梱包の外側を傷つけてしまったが、中の製品については問題がなかったので、お客様の了解

の上で、とりあえず引き渡しをしたというような場合が考えられます。当然、いつの間にか

ではなく、関係者間の了解に基づいた意識的な実施でなければなりません。

<ポイント>

規格では、“是正処置”を「検出された不適合又はその他の検出された望ましくない状況の

原因を除去するための処置」(JIS Q 9000:2006)と定義しています。ここで記述されている

「原因の除去」は、ISO が役に立つ仕組みとなるかどうかに、大きな影響を与える要因と考

えられます。

ただし、この課題は、ISO を続けていく上での長いテーマになりますので、構築の段階で

は、まずできる内容、実行可能な方法から進めていきましょう。

<根本原因の追究ついて>

「原因の除去」をするためには、不適合の原因をつきとめること、つまり「根本原因の

追究」をしなければなりません。原因の追究には、品質管理の手法に代表される多くの方

法がありますので、必要に応じてこれらを活用します。

簡単で効果的な方法に、「なぜ」を繰り返すやり方があります。例えば、貨物を損傷させ

てしまったような場合、まず、「なぜ、貨物を損傷させたのか」を考えます。その原因が「貨

物をていねいに扱わなかったから」と分析された場合、ここで「なぜ」をやめてしまうと、

対策は「貨物をていねいに扱うこと」という漠然としたものになります。そこで、「なぜ、

貨物をていねいに扱えなかった」と「なぜ」を繰り返すことによって、例えば固定器具、

梱包資材、作業方法など具体的な原因が出てきます。原因を除去するための処置が、曖昧

な目標ではなく、具体性のある実施となるまで、「なぜ」を繰り返すことがポイントになり

ます。

8.5 改善

8.5.2 是正処置

組織は、再発防止のため、不適合の原因を除去する処置をとらなければならない。是正処置

は、検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければならない。

次の事項に関する要求事項を規定するために、“文書化された手順”を確立しなければなら

ない。

a)不適合( 顧客からの苦情を含む。)の内容確認

b)不適合の原因の特定

c)不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価

d)必要な処置の決定及び実施

e)とった処置の結果の記録( 4.2.4 参照 )

f)とった是正処置の有効性のレビュー

注記 f)における“とった是正処置”とは a)~e)のことである。

( JIS Q 9001: 2008 )

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<ポイント>

規格では、“予防処置”を「起こり得る不適合又はその他の望ましくない起こり得る状況の

原因を除去するための処置」(JIS Q 9000:2006)と定義していますので、基本的な考え方は、

是正処置と同じです。

その差は、「起こり得る」ですが、何を基軸にするかによって決まります。例えば、ある事

業所で発生した好ましくないこと、起きて欲しくないことを、他の事業所でも起きないよう

にすることは「予防」のための処置と考えることができます。また、新聞、ニュース、業界

情報などにより入手した情報により、他社で発生した不適合が、自社では起きないようにす

る活動も予防処置です。

発生してしまった不適合の再発を防止する“是正処置”と比較すると、“予防処置”は少し

進んだ仕組みですが、『予防』という考え方は、トラック運送業において極めて重要な要因と

考えられます。「ヒヤリ・ハット」など未然に事故を防ぐための対策とあわせて、積極的に取

組むと良いでしょう。

8.5.3 予防処置

組織は、起こり得る不適合が発生することを防止するために、その原因を除去する処置を

決めなければならない。予防処置は、起こり得る問題の影響に応じたものでなければならな

い。

次の事項に関する要求事項を規定するために、“文書化された手順”を確立しなければならな

い。

a)起こり得る不適合及びその原因の特定

b)不適合の発生を予防するための処置の必要性の評価

c)必要な処置の決定及び実施

d)とった処置の結果の記録(4.2.4 参照)

e)とった予防処置の有効性のレビュー

注記 e) における“とった予防処置”とは a)~d)のことである。

( JIS Q 9001: 2008 )

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6. マネジメントレビュー

「マネジメントレビュー」と聞き慣れない言葉ですが、経営会議、運営会議、予算会議、

幹部会議などを想像して下さい。これらの会議が、品質に関わることで開催される場合を品

質マネジメントシステムのマネジメントレビューと呼びます。品質に関しての集まりという

ことでいえば、職場会議や朝礼であったとしても、マネジメントレビューの一部と考えるこ

ともできます。

そして、ISO で営まれる活動のすべては、このマネジメントレビューというトップマネジ

メントによる見直しに集約され、ISO の大きな PDCA のサイクルがこれで一巡します。

上記のように、規格では以降で示される具体的な内容に入る前に、“一般”として概略と目

的が記述されています。“一般”の中で個別に詳細な説明をする必要はありませんが、表現が

漠然としている分、わかりにくい用語がありますので以下で簡単な説明をします。

「引き続き、適切で、妥当かつ有効であること」

・ 品質マネジメントシステムと業種、サービス、社会環境や利害関係者との『関係に

おいて適切か』

・ 品質マネジメントシステムの方針、目標及びそれらを達成するための計画やプロセ

スの『決め方が妥当か』

・ 品質マネジメントシステムの方針、目標及びそれらを達成するための計画やプロセ

ス、並びに法規制、顧客の要求事項及び満足度の『達成状況において有効か』

「あらかじめ定められた間隔」

・ 次回の開催日が決定していること

・ 特別な記述はないが、適切な間隔であること(例えば4ヶ月や6ヶ月という間隔)

