Upload
trantuyen
View
233
Download
5
Embed Size (px)
Citation preview
Influence of smoking on perioperative oxidative stress after pulmonary resection.
肺切除術後の周術期酸化ストレスに及ぼす喫煙の影響
Vol.65 -5 Vol.65 - 6
論文 Research article WISMERLL JOURNAL 論文 Research articleWISMERLL JOURNAL世界の酸化ストレスに関する論文紹介
酸化ストレスに関して多岐にわたる分野で研究が行われています。発表された論文の一部をご紹介します。
世界の酸化ストレスに関する論文紹介
5p 6p
◆発 表 者 Schöttker B et al(ド
イツ癌研究センター Heidelberg)
◆掲 載 BMC Med. 2015 Dec
15; 13(1):300.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu
bmed/26666526
背景 老化とフリーラジカル/酸化
ストレス学説は注目されているが、
酸化ストレスマーカーと致死率との
関連を示す証拠はほとんどない。
方法 ドイツ・ポーランド・チェコ
共和国・リトアニアに住む住民コホー
トから 10,622 名の男女(年齢:
45-85 歳)を対象として、活性酸
素 種 濃 度 の 指 標 活 性 酸 素 代 謝 物
(d-ROMs)を、酸化還元状態の指標、
総チオールレベル(TTL)を測定した。
対象者の内 1,702 名が追跡期間中
に死亡した。
結果 酸化ストレスマーカーは、こ
れまでのコホート研究で示唆されて
いる炎症を含むすべての死亡原因と
は独立した致死要因であることが示
唆 さ れ た。d-ROMs 値 の 低 い(≤340 Carr U)群 に 比 べ て、高 値
(>500 Carr U)群 で は、心 血 管
(CVD)死亡率と強く相関し(相対
リ ス ク:5.09;95% 信 頼 区 間:
2.67-9.69)、がん死亡率(相対リ
ス ク:4.34;95 % 信 頼 区 間:
2.31-8.16)と も 相 関 し た。TTL
においては、CVD 死亡率の低下と
のみ関係していた(相対リスク:
1.30; 95 % 信 頼 区 間 , 1.15-
Evidence for the free radical/oxidative stress theory of ageing from the CHANCES consortium: a meta-analysis of individual participant data.
コンソーシアムからの “老化とフリーラジカル /酸化ストレス仮説” の証拠:個別対象者データによるメタ解析
◆発表者 Mizuno Y et al.(岐阜大
学医学部高度先進外科)
◆掲 載 Surg Today.(2015)
http://link.springer.com/article/1
0.1007/s00595-015-1132-4
目的 肺切除術前後の酸化ストレス
の変化に及ぼす喫煙の影響を調べ
た。
方法 治療的肺葉切除術を受けた原
発性肺癌患者 31 名を対象とした。
周 術 期 の 酸 化 ス ト レ ス 度 を 血 漿
derivatives of reactive oxygen
metabolites(d-ROMs)レベルと
biological antioxidant potential
(BAP)を指標として評価した。患
者をグループ A(喫煙年 40 箱未満)
とグループ B(喫煙年 40 箱以上)
の 2 群に分けた。d-ROMs と BAP
は、術 前、術 直 後、術 後 1、2、3
& 5 日後に採血し、測定した。
結果 全 31 症例において、術後 3
& 5 日後の d-ROMs 値は、術前値
よりも高かった。術後 2、3 & 5 日
後の d-ROMs 値の変化の程度は、
グループ A の方がグループ B より
も顕著であった(1.05 ± 0.159 vs.
0.920 ± 0.205, p = 0.008; 1.20
± 0.233 vs. 1.02 ± 0.186, p =
0.032; 1.34 ± 0.228 vs. 1.07 ±
0.200, p = 0.003)。他方、BAP 値
に は 有 意 な 差 は 見 ら れ な か っ た。
d-ROMs 値の最大増加度と BAP 値
の低下度は、それぞれ、喫煙量と有
意な負の相関を示した(|r| = 0.428,
p = 0 .016 と | r | = 0 .357. p =
0.049)。
結論 肺葉切除手術による侵襲は酸化
ストレスを誘導する。その変化度は喫
煙量と相関していると考えられる。
Long-term stability of parameters of antioxidant status in human serum.
