1 この本を手に取ってくださったあなたへ

ていきます。 しかし、そんな心の状態では、残念な …自分が意識していないことは、管理することはできません。靴に小石が入っていたら、

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この本を手に取ってくださったあなたへ

この本を手に取ってくださったあなたへ

この本で私は、意識を変えることが理想の体型に変身するのに役立つことを、みなさん

に証明したいと思っています。目標を達成する方法をきちんとお伝えし、またなぜ達成で

きるのか、その理由もお伝えしていきたいと思っています。

ダイエットしてキレイになりたい。

健康な自分に生まれ変わりたい。

そう願う方は多いことでしょう。でも、どんなに最高のアドバイスをもらい、食事を改

善したとしても、意識が変わらなければ、カラダのことにとらわれた状況から抜け出すこ

とはできません。

厳しい食事のルールを守ることで、意志の強い人間になることはできるかもしれません。

しかし、そんな心の状態では、残念ながら、永遠に幸福が訪れることはないでしょう。

でももし、食事の改善だけでなく、意識も変えることができれば、状況は一挙に好転し

ていきます。

自分が意識していないことは、管理することはできません。靴に小石が入っていたら、

すぐに石を取り除くでしょう。「痛み」というシグナルが、何かおかしい状況にあること

をすぐに教えてくれるからです。

しかし、食べることはそうはいきません。「痛み」のシグナルが送られてこないことも

23

心を満たせばカラダはやせる 

目次

この本を手に取ってくださったあなたへ

………

1

プロローグ

意識が変わればみるみるやせる

リバウンドは「もう無理やりしぼりとらないで!」という怒り

………

11

❖「この食べ方」で、すんなり十キロ減量できた私の経験

………

15

太る原因をつくる恐ろしい七つのリスト

………

16

ニセモノの食欲にだまされないで!

………

18

なぜ、食べすぎてしまうのか?

………

22

❖ 「私は何に飢えているの?」とカラダに聞きなさい

………

25

❖ 「すぐにやせるダイエット」の罠にはまるな!

………

31

ダイエットは、何の役にも立たない

………

33

あなたの心とカラダはちゃんと連絡を取り合っていますか

………

35

❖ 「食べたい気持ち」に勝とうとするのはやめなさい

………

39

意識を研ぐための「三つのテクニック」

………

43

鏡に映っているのは「あらゆる絶望の亡霊」である

………

48

多く、少しずつ、有害な物質がカラダをむしばんでいきます。そしていつの間にか、病院

のベッドでこうつぶやくことになるのです

︱「あのとき、はじめておけばよかった」と。

大きな病気をする前に、カラダの異常に気づくためには、意識を新しいレベルに変えて

いかなくてはなりません。

カラダが重くて、動きも鈍く、元気がなくなっていませんか? 

自分のカラダに不満で

すか? 

若いころの自分を懐かしく思い出してはいませんか? 

もしそうなら、本書はあなたにとってまさにうってつけの一冊です。そこには多くの驚

きや発見があるはずです

│なかでもとりわけ重要なことは、理想の体重こそ、あなたに

とってもっとも自然な状態であるという事実です。よりよい生き方を見つけ出そうとする

とき、カラダはあなたの味方となり、減量以上のすばらしい贈り物を与えてくれるでしょ

う。意

識のなかには、多くの予想もしない解決策が眠っています。きっとあなたもこの解決

策を見つけて、応用できるようになるでしょう。

さあ、さっそく旅に出かけましょう。きっと心がワクワクしてくるでしょう。どれくら

いあなたのカラダがすっきりし、気分も爽快になれるのか、あなた自身が実感されること

を願っています。

45

純粋にすると、こんなに心地よくなる

………

87

カラダを酸化させる「遊離基」とは

………

90

心地よく「正しい食事」をとる方法がある

………

92

エネルギーをいかにカラダに取り入れるか

………

96

悪循環を断つための方法とは?

………

103

ウエストに脂肪がつくとお腹はすきやすくなる

………

106

ネガティブなメッセージを解き放つ

………

112

ラクラクと純粋になる方法

………

114

第3章

私たちは何を食べるべきか

ダイエットとは「食べ方全般に意識を払うこと」

………

120

食べてはいけない「五つのもの」

………

123

マインドフルな食事法とは

………

126

すべての食事に「六つの味覚」を取り入れなさい

………

127

コーヒーとアルコールは飲んでいいのか?

………

139

人生のあらゆる場面に応用できる「六味」

………

141

お皿を虹色に飾ることのこれほどの効果

………

145

幸運を手に入れるために「スパイス」を上手に取り入れる

………

149

あなたと私が交わす「生まれ変わるための誓い」

………

51

第1部 

マインドフルに食べなさい

第1章

人生の“物語”を変える方法

カラダは、あなたが生きてきた“物語”を形づくったものである

………

57

❖ “物語”を書き換えるアクションがある

………

64

心からのメッセージを受け取る

………

68

あなたのカラダは年に一度全身が生まれ変わっている

………

71

間食したくなったときの「S–T–O–

P」テクニック

………

75

一週間で悪い食欲に打ち勝つ自分になる

………

80

第2章

まっさらなカラダにエネルギーをバランスよく満たす

カラダを変え、人生を開花させる三つのテーマ

……… 86

67

❖ 「私なんて」と思っている人は絶対にやせられない

………

191

カラダは前向きな言葉を欲しがっている

………

198

やけ食いに走りやすいかどうかのチェックリスト

………

203

あなたの食べ方はホルモンに左右されていた!

………

205

心地よく眠るためのシンプルな習慣

………

208

食欲の原因となるストレスはこう処理しなさい

………

212

第6章

どんなときも「幸福」を選びなさい

幸福を「選んだ」人だけが幸福になる

………

222

幸せを探しに出ても見つからない理由

………

227

食べ方が変われば人生は変わる

………

229

人は簡単に幸せになれると知っていますか?

………

232

抱え込んだ心の荷物を「消去」するエクササイズ

………

239

第7章

心とカラダがつながれば、メッセージを受け取れる

誰にでも「スピリチュアル」を感じる瞬間がある

………

246

カラダの声を聞けば、病気になる前に手を打てる

………

157

第2部 

マインドフルに生きなさい

第4章

意識することは幸せへの近道

食べているものを記録することの効用

………

163

あなたはどんなふうに食卓を囲んでいますか?

………

167

だから、ジャンクフードを食べたくなってしまうのか!

………

172

マインドフルに食べるための十二の方法

………

178

条件づけの囚人になっていませんか?

………

180

あなたを変える「マインドフル宣言」 ………

185

第5章

カラダのことを信じなさい

カラダにあなたのお世話をしてもらいなさい

……… 189

89

第3部 

チョプラセンター食堂のレシピ

純粋、エネルギー、バランスはこう手に入れる

………

298

朝食……………朝の幸せミルクセーキ 

300/スクランブル豆腐 

301

スープ…………

トマトのバジル・スープ 

302/シンプルなパンプキン・スープ 

304/

       

ホウレン草とレンズ豆のスープ 

306

メイン・ディッシュとサイド・ディッシュ………ラタトゥイユ 

308/

       

キヌア・ピラフ 

310/ゴルゴンゾーラを使ったグリーン・ゴッデス 

312

デザート………

イチゴヨーグルトパフェ 

313/

       

チョプラセンターのケタ外れにおいしいダブル・チョコレート・ケーキ 

314

謝辞

………

316

訳者あとがき

………

317

スピリチュアルに意識を向けると見えないものが見えてくる

………

250

❖ 「今」をきちんと生きれば、心とカラダの声が聞こえる

………

254

意識を磨くための四つの方法

………

259

第8章

あなたが幸せになれば、世界中が幸せになる

一週間の瞑想で生まれ変わった自分になる

………

278

  【日曜日】完璧な健康を誓う

………

280

  【月曜日】カラダの英知を知る

………

283

  【火曜日】バランスを回復する

………

285

  【水曜日】意識的に呼吸する

………

287

  【木曜日】丁寧に食事をする ………

289

  【金曜日】肉体の躍動を楽しむ ………

291

  【土曜日】すべてのものに感謝する ………

293装  丁/小口翔平(tobufune

カバー写真/David M

alan/Photographers̓ Choice/Getty Images

本文組版/山中 央

編集協力/田中 一(くすのき舎)