・ 上記が満たされていれば、定期的でなくても良い

「改善の機会の評価」「変更の必要性の評価」

・ 現状のシステムが形骸化せず、役に立っているかの判断を目的とした以下の評価

- 改善を加えるのにちょうど良い時期かどうかの評価

- 変更をしなければならないかの評価

5.6 マネジメントレビュー

5.6.1 一般

トップマネジメントは、組織の品質マネジメントシステムが、引き続き、適切、妥当かつ有

効であることを確実にするために、あらかじめ定められた間隔で品質マネジメントシステム

をレビューしなければならない。このレビューでは、品質マネジメントシステムの改善の機

会の評価、並びに品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の

評価も行わなければならない。

マネジメントレビューの結果の記録は、維持しなければならない(4.2.4 参照)。

( JIS Q 9001: 2008 )

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実際のマネジメントレビューは、通常会議体として実施され、規格では具体的に以下のイ

ンプット(審議項目)とアウトプット(決定事項)を要求しています。

規格で要求されているインプット(審議項目)は、上記ですが、その他にも品質マネジメ

ントシステムを進めていく上で検討しなければならない課題があれば、積極的に加えて下さ

い。 適切な決定事項を導くためのポイントは、審議項目について事前に充分な準備をすること

にあります。規格の要求事項は多岐にわたっていますので、だれがその項目の責任者である

か、またはだれが情報をもたらす対象者であるかを明確にして、マネジメントレビューの期

日までに準備をします。

【マネジメントレビュー役割り分担表の例】 審 議 項 目 担 当 者

a)外部、内部監査の結果 品質管理責任者、ISO 事務局

b)顧客からのフィードバック 品質管理責任者、ISO 事務局、営業所長

c)プロセスの実施状況及びサービスの適合性 各部長、営業所長

d)是正処置・予防処置の状況 品質管理責任者、ISO 事務局、対象者

e)前回までのマネジメントレビューの結果

に対するフォローアップ

品質管理責任者、ISO 事務局、対象者

f)品質マネジメントシステムに影響を及ぼす

可能性のある変更

品質管理責任者

g)改善のための提案 全員

5.6.2 マネジメントレビューへのインプット

マネジメントレビューへのインプットには、次の情報を含めなければならない。

a)監査の結果

b)顧客からのフィードバック

c)プロセスの成果を含む実施状況及び製品の適合性

d)予防処置及び是正処置の状況

e)前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ

f)品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更

g)改善のための提案

5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット

マネジメントレビューからのアウトプットには、次の事項に関する決定及び処置すべてを含

めなければならない。

a)品質マネジメントシステム及びそのプロセスの有効性の改善

b)顧客要求事項にかかわる、製品の改善

c)資源の必要性

( JIS Q 9001: 2008 )

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アウトプット(決定事項)については、曖昧な決断とならないように、何のために、何を、

だれが、いつまでに実施し、そのためにどのような資源が必要となるかを明確にすることが

肝要です。

そして、これらの審議事項や決定内容などのマネジメントレビューの結果は、議事録とし

て確実に記録に残し、維持します。

なお、例えば事故やクレームなどの情報で、数字の羅列のままではわかりにくいようなも

のについては、容易に判断が可能となるような加工や分析をしておく必要がある場合もあり

ます。マネジメントレビューのみが対象ではありませんが、これらの活動をまとめて、規格

でも「8.4 データの分析」として記述されています。

ここでの主な活動は、以下の4つです。

① 適切なデータが何であるかを明確にすること

② 明確になったデータを集めること

③ 集められたデータを適切な方法によって分析すること

④ この分析によって a)から d)に関連する情報を提供すること

規格では、分析結果として提供する情報として、マネジメントレビューのインプットとな

りうる a)から d)の項目があげられている以外は、方法や程度は定められていませんので、だ

れが責任をもって実行するのかもあわせて、自社で取組み方を決定する必要があります。

8.4 データの分析

組織は、品質マネジメントシステムの適切性及び有効性を実証するため、また、品質マネジ

メントシステムの有効性の継続的な改善の可能性を評価するために適切なデータを明確に

し、それらのデータを収集し、分析しなければならない。この中には、監視及び測定の結果

から得られたデータ並びにそれ以外の該当する情報源からのデータを含めなければならな

い。

データの分析によって、次の事項に関連する情報を提供しなければならない。

a)顧客満足(8.2.1 参照)

b)製品要求事項への適合(8.2.4 参照)

c)予防処置の機会を得ることを含む、プロセス及び製品の、特性及び傾向

(8.2.3 及び 8.2.4 参照)

d)供給者(7.4 参照)