ヒト血清中の抗酸化能指標の長期安定性
◆発表者 Jansen E et al(オランダ)
◆掲 載 Free Radic Res. 2013;
47: 535-40.
http://www.tandfonline.com/doi
/abs/10.3109/10715762.201
3.797969#.Vvy6W2xf1JU
目的 血清(or 血漿)の抗酸化能を
市販の検査方法を使って測定した。
今回、4 種の検査法、TAS(総抗酸
化能)、TAS2、BAP(生物学的抗
酸化能)、西洋ワサビペルオキシダー
ゼを使った酵素活性法(EAOC)を
使って、ヒト血清抗酸化能の長期安
定性を 12 ヵ月間保存サンプルを用
いて調べた。
方法 保管温度としては、一般的な
-20, -70 (or -80), -196℃を選ん
だ。
結論 いずれの保管温度でも 4 種の検
査結果すべてが安定であった。加えて、
保管温度の異なるサンプルの間に、統
計学的な有意差は見られなかった。抗
酸化能に寄与する 3 成分(尿酸、クレ
アチニン、ビリルビン)についても、
保管温度間に有意差はなかった。それ
故、抗酸化能保持の為には、-20℃で
1.48, for one-standard-deviation
-decrease)。TTL と CVD 死亡率
低下との関係は、年齢と共に強く
なっていた(70-85 歳の対象者で
は、相対リスク:1.65; 95 % 信頼
区間 ,1.22-2.24, for one-standard
-deviation-decrease)。
結論 中央&東ヨーロッパの 4 ヵ国
住民を対象としたコホート研究にお
の保管で充分であるが、より長期の保
存の為には、- 70/80°C での保管が望
ましい。
いて、d-ROMs は調査を行ったすべ
ての死因の死亡率と密接な関係にあ
ること、TTL は CVD 死亡率と負の
相関関係にあることを明らかにし
た。本研究は、老化とフリーラジカ
ル / 酸化ストレス学説を支持する疫
学的証拠になり、d-ROMs と TTL
が死亡率と関連する有用な酸化スト
レスマーカーであることを示唆して
いる。
http://www.bbm-japan.com
三重大学教授杉田正明先生は、定義が曖昧な
「疲労」を数値化する指標としてd-ROMs
(酸化ストレス)・BAP(抗酸化力)測定の意義
について話されました。また、数名のアスリート
コーチング・クリニック 2016年5月号
MEDIA掲載
(ベースボール・マガジン社)
酸化度測定を選手のコンディショニングに生かす特集「予防医学」を考える
の具体的なd-ROMs・BAP数値の推移を示し
て、競技成績の裏付けとなるエビデンスの1つと
して活用できるのではないかとされました。
現在発売中
Influence of smoking on perioperative oxidative stress after pulmonary resection.
肺切除術後の周術期酸化ストレスに及ぼす喫煙の影響
Vol.65 -5 Vol.65 - 6
論文 Research article WISMERLL JOURNAL 論文 Research articleWISMERLL JOURNAL世界の酸化ストレスに関する論文紹介
酸化ストレスに関して多岐にわたる分野で研究が行われています。発表された論文の一部をご紹介します。
世界の酸化ストレスに関する論文紹介
5p 6p
◆発 表 者 Schöttker B et al(ド
イツ癌研究センター Heidelberg)
◆掲 載 BMC Med. 2015 Dec
15; 13(1):300.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu
bmed/26666526
背景 老化とフリーラジカル/酸化
ストレス学説は注目されているが、
酸化ストレスマーカーと致死率との
関連を示す証拠はほとんどない。
方法 ドイツ・ポーランド・チェコ
共和国・リトアニアに住む住民コホー
トから 10,622 名の男女(年齢:
45-85 歳)を対象として、活性酸
素 種 濃 度 の 指 標 活 性 酸 素 代 謝 物
(d-ROMs)を、酸化還元状態の指標、
総チオールレベル(TTL)を測定した。
対象者の内 1,702 名が追跡期間中
に死亡した。
結果 酸化ストレスマーカーは、こ
れまでのコホート研究で示唆されて
いる炎症を含むすべての死亡原因と
は独立した致死要因であることが示
唆 さ れ た。d-ROMs 値 の 低 い(≤340 Carr U)群 に 比 べ て、高 値
(>500 Carr U)群 で は、心 血 管
(CVD)死亡率と強く相関し(相対
リ ス ク:5.09;95% 信 頼 区 間:
2.67-9.69)、がん死亡率(相対リ
ス ク:4.34;95 % 信 頼 区 間:
2.31-8.16)と も 相 関 し た。TTL
においては、CVD 死亡率の低下と
のみ関係していた(相対リスク:
1.30; 95 % 信 頼 区 間 , 1.15-
Evidence for the free radical/oxidative stress theory of ageing from the CHANCES consortium: a meta-analysis of individual participant data.