編  集/池田るり子+橋口英恵(サンマーク出版)

1011

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

プロローグ

意識が変わればみるみるやせる

リバウンドは

「もう無理やりしぼりとらないで!」という怒り

今、この瞬間、人々の生活を大きく変える一大ムーブメントが巻き起こっています。

この大きな時代の動きは、新聞の見出しを見ても明らかです。

心臓発作を起こして病院に運ばれることになった元大統領のビル・クリントンは、菜食

主義者(ベジタリアン)になったと話しています。そして、菜食主義のすばらしさを伝え

るため、会う人ごとに、自分がいかに気分も顔色もよくなったかを話しているのです。

ほかにも、スペインで行われた大規模な食事に関する研究で、驚くべき結果が出てきま

した。魚、ナッツ、オリーブオイルが豊富に含まれている地中海食を食べている人は、心

臓発作を発症するリスクが三十パーセント減少することがわかったのです。牛や羊の肉

WHAT ARE YOU HUNGRY FOR?Copyright © 2013 by Deepak Chopra

All rights reserved.

Published in the United States by Harmony Books,an imprint of the Crown Publishing Group,

a division of Random House, LLC, a Penguin Random House Company, New York.

This translation published by arrangement with Harmony Books, an imprint of the Crown Publishing Group,

a division of Random House, LLCthrough Japan UNI Agency,Inc., Tokyo

1213

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

を守り、カラダに悪いものは口にせず、健康食品も手に入れることができていたのに、こ

のありさまです。

しかし一方で、ダイエットをしてもムダだということにも気づいていました。なぜなら

私は医者として、「ダイエットで減らした体重は、すぐにリバウンドして元に戻るだけで

なく、以前より三キロから五キロも太ってしまう」という医学的な研究を何度も目にして

いたからです。

増えた体重は「僕のカラダからもう無理やりしぼりとらないでよ」という、カラダから

の怒りの訴えなのです。

ダイエットでは、自分のカラダを健康的にスリムにすることはできないと悟った私は、

自分の医学的知識を総動員して、理想の食事をとることにしました。

加工食品は一切口にしない

できるかぎり自然の食品、有機食品を選ぶ

アルコールを完全に絶ち、チーズのような発酵食品も食べない

白砂糖は使わない

できるだけ塩分を控える

牛や羊の肉を控え、鶏肉や魚を食べる。最終的には菜食主義をめざす

不純物を含まない純粋な水を飲む

(赤身の肉)を控えている人が正しかったことが、医学的にも実証されたのです。

ほかの多くの面でも、食事への関心が高まっています。

加工食品に含まれる有害物質はますます受け入れられなくなり、「オーガニック(有機

食品)」という言葉がごくふつうに使われるようになりました。菜食主義者の数は近年増

えつづけており、ある世論調査では、イギリス女性の半数が自分は基本的にベジタリアン

だというのですから驚きです。

五年ほど前、私もこのような時代の大きなうねりにのみ込まれました。

とはいえ、私はそれ以前にも「きちんとした」食事をとっていました。たとえば赤身の

肉はあまり食べませんでしたし、アルコールやタバコなどの、明らかにカラダに有害なも

のはずっと前にやめていました。快適な食環境はつくっていたのです。

しかし、医学の文献を調べてみると、毎日新しい調査結果が出てきます。糖分と肥満の

関係、アルコールが睡眠にもたらす障害、炭水化物と糖尿病の関係……あらゆる病気と食

事の関連が明らかにされていったのです。

そして、これらの調査結果の多くが、肥満に関するものでした。

太りすぎが引き起こす、多くの病気についてのデータは、今もますます増えています。

そして、いつの間にか体重が十キロも増えてしまった私も、「理想の食事とは何か?」

を考える必要に迫られていました。

「きちんとした」食事をとっていたはずなのに、私もアメリカ人の三分の二を占める“太

りすぎ”のひとりに仲間入りしてしまったのです。医学の教育を受け、きちんとした習慣

1415

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

ていることがわかります。

❖ 「この食べ方」で、

すんなり十キロ減量できた私の経験

では、正しい食べ方とは、いったい何でしょうか?

それは、医学知識を身につけ、無理をせずに食べることです。そして、そのためにまず

必要なのが、「自分が何を食べているか」、そして「何を食べるべきか?」に注意を払うこ

とです。

私自身もずいぶん長い間、まちがった食べ方をしていましたが、そこに注意が払われる

ことはありませんでした。

この点を反省し、追究したのが、「意識する食べ方」です。この食べ方をすることで、

私のカラダは軽快になり、体重もすんなりと十キロ落ちました。携帯電話を眺めながら食

べるといった、無意識の行動もなくなりました。

私たちは、食事中には食べることに集中し、食事を満喫すべきなのです。そうすること

で、私はダイエット中のように「もの足りない」「ガマンしている」といったつらい気持

ちを抑える必要もなくなり、すべての食事に満足できるようになりました。食事に集中す

ることで、そのときの自分のカラダにちょうど見合った分量がわかったからです。

しっかり睡眠をとる

「夜、しっかり睡眠をとるのが、なぜ理想の食事法なの?」と思う人も多いかもしれませ

ん。それは、睡眠と食事には深い関係があるからです。

睡眠不足になると、空腹感と満腹感の原因となるホルモン、グレリンとレプチンのバラ

ンスが崩れてしまうのです。

きちんと睡眠のとれなかった日に、食べすぎてしまった経験を思い出してください。そ

れは、カラダがホルモンからのメッセージを、正しく伝えられなくなっているせいなので

す。そして、お腹の脂肪も、ホルモンの分泌を混乱させる原因になっています。この、ホ

ルモンバランスの乱れこそ、カラダを病気にしてしまうのです。

ここで、純然たる真実をお話ししておきましょう。

現代人の、「標準的な」食事はとんでもない方向に向かっています。平均的なアメリカ

人は、毎年約七十キロもの砂糖をとり、インスリン値や血糖値を驚くほど上昇させていま

す。砂糖は、栄養価ゼロのエネルギーです。そんなしろものを、これほどたくさんカラダ

に入れているのです。

しかも、アメリカ人が食べる食べ物の約七十パーセントが加工食品です。地元のスーパ

ーマーケットに行って、ゆっくりと眺めてみてください。クッキーやクラッカーなどのス

ナック菓子、味のついた炭酸飲料、冷凍ピザ、アイスクリームなどが所せましと並べられ

1617

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

「自分はやせられない」という思い込み

塩味や甘味、脂肪の多い食事がやめられないこと

時間に追われていて、スナック菓子にすぐに手を伸ばしたり、ファストフード店に

すぐ立ち寄ったりしてしまうこと

これは恐ろしいリストです。あなたにも当てはまることはありませんか? 

この七つは、

正しい食生活を阻む大きな障害として立ちはだかります。

世のなかを見ると、新鮮な果物や新鮮な野菜、全ぜ

粒りゆう 穀物、有機食品の宣伝は少ない一

方で、「ナチュラル」「ライト」「栄養のある」といったキャッチフレーズを使って、加工

食品とほとんど変わらない食品が、テレビで大々的に宣伝されているのが実情です。

しかし、このような状況のなか、正しい食事をとりたいと願い、実行する人たちは増え

つづけているのです。まさに奇跡といってもいいでしょう。

これら「太る原因となる七つの障害」を乗り越えるために、数十年前からいわれてきた

アドバイスをここでくり返すつもりはありません。古くからのアドバイスはすべて適切で

す。しかし、それでも食生活を変えられなかったのは、変えるための具体的な「方法」が

伝えられていなかったからです。

食生活を変えるための鍵となるもの、それが「意識」です。

私たちはみな、これまでカラダによくない食べ方を刷り込まれ、無意識にそれをくり返

してきたといえます。たとえば、次のような食べ方をついついしていませんか?