( JIS Q 9001: 2008 )

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第4章 審査

認証取得をするためには、ISO の規格から判断して、構築してきた仕組みが適切で、この

仕組みが組織に確実に定着しているかを、第三者の機関により審査される必要があります。

本手引きの目的である ISO9001 品質マネジメントシステムの認証取得は、この審査登録機関

の審査により認証されます。

【運用の流れ図】

仕組みづくり 人づくり

2.審査

(第1段階審査・第2段階審査)

認 証 取 得

1.審査機関の選択 ・・・99 ページ

・・・99 ページ

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1. 審査機関の選択

(1)審査機関の専門分野

審査を受ける側の事業者の業務について、審査をする側にも一定の専門知識がないと、適

切な審査を実施することはできません。そのため JAB(財団法人日本適合性認定協会)では

産業分類に基づき、認定範囲分類を定め、審査機関に対し認定した範囲のみの審査を可能と

しています。

品質マネジメントシステム審査機関は、現在 51 機関認定されていますが、トラック運送事

業が含まれる【31:輸送・倉庫・通信】分野の認定を受けている審査機関は 37 機関となりま

す。(2009 年 8 月時点。審査機関名は 111 ページ参照)

(2)審査機関の決定 上記のように、まず目的とする事業の審査が可能な審査機関を選択する必要があり、倉庫

業など他の事業を範囲に含める場合には各審査機関に事前に問い合わせて下さい。そして、

審査可能な審査機関の中から、契約を交わす機関を選択していくことになりますが、トラッ

ク運送事業の審査実績や審査料金などを考慮して、自社にとって も適切と考えられる機関

を決定して下さい。日常の仕事とあまりかかわりのない選択をしなければなりませんので、

JAB 及び各審査機関ホームページなどの審査機関に関する情報や、すでに認証を取得してい

る事業者の評判などを参考にすると良いでしょう。

なお、認証範囲など事前に審査機関と打合せをしなければならない状況もある上、審査日

程等が機関により多少異なる場合がありますので、できれば比較的早い段階で審査機関を決

めておく方が望ましいと考えられます。

2. 審査

一般的な審査申請から認証登録までのステップを、次に示します。 なお、通常、第2段階審査までに次の事項が確認されることが必要となりますので、詳細

は契約した審査機関と打ち合わせて下さい。

① 第1段階審査の是正処置が完了し、審査登録範囲がマニュアルに明確に規定さ

れ、充分理解されている。

② 訪問通知、審査プログラムが合意されている。

③ 以下が確実に実施されている。

a) 本マネジメントシステムの運用(3ヶ月以上の運用実績が必要)

b) 内部監査の実施及び効果の検証

c) マネジメントレビューの実施

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【認証登録までのステップ】

審査申請

第1段階審査

認証登録手続きを進める最初のステップとして、各審査機関が指定する書式で申請書を提出します。

第2段階審査

適合

登録の判定

登録及び証明証の発行

再審査

審査報告書は、登録判定委員会で審議され、適合と判断された場合は、品質マネジメントシステムの適合性と登録が認証されます。

登録が認証されると有効期限3年の適合証明証が発行され、審査機関及びJABのホームページで公開されます。

審査結果が適切であれば、審査チームリーダーは審査報告書を登録判定委員会に提出します。適切でないと判断された場合は、是正に要する期間を設定し再審査を実施します。

品質マネジメントシステムが規格要求に適合し、かつ効果的に運用されているかを検証する審査です。

システム文書のチェックを通じ、マネジメントシステムの構成がISOの規格要求に適合しているかを検証する審査です。併せて第2段階審査への移行の可否など、準備の程度が審査されます。