コンソーシアムからの “老化とフリーラジカル /酸化ストレス仮説” の証拠:個別対象者データによるメタ解析
◆発表者 Mizuno Y et al.(岐阜大
学医学部高度先進外科)
◆掲 載 Surg Today.(2015)
http://link.springer.com/article/1
0.1007/s00595-015-1132-4
目的 肺切除術前後の酸化ストレス
の変化に及ぼす喫煙の影響を調べ
た。
方法 治療的肺葉切除術を受けた原
発性肺癌患者 31 名を対象とした。
周 術 期 の 酸 化 ス ト レ ス 度 を 血 漿
derivatives of reactive oxygen
metabolites(d-ROMs)レベルと
biological antioxidant potential
(BAP)を指標として評価した。患
者をグループ A(喫煙年 40 箱未満)
とグループ B(喫煙年 40 箱以上)
の 2 群に分けた。d-ROMs と BAP
は、術 前、術 直 後、術 後 1、2、3
& 5 日後に採血し、測定した。
結果 全 31 症例において、術後 3
& 5 日後の d-ROMs 値は、術前値
よりも高かった。術後 2、3 & 5 日
後の d-ROMs 値の変化の程度は、
グループ A の方がグループ B より
も顕著であった(1.05 ± 0.159 vs.
0.920 ± 0.205, p = 0.008; 1.20
± 0.233 vs. 1.02 ± 0.186, p =
0.032; 1.34 ± 0.228 vs. 1.07 ±
0.200, p = 0.003)。他方、BAP 値
に は 有 意 な 差 は 見 ら れ な か っ た。
d-ROMs 値の最大増加度と BAP 値
の低下度は、それぞれ、喫煙量と有
意な負の相関を示した(|r| = 0.428,
p = 0 .016 と | r | = 0 .357. p =
0.049)。
結論 肺葉切除手術による侵襲は酸化
ストレスを誘導する。その変化度は喫
煙量と相関していると考えられる。
Long-term stability of parameters of antioxidant status in human serum.
ヒト血清中の抗酸化能指標の長期安定性
◆発表者 Jansen E et al(オランダ)
◆掲 載 Free Radic Res. 2013;
47: 535-40.
http://www.tandfonline.com/doi
/abs/10.3109/10715762.201
3.797969#.Vvy6W2xf1JU
目的 血清(or 血漿)の抗酸化能を
市販の検査方法を使って測定した。
今回、4 種の検査法、TAS(総抗酸
化能)、TAS2、BAP(生物学的抗
酸化能)、西洋ワサビペルオキシダー
ゼを使った酵素活性法(EAOC)を
使って、ヒト血清抗酸化能の長期安
定性を 12 ヵ月間保存サンプルを用
いて調べた。
方法 保管温度としては、一般的な
-20, -70 (or -80), -196℃を選ん
だ。
結論 いずれの保管温度でも 4 種の検
査結果すべてが安定であった。加えて、
保管温度の異なるサンプルの間に、統
計学的な有意差は見られなかった。抗
酸化能に寄与する 3 成分(尿酸、クレ
アチニン、ビリルビン)についても、
保管温度間に有意差はなかった。それ
故、抗酸化能保持の為には、-20℃で
1.48, for one-standard-deviation
-decrease)。TTL と CVD 死亡率
低下との関係は、年齢と共に強く
なっていた(70-85 歳の対象者で
は、相対リスク:1.65; 95 % 信頼
区間 ,1.22-2.24, for one-standard
-deviation-decrease)。
結論 中央&東ヨーロッパの 4 ヵ国
住民を対象としたコホート研究にお
の保管で充分であるが、より長期の保
存の為には、- 70/80°C での保管が望
ましい。
いて、d-ROMs は調査を行ったすべ
ての死因の死亡率と密接な関係にあ
ること、TTL は CVD 死亡率と負の
相関関係にあることを明らかにし
た。本研究は、老化とフリーラジカ
ル / 酸化ストレス学説を支持する疫
学的証拠になり、d-ROMs と TTL
が死亡率と関連する有用な酸化スト
レスマーカーであることを示唆して
いる。
http://www.bbm-japan.com
三重大学教授杉田正明先生は、定義が曖昧な
「疲労」を数値化する指標としてd-ROMs
(酸化ストレス)・BAP(抗酸化力)測定の意義
について話されました。また、数名のアスリート
コーチング・クリニック 2016年5月号
MEDIA掲載
(ベースボール・マガジン社)
酸化度測定を選手のコンディショニングに生かす特集「予防医学」を考える
の具体的なd-ROMs・BAP数値の推移を示し
て、競技成績の裏付けとなるエビデンスの1つと
して活用できるのではないかとされました。
現在発売中