気分も爽快になりました。私はもともと活発なほうでしたが、この食事法をはじめてか

らは、以前にも増して元気になりました。

しかし、この食事法をつづけることで、私をいちばん満足させてくれたのは、ほかの人

の反応でした。私が「意識する食べ方」について話すと、全員が納得してくれ、ほとんど

の人がこのやり方を取り入れてくれたのです。この食べ方の輪は、今もますます広まって

います。

今、時代は転換点にさしかかっています。本書を執筆しながら、もっと多くの人がこの

新しい食事法を待ち望んでいるはずだと確信しています。

新しい食事法を実践するのに難しい信念を説く必要などありません。なぜなら、健全な

食事をとることは、すでに多くの人の目標になっているのですから、それを妨げているい

くつかの「障害」を知ることからはじめればよいのです。

太る原因をつくる恐ろしい七つのリスト

無意識のうちにくり返してしまう、悪い習慣

大きな変化への恐怖と、変化させまいとする家族からの圧力

「今、食事を変えなくても、次のダイエットはきっとうまくいく」という思い込み

「自分は太っている」といった絶望感

1819

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

れる方法を説明していきます。

はじめにお伝えしたとおり、ダイエットによって、理想の体型を手に入れられることは

めったにありません。なぜなら、ダイエットをすると、毎日、空腹と戦い、つねに自制心

を働かせていなくてはならず、いつまでたっても満足感を得ることはできないからです。

これでは、かえって自己破滅の道を歩むことになるのです。

体重をきちんと減らすためには、満足感を得なくてはいけません。断言しましょう。こ

れまであらゆるダイエットで失敗してきたとしても、私が説明していく方法を実行してく

ださればきっとうまくいきます。

あなたのカラダは今、まちがった空腹のシグナルを送ってしまっています。

しかし、これを正常な状態に戻すことができたなら、食欲はもはやあなたの敵ではなく、

味方になってくれます。「自分にとって何が必要か」という、はっきりしたメッセージを

受け取れるようになれば、カラダはあなたに抵抗するどころか、面倒をみてくれるように

なるのです。

私は医学生として、特定のホルモンの分泌が、人間の空腹にどのように影響を及ぼすの

かを勉強してきました。空腹は、カラダから脳に伝えられる、もっとも強力な化学的メッ

セージのひとつです。本来なら、食事を終えた直後なのに何かを食べたくなったり、夕食

前にスナック菓子を食べはじめたら止まらなくなる、という状況はあってはならないこと

です。しかし、ご多分にもれず、私も食べる必要のないときでも、食べ物を口にしてしま

食事のなかに何が入っているのかを気にせず、無意識に食べる

食欲を抑えられなくなる

量が多いほうを選ぶ

④ 日常生活のストレスを解消するために食べる

⑤ 食欲を手っ取り早く満たしてくれる食事に手を伸ばす

こうした傾向は、すべてひとつの場所から生まれてきます。

それは心です。カラダとは、あなたの日々の選択が、意識を通して具体的な形になった

ものです。知識は重要ですが、いくらよい知識を増やしたところで、実際に健康的な食事

をとることにはつながりません。医者であり、食事についての知識も豊富だった私が、十

キロも太ってしまったのがそのいい例です。

食生活を変えるために必要なのは、「意識」を変えることなのです。

ニセモノの食欲にだまされないで!

理想の体重になりたいと思ったら、あなたに用意されている選択肢は、「ダイエットす

るか」、それとも「ダイエット以外のことで実現するか」のふたつにひとつです。

本書では、この選択肢の後者の方法、つまりダイエットをせずに、理想の体型を手に入

2021

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

意識を使えば、これらのすべてを叶えることができます。しかし、意識しないでいれば、

あなたはますます「満足のいく」状況から遠ざかってしまいます。

体重を減らすためには、心身ともに満ち足りていなくてはいけません。食事以外のこと

で満足な状況でいられたなら、食生活での問題は、キレイに片づけられるでしょう。

食事は本来、問題をつくり出すものではなく、幸せを感じるためのごく自然な手段です。

しかし、食べすぎのせいで、食事は人を不幸にするものと勘違いされてしまっているので

す。今

あなたは、食事と幸福を結びつける尺度のどの段階にいますか?

標準的な食事

︱→

食べすぎ

︱→

ガツガツ食べる

︱→

食物依存症

「標準的な食事」をしていれば、気分も爽快になります。

「食べすぎ」は食事をしている最中は気分がよいのですが、結局、カラダによくない結果

を招いてしまいます。

「ガツガツ食べる」ようになってしまうと、気分は最悪で

│すぐに自分を責めたり、罪

の意識にさいなまれたり、欲求不満に陥ったりしてしまいます。

「食物依存症」になると、健康を損ない、苦しんで、自尊心も失ってしまいます。

肥満になってしまう危険な坂道は、喜びからはじまります。食べることはもともと人間

にとってもっとも大切なことです。食事は健康なカラダをつくってくれます。

ったことがあります。

食べすぎていることに気づいたとき、変えなくてはいけないこと。それは、このような

“無意識の行動”なのです。

あなたは、ニセの空腹にだまされているのです。カラダに不必要なエネルギーを与える

必要などありません。カラダは、ガソリンをやたらに浪費するクルマとは違います。脳か

ら伝えられてくる数多くのメッセージが形となって現れたのがカラダです。食べることは、

あなたの習慣、無意識の行動などとともに、あなたが心に思い描いている自己像にも関連

しています。

そして、体重を減らすための鍵も、この心にあります。実は、心に不満がなくなれば、

カラダはそんなに多くの食べ物を欲しがらなくなるのです。

「意識的に食べる」ことが食生活を改善するのに役立つのは、要求していることがひとつ

しかないからです。それは、「自分が満ち足りた状態を見つける」ことです。

食べているだけでは、満ち足りた状態にはなれません。この状況をつくるには次の条件

が必要となります。

・健康的な食事でカラダをはぐくむこと

・喜び、思いやり、愛で心をはぐくむこと

・知識で頭をはぐくむこと

・心の平静と悟りにより魂をはぐくむこと

2223

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

家には妻とふたりのかわいい子どもが待っていてくれ、幸運に恵まれていました。それ

なのに、妻のつくってくれた栄養と愛のこもった夕食も、ゆっくり味わうことなく「ガツ

ガツ食べる」ようになっていたのです。それでいながら、当時でも、食事には気を使って

いるつもりでいたのですから、あきれたものです。

私は食事をほとんど意識せずに食べていることに気づけたおかげで、このまちがった食

習慣から脱することができました。そして、これが本書で紹介する解決策です。

これまでカラダをどれだけ粗末に扱ってきたとしても、バランスを取り戻すことができ

ます。そのためのひとつめのルールは、自然な状態に逆らうのをやめることです。

脳は本来、空腹を自動的に調整する機能をもっています。血糖値が一定のレベルより下

がったとき、脳の視床下部にメッセージが送られます。そのメッセージを受け取った瞬間、

視床下部は空腹を感じさせるためのホルモンを分泌します。そして、十分に食べるとこの

ホルモンは消え、空腹を感じなくなります。これが、今まで何百万年間もずっとつづけら

れてきた、空腹と食事のメカニズムです。脊椎動物にすべて視床下部があるのは、空腹を

感じることが、生きるために重要なことだからです。

しかし、この自然のバランスが崩れてしまうと、まったく食べ物が喉を通らなくなった

り、一日中、食べることばかり考えるようになったりしてしまいます。

これから私たちが追求していくテーマは「満足」です。食べ物以外にも、あなたの心を

満たしてくれることは数多くあります。

しかし、正しくない食事のしかたに慣れてしまうと、チョコレートやアイスクリームを

暴食したりといった短絡的快楽と、将来、肥満や成人病になるなどの長期的苦しみの間で、

板挟みになってしまいます。

では、なぜ人は知らないうちに食べすぎるようになってしまうのでしょう?