NO

YES

注意:審査登録に関する流れは、審査機関や審査時期によって異なりますので、     受審する際には、必ず確認して下さい。

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1.規格関連解説

(1) JISQ9001要求事項の概要 JISQ 9001 条項 要求事項の意図、目的の要点 参照ページ

4 品質マネジメントシステム

4.1 一般要求事項 品質マネジメントシステムを確立し、文書化・実施・維持

し、有効性を継続的に改善するために、組織全体のプロ

セスを明確にする(主要+支援)。アウトソースも明確に

する

P85

4.2 文書化に関する要求事項

4.2.1

一般

品質方針、品質目標、品質マニュアル、規格が要求する 6

つの手順書、組織が必要とする文書化の決め方、及び品

質記録の管理

P46

P48

4.2.2 品質マニュアル 品質マニュアルの内容の明示 P41

4.2.3 文書管理 システム文書の最新版管理を含む a) ~ g) の項目を明

示〔文書化された管理手順〕

P44

4.2.4 記録の管理 品質記録の識別、保管、廃棄などの管理手順を明示〔文

書化された管理手順〕

P45

5 経営者の責任

5.1 経営者のコミットメント 品質マネジメントシステム構築、運用、有効性改善につい

て経営者の責務と決意表明の証拠

P11

5.2 顧客重視 経営者の顧客満足向上への決意 P12

5.3 品質方針 品質方針の細目 P36

5.4 計画

5.4.1 品質目標 達成度が判定可能な品質目標の設定 P37

5.4.2

品質マネジメント

システムの計画

品質目標と 4.1 の要求事項を満たす QMS の計画と完整性

の維持

P86

5.5 責任、権限及びコミュニケーション

5.5.1 責任及び権限 組織体制、及び責任・権限の明確化と周知徹底 P30

5.5.2 管理責任者 品質管理責任者の任命、付与すべき責任・権限 P13

5.5.3

内部コミュニケー

ション

QMS の有効性維持のため組織の内部コミュニケーション

の仕組みの明確化、情報交換の確実な実施

P32

5.6 マネジメントレビュー

5.6.1

一般

品質マネジメントシステムの有効性を計画的に見直し、

必要な改善の実行

P95

5.6.2 マネジメントレビューへの

インプット

a) ~ g) のインプット項目(審議事項)の明確化とイン

プットの実行

P96

5.6.3

マネジメントレビューから

のアウトプット

a) ~ c) のアウトプット項目(決定事項)の明確化 P96

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- 102 -

6 資源の運用管理

6.1 資源の提供 QMS の有効性改善、顧客満足向上に必要な資源の確保 P79

6.2 人的資源 P80

6.2.1 一般 要員に対する十分な力量の要求 P80

6.2.2 力量、教育・訓練

及び認識

力量の明確化と必要な教育・訓練の計画と実施

教育・訓練の有効性の評価

P80

6.3 インフラストラクチャー 建物、作業場所、設備、支援業務の確保と維持 P81

6.4 作業環境 必要な作業環境の明確化と運営管理 P81

7 製品実現

7.1 製品実現の計画 製品実現プロセスの計画要件の明確化とプロセスの構築 P55,57

7.2 顧客関連のプロセス

7.2.1 製品に関連する要

求事項の明確化

製品に関する4つの要求事項の明確化。 P58

7.2.2 製品に関連する要

求事項のレビュ-

受注前の顧客からの製品要求事項の見直し、受注能力の

確認、変更管理

P58

7.2.3 顧客とのコミュニ

ケーション

顧客との連絡方法の明確化とその実施 P59

7.3 設計・開発

7.3.1 設計・開発の計画 開始時の手順計画、責任者の明確化、レビュー、検証、妥

当性確認の実施有無の決定

P60

7.3.2 設計・開発へのイ

ンプット

4 つのインプットに対する要求事項 P60

7.3.3 設計・開発からの

アウトプット

4 つのアウトプットに対する要求事項 P61

7.3.4 設計・開発のレビ

ュー

デザイン・レビューの実施 P61

7.3.5 設計・開発の検証 設計・開発検証の実施 P62

7.3.6 設計・開発の妥当

性確認

設計・開発の妥当性確認の実施 P62

7.3.7 設計・開発の変更

管理

設計・開発の変更管理の実施 P63

7.4 購買

7.4.1 購買プロセス 供給者の評価・選定と管理の方式と程度の明確化 P64

7.4.2 購買情報 注文書に入れる情報の明確化 P64

7.4.3 購買製品の検証 受入検査の活動の明確化、供給者先での検証における出

荷許可方法の明確化

P65

7.5 製造及びサービス提供

7.5.1 製造及びサービス

提供の管理

製造及びサービス提供を管理された状態で実施すること

と、そのための6つの管理された条件

P66

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- 103 -

7.5.2 製造及びサービス

提供に関するプロ

セスの妥当性確認

後工程又は使用後でしか不具合が現れないプロセスにつ

いての検証手順の明確化

P66

7.5.3 識別及びトレーサ

ビリティ

全工程内での製品の識別、(要求ある時の)トレーサビリ

テイの管理。検査・試験を実施したかの識別、検査試験は

合格か、不合格かの識別

P67

7.5.4 顧客の所有物 顧客の所有物の管理 P68

7.5.5 製品の保存 製造~納入までの製品の保存。 識別、取扱い、包装、保

管、保護の実施

P69

7.6 監視機器及び測定機器の管

製品の適合性確認のための監視及び測定の明確化と実

施。監視機器及び測定機器の明確化と校正管理の実施

P70

P71

8 測定、分析及び改善