なぜ、食べすぎてしまうのか?

簡単にいうと、心に不満を抱えているからです。あなたは心にぽっかりとあいた穴をふ

さぐために、食べすぎてしまっているのです。

私も同じでした。二十代で研修医だったころを振り返ってみると、知らず知らずのうち

に、悪い食習慣を自分に植えつけてしまっていました。そのころは、朝から晩まで病院で

神経をすり減らし、頭のなかはつねに十人以上の患者のことでいっぱいでした。なかには、

危険な状態の患者もいました。

激務を終えて家に帰ると、妻が手料理を用意してくれていました。この夕食のみで一日

に必要なカロリーを摂取することができたのに、職場では、多忙の合間にスナック菓子を

食べながら、コーヒーメーカーに向かっていました。睡眠不足のせいで、実際に自分が何

を食べているのか気づかずに、無意識に口をもぐもぐさせていたのです。家に帰ってから

も、私はアルコールをたくさん飲み、タバコの箱も半分空にしていました。

2425

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

うと思えば、カラダにいい食事をとることができる環境にいながら、私たちはひどく粗末

な食事でお腹を満たしています。成長や進化の機会に恵まれていながら、心には虚しさを

抱えたままでいるのです。

私の目標は、あなたに満足感を味わってもらうことです。きちんとした心の満足感が得

られるようになれば、あなたは本当にカラダが欲していないときに食べることはなくなる

でしょう。

体重を減らすためには、カラダも心も魂も、あらゆる面で満足しなくてはいけません。

でもそれは、解決するのが難しいことではありません。精神科に通わなくても、カラダの

ことばかりに気を奪われたり、失望や欲求不満でくよくよ考えたりすることはやめられま

す。た

だし、ひとつだけ大事なことがあります。それは「人生とは満足すること」という言

葉を胸に刻むことです。どんなに胃袋にものを詰め込んだところで、それによって人生が

充実することなどありえないのです。

❖ 「私は何に飢えているの?」とカラダに聞きなさい

あなたが「何かを食べたい」と思い、食べ物を探しに冷蔵庫に向かっているとき、こん

なテストをしてみてください。

安心感を抱き、不安を感じないこと

いつも見守られていると感じること

愛され、感謝されていると感じること

④ 人生に価値があると感じること

このように、心を満たすことができれば、食事は多くの喜びのうちのひとつにすぎなく

なります。しかし多くの人が、自分が本当に求めているものに気づかないまま、食べるこ

とによって満足感を得ようとしているのです。

食べることは気分転換にはなりますが、自分が何のために食べているのか気づかずにい

ることも少なくありません。

舌が砂糖、塩、脂肪で過剰な刺激を受けなければ、自分が守られているとは感じられな

いのです。愛されているとか、感謝されていると感じられないから、その代償として、食

べることで「自分に愛情を注ごう」としているのです。

ひょっとしてあなたにも、心当たりがあるのではありませんか?

食べすぎてカラダをだるくすることで、不安を払拭しようとしていませんか?

だるくなるまで食べることで、ほんの束の間の静寂感を得ているのではないですか?

人生に意味を見つけ出せなくても、食べているときだけは、内面の虚しさを忘れること

ができるのです。

このように考えていくと、肥満は結局、人間の抱く満足感の問題に行き着きます。とろ

2627

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

……たぶん、はっきりした答えは浮かんではこないでしょう。自分が食べすぎてしまう

原因に気づいている人はほとんどいないのです。なぜなら、本当の原因は無意識の領域に

ある場合が多いからです。それをいいことに、食欲の原因はさらに威力を増し、気づかな

いうちに、食べ物に手を伸ばすよう、あなたを仕向けているのです。

次のリストを見て、自分に当てはまると感じる項目をチェックしてください。お腹がす

いていなくても食べてしまう、もっとも大きな原因を調べてみましょう。

【グループA】

仕事が忙しいとき

急いでいて、慌ただしいとき

十分な睡眠がとれず、疲れているとき

人といっしょに食べるとき

外食したとき

テレビやコンピュータの前にいて、手持ち無沙汰なとき

自分の前に取り分けられた食べ物があるとき。残してはいけないと感じるとき

【グループB】

落ち込んでいるとき

ちょっと立ち止まって、「どうして食べ物に手を伸ばそうとしているの?」と自分に問

いかけてみましょう。答えは次のふたつのうちのどちらかしかありません。

1.お腹がすいて、食べなくてはならないから

2.心にぽっかりとあいた穴を埋める、もっとも手っ取り早い手段が食べることだから

現代医学では、食べ物への誘惑を引き起こす多くの「原因」が明らかにされています。

あなたのカラダは、脳の空腹センターと胃や消化管の間の連絡を取る役割を果たすホルモ

ンや酵素を分泌しています。赤ちゃんのとき、あなたはお腹がすくと泣いていました。こ

の時期、食欲が生まれるのはお腹がすいたときに限られていました。

ところが現在は、この反応が逆になっている恐れがあるのです。すなわち、お腹がすく

から泣くのではなく、泣きたい気分になるからお腹がすいてしまうのです。

生きていくうちに、赤ちゃんのときにはまったく予想もできなかった新しい「食欲の原

因」がつくられていきます。気持ちの落ち込みが食べすぎの原因となることはよく知られ

ていますし、ストレス、親しい人の死による深い悲しみ、あるいは怒りなども、食欲を引

き起こす原因になっています。

このような、食欲を引き起こす感情のなかで、あなたに当てはまるものはありません

か?

2829

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

のをガマンして不満をつのらせていくことではなく、食べること以外に自分を満足させて

くれるものを見つけることです。

【食べる前のアクション・ステップ】

食べる前に、「なぜ食べたいのか?」に気づいてください。あなたは空腹と戦う必要は

ありません。ただ、脳に選択するだけの時間を与えさえすればよいのです。無意識に食べ

物に手を伸ばすかわりに、実際に自分が求めているものを選択するのです。

まず、食事以外のときにあなたが何かを食べようとしていることに気づくことからはじ

めましょう。そして、何かを食べたくなったときは、かならず次の簡単なステップに従っ

てください。

1. 少し立ち止まって、深呼吸をしてください

2. この空腹が、退屈したり、落ち着かなかったり、悲しかったり、気晴らしを求めた

りといった、いつものパターンが引き金になっていないか、自分に問いかけてみて

ください。あなたはもう、自分が食べすぎてしまう原因にいくつか気づいているは

ずです。そのなかのどの原因が、今、食べ物に手を伸ばすように仕向けているのか

を確認してください

3. 原因が特定されたら、「今」食べる必要があるのか自分に問いかけてください。食べ

るかわりに、何かやるべきことがあるのではないでしょうか。次のようなことです

ひとりぼっちのとき

自分には魅力がないと感じているとき

心配で、不安を抱いているとき

□ 自分の体型に不満があるとき

□ ストレスがたまっているとき

□ 誰かになぐさめてもらいたいとき

チェックしたものがほとんどグループAの項目なら、あなたの食べすぎの原因はすぐに

解決することができます。自分の食習慣にもっと注意を払う必要はありますが、それは比

較的簡単にできます。

あなたは、少し意識を働かせれば、お腹がすいていないのに食べていることに気づける

ようになるでしょう。なぜなら、あなたの主な問題は、注意力が散漫なところにあるから

です。一度にひとつのことに集中していれば、必要もないのにうっかり食べ物を口に入れ

てしまうことはなくなります。

チェックしたすべて(またはほとんど)がグループBの項目なら、あなたは食事以外の

何かに飢えています。その「何か」に注意を払うことが、体重を減らすもっとも有効な手

段になるでしょう。

重要なのはダイエットをすることではありません。あなたを助けてくれるのは、食べる

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

・孤独や悲しみなどで心にあいた穴を埋めたい

・自尊心の低さ、体型の悪さ、失敗や挫折感など精神的な穴を埋めたい

そして、もうひとつ。それが、魂にぽっかりあいた穴を埋めたいという衝動です。

この本の目的は、あなたが何に飢えているのかを見つけ出すことにあります。いったん

その願望に気づけば、精神、肉体、魂の立場から、あなたの進むべき道がはっきりと見え

てくるでしょう。そして、あなたが変身したらどうなるか、ここでずばりいっておきまし

ょう。

ほんとうにお腹がすいたときだけ、食べるようになります。

❖ 「すぐにやせるダイエット」の罠にはまるな!