8.1

一般 製品の適合性の実証、品質マネジメントシステムの適合

性と有効性を改善するための測定、分析を計画的に行

う。 統計的手法などの採用の程度を決める

P88

8.2 監視及び測定

8.2.1 顧客満足 顧客要求事項がどの程度満たされているかについて顧

客の受け止め方程度の監視、測定

P72

8.2.2 内部監査 品質マネジメントシステムが要求事項に適合し、効果的

に実施されているかを確認する。計画、実施、報告、記

録並びに監査要求事項の〔文書化された管理手順〕

P89

P90

8.2.3 プロセスの監視及

び測定

品質マネジメントシステムのプロセス自体が計画どお

りの結果を達成しているかの監視、測定

P74

8.2.4 製品の監視及び測

製品要求事項が満たされているかを検証するための監

視、測定。受入検査/工程内検査/最終検査/検査記録

の維持

P75

8.3 不適合製品の管理 不適合製品の誤用を防ぐための識別、隔離、管理。不適

合製品の処置に関する〔文書化された管理手順〕

P92

8.4 データの分析 品質マネジメントシステムの適切性・有効性を実証す

る、または、改善のためのデータの収集・分析(顧客満

足、製品、プロセス、供給者)

P97

8.5 改善

8.5.1 継続的改善 品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善 P86

8.5.2 是正処置 不適合の再発防止のため、原因除去と対策の立案・実施

の〔文書化された管理手順〕

P93

8.5.3 予防処置 起こりうる不適合の未然防止のため、原因除去と対策の

立案・実施の〔文書化された管理手順〕

P94

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- 104 -

(2)品質マネジメントの八原則

顧 客 満 足 【原則】組織は、その顧客に依存しており、その

ために、現在及び将来の顧客ニーズを理解し、顧

客要求事項を満たし、顧客の期待を超えるように

努力をすべきである。

【効果】お客様を第一に意識して仕事をすること

で、お客様から信頼され、繰り返し注文が入るで

しょう。

リーダーシップ 【原則】リーダーは、組織の目的及び方向を一致

させる。リーダーは、人々が組織の目標を達成す

ることに十分に参画できる内部環境を創りだし、

維持すべきである。

【効果】仕事の目的、方向が明確になることに より、全社で一丸となって取組むことができるよ

うになるでしょう。

人 々 の 参 画 【原則】すべての階層の人々は、組織にとって根

本的要素であり、その全面的な参画によって、組

織の便益のためにその能力を活用することが可

能となる。

【効果】従業員はやる気を持つと共に自分の仕 事に責任を持つようになるでしょう。

プロセスアプローチ 【原則】活動及び関連する資源が一つのプロセス

として運営管理されるとき、望まれる結果がより

効率よく達成される。

【効果】資源(人、物)の効果的な活用によっ て、コストを削減することが可能となります。

マネジメントへのシステムアプローチ 【原則】相互の関連するプロセスを一つのシス

テムとして明確にし、理解し、運営管理すること

が組織の目標を効果的で効率よく達成すること

に寄与する。

【効果】プロセスを調整・管理することにより、

期待する結果を達成することができます。また、

仕事の中で特に重要なプロセスと思われるとこ

ろに集中することができます。

継 続 的 改 善 【原則】組織の総合的パフォーマンスの継続的改

善を組織の永遠の目標とすべきである。 【効果】組織のパフォーマンス(目的・目標の達

成度や実績)達成の向上を通して競争力が向上し

ます。 意思決定への事実に基づくアプローチ

【原則】効果的な意思決定は、データ及び情報の

分析に基づいている。

【効果】データや情報を分析することにより、 事実が正確かつ信頼性のあることが確認できま

す。それにより効果的な意思決定がなされるこ とになります。

供給者との互恵関係 【原則】組織及びその供給者は相互に依存してお

り、両者の互恵関係は両者の価値創造能力を高め

る。

【効果】両者が互恵関係を保持することにより、

専門知識や資源を共有することができるように

なり、便益を分かち合うことができます。

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(3)用語解説 以下の用語集は、JISQ9000:2006より編集しました。

3.1 品質に関する用語

3.1.1 品質(quality)

本来備わっている特性(3.5.1)の集まりが、要求事項を満たす程度。

注釈1 用語“品質”は、悪い、良い、優れたなどの形容詞とともに使われることがある。

注釈2 “本来備わっている”とは、“付与された”とは異なり、そのものが存在してい

る限り、もっている特性を意味する。

3.1.2 要求事項(requirement)

明示されている、通常暗黙のうちに了解されている若しくは義務として要求されているニ

ーズ又は期待。

注釈 “通常暗黙のうちに了解されている”とは、対象となる期待が暗黙のうちに了解

されていることが、組織(3.3.1)、その顧客(3.3.5)及びその他の利害関係者

(3.3.7)にとって慣習又は慣行であることを意味する。

3.1.4 顧客満足(customer satisfaction)

顧客の要求事項(3.1.2)が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方

注釈1 顧客の苦情は、顧客満足が低いことの一般的な指標であるが、顧客の苦情がない

ことが必ずしも顧客満足度が高いことを意味するわけではない。

注釈2 顧客要求事項が顧客と合意され、満たされている場合でも、それが必ずしも顧客

満足が高いことを保証するものではない。

3.1.6 力量(competence)