「おっしゃることはすべて結構なことだと思いますが、はっきりいって、私が知りたいの

は、何を食べるべきで、何を食べてはいけないのか、ということだけです」と心のなかで

考えている読者もいるかもしれません。

しかし、私はそれをいきなり伝えるつもりはありません。なぜなら、それがわかったか

らといって、結果がどうなるのか、私にははっきりと見えているからです。

家事や雑用を片づける

友人に電話をする

たまっていたメールにいくつか返信する

④ 本を読む

⑤ 水を一杯飲む

害にならない気晴らしなら、どんなことでもかまいません。大切なのは、食欲の誘いに

簡単に乗ってしまう前に、一瞬、立ち止まる瞬間をつくることです。

それでもやはり空腹だというなら、どうぞ遠慮なく食べてください。まずはこのように、

自分の食欲の原因に気づく習慣をつけることです。この習慣が、ニセの食欲の誘惑に打ち

勝ち、正しい食生活を手に入れるための第一歩となるのです。

食べすぎの問題の解決策は、今、ここで役に立つことを選択することです。ダイエット

の最大の欠点は、明日はもっと幸せになれると約束して、今日の自分を不幸せにしてしま

うことです。

しかし、この方法はほとんどうまくいきません。「私は何に飢えているの?」という質

問は、「今、この瞬間に何を望んでいるの?」という自分への問いかけなのです。あなた

が感じる衝動は、基本的に次のように分類することができます。

・食べ物が欲しい

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

「これからは、自分にあんなひもじい思いをさせてはいけないわ」

「こんなおいしい食べ物をムダにするなんてバチあたりよ」

このようなメッセージに後押しされたら、残ったウエディングケーキの大きな塊を食べ

るのをやめるなんて、まず無理です。心にいい訳を思い浮かべては、ちょっぴり余計に食

べてしまいます。二週間という短期間で体重を落とせたとしても、体重を着々と増やしつ

づけてきた長年の食習慣を変えることはほぼ不可能です。

ダイエットは、何の役にも立たない

アメリカには両極端の状況が生まれています。一方の極端な例は、マクドナルドに代表

される、脂肪の多い、カロリーたっぷりのファストフードです。アメリカでは、国民の食

事の十一パーセントが、チェーンレストランでとられています。

そして、もう一方の極端をつくっているのが、常軌を逸したダイエットの流行です。次

から次へと世に出てくる過激なダイエットは、人々を一種の自発的健忘症にしているとい

えるでしょう。新しい流行に飛びつかせて、これまで効果のなかったダイエットのことを

忘れさせてしまうのですから。

冷静に観察してください。なんとも不思議な光景が、いたるところで起きています。

「五キロ体重を落とすつもりだ」といった一時間後には、レストランの椅子に腰を下ろし、

すぐに体重を落とせるダイエットには、誰もが心をひかれます。しかしこれは、一時し

のぎの解決策にすぎません。実際、結果がどうなるのか見てみましょう。

カレンは魅力的な中年の女性ですが、鏡のなかに映る自分の姿に眉をしかめています。

二週間後に迫った娘の結婚式までに、あと五キロは減量しなくてはいけません。でも、希

望を捨ててはいません。二十歳のとき、ジュースダイエットをやって、一週間で二キロや

せた経験があったからです。あのときうまくいったのだから、今回も大丈夫だろう、と考

えていました。

ジュースダイエットはかなりの効果があり、娘の結婚式のときまでに三キロやせていま

した。ここまで減量するには並大抵の苦労ではありませんでしたが、やせられたことで陽

気に娘を祝うことができました。

ただ、知らないうちに彼女は罠にはまっていたのです。

かつての悪い食習慣を取り戻すのは、たった一時間もあれば十分です。そして、彼女は

体重を以前より増やしてしまうことになるでしょう。結婚式の翌日、冷蔵庫の前に立って

いる彼女の姿が目に浮かびます。次のような電報が、カレンの心からカラダに届けられま

す。

「やれやれ結婚式も終わった。これで緊張を解くことができるわね」

「あんなにがんばったのだから、自分にごほうびをあげてもいいはずよね」

「結婚式の残りものがあるわ、もったいない」

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

する」と宣言しても、逆効果になってしまうのがオチです。かえってみじめな状況が増え

ていき、結局、問題をさらに深刻にしてしまいます。

やりたければ、次に流は

や行るダイエットも試してみればいいでしょう

│本書を読んでい

る最中でも、新しいダイエットに挑戦してかまいません。

しかし、そんなことをして不満をつのらせるよりも、自分が本当に満足できることを見

つけ出したほうがよいことに気づくことです。そうすれば、過激なダイエットには、もは

や見向きもしなくなるでしょう。

あなたは、減量をしながら、さらに幸せにならなければいけないのです。

これこそ、私のアプローチが役立つ理由であり、成功する秘訣でもあるのです。

あなたの心とカラダは

ちゃんと連絡を取り合っていますか

視床下部が食欲をつかさどっていることはすでにお話ししました。

しかし、あなたが実際に、何に飢えているのか、何を求めているのかを知るためには、

このような単純な回路を見ているだけではいけません。

なにより、心とカラダが再び、きちんと連絡が取り合えるようにしなくてはならないの

です。なぜなら、カラダからのシグナルをあなたは無視してしまうことがあるからです。

「今日が最後」といい訳して、デザートの盛り合わせで食事を締めくくっているのです。

私たちは数十年間、「ダイエットは役に立たない」というスローガンを抱いてきました。

これはまちがいのない事実です。

長期間にわたる研究から、十数キロといった大幅な減量に成功した人でも、二年間、そ

の体型を維持できるのは、わずか二パーセント以下であることが明らかにされました。

これは別に、アメリカ人が意志の弱い国民だからではありません。実は、ダイエットの

計画自体に、失敗する原因が組み込まれているのです。

考えてみましょう。ダイエット中の人は、いったいどんなことをするでしょうか? 