知識及び技能を適用するための実証された能力。

3.2 マネジメントに関する用語

3.2.2 マネジメントシステム(management system)

方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム。

3.2.3 品質マネジメントシステム(quality management system)

品質(3.1.1)に関して組織(3.3.1)を指揮し、管理するためのマネジメントシステム

(3.2.2)。

3.2.4 品質方針(quality policy)

トップマネジメント(3.3.7)によって正式に表明された品質に関する組織の全体的な意

図及び方向付け。

3.2.5 品質目標(quality objective)

品質に関して、追求し、目指すもの。

注釈1 通常、組織の品質方針(3.2.4)に基づいている。

注釈2 通常、組織(3.3.1)内の関係する部門及び階層で規定される。

3.2.6 マネジメント(management)

組織(3.3.1)を指揮し、管理するための調整された活動。

3.2.7 トップマネジメント(top management)

高位で組織(3.3.1)を指揮し、管理する個人又はグループ。

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3.2.8 品質マネジメント(quality management)

品質に関して組織(3.3.1)を指揮し、管理するための調整された活動。

3.2.9 品質計画(quality planning)

品質目標を設定すること、並びにその品質目標を達成すために必要な運用プロセス及び関

連する資源を規定することに焦点を合わせた品質マネジメント(3.2.8)の一部。

3.2.10 品質管理(quality control)

品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメント(3.2.8)の一部。

3.2.11 品質保証(quality assurance)

品質要求事項が満たされているという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメ

ントの一部。

3.2.13 継続的改善(continual improvement)

要求事項(3.1.2)を満たす能力を高めるために繰り返し行われる活動。

3.2.14 有効性(effectiveness)

計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度。

3.2.15 効率(efficiency)

達成された結果と使用された資源との関係。

3.3 組織に関する用語

3.3.1 組織(organization)

責任、権限及び相互関係が取決められている人々及び施設の集まり。

例 会社、法人、事業所、企業、団体、慈善団体、個人業者(sole trader)、協会、若

しくはこれらの一部又は組合せ

3.3.5 顧客(customer)

製品(3.4.2)を受け取る組織(3.3.1)又は人。

例 消費者、依頼人、エンドユーザー、小売業者、受益者及び購入者

注釈 顧客は、組織の内部又は外部のいずれでもあり得る。

3.3.6 供給者(supplier)

製品(3.4.2)を提供する組織(3.3.1)又は人。

例 製品の生産者、卸売業者、小売り業者、納入者、サービス提供者又は情報提供者

注釈 供給者は、組織の内部又は外部のいずれでもあり得る。

3.3.7 利害関係者(interested party)

組織(3.3.1)のパフォーマンス及び成功に利害関係をもつ人又はグループ。

例 顧客(3.3.5)、所有者、組織内の人々、供給者(3.3.6)、銀行家、組合、パートナ又

は社会

3.4 プロセス及び製品に関する用語

3.4.1 プロセス(process)

インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動。

注釈 プロセスのインプットは、通常、他のプロセスからのアウトプットである。

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3.4.2 製品(product)

プロセス(3.4.1)の結果。

注釈 次に示す四つの一般的な製品分野がある。

-サービス(例 輸送)

-ソフトウエア(例 コンピュータープログラム、辞書)

-ハードウエア(例 エンジン機械部品)

-素材製品(例 潤滑剤)

3.4.4 設計・開発(design and development)

要求事項(3.1.2)を、製品(3.4.2)、プロセス(3.4.1)又はシステムの、規定された特

性又は仕様書に変換する一連のプロセス(3.4.1)。

3.4.5 手順(procedure)

活動又はプロセスを実行するために規定された方法。

注釈1 手順は文書にすることもあり、しないこともある。

注釈2 手順が文書にされた場合は、“書かれた手順”又は“文書化された手順“という

用語がよく用いられる。手順を含んだ文書(3.7.2)を“手順書”と呼ぶことが

ある。

3.5 特性に関する用語

3.5.1 特性(characteristic)

そのものを識別するための性質。

3.5.4 トレーサビリティ(traceability)

考慮の対象となっているものの履歴、適用又は所在を追跡できること。

注釈 製品(3.4.2)に関しては、トレーサビリティは次のようなものに関連することが

ある。

-材料及び部品の源

-処理の履歴

-出荷後の製品の配送及び所在

3.6 適合性に関する用語

3.6.1 適合(conformity)

要求事項(3.1.2)を満たしていること。

3.6.2 不適合(nonconformity)

要求事項を満たしていないこと。

3.6.4 予防処置(preventative action)

起こり得る不適合(3.6.2)又はその他の望ましくない起こり得る状況の原因を除去する

ための処置。

3.6.5 是正処置(corrective action)

検出された不適合(3.6.2)又はその他の検出された望ましくない状況の原因を除去する

のための処置。

3.6.6 修正(correction)

検出された不適合(3.6.2)を除去するための処置。

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3.6.7 手直し(rework)

要求事項(3.1.2)に適合させるための、不適合製品にとる処置。

3.7 文書に関する用語

3.7.2 文書(document)

情報及びそれを保持する媒体

例:記録(3.7.6)、仕様書(3.7.3)、手順書、図面、報告書、規格

3.7.4 品質マニュアル(quality manual)

組織(3.3.1)の品質マネジメントシステム(3.2.3)を規定する文書(3.7.2)。

注釈 個々の組織の規模及び複雑さに応じて、品質マニュアルの詳細及び書式は変わり得

る。

3.7.5 品質計画書(quality plan)

個別のプロジェクト、製品(3.4.2)、プロセス(3.4.1)又は契約に対して、どの手順(3.4.5)

及びどの関連する資源が、誰によって、いつ適用されるかを規定する文書(3.7.2)。

注釈1 通常、これらの手順には、品質マネジメントのプロセス及び製品実現のプロセス

に関連するものが含まれる。

注釈2 品質計画書は、品質マニュアル(3.7.4)又は手順書を引用することが多い。

注釈3 品質計画書は、通常、品質計画(3.2.9)の結果の一つである。

3.7.6 記録(record)

達成した結果を記述した、又は実施した活動の証拠を提供する文書(3.7.2)。

3.8 評価に関する用語

3.8.1 客観的証拠(objective evidence)

あるものの存在又は真実を裏付けるデータ

注釈 客観的証拠は、観察、測定、試験(3.8.3)、又はその他の手段によって得られるこ

とがある。

3.8.4 検証(verification)

客観的証拠(3.8.1)を提示することによって、規定要求事項が満たされていることを確

認すること。

3.8.5 妥当性確認(validation)

客観的証拠(3.8.1)を提示することによって、特定の意図された用途又は適用に関する

要求事項(3.1.2)が満たされていることを確認すること。

3.8.7 レビュー(review)

設定された目標を達成するための検討対象の適切性、妥当性、及び有効性(3.2.14)を判定

するために行われる活動。

3.9 監査に関する用語

3.9.1 監査(audit)

監査基準(3.9.3)が満たされている程度を判定するために、監査証拠(3.9.4)を収集し、そ

れを客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス(3.4.1)。

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3.9.3 監査基準(audit criteria)

一連の方針、手順(3.4.5)又は要求事項(3.1.2)。

3.9.4 監査証拠(audit evidence)

監査基準(3.9.3)に関連し、かつ検証できる記録(3.7.6)、事実の記述又はその他の情報

(3.7.1)。

3.9.5 監査所見(audit findings)

収集された監査証拠(3.9.4)を監査基準(3.9.3)に対して評価した結果。

3.9.6 監査結論(audit conclusion)

監査(3.9.1)目的とすべての監査所見(3.9.5)を考慮した上で、監査チームが出した監

査の結論。

3.9.8 被監査者(auditee)

監査される組織(3.3.1)。

3.9.9 監査員(auditor)

監査(3.9.1)を行うための、実証された個人的特質及び力量(3.1.6)をもった人。

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2.品質マネジメントシステム体系図

営業 設計

品質マニュアル文書管理手順書記録管理手順書

経営者の責任

品質マニュアル

品質方針・目標管理手順書

資源の

運用管理

品質マニュアル教育・訓練手順書

購買管理手順書

受注手順書

配車手順書

積込手順書

運行手順書

荷降し手順書

運行管理手順書

処理業務手順書

品質マニュアル

内部監査手順書

不適合管理手順書

是正・予防処置手順書

顧客 経営者 総務プロセス

測定、分析及び改善

物流サービスの実現

運輸プロセス

品質マネジメントシス

テム

プロセス 関連文書協力会社等

営業プロセス品質管理責任者

アウトプット

インプット

物流サービスの提供

経営者のコミットメント

品質方針

期待ニーズ

責任、権限及びコミュニケーション

資源の提供 人的資源(一般/力量、教育・訓練及び認識)

監視及び測定

データの分析

顧客満足

一般要求事項/文書化に関する要求事項

経営資源

要求事項

基本契約

輸送委託(購買)

処理業務

監視機器及び測定機器の管理

プロセスの監視・測定/サービスの監視・測定

内部監査

満足

貨物

貨物

インフラストラクチャー/作業環境

計画(品質目標/QMSの計画)

受注

運行管理

改善(継続的改善/是正処置/予防処置)

購買

顧客重視

マネジメントレビュー

配車

積込

運行

荷降

購買品・サー

ビス

不適合サービスの管理

計画

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3.審査機関一覧表(分類番号31:輸送・倉庫・通信のみ)