れは自分のカラダをけずろうとすることです。彼らは、カロリー摂取量を大幅に減らしま

す。自分の食欲と戦い、一週間、ダイエットジュースしか飲まないことを誓います。

しかし、こうして自分のカラダをけずろうとすることで、心のなかにぽっかりと穴をあ

けてしまうのです。そうなると、悲しい、孤独だ、愛されていないと感じた瞬間、食べ物

が欲しくなってしまいます。

なぜ人が自分のカラダをけずろうとするのか、私は十分に理解しています。鏡を見るた

びに、余分な体重がそこに映し出されているからです。しかし、いくらその肉を奪い取っ

たとしても、鏡には映らない穴が心にあいてしまいます。

食べすぎてしまうのは自己管理ができていないからだとするなら、当然、減量するため

には自己管理を強化することが必要です。

しかし、「レモンジュースやブロッコリーは嫌いだけど、無理をしてでも食べることに

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

人間の脳のもつ奇跡は、この三つの満足を協調させ、ひとつにまとめられることです。

脳底部が送った「お腹がすいた」というメッセージを、辺縁系が「食べれば気分がよくな

る」から受け入れて、高次脳は「食事のために店に立ち寄ろう」という決断を下します。

このような連携プレーは、脳の三つの領域すべての利益になります。他の領域の意見を押

しのけて、自分のメッセージだけをゴリ押しする必要がないからです。

脳は、あらゆる面で幸福を見つけ出せるように組み立てられています。赤ちゃんの場合、

きちんと機能しているのは脳底部だけなので、お腹がすいたときに食べ、疲れたときには

眠り、寒いときには抱いてもらえば満足することができます。ところが、成長して辺縁系

や高次脳の領域が発達しはじめると、満足の種類もはるかに複雑になっていきます。

私は医者ですから、このような知識はあったものの、とくに強い関心を払っていたわけ

ではありませんでした。太ってしまった当時をふり返ってみると、欲求不満だらけの若い

私の脳のなかには、多くの情報(高次脳)が詰め込まれていたので、「私は不幸だ、不満

だ」と叫ぶ内面の声(辺縁系)を抑えていました。しかし同時に、失敗やストレスに押し

つぶされてしまうのを恐れるもっとも原始的な脳(爬虫類脳)が、大声で助けを求めてい

ました。そして、束の間の食事で、一瞬だけ、満足感を味わっていたのです。

知り合いの若い医者の家庭がバラバラな状態になってしまうことが多かったのも私と同

じような状況にあったからです。しかし幸い、私の家庭は大事にはいたりませんでした。

空腹という基本的なシグナルでさえ、視床下部以外の領域の脳の力が働いてしまうからで

す。し

かし、十代後半からまったく体重が変わっていない人がいます。このような人は次の

ようなことを口にしているはずです。

・カラダは、求めているものをきちんと自分に伝えてくれます

・一キロ体重が増えると、カラダの調子が悪くなってしまいます

・運動をすると、気分がよくなります

このような言葉が出てくるのは、心とカラダの関係が正常な証拠です。この関係が正し

く機能していないと、心とカラダで連絡が取り合えず、かわりに感情や悪習慣が、カラダ

に何をすべきか命じてくるようになります。まちがったシグナルが送られると、ニセの食

欲のせいでカラダはさらに太って、バランスも崩れ、結局、病気になってしまうのです。

なぜ、こんな状況が生まれてしまうのでしょうか? 

その理由を次に見ていくことにし

ましょう。

一本の電話線に三つの会話が集中し、混線状態になっているのを想像してみましょう。

それと同じように、脳のなかの三つの領域が、それぞれのメッセージを送ってきます。

求めていることは三者三様です。脳底部はカラダが心地よいと満足し、辺縁系は気分がよ

いと満足し、高次脳はすばらしい決断を下せたとき満足を示します。

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

この三者によるダンスは、上に示すような旋回をくり返し

ています。

衝動:

脳底部は、お腹がすいたり、怖かったり、脅された

り、興奮した場合、あなたにメッセージを送ってき

ます

感情:

辺縁系はあなたが今抱いている気分、そして感情的

反応について伝えてきます

選択:

高次脳は決断を下さなくてはいけない状況を告げて

きて、行動に移すよう促してきます

❖ 「食べたい気持ち」に勝とうとするのはやめなさい

では、食べすぎてしまうとき、脳がどのように機能しているのか、実際に例を挙げて説

明していくことにしましょう。

トレイシーは十代のころから、太っていることに悩んでいて、そのことが原因で反抗的

な性格になってしまいました。両親に体重のことをいわれるたびに、神経質になっていっ

た彼女は、逆に内面の脆も

さに気づかれないようにするために、高飛車な態度を取るように

この点、愛情深い両親に育ててもらったことをありがたく思っています。両親のおかげで、

愛を与えたり、受け取ったりすることの大切さには気づいていたからです。

心のなかでは、三つ脳の領域が同時に会話をしていました。この状況からは、誰も逃れ

ることはできません。毎日、高次脳で下される多くの選択には、感情的な要素も含まれて

います。実は、これは人間に特有なものです。実験室のマウスの前に食べ物を置けば、マ

ウスは黙って食べ、その瞬間、脳の快楽センターは明るく輝きます。しかし人間の前に食

べ物を置いても、反応はひとつとは限りません。

人間もマウスと同様に、脳に快楽センターがありますが、その内面は驚くほど複雑なの

です。「心が動揺していて食べ物が喉を通らない」とか「魚は嫌い、肉とポテトのほうが

いい」「忙しいから、今は食べるのをやめておこう」というふうに、空腹でも食べない場

合もあれば、逆にやたら空腹を感じて食べすぎてしまう場合もあります。

高次脳で生まれたゆがんだ考えは、感情と食欲のどちらにも影響を及ぼします

│たと

えば、鏡のなかに自分のやせすぎた姿が映っていても、心のなかにゆがんだイメージがで

きてしまっているため、「太りすぎ」だと感じてしまう拒食症などがそのひとつの例です。

食べすぎてしまったときは、脳底部が暴走し、空腹を抑えられなくなったからと思える

かもしれません。しかし、それには脳全体が関わっているのです。ある衝動を抑制(脳底

部)し、ほかに快楽(辺縁系)を探そうとして、結局、ものを食べるという誤った選択

(高次脳)を下してしまうのです。いわば、食べすぎという行為は、脳の三つの領域の合

作で、脳の三つの領域がすべて参加しているのです。

衝動

感情 選択

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

あなたはきっと、トレイシーの脳の内部で何が行われているか気づいているはずです。

脳の三つの領域が、自分なりのメッセージを訴えて、いい争っているのです。

トレイシーの脳底部は「お腹がすいた。もっと食べたい。まだお腹はペコペコよ」とた

えず訴えてきます。

感情脳(辺縁系)は「自分が好きになれない。もっと食べなくては気分が晴れないわ」

といいつづけています。

高次脳は「こんな食べ方がよくないことはわかっている。でも、もっと食べたい。なぜ

抵抗なんてするの? 