認定番号 審査登録機関名

CM001 財団法人 日本規格協会審査登録事業部(JSA)

CM002 日本検査キューエイ株式会社(JICQA)

CM003 日本化学キューエイ株式会社(JCQA)

CM004 財団法人 日本ガス機器検査協会QAセンター(JIA-QA Center)

CM005 財団法人 日本海事協会 (ClassNK)

CM006 日本海事検定キューエイ株式会社(NKKKQA)

CM007 高圧ガス保安協会ISO審査センター(KHK-ISO Center)

CM008 財団法人 日本科学技術連盟ISO審査登録センター(JUSE-ISO Center)

CM009 財団法人 日本品質保証機構マネジメントシステム部門(JQA)

CM012 SGSジャパン 株式会社認証サービス事業部(SGS)

CM013 財団法人 電気安全環境研究所 ISO登録センター認証部 品質認証室(JET-QM)

CM014 社団法人 日本能率協会審査登録センター(JMAQA)

CM015 財団法人 建材試験センターISO審査本部(JTCCM MS)

CM016 ロイドレジスタークオリティアシュアランスリミテッドLRQAセンター(LRQA)

CM017 財団法人 日本エルピーガス機器検査協会ISO審査センター(LIA-AC)

CM019 デット ノルスケ ベリタス エーエスDNVビジネスアシュアランスジャパン(DNV)

CM020 財団法人 日本自動車研究所審査登録センター(JARI-RB)

CM021 株式会社 日本環境認証機構(JACO)

CM022 財団法人 三重県環境保全事業団国際規格審査登録センター(ISC)

CM023 財団法人 防衛調達基盤整備協会システム審査センター(BSK)

CM024 株式会社マネジメントシステム評価センター(MSA)

CM025 ペリー ジョンソン レジストラー インク(PJR)

CM027 財団法人 ベターリビングシステム審査登録センター(BL-QE)

CM029 財団法人 発電設備技術検査協会認証センター(JAPEIC-MS&PCC)

CM034 国際システム審査株式会社(ISA)

CM035 エイエスアール 株式会社(ASR)

CM036 BSI マネジメントシステム ジャパン株式会社(BSI-J)

CM037 株式会社 トーマツ審査評価機構(Deloitte-TECO)

CM038 アイエムジェー審査登録センター株式会社(IMJ)

CM040 株式会社 ジェイ-ヴァック(J-VAC)

CM042 ビューローベリタス・ジャパン株式会社システム認証事業本部(BV サーティフィケーション)

CM043 株式会社 和歌山リサーチラボISO審査登録センタ-(WRL-ISO CENTER)

CM045 株式会社 国際規格審査センター(ISM)

CM046 テュフ・ラインランド・ジャパン株式会社マネジメントシステム認証部(TUV)

CM052 株式会社 日本審査機構(JAO)

CM054 AUDIX Registrars 株式会社(AUDIX)

CM056 株式会社 国際規格認証機構(OISC)

(審査登録機関の最新のリストは JAB のホームページ http://www.jab.or.jp にてご確認下さい。)

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4.別版「トラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)

標準マニュアル」作成文書一覧

業務区分 文書番号

(例) 文書名 資料

番号 記録書式名

全体 QM-01 品質マニュアル ① プロセス評価表

PR-01 受注手順書 PR-02 配車手順書 PR-03 積込手順書 PR-04 運行手順書 PR-05 荷降し手順書 PR-06 運行管理手順書 PR-07 処理業務手順書

主要業務

PR-21 文書管理手順書 ② 文書管理台帳 PR-22 記録管理手順書 ③ 記録管理一覧表

④ 内部監査プログラム

⑤ 監査チェックリスト

⑥ 是正処置要求書

PR-23 内部監査手順書

⑦ 監査報告書

PR-24 不適合手順書 ⑧ 不適合連絡票

PR-25 是正・予防処置手順書 ⑨ 是正・予防処置報告書

PR-26 品質方針・目標管理手順書 ⑩ 品質目標達成計画書 PR-27 購買管理手順書 ⑪ 協力会社評価表

PR-28 教育・訓練手順書 ⑫ 教育訓練計画書

PR-29 車両管理手順書

支援業務

WI-01 安全運行作業指示書 作業関連

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参考文献 ①JIS Q 9001:2008 (ISO9001:2008) 品質マネジメントシステム-要求事項

②JIS Q 9000:2006 (ISO9000:2005) 品質マネジメントシステム-基本及び用語

③JIS Q 9004:2000 (ISO9004:2000) 品質マネジメントシステム-パフォーマンス改善の指針

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トラック運送事業者のための ISO9001(品質マネジメントシステム)

認証取得の手引き― ISO の導入に向けて ―

発行 平成19年3月

改訂 平成21年10月

制作協力

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ISO9001

認証取得の手引き

トラック運送事業者のための

ISO9001(品質マネジメントシステム)

認証取得の手引きISOの導入に向けて

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