もうそんなこと無理だわ」といいつづけます。

この脳のなかの口げんかを、スナップ写真で撮り、トレイシーに見せて、彼女の脳内で

何が行われているのかわかってもらえたなら、すばらしいことです。おそらくいつの日か

高度な脳スキャニングが、この夢を実現してくれるでしょう。

しかし、完璧なスナップ写真を使って説明しても、脳はけっして黙ってはくれません。

ある瞬間、脳のひとつの領域に従っていても、次の瞬間には別の領域が主導権を握ってい

ます。食事をするたびに、彼女は楽しんだり、食べすぎて自己嫌悪に陥ったりしています。

「かならず食生活を変える」と約束しても、数時間後にはすべてを無視することができる

理由はここにあります。彼女の頭のなかの声は、たえず矛盾しているのです。

体重のことで悩んでいるすべての人も、脳内でこのような戦いをくり広げています。こ

こで、重大な秘密を打ち明けておきましょう。

「食べたいという気持ちとの戦いには、絶対に勝てません。勝てる戦いだとしたら、はる

なり、男の子とデートする年頃になると、すぐにセックスするようになりました。なぜな

ら、相手がそれを望んでいたからで、自分は求められている存在だと感じられたからです。

しかし、問題行動が増えていくにつれ、自分のことがますます嫌になっていき、結局、ド

ラッグやアルコールにまで手を染めてしまいました。

現在、トレイシーは五十歳で、幸せな夫婦生活を送っていて、かつての自己嫌悪はなく

なっていました。しかし、避けて通ることのできなかったひとつの問題は、彼女が理想の

体重を五十キロほどオーバーしていたことです。彼女は私の患者ではなく、個人的な友人

で、ふだん顔を会わせるのはレストランです。そこでも食べ方についてアドバイスしたり

はしませんが、私には彼女の食事について気づいたことが二、三ありました。

トレイシーはいつも「お腹はそれほどすいていないの」と口にしますが、座るとすぐに

メニューを開いて料理を選びはじめます。

最初の一品を待っている間、彼女は話をしながら、かごに入っているパンを何枚か取り

出し、無意識にバターを塗って食べています。

ウエイターが「何にいたしましょうか?」とたずねると、前菜とメインディッシュを注

文し、料理は残さず食べています。

デザートは注文しませんが、私が頼むと、その半分は彼女の胃袋に入ります。

私の印象に残ったのは、トレイシーがあまりにも無意識に食べていることです。彼女は

私との会話に関心を払っていて、自分の手の動きには無関心でした。自分が見たくないも

のは無視しているのです。

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

とまではいわないけれど、なんとなく私の言葉をわかってくれたからです。彼女は窮地を

脱する方法があることを知り、ほっとしていました。

とりとめのない食欲で、にっちもさっちもいかない状況になったときでもかならず、心

のなかでたえず交わされている戦いを終わらせる方法があることに気づいてください。問

題を抱えている段階から、解決に向かう段階にあなたを引き上げてくれるのが“意識”な

のです。

意識を研ぐための「三つのテクニック」

意識を高めるための基本的なテクニックは三つあります。いつでもどこでもできて、こ

れを実行すれば、あなたは脳のバランスを自然に取り戻すことができるでしょう。

自分のカラダを意識しなさい

 

 

カラダの感覚に波長を合わせてください。どのようなものでもかまいません。カラ

ダの感覚を味わってください。

自分の感情を意識しなさい

 

 

目を閉じて、関心を心に向け、今どのような感情を抱いているのか調べてください。

感情に巻き込まれたりせず、意識を集中し、抱いている感情を観察してください。

か前に戦いは終わっていたはずです。自分と戦いつづけているかぎり、問題が消えること

はなく、やがて行き詰まってしまいます。いつまでも問題のことばかり考えていてはダメ

で、その段階を越えて、解決の方向に目を向けていかなくてはいけないのです」

トレイシーは、典型的な不幸のパターンにはまっています。一日中、食べ物に気を配り、

食事を制限しても太っています。なぜなら、心の問題の泥沼から抜け出せずにいるからで

す。では、解決するのには何が必要なのでしょう?

私は彼女に「その答えはある」と、保証してあげました。

「答えはまさしく内面にあります。たえず不安で、心配していれば、脳にまちがった指示

を出してしまいます。すると、脳は体内のすべての細胞に、この否定的メッセージを送っ

てしまうのです。でも、こんな状況は止めることができます」

彼女はむきになって否定してきました。

「でも、自分には前向きなメッセージなどひとつもないんです」

「ええ、自分が不安で、不幸なときにはそうでしょう」と私は一応うなずいてあげました。

「でも、見落としている前向きなメッセージがあります。カラダがどのような感覚なのか、

注意を払って黙って観察することです。この観察自体が、強力なメッセージなのです。意

識それ自体は、騒がしくもなく、感情的でもなく、静かに観察しています。意識すること

で、カラダはひとりでにバランスを取り戻すための最高の状態を形成してくれます」

トレイシーはきょとんとした様子でしたが、ほほえんでいました。はっきりと理解した

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

のぞくのをためらうのは、そこに見つかる恐れのあるものに不安を抱いているのです。

太った人は過去に誤った選択をしたため、自分は泥沼に陥っていると感じています。そ

のために新しい可能性が見えづらくなっているのです。

しかし、かつて自分を無意識に動かしていた信念を、脳から取り除くことができれば、

問題は克服することができます。

自分と戦う必要はありません。今、紹介した新しいテクニックを習慣にしてください。

変化が自然に訪れてくるでしょう。

ダナは、こうして心とカラダのアプローチを見事に成功させました。次のエピソードは、

私のいう方法が努力のいらない減量法だということの証明になるでしょう。では、彼女は

いったいどのようにして転機をつかんだのでしょうか? 

ダナはくわしく話してくれまし

た。

「二十代のころはずっと、大学時代の体重を保っていましたが、三十歳で地元の食品会社

に転職すると、ランチをとるために社員食堂に走ることが習慣になりました。食事中はほ

とんど、仕事のことを考えているか、食べながら同僚と話していて、カラダにいいものを

食べるために会社の外に出ることはありませんでした。食堂では、おいしそうに見えるも

のなら、どんなものでも食べていました」

これが危機的状況であることに気づかなかったダナは、たったひと冬で五キロ以上も体

自分の下す選択を意識しなさい

   

気持ちが落ち着いている時間を見つけてください。目覚めたばかりの時刻かもしれ

ませんし、シャワーを浴びてリラックスしている間かもしれません。それが決断を下

すための最高の時間です。最高の意思決定は、心が安らいだ瞬間にできるものです。

大切なのは、たったこれだけです。

この三つの基本的テクニックを取り入れることで、変化が訪れてきます。

実行するには、ほんのわずかな時間しかいりません。私は自分の心について、根本的な

ことに気づいていませんでした。それは、心は永久に止まることのない機械だということ

です。たえず働きつづけていて、思考や感情を次々に蓄積していきます。

しかし私は、この「心」のために重要なことをするのを怠っていました。つまり、心を

きちんとメンテナンスするためには、心を落ち着かせ、カラダに「元気かい?」と語りか

け、気分を確かめる必要があったのです。

私たちのほとんどはこんな質問をカラダにしたりはしません。しかし、大事な友人には

たずねているはずです。この質問をすることで、カラダはあなたの友人になってくれるで

しょう。

このテクニックを偏見にとらわれずに利用してみましょう。カラダの感覚に波長を合わ

せるのは難しいことではありません。太った人の多くが自分のカラダに連絡を取ろうとし

ないのは、自分自身と仲たがいしてしまう恐れがあるからです。自分の抱いている感情を

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

私の目的は、ダナにバランスを取り戻してもらうことにありました。彼女の問題は、精

神、肉体、感情のバランスが崩れたために発生したものだからです。この新しいやり方は、

それほど努力は必要ないと保証してあげると、彼女はやる気になってくれました。

私が唯一要求したのは、たった一瞬、注意を払ってもらうこと、ただそれだけです。こ

れを時間に余裕のあるときにやってもらうことにしました。

「最初は、自分を観察するなんておかしなことだと思いました」と、彼女は正直に告白し

ています。

「でも、レストランで当たり前のようにロールパンにバターをつけているのにふと気づき、

やめることにしました。少し意識を集中するだけで、実際にはお腹がすいていないのに食

べていることにも気づくようになりました。答えは自分のすぐそばにありました。必要な

のは、その答えをきちんと感じられるようにすることだけでした」

それから一年後の現在、彼女は見事に大学時代の体重に戻ることができました。しかし、

それよりもっと大切なことは、ダナが「自分自身に注意を払う」ことの大切さに気づいた

ことです。意識を研ぎ澄ますことが、減量の鍵です。つねにカラダのなかに存在している

自然のシグナルに気づく訓練をしてください。

長い間失われていたバランスを元に戻すには、時間とくり返しが必要です。人生におい

て、あなたの望む方向に舵を切る決断を下せるのは、あなたしかいないのです。

重を増やしてしまったのです。

この現実を突きつけられ、彼女はひどくショックを受けました。体重を減らそうとダイ

エットをはじめましたが、なかなかモチベーションを保つことができません。意志をもっ

と強くしさえすれば大丈夫だ、と自分にいい聞かせていました。しかし、意志が強くなる

ことはなく、かわりにストレスが増えていってしまったのです。

「景気が悪くなると、私は会社を辞め、自分で小さな会社をはじめました。しかし、仕事

は行き詰まり、資金も不足状態でした。午後になると、私はいつも大きなスニッカーズの

バーをダイエット・コーラで流し込んでいました。仕事への不安が大きくのしかかってき

て、体重のことなどかまっていられなくなったのです」

その後、幸い、事業はうまくいきました。しかし、鏡に映る太った自分の姿にはがっか

りです。古い服はもう一着も着ることができません。

急激なダイエットをはじめ、目標の半分ほど体重を落としましたが、しばらくすると、

ほとんど元に戻ってしまいました。皮肉なことに、仕事がうまくいっていることが、問題

を悪化させていたのです。クライアントとランチをとる機会が多くなったからで、遅い時

間にへとへとに疲れて家に帰る日が多くなりました。

そんな状況を変えるため、彼女は心とカラダのアプローチを実施しました。①自分のカ

ラダを意識する、②自分の感情を意識する、③自分の下す選択を意識する、これらすべて

を実行し、自分のカラダの感覚、感情を観察し、もっと意識的に食事のメニューを選択す

るようにしたのです。

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

リンを使い果たしただけなのかもしれないのです。そして、どの兵士も前線で過ごす時間

が増えると、アドレナリンが分泌されなくなってしまうことが、やっと証明されてきまし

た。これは、やる気やモラルの欠如とはまったく関係ないのですから、彼らに臆病者の汚

名を着せるのはひどく不公平なことです。

個人病院での私の経験は、もっと日常的なものですが、やはり同じように、患者にぬれ

ぎぬを着せてしまうようなものです。

たとえば、私が診た患者の多くは太った女性でしたが、「肥満の原因は自分の意志の弱

さにあるのではなく、カラダのほうにあるのだ」と信じたがっていました。しかし、診察

した女性の九十九パーセントに「異常はありません」と告げると、彼女たちは悲しんだり、

がっかりしたり、ときには絶望的になっていました。

多くの女性が恥をしのんで、医師に助けを求めてやってきたのです。しかし、診断の結

果を聞かされて、来たときよりも、かえって気分を害して帰っていきました。しばらくし

て、これではいけないと思った私は、この根本的原因を探しはじめました。そしてついに、

カラダの問題は、心と密接に関わっていることを突きとめました。カラダに現れた問題が、

やがて心にも現れてくるのです。私の患者

│そしてはるかに多くの人

│が抱えていた

のは、心身(そして魂)の問題だったのです。

医学の問題を、カラダに限らず、精神・肉体・魂の問題とみなすこの画期的な考えに、

私はワクワクしました。この考えから、実り多い結果も出てきました。意識を集中させ、

鏡に映っているのは「あらゆる絶望の亡霊」である

私の医師としての専門は、ホルモンを扱う内分泌学です。

人間の体内で、ホルモンというもっとも小さな化学物質が分泌されると、ほんの数秒で

人を怖がらせたり、勇気づけたり、怒らせたり、性欲をもよおさせたり、お腹をすかせた

りすることに、若い医者として強い興味を覚えました。ジキル博士がハイド氏に変身して

しまう秘密がひとつの分子のなかに存在している! 

この事実に私の想像力はかき立てら

れました。ホルモンの分析を実験室でずっと研究できたら、なんてすばらしいだろうと考

えていたほどです。分子の活動やその相互作用は、複雑で、謎に満ちていました。

しかし、個人経営の病院をはじめてみてまず気づいたのは、ホルモンのもたらす悪い影

響についてでした。たとえば、ストレスホルモンは、人生を破滅させてしまう恐れのある

障害をつくり出す張本人です。

また、「奴は怠け者だ」といった社会的汚名を着せられたりするのは、アドレナリンの

不足が原因になっている場合が少なくありません。

たとえば、強いストレスのなかで戦いつづける兵士たちは、前線から逃げ出して臆病者

と思われることに、強い不安を抱きます。しかし、アドレナリンが放出されなくなると、

誰でも戦いから逃げ出そうとするようになります。それにより、多くの兵士が自分のこと

を臆病者と責め

│仲間の兵士からも非難され

│ますが、それはたんに体内のアドレナ

5051

プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

ていくことになるのです。

充実した人生を実現するのは、スナック菓子を食べながら野球中継を見るほどやさしく

はありませんし、友人と素敵なランチを楽しむほど簡単なことでもありません。

しかし、人生を充実させるためのこの旅が、今まで生きてきたなかで、あなたをいちば

んワクワクさせてくれることをお約束しましょう。希望、信頼、喜びを胸に抱いて、いっ

しょに旅に出かけましょう。

あなたと私が交わす「生まれ変わるための誓い」

これから、この本ではさらにたくさんのことをお話ししていきますが、さしあたり、こ

の旅の目的地はおわかりいただけたことと思います

│私たちは一部(カラダ)ではなく、

全体(カラダ、心、魂)の解決をめざします。

ここで少し休憩し、約束をしてください。私たちの間で交わす無言の契約です。次があ

なたの契約内容です。

「あなたの契約書」

一か月、これから本書で説明する心とカラダのプログラムを守ることに同意します。ダ

イエットはしません。自分のカラダに否定的な判断を下したりしません。現在をしっかり

緊張を解き、つねに内面を心地よくしておけば、気分がいかによくなるのかに気づきまし

た。あ

なたもこのような状態をつくり出せることに気づいてください。虚しい夢を消し去り、

精神・カラダ・魂の存在をしっかり意識してください。すると、あなたが抱いているもっ

とも深い願望も実現していきます。「人生とは願望を成就すること」という秘密が明らか

にされていくのです。

この秘密に気づくことができれば、あらゆることが変化していきます。突然、あなたは

あらゆる願いを実現していないことに気づきます。たとえば朝五時にマティーニを飲んだ

り、ビデオゲームに夢中になったりといった、快楽はたくさんあります。そうした快楽の

なかに身を置き、自分には怒り、恐怖、恥辱、罪の意識などまったくないと考えると気分

がよくなるでしょうが、それでカラダがだまされることはありません。必死に見せないよ

うにしても、カラダにはすべてお見通しなのです。

私の最大の願いは、人に出口を指し示してあげることでした。数年もの間、私の患者は

落胆したり、欲求不満の状態で病院をあとにしていましたが、この状況を変えなくてはい

けなかったのです。

減量に取り組んでいる人にとって、鏡のなかに映っている肉体は、仮面にすぎません。

その仮面の裏に、悪い習慣、自分への期待感の低さ、そしてあらゆる種類の失望が存在し

ているのです。鏡に映っているあなたのカラダは、あなたの心を形にしたものにすぎない

のです。ですから、充実した人生を送っていれば、あなたの体重はどんどん理想に近づい

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プロローグ 意識が変わればみるみるやせる

なのです。それこそ、解決しなくてはいけない問題です。

これは、自分を変えるチャンスです。自分を変えることで、ものの見方だけでなく、仕

事のしかた、環境への視点、人の愛し方など人生そのものが変わっていくことがわかって

いただけるでしょう。

生き、欲求不満や失望しか生み出さない古い信念にはもう耳を傾けたりしません。何の偏

見にもとらわれず、自己実現の道をひたすら歩むことを誓います。

次が、「私の契約書」です。

あなたに、カラダだけでなく、心や魂も変えてもらうための道案内をすることに同意し

ます。このアプローチは、長年、チョプラセンターで効果があることが証明されてきまし

た。あなたに本当の願望に気づいてもらうことで、これからいっしょに脳のメッセージの

バランスを取り戻していきましょう。カラダ、感情、精神を満足させるために、それぞれ

の領域で、どのくらいうまくやっているのか測定する方法も教えていきます。

私は、次のようにあなたを変えていきます。

カラダ:

あなたのカラダはもっと軽快で、エネルギーに満ち、ますます活力を感じるよ

うになるでしょう

感 

情:幸せで、楽しく、ますます前向きな気持ちになれるでしょう

精 

神:

もっとすばらしい人生を送るための決断と選択ができるようになり、理想の人

生を実現させるでしょう

心とカラダのアプローチは、これまであなたが試してきたであろう、あらゆる減量プロ

グラムで忘れられていた、大きな溝を埋めてくれます。体重がいったん減っても、決まっ

て元に戻ってしまうのは、目に見えない心の穴を食べ物で埋め合わせようとしているから

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